リムスキー=コルサコフ

2014年1月27日 (月)

リムスキー=コルサコフ 交響曲第2番嬰へ短調「アンタール」op.9

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リムスキー=コルサコフの書いた交響曲は全部で3曲ですが、第2番「アンタール」嬰へ短調作品9は元々、交響曲として作曲されたにもかかわらず、内容が余りに標題的で、多楽章形式の交響詩に近いことから、第3版の改定では「交響組曲」とされました。通常演奏されるのはこの第3版ですが、現在は「交響組曲」としてよりも「交響曲第2番」として扱われることが多いようです。

曲の内容としては、6世紀のアラビアの詩人アンタールの見る夢と、彼が夢の中で実現を約束される3つの願いごとを表しています。

―あらすじ―

現世を儚んで廃墟で隠遁生活を送っていたアンタールは、ある日、一頭のカモシカを襲う巨大な鳥を槍で追い払います。カモシカの正体は実はパルミナの妖精の女王ギュル・ナザールでした。
アンタールは夢の中で女王の宮殿に招待されて、お礼として『人生の3つの喜び』を贈ると約束されます。
アンタールは「復讐の喜び」「権力の喜び」「愛の喜び」の3つを願いますが、再び人生に疲れ果てたアンタールは女王との「愛の喜び」の中で死んでゆきます。

曲は4楽章構成です。楽章ごとに上記の内容が示されています。

第1楽章「アンタールの夢」 廃墟の描写、アンタールの主題、女王の主題、鳥の攻撃と撃退、宮殿の描写、女王とアンタールの会話、宮殿の描写

第2楽章「復讐の喜び」

第3楽章「権力の喜び」

第4楽章「愛の喜び」 再び人生に疲れ果てたアンタールは、女王との”愛の喜び”の中で死んでゆく

この曲は、あの「シェヘラザード」と同じ東洋趣味に満ち溢れた作品で、オリエンタルな雰囲気の民謡がふんだんに取り入れられています。完成度も非常に高く、リムスキー=コルサコフの3曲の交響曲(とした場合)の中で最も好みます。「シェヘラザード」の世界が好きな人には100%保証付きの名作です。

それにしても、気になるのは『愛の喜び』ってどういうものでしょう?ノース・コリアの「喜び組」とは違うのでしょうか。オジさんは一人で曲を聴きながら、ただただ妄想にふけってしまいます。自分の最後も、こうだと良いのになぁ・・・・。

ということで、僕の愛聴盤のご紹介です。

703エフゲニ・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団(1983年録音/ワーナーミュージック盤)(CD5枚セット)

この曲も、スヴェトラーノフの旧録音盤で聴いています。メロディアによる録音ですが、音質に不満は全く感じません。
スヴェトラーノフは、いつものように哀愁が一杯に漂うオリエンタルなメロディを存分に歌わせてくれます。もちろんロシア国立交響楽団の音も素晴らしく、金管の荒々しい力強さや、木管のほの暗い音色、弦楽の艶などにはほとほと溜息が出ます。
RCAへ録音した新盤は恐らく、これを更に上回る名演ではないかと思われますが、未聴です。

それでは、YouTubeから第4楽章「愛の喜び」を聴いてみましょう。ネーメ・ヤルヴィの演奏です。

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2014年1月24日 (金)

リムスキー=コルサコフ 交響曲第1番ホ短調op.1 ~ロシア初の交響曲?~

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さあ、いよいよソチ・オリンピックの開幕まで2週間となりました。「ソチ・オリンピック記念 ロシア音楽特集」も盛り上がってゆきましょう!

ニコライ・リムスキー=コルサコフは、作曲家になる前には海軍の軍人でしたが、まだ現役軍人の時代に書かれたのが、交響曲第1番作品1です。この作品はロシア民謡や東洋の旋律がふんだんに取り入れられていたので、民族主義者たちの間で大きな評判を呼んで、「ロシア初の交響曲」と呼ばれました。ロシア五人組の一人キュイは、「この曲は本当にロシア的です。ロシア人にしか作曲出来ないような音楽です。ドイツ気質の澱んだ特徴がいささかも見受けられないのですから。」という賞賛の手紙をリムスキー=コルサコフに書き送りました。

ただし、実際はロシアではアントン・ルービンシュタインが、既に交響曲第1番と第2番を書き上げていましたので、歴史的に「ロシア初」というのは誤りです。けれども、ルービンシュタインの作品はドイツ音楽の影響を大きく受けたものでしたので、ロシア人にとってみれば、この作品を「ロシア人による初めてのロシアらしい交響曲」と呼びたくなる気持ちはとても理解できます。とにかく、リムスキー=コルサコフはこの曲の成功によって、音楽家への道を歩むことを決心します。ですので、この交響曲は、リムスキー=コルサコフ自身にとっても、ロシア音楽界にとっても大変記念すべき作品なのです。

曲は古典的な4楽章構成で書かれています。

第1楽章 ラルゴ―アレグロ 荘重で神秘的な序奏部を持ちますが、主部は堂々と力強く、初期のドヴォルザークの交響曲を想わせます。さすがに現役軍人だけあり、行進曲を想わせるのが面白いです。続く旋律はカリンニコフばりの典型的なロシアの民謡調で情緒たっぷりです。

第2楽章 アンダンテ・トランクィッロ 静けさに包まれたロシア風のとても美しい主題を持ちます。途中シンフォニックにスケール大きく盛り上がります。展開の仕方が確かに交響曲のそれです。

第3楽章 スケルツォ、ヴィヴァーチェ リズミカルで迫力が有り、チャイコフスキーのバレエ音楽を想わせます。トリオの潤いある色彩の美しさはさすがです。

第4楽章 アレグロ・アッサイ 第3楽章と共通した、非常にチャーミングなロシアン・バレエを想わせるような音楽です。優雅な雰囲気に、とても心地良さを感じさせます。

初演時からいきなり評判を呼んだだけあって、ロシア情緒に満ち溢れた非常に魅力的な交響曲です。そしてロシア的ですが、大陸的な荒々しさよりは、むしろ優雅さや美しさをより多く感じます。

尚、この曲は初めは変ホ短調で書かれましたが、作曲者の手でホ短調に改定されました。従って、通常はホ短調の改定版で演奏されます。

リムスキー=コルサコフの交響曲のディスクは少ないので、CD選択の余地は余り有りませんが、僕が所有しているのは、スヴェトラーノフの旧盤の方です。

703エフゲニ・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団(1983年録音/ワーナーミュージック盤)

これはCD5枚セットで、メロディア録音によるスヴェトラーノフのリムスキー=コルサコフの交響曲や管弦楽曲の大半が収録されています。スヴェトラーノフは1993年にもRCAに交響曲を主体に再録音を行なっていますが、こちらの旧盤も交響曲は1970年代末から1980年代にかけての録音ですので、それほど古さは感じさせません。リムスキー=コルサコフの管弦楽曲を色々と聴きたい場合には便利なセットです。もしも交響曲中心に聴きたい方には、新しいRCA盤が勧められると思います。

スヴェトラーノフにこのような典型的なロシア音楽を演奏させて悪かろうはずはありません。100%の保証付きです。手兵のロシア国立交響楽団についても同様のことが言えます。金管楽器の力強さや、木管楽器のほの暗い音色には惚れ惚れさせられます。やはりロシア音楽の演奏はこうでなければいけませんね。この演奏だけで充分満足出来るのですが、これだけ素晴らしいと、新盤の方も聴いてみたくなります。

ところで、せっかくですのでYouTubeから美しい第2楽章をご紹介しておきます。ロシアの名匠ボリス・ハイキン/モスクワ放送響の演奏で、録音は古いですが、YouTubeでは一番良かったです。

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2013年2月 3日 (日)

リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェヘラザード」 名盤

Detouche

シェヘラザードという女性は、伝説上のイランの王妃ですが、「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」の語り手として知られています。どうして毎晩物語を語り続けなければならなかったのか、おさらいをしてみますと、昔々シャリアール王という王様が居ました。王様にはお妃様が居ましたが、このお妃様には大変な浮気癖があり、宮殿で堂々と浮気をしていたのだそうです。しかも奴隷とまで浮気をしていました。(よほど魅力的な肉体の奴隷だったのでしょうかね?)

ところが、王妃の浮気を密告されたシャリアール王は、ことの真相を確かめるために、ある日狩りに行くと見せかけて、途中で宮殿に引き返してきます。
すると、王妃は後宮で例の奴隷と浮気の真っ最中でした。
王様は怒り狂って、お妃も奴隷も下女たちも、全員処刑してしまいました。(おお怖ろしや~)

そして、王様はこのことが原因で女性を信じられなくなり、それからは処女と結婚して一夜だけ過ごしては、翌朝に処刑してしまう、という日々を過ごすようになります。
処刑した処女の数は3000人にも及んだそうです。うーん羨ましい・・・、おっと違った、なんてヒドイ奴だ!

そこで、時の大臣の娘であるシェへラザードが、父の反対を押し切って、自ら王様と結婚して一夜を過ごすことを志願しました。

さて、いよいよ王様の寝室に入ったシェへラザードは、面白い物語を王様に語ります。王様は彼女の最初の物語に聞き入り、次の話をするように命じますが、彼女は夜が明けたのを理由に話を終わりにします。そして、「明日お話しする物語は、今宵のものより、もっと心躍るでしょう」と言いました。王様は新しい話を聞きたさに、シェへラザードを処刑せずに生かしておきます。(見事な話術ですねぇ。どこかの結婚詐欺女みたいだ?)

こうして、毎日面白い物語を話したシェヘラザードと王様との間には、やがて3人の子供ができました。(ということは、やっぱり話だけでは無かったのネ。)
シェヘラザード王妃によって、王様は人徳と寛容を身に付けました。
その千と一夜の物語が、「アラビアンナイト」というわけです。

めでたし、めでたし・・・と言いたいところですが、それじゃ3000人の女性の命を奪った落とし前はどうつけてくれるんや!(ハルくん怒る)

リムスキー=コルサコフはロシア五人組の一人ですが、ロシア海軍に入隊して、世界の海を航海した変わり種です。ですので、この「シェエラザード」でも、大海原の描写に非常に優れています。民族的で情緒にあふれる音楽は、他のロシアの作曲家と共通していますが、とりわけ美しい旋律を書いているように思います。

交響組曲「シェエラザード」は、4曲で構成されていて、明かに「交響曲」を意識した構成です。独奏ヴァイオリンがシェへラザードの象徴として至る所で奏されますが、艶っぽい美女を想像させて、とても魅了されます。

一応、4曲のタイトルを記しておきます。

第1楽章「海とシンドバッドの船」

第2楽章「カランダール王子の物語」

第3楽章「若い王子と王女」 

第4楽章「バグダットの祭り。海。船は青銅の騎士の有る岩で難破。終曲」

第1楽章での、荒れ狂う大海原と静かで平和な航海との対比は最高です。さすがに本物の船乗りですね。僕が好むのは第2楽章の民族的な雰囲気で、漂う哀愁がこたえられません。第3楽章のロマンティックな美しさも素敵です。第4楽章はフィナーレに向かって極めてドラマティックに盛り上がります。再び海にたどり着いて最後は船が難破して幕を閉じます。

リムスキー=コルサコフはロシアといっても、中央アジア的で、いわゆる荒涼としたシベリア大地の雰囲気は感じさせません。特にこの曲はアラビアを題材としていますし、明るく演奏されることも多いように思います。でも、第2楽章に登場するオリエンタルな哀愁に溢れた旋律などにも、やはりロシア風の味わいが込められているように感じます。

それでは僕の愛聴盤です。

Schehrrazade_kondrashinキリル・コンドラシン指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1979年録音/フィリップス盤) 後述のゲルギエフ盤を聴いてしまうと物足りなく感じますが、コンドラシンがしっとりした音色のコンセルトへボウを指揮したオーソドックスな名演です。良くも悪くもゲルギエフやチェリビダッケのようなアクの強さが無いので、好みは分れるでしょうが、安心して抵抗感なく聴いていられる点は良いと思います。名コンマスのヘルマン・クレヴァースの独奏も美しいです。

Celibiセルジュ・チェリビダッケ指揮シュトゥットガルト放送響(1980年録音/AUDIOR盤) 同オケとのライブ録音はグラモフォンから1982年録音のものも出ていますが、それとは別の演奏です。海賊盤ですが、音いじりをしない音造りは正規盤以上に優れています。演奏は極めて遅いテンポでスケールの巨大な典型的なチェリビダッケのスタイルです。特に1楽章や終楽章の破滅的なカタルシスが凄いです。反面、2楽章は遅過ぎてもたれます。3楽章も更に美しく出来そうです。独奏ヴァオリンは表情が大胆で艶やかさに溢れていて、シェラザードの語りを聞くようなのが魅力的です。

Cherisセルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1984年録音/EMI盤) この人のこの曲の録音は、近い時期に集まっていますが、ミュンヘンでのライブは最もテンポが遅くチェリビダッケの本領発揮です。但し、終楽章などではシュトゥットガルトRSO盤に比べても緊張感が失われています。結局、この人にとってはブルックナーもRコルサコフも同じ方法論での演奏になってしまうのですが、共通しているのは聴き手の息が詰まらせられることです。こんな演奏を忠実に行なえるオケの力量、管楽メンバーの肺活量?は大したものです。聴き手を「凄い」と感じさせる大巨匠の技ではありますが、これが決して王道だとは思いません。

61h9hwg5twl__ss500_ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管(2001年録音/フィリップス盤) ゲルギエフの録音の中でもベストの一つです。スケールが非常に大きく、歌いまわしや表情が何とも魅力的です。オケの音には厚みと潤いが有りますし、ヴァイオリン独奏も技術、表情づけともに満足できます。全体にロシア風の味わいを強く感じられて、改めてこの曲がロシア音楽だと認識させられます。3楽章の美しさは絶品ですし、終楽章の手に汗握る展開もこれまで耳にしたことが無いほどです。正に王道の演奏であり、これにくらべればチェリダッケと言えども、からめての演奏という気がしてしまいます。

これ以外のディスクは手放してしまいましたが、オリエンタルな雰囲気が漂うカラヤン/ベルリン・フィル盤は案外悪く無かった記憶があります。ロストロポーヴィチ/パリ管盤はスケールは大きいものの、オケの音色が余りにも華やかに過ぎて好みませんでした。

結局、この曲はゲルギエフ盤一枚あれば事足りますが、もう一枚選ぶなら、何だかんだ言ってもチェリビダッケのAUDIOR盤です。

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