グラズノフ

2014年2月23日 (日)

グラズノフ 交響曲第5番変ロ長調op.55 ムラヴィンスキーの1979年東京ライヴ

ソチ・オリンピックの熱き戦いもいよいよ今日で終わってしまいますね。(寂)
TVで今夜の閉会式の予行練習の映像が流れていましたが、あの開会式のようにドキドキわくわくする内容であるのは間違いなさそうです。とても楽しみです。

ということで、オリンピック記念の”ロシア音楽特集”も佳境に入りました。

グラズノフの書いた8曲の交響曲の出来栄えは平均していて、どの曲にも良さが有りますので、中々「この曲は」という選択が出来ません。ですので、「お勧めは?」と聞かれると、結局のところ「全集です」ということになってしまいます。ただ、単独盤にも非常に注目すべきものが有りますのでご紹介したいと思います。

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グラズノフ 交響曲第5番変ロ長調op.55
エフゲニ・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル(1979年録音/Altus盤)

残された録音こそ多くは有りませんが、ムラヴィンスキーはグラズノフの音楽をとても好んだそうです。中では第5番を取り上げる機会が多かったようです。それはモーツァルトなら第39番、ベートーヴェンなら第4番、チャイコフスキーなら第5番、ショスタコーヴィチなら第5番、というようにムラヴィンスキーは頻繁に取り上げる曲目を絞り込んでいたのと同じです。

けれども、さすがにグラズノフの録音で条件の良いものは限られていて、第5番の代表盤として上げられるのが、この1979年6月8日のNHKホールでのライブ録音です。同時にこれは合計4度来日したムラヴィンスキーの日本における最後のコンサートですので、記録としても貴重だと思います。

第1楽章の長い序奏部は、ワーグナーの楽劇「ラインの黄金」の冒頭を想わせます。レニングラード・フィルの純度の高い響きが美しく、その印象を助長します。

第2楽章の軽快な音楽はメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の世界ですが、突然ロシア民謡調に変わるのが愉しいです。ムラヴィンスキーはここをとてもチャーミングに演奏しています。

第3楽章はロシアン・ナイトの静寂ですが、ムラヴィンスキーはまるでロマンテックな夢を見るように聴かせてくれます。

第4楽章は、疾走するコサックの騎馬隊を想わせるような荒々しいロシアン・リズムの愉しい聴きものですが、演奏のテンポ設定の違いで印象が大きく変わります。僕が聴いた演奏で終楽章だけを比較すると、テンポが遅い順に、ポリャンスキー>フェドセーエフ≒ムラヴィンスキー>スヴェトラーノフとなります。ポリャンスキーは幾らか遅過ぎて重々しく、スヴェトラーノフは逆に速過ぎで忙しなさを感じます。個人的には、その中間でほぼ同じような速さであるフェドセーエフとムラヴィンスキーを好ましく感じます。けれどもダイナミクスの巾が大きく、スケールの壮大さを感じるのはムラヴィンスキーです。

ということで、ムラヴィンスキーがレパートリーとする曲は、やはりムラヴィンスキーが一番かなぁ、とは思ってしまいます。

録音はオフマイクでステージから遠く、色彩感が幾らか不足するように感じられますが、会場の臨場感が有りますし特に悪いということはありません。貴重な曲のライブを聴けるだけでも有り難いです。

YouTubeでこの演奏を聴くことが出来ますので、ご紹介しておきます(こちら)。

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2014年2月19日 (水)

グラズノフ 交響曲全集 名盤 ウラジーミル・フェドセーエフ/モスクワ放送響

Alexanderglazounov
ロシアのアレクサンドル・グラズノフは第ニ次世界大戦直前の1936年まで存命した作曲家です。もっとも作曲様式は保守的で、ロシア五人組に代表される国民楽派を受け継ぎ、チャイコフスキーの流れを汲むロシア・ロマン主義の影響が大いに認められます。ですので、革新的だった作曲家のストラヴィンスキーやプロコフィエフ、ショスタコーヴィチたちからは「グラズノフの音楽は時代遅れだ」と評されました。

グラズノフの音楽には、ロマンティックで美しい旋律と、草原を想わせるような広がりと情緒が有ります。これはロシア音楽好きの人にとってはたまらない魅力だと思います。もっとも、グラズノフの音楽にはチャイコフスキーやラフマニノフの”砂糖をふんだんに使った濃厚な甘さ”とは違って、”果実が元々持っているような自然な甘さ”という印象を受けます。旋律線にも、しつこさや押しつけがましさを感じることは有りません(もちろん、チャイコフスキーやラフマニノフは、それが大きな魅力なのですが)。それはまた、”雪に覆われた暗く荒涼としたシベリアの大地”というよりも、東欧に近いウクライナやベラルーシなどの地方の陽光の明るさや爽やかさを印象付けられもします。それがグラズノフの音楽のとても大きな魅力だと思っています。

グラズノフは作品の数が多いことも特筆されます。8つの交響曲、バレエ音楽を含むそれこそ膨大な数の管弦楽曲、協奏曲、室内楽曲などです。もちろん自分もそれらを多く聴き込むことは出来ていませんが、第一にお勧めしたいのは交響曲全集です。

グラズノフがまだ若干16歳のときに、リムスキー=コルサコフの指揮によって初演された交響曲第1番「スラヴ風」に始まり、最後の交響曲となる第8番まで、8曲のどれもが大変魅力の有る交響曲ばかりです。

曲の構成は、第4番のみが3楽章の構成ですが、残りの曲は全て伝統的な4楽章構成で書かれています。グラズノフの保守的な作風を象徴しているとも言えるでしょう。
どの曲においても、グラズノフの音楽の持つ爽やかな美しさとロシア的な情緒が迸るようです。一般的には中期の第4番、第5番、第6番の3曲が演奏される機会が多いようですが、後期の円熟し切った第7番と第8番も実に素晴らしいです。特にベートーヴェンの「田園」を意識して書き、同じ標題が付けられた第7番「田園」は、スラヴの春を想わせるような美しい旋律に溢れていて、とても好んでいます。第8番も、どことなくドビュッシーやサン=サーンスなどのフランス音楽の響きを随所に感じさせますが、壮麗な趣を持っていて魅力的です。

ロシアの交響曲作曲家と言えば、チャイコフスキーとショスタコーヴィチでしょうが、どっこいグラズノフを忘れてはいけません。

それでは、僕の愛聴盤のご紹介です。

891グラズノフ 交響曲全集 ウラジーミル・フェドセーエフ/モスクワ放送響(1974年‐1981年録音/ヴェネチア盤:メロディア原盤)

グラズノフの交響曲の全集は、もちろんスヴェトラーノフ、ロジェストヴェンスキー、ポリャンスキー(一部は別指揮者)といったロシア勢が主流を占めますが、その中の一つがウラジーミル・フェドセーエフとモスクワ放送響のものです。フェドセーエフが、この優秀なオーケストラの首席指揮者を前任のロジェストヴェンスキーから引き継いで間もない頃の録音ですが、どの曲の演奏にもロシア的なダイナミクスと、余り重く成り過ぎない躍動するリズムや若々しさが感じられます。それはグラズノフの音楽が持っている爽やかさにとても適していると思います。もちろん情緒的で美しいメロディも充分に歌ってくれていて申し分ありません。

音質的にはオリジナルがメロディア録音ですので過剰な期待は持てませんが、メロディア録音の当時の水準は越えていると思います。

なお、CDはこのヴェネチア・レーベルや日本のビクターからライセンスで出ていますが、それ以外のレーベルから、ほぼ同じ時期の『ライブ録音』と称する全集が出ていますのでご注意ください。レヴューを読んだかぎりでは悪くは無さそうなので、そちらでチャレンジされても面白いかもしれません。(もっとも、メロディア盤と同じものだという説も有ります。詳細は分かりません。)

まだ手が回っていませんが、フェドセーエフ以外の全集盤も是非聴いてみたいとは思っています。

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2014年2月 3日 (月)

グラズノフ バレエ音楽「ライモンダ」全曲 名盤 ヴィクトル・フェドートフ/キーロフ管

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       パリ・オペラ座 バレエ「ライモンダ」

ロシアバレエの音楽と言えば、やはりチャイコフスキーですが、美しい抒情性にあふれるアレクサンドル・グラズノフもとても魅力的です。この人は主に交響曲作曲家として活躍しましたが、チャイコフスキーのようにバレエ音楽にも傑作を残しました。

グラズノフの書いたバレエ音楽で良く知られているのは「フォー・シーズンズ(四季)」と「ライモンダ」です。日本人にとっては「四季」というだけで人気が出ますし、実際にとても美しい曲です。けれども、全三幕で構成される極めて充実した大作が「ライモンダ」です。

それでは曲を聴く前に、一応お話を簡単に。

―バレエあらすじ―

<第1幕>
中世のフランス、プロヴァンス地方のドリス伯爵夫人の館。

伯爵夫人の姪である美しいライモンダは、騎士ジャン・ド・ブリエンヌと婚約しているが、ジャンは出征することになり、館に別れを告げに来る。そこで伯爵夫人はジャンを送り出すための舞踏会を催す。
全員で賑やかに舞踏が繰り広げられる。ジャンはライモンダと踊りを踊り、出征の決意を示し出発して行く。

やがて一人残ったライモンダのもとに、ドリス家の守護者である白の貴婦人が現われて、ライモンダを幻想へと導く。するとジャンの幻影が現われて二人で踊りを踊る。

そこへ見知らぬ男、アブデラフマンの幻影が現われて、ライモンダに熱い想いを訴えて姿を消す。ライモンダは夢から目覚めて、異郷のジャンの身を案じる。

<第2幕>
伯爵夫人の館の華やかな宴。

宴に集った客の中に、夢に出てきたアブデラフマンの姿が現れる。
踊りのあと、ライモンダはアブデラフマンから求愛をされるが、それを断る。

アブデラフマンと従者たちが異国的な踊りを次々と披露してフィナーレとなるが、アブデラフマンはライモンダを無理やり連れ去ろうとする。
そこに間一髪のところでジャンが戻り、アブデラフマンと決闘となる。
二人の決闘の結果、敗れたアブデラフマンはライモンダの足もとに倒れ、彼女への想いを訴えて息を引きとる。

ライモンダとジャンは無事に結婚することになり、白の貴婦人の幻も現れて二人を祝福する。

<第3幕>
ライモンダとジャンの盛大な結婚祝賀会。

大広間でチャールダッシュやマズルカが人々によって踊られる。
やがて全員が華やかに舞い納めて、フィナーレとなる。
ライモンダとジャンは皆から祝福を受け、一同楽しそうに踊り続けるうちに幕となる。
 
とまあ、こんなところです。馬鹿馬鹿しいとまでは言いませんが、なんとも単純極まりないストーリーですよね。
でも構わないのです。バレエは音楽が美しくて踊りが踊れればそれで良いのですから。
グラズノフのバレエ音楽は、交響曲以上に美しい抒情性に溢れた曲のオン・パレードです。すっかり幸せな気分になってしまいます。

それでは、僕の愛聴盤をご紹介します。

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"ミスター・キーロフ"ことヴィクトル・フェドートフはロシア・バレエの神様として尊敬されていて、日本でもバレエファンにはお馴染みの指揮者ですが、一般的にはそれほど知名度は高くないと思います。初台の新国立劇場がオープンした時にはバレエ公演のために来日してくれましたが、残念なことに2001年に亡くなりました。

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ヴィクトル・フェドートフ/キーロフ管弦楽団(1990年録音/原盤:露Classical Records;英CARLTON Classics盤)

フェドートフの演奏する「ライモンダ」のディスクは、これが初録音だったようです。その貴重なCDを制作したのはロシアの新興レーベルClassical Recordsです。国営のメロディアレーベルに独占されていたロシアの音楽ビジネスも、国の民主化に促されて広がりを持ってきたのは喜ばしいことです。もっとも、自分の所有しているCDは英国のCARLTON Classicsがライセンスで出しているものです。

オーケストラがホームグランドであるマリインスキー劇場のキーロフ管弦楽団というのは嬉しいです。機能的にも非常に優秀な楽団でありながら、いかにも劇場オーケストラらしい雰囲気や、鮮やかな色彩、軽やかな音が素晴らしいからです。

フェドートフの指揮はリズム感覚と間の取り方が、実際の舞台の上で演じられるバレエを彷彿させるもので、例えばスヴェトラーノフの演奏する極めてシンフォニックな表現とは正反対になります。そこが正に魅力なのです。もちろん、「ライモンダ」らしいチャーミングさとファンタジーに満ち溢れていますし、およそグラズノフのバレエ音楽には最適の演奏であると思います。

音質も1990年のデジタル録音ですので良質です。何よりフェドートフの最晩年の貴重なバレエ指揮芸術がこのような形で残されたことは本当に感謝の極みです。

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