ワーグナー(管弦楽曲)

2012年1月 1日 (日)

~迎春2012~ ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲

Sun_rise_new_year

明けましておめでとうございます。

昨年は日本にとっても世界にとっても大変な一年でしたが、個人的には転居もして新生活のスタートとなった年でした。今こうして新たに迎える年は、全ての人にとって良い年となるようにと祈るばかりです。

この一年が良い年になることを願うためにも、聴き初めにはやはり明るい曲を選びたいと思います。そこで、ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から第一幕への前奏曲を聴こうかと思います。ワーグナーのオペラは素晴らしいのですが、自分にとっては家で聴くには少々長過ぎます。そこで前奏曲など一部を抜き出して聴くと言う方法も有りますが、最近はそれも余りしません。よほど気が向いた時だけです。この作品も全曲は非常に長く感じられますが、前奏曲は10分前後の間に、勇壮で輝くばかりの喜びの気分が込められているので、気分転換にはうってつけです。

大学時代のことですが、母校が毎年入学式を日本武道館で行なうので、所属をしていたオーケストラは、この曲と校歌をそこで演奏をするのが役割でした。本当に祝典にピッタリの曲です。

さあ、2012年の第一幕への前奏曲ということで、家にある演奏を順に聴いてみることにします。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1949年録音/audite盤) ベルリンのティタニア・パラストでのライブです。これまでグラモフォンから出ていましたが、新しいRIASボックス盤のほうが音質は向上しています。フルトヴェングラーのワーグナーはテンポが極端に揺れるので、造形やスケール感を損なう結果となって基本的に好みません(「トリスタン」のような例外は有りますが)。響きも濁っていて透明感が無いと思います。

Wagner_toscaniniアルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1954年録音/Music&Arts盤) カーネギー・ホールで行なわれたワーグナー管弦楽曲集の実演ですが、れっきとしたステレオ録音です。残響の無いデッドな録音ですが、音質的には良好です。演奏は、さすがにトスカニーニ最晩年のために統率力を失いかけている印象ですが、ワーグナーとしてはむしろ凝縮し過ぎずに聴き易いです。テンポはやや速めです。演奏記録としての価値は非常に有ると思います。

Cci00036b カール・シューリヒト指揮バイエルン放送響(1961年録音/Scribendum盤) 以前DENONからも出ていましたが、Scribendumボックス盤で聴いています。元々はコンサートホール・レーベルの録音ですが、リマスターの音質は明瞭です。やや速めのシューリヒト・スタイルですが、決して軽過ぎることは無く、ファンファーレ部分には充分な重みが有ります。中間部の歌い方も情熱的です。フルトヴェングラー、トスカニーニよりも僕は好みます。

Wagner_knaハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィル(1963年録音/ウエストミンスター盤) ファンには有名なウエストミンスター録音です。クナの響きは凝縮せずに、膨らみを持って広がってゆく印象なので、ワーグナーやブルックナーに向いています。逆にベートーヴェンやブラームスでは締まりが無くなる欠点があります。ここでは、クナのゆったりとしたテンポで、当時のミュンヘン・フィルが何とも素朴で人間的な肌触りの音を聞かせてくれます。

Mister_karajanヘルベルト・フォン・カラヤン指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1970年録音/EMI盤) これはEMIと東独の共同制作の全曲盤の演奏ですが、最大の魅力はオーケストラの音です。都会的で無く、古風な響きは、この曲の舞台の中世ドイツを想像させるに最適だからです。カラヤンも中庸の良いテンポで、オケを必要以上に鳴らすこともなく理想的です。音質的には昔のアナログ盤がもちろんベストですが、CDの場合にはドイツ旧盤がお薦めです。リマスター盤は音がハイ上がりで硬いからです。

756ピエール・ブーレーズ指揮ニューヨーク・フィル1972年録音/SONY盤) 昔、アナログ盤で愛聴した演奏ですが、現在聴いても非常に素晴らしいです。遅いテンポでスケール巨大でありながら、推進力が有ります。フォルテの音も固過ぎず、ギュッとした集中力が有るのが見事です。後半の様々なパートが次々とからみ合う部分も実に素晴らしく、思わず手に汗を握るほどです。ニューヨークPOの音は都会的ですが、抵抗が有るほどではありません。

Cci00014b_2 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) 日本ツアーのNHKホールでのライブです。この時には何公演かのアンコールで演奏していますが、大きな違いはありません。テンポは中庸です。ベームのワーグナーはオーケストラの音が凝縮するために幾らか窮屈な印象は有ります。けれどもそれが、逆に良さでもあるのです。ここでもウイーン・フィルが実に厳しい張りのある音で熱演をしています。NHKの録音は低域まで充実した優秀さです。

Wagner_regnerハインツ・レーグナー指揮ベルリン放送響(1977年録音/シャルプラッテン盤) レーグナーもブーレーズ以上に遅いテンポで悠然と進めますが、もたれた感じはしません。録音の残響が深いこともあり、楽器のハーモニーが極めて美しく、音そのものに身が浸るという印象です。その割にはティンパニの強打もよく捉えられていて迫力が有ります。同じディスクの「ジークフリート牧歌」と並ぶ名演だと思います。

Wagner_cheri セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1993年録音/EMI盤) ミュンヘンでの管弦楽曲集のライブです。導入部は遅くスケールの大きいテンポでとても良いのですが、ファンファーレが余りに遅過ぎて、もたれてしまいます。この人の晩年のブルックナーのように、少々息苦しさを覚えます。それでも終結部の巨大なスケール感は素晴らしいです。オーケストラの音は透明感が有って美しく、さすがにチェリビダッケです。

以上の中で、特に好きな演奏はと言うと、演奏そのものはブーレーズ盤、オケの響きではカラヤン/ドレスデン盤というところです。シューリヒトやクナ、それにレーグナーも中々に捨てがたいですが。

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2011年5月 7日 (土)

~名曲シリーズ~ ワーグナー「ジークフリート牧歌」

モーツァルトのピアノ協奏曲特集を始める前に、もう一曲だけ名曲シリーズと行きます。

リヒャルト・ワーグナーというと、どうしても巨大なスケールの英雄的な音楽というイメージが強いのですが、小編成の管弦楽用の「ジークフリート牧歌」という一品が有ります。この曲は、本当に心に染み入るような優しさと愛らしさに溢れた佳曲です。僕にとっては、夜更けに一人静かに聴きたくなる曲の最右翼です。

Wagner_siegfried

ワーグナーは長年不倫関係にあったリストの娘のコジマと、ようやく正式に結婚が出来た年のクリスマスに(12月25日がコジマの誕生日でした)彼女への贈り物として、この曲を書きました。それはまた、自分の子供を産んでくれたコジマに、ねぎらいと感謝を示す意味も有りました。ワーグナーがこの曲をコジマへ初めて聴かせた場所は、当時二人で暮らしていたスイスのルツェルンの邸宅でしたが、その時の様子はおよそ次のようなものだったそうです。

クリスマスの早朝、ワーグナーの弟子のハンス・リヒターがチューリッヒのオーケストラから選んだ17人の腕利き奏者達が家に到着すると、こっそりと台所で楽器の音合わせを行いました。それから、彼らはコジマの寝室の外の回り階段に譜面台を並べました。ワーグナー自身は、指揮をする為に階段の最も上に立ち、演奏者達はその下の階段に順番に並びました。いよいよ演奏が始まると、それを知らされていなかったコジマは大変驚いて感激しました。演奏の出来映えも実に見事だったそうで、その日のうちに数回も繰り返し演奏されました。

この曲は後から、楽劇「ジークフリート」の中に転用されましたが、それは本当に美しく神秘的な場面の音楽となっています。ですが、原曲の「ジークフリート牧歌」は、曲の生まれた背景から、一管編成の規模で書かれています。ですが実際に演奏される際には、編成を大きくすることがほとんどです。

この名曲は、ワーグナーを得意とする指揮者達が精一杯の愛情を込めて演奏していますので、僕の愛聴CDをご紹介します。

Pocl4304_l ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1955年録音/DECCA盤) 「リング」を指揮すれば、あれほどまでに豪快な演奏になるクナですが、この曲の場合はいじらしいほどの優しさに溢れた演奏をします。50年代のウイーン・フィルの懐かしく甘く柔らかい響きも素晴らしいです。晩年の再録音と比べると、クナにしてはテンポも比較的速めです。モノラル録音で鮮度が落ちていますが、一応は平均レベルです。

Wacci00003 カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1955年録音/ヘンスラー盤) クナと同じ年のライブ録音です。当然モノラルですが、中々に良好と言えます。いかにもシューリヒトらしく、速いテンポであっさりと進みますが、一見そっけないようでいて、良く耳を傾ければ深い愛情に満ち溢れているのが分かります。ニュアンスに富んだ、奥の深い味わいは格別です。

1197070962 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィル(1962年録音/ウエストミンスター盤) 同じウエストミンスターにはブルックナーの8番という超弩級の名盤が有りましたが、ワーグナーの管弦楽集がステレオ録音で聴くことが出来るのもこたえられません。デッカ盤に比べると、随分と甘さが抜けて素朴な味わいです。ともすればメカニカルで無機的に感じる現代の演奏とは全く異なる、非常に人間的な肌触りのする演奏です。

Klempe77d オットー・クレンペラー指揮ウイーン・フィル(1968年録音/テスタメント盤) これはウイーン芸術週間のライブ演奏です。この曲の演奏はほとんど全て編成を大きめにしてありますが、クレンペラー盤はオリジナルの最小編成です。その為に、独奏で弾かれる第一ヴァイオリンのいじらしいほどの表現が魅力倍増となって聞こえます。コジマが感動したのは、きっとこういう音だったのだと納得させられてしまいます。この演奏を聴かずして、この曲は語れません。

Wagner_regner ハインツ・レーグナー指揮ベルリン放送響(1978年録音/シャルプラッテン盤) かつてのレーグナーの代表的な名演奏です。相当に遅いテンポで、じっくりと進みますが、決してもたれることが有りません。楽器のハーモニーの美しさも、特筆ものです。美音と落ち着いた雰囲気に、時を忘れていつまでも浸っていたくなるような素晴らしい演奏です。録音も優秀です。

Wagner_cheri セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1993年録音/EMI盤) レーグナーを更に上回る遅いテンポです。ブルックナーなどでは、この遅さにもたれてしまい、息苦しさを感じることが多いですが、この演奏は深い音楽の雰囲気にどっぷりと浸らせてくれます。ライブ演奏ですが、さすがにチェリ/ミュンヘンだけあって、実に美しい音と出来栄えです。

というわけで、クレンペラー/ウイーン・フィル盤こそが、この曲の本来の姿を伝える最高の演奏だと思いますが、それ以外ではクナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル盤、レーグナー盤、チェリビダッケ盤あたりも、曲の素晴らしさから、やはり充分に満足できる名演奏だと思います。

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