團伊久磨作曲 オペラ「夕鶴」公演
今日は東京文化会館で團伊久磨のオペラ「夕鶴」を観て参りました。
私の生まれる前に初演されたこの作品は、おそらく日本人が作曲したオペラの中でも最も有名で上演回数も多いと思われます。でも私が観たのは今回が初めてです。
今回は新演出ということで、演出:市川右近、美術:千住博、衣装:森英恵、指揮:源田茂夫といったスタッフ陣でした。主役のつうを歌うのは佐藤しのぶです。
これまでのイメージは、舞台は質素な民家で土間には鍋や釜が置いてあり、登場人物の衣装は古い着物という感じでした。雑誌写真からはそう思っていました。
ところが今回は大きな回り舞台が有るだけで、あとは照明で変化を付けて、雪が時折降り注ぐだけです。極めてシンプルです。衣装は洋服ですし、村の子供たちは何色ものパステルカラーのガウンを着ています。
これが新しい「夕鶴」ということですが、こういう作品には奇をてらった演出よりも、昔話の絵本を見るような演出がやはり好きです。
この作品は、夫が妻つうの機織りをしている部屋を覗いてしまうまでの第1部が95分、つうが鶴の姿となって飛んで去ってしまう第2部が35分と非常にアンバランスな配分です。
音楽的には第1部はほとんど抑揚が無く、旋律も余り無く、淡々としたセリフもどきの歌で進んでゆきます。それで95分はちょっと辛いです。第2部は多少ドラマティックに成るので聴けますが、いかんせん第1部が長過ぎです。こういう音楽を風情のない舞台や衣装で見せられては正直言って楽しめません。
このオペラの台本は同名の戯曲からですが、『妻の隠れた姿を見てはならない』というのは、その逆も言い得て、『夫の隠れた姿を見てはならない』ということになります。つまり「夫婦はお互いに隠れた部分が有り、それを無理に暴けば亀裂が入る」というのがテーマなのではないでしょうか。それは現代にそのまま通じます。
そもそもオペラに仕上げるには、この物語は余りに単純過ぎるのではないでしょうか。古典的な演出の舞台を観たとしても、この音楽で楽しめるとは思えません。イタリアオペラやドイツオペラのあの楽しさはどこにも有りませんでした。それとも観る人が観ればちゃんと面白い作品なのでしょうか?自分には残念ながら理解出来ませんでした。
オーケストラ演奏はシティ・フィルでした。お世辞にも入念な音造りとは言えませんでしたが(はっきり言えばお粗末)、それはオペラピットの演奏には良く有ることですし、自分にはそれ以前の問題が大きいので余り気になりませんでした。
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