読書

2017年7月16日 (日)

「グスタフ・マーラー 現代音楽への道」 柴田南雄・著 ~38年前の演奏会~

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グスタフ・マーラーに関する本は何冊か読みましたし、あらためて購入することもほとんど無くなっていたのですが、たまたま中古CDショップの書籍コーナーで立ち読みをしていたところ一冊の本に目が留まりました。

それが柴田南雄・著の「グスタフ・マーラー 現代音楽への道」(1984年刊行)でした。この本は主にマーラーのシンフォニーの第1番から第10番までを順にたどり、曲の分析や解説と共にマーラーの生涯に触れながら書き進められています。

各曲の初演記録や日本における初演にも詳しく書かれているのですが、第9番の最後にこう書かれていました。

『最後に、「第九」の日本人による本邦初演は1973年5月に森正指揮のN響が行ったが、その後日本にはマーラーの第九をともかくも自分たちの手で演奏したアマチュアの人たちが居ることを紹介しておこう。アマチュア初演はどうやら、1979年5月11日、東京浅草公会堂での「マーラー交響曲第9番特別演奏会」(久志本涼指揮、東京周辺の19大学のオーケストラの有志による)であり、第二回目は1983年1月23日、五反田の簡易保険ホールでの新交響楽団定期公演(山田一雄指揮)であったようだ。わたくしは残念ながら両回とも不参であった。』

実は、立ち読みしながらこの部分に驚いてしまったのです。その1979年のアマチュア初演こそは、大学卒業直後の春に自分がヴィオラで参加した演奏会だったからです。

当時はそんなことを少しも知らなかったですし、他のメンバーからもそんな話を聞いた記憶は有りません。

マーラーだけでなくあらゆるシンフォニーの中でも最も好きなこの曲の38年も前に参加した演奏会がそんな歴史を持っていたとは全く知りませんでした。

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2014年12月22日 (月)

黒田官兵衛 ~播磨灘物語~ 司馬遼太郎

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毎週欠かさず観ていたNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」が終わってしまいました。
昨年の「八重の桜」やその前年の「平清盛」も非常に面白かったですが、今回の「官兵衛」が一番楽しめたかもしれません。主役の岡田君についてはアイドルグループV6のメンバーだということぐらいしか知らなかったので、最初は大丈夫かと思っていましたが、放送回数が進むにつれてすっかり役に溶け込んで、後半では入魂の演技が素晴らしかったと思います。

それにしても、こんなに面白く観られたのは、やはり黒田官兵衛という人物の魅力そのものに他ならないでしょう。田舎武士の家に生まれて、信長-秀吉-家康の三人に仕えあるいは対峙し、その間に命を落としても不思議で無い窮地をも乗り越えてついに晩年まで生き抜いたという、間違いなく「奇跡の人」ですね。
秀吉が畏れたほどの聡明さはもちろんですが、およそ私利私欲を持たない、この時代ではこの人と竹中半兵衛以外にはほとんど見当たらない稀有な人物なのでしょう。だからこそ奇跡のように生きられたのだと思います。出家してから黒田如水(じょすい=水の如く)と名乗りましたが、人生を流れる水のように自然に逆らうことなく身を任せて生きることが奇跡を生んだのですね。戦国時代に生きた人物として、これほど興味深い存在は中々他に居ないような気がします。

実は、司馬遼太郎の小説「播磨灘物語」を読んでいるところです。もちろん官兵衛の話ですが、今はまだ荒木村重の伊丹有岡城の獄中から奇跡的に助け出された場面のあたりです。大河の中で余り詳しく描かれなかった場面が色々と詳しく表現されているので、とても愉しく読んでいます。Kuroda_614yw82kyyl__sx220_

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2014年4月 1日 (火)

「蒼い炎」 羽生結弦

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フィギュアスケートの2013-3014シーズンが終わりましたね。今年はオリンピックの年でしたので、グランプリシリーズ、世界選手権と合わせて心から堪能することができました。日本選手の活躍も素晴らしかったです。
オリンピックで表彰台を逃したものの世界の感動を呼び、世界選手権では見事優勝を果たした浅田真央さんも素晴らしかったですが、正に”レジェンド”と呼べるほどの活躍を見せたのは羽生結弦君でしたね。

正直言って、一昨年辺りまでの羽生君は線の細さが感じられて、いま一つファンには成れなかったです。ところが昨年頃から、徐々に「美しさ」と同時に「強さ」が感じられるようになり、大進化を遂げたのが今シーズンでした。何しろグランプリファイナル、オリンピック、世界選手権の三大タイトルを同じシーズンに制覇したのは十何年ぶりのことだそうです。一発勝負の要素が高いフギュアスケートでこんなことを成し遂げることがどれだけ凄いことかは、ファンであれば良くお分かりだと思います。既に”レジェンド”です。

その羽生君が二年前の2012年4月に出した本が「蒼い炎」です。この本を読んだのは、恥ずかしながらオリンピックの後なのですが、東日本大震災で被災して避難所に入ったこと、定期的な練習場を失ってしまったこと、そこから再スタートを切って競技生活に戻った気持ちなどが、色々と書かれています。

彼は二年前の当時には、「大きな目標はオリンピックで金メダルを取ることです。もちろんソチではないですよ。ソチではまだ19歳ですから。男子で10代の金メダルは難しい。金メダルを考えているのはソチの次のオリンピックです。」と、こんなふうに語っていました。ソチには出場することだけでも大変なことだと考えていたようです。それが、どうでしょう。奇跡の進化ですね。

羽生君が2年前のポジションから見た自分の未来。そしてそこから現時点までの道のりと結果。それをいま読んでみると本当に興味深いです。

この本の印税が被災した仙台スケートリンクに寄付されるというのも、購入した一つの理由ですが、内容にも充分愉しめました。もっとも、この本、文章以上に羽生君のカラー写真が満載ですので、”ユズリスト”にとっては感涙ものでしょう。

羽生君、それにやはり今シーズン”大化け”した町田君の来シーズンが今から楽しみです。
女子の来シーズンはどうなるでしょうね。リプニツカヤが頑張ると良いし、期待の12歳、本田真凛ちゃんのシニアデビューが待ち遠しいです。
ところで、リプニツカヤちゃん、ちゃんと日本の桜を見ることが出来たのかな?とっても気になっています・・・・

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2014年3月24日 (月)

「丸山眞男 音楽の対話」 中野 雄

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日本における政治思想史の巨人、丸山眞男(まるやま まさお)氏には、知られざる別の一面「音楽愛好家」としての姿が有りましたが、その丸山氏に思想史、音楽の両方の分野で師事されて交流40年以上にも及んだ音楽プロデューサーである中野雄(なかの たけし)氏がお書きになった本が「丸山眞男 音楽の対話」それに「丸山眞男 人生の対話」(文春新書)です。

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丸山氏自身が書いた専門書は、一般の人が読んで理解するには少々難解過ぎるようですが、中野氏の著書は非常に解り易く書かれているので、丸山氏の考え方の一端に触れるのには最適だと思います。

一昨日の3月22日は丸山氏の生誕百周年記念にあたるので、都内で開催された記念の会には数百人が集まったそうです。また、23日には東京フルトヴェングラー研究会主催で「丸山眞男とフルトヴェングラー」という、中野雄氏の講演会が開かれました。そこで、自分はその講演会に行ってみました。

講演内容のベースになったのは、「丸山眞男 音楽の対話」でしたが、中野氏の生の声で語られる多くのエピソードには大変興味をそそられました。丸山氏は、生前ワーグナーとフルトヴェングラーに特に傾倒していましたが、氏の単なる「音楽愛好家」の域を越えた、専門家以上の知識、見識には唖然とするほどです。それは『自分はこれまで音楽を深く聴いて来たつもりであったが、”真剣に聴くこと”とは一体どういうことを言うのだろう」と大きな疑問に遭遇するほどの衝撃です。その丸山氏の聴き方の源流となっているのはフルトヴェングラーの考え方、思想に一致するところなのでしょう。

「音楽愛好家とは何か」「音楽を深く聴くこととはどういうことか」、更には「生きることとはどういうことか」、それらのことを色々と考えさせられる講演でした。その内容は著書を読んで頂いても充分に体験が可能です。お読みになられたことがない方には是非御一読をお勧めしたいと思います。

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2013年6月19日 (水)

「ボクの音楽武者修行」 小澤征爾

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作家の村上春樹さんはクラシック、ジャズ、ポップスなど、音楽のジャンルを問わず驚くほどの物知りですが、それも「単に聴いて知っている」というだけではなく、いかにも作家ならではの深い洞察力と感性を感じてしまい感心します。氏の比較的最近の著書「小澤征爾さんと音楽について話をする」という対談形式の本の中では、小澤さんを相手にクラシック音楽の様々な鑑賞知識を出してきて、小澤さんを驚かせています。もっとも、有名指揮者というのは、恐らく同業者の出したレコード(CD)を熱心に聴き漁るようなことはしないでしょうから、小澤さんが驚くのは決して不思議なことでは無いのでしょう。村上さんがひっぱり出したレコードの大半は、古くからのクラシック・マニアにとっては大半がお馴染みのものだと思います。でも、この音楽対談が成り立っているのは、確かに村上さんの知識ですので、そういう点でもとても楽しめました。

この本で面白いと感じたのは、音楽のプロの小澤さんがアマチュアの村上さんに対して音楽の事、指揮の事などを非常に解り易く説明していることです。それによって、小澤さん自身の音楽への考えが方が明確に浮き上がってくることです。小澤さんはつくづくプロフェッショナルな音楽家だなぁと思う反面、いわゆる昔の「巨匠」的なタイプで無いことが改めて感じられます。普段、小澤さんの演奏を聴いていて感じていることが、そのまま言葉になっていました。

ところで、この本を読んだ後で無性に読みたくなった本が有りました。それは僕が高校生の頃に読んだ「ボクの音楽武者修行」という本です。これは、小澤さんが若くしてブザンソン指揮者コンクールで優勝して、名門ニューヨーク・フィルの副指揮者としてバーンスタインとともに日本に凱旋帰国した後の1962年に出版された、小澤さん自らのエッセイです。桐朋音大を出たばかりで全くの無名の若者が、クラシック音楽の本場のヨーロッパで勉強をしようと思い立ちますが、先立つ資金が無い。しかたなくスポンサーを求めて企業を回りますが、援助を申し出てくれた会社は唯一、富士重工業の一社だけ。それもスバルのスクーターを提供するための条件として、下記の3つが上げられました。

1.日本国籍を明示すること
2.音楽家であることを示すこと
3.事故を起こさないこと

この条件をかなえるために、小澤さんは白いヘルメットにギターをかついで、日の丸を付けたスクーターにまたがるという何とも滑稽な出で立ちでヨーロッパを走り回ったのだそうです。

ヨーロッパへの渡航方法も、現在のように飛行機ではなく船です。しかも客船に乗るお金が無いので、なんと大型貨物船にスクーターと共に乗せてもらいます。乗客は小澤さんたった一人だけだったそうです。途中アジアや中東の国々に何度も停泊して荷物を積み下ろししながらの航海なので、ヨーロッパに着くまでには一か月半の長旅でした。

そんな船旅の道中の様子、ヨーロッパについてから後の様々な出来事、コンクールへ出場するときの逸話、優勝後にシャルル・ミンシュやバーンスタインに指揮を習い、ついにニューヨーク・フィルの副指揮者に就任して日本へ凱旋帰国するまでの話が、面白おかしくつづられています。ここには現在の大指揮者小澤さんの姿からは、とてもとても想像がつかないようなエピソードでいっぱいです。この本は、どんな青春冒険小説にも負けない楽しさに溢れています。高校生の時には図書館で借りて読んだので、新しく単行本を買おうかと思ったら、現在は新潮社から文庫本で出ているだけでした。もちろん文庫本でも面白さは変わりませんが。

高校生の頃、当然小澤さんの大ファンに成り、レコードを購入しては愛聴していましたが、そのうちに「巨匠」的では無い氏の演奏が自分の好みとは段々と異なってしまって、聴くことが少なくなってしまいました。今回、本当に久しぶりに「ボクの音楽武者修行」を読み返してみて、小澤さんの演奏を改めて聴いてみたくなりました。

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