チャイコフスキー(管弦楽曲)

2024年5月24日 (金)

チャイコフスキー バレエ音楽「眠れる森の美女」全曲 名盤

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最近、数年ぶりに「白鳥の湖」のバレエを観に行ったのをきっかけに三大バレエをよく聴いています。ところが「眠りの森の美女」をまだ記事にしていませんでしたので今日はこれです。 

チャイコフスキーが作曲した「眠れる森の美女」(英: The Sleeping Beauty)作品66は、「白鳥の湖」「くるみ割り人形」と合わせて“三大バレエ”とされます。 

初演は1890年にサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で行われました。その時の劇場支配人であったイワン・フセヴォロシスキーが、チャイコフスキーにペローの童話「眠れる森の美女」を基にしたバレエ音楽の作曲を依頼したのですが、かつて外交官としてパリに駐在していたフセヴォロシスキーはフランス文化の愛好者でした。 

フセヴォロシスキーはチャイコフスキーへの手紙の中で、ペローの「眠れる森の美女」のバレエ台本を自分が書いたことや、作品の時代背景はルイ14世の様式にしてミュージカル・ファンタジー風に、音楽を宮廷バレエ風なものにしたいこと、終幕にはペローの童話集から長靴をはいた猫、赤頭巾、シンデレラなど沢山のキャラクターを登場させたいことなどを書き記しました。チャイコフスキーはフセヴォロシスキーの台本にすっかり魅了されると作曲を快諾します。
バレエの振付は、マリインスキー劇場の首席バレエマスターのマリウス・プティパが担当しました。 

初演は貴族や批評家からは余り好意的には受け止められませんでしたが、聴衆の間では公演を重ねるうちに大評判となってゆき、その後マリインスキー劇場の重要レパートリーとなります。 

<あらすじ>

プロローグ とある国のフロレスタン王にオーロラという姫が誕生して洗礼式が行われる。式には6人の妖精たちが招かれるが、悪の妖精カラボスは自分が式に招かれなかったことに激怒して、「オーロラ姫は16歳の誕生日に、紡錘(ぼうすい:糸をつむぐ道具)に刺されて死ぬだろう」と呪いをかける。
人々は嘆き悲しむが、リラの精が「呪いを解くことはできないが、弱めることはできる。姫は死ぬのではなく眠りについて、百年後に王子の口づけによって目覚めるだろう」と予言をする。 

第1幕 美しく成長したオーロラ姫の16歳の誕生日となり、姫の元に求婚者たちがやってくる。姫は4人の求婚者と踊るが、その後に姫は見知らぬ老婆から花束を受け取ると、仕込まれていた紡錘で指を刺して倒れてしまう。老婆に変装していたカラボスが正体を現して去っていく。そこへリラの精がやって来て、「姫は予言通りに眠りについたのだ」と告げる。リラの精は、魔法でその場にいる全員を眠らせ、辺りに木々を茂らせて城全体を森で包み込む。 

第2幕 百年が過ぎ、デジレ王子と家来たちが森へ狩りにやってくるが、王子は狩りが楽しく無く、物思いにふけている。そこにリラの精が現れてオーロラ姫の幻影を見せると王子はたちまち姫の美しさの虜となる。王子はリラの精に導かれて城へ行き、そこに眠るオーロラ姫に口づけをする。すると姫は予言通り目覚める。 

第3幕  オーロラ姫とデジレ王子の結婚式が盛大に催される。宝石の精や、様々な童話の主人公たちが招かれていて、長靴をはいた猫と白い猫、赤ずきんと狼、フロリナ王女と青い鳥などがそれぞれの踊りを披露する。人々が祝福する中をオーロラ姫とデジレ王子が踊って幕となる。 

以上ですが、台本はとてもシンプルで分かりやすく、豪華絢爛な舞台が一般庶民には「王宮への憧れ」として受け入れられたのでしょう。それにしても男が美女に弱いのは万国共通。女性だってハンサムな王子様に口づけをされては、そりゃ寝てなんかいられない!ですよね。 

チャイコフスキーの音楽は非常にシンフォニックで美しいです。全体は華麗で明るく、「白鳥の湖」のような哀愁漂う情緒感が薄いので、初めは長い全曲版は馴染みにくいかもしれませんが、聴き込むうちにその夢のような美しさに必ず虜になるはずです。 

それでは愛聴盤をご紹介します。 

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アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響(1974年録音/EMI盤)
チャイコフスキーの三大バレエを全曲録音した指揮者では古くはアンセルメが思い浮かびます。録音された1960年前後では画期的でしたが、現在の耳で満足出来るかは疑問です。そしてプレヴィン盤の登場となります。ちょうど半世紀前の録音で音の鮮度は多少落ちていますが、鑑賞に支障はありません。プレヴィンの指揮は若々しく、生き生きと弾けるリズム感が素晴らしく、バレエの舞台を彷彿させます。劇音楽を得意とするだけにドラマティックな雰囲気も充分です。反面、儚いばかりの情緒感はやや薄く感じられます。ロンドン響は優秀ですが、管弦楽の響きの魅力においては、さすがに後述するコンセルトヘボウやキーロフ(マリインスキー)の持つ美音には一歩及びません。

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アンタル・ドラティ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1979-81年録音/フィリップス盤) 
ドラティは1955年にミネアポリス響とモノラル録音を行っているので、このディスクは二回目の全曲録音です。今回はヨーロッパを代表する王立楽団なので、この作品に相応しいです、と言うことも無いのですが、実際にこの名門楽団の持つ重厚かつ、類まれなほどに美しい芳醇の響きは、ちょっと他の楽団からは味わうことが出来ません。ドラティの指揮はリズムがやや固めでバレエダンサーのリズムカルな舞踏は浮かびません。それは決して重ったるいという意味では無く、それぐらい立派であたかも交響曲を聴くようにシンフォニックだということです。コンセルトヘボウの楽団、ホールの響き、フィリップスによる録音が揃って初めて成し遂げられる名ディスクでしょう。

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ヴィクトル・フェドートフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団?(1980年録音/AUDIOPHILE盤)
ロシアのバレエの神様フェドートフは我が国の新国立劇場の創設の際にも多大な貢献をしてくれました。ところがバレエファン以外の音楽ファンにはその名をさほど知られていないのは残念です。「白鳥の湖」のCDや「くるみ割り人形」のDVDは純粋にバレエを楽しめる名演奏でしたが、この「眠りの森の美女」もまた上品極まりない名演奏です。ロシアのコンサート指揮者の演奏はずっとシンフォニックで激しさが有りますが、こちらは例えてみれば劇場に集まった貴族たちがゆったりと楽しむような落ち着いた趣です。この作品にはぴったりだと言えるでしょう。このディスクの表記では管弦楽がレニングラード・フィルと成っていますが、やや怪しさが有ります。他のレーベルで記載される”State Aacademic St.Petersburg Phiharmony SO”が正しいのではと思っています。演奏水準そのものは決して悪く有りません。録音も同様です。 

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エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立響(1988年録音/メロディア盤) 
スヴェトラーノフのチャイコフスキーは大好きですし、「白鳥の湖」のいかにもロシアらしい豪放さと美感の両立した演奏は絶品でした。もちろんこの「眠れる森の美女」でも夢見るような美しさを聴かせてくれますし、この作品の持つロシア風の味わいにかけても充分に湛えてくれています。ただし問題なのは、壮麗な部分での金管の豪放な鳴りっぷりがいささか過剰気味で、行進曲や三幕の終曲などは、まるで「1812年」でも聴いているようです。その点、後述するゲルギエフ盤は古都サンクトペテルブルクの本家としての品の良さを保持していて、モスクワ派の荒々しさの有る演奏とは一味も二味も違います。 写真は所有する三大バレエのBOXセットです。

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ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管(1992年録音/フィリップス盤)
ソ連時代の名称“キーロフ歌劇場”は現在では元の“マリインスキー劇場”に戻っています。これこそ本家の演奏です。ゲルギエフの指揮はロシア風の味わいたっぷりですが、他のロシアの指揮者よりも洗練されたハーモニーの美しさを求めます。それは西ヨーロッパの演奏家には求められないもので、バランスの良さは比類有りません。このバレエでも華麗な美しさに加えて、ロシア風の味を随所に感じさせます。またリズム感の良さも特筆されます。つまりこれほど、この作品に相応しい演奏の組み合わせは他に有りません。フィリップスによる録音は、管弦楽の夢見るように繊細な美しさと迫力有る響きを忠実に捉えた素晴らしさで、全てにおいて完璧なディスクだと断言します。現在はDECCAから再リリースされています

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2014年1月11日 (土)

チャイコフスキー バレエ音楽「白鳥の湖」全曲 名盤

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マリインスキー劇場のバレエ「白鳥の湖」

さて、年末年始にはベートーヴェンを聴いていたので中断してしまったロシア音楽特集に戻ります。おりしもソチ・オリンピックの開幕まで一か月を切ったところですので、この際改題して「ソチ・オリンピック記念 ロシア音楽特集」とします!

ということで、ロシア音楽といえばチャイコフスキー。その代表作の一つがバレエ音楽「白鳥の湖」ですね。このバレエは良く知られた曲以外にも、驚くほど多くの魅力的な名曲ばかりの大傑作です。

「白鳥の湖」のストーリーは有名ですので、ここでは詳細は省きます。ただし、演出によって結末が異なり、「悲劇的な結末」と「ハッピーエンド」の二通り存在します。

悪魔の魔法によって白鳥の姿に変えられてしまった美しい娘が、夜だけ人間の姿に戻った時に王子に見初められ、やがて王子が悪魔を打ち倒すのですが、原典版では、娘は人間の姿には戻れず、王子と二人で湖に身を投げるという悲劇的な結末になっています。
それに対して、後年改作されたのが、悪魔の魔法が解けて、娘と王子とは二人で幸せに暮らすというハッピーエンドです。どちらが良いかは、人それぞれの好みだと思います。バレエ公演の場合には全体的な演出や踊りの印象が強いので、自分は余り結末にはこだわりません。ましてやCDによる音楽鑑賞では結末の違いは関係ありません。

そもそも、この作品はチャイコフスキーの最初のバレエ音楽でしたが、初演当時、ダンサー、振付師、指揮者に恵まれなかったことから、良い評価を得られませんでした。しばらくは再演されていましたが、そのうちにお蔵入りとなり、楽譜はチャイコフスキーの書斎に埋もれていました。それが、プティパと弟子のイワノフによって復刻がなされ、チャイコフスキーが亡くなった2年後の1895年にマリインスキー劇場で蘇演されました。現在でも世界のバレエ公演では規範となる「プティパ=イワノフ版」です。ただし一般的な全曲盤レコーディングでは、チャイコフスキーの原譜に基づいて演奏されるので、曲の順番やカットの点で幾らか異なります。

自分自身はバレエを生の舞台で、しかもマリインスキー劇場の公演を観るのが何よりも好きなので、プティパ=イワノフ版のCDを聴いても何ら違和感は有りません。むしろスッキリとしていて聴き易いかもしれません。

「白鳥の湖」を聴く場合に「全曲盤は長過ぎる」と言う人が居ますが、僕はそうは思いません。全曲で無いと聴いた気がしないのです。確かに単なる繋ぎの曲が一つも無いとまでは言いませんが、素晴らしい名曲が次々と息つく間も無く続くのはおよそ奇跡です。従ってこの作品は絶対に全曲盤で聴くべきだと思います。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

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ゲンナジ・ ロジェストヴェンスキー指揮モスクワ放送響(1969年録音メロディア盤) 
全盛期のロジェストヴェンスキーと手兵のモスクワ放送響とのコンビの演奏だけあって最高です。耳をつんざくような金管の強奏と躍動感溢れる切れの良いリズムが快感ですが、一方で情緒溢れるメロディはたっぷりと歌わせてくれます。オーケストラの上手さも特筆ものです。そして、この演奏でどうしても語らなければならないのが、ミヒャエル・チェルニャコフスキーのヴァイオリン独奏です。それはもうコテコテのロシア節で土臭く弾いてくれていて味わいが最高です。元々、この曲の独奏パートはコンチェルトかと思うほどに技術的にも難しく、並みのバレエ楽団のコンサートマスターでは手に負えないのですが、この人はオイストラフかと思うくらいに上手く弾いています。長い独奏部分は、すっかりヴァイオリン協奏曲を聴いているような錯覚に陥ります。こういう演奏を聴いてしまうと、この曲はロシアの楽団以外ではちょっと聴こうという気が起きなくなります。録音は明瞭なのですが、当時のメロディア・レーベル特有の音の硬さが有ります。

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アナトール・フィストゥラーリ指揮オランダ放送フィル(1972-73年録音/DECCA盤)
この曲は昔、大学生の頃にカラヤンもアンセルメもいま一つに感じましたが、フィストラーリとコンセルトヘボウ管には魅入られました。フィストラーリはウクライナ出身で、あのディアギレフのバレエ・リュスの指揮者も務めたバレエの権威です。フィストラーリは「白鳥の湖」を3回録音しましたが、最初のロンドン響とのモノラル盤は全曲版ながらカットがかなり多く、2回目のコンセルトヘボウ管盤はハイライト盤でした。このオランダ放送管との3回目の録音がようやく完全全曲盤となりました。演奏は非常にドラマティック、旋律をたっぷりと濃厚に歌わせるロシアン・スタイルです。序奏からしてまるで「悲愴」でも始まるみたいです。ヴァイオリン独奏を名手ルッジェーロ・リッチが弾いていて、技巧の高さと歌い回しの上手さには感嘆します。管弦楽はコンセルトヘボウ管と比べると残念ながら劣ります。録音は20チャンネルのマルチ・マイクの音を4トラックで録音して2チャンネルにするフェイズ4方式によりますが、現在はタワーレコードからリマスタリング盤として出ていて音質は明瞭です。

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アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響(1976年録音/EMI盤)
プレヴィンがこの作品に向いていることはたとえファンで無くとも明らかでしょう。バレエの躍動感、旋律の歌わせ方、ロマンティックな情感の表出などの点において卒が有りません。個人的にはロシア風の濃厚な味わいを好むので、その点だけは物足りなさが残りますが、とはいえ元々ロシア音楽を得意としているプレヴィンのことでもあり一般的にはむしろ聴き易い演奏として好まれるのでは無いでしょうか。ロンドン響も響きがサヴァリッシュ盤のフィラデルフィア管のように明る過ぎないのは良いです。ヴァイオリン独奏をあのイダ・ヘンデルが弾いているのも豪華で、非常に味わい深さを与えてくれていますが、技術的に難所の部分では少々苦労して聞こえます。録音に幾らか古さは感じられますが鑑賞においては何ら差支えありません。

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ウラディーミル・フェドセーエフ指揮モスクワ放送響(1985年録音/AUDIOPHILE盤:メロディア原盤) 
ロジェストヴェンスキーからモスクワ放送響を引き継いだフェドセーエフは現在でも首席指揮者を続けている言わずと知れたロシアの名指揮者です。この「白鳥の湖」もスケールの非常に大きい、シンフォニー以上にシンフォニック極まりない演奏で、次から次へと出てくるどの曲にも圧倒されてしまいます。「情景」のたっぷりと歌わせるのには目がくらみそうです。情感を深く湛えた歌わせ方やワルツのニュアンスなども見事なものです。モスクワ放送響は相変らず優秀ですが、全体にロシア風の味わいが強く感じられるのが大きな魅力です。やはりこうでなければ!ヴァイオリン独奏はニコライ・ガティロフで、ロジェストヴェンスキー盤のチェルニャコフスキーにも匹敵するほどの素晴らしさです。チェロ独奏もあの名手のヴィクトル・シモンです。このCDはドイツ盤ですがリマスターの音質は良好です。メロディア盤ほど音が硬くないのは嬉しいです。

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エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立響(1988年録音/メロディア盤) 
スヴェトラーノフもフェドセーエフに負けず劣らず、というかそれ以上に濃密なロシア風の演奏です。ダイナミック・レンジの巾も微小なピアニシモから壮大なフォルテシモまで驚くほどの広がりが有ります。まるでシンフォニーのような演奏という点では双璧だと思います。「くるみ割り人形」では少々極端過ぎるように感じた豪放極まりない音も、「白鳥の湖」では抵抗はありません。もちろんテンポの緩急の幅が非常に大きいので、これでバレエ・ダンサーが踊ることは不可能です。ヴァイオリン独奏は優れていてロシア的な味わいも有りますが、ロジェストヴェンスキー盤の魅力には及びません。収録曲数は多く、ほぼ完全な全曲盤と言えます。録音は比較的新しい年代ですのでメロディアレーベルとしては水準に達していて不満を感じることはありません。なお、自分は写真の三大バレエのボックスセットで持っています。

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マルク・エルムレル指揮コヴェント・ガーデン王立歌劇場管(1989年録音/BMG盤:CONIFER原盤)
エルムレルは、サンクトペテルブルク生まれのロシア人指揮者ですが、主にバレエとオペラを指揮したので日本では余りポピュラーでは有りません。1932年生まれで、ロジェストヴェンスキーより1歳若いです。ボリショイ劇場の指揮者を長く務めますが、ロンドンやパリ、ウィーンでも活躍して、1985年からはコヴェント・ガーデン歌劇場のバレエ指揮者も兼任しました。この歌劇場で録音を残したチャイコフスキーの三大バレエはエルムレルの代表盤と言えます。全体の基本テンポはゆったりとしてスケールが大きく、豊かに歌わせますが、速い曲ではかなり追い込みます。金管・打楽器の鳴らし方も激しくロシア風なので、英国の楽団のイメージではありません。非常にドラマティックでロシアの情緒も強く感じられるのは流石です。素晴らしい「白鳥の湖」です。録音も良好です。

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ヴィクトル・フェド―トフ指揮マリインスキー劇場管(1994年録音/Crassical Records盤) 
フェド―トフはバレエ指揮のスペシャリストで、名門マリインスキー劇場の監督も務めました。我が国の新国立劇場にも何度も客演して、レベルの向上に寄与しました。しかし管弦楽の録音が非常に少ないことから音楽ファンには余り知られません。この録音は当然プティパ=イワノフ版で演奏されていますが、素晴らしい演奏です。バレエ指揮者ですので、よく非バレエ指揮者が振るようなダンサーが踊れないような無理な指揮はしません。バレエファンにとっては心地が良く安心できる演奏です。しかしオーケストラは正しくロシアの名門劇場で、ゲルギエフが就任する前から素晴らしい演奏をしていたことが良く分かります。音楽による荒々しさと繊細さの切り替えが実に見事だと思います。ヴァイオリンのソロも上手いです。聴き慣れないレーベルですが、れっきとしたロシアレーベルで録音は優れています。

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ドミトリー・ヤブロンスキー指揮ロシア国立響(2001年録音/ナクソス盤) 
ヤブロンスキーは元々優れたチェロのソリストですが、指揮者としての活動がメインになっているようです。ナクソスレーベルには主にロシア作品のディスクが多数見られます。この主兵オケはかつてスヴェトラーノフが率いた楽団とは異なります。昔のロシアの楽団のようなゴリゴリと音を立てるような迫力は無く、ずっと洗練されて都会的です。ただしそれはロシア伝統の音の上の比較で、他のヨーロッパ諸国の楽団の音と比べれば、しっかりとロシア的な味わいを与えてくれます。ヤブロンスキーの指揮もオーソドックスでスマートです。比較的ゆったりとしたテンポで、これみよがしなハッタリは見られません。録音は優れていますし、余りに強いロシア臭さは嫌だという方には案外良い選択かも知れません。むろん全くロシアの香りがしない演奏では困りますので。

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ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管(2006年録音/DECCA盤) 
これもプティパ=イワノフ版ですが、さすがはゲルギエフで素晴らしい演奏です。録音の優秀さもあって、オーケストラの響きが本当に美しいです。「白鳥の湖」で、これほどまでの美しさで詩情豊かな演奏というのは聴いた記憶が有りません。もちろんチャイコフスキーですので、荒々しいロシア的な音に欠ける訳ではありませんが、このいじらしいまでのデリカシーに溢れた演奏に接してしまうと、これは絶対に外すことが出来ません。但し、全体的にテンポ設定が速いので、不満と言うほどでは無いのですが、幾らかせわしなさを感じてしまう部分も有ります。ヴァイオリン独奏も上手いのですが、その割に平凡な印象で、特にロジェストヴェンスキー盤の素晴らしさには及びません。

以上の9種類はプレヴィン盤以外は全てロシアもしくはウクライナ人指揮者の演奏です。非ロシア演奏家のものも幾つか聴きましたが、そのほとんどは「白鳥の湖」の音楽の持つロシア的な旋律や味わいを表現し切れていません。作品の舞台設定がドイツの深い森とはいえども、曲の持つロシア音楽の特徴を無視することは出来ないです。
これらの中から一般的には録音が新しく演奏も美しいゲルギエフ盤を第一にお勧めするべきでしょうが、ロシア的な荒々しさとヴァイオリン独奏部分に抗しがたい魅力を感じている自分は、あえてロジェストヴェンスキー盤、そしてフェドセーエフ盤を取りたいと思います。
それ以外にもフィストラーリ盤、スヴェトラーノフ盤、エルムレル盤にもそれぞれ抗し難い魅力が有ります。

さて、「絶対に全曲盤で」と言っておいて何ですが、組曲版よりはずっと曲数の多いハイライト盤も演奏さえ良ければ楽しめるのでご紹介します。

Tchaikovsky-81bypfmsfol_ac_sl1500_ アナトール・フィストラーリ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1961年録音/DECCA盤) 
フィトラーリの2回目の録音ですが、ハイライト版なのがつくづく惜しまれます。上述したオランダ放送盤ほどは濃厚に演奏していませんが、それでも非常にシンフォニックで、リズムのキレの良さ、歌い回しの上手さ、スケールの大きさを其々兼ね備えていて実に見事です。オーケストラの金管の激しい鳴らし方もロシア風ですが、そこは名門コンセルトへボウなので騒々しくなるギリギリで踏み止まります。選曲も良く、序奏(イントロダクション)からちゃんと収められています。この時に全曲録音をしてくれていればどれほど素晴らしかったかとつくづく想われます。録音は古くはなりましたが流石はDECCAで充分に鑑賞できます。海外廉価盤などで入手も可能ですのでお勧めします。

Tchaikovsky ピエール・モントゥー指揮ロンドン響(1962年録音/フィリップス盤)
大指揮者モントゥーもまた、かつてバレエ・リュスの指揮者であったことは「春の祭典」の初演騒動などで余りに有名です。フィストラーリがロシアの情緒と荒々しい味わいを感じさせるのに対して、フランス生まれのモントゥーはずっとスマートです。とは言えこの人はフランスの洒脱さと言うよりも、ちょっとした堅牢さを感じさせます。そこがチャイコフスキーには似合います。スタイルとしては同じロンドン響を振ったプレヴィンに似ているかもしれません、おっとモントゥーの方が大先輩でした。フィストラーリ盤の翌年の録音ですが、こちらも流石はフィリップスでとても優れています。曲目はフィストラーリ盤とほぼ同じような内容ですが、こちらは序奏が無くていきなり情景から始まるのが気に入りません。残念なのはそれだけです。

最後に舞台映像版のDVDについてもご紹介しておきます。

Cci00040 マリインスキー劇場(2006年収録/DECCA盤) 
この伝統ある劇場の監督であるワレリー・ゲルギエフ自身が指揮をしています。なお上記のCDとは別の劇場収録です。オデットは看板のロパートキナです。彼女は顔立ちが美しいので大好きです。ゲルギエフの振るテンポは、やはりコンサート向きなので、ダンサーにとっては速過ぎたり遅過ぎたりと随分踊りにくそうな部分が見うけられます。そのために、純粋なバレエ・ファンからは必ずしも評判は良くないようです。けれども僕は純粋なバレエ・ファンでもありませんし、この演奏は大好きです。何といっても、オーケストラが優秀です。日本で公演を行う場合には、お世辞にもキーロフ管本来のレベルではありませんが、この収録では高い演奏レベルを聴かせてくれます。舞台映像用の「白鳥の湖」で、これ以上の管弦楽演奏はまず望めないでしょう。これほど音楽的に素晴らしい「白鳥の湖」のバレエ公演は有りません。もちろん伝統的な舞台演出も最高で、全体の薄明るく淡い色彩が本当に美しいです。そしてマリインスキーのコール・ド・バレエの素晴らしさ。これは生の舞台に接すると本当に言葉にならないのですが、DVDでも充分にその美しさを味わえます。
演出も最後に王子が見事に悪魔を倒してハッピー・エンドとなるオーソドックスな終わり方なので安心。この素晴らしいDVDは、普段バレエを見ないクラシック音楽ファンにこそ是非観て頂きたいお薦めです。

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2013年12月23日 (月)

チャイコフスキー バレエ音楽「くるみ割り人形」全曲 名盤

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マリインスキー劇場での初演時の舞台装置スケッチ

チャイコフスキーの三大バレエでは、僕は「白鳥の湖」が一番好きなので、バレエ公演というと、ついついそちらを観に行ってしまいます。「眠りの森の美女」はとても美しいのですが、少々長過ぎるように感じます。ですので二番目に好きなのは「くるみ割り人形」です。ところが考えてみたら「くるみ割り人形」の生公演は、これまで一度も観に行ったことがありません。これはいけませんね。次回は「くるみ割り人形」に行くことにしましょうか。

それにしても、毎年クリスマス近くになると、バレエ公演は「くるみ割り人形」一色に染まりますね。これは皆さんもご存じの通り、台本がホフマンの童話に基づくデュマの小説によるクリスマス・イヴのお話だからです。

<バレエのあらすじ>

―第1幕―

第1場

クリスマス・イブの夜、ドイツのシュタールバウム家の大広間でパーティーが開かれている。広間の真ん中には大きなクリスマス・ツリーが飾られている。

少女クララはドロッセルマイヤー老人から、胡桃割り人形をプレゼントされる。ところが人形の取り合いになり、兄のフリッツが壊してしまう。そこでドロッセルマイヤー老人が壊れた人形を修理する。

パーティーが終わって客も帰り、皆が寝静まってから、クララは人形のベッドに寝かせたくるみ割り人形を見に来る。その時、ちょうど時計が12時を打つと、クララの体が小さくなって人形ほどの大きさになる。

すると、七つの頭を持った、はつかねずみの王様が指揮する、はつかねずみの大群が押し寄せて来る。それを、くるみ割り人形が指揮する兵隊人形たちが迎え撃つ。

両軍は激しく闘うが、最後はくるみ割り人形とはつかねずみの王様の一騎打ちとなる。くるみ割り人形が危ないところで、クララがはつかねずみの王様にスリッパを投げつけると、はつかねずみたちは退散する。

倒れたくるみ割り人形が起き上がると、美しい王子様になっていた。王子様はクララをお菓子の国に招待して二人で旅立つ。

第2場

雪が舞う松林に二人がさしかかる。(雪の踊り‐雪の精たちのコール・ド・バレエ)

―第2幕―

お菓子の国の魔法の城に到着した王子は、女王ドラジェの精(こんぺい糖の精)にクララを紹介する。お菓子の精たちによる歓迎の宴が盛大に繰り広げられる。

クララがクリスマス・ツリーの下で夢から覚める。(そのまま、お菓子の国のシーンで終わる演出も有る)

と、正に夢のように愉しいお話ですね。

音楽を気軽に楽しむにはCDが良いですが、組曲版は曲目が限られているので、お勧めしたいのはやはり全曲版です。僕の所有するCDとDVDをご紹介します。

全曲CD

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アンドレ・プレヴィン指揮ロイヤル・フィル(1986年録音/EMI盤)
バレエ音楽を得意とするプレヴィンには「くるみ割り人形」の録音が二種類有って、最初は1970年代のロンドン響との録音、二回目がこのロイヤル・フィルとの録音です。プレヴィンのファンにはどちらも人気が有るようですが、自分の所有するのはロイヤル・フィル盤です。強く印象を受けるのは、とにかく品が良いことです。英国ロイヤルだけあって、ロシア風の迫力や土臭さとはおよそかけ離れていて、上流階級の子供たちがクリスマスを楽しく過ごすような雰囲気で一杯です。「花のワルツ」も美しいですがスッキリと軽やかです。悪く言えば「BGM的」ということになりますが、まぁ子供の夢の中のお話ですし、それはそれで良いのでは無いでしょうか。

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エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立響(1988年録音/メロディア盤) 
さすがはスヴェトラーノフというべきか、すこぶる重厚でシンフォニックな演奏です。テンポの緩急の幅が非常に大きいので、これでバレエを踊るのは不可能でしょう。弱音部での繊細な音と表情は良いのですが、強音部での豪放極まりない音は、チャイコフスキーの交響曲ではそれが大きな魅力になりますが、バレエ曲でも、この「くるみ割り人形」では過剰に感じられてしまいます。この辺りは聴き手の好みにかなり左右されるとは思いますけれども。録音が比較的新しい割には、楽器の音に色彩感が不足するように感じられます。なお、自分は三大バレエのボックスセットで持っています。

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ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ管(1998年録音/フィリップス盤) 
バーデン=バーデン祝祭劇場におけるライヴ録音です。スヴェトラーノフの重厚なシンフォニーのような演奏と比べると、ずっとバレエの舞台に近いと思います。全体的に速めのテンポでキビキビと子気味良く進むので、音楽の流れを弛緩させることが無く、曲の長さを感じさせません。もちろん細部でのデリカシーに溢れる表情づけは、さすがゲルギエフで素晴らしいですし、強音部でも決して強奏し過ぎることがなく、響きの美しさを失いません。フィリップスの柔らかな録音も有るでしょうが、各楽器の色彩感が美しく感じられて楽しいことこの上ありません。全曲が1枚のCDに収まっているのも有り難いです。

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ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管(2015年録音/MARIINSKY盤)
ゲルギエフには上述した1998年のライヴ録音が有りますが、15年ぶりにセッション録音を行いました。旧盤も素晴らしかったですが、新録音はあらゆる箇所で音楽に意味深さとニュアンスが大幅に増していて、その解釈の著しい成熟ぶりには目を見張ります。特に印象深いのは弱音の美しさ、ロシアの深い情緒感です。「花のワルツ」の美しさや、第幕の「グランド・アダージョ」の盛り上がりにも魅了されます。これまで「くるみ割り」は「白鳥の湖」に比べて総合的な曲の魅力では劣ると思っていましたが、この演奏で聴くと少しも飽きないばかりか認識を大きく屈替えされます。録音の素晴らしさも特筆に値します。演奏時間が旧盤より3分ほど長くなりCD1枚では収まらず2枚となりましたが、交響曲第4番の新録音が収められているのは嬉しいです。

組曲CD

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ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1960年録音/DECCA盤) 
組曲での録音盤は数多く有るのでしょうが、僕が好むのは、巨人クナッパーツブッシュの演奏です。ここには、クナ得意のブルックナーやワーグナーの演奏に通じるスケールの大きさを感じます。全体のテンポは緩やかで少しもせせこましさを感じない大人の余裕が有ります。ウイーン・フィルもこの余裕を心から楽しんでいるようで、元々オーケストラの持つチャーミングな音色も演奏の魅力を倍増させています。白眉は「花のワルツ」で、スケール巨大なワルツが、中間部で短調に転じると、翳りの濃さが極まります。組曲版で全曲にも劣らぬ聴き応えを感じさせる唯一の演奏です。なお、僕のCDは旧盤ですので、現在はカップリング曲目が変わっていると思います。

DVD

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ヴィクトール・フェドートフ指揮キーロフ・バレエ(マリインスキー劇場)(1993年収録/フィリップス盤) 
ゲルギエフが芸術監督として君臨するサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場は古くはロシアの宮廷劇場として設立されて、今もバレエ・ファンに絶大な人気が有りますが、演出は伝統的な保守路線を維持していて、モスクワの革新的なボリショイ劇場とは性格を異にします。それでも最近は少しづつ実験的な舞台演出も試みられていうようです。けれどもオジサンのようなバレエ・ファンは、やはり伝統的な舞台が好きなのですよね。これはオペラの舞台についても言えることなのですが。
そんな保守的なオジサンが安心して楽しめる「くるみ割り人形」が、この1993年に収録された公演です。正に子供の絵本から飛び出したような舞台装置と衣装と演出です。やはり童話の世界は、理屈無しに子供が喜ぶような舞台であって欲しいです。
指揮をしているのはヴィクトール・フェドートフです。キーロフ・バレエで指揮者デビューをしてから、その生涯をこの劇場のバレエ指揮者として捧げた、ミスター・キーロフ・バレエなのですね。コンサート指揮者には真似のできない、バレエ・ダンサーたちが本当に気持ち良く踊れるような演奏をしています。

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2011年1月 8日 (土)

~ロシア音楽紀行~ チャイコフスキー「弦楽のためのセレナーデ」ハ長調op.48

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本当に寒い日が続きますね。こんな冬の夜には、♪雪のふる夜は楽しいペチカ~♪という気分になりませんか?そのペチカというのはロシアの暖炉のことです。日本ではお金持ちでなければこんな暖炉は造れないでしょうけれど、暖炉にあたりながら音楽を聴いたら素敵でしょうね。その時に聴くのははもちろんロシア音楽です。ということで暖炉にあたった気分でロシア音楽を聴きましょうシリーズです。

新年の気分がすっかり抜けたとはいうものの、余り暗くなるのもいやですので、美しく楽しいチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」を聴きましょう。昨年小澤征爾さんが、がんの治療からカムバックして最初に指揮したのはこの曲でした。その演奏には並々ならぬ気迫を感じましたが、この曲は決して表面的に美しいだけでなく、チャイコフスキーの強いロシアへの想いが込められていると思います。弦楽セレナーデではドヴォルザークの作品も有名で僕は大好きですが、どちらも負けず劣らず素晴らしい名曲だと思います。ドヴォルザークは5楽章構成でしたが、チャイコフスキーのほうは4楽章構成です。

第1楽章「ソナチネ形式の小品」 導入部の重圧で哀愁漂う弦楽合奏が非常に印象的ですが、主部に入ってからの軽快な動きも非常に楽しいです。

第2楽章「ワルツ」 バレエの得意なチャイコフスキーは美しいワルツを幾つも書いていますが、その中でも特に傑作だと思います。美しく軽快ですが、どこかメランコリックな味わいがたまらない魅力です。

第3楽章「エレジー」 美しいロシア風の悲歌で全体に憂愁が漂いますが、暗くなり過ぎることが無いのでとても楽しめます。

第4楽章「ロシアの主題のフィナーレ」 ロシア民謡から主題が取られています。躍動感の中に大きく歌う部分がとても心地よいです。最後に1楽章の導入部分が再現されて感動的に終わります。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

Tchaikovsky_strings_serenade_mravi エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1949年録音/メロディア盤) 古いモノラル録音ですので、音質に期待はできません。けれどもムラヴィンスキーらしい速めのテンポで彫の深い演奏はやはり存在感が有ります。ムード的に陥る部分が無く、全ての音符が真剣勝負といった風情です。もちろん無味乾燥ということでは無く、味わいに満ち溢れてています。軽く流される音が無いので非常に聴きごたえが有ります。

Tchaikovsky_strings_serenade_stoko レオポルド・ストコフスキー指揮ロンドン響(1974年録音/DECCA盤) 19世紀生まれのストコフスキーはポーランド系ですが、ロンドン生まれのアメリカ育ちです。戦前から積極的にレコーディングに取り組んでいたのと映画「オーケストラの少女」にも登場しましたので大衆にとても人気が有りました。大曲も多く演奏しましたが、ポピュラー指揮者というイメージが強くて気の毒です。この演奏は90歳を超えての録音ですが、生命力に溢れてロマンティックに歌わせた楽しい演奏です。

Sve2live エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立管(1992年録音/CANYON盤) CANYONの優秀な録音のせいも有るのでしょうが、弦楽の響きがため息が出るほどに美しいです。ロシア国立管の弦がこれほど優秀とは思いませんでした。スヴェトラーノフのテンポはゆったりとしていて非常に重圧です。決して重苦しいということは有りませんが、まるでロシアの大地を想わせるかのようです。ワルツも楽しさの中に哀愁が一杯に感じられますし、エレジーでの歌いまわしも実に自然でロシアの空気感に惹きつけられます。フィナーレも同様でロシアの味わいに満ちています。

ということで、ファーストチョイスとしては当然、スヴェトラーノフ盤になるのですが、ムラヴィンスキー盤は聴いているうちに音質を忘れて演奏に惹きこまれます。ステレオ録音が残されていたら、どんなに良かったでしょう。

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