フランク

2021年11月 5日 (金)

フランク ヴァイオリン・ソナタ イ長調 名盤

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「三大ヴァイオリン協奏曲」と言えば、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスのそれですが(チャイコフスキーを加えて「四大ヴァイオリン協奏曲」と呼ぶことも有ります。私なら更にシベリウスを入れて「五大ヴァイオリン協奏曲」かな)。

それでは「三大ヴァイオリン・ソナタ」と言えば。。。そんなのは有りません!(笑)
しかし私なら、ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」、シューマンの第2番ソナタ、そしてこのフランクを選びます。1曲ぐらいブラームスの3曲のソナタから入れたいところですが、3曲全てが名曲ですし、選択不能です。これは別枠としておきます。 

ともかく、フランクのヴァイオリン・ソナタ イ長調(原題:ピアノとヴァイオリンの為のソナタ イ長調)は、フランス系のヴァイオリン・ソナタだけでなく、全てのヴァイオリン・ソナタの中でも一大傑作ですね。

この曲はフランクが同郷の後輩である大ヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイ(上記写真)の結婚祝いとして作曲を行い、献呈されました。初演もイザイにより行われています。 

作品は全4楽章から成っていて、幾つかの動機を基に全曲を統一する循環形式で作曲されています。

第1楽章 アレグレット・ベン・モデラート イ長調 ソナタ形式 8分の9拍子 夢見る様な淡い甘さが有りますが一方で翳りも感じさせます。じわじわと高揚してゆきますが、最後まで夢が覚めることはありません。 

第2楽章 アレグロ ニ短調 ソナタ形式 4分の4拍子 暗い炎の様な情熱を感じさせます。まるで男と女がお互いの欲望をぶつけ合うかのような。。 

第3楽章 レチタティーヴォ-ファンタジア (ベン・モデラート)  2分の2拍子 ピアノとヴァイオリンのレチタティーヴォから、そのタイトル通り幻想的な楽想が静かに続いてゆきます。 

第4楽章 アレグロ・ポコ・モッソ イ長調 カノン風のロンドソナタ形式 2分の2拍子 夢から醒めて窓から朝陽が差し込んでくるような明るさと祈りが有り、やがて輝かしいフィナーレとなります。 

この作品、敬虔なカトリックが書いたにしては、暗く甘いエロスも感じられます(やるねフランキー!)。 

それでは、愛聴CDのご紹介です。なにしろ名曲ですので、これ以外にも良いものは有るのでしょうが、キリが無いのでこれだけです。 

Fr-81dnagqvgfl_ac_sl1300_ ジャック・ティボー(Vn)、アルフレッド・コルトー(Pf)(1929年録音/EMI盤) 所有盤の中では最も古い録音で、SPの針音はチリチリ入りますが下手な除去をするよりは良いです。とにかくティボーのヴァイオリンがレトロで、ポルタメントを掛けまくるのが流石に煩わしく感じます。それに比べるとコルトーのピアノには往年の大家の風格が感じられて魅了されます。両者とも技術的には傷は多いですが、それは気になりません。3楽章が意外に面白くないですが、終楽章の熱演は聴き応えが有ります。 

Fr-511ok9gqgzl_ac_ ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)、アルトゥール・ルービンシュタイン(Pf)(1937年録音/NAXOS盤:EMI原盤) 所有するのはナクソスの板起こし盤です。当然サーフェイス・ノイズは有りますが、音そのものは明瞭です。ハイフェッツの演奏にはフランス風の曖昧な音は無く、全て密度の詰まった音です。表情は濃密で、白黒がはっきりしています。それはルービンシュタインのピアノにも言えます。およそエスプリ感とは無縁です。しかし、第2楽章や終楽章の激しさは圧巻ですし、この濃厚な演奏はハイフェッツのファンには喜ばれるでしょう。 

Fr-51hffygjmrl_1 クリスチャン・フェラス(Vn)、ピエール・バルビゼ(Pf)(1957年録音/EMI盤) 二十歳過ぎから天才として活躍したフェラスが24歳の時の録音で、数年後にグラモフォンに再録音を行っているので、これは旧録音です。ステレオ録音ながら幾らか鮮度が落ちている感は有りますが、清潔感に溢れる端正な音で、しかしやはりフランスの味を感じさせるフェラスのヴァイオリンは魅力が有ります。コンビを組んでいたバルビゼのピアノも同様の良さが有り文句無しですが、ピアノの音は古く聞こえます。これはEMIのボックスです。 

Fr-71gyzxq2anl_ac_sl1096_ ピエール・ドゥ―カン(Vn)、テレーズ・コシェ(Pf)(1959年録音/ERATO盤) 1927年生まれのドゥ―カンは録音の少なさから、それほど有名では無いですが、パガニーニ・コンクールでアッカルドと賞を分け合ったほどの名手です。しかし、フランスものを弾いた時のこのエスプリ感はどうでしょう。鼻に抜けるようなフランス語の発音そのものという印象です。録音は余りパリッとはしませんし、ピアノに比べてヴァイオリンの音が小さめに聞こえる(実は実際のバランスに近い)のが、僅かに不満なだけです。コシェのピアノは素晴らしいです。 

Fr-81inbppvfl_ac_sl1500_ ダヴィド・オイストラフ(Vn)、スヴャトスラフ・リヒテル(Pf)(1968年録音/メロディア盤) もう40年以上前に、最初に買ったこの曲のLPレコードでした。モスクワで行われた二人のライブの記録ですが、最高のヴァイオリンと最高のピアノが組み合うとどれほど凄いことになるかの正に証明です。フランス風では無く完全にロシアン・スタイルで濃密な演奏ですが、第2楽章や終楽章後半の火花を散らすようなところは壮絶でさえあります。それでいてデリカシーもまた大いに合わせ持つところが魅力です。終楽章ではゆったりとしたテンポで開始して、じわりじわり盛り上がってゆくパースペクティブの良さも特筆ものです。録音も優秀ですしこの演奏は絶対に避けては通れません。 

Fr-100_upc00028946000625 チョン・キョンファ(Vn)、ラドゥ・ルプー(Pf)(1977年録音/DECCA盤) エスプリ感などどこ吹く風、といった純音楽に徹した演奏です。キョンファの音は甘さこそ有りませんが、引き締まった美音で緊迫感の有る演奏ぶりです。ルプーのピアノの音も美しく、無駄な脂肪成分が無い点ではキョンファとの組み合わせはピッタリです。2楽章の迫力は中々のものですが、3楽章の盛り上がる部分での緊張感も独特です。終楽章に入っても、解放的な雰囲気には成らずに緊張感を持続させます。音楽から甘さを排除した孤高の演奏という印象です。 

Fr-51rxb1cnt9l_ac_ イヴリー・ギトリス(Vn)、マルタ・アルゲリッチ(Pf)(1977年録音/RCA盤:リコルディ原盤) ギトリスは1922年生まれなので、55歳での演奏になります。98歳まで生きたので、若い頃の?演奏ですが、その割には癖が強く評価が分かれると思います。どこもかしこも即興的で自由に弾き崩すのには驚きますが、独特の味が有るのも事実です。アルゲリッチはこれに良く合わせられるものだと感心します。録音そのものは明瞭なのですが、ピアノが強音で音割れするのが難点です。これは許せない人も多いのでは無いでしょうか。 

Fr-61l7ntijarl_ac_ アルトゥール・グリュミオー(Vn)、ジョルジュ・シェベック(Pf)(1978年録音/フィリップス盤) グリュミオーの音はもちろん綺麗ですが、録音で聴くとやや乾いた音に聞こえます。ラテン的というか地中海的というか、余りしっとりとした印象は受けません。2楽章も3楽章も肩の力が抜けていて淡々と流す感じです。妙にベタベタしないフランス風には違いありません。それは終楽章に入っても同様です。爽やかな風が頬を撫でて行くようで実にあっさりとしたものです。シェベックはそれにピアノをバランス良く合わせています。 

Franck-519vp5oij5l_ac_ カヤ・ダンチョフスカ(Vn)、クリスチャン・ツィメルマン(Pf)(1980年録音/グラモフォン盤) ポーランド出身のダンチョフスカは1949年生まれなので、これは31歳の時に母国を同じとする若きツィメルマンと組んだ録音です。名だたる国際コンクールで多く入賞しましたが何故か優勝には至らず、常に2位、3位でした。この演奏を聴くと、技術的に優れるものの大向こう受けする凄味や派手さが無いところからそれも何となく頷けます。しかし地味ながらも心が込められた演奏には好感が持てます。ツィメルマンのピアノもそんなダンチョフスカに寄り添っているのが微笑ましいです。

Fr-51swthr3g7l_ac_ ジャン=ジャック・カントロフ(Vn)、ジャック・ルヴィエ(Pf)(1982年録音/DENON盤) 戦後世代のカントロフはもちろんフランス音楽を得意にしますが、戦前の甘く洒落た世代のスタイルとはやはり異なるように感じます。エスプリ感のみでなく、もう少し幅の広い、ユニバーサルな感覚も持ち合わせているからです。ですので、第2楽章など想像以上に激しく劇的でありロシアン組とも充分に渡り合えます。ルヴィエもまた同世代で同様なポテンシャルの持ち主です。ということはフランクの音楽により近いとも言えます。 

Fr-xat1245238043 オリヴィエ・シャルリエ(Vn)、ジャン・ユボー(Pf)(1990年録音/ERATO盤) シャルリエは1961年生まれの完全な戦後派で、ロン=ティボーコンクールで2位に入った以外に特筆すべきコンクール歴は有りません。けれども音はしっとりと美しく、洒落たエスプリ感を持ち合わせます。第1楽章のゆったりとした雰囲気が最高ですが、2楽章、3楽章と少しも大げさでなく、しかし味わいの深い演奏は格別です。終楽章も爽やかでいてニュアンスの豊かさが凄いです。ユボーの言うまでも無く素晴らしいピアノに支えられているのは幸運ですし、エラートの録音はフランス音楽にピッタリの音造りなのも最高です。 

Fr-41xeevkkjwl_ac_ オーギュスタン・デュメイ(Vn)、マリア・ジョアン・ピリス(Pf)(1993年録音/グラモフォン盤) デュメイはこの曲を3回録音していますが、これは円熟期の2回目の録音です。甘く崩すことなく格調を保ったまま、美しさの限りを尽くした素晴らしい演奏です。純フランス・スタイルよりも僅かに国境線を広げている印象は無きにしも非ずですが、エスプリ感や情熱、更に官能性にも不足しません。ヴァイオリンの音色、技巧は文句無し、ピリスのピアノもピタリと寄り添い、それらを忠実に捉えた素晴らしい録音が華を添えます。 

Fr-414jnwp3hgl_ac_ ジェラール・プーレ(Vn)、ブルーノ・リグット(Pf)(2001年録音/SAPHIR盤) 日本でも長く教えていて、お弟子さんの多いプーレですが、これはパリの小劇場、ラルシペル劇場におけるライブです。ここはカフェの様で無演奏の所でグラスが鳴るような音が入っています。残響の少ないデッドな音ですが、逆に小さな会場でのサロンコンサーのような雰囲気が良いです。ライブ録音の宿命で楽器バランスの上で幾らかヴァイオリンが小さめですが、許容範囲です。何しろドビュッシーのソナタの初演者である父親(ガストン・プーレ)の血を引くプーレとサンソン・フランソワの数少ない弟子のリグットの正に「生きた」共演が聴けるのは素晴らしいです。

Fr-41zg9emwjol_ac_ ジェラール・プーレ(Pf)、川島余里(Pf)(2008年録音/NYS CLASSICS盤) これは日本での制作ですが、入念なセッション録音で素晴らしい出来栄えです。プーレの音の美しさとエスプリ感に溢れる演奏がそのままに収められています。川島さんもフランスで長く活動、高い評価を受けた方で、万全のピアノを弾いています。お二人の演奏の完成度の高さは驚くほどで、フランス音楽の粋を味わうことが出来ます。メジャーレーベルで無いので一般のリスナーには知られていないかもしれませんが、勿体ない名盤だと言えます。プーレは日本で案外と演奏会を行っていますので、出来る限り聴きに行くようにしています。皆さんも「フランス国宝級」の演奏を是非。

Fr-71n8sfrsjul_ac_sl1500__20211105004801 鍵冨弦太郎(Vn)、沼沢淑音(Pf)(2019年録音/日本アコースティックレコーズ盤) 最後に日本の若手による新鮮な演奏をご紹介します。鍵冨は桐朋学園卒で日本音楽コンクールの覇者。沼沢は桐朋-モスクワ音楽院卒で海外のコンクールを制しています。いずれも有能な若手演奏家です。特にフランス風という訳では無いですが、入念なセッション録音により丁寧かつ気迫の籠った演奏を聴かせてくれます。往年の錚々たる大家達の名盤と並べるにはやや荷が重い感は有りますが、わが国の若手でもこれだけの演奏が出来るのだという証明です。

ということで、天下の名曲だけあり名演奏にも事欠かず、マイ・フェイバリットを選ぶのも大変です。しかしこの曲の最もフランスのエスプリを感じさせる演奏として、ドゥーカン/コシェ盤に後ろ髪を引かれながらも、シャルリエ/ユボー盤とプーレ/川島盤を選びます。また、フランス風から僅かに右に(?)寄った演奏としてデュメイ/ピリス盤を選びます。そしてフランス風から最も遠いスタイルではオイストラフ/リヒテル盤にとどめを刺します。こういう演奏が存在するのもこの曲の懐の広さでしょう。

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2021年10月21日 (木)

フランク 交響曲ニ短調op.48 名盤

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フランスで活躍した作曲家セザール・フランクは、現在のベルギー生まれでドイツ系の血を引いていたこともあってか、作風にはドイツ語圏からの影響が有るとよく評されます。 

フランクは幼少からピアノの才能を示したことから、英才教育のために一家でパリに移住し、パリ音楽院に入学して作曲、ピアノ、オルガンなどを学びます。その後、作曲家志望を固めてリストやショパンに才能を評価されますが、ピアノ教師や教会オルガニストとして生活を送ります。 

やがてサン=サーンス、フォーレらとともにフランス国民音楽協会の設立に加わり、パリ音楽院の教授に迎えらます。フランクの弟子のダンディ、ショーソン、ピエルネらは“フランキスト”と呼ばれ、のちにドビュッシー達の印象主義音楽と相対することになります。 

フランク唯一の交響曲となる「交響曲ニ短調」は最晩年に書かれましたが、発表直後の評判は芳しくはありませんでした。作曲家や評論家の多数から「全体の形式をはじめ細部における形式の規則を破壊した」「荒涼とした、陰湿な交響曲」と批判されました。

しかし、20世紀に入ると、フランスにおける交響曲のジャンルの代表曲の一つとして認められ、ドビュッシーもこの曲を「数え切れないほどの美しい部分をそなえている」と賞賛しました。 

フランクは循環形式を多用するのが作風の大きな特徴で、この交響曲でもこの手法が顕著に示されていて、前半に登場する主題が後半の楽章で再現されます。

全体は三楽章で構成されます。 

第1楽章 レント - アレグロ・ノン・トロッポ ソナタ形式 

第2楽章 アレグレット 三部形式による緩徐楽章。中間部はスケルツォ。 

第3楽章 フィナーレ:アレグロ・ノン・トロッポ ソナタ形式  

「フランスにおける交響曲の代表的作品の一つ」と言えば聞こえは良いのですが、そもそもフランスの交響曲の数は少ないです。古典派からの流れで、様式を重んじる交響曲というのは余りフランス人向きでは無いのでしょう。形式にとらわれることのない管弦楽曲の方が国民性に向いているように思えます。

そんな中での、この名交響曲はとても好きですが、フランクの曲ならそれを上回る傑作と言えば、かのヴァイオリン・ソナタです。本国フランスの音楽愛好家の多くもそう考えるみたいです。 

ということで(変な流れになりましたが)、ともかくは愛聴するCDのご紹介です。 

Fr41qunytdol_ac_ ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル(1953年録音/DECCA盤) モノラル録音ですが、DECCAによるセッション収録なので音質は良好です。フルトヴェングラーの指揮は自在を極めていて、まるで生き物のようにうねります。第1楽章を聴いていると、何かマエストロのあのシューマンの「4番」を聴いているような気がしてきます。第2楽章で情緒的に粘って歌うのも完全にドイツ流ですが、その分深い味わいが有ります。第3楽章は無理に力むことなく、ゆったりと歌わせて味わい深く楽しませてくれます。 

Fr51egesvlgl_ac_ シャルル・ミュンシュ指揮ボストン響(1957年録音/RCA盤) 録音の古さは感じますし、強音でやや音が割れ気味です。ただ一応はステレオ録音ですし鑑賞に支障はありません。速めのテンポでサクサクと進むのはやはりフランスの指揮者です。ボストン響の明るい音色そのものは悪くないのですが、金管の強奏になるとバリバリと耳に刺激が強く感じられます。フランス的と言うよりも、この派手でアメリカ的な音は自分の好みからはやはり外れます。同じボストン響との「幻想交響曲」やサン=サーンスの3番など比べると魅力は劣ります。 

Frss51962jbdj7l_ac_ ポール・パレー指揮デトロイト響(1959年録音/マーキュリー盤) フランスのトスカニーニパレーがデトロイト響と残した名演です。ミュンシュ以上に速いテンポで颯爽と進み、フレージングはすっきりとキレ良いですが、無味乾燥なところが全く無く、とんでもない名指揮者であったことが思い知らされます。パレーの体質からは「幻想交響曲」やサン=サーンスの「3番」の方が合っていると思いますが、このフランクも実に素晴らしいです。迫力は有ってもミュンシュのように耳をつんざくような咆哮はせず、好感が持てます。残響の少ない録音ですが、明瞭で生々しい楽器の音を堪能させてくれます。 

Fr61jzeqrpbsl_ac_ ピエール・モントゥー指揮シカゴ響(1961年録音/RCA盤) モントゥーは大指揮者だとは思いますが、自分は必ずしも熱心な聴き手でもありません。しかしこの演奏はオールドファンには定評が有り、実際に非常に素晴らしいです。速めのテンポで進み、エネルギッシュで迫力も有りますが、フォルテで音がうるさくなったりはしません。聴かせどころではぐっと丁寧に聞かせます。様々なフレージングの意味深さも卓越しています。第2楽章のミステリアスな雰囲気や詩情も良く出ています。シカゴ響は優秀で、デリカシー溢れる音を見事に醸し出していますが、それもモントゥーの力量なのでしょう。同じRCA録音ですが、音質、バランスの点でミュンシュ盤を大きく凌ぎます。 

Fr-img_1266 アンドレ・クリュイタンス指揮スイス・イタリア放送管(1965年録音/ERMITAGE盤) ベルギー出身の大指揮者は少なく、クリュイタンスはその筆頭格だと思います。これはステレオ録音によるライブですが(写真のグルダは併録の協奏曲のソリストです)、フランクへのリスペクトと迸る生命力を感じる素晴らしい演奏です。オーケストラのレベルも高く、充分に楽しませてくれます。ただし、録音は鑑賞の上では何ら支障有りませんが、メジャーレーベルのセッション録音に比べて劣るのは確かです。クリュイタンスが「幻想」、サン=サーンス3番、そしてこの曲をパリ音楽院管とセッション録音を残さなかったのは悔やまれます。 

Fr2012072001093589d ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮パリ管(1969年録音/EMI盤) パリ管の初代音楽監督となったミュンシュが僅か1年で急逝した為に、後任となったカラヤンが行った最初の録音です。創設当時のパリ管の明るく華やかな音色とカラヤンの幾らか粘り気味のドイツ的な音楽が絶妙にブレンドされていて非常に良い感じです。管楽器の洒落た歌い方も魅力的で、文句の付けようが有りません。録音は典型的な柔らかいEMIトーンですが、フランス音楽として聴けば違和感は有りません。カラヤン/パリ管のそれほど多くは無い録音記録としても貴重です。 

Fr-51ut00f91tl_ac_ ジャン・マルティノン指揮、フランス国立放送管(1969年録音/エラート盤) 近い時期のパリ管と比べるとアンサンブル的にも個々の奏者の技量もオーケストラの性能として僅かに劣りますが、マルティノンの指揮は純フランス的と呼べるもので、カラヤンのような粘り気が無く、とてもパリッとしています(シャレでは無い)。正にフランス風のフランクです。録音はEMIのようにホールトーン的で柔らかい音造りのコンセプトですが、これもまたフランス的と言えるかもしれません。豪快さは無くても、粋さ、洒落た味わいにおいて非常に惹かれる演奏です。 

Fr919 オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1973年録音/TAHRA盤) ターラ・レーベルからヨッフムがコンセルトへボウを指揮した4枚組のライブが出ていて、その中に含まれます。これはかなりドイツ的な演奏です。ヨッフムのがっちりと堅牢な音造りにフランス的な洒落っ気は皆無ですが、オーケストラの上手さと底光りするような美音がこの曲を引き立てます。録音も自然で優れています。「フランス流ばかりがフランクでは無いぞ」という見本のような秀演だと思いますが、CDの入手性は余り良く無いかもしれません。 

Fr61waz33hrbl_ac_ カルロ・マリア・ジュリーニ指揮べルリン・フィル(1986年録音/グラモフォン盤) ジュリーニはこの曲に愛着が有るようで、この録音は2回目のものですが、7年後にもウィーン・フィルと再録音を行います。確かにこのベルリン・フィル盤もおよそ細部に至るまで丁寧な仕上げた完成度の高い演奏だと思います。ただし、ここで聞こえる音はカラヤンが造り上げたベルリン・フィルのそれであり、個人的には好みません。金管は明るくドイツ的では無いですし、かといってフランス風のエスプリが有るわけでもありません。要は非常に鳴りの良いインターナショナルな音です。全体的にテンポはゆっくり目ですが、演奏を聴いていてカラヤンの影が脳裏に常に浮かんでしまい余り楽しめません。 

Fr51dqkwi44l_ac_ シャルル・デュトワ指揮モントリオール響、ピーター・ハーフォード(Org)(1989年録音/DECCA盤) ミュンシュに師事し、フランス音楽を得意とするデュトワの演奏が悪いはずが有りません。パレーやミュンシュのような爆発的な勢いで突き進むことはありませんが、生き生きとしたエネルギー感は充分です。しかも主兵のオーケストが醸し出す繊細で美しい音は、フランスの団体に遜色有りません。終楽章も華やかで聴き応えが有りますが、騒々しさとは無縁であり、常にハーモニーの美しさを感じます。DECCAの録音の優秀さは言うまでもありません。 

Fr5119azwypol_ac_ カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン・フィル(1993年録音/SONY盤) ジュリーニのこの曲の3度目の録音になりますが、ウィーンにおけるライブ収録です。国籍不明のベルリン・フィル盤と比べて、オーケストラの響きの違いは歴然です。ウィーン・フィルの音はしっとりと落ち着いて情緒感に溢れていて何とも美しいです。この曲がぐっとドイツ音楽に近づいたような気がします。1楽章の主部のテンポの遅さは恐らく一番で、まるで別の曲を聴くかのように、この曲の隠れた魅力を一杯に感じさせます。2楽章、3楽章も同様にテンポは遅いですが、細部に至るまで神経の行き届いた美しい演奏です。終結部は録音の影響も有るのか、やや控え目な印象ですが、むやみやたらに強奏されるよりも心地よく楽しめます。ジュリーニのこの曲なら躊躇なくこちらを選びます。 

さて海賊盤ながら注目すべき演奏があります。チェリビダッケにはこの曲の正規録音盤が見当たらないので二種類どちらも貴重です。 

Fr-cl110419023-sttgart セルジュ・チェリビダッケ指揮シュトゥットガルト放送響(1980年代/AUDIOR盤) 導入部が遅いテンポなのはチェリビ調です。ただしアレグロ部に入ると思ったより普通のテンポです。しかしオーケストラのニュアンスの変化豊かな表情づけはさすがです。ゆったりとした2楽章の情感も素晴らしいです。録音は楽器の分離が良い割に全体は透明感が感じられます。ダイナミックレンジも広い優秀録音で迫力も満点です。チェリビの叫び声が随所で明瞭に聞こえるのはご愛敬です。フランス的でもドイツ的でも無いチェリビ的なフランクですが、楽しめること請け合いです。 

Fr-celibidache_franck-munich セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1991年?/AUDIOR盤) 録音は数年違いだと思われますが、晩年のチェリビに近い演奏はやはりこちらです。1楽章の主部や2楽章のテンポがだいぶ遅くなっています。しかし、聴いていてもたれるほどではありませんし、遅い点ではジュリーニの方が遅いです。オーケストラの透明感有る響きは例によって「チェリビのミュンヘンサウンド」ですが、録音がホールトーン的で柔らか過ぎる為に、演奏の圭角が取れてしまっています。その点ではシュトゥットガルト放送響盤の方が楽しめます。 

以上ですが、マイ・フェイバリットはと言えば、マルティノン/フランス国立放送管盤、ジュリーニ/ウィーン・フィル盤、チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送響盤、この3つでしょうか。あとは古くなりますが、フルトヴェングラー盤とモントゥー盤には大いに惹かれます。

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