ワーグナー(歌劇)

2022年10月22日 (土)

ワーグナー 歌劇「ローエングリン」全曲 名盤 ~白鳥の騎士~

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歌劇「ローエングリン」(独: Lohengrin)は、ワーグナーの番目のオペラです。これ以降の作品は「楽劇」となりますので、「歌劇」とした最後の作品です。 

台本はワーグナー自身の作ですが、ローエングリンの伝説に基づき、中世のアントウェルペン(アントワープ、ベルギー)が舞台です。ローエングリンはアーサー王伝説に登場する騎士で、円卓の騎士であるパルジファルの息子であり「白鳥の騎士」と呼ばれます。 

上の写真は、ドイツ・ロマンティック街道で有名なノイシュバンシュタイン城ですが、この城を立てたバイエルン王のルードヴィヒ2世は、宮廷楽士にオペラのさわりを演奏させ、自分はローエングリンに扮装して船遊びをしたほどのワーグナー音楽の心酔者でした。このお城を「タンホイザー」や「ローエングリン」に登場する王や騎士たちが活躍した古き良き時代を懐古してデザインさせ、膨大な費用を投じて建てました。このお城は、その美しさから「白鳥城」とも呼ばれます。 

ワーグナーの自伝「わが生涯」によれば、ワーグナーはパリ滞在時代に、ヴィルヘルム・ヴォルフが編纂した「オランダ伝説集」の中に含まれるコンラート・フォン・ヴュルツブルクによる「白鳥の騎士」を読んで興味を持ち、その後にオペラの構想を固めたとのことです。 

「タンホイザー」のドレスデン初演直後の1845年に台本が完成。翌1846年の春から作曲を開始して、秋にはオーケストレーションに取り掛かります。1847年夏にはオーケストラの下書きも完成し、1848年にスコアを書き上げます。ところが1849年にドレスデンの5月革命運動に参加して失敗したことから指名手配されてしまい、やむなくリストの助けでスイスのチューリヒに亡命します。 

1850年にリストの指揮によって、ヴァイマル宮廷歌劇場で初演されますが、ワーグナーはドイツへ入ることが出来ずに初演への立ち合いを諦めます。結局、舞台を見られたのは1861年のウィーン宮廷歌劇場公演となります。 

上述した通り、この作品はワーグナーの最後の「歌劇」ですが、既に「楽劇」の要素が垣間見えています。それまでのオペラでは歌が1曲づつ独立して並んでいたのに対して、音の動きにそれぞれが性格を持つ「動機」が音楽を織り成してゆくスタイルが既に垣間見られます。

また、前作の「タンホイザー」までは劇が始まる前に序曲(オーバーチュア)が置かれていましたが、「ローエングリン」以降は前奏曲(プレリュード)が置かれるようになります。幕が上がる前に長々と、劇の始まりとは無関係の序曲が演奏される従来型のオペラに対して、もっと簡潔に劇の始まりと一体化した序奏としての音楽が用いられるようになりました。

管弦楽も最初に書かれた完全な三管編成で、これにより奥深い音色の和音が可能となりました。

このオペラの中では、何といっても「婚礼の合唱」が有名ですが、第1幕や第3幕への前奏曲もコンサートで単独に演奏される機会がとても多いです。 

<登場人物>
ローエングリン(テノール)聖杯王パルジファルの息子で聖杯騎士。

エルザ(ソプラノ)ブラバント公国の公女。

フリードリヒ・フォン・テルラムント(バリトン)ブラバント公国の貴族で後見人。実権を狙う。

オルトルート(メゾソプラノ)フリードリヒの妻で魔法使い。

ハインリヒ(バス)ドイツ国王ハインリヒ1世。

ゴットフリート(歌なし)エルザの弟。公国の世継ぎ。 

<あらすじ>
1幕 中世のアントウェルペンのスヘルデ河畔
ドイツ国王ハインリヒが、ハンガリー討伐の兵を募るためにアントウェルペンにやってくる。この地を治めるブラバント公国では世継ぎのゴットフリートが行方不明になっているが、後見人のテルラムントは、姉のエルザが弟を殺したとして国王に訴える。
エルザは神明裁判(フリードリヒとの決闘により審判が下される)にかけられることになるが、その決闘には、自分が夢で見た高貴な騎士が無実を証明するために戦ってくれると語る。
王の伝令が騎士を呼び出すと、河上から一羽の白鳥が引く小舟に乗った騎士が現れる。
騎士はエルザに、自分を戦士と認めるか、そして夫とするのなら、決して自分の名と素性を尋ねてはならない、と言い渡す。エルザは騎士に全てを委ねると誓う。決闘となり騎士はテルラムントを討ち果たすが、命だけは助ける。 

2
夜のアントウェルペン城
城庭で、テルラムントと妻オルトルートが座る。オルトルートの正体は魔女であった。オルトルートは、決闘に負けたのは騎士が魔法を使ったためで、騎士は名前と素性を言えと迫られるか、あるいは体の一部でも切り取れば魔法が解けると言う。
やがてバルコニーにエルザが現れると、オルトルートは彼女に騎士への疑念を吹き込む。 

夜が明けると王の伝令が、テルラムントを追放し、騎士がエルザと結婚してブラバントの守護者となることを告げる。婚礼のためにエルザは礼拝堂へ向かい歩くが、突然オルトルートが行列に分け入り、エルザに詰め寄って騎士を非難する。エルザは動揺するが、騎士はテルラムントをエルザから引き離して、「自分に答えを要求できるのはエルザただ一人だ」と答える。エルザは騎士の戒めを守る事を宣言し、2人は礼拝堂へ入場する。 

3
新婚の部屋
前奏曲に続いて「婚礼の合唱」が歌われ、エルザと騎士は幸せに浸るが、夫の素性がどうしても気になるエルザは、誓いを破ってその正体を尋ねてしまう。その時、テルラムントが臣下と共に騎士に襲いかかる。騎士は剣で彼らを斬り倒すが、エルザに「もはや我らの幸せは終わった」と告げる。 

スヘルデ河畔
騎士が自らの正体を明かす。自分は聖杯王パルジファルの息子で、聖杯騎士「ローエングリン」で、エルザを冤罪から救う使命を果たしたが、自らの聖なる秘密が破られた為に聖杯城へ帰らなければならないと語る。
やがて白鳥が小舟を曳いて迎えに来る。そこへ白い鳩が小舟の上へ飛んで来るのを見たローエングリンは、白鳥をつないでいる鎖を解き、静かに祈りを捧げる。すると、白鳥は人間に姿を変えるが、その白鳥こそが、オルトルートの魔法によって行方不明にされていたゴットフリートだった。オルトルートは叫び声を上げて倒れる。
ローエングリンは悲しみを湛えながら、白い鳩が曳く小舟に乗って去って行く。悲しみにくれたエルザはゴットフリートの腕の中で息絶える。 

こうして幕が閉じられますが、若い女性が名前も素性も分からない男性に窮地を助けて貰う代償に結婚を求められたら、そりゃ相手が誰だか知りたくなりますよね。それを聞いただけで夫に捨てられて死んでしまうなんて、あんまりなお話じゃありませんか?(苦笑) 

それはともかく、所有するCDをご紹介してみます。 

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ヨーゼフ・カイルベルト(指揮)バイロイト祝祭管/合唱団(1953年録音/テルデック盤)
バイロイト音楽祭のライブですが放送録音では無く、デッカによる録音です。ゲネプロの録音からも多く用いられて編集されたようなので、ライブ特有の傷は確かに少なく一般的には好まれるかもしれません。モノラル録音ですが同時期の放送用録音よりは音質も明瞭です。と言っても55年のステレオ録音の「リング」と比べれば、ずっと籠った印象です。演奏に関しては、古き良きドイツのカぺルマイスター、カイルベルトの指揮ががっちりとした骨太さに適度のロマンティシズムを滲ませていて魅力的です。声楽陣も若きヴィントガッセンのローエングリン、ヴァルナイのオルトルートが秀逸ですし、他にもウーデのハインリヒを始め、名歌手達が揃っていて隙が有りません。ヴィルヘルム・ピッツの合唱も素晴らしいのですが、録音がスケール感をやや損ねているのは惜しまれます。第3幕への前奏曲などの管弦楽もどことなくセッション録音っぽく響きます。 

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アンドレ・クリュイタンス指揮バイロイト祝祭管/合唱団(1958年録音/WALHALL盤)
バイロイトにおけるライブです。全体にオーケストラもコーラスも引き締まったアンサンブルで完成度が高く、バイロイトで頻繁に指揮していたクリュイタンスの実力のほどが分ります。タイトルロールのシャーンドル・コーンヤは戦後のバイロイトで「最高のローエングリン」と称されたベルカント・タイプのテナーでしたが、録音が少ないのでこれは貴重です。ヴァルナイのオルトルート、エルネスト・ブランクのテルラムントは素晴らしいですが、リザネクのエルザは上手いものの声と歌が強過ぎてエルザのイメージとは異なります。これはバイエルン放送協会のマスターテープを使用したらしいですが、55年のタンホイザーのオルフェオ盤と比較しても高音を過度に強調せずに中低音域に厚みを感じる非常にバランスの良い音質です。フォルテでも音割れは皆無です。

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ロブロ・フォン・マタチッチ指揮バイロイト祝祭管(1959年録音/オルフェオ盤)
マタチッチはその昔、NHK交響楽団とのワーグナー管弦楽曲プログラムを聴いて、とても会場がNHKホールとは思えない凄い音だったのが印象的でした。オペラを得意としていたにもかかわらず、ワーグナーの全曲録音はごく僅かです。マタチッチがバイロイトの指揮台に立ったのも、この「ローエングリン」が唯一でした。いかにもマタチッチらしく、細かいところは気にせずに、豪快なまでにザックリとした切り口の演奏で大いに楽しめます。歌手陣は、タイトルロールには前の年のクリュイタンス盤と同じシャーンドル・コーンヤ、エルザにはエリーザベト・グリュンマー、その他にも当時の実力派が揃います。録音はバイエルン放送協会の正規音源とのことですが、モノラルで年代並みというところです。マスタリングで無理に高音域を強調していないので聴き易いです。なお、先にゴールデンメロドラム盤でも聴きましたが、オルフェオ盤よりも音が明らかに落ちます。

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ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイロイト祝祭管/合唱団(1962年録音/フィリップス盤)
当時まだ30代の若きサヴァリッシュはバイロイトで輝かしい活躍をしましたが、これもまた傑出した演奏です。全体的に速めのテンポで颯爽と進みますが、拙速な印象を受けることなくワーグナーの劇性を堪能させてくれます。分厚い響きの管弦楽も非常に魅力的ですが、声楽陣がまた素晴らしく、ジェス・トーマスのローエングリン、アニヤ・シリアのエルザ、ヴァルナイのオルトルート、ヴィナイのテルラムント、フランツ・クラスのハインリヒ、というキャストのどれをとっても声の質が役柄の性格にぴったりで、上手さも最高レベルです。ヴィルヘルム・ピッツによる合唱団のスケールの大きさも特質ものです。もう50年以上も前の録音にもかかわらず、フィリップスによる正規ステレオ録音は音の明瞭さ、広がり、バランスが極上で、その自然な響きは古さを全く感じさせません。時々聞こえる舞台や客席の音すら劇場の臨場感を伝えていて嬉しく感じられます。 

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ルドルフ・ケンペ指揮ウィーン・フィル/ウィーン国立歌劇場合唱団(1962-63年録音/EMI盤)
EMIにより制作されたセッション録音で、アン・デア・ウィーン劇場が使われました。ドイツの名匠ケンペがウィーン・フィルを指揮し、その弦楽と管楽の美しくデリカシーに溢れる音を生かし、戦後の名歌手達を配した完成度抜群のディスクです。合唱も素晴らしいです。半世紀前の収録といっても、同時代の放送用のライブ録音と比べれば、録音の良さは一段も二段も上なので不満なく楽しめます。歌手陣は何と言ってもジェス・トーマスのローエングリンが貴高さを湛えて万全です。エリーザベト・グリュンマーのエルザも凛々しい声質と歌唱で最高のエルザです。更にはルートヴィヒのオルトルート、フリックのハインリヒといずれも最高です。唯一気になるのがフィッシャー=ディースカウのテルラムントで、余りに賢そうな歌いぶりが、役のイメージとギャップを感じてしまいます。元々この人には役により向き不向きが生じると思っていますが、この役は余りいただけません。しかし、それさえ気にしなければこのオペラの代表盤の一つであるのは確かです。 

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カール・ベーム指揮ウィーン国立歌劇場管/合唱団(1965年録音/オルフェオ盤)
後年になり発掘された音源なので、余り話題に上がることは有りませんが、ベームがウィーン国立歌劇場で指揮した公演のライブ録音です。他にベームのローエングリン録音は残っていないと思うので貴重です。モノラル録音ですが音が明瞭で広がりが感じられるので、一瞬ステレオ録音かと思えるほどです。高中低域のバランスも良いです。ベームのワーグナーは常に巨大さよりは男性的な剛直さを基にしたドラマ性を特徴としていますが、この演奏もやはり例外ではありません。全体をパースペクティブに捉えて、じわりじわりと盛り上げてゆくあたりの手腕は本当に見事なものです。一方、ウィーン・フィルならではの抒情的な美しさにも惹かれます。ジェス・トーマスのローエングリンはやはり素晴らしく、クレア・ワトソンのエルザ、ヴァルター・ベリーのテルラムント、そしてクリスタ・ルートヴィヒのオルトルートと他の歌手陣も有力メンバーが揃っています。 

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ルドルフ・ケンペ指揮バイロイト祝祭劇場管/合唱団(1967年録音/オルフェオ盤)
バイロイトでは「リング」も指揮したケンペが、お得意の「ローエングリン」を指揮したライブです。しかも明瞭なステレオ録音なのが嬉しいです。EMIのセッション盤はウィーンPOの美感を生かした名盤でしたが、こちらは勇壮なバイロイトのオケを鳴らし切った気迫漲る名演です。第3幕への前奏曲など迫力が凄いです。歌手と管弦楽の音量バランスは実際の舞台を鑑賞するような自然なものです。タイトルロールのローエングリン役は当初シャンドール・コーンヤでしたが、不調で初日のみで降板しました。後の公演は4人のテナーで分担したそうですが、この録音日ではジェイムズ・キングがとても立派に歌っています。ヘザー・ハーパーのエルザは声にもう少し清純さが欲しいですが、まずは無難なところです。グレイス・ホフマンのオルトルート、ドナルド・マッキンタイアのフリードリヒ、カール・リッダーブッシュのハインリヒは役柄にふさわしく歌唱も秀逸です。ヴィルヘルム・ピッツによる合唱団の優秀さも相変らずです。とにかくバイロイトの迫力ある音を味わえる素晴らしいディスクです。 

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル/ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団(1975、76、81年録音/EMI盤)
ベルリンのフィルハーモニーにおけるセッション録音ですが、何故か途中に5年間もの空白が有ります。原因は‘76年のザルツブルク・イースター音楽祭で、このオペラの上演においてルネ・コロとカラヤンが激しく対立して、コロが舞台を降りるという事件が有った為です。その後に両者が和解して’81年にようやく録音が完了しました。演奏に関しては、カラヤンがベルリン・フィルを起用したオペラ録音の典型的なものです。主役は管弦楽とばかりに極めてシンフォニックな演奏です。歌い手が熱唱している間も、ひっきりなしに管弦楽が出しゃばるのは自分的にはむしろ邪魔でさえあります。弱音が極端に小さい(つまりダイナミックレンジが広い)のも常套的で好みません。とはいえ、美しいと言えば美しく、その壮麗さには圧倒されもします。カラヤン・ファンであれば大満足というところでしょう。歌手についてはコロのローエングリンは甘さが魅力的、トモワ=シントウのエルザの美しく真摯な歌声にも惹かれます。その他の配役も実力者がそつなく揃えられています。 

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サー・ゲオルグ・ショルティ指揮ウィーン・フィル/ウィーン国立歌劇場合唱団(1985-86年録音/DECCA盤)
多くのワーグナーオペラを録音したショルティですが、これがワーグナーの最後の録音でした。同時にゾフィエンザールで行われた最後のセッション録音となりました。従ってデッカの優秀録音がとらえたウィーン・フィルの美音を思う存分に味わえます。弦楽や木管の繊細な音はもちろん、金管も壮麗でありながら騒々しさは少しもありません。ショルティにも、かつての演奏と比べると余裕のようなものを感じます。ただ、第1幕前奏曲や婚礼の合唱は、極端な弱音で始まるので途中まで聴き取り難いです。歌手ではローエングリンを歌うプラシド・ドミンゴは、しばしばドイツ語発音に難が有ると評されますが、この作品ではそれほど気になりません。コーンヤ以来のベルカントの美声もいいじゃないですか。ノーマンのエルザは美しい声を駆使して抜群に上手いのですが、清純な乙女と言うにはやや違和感が残ります。エヴァ・ランドヴァーのオルトルート、ジークムント・ニムスゲルンのテルラムント、ハンス・ゾーティンのハインリッヒは無難なところです。DFディースカウが軍令使とは驚かされますが、例によって妙に賢過ぎるように聞こえます。合唱は録音の良さから底力が凄く感じられて魅力的です。

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クラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィル/ウィーン国立歌劇場合唱団)(1991年録音/グラモフォン盤)
アバドはワーグナーのオペラを「ローエングリン」しかレコーディングしていません。他にも「トリスタン」「パルシファル」を公演で指揮したようですが、この人のレパートリーからすると妥当なところかもしれません。しかしこのウィーンのムジークフェラインでのセッション録音は素晴らしいです。それまでにもミラノやウィーンのオペラハウスで度々指揮しての録音なので、このオペラに対する意気込みが分ります。ドイツ的な剛直さが皆無のアバドの指揮はスタイリッシュですが、その代わりに瑞々しくしなやかな美感のあふれるワーグナーを聴かせます。ウィーン・フィルというオーケストラも最上の組み合わせで、ここぞというところでは壮麗に響き渡りますが決して騒々しくならないのが利点です。合唱の特徴も同様です。歌手についてはジークフリート・イェルザレムのローエングリン、チェリル・ステューダーのエルザとも不満は有りません。さらにヴァルトラウト・マイアーのオルトルート、クルト・モルのハインリヒが秀逸です。録音は明瞭であり、壮大さが充分に感じられる優秀さです。 

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ダニエル・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン/ベルリン国立歌劇場合唱団)(1998年録音/テルデック盤)
ピアニストと指揮者という本格的な二刀流の点では大谷翔平にも匹敵するバレンボイムですが、交響曲や管弦楽作品よりもオペラの演奏が数段優れると思います。歴史あるベルリン歌劇場であれだけ長く音楽監督の座に座っていられるのはその証明です。特にワーグナーオペラを中核のレパートリーとしていて、この「ローエングリン」も素晴らしい出来栄えです。長い歴史の有る歌劇場の落ち着いた響きもドイツの深い森の中を連想させます。歌手陣はペーター・ザイフェルトのローエングリン、エミリー・マギーのエルザ、デボラ・ポラスキのオルトルートなど粒よりのメンバーで固められています。合唱も優れます。なお、この演奏は初稿版を用いているので、第3幕の「ローエングリンの名乗り」の後に「グラール語り」が演奏されますが、この部分はのちに削除されたために通常は演奏されません。これは初稿版による唯一の録音です。 

優れたディスクが多いのでマイフェヴァリット盤を選ぶのも迷うところですが、個人的には、やはり聖地バイロイトのライブ盤から、サヴァリッシュ盤とケンペ盤(オルフェオ)を上げます。もちろん、ウィーン・フィルによる美しいケンペ盤(EMI)、アバド盤の魅力にも抗し難さを感じます。この4つは座右の名盤です。あとはショルティ盤、バレンボイム盤も中々に捨てがたいです。

<備考>
ショルティ/ウィーン・フィル盤を追記しました。(2022.10.26.)
マタチッチ/バイロイト盤を追記しました。(2023.10.26.)

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2022年10月 1日 (土)

ワーグナー 歌劇「タンホイザー」全曲 名盤 ~タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦~

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「さまよえるオランダ人」に続くワーグナーの5作目となるオペラは「タンホイザー」です。正式には「タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦」という長いタイトルを持ちます。 

当初、ワーグナーは「ヴェーヌスベルク」というタイトルを付けましたが、知人の医師のアドヴァイスで改題します。というのも、ヴェーヌスベルクとは医学用語で「恥丘」だったのですね。確かに「ヴィーナスの丘」と言いますものね(汗)。 

「タンホイザー」は、ワーグナー作品で最もポピュラーかもしれません。”吟遊詩人”でも12世紀から13世紀のドイツでミンネジンガーと呼ばれる詩と音楽に優れた騎士を主人公とした話です。台本はワーグナー自身の作ですが、二つの中世伝説をワーグナーが繋ぎ合わせました。 

その一つは13世紀に実在した詩人騎士タンホイザーに関する伝説です。彼は性の快楽を知ろうと愛欲の女神ヴェーヌスの洞窟に1年ほど籠もりますが、悔い改めようとローマ教皇に懺悔します。しかし結局は再びヴェーヌスの洞窟に帰ってしまうという話です。 

もう一つは同じ13世紀にテューリンゲン地方の城で行われたとされる、負けた者は命を落とす(怖い!)という歌合戦に関する伝説です。歌合戦に参加したハインリヒは敗れそうになったことから、魔術師の力で勝利を得ようとしますが、それを見破られてしまい敗れるという話です。 

実は、このタンホイザーとハインリッヒは同じ人物だったとの説があり、それにワーグナーが創作のヒントを得たとも言われます。 

<版について>
「タンホイザー」の楽譜には様々な版が有るので、少し追ってみたいと思います。 

ドレスデン版
1845年にドレスデンの宮廷歌劇場(現在のゼンパー・オーパー)でワーグナーの指揮、演出で初演されますが、成功とは言えませんでした。第3幕にヴェーヌスは再び登場せず、エリーザベトの遺体を運ぶ葬列も出て来ず、それを照明や鐘の音で象徴的に表現した為に解り難く、聴衆に理解されなかったようです。
その為、ワーグナーは様々な変更を加えます。特に重要なのは、第3幕最終場にヴェーヌスが再登場するようにしたことです。それらの修正を行った楽譜は、1860年にドレスデンのミュラー社から発行され、その楽譜とその後継譜が現在「ドレスデン版」と呼ばれます。 

パリ版
その後、ワーグナーはナポレオン3世から「タンホイザー」をパリ・オペラ座で上演するように命令されます。そこで台本をフランス語に翻訳し、音楽も大幅に改訂します。第1幕の初めの場面では、序曲から切れ目無しでバッカナールと呼ばれるパリで流行りのバレエが続くようにしました。その他にも、全幕のオーケストラ部分に変更を加え、第2幕「歌合戦」の構成にも手を加えました。これがパリ版です。但し1861年に行われたパリでの初演時には、パート譜にカットや簡略化などが多く施されたので、「パリ版」とは異なるものだったそうです。 

ウィーン版
パリ版で施した音楽の改訂を生かそうと、ワーグナーはそれを再びドイツ語版に戻した上で、ミュンヘンでハンス・フォン・ビューローの指揮により演奏されます。そして1875年にはハンス・リヒター指揮によりウィーン宮廷歌劇場で演奏されます。この時には、序曲が終わって、引き続いてバッカナールが開始される形に書き変えました。他にも些細な変更は行われています。従って、「パリ版」と「ウィーン版」には違いが有ります。 

パリ版のスコアは、「タンホイザー」の改訂版としてワーグナーにより準備され、このウィーン上演よりも前にベルリンのフュルストナー社へ送られていました。「パリ版」とは、このフュルストナー社による改訂版の楽譜とその後継譜を指します。ところが出版社が発行をワーグナーの死後まで先延ばしにしたため、「パリ版」にはウィーン上演における修正が反映されていません。その為に、新全集版では、1875年のウィーン版を最終稿としています。 

もっとも、ワーグナーはウィーン版でも満足していなかったらしく、愛妻コージマの日記によれば、ワーグナーは死の前にも「私はまだ、この世に「タンホイザー」という借りを残したままだ」と語り、更に手を加える意思が有ったようです。 

このようなことから、演奏者がどの版で上演するかはまちまちで、どれかの版を単純に選択するだけでなく、部分的に混合されることも珍しくありません。 

しかし何はともあれ、この「タンホイザー」と、次の「ローエングリン」は、それまでの「歌劇」から新たな「楽劇」へと移りゆく過渡期における重要な作品ですね。 

<登場人物>
タンホイザー:ヴァルトブルク城の騎士(テノール)

ヴェーヌス:ヴェーヌスベルクに住む快楽の女神(メゾ・ソプラノ)

ヘルマン1世:テューリンゲンの領主(バス)

エリーザベト:ヘルマン1世の姪、タンホイザーの恋人(ソプラノ)

ヴォルフラム:ヴァルトブルク城の騎士でタンホイザーの親友(バリトン)他 

<あらすじ>
1幕 
ヴェーヌスベルクの洞窟

騎士タンホイザーはヴェーヌスベルクの洞窟に籠って、快楽の女神ヴェーヌスと愛を交わしている。けれども快楽に飽きてきたタンホイザーは、人間の世界へ戻りたがっている。それをヴェーヌスは「裏切者!」と怒り、タンホイザーが帰ることを許さない。しかしタンホイザーが"聖母マリア"に祈りを捧げると、ヴェーヌスの姿は消え去り、ヴェーヌスベルクの世界も無くなる。 

ヴァルトブルク城近くの谷間

タンホイザーは、美しい谷間に居る。人間の世界に戻って来られたことに感謝し、神に祈りを捧げる。
そこに領主ヘルマンの一行が通りかかり、皆は長い間姿を消していたタンホイザーを見て喜ぶ。しかし、罪の意識が深いタンホイザーは、それを直ぐに受け入れられない。しかし親友のヴォルフラムが「エリーザベトのもとに帰れ!」と叫ぶと、タンホイザーはかつての恋人を思い出し、城に戻ることを決意する。

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ヴァルトブルク城「歌の広間」

エリーザベトが、「私の胸は高まっています。」「あの人はもうここから離れません!」と、タンホイザーへの思いを歌い上げる。
そこにタンホイザーが現れる。エリーザベトが「今までどこにいたの?」と尋ねても、タンホイザーは答えを胡麻化そうとするが、二人は再会した歓びを歌い上げる。

やがて騎士や貴族たちが大行進曲で登場する。続いてヘルマンが「歌合戦」の開催を宣言し、テーマは「愛」とされる。
先ずヴォルフラムが「愛の純粋さ」を歌い上げる。タンホイザーは「官能的な愛」を訴え、ヴァルターは「徳」を、ビテロルフは「名誉」を訴える。ところがタンホイザーがヴェーヌスベルクの洞窟にいたことが分るとヘルマンは巡礼を命じる。冷静さを失ったタンホイザーは「ヴェーヌス讃歌」を歌い上げてしまう。
皆は彼を非難して「追放処分」を主張するが、エリーザベトが「タンホイザーの償いのチャンス」を懇願する。タンホイザーは後悔の念に駆られ、ヘルマンはタンホイザーに「ローマに巡礼し、償いをするように」と命じる。 

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ヴァルトブルク城近くの谷間

聖母マリア像の前で祈りを捧げているエリーザベト。彼女を密かに愛しているヴォルフラムが見守り「夕星の歌」を歌う。

やがて巡礼を終えた人々の列が通るが、タンホイザーの姿は無い。エリーザベトは「マリアよ、願いを聞いてください!」「私は死んでもかまいません!」と祈りを捧げる。 

そこに、ローマで赦しを得られなかったタンホイザーが帰って来る。タンホイザーははるばるローマへ行って、救われなかった話を歌う(「ローマ語り」)。そして、絶望してヴォルフラムにヴェーヌスベルクへの道を尋ねる。ヴォルフラムは引き留めるが、タンホイザーはやけになり、ついに「ヴェーヌス」の名を叫ぶ。すると突然明るくなり、ヴェーヌスが現れる。

ヴェーヌスの誘いにのってタンホイザーは旅立とうとするが、ヴォルフラムがそれを止め、エリーザベトの名を叫ぶと、タンホイザーは我に返る。するとヴェーヌスの姿も消えて無くなる。 

やがて、タンホイザーの為に命を捧げたエリーザベトの亡骸を運ぶ葬列が近づいて来る。タンホイザーは、その棺桶に崩れて息絶える。そこへローマからの行列が到着し、特赦が下りたことを知らせて幕が下りる。 

それでは所有するCDをご紹介したいと思います。 

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アンドレ・クリュイタンス指揮バイロイト祝祭管/合唱団(1955年録音/オルフェオ盤)
バイロイトでも活躍したクリュイタンスのライブで、基本はウィーン版での上演です。バイエルン放送協会のモノラル録音ですが、音は同じ年のクナッパーツブッシュの「オランダ人」とどっこいという印象です。歌手はかなり明瞭に録られていますが、管弦楽はリマスターの影響か高音域に強調感が有り、中低音域が薄く感じられるのは残念です。それでもバッカナールの躍動感と熱狂ぶりは素晴らしく、クリュイタンス得意の「ダフニスとクロエ」を想わせます。ヴィルヘルム・ピッツ指揮の合唱も感動的で素晴らしいです。ヴィントガッセンのタンホイザーは流石の素晴らしさで、Fディースカウのヴォルフラムもはまり役です。ブロウェンスティーンのエリーザベト、ヴィルヘルトのヴェ―ヌスも優れています。録音は古くても「タンホイザー」の魅力を一杯に味わえる名演の一つと言えます。    

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フランツ・コンヴィチュニー指揮ベルリン国立歌劇場管/合唱団(1960年録音/EMI盤)
EMI(西独エレクトローラ社)と東独エテルナの共同制作で録音されました。もちろんステレオ録音で、1950年代のライブ録音と比べれば音質は格段に優れます。ドレスデン版による演奏ですが、コンヴィチュニーの指揮は武骨で古武士のような佇まいで、それが妙に中世のドイツを感じさせてくれます。シュターツカペレ・ベルリンの響きはいかにも東独らしく暗く渋く、当時のゲヴァントハウス管のような男性的で豪快な音に唸らされます。ハンス・ホップのタンホイザー、Fディースカウのヴォルフラムは文句無しですし、グリュンマーのエリーザベト、フリックのヘルマン、シェヒのヴェ―ヌスも万全なうえに、ヴンダーリヒがヴァルターとして登場します。熱狂度においては各種のライブ盤に敵わないかもしれませんが、完成度とドイツ的な響きと味わいは傑出しています。 

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ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイロイト祝祭管/合唱団(1962年録音/フィリップス盤)
聖地バイロイトでのライブですが、フィリップスによるステレオ録音だけあって、明瞭さと臨場感のある優秀な音質なのが嬉しいです。管弦楽、合唱、歌手のバランスもベストです。サヴァリッシュは「タンホイザー」を得意としたようでかなりの舞台で指揮していますが、速いテンポでサクサクと進みながらも稚拙な印象は無く、少しも飽きさせません。その点、ベームのワーグナーと似ています。歌手では何と言っても円熟したヴィントガッセンのタンホイザーが最高です。アニア・シリアのエリーザベト、ヴェヒターのヴォルフラム、グラインドルのヘルマン、と充実した配役陣ですが、バンブリーのヴェ―ヌスもエキセントリックな雰囲気が良く出ています。ヴィルヘルム・ピッツ指揮の合唱はもちろん素晴らしいですが、行進曲ではサヴァリッシュの速いテンポに幾らかズレるのもライブらしくてご愛敬です。基本的にウィーン版により演奏されています。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン国立歌劇場管/合唱団(1963年録音/グラモフォン盤)
ワーグナーのオペラを精力的に録音したカラヤンですが、セッション録音を唯一残さなかったのが「タンホイザー」です。ですので、このウィーン国立歌劇場でのライブ録音が残っているのは貴重です。オーストリア放送協会によるモノラル録音ですが、音質が良いのも嬉しいです。バイロイト、ドレスデンのドイツ勢と比べると、いかにもウィーンらしい音の艶と流麗な美しさが有るので、このオペラの一つの特徴をより楽しむことが出来るのですが、それはまたカラヤンの特徴でもあります。パリ版で演奏しているのもカラヤンらしいです。序曲から気合がみなぎっていて、トロンボーンで奏される主題の迫力には圧倒されます。バッカナール、行進曲なども熱く燃えていて興奮を誘います。それらと甘く柔らかい弦楽とのコントラストが何とも言えない魅力です。歌手に関して、バイラーのタンホイザーとブラウエンスタインのエリーザベトは悪くは無いですが、むしろヴェヒターのヴォルフラム、フリックのヘルマン、ルートヴィヒのヴェーヌスに貫禄を感じます。合唱は録音の影響なのか、幾らか弱く感じます。アンサンブルも甘いです。 

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オトマール・スイトナー指揮バイロイト祝祭管/合唱団(1964年録音/GOLDEN Melodram盤)
スイトナーもまた「タンホイザー」を得意としていた様ですが、正規録音は残されていません。ですので、この聖地でのライブ録音は貴重です。ウィーン版により演奏されています。モノラル録音で、歌手の声がピークで音割れしていますが、音質そのものは前年のカラヤン盤と遜色の無い良質のものなのが嬉しいです。管弦楽とのバランスも良いです。スイトナーはモーツァルトでは快速テンポを取ることが多いですが、ブルックナーなど後期ロマン派では逆にゆったりとした演奏が多い気がします。このタンホイザーもそのタイプの演奏です。ですが、第2幕後半などは中々に高揚します。歌手ではタンホイザーを歌うヴィントガッセンが、やはり素晴らしいです。リザネクのエリーザベトは上手いのですが、アクが強いのと声質が役のイメージに不向きに感じます。ヴェヒターのヴォルフラムはここでも文句なしです。ヴィルヘルム・ピッツ指揮の合唱の素晴らしさも相変らずです。 

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ゲオルク・ショルティ指揮ウィーン・フィル/ウィーン国立歌劇場合唱団(1970年録音/DECCA盤)
ショルティのワーグナー・オペラの中でも「指輪」と並んで人気の高い録音です。パリ版による最初の全曲盤でした。半世紀も前の録音にもかかわらず、DECCAがウィーン・フィルの美しい音を明瞭かつバランス良く、万全の録音を施していて素晴らしいです。タンホイザーのルネ・コロは美声が売りですが、反面、特に前半では力強さに欠ける印象を受けます。むしろローマ語りの絶望感の方がハマっています。デルネシュのエリーザベトは情感が籠り魅力的です。ルートヴィヒのヴェーヌスも流石の上手さです。合唱指揮にバイロイトからヴィルヘルム・ピッツを呼んだのも大正解です。力強さと美しさが絶妙の見事な合唱が感動的です。このように文句の付けようのない素晴らしい完成度のディスクですが、ショルティの指揮も含めて、他のバイロイトのライブのような手に汗握る劇場の興奮は薄いかもしれません。しかしこのディスク抜きで「タンホイザー」を語ることは出来ません。 

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ダニエル・バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場管/合唱団(2001年録音/テルデック盤)
名門歌劇場に長く君臨するバレンボイムの録音も素晴らしいです。流石に40年前のコンヴィチュニー時代の古武士のような管弦楽の趣は薄れましたが、それでも旧西独の楽団の国際化した音色と比べれば、まだまだ古き良きドイツの暗い響きを感じます。基本はドレスデン版で、第1幕第2場のみパリ版が用いられています。歌手に関してはペーター・ザイフェルトのタンホイザーはまずまず及第点と言えますが、ヴァルトラウト・マイヤーの妖艶でいてグラマラスにならないヴェ―ヌスには役者負けした感が有ります。イーグレンのエリーザベト、ハンプソンのヴォルフラムは悪く無いですが、もう一つ魅力に欠けるようにも思います。しかし合唱も高水準ですし、やはりドイツの歴史あるオペラハウスの底力を感じます。総合点ではかなり上位に位置するであろう名盤だと思います。 

ということで、あくまでも個人の好みとお断りしたうえで第一に上げたいのは、最高のタンホイザーのヴィントガッセンの録音の中で、ライブでの傷は有りながらも生き生きした舞台の魅力をステレオ録音で味わえるサヴァリッシュ/バイロイト盤です。その他では、ショルティ/ウィーン・フィル盤は外せないでしょう。更には、コンヴィチュニーとバレンボイムという新旧ベルリン歌劇場盤に後ろ髪を引かれながらも、カラヤン/ウィーン歌劇場盤を取りたいです。やはりライブ盤に強く惹かれますね。

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2022年8月 4日 (木)

ワーグナー 歌劇「さまよえるオランダ人」全曲 名盤

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年に完成して、1843年に初演されたワーグナーの歌劇「さまよえるオランダ人」(ドイツ語: Der fliegende Holländer)は、前作の「リエンツィ」から格段に進歩を遂げて、自身のオペラを真に確立した作品だと言えます。ですので、聖地のバイロイト音楽祭でも通常「オランダ人」以降の作品をプログラムに取り上げています。 

台本は、オランダ船の船長が喜望峰の近くで嵐に遭い、神を罵ったことで神の怒りにふれ、神罰としてこの世とあの世の間をさまよい続ける幽霊船となった伝説を元にした、ハインリヒ・ハイネ作の「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」からワーグナーが着想を得て書き上げました。 

作品はワーグナーの元々の構想では全1幕形式でしたが、ドレスデンでの初演の際に、当時の舞台転換の技術的な理由で3幕にして、2幕と3幕には短い序奏が加筆されました。現在ではバイロイトを初めとして、ほとんどの歌劇場が1幕の形式で上演を行っています。個人的には、途中でトイレ休憩ぐらいは欲しいので3幕版が有難いと思うのですが。。。 

なお、楽譜には2つの稿があり、第1稿(1841年版)は序曲の終結部と終幕のフィナーレに「救済のモチーフ」の無い版、第2稿(1880年版)はそれぞれに「救済のモチーフ」の有る版です。これはやはり第2稿の方が良いです。 

1幕形式で公演されると2時間少々で終わりますし、ワーグナーのオペラ作品としては最も短いです。音楽もストーリーも解り易く(いくらか話の展開が拙速で疑問のところは有りますが)、舞台演出も劇的効果が上げ易いので、ワーグナー入門として初めて公演を観に行くには最適だと思います。もちろんCDや映像もので鑑賞するのにも向いています。その半面、鑑賞を重ねると幾らか飽きの来やすさが有るのかもしれませんが。 

<主要登場人物>
オランダ人( バリトン)
ダーラント船長(バス)
ゼンタ/ダーラント船長の娘(ソプラノ)
エリック/ゼンタの恋人(テノール)
舵手(テノール)
マリー/ゼンタの乳母(アルト) 

<あらすじ>
第1幕 ノルウェーの海岸
ダーラント船長の貿易船が嵐に遭い、帰路の途中で船を海岸に停めて嵐の収まりを待っている。乗組員は休み、当直の舵取りも疲れて眠ってしまう。すると、赤い帆の幽霊船が現れ、船の隣に停まる。 

幽霊船からオランダ人が現れ、呪われた運命を語る。オランダ人は悪魔に呪われていて、永遠に海をさまよう罰を受けている。7年に一度だけ上陸を許され、そこで"永遠の愛"を誓う女性に巡り合えば呪いが解けるのだが、これまでに何度も失敗して、未だにさまよい続けている。 

ダーラント船長が目を覚まし、不気味な船に気づく。そしてオランダ人を見つけて話しかける。オランダ人は「一夜でいいから、あなたの家を宿として貸してくれないか」と言い、さらに「あなたの娘を私の妻に欲しい」と懇願して、その対価の財宝を見せる。ダーラントはオランダ人が呪われていることを知らないので、財宝に目がくらみ、要求を受け入れてしまう。やがて嵐が収まり、2隻の船はダーラントの故郷へと向かう。 

第2幕 ダーラント家の館
村の娘たちが糸を紡ぎながら歌を歌っている。しかしゼンタは仕事が手につかず、壁に架かる「さまよえるオランダ人」の肖像画を見つめている。そして「オランダ人の伝説」を歌い、「私の力であなたを救う!」と叫ぶ。

そこにゼンタの恋人エリックが現れて、帰還したことを知らせる。エリックはゼンタの様子を嘆くが、ゼンタは聞き入れない。 

ダーラントがオランダ人を連れて、ゼンタの元に現れる。ゼンタは「壁の絵の人物」が現れたことに驚く。オランダ人とゼンタはお互いに惹かれ合い、ゼンタは「この想いがあなたに救いを差し上げます。」と歌い、二人は結婚の約束を交わす。 

第3幕 夜の港
夜、ダーラントの船と幽霊船が隣り合わせで港に停泊している。
ダーラント船の水夫たちが陽気に歌い騒ぎ、それに娘たちも加わる。やがて幽霊船に突然炎がかかり、水夫の合唱と幽霊船の合唱が張り合うが、水夫たちは徐々に圧倒されてゆき、恐ろしさのあまり逃げ出す。 

ゼンタが館から現れると、それをエリックが追って来てゼンタが幽霊船へ向かうのを引き留めようとする。そこにオランダ人が現れ、「今回もまた愛を手に入れることはできなかった」と嘆きゼンタに別れを告げる。自分は、さまよえるオランダ人であると身を明かして、船は出航する。

悲しむゼンタは、オランダ人へ愛の誠を誓って海に身を投げる。するとゼンタの犠牲により呪いが解けて、幽霊船はオランダ人と共に海に沈んでゆく。すると浄化されたオランダ人とゼンタが水面に現れ、抱き合って天に昇って行く。 

それではCD愛聴盤のご紹介です。 

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ヨーゼフ・カイルベルト指揮バイロイト祝祭管/合唱団(1955年録音/テスタメント盤)
ドイツの往年のカぺル・マイスター、カイルベルトはこの年のバイロイトではあの有名な「リング」の他に「オランダ人」も指揮しました。但し「オランダ人」はクナッパーツブッシュと半々の担当でした。その後述するクナの巨大にうねる演奏は凄いですが、カイルベルトは全体の統率を引き締めながら力強い迫力を持ち合わせた、バランスの良いものです。そこに古き良きドイツのロマンの香りが感じられるのが大きな魅力です。歌手はゼンタにヴァルナイ、オランダ人にウーデ、ダーラント船長にヴェーバー、などバイロイト常連の傑出したメンバーが名を揃えます。名コーラスマスター、ヴィルヘルム・ピッツによる合唱も素晴らしく、水夫の合唱も圧巻の迫力です。録音は「リング」と同じDECCAが行ない、年代が信じられないほどの優秀なステレオ録音です。これは後述のクナ盤に比べて大きなアドヴァンテージです。 

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ハンス・クナッパーツブッシュ指揮バイロイト祝祭管/合唱団(1955年録音/オルフェオ盤)
この年のバイロイトの「オランダ人」は元々カイルベルトが指揮する予定でしたが、そこへクナが自分も振りたいと割り込み、結局カイルベルトと半々で指揮をすることになりました。序曲から巨大にうねるようなクナの指揮は、嵐に荒れ狂う大海原をそのままに感じさせて、聴いているだけで船がひっくり返りそうです。水夫の合唱のスケールの大きいこと、糸紬の歌の味わいの深さなど随所に聴きどころが有ります。カイルベルトと比べても更に深くドイツのロマンと詩情を感じさせて、大いに惹き込まれます。ゼンタのヴァルナイ、オランダ人のウーデ、ダーラントのウェーバーなどの歌手はカイルベルト盤と共通しますが、エリックにヴィントガッセンを配したのが特徴です。DECCAの明瞭な録音のカイルベルト盤に対して、バイエルン放送協会録音のクナ盤はモノラル録音なのが、返す返すも残念です。当時としては平均以上のレベルではありますが。 

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フランツ・コンヴィチュニー指揮ベルリン国立歌劇場管/合唱団(1960年録音/Berlin Classics盤)
西側の独エレクトローラと東独エテルナの共同制作でセッション録音された演奏です。ドイツの名指揮者コンヴィチュニーは当時シュターツカペレ・ベルリンとゲヴァントハウス管という二つの音楽監督を兼任していましたが、同じ制作陣により「タンホイザー」も録音しています。管弦楽の響きが古風でまるで野武士のようですが、トゥッティでトランペットが目立つように強奏させるのは、ゲヴァントハウス管のブルックナー演奏と共通です。これはコンヴィチュニーの特徴なのでしょう。流石にセッション録音だけあり、細部まで演奏の精度が高いです。おまけにライブのような舞台の感興の高さも感じられるので聴き応えが有ります。歌手も豪華で、若きF=ディースカウのオランダ人はスマート過ぎて役柄の不気味さに欠けるのが難点ですが、歌唱力と美声は流石です。ダーラント船長のフリックは役柄通りで素晴らしいです。ゼンタのシェヒ、エリックのショックはどちらも声質が若々しく好みです。舵取りを歌うヴンダーリヒも当然聴きどころの一つです。歌劇場の合唱団は力強く見事です。全体の古き良きドイツの味わいが大きな魅力で、完成度の高さも素晴らしいです。 

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オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア/BBC合唱団(1968年録音/テスタメント盤)
有名なEMIのセッション録音の直後にロイヤル・フェスティヴァルホールで行われた演奏会形式によるライブです。全体はいかにもクレンペラーらしい悠揚迫らざるテンポで広がりのある演奏です。スケール感は有りますが、切迫感は薄く、ややまったりと感じられますが、実演の為に緊張感は失われていません。オーケストラはどうしてもドイツの楽団と比べると響きが薄く感じられます。合唱も録音の遠さの要因も有りますが、力感が足りません。歌手に関しては、当時まだ20代にして憑りつかれたような凄味の有るゼンタを演じるアニヤ・シリヤが白眉で、クレンペラーが惚れ込んだというのが理解できます。オランダ人のテオ・アダム、ダーラント船長のマルッティ・タルヴェラも万全です。エリックのジェイムズ・キングはEMI録音では契約先のデッカが出演許可を出しませんでしたが、この演奏会では許可を出しました。この布陣による実演がステレオ録音で残されたのは貴重です。音質は年代にしてはもう少し高いレベルを望みたいですし、歌声が音割れする箇所が幾らか有ります。「救済のモチーフ」は無い版で演奏されています。 

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カール・ベーム指揮バイロイト祝祭管/合唱団(1971年録音/グラモフォン盤)
言わずと知れたバイロイトにおけるライブで、ベームが舞台でどれほど燃えるかの証となる演奏記録です。序曲からすさまじい迫力に圧倒されます。煽る部分とじっくり聴かせる部分の切り替えが絶妙ですが、全体は少しも滞ることなく自然に流れてゆきます。管弦楽の統率も見事なものです。こうした技の見事さは古今の指揮者でも随一ではないでしょうか。管弦楽の迫力もさることながら、ヴィルヘルム・ピッツによる合唱も大迫力です。水夫の合唱では床を打ち鳴らす足音が派手に録られていて、我が家の床が抜けるかと思うほどですが、続く幽霊船との張り合いの迫力たるや言葉を失います。一方、糸紡ぎの合唱の美しさも白眉です。歌手陣もオランダ人のトマス・ステュアート、ダーラント船長のリッダーブッシュ、ゼンタのギネス・ジョーンズと要所はしっかりと締められています。物語のおどろおどろしさは幾らか薄いかもしれませんが、息つく間もなく聴き手を惹きつけて離さない劇的な魅力の点で、これ以上の演奏はあり得ないと思います。祝祭劇場の生の雰囲気を忠実に捉えた名録音も最高です。

というわけで、ベームのバイロイト盤が有ればこと足りますので、さまよえる必要はありません。ただし、オーケストラの古風な響きが得難いコンヴィチュニーのベルリン歌劇場盤も外せません。

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2022年7月22日 (金)

ワーグナー 歌劇「リエンツィ」 名盤

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オペラを特別熱心に聴く方では無いのですが、もちろん有名どころは一通り聴くようにしています。ワーグナーも、これまで記事にアップしたのは「トリスタン」と「パルジファル」だけでしたが、他の作品もアップしたいと何年も思っていました(汗)。

ちょうど、そのタイトル記事に所有CDを追加記述した良い機会なので、この際、順に取り上げてみることにします。 

ワーグナーの最初期のオペラ「婚礼」「恋愛禁制」に続く第三作目のオペラが「リエンツィ」で、正式には「リエンツィ、最後の護民官」のタイトルとなります。27歳の時の作品です。原作はエドワード・ブルワー=リットンの小説で、台本はワーグナー自身が書きました。 

主人公のリエンツィは、14世紀のローマに実在した政治家ですが、ワーグナーは台本を作成するのに、史実および原作を改変して、民衆の支持を得て政権を手にするものの、やがて民衆から反逆されて殺される主人公の物語としました。 

ワーグナーが帝政ロシア領リガ(現在のラトビア)で劇場指揮者をしていた1838年の夏頃に台本を完成させて、音楽もその年のうちに着手し、1839年に第2幕までを書き上げます。ところが、多額の借金を抱えていた為にリガからパリへ逃亡することを決め、作曲は一時的に中断します。そして何とかパリに落ちつくと1840年に第3幕以降を完成させます。 

ワーグナーはこのオペラはパリで初演することを希望していましたが、叶わずにドレスデンで行うことになります。1842年にドレスデンのザクセン宮廷歌劇場(現在のシュターツカペレ・ドレスデン)でカール・ゴットリープ・ライシガーの指揮により行われた初演は大成功を収めます。

これによりワーグナーはドレスデンのオペラ総監督に就任し、オペラ作曲家として認められるように成りました。

もっとも、かなり長大な作品であり、バイロイト音楽祭の演目にも入っていないことから、「さまよえるオランダ人」以降の作品と比べると知名度はかなり落ちます。作曲された1840年といえば、ヴェルディもまだ初期の作品しか書いていない時期ですが、どことなくイタリアオペラ風で、ヴェルディ作品と似ている感じがするのは面白いです。 

初演(初版)では幕間も含めると上演に6時間以上を要した為、ワーグナーは二晩に分けて上演する方法や、短縮版にして一晩で上演することを考えました。

初版では演奏だけで3時間40分ほどになるので、後年の長大な作品に較べれば短いとはいうものの冗長さもあることから、一般的には2時間半から3時間くらいにカットされた短縮版で演奏されることが多いようです。序曲だけはしばしば単独で演奏会のプログラムに乗りますが、オペラ全体のエッセンスを楽しめる傑作だと言えます。 

<主要登場人物>
リエンツィ(テノール) 教皇の公証人
イレーネ(ソプラノ)  リエンツィの妹
コロンナ(バス)    コロンナ家の当主
アドリアーノ(メゾソプラノ) コロンナの息子
オルジーニ(バリトン) オルジーニ家の当主
ライモンド(バス)   教皇の特使
平和の使者(ソプラノ)              

<物語の大筋>
時代と場所:14世紀半ばのローマ

第1幕 ローマ市内のリエンツィ家の前
公証人リエンツィは、民衆から請われて指導者となり、貴族の暴政を暴いて民衆の解放者となり、護民官の位につく。 

第2幕 カピトールの広間
貴族たちはリエンツィを暗殺しようと画策するが、貴族の息子アドリアーノは、リエンツィの妹を愛していたため、この企てに加わることが出来ない。貴族のオルジーニはリエンツィを殺害しようとするが失敗して仲間と共に捕われる。民衆は彼らを死刑にせよと騒ぐが、リエンツィは、アドリアーノの懇願を聞き入れて彼らを許す。 

第3幕 古代の広場
死刑にならなかった貴族たちは護民官に対して反乱を起こす。リエンツィはそれを制圧するが、アドリアーノは、それにより父が死んだことでリエンツィを罵る。 

第4幕 ローマ市内のラテラーノ教会の前
神聖ローマ帝国の新皇帝がリエンツィを弾圧し、民衆もリエンツィに反感を抱くようになる。父の仇を討とうとするアドリアーノは、この反感を煽り、民衆は反抗の火の手を掲げて暴動へと発展する。 

第5幕 カピトールの広間とその前の広場
民衆はリエンツィに向かって石や火を投げつけ、暴動は更に過激になってゆく。大広間の中にいたリエンツィとイレーネは、イレーネを救おうと入ってきたアドリアーノもろとも、崩壊する建物の下敷きとなり炎に包まれる。 

ところで「リエンツィ」はアドルフ・ヒトラーに大きな影響を与えた作品であるとされます。若きヒトラーは、「リエンツィ」を観劇して、作品に強く影響されたことで政治を志すようになったといいます。その信憑性は疑問視されてもいますが、ヒトラーが「リエンツィ」の自筆譜を所有していた事実があり、それは総統地下壕に持ち込まれ、ヒトラーの死とともに行方不明となったとされます。 

さて、愛聴CDといっても元々種類は少ないですし、頻繁に聴くことは無いのでごく僅かです。 

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ハインリヒ・ホルライザー指揮ドレスデン国立歌劇場管/合唱団、ライプツィヒ放送合唱団(1974、76年録音/EMI盤)

何と言っても初演した歌劇場の演奏が聴けるのは嬉しいです。楽譜もやはり本家の誇りで初版を用いています。これはルカ教会におけるセッション録音です。ホルライザーはそれほど大物指揮者では無いですが、オペラの指揮を得意とするベテランで安全安心です。バイロイトにも頻繁に登場しました。この名門歌劇場のオーケストラのいぶし銀の響きには序曲を聴いただけで魅了されてしまいます。むろん本篇も素晴らしく、その堅牢な演奏と強力な合唱を聴くと、やはりゲルマン民族の音楽だなあと思わずにいられません。ソリストもルネ・コロ、テオ・アダム、ペーター・シュライヤーなど当時の東西ドイツの最高のメンバーが揃います。メジャーEMIが、旧東独のエテルナと共同制作した点で、カラヤンの「マイスタージンガー」ほど有名では無いですが、同じ時期の名盤として燦然と輝きます。この素晴らしい演奏で聴けば、初版も決して長過ぎるとは感じません。 

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セバスティアン・ヴァイグレ指揮フランクフルト歌劇場管/合唱団(2013年録音/OEHMS盤)

これは日本でも読響やオペラを頻繁に指揮しているヴァイグルが、フランクフルトのアルテ・オパーで行った演奏会形式ライヴの録音です。短縮版による演奏なのでトータル・タイムは2時間35分です。特に前半の1幕、2幕が相当短くなっていることで、全体をすっきりと聴き通すことが出来ます。半面、短過ぎて逆に物足りなさを感じるかもしれません。タイトル・ロールには、ドイツ/オーストリア系のピーター・ブロンダーが起用され、イレーネ役のクリスティアーネ・リボールと共にヴァイグレのお気に入りのようです。比較的新しい録音なので、音質は優れます。しかし管弦楽、合唱、ソリスト、すべての点でホルライザー盤の充実度には及びません。ヴァイグルの指揮は速めのテンポですっきりとしたものなので聴き慣れない作品をとにかく廉価な盤で聴いてみたいという方には手ごろだと思います。

このほかにもサヴァリッシュがバイエルン歌劇場とオルフェオに残した録音が有り興味深いものの未聴です。

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