ヨハン・シュトラウス

2022年1月13日 (木)

シュトラウス・ファミリー ニューイヤー・コンサート 名盤/愛聴盤 

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もう松の内どころか成人式も終わり、いまさらニューイヤー・コンサートでも無いですが、毎年元日恒例ウィーンのニューイヤー・コンサートは日本では夜のゴールデンタイムに現地からの衛星生中継を観られるのが大変有難いですね。

私も毎年観ています。ただし新年の晩酌が回ってしまい、ワルツの心地好い調べと共に途中で寝込んでしまうのが高齢です。あ、”恒例”でした(汗)。しばらく寝ていて最後のラデツキー行進曲で眼が覚めるのも恒例です。

さて、そのニューイヤーコンサートのライブCDが短期間であっという間にリリースされるのも恒例となりました。凄いですね~!
もっとも私はそのCDを購入することはほとんど有りません。やはり、リアルタイムのライブ感が楽しいので(寝てるくせに!誰も寝てはならぬ!)、後から聴き直し(観直し)たいとはそれほど思わないのです。

でも、シュトラウス・ファミリーのワルツ、ポルカは好きですし、それらのCDは幾つか愛聴しています。ちょっとご紹介してみます。

Js416w1h931ml_ac_「シュトラウス・ファミリー・コンサート」 クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィル(1951~53年録音/DECCA盤) 戦前に始まったウィーンのニューイヤーコンサートを最初に指揮したのはクレメンス・クラウスでした。これはDECCAへのセッション録音ですが、アナログレコード3枚分が、CDだと2枚に収められています。演奏は古き良きウィーンそのものと言える、極めて味わい深いもので、聴いていて耳がとろけてしまいそうです。クラウスが凄いのか、それともこの時代のウィーン・フィルが凄いのか、あるいは両方か、まぁ間違いなく両者の魅力なのでしょう。モノラル録音ですが、DECCAの優秀な録音はその魅力を味わうのに何の支障もありません。なお、実際のニューイヤーコンサートを指揮した最後の年である1954年のライブ録音もオーパス蔵からリリースされていますが、放送音源であることからアナウンサーの実況中継や賑やかな聴衆の手拍子がかなり入っていて、個人的には煩わしいです。しかし、気にしないよという方には楽しめるのではないでしょうか。

Js172「シュトラウス・コンサート」 ヨーゼフ・クリップス指揮ウィーン・フィル、ヒルデ・ギューデン(S)(1956-57年録音/DECCA盤) クラウスと同じ生粋のウィーン子であるクリップスがDECCAに残したセッション録音盤です。曲数は少ないですが、「春の声」「青きドナウ」「皇帝ワルツ」など名曲が入っています。なにせ’50年代のウィーン・フィルの美しい音をステレオ録音で楽しめるのは嬉しいです。さすがにクラウスの深い味わいには及びませんが、この数年後にカラヤンがDECCAに残したセッション録音よりはずっとウィーンの懐かしい味が感じられます。余り目立ちませんが、忘れられてしまいたくない素晴らしいディスクです。ウィーン娘のギューデンは「オーストリアの村つばめ」、「春の声」で歌っていて、そのウィーン訛りの歌声にはしびれてしまいます。

Js813xgn1x7l_ac_sl1500_「ウィーンの休日」 ハンス・クナッパ―ツブッシュ指揮ウィーン・フィル(1957年録音/DECCA盤) ワーグナーとブルックナーの演奏にかけては比類無い大指揮者のクナですが、このウインナワルツ集と「くるみ割り人形」などを収めたポピュラーコンサートの2枚もまた格別に楽しい名盤です。どの曲も通常の指揮者のテンポと比べれば随分と遅く、一聴するともたついている印象を受けるかもしれませんが、このせせこましさの微塵も感じさせない浮世離れしたゆったり感こそが、クナでしか味わえない魅力です。そして当時のウィーン・フィルの甘く柔らかい音を聴くことが出来ます。

Js741「ヨハン・シュトラウス祭コンサート」 ウイリー・ボスコフスキー指揮ウィーン・フィル(1975年録音/Salzburger Festspiele盤) これはザルツブルク音楽祭でヨハン・シュトラウスⅡ世の150年目の誕生日に行われた演奏会のライヴ録音です。「ラデツキー行進曲」のカットが惜しまれますが、「ジプシー男爵」序曲、「皇帝ワルツ」「ウイーンの森の物語」「美しく青きドナウ」など有名曲が多く入っているのが嬉しいです。演奏もまだまだ古き良きウィーンを感じさせる味わいの深さが有ります。オーストリア放送協会による録音ですが、自然で優れていて同時期のDECCAによるセッション録音と比べても遜色有りません。ライブならではの楽しさはこちらが数段上ですので、とても貴重なディスクだと言えます。

Js61god9elyal_ac_「ニューイヤーズデイ・コンサート・イン・ウィーン」 ウイリー・ボスコフスキー指揮ウイーン・フィル(1979年録音/DECCA盤) ボスコフスキーがクラウスから引き継いで最初にウィーンのニューイヤーコンサートを指揮をしたのは1955年ですが、それから四半世紀近くも指揮をしました。その最後となった1979年のライブ録音がCD化されています。そういう意味では貴重な記録ですが、演奏は正直やや重たるく感じられないことも無く、楽しさでは’75年のザルツブルク音楽祭ライブの方が上です。プログラムもポルカが多く取り上げられていて、有名なワルツが少な目なのは、聴き手にとっては好悪が分かれると思います。所有するのは写真の2枚セットですが、1枚もので再リリースされていて1曲だけ少ないようですが大差は有りません。

Js71fmif7kell_ac_sl1417_ 「ニューイヤー・コンサート1980-1983」 ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィル(1980-83年録音/グラモフォン盤) ニューイヤーコンサートでボスコフスキーの後任となったのは何とアメリカ人のマゼールでした。最もマゼールは’82年にウィーン国立歌劇場の総監督に就任します。それだけウィーンでは評価をされていたのでしょう。’80年から’86年まで7年間連続してニューイヤーの指揮台に立ち、その後も何度も指揮をしていますが、これは最初の4年間の録音から有名曲ばかりを集めて編集されたCDです。ワルツは幾らかカッチリとし過ぎている印象も受けますが、ポルカやマーチの生き生きした演奏はとても楽しいです。

Js619abbmvywl_ac_「ニューイヤー・コンサート・イン・ウィーン」 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル、キャスリーン・バトル(S)(1987年録音/グラモフォン盤) あの帝王カラヤンが指揮したニューイヤー・コンサートだなんて今では夢の様な話です。ディスクは1枚に収められていますが、「こうもり」序曲、「青きドナウ」「春の声」「皇帝ワルツ」と有名どころは抑えられているので曲目には大きな不満は有りません。カラヤンというだけで聴きものには違いないのですが、演奏としてはいかにも”帝王風”の堂々とした風格を感じる反面、余りにリズムが重過ぎに感じられます。ウインナ・ワルツのあの浮き浮きと心が弾むような楽しさには正直乏しいと言わざるを得ません。救いはバトルの歌う「春の声」で、上手いこと上手いこと。デリカシーに溢れた美しい歌声にしばし言葉を失います。

Js81mxxi8icil_ac_sl1500_「ニューイヤー・コンサート1989」 カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィル(1989年録音/SONY盤) カラヤンが指揮した2年後にはクライバーが指揮台に上がるなんて、なんとまぁ夢の様な時代だったのでしょう!クライバーは’89年の後に’92年にも指揮をしていて、どちらもCD化されています。どちらか言えば、’89年の方が一般的に知られた曲目が多いようです。演奏はもちろんクライバーらしい活力に満ち溢れた素晴らしさです。細部ではニューイヤー・コンサートには珍しいぐらいクライバーの強引さを感じる表現も見受けられますが、そこがこの人の魅力ですので悪いわけではありません。ただし団員達がどう感じていたかは分かりませんけれども。とにかくウィーン・フィルをここまでドライブして引き摺りまわせる指揮者が果たしてこれから出て来るものでしょうか?

Js30338「ニューイヤー・コンサート1992」 カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィル(1992年録音/SONY盤) クライバーの2度目のニューイヤーになったせいか、’89年と比べると知名度において劣る曲目が多いように思います。ところがこの人が指揮をすると、どんな曲目でも韋駄天のようなスピード感と生命力に溢れる演奏となり、聴き手に息つく暇を与えません。完全にカルロス・クライバーのニューイヤー・コンサート化してしまいます。「雷鳴と電光」など典型的です。ただ、その代償としてワルツなどではのんびりとした優雅さが幾らか損なわれている気がしなくも有りません。とにかく凄いですね。こんな指揮者はそうそう居ません。’89年のディスクと’92年のディスクは当時もちろん別々にリリースされましたが、今では両方合わせて3枚CDセットでも出ていますので、それを求めるのも良い方法です。

Js518rfei0vrl_ac_ 「ニューイヤー・コンサート2005」 ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィル(2005年録音/グラモフォン盤) マゼールはニューイヤーコンサートで’86年まで連続7回指揮をした後も、’94、’96、’99年と指揮を務めました。そして6年ぶりに指揮をして、結局これが最後と成りましたが、ボスコフスキー、クラウスに次いで3番目に多く指揮台に立ったことになります。この前の年の年末にスマトラ島沖の大津波災害が起きたことから、コンサートから募金を行ったこと、フィナーレ恒例の「ラデツキー行進曲」が演奏されなかったりと異例のニューイヤーでした。しかしマゼールはかつてよりもずっとリラックスして大らかに指揮していますし、得意のヴァイオリンも披露しています。有名曲は少ないですが、どの曲を聴いても本当に楽しくなってしまいます。

Js480「ニューイヤー・コンサート2010」 ジョルジュ・プレートル指揮ウィーン・フィル(2010年録音/DECCA盤) プレートルがニューイヤーを最初に指揮したのは2008年で、この時83歳で過去最高齢のニューイヤー指揮者となりましたが、その演奏の若々しさと洒落っ気が実に楽しく魅了されました。評判が良かったからか、その2年後に再び指揮をしたのですが、相変わらず楽しい演奏となっています。プレートルはウィーン・フィルの来日公演で代演指揮者として演奏した際に「エロイカ」を聴きましたが、非常に素晴らしかったです。音楽を知り尽くした自然体の指揮ぶりは一見して、ただの好々爺に見えますが、やはり長い経験が物をいうのでしょうね。このニューイヤーでも、得も言えぬ魅力と味わいに溢れています。とにかく毎年リリースされるニューイヤー・コンサートのCDを購入することは滅多にありませんが、プレートルだけは例外でした。もちろん2008年のCDも出ています。

どれも楽しいディスクですが、やはり別格なのはクレメンス・クラウス盤ですね。どう逆立ちしてもこれ以上の演奏は出てこないのでは無いでしょうか。あとはカルロス・クライバー盤です。89年、92年どちらも揃えたいです。

最近のニューイヤーライブ盤は、お好きな指揮者のものを購入されれば良いと思いますし、そもそも映像ディスクの方が楽しいという方も多いでしょう。

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2021年1月13日 (水)

ヨハン・シュトラウス(2世) 喜歌劇「こうもり」(Die Fledermaus) 名盤

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今年の初聴きはNHK衛星放送のニューイヤー・コンサートでしたが、それ以外にもウインナ・ワルツのCDを色々と聴いていました。それについてはまた来年。(笑)

代わりに喜歌劇「こうもり」(ドイツ語でDie Fledermaus)です。ヨハン・シュトラウス(2世)の代表オペレッタであるだけでなく、レハールの「メリー・ウイドー」と並ぶ、楽しい楽しい傑作ですね。作品の中にワルツやポルカの名曲がふんだんに盛り込まれていて、これ1曲でニューイヤー・コンサートをそのまま味わう気分になれます。

原作はベンディックスの喜劇『牢獄』に基づいてメイヤックとアレヴィが書いた喜劇『夜食』です。オペレッタの台本はそれをカール・ハフナーとリヒャルト・ジュネが手直ししました。

作品はヨハン・シュトラウスお得意の優雅で美しいワルツと楽しいポルカが全編に使われています。台本には日付の設定は特に有りませんが、ドイツ語圏の国では大晦日恒例の演目となっています。
本家のウィーンでは毎年年末年始に公演され、大晦日の国立歌劇場の「こうもり」と新年のウィーン・フィルの「ニューイヤー・コンサート」がウィーンでの恒例行事となっています。

一般的にオペレッタの楽しみというと、スコアにはほとんど書かれていない台詞が演出家の裁量で決められて、観客を笑わせるために世事などを取り上げたり、様々なアドリブが用いられます。音楽も他のウインナ・ワルツを自由に追加したり、逆に演奏しなかったりもします。ですので、本来オペレッタは「今回はどんな演出となるのだろう?」とワクワクさせられる実演が一番です。昔観たウィーン・フォルクス・オーパ―の公演は実に楽しかったです。

歌手の声域も厳密では無く、アイゼンシュタインを昔はテノールが歌うことが多かったですが、最近はバリトンで歌われることが多く、オルロフスキー侯爵はバリトンや女性歌手が歌う場合も有り、さらに地声で歌わせたりと趣向が凝らされます。看守役にはいつか二期会の公演だったか、コント55号の坂上二郎が扮していたのには笑わせられました。日本語上演で大いに楽しめるのもオペレッタならではです。

<登場人物>
アイゼンシュタイン男爵(テノールまたはバリトン)- 金持ちの銀行家
ロザリンデ(ソプラノ)- アイゼンシュタインの妻
フランク(バリトンまたはバス)- 刑務所長
オルロフスキー公爵(メゾソプラノまたはカウンターテナーやテノール)- ロシア貴族
アルフレード(テノール) - 声楽教師、ロザリンデの昔の恋人
ファルケ博士(バリトン) - アイゼンシュタインの友人、こうもり博士
アデーレ(ソプラノ) - ロザリンデの小間使い
フロッシュ(台詞) - 刑務所の看守

<あらすじ>
第1幕 アイゼンシュタイン邸
アイゼンシュタインの妻ロザリンデが嘆いている。夫が役人に暴力をふるってしまったことで8日間の禁固刑となってしまった為だ。
そんな折、昔の恋人アルフレードが、家の前で毎日セレナーデを歌ってはロザリンデに求愛をしている。夫が刑務所に入るので、その留守にロザリンデと逢引しようと企んでいる。ロザリンデもまんざらではないが、世間体を気にして躊躇している。

そこへファルケ博士がやって来てアイゼンシュタインに、「今夜、オルロフスキー公爵邸で舞踏会が開かれるので、楽しんでから刑務所に入ればいい」と勧める。妻をどうごまかすか躊躇するアイゼンシュタインをファルケは「いくらでもごまかせるさ」とそそのかす。その気になったアイゼンシュタインは、舞踏会に行くことに決めて小躍りする。

アイゼンシュタインが「礼服を出して」と言うので怪しみ気づいたロザリンデは、それなら自分も舞踏会へ行こうと決心し、小間使いのアデーレに暇を出す。アデーレも実は姉から手紙でオルロフスキー邸の舞踏会に誘われていた。

そしてアルフレードがやって来る。ロザリンデは喜び、二人で酒を飲み始める。ところが、そこへ夫を連行しに来た刑務所長フランクが現れる。男を家に引き入れたことが知られるとまずいと思ったロザリンデは、とっさにアルフレードを夫に仕立てる。困ったアルフレードもアイゼンシュタインに化けることを承知して、身代わりとなり刑務所に連れて行かれる。

第2幕 オルロフスキー公爵邸の舞踏会
オルロフスキー侯爵邸では華やかな舞踏会が開かれていた。侯爵がファルケに「何か面白いことは無いか」と言うとファルケは、「今夜は“こうもりの復讐”という楽しい余興がある」と言う。

やがて、女優に化けたアデーレや、フランスの侯爵ルナールを名乗ったアイゼンシュタイン、刑務所長らが次々にやってくる。
そこへ仮面をかぶってハンガリーの伯爵夫人に変装したロザリンデが現れる。
アイゼンシュタインは伯爵夫人が自分の妻だとは気づかずに口説き始める。ロザリンデは夫の浮気の証拠にしようと懐中時計を言葉巧みに取り上げる。人々は、仮面の女性の正体を知りたがるが、彼女はハンガリーのチャールダーシュを歌って「私はハンガリー人よ」と言う。

人々がファルケ博士に「“こうもりの話”をしてくれ」と言う。3年前ファルケとアイゼンシュタインが仮面舞踏会に出かけた帰りに、アイゼンシュタインが酔いつぶれたファルケを森に置き去りにした為に、翌日ファルケは日中、仮面舞踏会のこうもりの扮装で笑われがら帰宅する破目になり、「こうもり博士」というあだ名をつけられたのだった。

やがて舞踏会が最高潮に達するが、夜も更けると締めくくるワルツが始まり、全員が歌い踊る。

第3幕 刑務所の部屋
刑務所の中で、身代わりで捉えられているアルフレードがロザリンデへの愛の歌を歌っている。朝っぱらからブランデーで酔っ払った看守のフロッシュがくだを巻いていると、同じく酔っ払ってご機嫌なフランク所長が戻ってくる。

そこへアイゼンシュタインが出頭して来たので、所長は「既に牢にはアイゼンシュタイン氏が入っているんだが」と驚く。
更にそこへロザリンデが来たので、アイゼンシュタインは慌てて弁護士に変装する。ロザリンデは昨日の経緯を変装したアイゼンシュタインに話す。そこでアイゼンシュタインは正体を現して妻とアルフレートを責めるが、ロザリンデは舞踏会で奪い取った時計を取り出して見せ、逆に夫をやり込めてしまう。

そこにファルケとオルロフスキー公爵、その他舞踏会の客たちが現われる。
ファルケは「昨日舞踏会に誘ったのは、すべて私が仕組んだことで、3年前の“こうもりの復讐”だ。」と種明かしをする。「それでは浮気も芝居なのか」と安心するアイゼンシュタイン。アルフレードは「実際とは違うが、まあいいか」とつぶやく。
そしてロザリンデの歌う「シャンパンの歌」で幕となる。

とまあ、こんな具合です。
さて、それでは所有のCDのご紹介へ。

Sl1600 クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィル、国立歌劇場合唱団、ギューデン(S)、パツァーク(T)、リップ(S)他(1950年録音/DECCA盤) 当然ながらモノラル録音ですが、DECCAの優秀録音は鑑賞の妨げになりません。録音当時のウィーン・フィルの田舎情緒あふれる音色はいかばかりでしょう。クラウスの指揮は決して緩いばかりではなく、躍動感も充分です。しかしウインナ・ワルツ独特のリズムには、これこそが本物かと思わずにいられません。歌手達も当時ウィーンで活躍していた名歌手たちが揃い、その歌声には酔わされます。台詞は全てカットされていますが、CDで繰り返し聴く条件下では抵抗有りません。どれほど時代が変わっても普遍的な価値を持つ名演奏だと思います。

Zap2_aa015601w ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィル、国立歌劇場合唱団、ギューデン(S)、クメント(T)、ケート(S)他(1960年録音/DECCA盤) クラウス盤から10年経ち、ウィーン・フィルの音の田舎臭さは薄れたものの、柔らかく甘い音色は健在です。それにカラヤンの歯切れ良い指揮とが上手く融合して、極上の楽しさを味合わせてくれます。主要な役の歌手陣はクラウス盤からは幾らか見劣りますが、その代わりにこの録音には舞踏会の場面にガラ・パフォーマンスが挿入されていて、当時の世界的な歌手(テヴァルディ、モナコ、ニルソン、ビョルリンク、ベルガンサ他)が次々と登場します。ニルソンが歌う「踊り明かそう(マイ・フェアレディ)」など他のどこで聴けるでしょう!プロデューサー、カルショーが残した「ニーベルンクの指輪」全曲にある意味で匹敵する、現在では到底実現し得ない録音遺産です。

713puim9tpl_ac_sl1500__20210113153201 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン国立歌劇場、ギューデン(S)、ヴェヒター(T)、シュトライヒ(S)他(1960年録音/RCA盤) 上述のDECCA録音と同じ年の大晦日にウイーンで公演されたライブ録音です。歌手は何人か入れ替っていますが、カラヤンの人選ですのでDECCAと同等以上と言えます。ライブですのでノリの良さはこちらが当然上です。アンサンブルのずれは随所に有りますが、気にするだけ野暮というものです。舞踏会のガラパフォーマンスもさすがにDECCA盤には劣りますが、ステファノの「オーソレミオ」など豪華です。実演ならではのセリフが長いのはドイツ語の分かる人なら良いですが、そうでないと長ったらしく感じるかもしれません。モノラル録音ですが音質は明瞭です。

Img_1009 ウィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン響、国立歌劇場合唱団、ローテンベルガー(S)、ゲッダ(T)、ホルム(S)他(1971年録音/EMI盤) ウィーン・フィルの名コンサートマスターだったボスコフスキーはクラウスからニューイヤーコンサートを引き継ぎましたが、この録音ではウィーン・シンフォニカ―が使われました。クラウスに比べれば遥にスマートな演奏ですが、カラヤンよりもゆったりとしたテンポでウィーンのおおらかな雰囲気が漂います。歌手陣も名歌手が揃い、味わいが深いです。録音も良好ですし、名盤の一つに数えたいと思いますが、その反面、もしもこれがウィーン・フィルだったらと思うと幾らか残念な気もします。

912satdbol_ac_sl1500_ カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管、国立歌劇場合唱団、ヴァラディ(S)、プライ(Br)、ポップ(S)他(1975年録音/グラモフォン盤) もちろん有名な名盤ですし(と認めた上で)颯爽としたテンポで躍動感に溢れた「こうもり」は当時実に新鮮で驚きでした。序曲の中間部のほの暗い情緒や、挿入された「雷鳴と電光」の迫力には天才を感じたものです。旋律の歌いまわしの上手さも同様です。ただしそれはあくまでクライバーの「こうもり」であって、ウイーンの伝統的なそれではありません。そういった違和感は拭えません。歌手陣は平均的ですが、侯爵にロシア民謡歌手のイヴァン・レブロフを起用したのは、彼の妙な歌唱のおかげでシャンパンの歌が台無しに(自分にはそう聞こえる)なりました。これはクライバーのファンの為の「名盤」だと思います。

41gt1qhrn2l_ac_ アンドレ・プレヴィン指揮ウィーン・フィル、国立歌劇場合唱団、カナワ(S)、ブレンデル(Br)、グルべローヴァ(S)他(1990年録音/フィリップス盤) 録音がだいぶ後のものとなり、この中では録音が最も優れます。プレヴィンはウィーン・フィルの美しい音を生かしますし、クライバー盤よりはずっと伝統的なウインナ・オペレッタを楽しめます。ただし、ここにはクラウス、ボスコフスキー時代のおおらかな雰囲気とは別のものが有ります。その原因は歌手陣のオペラ調のドラマティックな歌い方に有るようです。オペレッタにはもう少し軽みのある歌唱が相応しいように思います。当然好みの問題なので、逆にこれで丁度良いと感じる方もおられるでしょうし、まずは実際にお聴きになられるしかないと思います。

ということで所有盤では、演奏に関してはクレメンス・クラウス盤を最も好みながらも、ガラ・パフォーマンスのボーナスポイントが絶大なカラヤンのDECCA盤が演奏、録音を含めた総合点でトップです。この両盤に続くのはカラヤンのライブ盤とボスコフスキー盤を上げたいです。

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