ベートーヴェン(交響曲第4番~6番)

2010年10月15日 (金)

ベートーヴェン 交響曲第6番へ長調「田園」op.68 名盤(ステレオ録音編)

Photo高校生の時にこの曲をすっかり好きになったころ、アンドレ・ジッドが書いた「田園交響楽」という本を読んでみました。主人公が盲目の娘ジェルトリュードを音楽会に連れて行き、この曲を聴かせると、彼女は「あなたがたの見ていらっしゃる世界は、本当にあんなに美しいのですか?」と言います。それは第2楽章の”小川のほとりの情景”のことでした。そして彼女は更に「目の見えない私は、耳で聞く幸福を知っていますわ。」と語ります。

けれどもベートーヴェン自身はこの曲を作曲したころには、難聴の病気がかなり悪化していましたので、この美しい音を自分の耳で聞くことは出来なかったはずです。きっと頭と心の中で音楽を美しく響かせていたのでしょう。

前回は「田園」の愛聴盤からモノラル録音盤をご紹介しましたが、僕らがこの曲を聴くときには、出来ればステレオ録音で聴きたいと思います。必ずしも絶対条件では有りませんが、この曲の持つ刻々と変わりゆく音の色彩と光の変化を感じ取るには録音が良いに越したことは無いからです。それではステレオ録音の愛聴盤を聴いてゆくことにします。

Beethoven-6-bjzxl_ac_sl1500_

オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1957年録音/EMI盤) EMIへのセッション録音による全集にも収められます。ゆったりとした構えでイン・テンポを守るいつものクレンペラーのスタイルで立派と言えば立派ですが、自然への湧きたつような喜びの気持ちは余り感じられません。その為に全体が退屈です。もう一つの弱点はオーケストラの音に色彩感が足らない点です。これはクレンペラー、楽団、EMIの三者に共通していることです。その割に終楽章で管楽器が煩かったりもします。録音そのものはこの年代のEMIとしては良好です。クレンペラーではモノラル編で記した1964年のベルリン・フィル盤が数段優れます。

41ldzhd1sdl__sl500_aa300_ ピエール・モントゥー指揮ウイーン・フィル(1958録 音/DECCA盤) 1950年代のウイーン・フィルの演奏がDECCAの優秀なステレオ録音で残されているのは幸せなことです。さしものウイーン・フィルといえども戦前の音の甘さと柔らかさが時とともに確実に薄れてしまっているからです。ですが、ここにはまだ都会的でない鄙びたウイーンの雰囲気が一杯に漂っています。モントゥーはメカニカルな統率をしない昔風の指揮者ですので、この時代のこのオケとこの曲にはベスト・マッチといえます。何の作為もなくウイーン・フィルに自然に歌わせた演奏だからこそ素晴らしいのです。変に神経質なところが無く、とても温かみを感じます。もしもワルター/ウイーン・フィルの戦前の演奏を良い音で聴きたければ、このCDを聴かれることをお勧めします。

41zm61pqq4l__sl500_aa300_ ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1958年録音/CBS盤) 言わずと知れた天下の名盤です。他の指揮者ではアメリカのオーケストラにこれほど柔らかい演奏をさせるのはまず不可能でしょう。歌いまわしや音のタメ、間の取り方などが、ワルターの意思の通りに表現し尽されています。それが、オケに教え込んだ跡がまるで感じられないのです。ワルターならではの至芸だと思います。但し管楽器のソロはウイーン・フィルと比べると聴き劣りするのは仕方が有りません。ともかく、これは大好きな演奏です。

Cci00055 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年頃録音/edel classics盤) これも全集盤に収められている演奏です。ウイーンの流麗なスタイルと比べると、明らかに異なる一音一音マルカートで明確に弾かれるドイツ流の音です。他の曲ではそこが断然魅力となるのですが、この曲の場合にはコンヴィチュニーの指揮も含めて、いささか堅苦しさを感じてしまいます。現代の国籍不明の都会的な音よりはずっと好きですが、やはりこの曲を聴くときには、ゆったりと浸れるような気分になりたいです。但し3楽章以降は、厚みのある音に聴き応えを感じられて中々に素晴らしいです。

Beethoven-56_20230527160501 ヨーゼフ・カイルベルト指揮バンベルク響(1960年録音/テルデック盤) 真のカぺルマイスターのカイルベルトは、古き良きドイツ的な演奏を愛する人には今も高い人気が有ります。特にハンブルク・フィルやベルリン・フィルを指揮した演奏は当時の楽団の音と相まって最高の組み合わせです。その点、バンベルク響はドイツ的ではありますが、先の2団体と比べると質において聞き劣りします。「田園交響曲なのだから田舎っぽくていいじゃないか」と言われればそれも一理有りますが、最高に美しい楽団の音ばかり聴いた後では、残念ながら満足はし切れません。録音はやや古めかしいです。

Beethoven-19-karajan ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1962年録音/グラモフォン盤) カラヤンが1960年代に録音した交響曲全集に含まれます。昔の指揮者が皆この曲を遅く演奏したわけでは無いですが、当時カラヤンの「田園」はポルシェで疾走する田園と揶揄されたものです。けれども第二次大戦後に「古いドイツから生まれ変わろう」とした時代ゆえにカラヤンはあれほどの人気を得たのでしょう。結果として、その後にやがて訪れる「軽薄短速」時代の先駆けとなったのだと思います。かつて暗くドイツ的だったベルリン・フィルの音も美しく磨かれて随分と洗練されて来ています。 しかし4楽章は「嵐」というよりミサイル爆撃のように感じるのは私だけ。。。?

51hfe4lgbfl_ac_ ハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮ウイーン・フィル(1967年録音/DECCA盤) 同じウイーン・フィルとの「運命」の演奏は、中々に素晴らしい演奏だと思いましたが、この曲は幾らか不満が有ります。まず1楽章冒頭の主題のフレージングが作り物めいていて自然さに欠けます。クレッシェンドが大げさなんですね。それに2楽章の伴奏音型が硬くて流れません。主旋律の歌わせ方はとても綺麗なのにもったいないです。但し、それを除いては非常に良い演奏です。モントゥーとの演奏よりは甘さが減ったとはいえ、ウイーン・フィルの音を聴くだけでもこの曲の場合には大いに楽しめます。

Beethoveb-19-075_20230522164801 オイゲン・ヨッフム指揮コンセルトヘボウ管(1968年録音/フィリップス盤) ヨッフムが残した三回の全集盤のうち二回目の全集に含まれます。オランダ王立の名門コンセルトヘボウの各楽器の美しい響きはヨーロッパの香りが漂って本当に素晴らしいです。田舎的な素朴さとは異なる貴族的な美しさとでも言えましょうか。ただ1、2楽章は更に美しく演奏できたのではないかと思います。3楽章も田舎にしては品が良過ぎる気もします。4楽章は荒々しさが十分で聴き応え有りますし、終楽章の美しさと徐々に高まる幸福感にも文句無しです。前半の出来が惜しまれます。 

3201081432 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1971年録音/グラモフォン盤) 1970年代に入ってコンサートマスターがウイーン生まれではないヘッツェルに交代してからは、ウイーン・フィルの音の甘さが少しづつ減少していきます。但し最晩年のベームにとってはオケを引き締めて統率するヘッツェルとはベストの組み合わせだったと思います。この演奏は、2楽章ではもう少し柔らかさが欲しいかなという印象ですが、3楽章以降では音が実に立派になり大変に感銘を受けます。甘さの少ない硬派の「田園」としてベストを争うと思います。

670 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1977年録音/Altus盤) 日本公演のNHKホールでのライブ録音です。当日の後半プログラムの「運命」と一緒にCDに収められています。ベームの「田園」はFM放送で聴いたザルツブルクでのライブがベストだったと思いますが、これはそれに迫る演奏だと思います。グラモフォン盤とは一長一短ですが、僕は1、3楽章はグラモフォン盤を、2、5楽章はライブ盤のほうを好みます。なお1楽章の提示部の反復はライブでは行いません。この時のテレビではヘッツェルがオケを強力にリードしている姿が非常に印象的でした。老ベームはこの4年後に亡くなりますが、まさかその後を追ったわけでも無いでしょうに、ヘッツェルも50代の若さでアルプス登山中に転落して亡くなってしまいます。そんなことを思い出しながら聴いていると感慨深いです。

0184442bc ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1977年録音/Berlin classics盤) これも全集盤に収録されています。いかにもドイツ的なきっちりした明確な演奏ですが、オケの音はゲヴァントハウスと比べるとずっと明るく柔らかいです。1楽章はブロムシュテットの指揮にやや譜読みの甘さを感じますが、2楽章以降はオケの素朴な音色を生かしていて美しいです。特に終楽章は流れが良く素晴らしいと思います。これはオーストリアではなくドイツの片田舎の美しさを感じさせる演奏です。

Boult_1678_20230531155701 サー・エイドリアン・ボールト指揮ロンドン・フィル(1977年録音/EMI盤) 写真のボールトの管弦楽作品BOXに含まれます。この人の膨大なEMI録音には不思議とベートーヴェンが少ないですが、その希少な録音がこの「田園」です。ボールトはこの曲を実演でも度々取り上げていた節が有ります。ゆったりと自然への賛歌を歌い上げた素晴らしい演奏です。ロンドン・フィルも力を発揮して美しい音を聞かせています。3楽章は落ち着きながらも躍動感が有りますし、4楽章も聴き応えが有ります。終楽章は深い祈りと感動を与えてくれます。録音はEMIらしい暖色系の音造りで悪く有りません。

Beethoven-19-emypxegpl_20230523172501 レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィル(1978年録音/グラモフォン盤) 1978年から1979年にかけてウィーンで行われたライブによる全集に含まれます。1楽章は比較的速めで生き生きとした雰囲気です。2楽章は一転してゆったりしますが、ウィーン・フィルの音が陶酔的なほど美しいです。3楽章は躍動感で弾けます。4楽章への緊迫した流れと「嵐」の迫力は流石です。そしてやって来る終楽章の賛歌ですが、ここはレニーにしてはもっと出来たのではないかという印象が無きにしも非ずです。もちろん凡百の演奏とは比べ物に成らないほどですが、期待値がそれだけ高いからでしょう。

Beethoven-19-pzbz147zl_ac__20230524101601 オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン(1980年録音/DENON盤) 独シャルプラッテンとの共同制作の全集盤に含まれます。豪快でも、耽美的でも有りませんし、どちらか言えば素朴に近い、虚飾の無いドイツの良心のような演奏です。全体の速さも中庸で音楽の流れが澱むことなく流れます。SKベルリンの響きはドイツ的で古雅な美しさが素晴らしく、戦後に旧西ドイツの団体の多くが近代的な明るい響きに変化してしまったのとは大違いです。スウィトナーの指揮もハッタリの無い正統的なもので、この楽団との相性はつくづく良かったと思います。かつて東京で聴いたこのコンビのモーツァルトの三大交響曲は最高の想い出です。

Beethoven-6-ph08005 クルト・ザンデルリンク指揮ケルン放送響(1985年録音/Profil盤) ザンデルリンクのブラームスは最高です。無表情の年配紳士が後ろを向いた背中に孤独感を感じさせるような佇まいがぴったりです。ところがベートーヴェンはどうも立派過ぎて感情を隠し過ぎます。この「田園」も田舎に着いた楽しい気分が少しも感じられません。1、2楽章はテンポも遅く退屈します。3楽章も重ったるく心が湧き立ちません。4楽章「嵐」の重量感は聴き応えが有り、終楽章も祈りの気分に包まれて心を打たれますが、前半のマイナスを取り戻すには遅いですね。ケルン放送響はとても良い響きで録音も優れるので勿体ないです。

91wmcdauwbl_ac_sl1500__20230524112601 ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管(1986年録音/フィリップス盤) ハイティンクとしては二回目の全集盤に収められています。この演奏から、まず感じるのがコンセルトヘボウの響きの圧倒的な素晴らしさです。素朴でも無く、派手でも無く、正にヨーロッパの音楽文化に根付いた豊穣の響きです。もちろんハイティンクの指揮も賞賛に値して、中庸の速さでこの曲の魅力を充分に引き出しています。1、2、5楽章の美しさ、4楽章の重量感と聴き応えはどんなに楽団が優れているにせよ、それを生かす力量が有ればこそです。フィリップスの録音も素晴らしく、演奏の感動に大いに貢献しています。

Abbdo_beethven6_8 クラウディオ・アバド指揮ウイーン・フィル(1986年録音/グラモフォン盤) 昔の音の柔らかさと甘さを失いつつあるウイーン・フィルをアバドが目いっぱい歌わせた演奏です。美しいことは無類ですが、極端なレガートが音楽の彫の深さを失わせて、どうもBGM的に聞こえる感も有ります。特に1、5楽章にその欠点が出ています。逆に2楽章はビブラートの美しさが際立っていて、このうえない陶酔感を与えてくれます。全体的に演奏の格調の高さはベームには遠く及びませんが、まろやかなアバドもやはり魅力的です。

Beethoven-19-apmt2mpcl_20230525114201 サー・コリン・デイヴィス指揮ドレスデン国立歌劇場管(1992年録音/フィリップス盤) 交響曲全集に含まれます。全体を中庸の落ち着いたテンポでしっかりと造形性を築き上げていますが、かつてこの楽団を指揮したブロムシュテットの「田園」と似ている印象です。少しも変わらない古雅な音色は都会的な洗練から離れ、この曲に相応しいです。リズムを厳格に刻み、弦楽はマルカートに弾かれ、内声部は厚くと、典型的なドイツ風の演奏ですが、随所に慈愛の雰囲気が溢れるのはデイヴィスの音楽性でしょうか。ドレスデンのルカ協会で行われた録音は、この楽団の“いぶし銀の響き”を捉えていて、旧東独エテルナの音に似ています。

Beethoven-19-kr7idozvl_20230525164501 ダニエル・バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場管(1999年録音/テルデック盤) 交響曲全集に含まれます。1楽章は一昔前風のゆったりとしたテンポで広がりが有ります。但し指揮者の細かい指示が演奏の自然さをやや損なっています。2楽章はゆっくりと歌わせています。3、4楽章はスケールが大きく重量感が有り、特に「嵐」のティンパニが雄弁です。しかし最も印象的なのは終楽章です。冒頭は静かで美しい祈りを感じさせますが、徐々に気分を高めて行く手腕が見事で中々に感動的です。録音も優れ、内声部の動きが上手く捉えられていて楽しめます。

Beethoven-19-_ac_ サイモン・ラトル指揮ウィーン・フィル(2002年録音/EMI盤) ウィーンのムジークフェラインで行われた連続演奏会のライヴ収録の全集に含まれます。ベーレンライター版を使用していて、テンポは速めですが、思ったほど快速ではありません。弦楽をノン・ヴィヴラート的に弾かせるなど、古楽器派的な音造りです。問題は、楽器バランスやフレージングを手を変え品を変えて神経質なほどにいじる点で、聴いていて煩わしく、面白くも何ともありません。ラトルの表現主義が完全に裏目に出ていて、これは指揮者と作品との完全な不適合ということでしょう。

Beethoven-19-l1500 リッカルド・シャイー指揮ゲヴァントハウス管(2009年録音/DECCA盤) 全集盤に含まれます。「運命」での速いテンポに負けず劣らず快速です。カラヤンが田園地帯のポルシェの疾走ならば、こちらはフェラーリの爆走です(さすがイタリア!)。ここにはドイツ的なリズムの欠片も無く、「何をそこまで慌てているの?」と呆れるばかりです。しかしオーケストラの優秀さには舌を巻きます。ヴィブラートを抑えめにして古楽器的な脂肪成分の少ないスッキリした響きも非常に美しいです。表現にラトルのような姑息さが無いのは良いですが、終楽章の感動が薄いのが残念です。

Beethoven-19-dk-yajwl_20230527135701 クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィル(2010年録音/SONY盤) ウィーン楽友協会大ホールで行われたベートーヴェン・チクルスのライブ収録による全集に含まれます。古いブライトコプフ版を使用していますが、演奏も1970年代のベームを想わせるような落ち着いた表現です。1、2、3楽章とゆったりと広がりが有り、現代の猫も杓子も速いテンポでサッサか演奏する周囲に流されず、ひたすら我が道を行くティーレマンは素晴らしいです。スケールの大きい「嵐」を経た終楽章は白眉で、天国的な美しさです。ウィーン・フィルのしなやかで美しい音色を十全に捉えたSONYの録音は実際に黄金のホールで聴いているような快感が得られます。

では、数少なく所有する古楽器オーケストラ盤も上げておきます。

Beethoven-19-aidmmnl_ac_ フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ(1990年録音/フィリップス盤) 全集盤に含まれます。1楽章は速いテンポで明快に進み、アクセントを強調した典型的な古楽器派スタイルで、ノン・ビブラートの弦楽が古楽の音色然としているので、ピリオド楽器の音を好む方には最高だと思います。反面、モダン楽器に親しんでいる人にとっては、痩せた音が貧相に感じられるでしょう。自分はそのどちらにも感じられます。2楽章は比較的速めで素朴さが良いですが、3楽章では音の薄さが気に成ります。4楽章は迫力と言うより音が混濁していて雑な印象です。終楽章は元々ピリオド楽器には不向きな楽章だと思いますが、モダン楽器のあの柔らかさが出ずにキンキンしています。

Beethoven-19-ga08hkoll_ac_ ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク(1992年録音/アルヒーフ盤) 全集盤に含まれますが、どの曲もこのオーケストラの技巧水準の高さには感心しますが、ピリオド楽器にもかかわらず音の薄さが気に成らないのにも驚きます。もっともアルヒーフ録音が貢献しているのも理由でしょう。但しこの曲ではノン・ビブラートの弦楽が古楽器の古雅な音を大いに味わえます。木管も素朴な音が非常に美しいです。聴いていて楽しさに溢れる演奏ですが、終楽章の天国的な広がりだけはピリオド楽器ではやはり難しいのかな。。。とは感じました。良い演奏なんですけどね。

以上のCDの中で特に好きなのは、いにしえのウイーン・フィルの音に魅了されるモントゥー盤、歌わせ方と間の取り方が絶妙なワルター盤、格調が高く立派でしかも美しいベーム/ウイーン・フィルのグラモフォン盤とNHKライブの両盤、そして新しいティーレマン/ウイーン・フィル盤というところです。それにしてもウイーン・フィルの演奏するこの曲はやはり特別です。

次回は「ベト7」です。まずはモノラル盤から聴いてみます。

| | コメント (51) | トラックバック (0)

2010年10月 8日 (金)

ベートーヴェン 交響曲第6番へ長調「田園」op.68 名盤(モノラル録音編)

Camille20pissarro8

ベートーヴェンの「田園交響曲」を初めて聴いたのは中学校の音楽鑑賞の授業でした。その頃は(自分はハードロック小僧でしたので)クラシック音楽には全くと言ってよいほど興味を持っていなかったのですが、第1楽章の明るい旋律と、第4楽章の嵐の情景だけはとても印象に残った記憶があります。この曲は作曲当時では珍しい標題音楽であることと、5楽章形式であったことから非常に革新的な作品でした。ベートーヴェンは既に古典形式の枠に捉われず、ロマン派的な作風に進みつつあったのです。この交響曲第6番は第5番「運命」と並行して作曲されましたが、曲想はまるで正反対で、ドイツ・オーストリアの自然や田園風景の美しさを一杯に湛えていて、あたかも目の前にその情景が浮かんでくるようです。

曲の標題内容については皆さんはとっくにご存じのことでしょうが、一応書きしるしておきます。

第1楽章 田舎に着いて喜びの気分がよみがえる

第2楽章 小川のほとりの情景

第3楽章 農民たちの楽しい集い

第4楽章 雷雨~嵐

第5楽章 牧人の歌、嵐のあとの喜びと感謝

ベートーヴェンらしいドラマティックな作風の「英雄」「運命」「第7」「第9」は大傑作ですが、この「田園」も実に美しく素晴らしい曲であり、僕は非常に好きです。特に好むのは、身も心もゆったりと水面の流れに漂っているような第2楽章と、祈りの気分に溢れた第5楽章です。いつまでも時間の過ぎるのを忘れて浸っていたくなります。この曲の初演はアン・デア・ウイーン劇場で第5番と同じ日に演奏されました。但しその演奏会では、どういうわけか「田園」が第5番、「運命」が第6番とされていました。

それでは、今回はフルトヴェングラーを中心にモノラル録音の愛聴盤を聴いてみます。

Walter_betho6_wien ブルーノ・ワルター指揮ウイーン・フィル(1936年録音/EMI盤) 古いSP盤への録音です。後にワルターはステレオ録音で、あの有名な名盤を残しますが、その原点と言える演奏です。そもそもこの曲でのウイーン・フィルの演奏は特別なものですが、ここでは昔のウイーン・フィルの夢見るように甘く柔らかい音を味わうことが出来ます。SP盤からの復刻ですので、途中でディスクの切り替え部分があったり、針音が入っていますが、聴いているうちに不思議と気にならなくなります。

Beethoven-19-lngal_ac_ ウィレム・メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1940年録音/フィリップス盤) 1940年にアムステルダムで行われたライブで収録された全集盤に収められます。1、2楽章がメンゲルベルクらしいテンポ変化や甘いポルタメントを加えた甘い歌い回しが頻出します。普通な?3楽章を経た4楽章は予想通り、金管とティンパニの強奏、強打となりますが、予想以上では有りません。終楽章の自由自在ぶりこそ本領発揮をしていますが、この楽曲の天上的な幸福感が薄くなり矮小化されてしまった感が有ります。録音はチリチリとノイズがずっと入りますが、ひとまず鑑賞は可能です。 

Cci00054 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1944年録音/ターラ盤) 第二次大戦中のライブ録音ですが、これも僕はターラのボックスで持っています。フルトヴェングラーは「田園」においてもスタイルを変えません。遅い部分は遅く、クレッシェンドに合わせてどんどんクレッシェンドしてゆくいつものドラマティックな表現です。「嵐」の部分のティンパニーの強打など余りに壮絶過ぎるのに驚かされます。ですのでフルトヴェングラーの第3番、5番、7番、9番の時のような絶対的な素晴らしさは感じていません。同じ古い録音を聴くならば、僕はワルター/ウイーン盤のほうがずっと好きです。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1947年録音/audite盤) 第二次大戦後のベルリン・フィルへの復帰演奏会初日の5月25日ティタニア・パラストでの録音です。RIASボックスに収められています。フルトヴェングラーが戦後の裁判によってしばらく指揮台から離れていたせいか、どことなく音楽の流れの悪さが感じられます。終楽章のアッチェレランドも性急に過ぎて落ち着きません。ベルリン・フィルも緊張感からか全般的にアンサンブルが今ひとつです。録音は1944年盤に比べれば随分良いのですが、auditeのリマスターが高音域を強調しているのが気になります。

Furt_beetho_6_wien ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1952年録音/EMI盤) フルトヴェングラーのウイーン・フィルとの「田園」は大戦中の古いスタジオ録音も有りますが、そちらは聴いていません。この曲に関してはやはりウイーン・フィルとの演奏が最高だと思います。1楽章は相当に遅いテンポで通しますが、弦や木管の音の柔らかさやデリカシー溢れる美しさは例えようもありません。2楽章も同様ですが、ベルリン・フィルのような暗さを感じません。大げさ過ぎない音楽的な「嵐」が過ぎ去った後の終楽章の祈りが感動的なことも比類がありません。途中のアッチェレランドもそれほど極端では無く自然さが有ります。海外Referencesシリーズの旧盤は厚い中低域の上に自然な高域がバランス良く乗った音なのでとても好きです。

Furt_beetho_6 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1954年録音/ERMITAGE盤) 演奏旅行中にスイスのルガーノで行ったライブ録音です。2年前のEMI盤の演奏に近く、全体的に遅くゆったりとしています。けれどもこの曲に限っては、ウイーン・フィルの柔らかく魅力的な音と比べると、どうしてもベルリン・フィルでは聴き劣りします。とはいえ2楽章の暗く小川の底に沈んでゆくような雰囲気はユニークですし、3楽章の農民たちの踊りも大男達が踊っているようで楽しめます。「嵐」での壮絶さはだいぶ影を潜めましたが、終楽章のアッチェレランドは相変わらず極端でやはり抵抗があります。スイス・イタリア放送による録音は水準以上でバランスの良いものです。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1954年録音/audite盤) 最後の長い演奏旅行を終えてベルリンへ戻って行われたライブ録音です。演奏の特徴はルガーノのライブとほとんど同じで、終楽章のアッチェレランドも相変わらず極端です。けれども地元に帰って来たせいか、演奏全体に落ち着きや安定感をとても感じます。ルガーノ盤よりもずっと美しく感じられるのは、RIASによる録音がスタジオ録音並みに優秀なせいかもしれません。但し、auditeのリマスターは相変わらず高音上がりです。僕はフルトヴェングラーがベルリン・フィルを振った「田園」の中ではこの演奏を一番好んでいます。

31hy76477kl__sl500_aa300_ アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1952年録音/RCA盤) トスカニーニは昔は「即物的だ」などと良く評されましたが、それは大きな誤りです。この演奏もテンポは幾分速めですが、機械的にさっさと味気なく進むわけではなく、絶妙なカンタービレとニュアンスが一杯に織り込まれています。「嵐」ではストレートな音の迫力を聴かせてくれます。全体は一貫して明るく明瞭な演奏なので、のどかな田園風景というよりもゴッホが描いた輝かしい陽光の中の風景を想わせます。

Erich_betho5 エーリッヒ・クライバー指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1953年録音/DECCA盤) 当時のコンセルトへボウは非常に上手く、音色もウイーン・フィルの柔らかい音とはまた違う艶があって魅力的です。1楽章では軽快に過ぎて、少々せわしなさを感じますが、2楽章になるとしっとりと良い流れで曲に酔わせてくれます。3、4楽章は颯爽としてリズムの切れが良くとても楽しめます。終楽章はテンポは速めですが、祈りと感謝の気持ちがとても良くでていて大いに惹かれます。

Beethoven-19-688_20230520105901 オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィル(1954年録音/グラモフォン盤) ベートーヴェンの交響曲全集を3回録音したヨッフムの最初の全集に含まれますが、この全集はモノラル、ステレオ録音が混在していて「田園」はモノラルです。これはベルリン・フィルを長く率いたフルトヴェングラーが亡くなる2週間前の録音で、ヨッフムがフルトヴェングラーの解釈を意識したかどうかは分かりませんが、1楽章冒頭が相当に遅いなど、解釈に近似性を感じます。4楽章の嵐の迫力と終楽章の幸福感の高まりも見事です。音質は流石に古めかしいですが、当時のベルリン・フィルのほの暗くドイツ的な音がそのままに感じ取れます。

Schu_bet_758 カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管(1957年録音/EMI盤) 全集盤の中でも特に印象に残る演奏です。1楽章の主題が弦ででてくると目いっぱいのレガートで弾かれていささか驚かされますが、その後は速めのテンポで流れ良く進みます。パリ音楽院管の明るい音の管楽器も印象的です。2楽章も速めですが非常に瑞々しい美しさに溢れています。3、4楽章は一転して躍動感と生命力で一杯です。終楽章は祈りというよりも歓喜の気分に溢れるというイメージです。録音はモノラルですが明快です。

Beethoven-6-befng7iql_ac_sl1000_ オットー・クレンペラー指揮ベルリン・フィル(1964年録音/TESTAMENT盤) この時期でモノラル録音というのは残念ですが、音質は明瞭です。何と言ってもクレンペラーとベルリン・フィルの録音は少ないですし、しかもライブなのが嬉しいです。演奏もフィルハーモニア管とのEMIのセッション盤とは比較にならない大きな魅力が有ります。1楽章は非常に遅いテンポですが全く退屈しません。2楽章の美しさ、3、4楽章の重量感ある聴き応え、そして終楽章のどこまでも高まりゆく崇高なまでの歓喜や幸福感と、どこをとっても素晴らしいです。

というわけで、フルトヴェングラーの演奏ではウイーン・フィルのEMI盤が断然好きです。それ以外ではワルター/ウイーン・フィル盤も良いのですが録音が相当古いので、それよりもシューリヒト/パリ音楽院盤、クレンペラー/ベルリン・フィル盤に惹かれます。

次回は、ステレオ録音盤を聴いてみることにします。

| | コメント (20) | トラックバック (0)

2010年10月 2日 (土)

ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調op.67 名盤(ステレオ録音編)

さて「運命交響曲」の、前回のモノラル録音編に続いて今回はステレオ録音編です。

Beethoven-56 ヨーゼフ・カイルベルト指揮ハンブルク国立フィル(1958年録音/テルデック盤) これは度々賞賛の投稿を頂いていた演奏で、なるほど古き良きドイツの音を愛する人には応えられない魅力が有ります。1楽章の前半は比較的落ち着いて進みますが、中間からにわかに音に気迫が増してゆきます。一々念押しするリズムは典型的なドイツ風。管弦楽の響きは北ドイツ的な暗くくすんだ音色で非常に魅力的ですし、特にホルンの古風で押し出しの強い音は最高です。2楽章、3楽章と堂々とした歩みが味わいを更に増していますが、白眉は終楽章で、じわじわと高まる演奏の底力の素晴らしいこと。幾らか古めかしい録音もこの場合は逆にプラスと成っているようです。

031 ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1958年録音/CBS盤) ワルターのベートーヴェンは偶数番号の曲が良いと言われていて、それは事実なのですが、僕は奇数番号も良いと思っています。1楽章のテンポは意外に速めですし緊張感も有ります。ワルターらしい音の流れを損なわない微妙な間やタメも随所に見られます。2楽章の気品も実に素晴らしく、曲の美しさに酔わせてくれます。但し3楽章以降が、やや迫力不足と言う印象が残ります。ワルターの晩年のスタジオ録音は体調を考慮して、時間を短く区切りながら収録したそうなので、これはやむを得ないでしょう。ステレオ録音で聴けるだけでも有り難いです。

Beethoven_cluytensアンドレ・クリュイタンス指揮ベルリン・フィル(1958年録音/EMI盤) 全集盤に収められている演奏です。クリュイタンスのベートーヴェンは良いと思うのですが、オーケストラの響きにドイツらしさが感じられないのが不満です。せっかくベルリン・フィルがそういう重厚な音を残していた時代の録音なのにです。クリュイタンスの音造りも有るのでしょうが、それよりもEMIの録音(リマスタリング)だとパリ管もベルリン・フィルも音色が同じに聞こえてしまうのが問題です。グラモフォンではそのようなことは無いのすが、カラヤンは演奏に魅力が感じられませんし、フリッチャイは全集を完成させられませんでした。中々上手くいかないものです。

Beethoven-5-8-l_ac_sl1500_ オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1959年録音/EMI盤) EMIへのセッション録音による全集盤にも収められます。ゆったりとした構えで頑固にイン・テンポを守るいつものクレンペラーのスタイルですが、1楽章のアウフタクトには緊張感が足らないように思います。その為に、まったりと感じられてなりません。もっとも終楽章はスケール巨大でクレンペラーの本領発揮と言えます。オーケストラの音にドイツの楽団のような堅牢さが足らないのは残念で、後述するドイツの楽団と比べると明らかです。録音は当時のEMIとしては良好です。

Beethoven-19-688_20230520105901 オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送響(1959年録音/グラモフォン盤) ベートーヴェンの交響曲全集を3回録音したヨッフムの最初の全集に含まれます。この全集は管弦楽がベルリン・フィルとバイエルン放送響、録音がモノラルとステレオ混在だった為に不遇の扱いを受けたのは気の毒です。バイエルン放送響は当時のベルリン・フィルよりは音が明るいですが、それでもドイツ的な響きに変わりは有りません。ヨッフムの指揮にも活力が有り、晩年の巨匠然とした印象とは少々異なります。録音はまずまず優れています。 

Cci00055 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年頃録音/edel classics盤) これも全集盤に収められている演奏です。全曲に共通していますが、ゲヴァントハウス管の古き良き時代のドイツの響きが実に魅力的です。一音一音マルカートではっきり弾かれる音は、子音を明確に発音するドイツ語と同じです。現在のベルリン・フィルのように団員が国際化したオケではこういう音は出ません。但し、破格の曲の演奏にしてはコンヴィチュニー親父の指揮が真面目すぎて幾らか面白みに欠ける感は有ります。

Furicsay938 フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン・フィル(1961年録音/グラモフォン盤) 昔、ブーレーズ盤が出た時に1楽章の遅さが話題になりましたが、一番遅かったのは実はこのフリッチャイ盤でした。その後、陽の目を見たクナッパーツブッシュの演奏は更に遅いうえにテンポの浮遊性が有るので古典的な造形を損なっていますが、フリッチャイは造形をしっかり保っています。続く第2、第3楽章も遅く、沈み込んでゆく雰囲気がユニークです。但し終楽章はそれほど遅くは有りません。勝利の歌を高らかに歌い上げます。特筆すべきは当時のベルリン・フィルの暗く分厚い響きで、この演奏が素晴らしいのはこの響きが有ればこそです。

Beethoven-5-6-dzhd1sdl_ac_ ピエール・モントゥー指揮ロンドン響(1961年録音/DECCA盤) デッカ録音の全集(9番のみウェストミンスター録音)ではロンドン響とウィーン・フィルが半々で起用されましたが、5番はロンドン響です。1楽章は当時としては快速テンポで、モントゥーはとても高齢とは思えないほどのエネルギーを漲らせています。2楽章も弛緩することなく颯爽とした歩みを見せますが、味わいが有ります。3、4楽章は特にスケールが大きいわけでは無く、躍動感に溢れた演奏です。デッカ録音だとロンドン響の響きがやや薄く感じられるのは勿体ないです。

Beethoven-19-karajan ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1962年録音/グラモフォン盤) カラヤンが1960年代に録音した交響曲全集に含まれます。昔は随分速いテンポで味もそっけもないような気がしましたが、考えてみればエーリッヒ・クライバーだって結構速いですし、何も特別なことは有りません。ベルリン・フィルの音もフルトヴェングラー時代の響きの名残がかろうじて感じられます。金管、打楽器の鳴りの良さや弦楽の威力などやはり大したものです。のちのカルロス・クライバーや古楽器派の演奏を先取りしていたと言えないことも無さそうです。録音は当時としては優秀です。

51oak8ttxbl_ac_ オットー・クレンペラー指揮バイエルン放送響(1965年録音/EMI盤) これはミュンヘンにおけるライブですが、素晴らしい演奏です。クレンペラーらしい遅いテンポで悠揚迫らずに巨大な造形を構築しますが、オーケストラが優秀なので息切れすることなくドイツ的で立派な響きを堪能させてくれます。第2楽章は大河の流れのごとく深々としていますし、終楽章の巨大なスケールでありながらも推進力を失わないのは驚きです。従って全体を通すとフリッチャイを上回るかもしれません。録音はホールトーン型ですが、バイエルン放送局の録音なので皮肉にもEMIよりずっと良いです。

Beethoven-5-klemperer オットー・クレンペラー指揮ウイーン・フィル(1968年録音/テスタメント盤) こちらは1968年のウイーン芸術週間におけるライブです。晩年のクレンペラー・スタイルの遅いテンポでスケールの大きい演奏です。この人は常に人間的なドラマティックな表現とは無縁です。クナッパーツブッシュの場合は更にスケールが大きく、かつテンポに浮遊性が有るので聴いていて飽きないのですが、クレンペラーは一貫してイン・テンポで通すので退屈しがちです。しいて言えば終楽章は名演です。ウイーン・フィルの柔らかくしなやかな音は良いですが、クレンペラーのこの曲の演奏ではバイエルン放送響盤を最も好みます。

Beethoven5_hshumit

ハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮ウイーン・フィル(1968年録音/DECCA盤) この人は地味な存在ですが、北ドイツ放送やバイエルン放送を振ったライブでは非常に素晴らしい演奏を聴くことが出来ます。「運命」の演奏は、このウイーン・フィルとのDECCA盤しか聴いたことは有りませんが、これは中々に素晴らしい演奏です。テンポは中庸ですが生命力が有り、何も変わったことはしていませんが、ウイーン・フィルの柔らかくも張りの有る音を上手に生かしています。この演奏はもっと評価されて良いと思います。DECCAの録音も優秀です。

Beethoveb-19-075_20230522164801 オイゲン・ヨッフム指揮コンセルトヘボウ管(1968年録音/フィリップス盤) ヨッフムが残した三つの全集盤のうち二度目の全集に含まれます。前述のバイエルン放送響盤も「最高」というほどの出来では無かったですが、名門コンセルトヘボウを指揮したこちらも今一つ緊張感や迫真性に不足する気がします。ヨッフムには余り向かない曲なのかもしれません。それでもこの楽団の各楽器の美しい響きにはヨーロッパの香りが漂いますし、そうした味わいを楽しむことは出来ます。余りに無我夢中に成る「運命」が苦手の人には良いかもしれません。録音は優れています。

510 ジョージ・セル指揮ウイーン・フィル(1969年録音/オルフェオ盤) セルはクリーヴランド管とのセッション録音では、余りに徹底的に鍛え上げたオーケストラコントロールに冷徹な無慈悲さが感じられて今一つ好みません。このザルツブルグ音楽祭のライブでも、ウィーン・フィルに対して相当細かく要求を出しているのは明らかなのですが、このオケの持つ音の柔らかさにかなり中和をさせられていて抵抗は有りません。それどころか全体を包み込む緊張感が半端でなく、この曲の代表盤の一つと言っても過言では有りません。このCDには同日のギレリスとのピアノ協奏曲第3番も収録されていて、そちらも名演です。

Beethoven5_bohm カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1970年録音/グラモフォン盤) これはグラモフォンへの全集の中の録音です。前々年のイッセルシュテット盤とのウイーン・フィル競演になりました。ベームのほうが重量感が有りますが、ウイーン・フィルの美感と切れの良さではイッセルシュテットが勝っている印象です。また、1楽章前半と3楽章で幾らか緊張感に欠けるのが気になります。さすがに終楽章は中々の力演になっていますが。この第5の演奏は、あくまで全集盤のためのものと割りきった方が良いかもしれません。

522 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1972年録音/Scribendum盤) モスクワでの演奏会録音です。’73の別録音も有り、そちらはモノラルですが、これはステレオです。但し録音の明瞭度にはやや欠けています。演奏は余分な脂肪分の無い筋肉質のものですので、もう少し潤いが欲しくなります。ティンパニーの強打などは凄まじいのですが、フルトヴェングラーのように流れの中で叩かれるのでは無く、そこだけが突出して聞こえてしまうのです。意外に繊細さを欠いた音も多々有りますし、僕は4番の演奏ほどは好みません。

51chtd6fxsl__sl500_aa300_ カルロス・クライバー指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) エーリッヒの息子カルロスの名を世界に轟かしたセンセーショナルな演奏です。最初に聴いた時には、一気苛性な勢いにすっかり魅了されました。但しもう長いこと聴いていなかったので、今回聴き直してどう感じるかが楽しみでした。この躍動感と生命力はやはり凄いです。但し「苦悩や葛藤」という陰りは有りません。極めて健康的なのです。聴いたイメージはトスカニーニに近いです。やはりこれは「運命」の演奏を語るに外せない演奏だと思いますが、好きか嫌いかは全くの聴き手しだいです。

0184442bc ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1977年録音/Berlin classics盤) これも全集盤に収録されている演奏です。毎回同じことばかり書いていますが、ルカ教会で録音された、このオケのいぶし銀の響きを味わえる演奏です。但しブロムシュテットの指揮に個性や主張は有りませんので、第3や第5のようなドラマティックな曲には余り向いていません。あくまでもシュターツカペレ・ドレスデンという唯一無二の典雅な響きの楽団で全集を聴けることに価値が有ります。

Beethoven-19-emypxegpl_20230523172501 レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィル(1977年録音/グラモフォン盤) 1978年から1979年にかけてウィーンで行われたライブによる全集の最初の録音でした。現代の耳で聴けば、幾らか遅めのテンポでゆったりとした印象です。この曲だからと、ことさら力むこと無く、ウィーン・フィルの持つしなやかで美しい音を出来るだけ生かしたような演奏です。しかし終楽章に入るとついにギアを上げ、どんどんと推進力、生命力が高まって白熱してゆきます。このあたりの構成力はさすがレニーだと言えます。ライブながら録音も優れていて弦楽の繊細さなども見事に捉えています。

670 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1977年録音/Altus盤) 日本公演のNHKホールでのライブ録音です。グラモフォン盤から7年後の演奏ですが、力強さはスタジオ録音の比ではありません。テンポもずっと速めですし、緊張感が違います。音の持つ迫力はまるで別人のようです。やはりベームは実演の人ですね。NHKの録音も優秀ですので、この名演奏を心から味わうことができます。当日の前半プログラムは「田園」でしたが、これも非常な名演で同じCDに収められています。

W397179065 クラウス・テンシュテット指揮キール・フィル(1980年録音/Weitblick盤) テンシュテット・ファンの間では有名な伝説的ライブです。初めて西独のポストに就いたのがキール歌劇場で、そのオーケストラとの録音です。この歌劇場の規模は小さく、楽団も最上とは言えなかったことから、響きの薄さが幾らか感じられないことも有りません。しかしドイツの凄い所は、こんなローカル楽団でも良い指揮者の手にかかればしっかりとした演奏が出来てしまうことです。それどころかテンシュテットと共に死に物狂いになり壮絶な演奏を繰り広げています。録音も良く、ティンパニの強打が見事に捉えられています。

Beethoven-19-pzbz147zl_ac__20230524101601 オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン(1981年録音/DENON盤) 独シャルプラッテンとの共同制作の全集盤に含まれます。スウィトナーのモーツァルトは速いテンポによる快演揃いで大好きですが、この「運命」もその延長上に有る演奏に感じられます。もっとも全体的にテンポは中庸でそれほど速過ぎず、むやみに力むことの無い純音楽的な演奏です。それでいて聴き応えが有り充実感に満たされているのは流石です。SKベルリンの響きはドイツ的ですが古雅な美しさが素晴らしく、かつて東京で聴いたこのコンビの実演と同じ音を捉えている録音が嬉しいです。

Beethoven-2-5-179 クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン響(1984年録音/WEITBLICK盤) ザンデルリンクは英国のフィルハーモニア管とは全集録音を行いましたが、ドイツの楽団との録音は限られているので貴重です。ベルリンでのライブにおける収録です。1楽章はブラームスなどの演奏のイメージとは異なり意外と速めですが、いかにもドイツ風で風格を漂わせるのは流石です。2、3楽章はいずれも堂々たる音楽です。そして終楽章はいよいよ大きな足取りで、もたれることなく、徐々に音楽が巨大化してゆきます。録音もバランスが良く、ドイツ的な音色を味わえます。

91wmcdauwbl_ac_sl1500__20230524112601 ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管(1986年録音/フィリップス盤) ハイティンクとしては二回目の全集盤に収められています。1楽章は意外と速いテンポで疾走します。リリース当時にはもっと速く感じられたと思います。ただし演奏にカラヤンのような威圧感は有りません。これはハイティンクの美点でしょうか。2楽章以降は中庸な速さで立派さを感じさせます。コンセルトヘボウはヨーロッパ文化の歴史そのものの落ち着いた豊穣の響きを持ちます。若くして監督に就任して30年間もその響きを守ったハイティンクの貢献は無視できません。フィリップスの録音もまた優れた音を捉えています。

81bakmtcvql_ac_sl1200_ クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィル(1990年録音/BBC Radio盤) こちらはロンドンでのライブです。やはりテンシュテットらしい激しい演奏ですが、こちらの方がスケールが大きく演奏のまとまりも良く、フレージングにも味わいが深味が増しているように感じられます。その反面、興奮の度合いでは前述のキール・フィル盤に軍配が上がります。従って両者に甲乙を付けるのは中々に困難なのですが、あえて好みで言えばオケの音にドイツ的な味が有るキール・フィル盤の方になるでしょうか。

Beethoven-19-apmt2mpcl_20230525114201 サー・コリン・デイヴィス指揮ドレスデン国立歌劇場管(1992年録音/フィリップス盤) 交響曲全集に含まれます。厳格にリズムが刻まれ、マルカートに弾く弦楽群、厚い内声部、管楽器の古雅な音色など典型的なドイツ風の演奏です。ドレスデンのルカ協会で行われた録音が、このオケの“いぶし銀の響き”を良く捉えていて、旧東独エテルナの音に似ています。デイヴィスの指揮はゆったりと落ち着いたテンポで堂々とした立派な造形を築き上げていますが、この「運命」に爆発力や興奮を求めると裏切られると思います。あくまで宮廷貴族のような風格に包まれています。

Beethoven-19-kr7idozvl_20230525164501 ダニエル・バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場管(1999年録音/テルデック盤) 交響曲全集に含まれますが、バレンボイムの指揮は速過ぎないテンポでスケールの大きさが有りますが、同時に迫真性も感じられます。この両面のバランスの良さにはバレンボイムの指揮者としての才能を感じます。また名門歌劇場の楽団ならではの響きにはドイツ的なほの暗さが有り、ホルンの野趣の有る音色が魅力的です。ティンパニの程良い強打も効果的です。録音も優れていますし、これだけオーソドックスで充実感が感じられる「運命」もそう多くは有りません。

Beethoven-19-_ac_ サイモン・ラトル指揮ウィーン・フィル(2002年録音/EMI盤) ウィーンのムジークフェラインで行われた連続演奏会のライヴ録音です。ベーレンライター版を使用しています。快速テンポで進み、フォルテやアクセントを刺激的なほどに強調し、弦楽をノン・ヴィヴラート的に弾かせるのは最近の古楽器派の挑戦的な演奏スタイルの様です。つまり往年の巨匠風の演奏ではありません。そういえばラトルは巨匠というイメージでは有りませんからね()。演奏に含蓄の深さは無いかもしれませんが、聴いていて非常に楽しいことは確かです。ライブですが演奏は完璧、録音も優秀です。

Beethoven-19-l1500

リッカルド・シャイー指揮ゲヴァントハウス管(2009年録音/DECCA盤) 全集盤に含まれます。「英雄」も速かったですが、この曲も快速で、ラトルを上回ります。ドイツ的なリズムの念押しも無く、煽りに煽ります。「何をそこまで慌てているの?」と問いかけたくなります。しかしオーケストラは見事に鳴り切っていて迫力は凄いです。三楽章中間部のコントラバスもあの速さで見事です。この歴史あるドイツの名門がシャイーに忠実に飼い慣らされているのは興味深いですが、ドレスデンの名門ならこうは行かないでしょう。音楽に深味は感じませんが、音響的な快感は中々のものです。録音も優秀です。

Beethoven-19-dk-yajwl_20230527135701 クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィル(2010年録音/SONY盤) ウィーン楽友協会大ホールで行われたベートーヴェン・チクルスのライブ収録による全集に含まれます。古いブライトコプフ版を使用した、時代の趨勢に逆行した解釈ですが、近年流行の快速テンポで刺激的な「軽薄短速」演奏へ目もくれず我が道を行くティーレマンは好きです。第1楽章はこの人にしては割と速めの印象で推進力も有ります。2、3楽章はゆったりと広がりが有り面目躍如です。3楽章から終楽章に移る際のスケールの大きさはちょっとフルトヴェングラーを思い出しますが、そのあとのテンポの上げ方が拙速なのが残念です。録音はホールの臨場感が有り、ウィーン・フィルのしなやかで美しい音色を味わうことが出来ます。

以前、「古楽器派の演奏が一つも無いのは“時代遅れ“では」と仰った方もおられました。それでも聴きたくないものを無理に聴くことは無いので避けて来ましたが、さすがに最近は少しは聴こうかという気に成り、聴いてみました。

Beethoven-19-aidmmnl_ac_ フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ(1991年録音/フィリップス盤) ブリュッヘンと18世紀オーケストラは、かつての古楽器オーケストラブームの立役者では無いでしょうか(当時聴こうとしなかった自分はへそ曲がりの頑固者ですが)。全集盤に含まれるこの曲も快速テンポでキレが良く、明快なダイナミクスの典型的な古楽派演奏ですが、ノン・ビブラートの弦楽の音を古雅で美しいと感じるか、干物の様に痩せた貧相な音と感じるかは聴き手次第です。実は自分にはどちらにも聞こえます。さすがに巨大な編成によるベートーヴェンには今では違和感が有りますが、モダンオケによる厚みの有る響きはやはり醍醐味だと思います。もちろん古楽器オケらしい「運命」を聴きたい方にはこの演奏はお勧め出来ます。

Beethoven-19-ga08hkoll_ac_ ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク(1994年録音/アルヒーフ盤) 全集盤に含まれます。1楽章はブリュッヘン以上に快速で、エッサ・エッサ・ホイサッサと疾走して気分爽快です。「己の運命と格闘するなんてまっぴらごめんだ」という聴き手にはぴったりだと思います。2楽章も弾むような足取りが輝かしいです。3楽章も呆れるぐらい速いですが焦燥感が良いです。終楽章も白熱ぶりと迫力に圧倒されます。オーケストラの技巧水準の高さはもちろんですが、ピリオド楽器にもかかわらず音の薄さが気に成らず、管、打楽器のバランスも絶妙です。これはアルヒーフ録音の貢献でもあるのでしょう。 

以上のステレオ録音盤の中からマイ・フェイヴァリットを挙げるとすれば、1にフリッチャイ/ベルリン・フィル、2にカイルベルト/ハンブルク・フィルとベームのNHKライヴですが、他にもワルター、クレンペラー/バイエルン放送響、S-イッセルシュテット、スウィトナー、ハイティンク、息子クライバー、セル/ウイーン・フィル、テンシュテット/キール・フィル、バレンボイムなどは外せません。

次回は第6番「田園交響曲」です。

| | コメント (38) | トラックバック (0)

2010年9月25日 (土)

ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調op.67 名盤(モノラル録音編)

220pxbeethoven_3 「第五じゃない!第一です!」なんて電気屋さんのテレビコマーシャルをご存知の方は、それなりのお年の方ですね。なんて話はどうでもいいとして、ベートーヴェンのいよいよ第5交響曲です。通称「運命」ですが、実はこの呼び名が広く使われているのは日本だけ。本国ドイツでも余り使われません。他の国ではほとんど使われていないのが実情です。「運命はこのように扉をたたく」とベートーヴェンが語ったと弟子のシントラーが書き記したからですが、曲とは必ずしも結びついていないようです。我々日本人にとってはさんざん刷り込まれているせいか、すっかりイメージとして定着していますけれども。

Vcm_s_kf_repr_400x168

それにしてもこの曲は傑作です。第1楽章アレグロ・コンブリオの冒頭の8つの音が、何度も何度も繰り返されて曲を構成するあたりは正に天才的としか言いようが無いですね。そして、この音楽の持つパワー、パッションといったらどうでしょう。第2楽章アンダンテの気品が有って尚且つ勇壮な広がりも何とも素晴らしいです。第3楽章アレグロはスケルツォ楽章ですが、運命の動機が高らかに歌われて、あたかも苦悩と勇気が対決しているようです。そして切れ目無しに続く第4楽章の雄渾なことは並ぶものが無いと思います。正に「苦悩を突き抜けた歓喜」です。ですので、この曲をスタイリッシュに整然と流すだけのような演奏だけは決してしてほしくないのです。

それでは、例によってフルトヴェングラーを中心にモノラル録音時代の名盤を聴いていきましょう。

Cci00054 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1943年録音/ターラ盤) 第二次大戦中の放送用録音です。僕はターラのボックスで持っていますが、中低域に量感のある聴きやすい音です。フルトヴェングラーは大戦中はナチスドイツの海外に向けた文化的な象徴でした。どうしても彼を亡命させるわけにはいかなかったのです。ですのでベルリン・フィルに在籍したユダヤ系楽員もナチスの迫害からはかなり例外扱いされました。というよりもフルトヴェングラーが守ったのですが。従ってオーケストラの水準も落ちることなく保たれていました。フルトヴェングラーの手足のように自由自在に動くオケが極限状態の中で、どれだけ白熱した凄い演奏を行っていたかの記録は、ファンならずとも一度は聴いておかなければなりません。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1947年録音/audite盤) 第二次大戦が終わってフルトヴェングラーがベルリン・フィルへの復帰した歴史的演奏会です。この時は5月25、26、27日と29日の4日間に同じ曲目で行われました。これは初日25日の録音です。会場のティタニア・パラストは古い映画館なので残響は少ないですが、RIAS放送録音集ではマスターテープからのマスタリングでかなり明快な音で聴くことができます。久々の演奏会なので初めのうちは指揮とオケの間に幾らか様子を見合っている印象を受けますが、逆に記念の演奏会を実感できて興味深いです。

Furt_berlin_5img ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1947年録音/グラモフォン盤) ベルリン・フィルへの復帰演奏会3日目の5月27日の演奏ですが、これは昔からグラモフォンが発売していましたので非常に有名です。会場は長い間ティタニア・パラストとされていましたが、最近ではベルリンに有ったソ連放送局のスタジオに客を入れて演奏されたことが分かっています。さすがに復帰3日目の演奏だけあって、指揮とオケの息がピタリと合っています。かつての手足の関係が完全に戻っています。演奏そのものをとればやはりベストかもしれません。グラモフォン盤は旧盤で持っていますが、米MYTHOSのアナログ盤からの復刻CDがベールを2枚剥いだような次元が異なる良い音ですのでファンには是非のお薦めです。

Betho5_furemi ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1954年録音/EMI盤) これは亡くなる年の3月のスタジオ録音です。ここには’43年や’47年のあの白熱したパワーと変幻自在のドラマは見られません。イン・テンポでスケール大きく広がりのある演奏です。それを物足りないといった感想もよく聞きます。けれども戦前戦後を通してドイツ音楽を一人で支えてきた神様の最後の境地として耳を傾けるに充分の価値が有ると思います。優秀な録音でウイーン・フィルの美感を味わえるのも嬉しいです。3楽章から4楽章へのブリッジを非常に遅く巨大なスケールで持ちこたえて、そのあとに気が付かないぐらいに僅かづつ加速してゆく様はこの人にしか出来ない神業です。僕は終楽章だけならこの演奏が一番好きかもしれません。

41uvmjpcql__sl500_aa300__2 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1954年録音/audite盤) これもRIAS放送録音集に収めらえている’54年5月の演奏です。フルトヴェングラーが亡くなる半年前の最後の第5の録音です。音質もスタジオ録音並みに優秀です。テンポ設定ではウイーン・フィルとのEMI録音が一番遅く、それよりも幾らか速めですが、これはやはり実演であったせいでしょう。但し全盛期の白熱とパワーはもはや有りません。フルトヴェングラーが手兵ベルリン・フィルと共にした最後の演奏ということで、やはり大切にしたいと思っています。

Beethoven-19-lngal_ac_ ウィレム・メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1940年録音/フィリップス盤) 1940年にアムステルダムで行われたライブで収録された全集盤に収められます。弦のうねるような歌い回しと甘いポルタメントが印象的ですが、ティンパニの強打や壮絶な金管にも驚きます。テンポ・ルバートは意外と少ないです。とにかく濃厚な演奏ですが、戦後とかく小奇麗にまとまるようになった演奏スタイルとはまるで異なります。岡本太郎では無いですが「芸術は爆発だ!」です、正にこれは。録音はチリチリとノイズがずっと入りますが、低音域が厚く迫力のある音なので気に成りません。

31hy76477kl__sl500_aa300_ アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1952年録音/RCA盤) フルトヴェングラーの演奏がロマン的なのに対してトスカニーニはよく即物的だと言われました。確かに表面的なスタイルは正反対ですが、演奏家としての凄さはお互いに認め合っていたそうです。両者に共通していたのは炎と燃え尽きるような情熱と生命力です。フルトヴェングラーには陽の裏側の陰りを強く感じることが多いのに対して、トスカニーニはどこまでも陽側の精神の強靭さを感じます。残響の無い録音が即物的だという評価を助長したのでしょうが、決してそんなことはありません。速くストレートな演奏の中に絶妙なカンタービレとニュアンスが一杯に織り込まれています。

Beethoven-5-bohm カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(1953年録音/グラモフォン盤) ベームがフルトヴェングラー存命中のベルリン・フィルを指揮した数少ない録音ですが、壮年期のベームの迫力ある指揮ぶりに圧倒されます。当時のベルリン・フィルの暗く厚みの有るドイツ的な響きにも惹かれます。テンポはほとんど動かさずにイン・テンポに近いですが、セッション録音にもかかわらず、ベームならではの音の押しの強さと堅牢な造形性に支えられてじわじわと高揚感が増してゆき。すこぶる聴き応えを感じさせます。モノラル録音ですがバランスが優れていて鑑賞に支障は有りません。

Erich_betho5 エーリッヒ・クライバー指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1953年録音/DECCA盤) カルロスの実父クライバーには根強いファンがいますし、「フィガロ」などの未だ最高の名盤も有ります。基本的に速めのテンポで優雅さとニュアンスを持ち合わせるのはシューリヒトに似ています。但しこの人には驚かせるようなデフォルメは有りません。終楽章に向かって徐々に高揚してゆく良い演奏なのですが、強いて言えば1楽章で音の緊張感に不足する部分が有るのが欠点です。DECCAの優秀な録音はモノラルでもオケの素晴らしい音を捉えていて嬉しいです。

Schu_bet_758 カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管(1957年録音/EMI盤) これもEMIへの全集に収められています。1楽章は速めのテンポですが、シューリヒトにしては案外遅めな気がします。トスカニーニや父クライバーのほうがよほど速いです。けれども強靭な生命力はいつもと変わりなく、決め所の迫力はトスカニーニに負けません。2楽章以降も絶妙なニュアンスの変化を見せながら進みます。4楽章ではトランペットが明るい音色で勝利の歌を高らかに奏するのですが、ビブラートを目いっぱいかけ過ぎるのが少々耳につきます。

Betho5_kuna ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ヘッセン(フランクフルト)放送響(1962年録音/ターラ盤) 「クナッパーツブッシュはベートーヴェンに不向きであるという風評に真っ向反対をする」という評論家の方がおられましたが、僕はやっぱり不向きだと思っています。苦悩、歓喜という人間的なドラマ抜きで部分部分をじっくりと積み重ねてゆくブルックナー・スタイルの演奏はどうも合わないと感じるからです。クナのファンはどんな曲を演奏してもクナであるところが嬉しいのでしょうが、僕の聴き方はやはり先に音楽があっての演奏選択なのです。とはいえこの極めて遅く巨大で圧倒的な「運命」も是非一度は聴かれて欲しいと思います。意外にハマるかもしれませんよ。

以上の「第5」の演奏の中で特に好きなものを挙げれば、やはり人間の苦悩や歓喜を他の誰よりもドラマティックに表現し切っているフルトヴェングラーになります。とりわけ’47年5月27日盤、’54年EMI盤、’54年RIAS盤の3つです。他にはトスカニーニだけはどうしても外せません。

次回はステレオ録音編です。色々と改めて聴き直してみることにします。

| | コメント (19) | トラックバック (0)

2010年9月20日 (月)

ベートーヴェン 交響曲第4番変ロ長調op.60 名盤(ステレオ録音編)

B0134905_6151917さて、モノラル録音編に続いて、今度は「ギリシアの乙女」のステレオ録音盤を聴いてみます。モノラルとステレオでは、単純に比べればステレオのほうが良いに決まっています。それは映画であれば、モノクロのスクリーンがカラーになるようなもので、登場する人物の肉感がずっとリアルに感じられるのと同じです。ところが、それにもかかわらずモノラル録音時代の名演奏に相変わらず惹かれ続けるというのは、演奏そのものの持つ力がどれだけ凄いかということでしょう。とはいえ、ステレオ録音盤にも素晴らしい名盤が幾つも有ります。それらを順番に聴いていくことにしましょう。
それはともかく、やっぱりギリシアの乙女って素敵ですよね~。うーん、思わず見とれて??しまいます。

Beethoven-2-4-tzvoz4l_ac_sl1500_ オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1957年録音/EMI盤) EMIへのセッション録音による全集用の録音です。1楽章のテンポはかなり遅く、イン・テンポを守る典型的なクレンペラーの演奏スタイルですが、更に念押しするリズムが重々しさに拍車を掛けます。2楽章は淡々として孤高の雰囲気が有ります。3、4楽章も同じように遅いテンポで巨大な歩みを続けます。徹底してユニークです。管弦楽の響きがドイツ的ではなく、EMIの録音にオーケストラの音の色彩感が足らないのはいつも通りですが、特別にマイナスでは有りません。

031 ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1958年録音/CBS盤) もちろん激しさや迫力に欠ける訳では有りませんが、シューマンがこの曲を表現した「ギリシアの乙女」のイメージを一番感じる演奏です。何と優雅で優しさを湛えていることでしょう。ワルターはあるときは誰よりも壮絶な演奏をすることもありますが、優しく歌うような演奏にかけてはこの人の独壇場となります。2楽章にも深刻さは無く、幸福感に満たされています。同じ曲を演奏してもフルトヴェングラーとは正反対の印象です。3楽章スケルツォさえ何とも優雅です。シューマンが感じた第4番はこのような音楽だったのでしょうね。

Beethoven-4-8 ヨーゼフ・カイルベルト指揮ハンブルク国立フィル(1958年録音/テルデック盤) 古き良きドイツ的な演奏を愛する人に今も根強い人気が有るカイルベルトがベートーヴェンの交響曲をテルデックに9番のみを残して全集を完成させられなかったのは本当に残念です。しかし、この第4番の演奏は見事です。1楽章の遅いテンポと厳格なリズムによる重厚さは全くもって魅力的です。もちろん2楽章以降も同様ですが、特に終楽章は聴き応えが半端有りません。ハンブルク・フィルの音の骨太さは同時期のベルリン・フィルを凌ぎます。テルデックの録音もそれを忠実に捉えています。

Beethoven_cluytensアンドレ・クリュイタンス指揮ベルリン・フィル(1959年録音/EMI盤) 全集盤に収められている演奏です。この演奏もまた「ギリシアの乙女」的な演奏です。第1楽章導入部の重々し過ぎない開始から主部に入っても常に余裕が有ります。第2楽章では牧歌的な美しさを味わえます。第3楽章、第4楽章もテンポにゆとりが有り、夢中に成り過ぎない落ち着きが心地良く感じられます。けれども決してもたつくわけではありません。自然な音楽の生命力も持ち合わせています。録音は余り明瞭では無く、リマスターが高域型で音が軽く感じられますが、演奏のスタイルから抵抗感は少ないです。

Beethoven-2-4-img_1806 ピエール・モントゥー指揮北ドイツ放送響(1959年録音/DENON盤:コンサートホール原盤) 録音時、モントゥーは既に85歳でしたが、とても高齢とは思えないほど音楽が生き生きとしています。1楽章はテンポが遅めで恰幅の良さが有り、楽団の純ドイツ的な性格を生かしているようです。2楽章は速めですが味わいが有ります。3、4楽章も同様です。コンサートホールの録音は特に優れはしないので、響きが十全に捉えられたとは言い切れないのが残念です。モントゥーは同じ年にこの曲をロンドン響ともデッカに録音をしています。 

Beethoven-47-418w47e3yrl_ac__20230724150701 ピエール・モントゥー指揮ロンドン響(1959年録音/DECCA盤) デッカ録音の全集(9番のみウェストミンスター録音)ではロンドン響とウィーン・フィルが半々で起用されましたが、前述した通り4番はロンドン響です。解釈は北ドイツ放送響盤とほぼ同じと言って差し支えありませんが、録音に関してはデッカのロンドン響のベートーヴェン録音の中では最も成功している気がします。響きに厚みが有り、スケール感が格段に増しています。ウィーン・フィルの洒落っ気も、ドイツ楽団の武骨さも有りませんが、ロンドン響から格調高く立派な演奏を引き出したモントゥーは素晴らしいです。

Cci00055 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1960年頃録音/edel classics盤) これも全集盤に収められている演奏ですが、相変わらずゲヴァントハウス管の音色が魅力的です。木管といい金管といい古色蒼然としています。いやー何という古風な音なのでしょう。これこそは古き良き時代のドイツの響きですね。コンヴィチュニー親父の強固な統率によって古武士軍団が堂々と進軍するさまには鳥肌がたつほどの迫力を感じます。第1、3、4楽章は圧倒的です。

Beethoven-19-688_20230520105901 オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィル(1961年録音/グラモフォン盤) ベートーヴェンの交響曲全集を3回録音したヨッフムの最初の全集に含まれますが、この全集はモノラル、ステレオ録音が混在した為に不遇の扱いを受けました。しかしフルトヴェングラー時代のベルリン・フィルのほの暗いドイツ的な音色が残る最後の時期で貴重です。1楽章のテンポは中庸ですが、念押しするリズムが重厚さを与えます。2楽章は、しっとりとしたハーモニーが美しいです。3楽章はゆったりと落ち着いて風格が有ります。終楽章はカッチリと堅牢なアンサンブルですが、少々落ち着き過ぎの印象は受けます。録音は優れます。

Beethoven-19-karajan ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1962年録音/グラモフォン盤) カラヤンが1960年代に録音した交響曲全集に含まれます。1楽章は中庸のテンポで、リズムに念押しこそ無いものの、ドイツ風の重厚さは感じられます。響きに関してはむしろ大き過ぎる編成のように聞こえますが、録音のせいかもしれません。2、3楽章は特別の閃きこそ感じられないものとても立派な演奏です。終楽章もテンポはやはり中庸で、管弦楽の厚み有る響きは正にベルリン・フィルですが、この曲にしてはややカロリー過多に思えて、個人的にはもう少し古典的で端正な響きが欲しいような気がします。

Beethoven-4-5-ngsl_ac_ オットー・クレンペラー指揮バイエルン放送響(1965年録音/EMI盤) これはミュンヘンにおけるライブですが、‘57年のフィルハーモニア盤よりは、’68年のウィーン・ライブ盤に近いです。1楽章から尋常でなく遅く、付いてゆくのが大変なほどにスケールが大きいです。第2楽章は流れゆくライン河のごとく深々としています。3、4楽章はやはり非常に遅く、もたれて仕方が有りませんが、これが正に晩年のクレンペラーです。管弦楽にドイツの楽団の音色が味わえるのは嬉しいです。バイエルン放送局の録音がマスタリングの影響なのかEMI的ですが、悪く有りません。

Beethoven-2-4-odxnjihl_ac_sl1500_ ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮ウィーン・フィル(1966年録音/DECCA盤) 交響曲全集の中の1枚です。この人は手兵だった北ドイツ放送響を振ると、いかにもドイツ風で男性的な演奏になりましたが、ウィーン・フィルを振るとしなやかさの有る演奏となり、オーケストラの特徴を見事に生かしました。この4番の演奏は常に中庸のテンポで進行する、美しくもオーソドックスな、安心して聴いていられるものです。当時のデッカのアナログ録音は全盛期であり、ウィーン・フィルの音との相性が抜群でした。

Beethoveb-19-075_20230522164801 オイゲン・ヨッフム指揮コンセルトヘボウ管(1968年録音/フィリップス盤) ヨッフムが残した三つの全集盤のうち二度目の全集に含まれます。1楽章のテンポは中庸ですが、推進力と重厚さのバランスが絶妙です。名門コンセルトヘボウの妙技と深い響きにも魅了されます。2楽章もゆったりとして崇高さを感じさせます。3、4楽章は落ち着いたテンポで悠揚迫らざる進みですが、決してもたれるわけでは無く、聴き応えが充分です。コンセルトヘボウ管のヨーロッパ的な柔らかく深い響きを忠実に捉えたフィリップスの録音が素晴らしいです。

Wacci00001b オットー・クレンペラー指揮ウイーン・フィル(1968年録音/テスタメント盤) 1968年のウイーンでのライブです。晩年のクレンペラーが指揮をすると北欧の巨人の間のギリシアの神様というイメージです。アレグロに入ってもじっくりと遅いテンポなので、あたかも巨大な神殿を見上げるかのようです。けれどもアダージョまでは良いとしても、スケルツォもフィナーレも一貫して遅いイン・テンポを通すのでだんだんもたれてしまいます。クレンペラーのファン以外には少々厳しいのではないでしょうか。

Beethoven-2-4-_ac_ パブロ・カザルス指揮マールボロ音楽祭管(1969年録音/SONY盤) マールボロ音楽祭におけるライブ録音ですが、この時カザルスは93歳です。1楽章の導入部が非常に遅く物々しさがあります。主部に入ってもクレンペラー並みの遅さですが、各楽器が思い切り弾き切っているので音楽がもたれる感じはしません。逆に重戦車が進軍するような凄味すら有ります。2楽章以降、どの楽章も聴き応えが充分ですが、終楽章は意外と速めで、エネルギーに溢れます。録音は残響が少なめですが、楽器の音の生々しさを伝えていて、この凄演に相応しいです。

976 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1969年録音/オルフェオ盤) ザルツブルク音楽祭でのライブです。演奏そのものは’72のグラモフォンの録音に近く、更に力が有って良いような気がするのですが、録音に混濁感が有るのと高音部が強調されているのに抵抗を感じます。これはたぶんオルフェオのマスタリングのせいかもしれません。ですので、ベーム/ウイーン・フィルの4番を楽しみたい場合には、僕はグラモフォン盤を選択します。

Behm815 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1972年録音/グラモフォン盤) グラモフォンへの全集に収められています。ベームがウイーン・フィルと70年代に残したスタジオ録音は、60年代までのベルリン・フィルとの録音やあるいはライブ演奏の緊張感は有りません。けれども逆にウイーン・フィルの音の持つ優雅さや潤いとが、ほど良いバランスを保っていて僕は好きです。この演奏もクレンペラーほどもたれませんし、音楽を落ち着いてゆったりと楽しめる点で素晴らしいと思います。

Beetho4_mura エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1973年録音/メロディア盤) ムラヴィンスキーはベートーヴェンを何曲も指揮していますが、個人的には4番の演奏が一番好きです。余分な脂肪分を削ぎ落とした実に凛としたスタイルがこの曲に適しているのだと思います。ロシアの若く美しい乙女ナターシャ(誰だそれ?)を見るかのような気がします。これは’73年モスクワでのライブ録音です。モスクワでは他に’72年の録音も有り、どちらも素晴らしいのですが、’73年のほうが録音の響きが柔らかいのでベートーヴェンに向いているのと、演奏自体も更に優れていると思います。

189 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1973年録音/Altus盤) モスクワでの録音のちょうど一月後に日本にやってきて、東京文化会館で演奏したときの録音です。当時のNHKによる録音は優秀なので、文化会館の響きを忠実に再現して、ステージの上のオーケストラが目に浮かぶような臨場感です。演奏については’73年モスクワ盤とどちらが上かは難しいところです。これから聴かれる方はどちらでも良いですし、興味のある方は両方とも聴かれればベストだと思います。

Beethoven-19-emypxegpl_20230523172501 レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィル(1978年録音/グラモフォン盤) 1978年から1979年にかけてウィーンで行われたライブによる全集に含まれます。1楽章導入部から主部に入るとウィーン・フィルのしなやかさとレニーの豪快さが見事に融合して、聴いていて、ぐいぐいと演奏に惹き込まれます。これだけ喜びに満ちた4番も珍しい気がします。2、3楽章は恰幅良く聴き応えが有ります。終楽章は更にスケール大きくどんどん高揚してゆき素晴らしいです。録音も優れています。

0184442bc ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1978年録音/Berlin classics盤) これも全集盤に収録されている演奏です。ドレスデンのルカ教会で録音された、このオケのいぶし銀の響きを堪能できる良い演奏です。弦も管もティンパニーも柔らかく溶け合った実に美しい響きです。造形的にもとても立派な演奏なのですが、ブロムシュテットはここでも自分の個性を全く感じさせません。元々このオーケスラは誰が指揮しても演奏を変えようとしないので、「まるで牛車みたいだ。」と言った名指揮者が昔いたそうです。現在なら「大型ベンツみたいだ」となるのでしょうかね。

786 カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管(1982年録音/オルフェオ盤) シュターツカペレ・ドレスデンがベンツなら、これはさしずめバイエルン・モーター(BMW)です。しかも大変なスピード狂でハイウェイを突っ走ります。まるでディープ・パープルを聴くような快感を感じますが、これが果たしてベートーヴェンかというと??というのが実感です。アレグロでは余りの速さでオケは前のめりにコケまくっていますし、シンコペーションもグチャグチャです。この演奏が非常に人気が有るのは知っていますが、僕は正直好みません。クライバーのオペラ演奏は好きなのですが、管弦楽曲はベートーヴェンもブラームスも余り好みとは言えません。

Beethoven-19-pzbz147zl_ac__20230524101601 オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン(1983年録音/DENON盤) 独シャルプラッテンとの共同制作の全集盤に含まれます。以前、スウィトナーとこの楽団とのモーツァルトのシンフォニーの実演を東京で聴きましたが、それは素晴らしい演奏でした。これはそれを彷彿とさせるようなベートーヴェンです。テンポは中庸ですが、重厚さと躍動感の両方がバランス良く保たれています。アンサンブルも機械的でなく、有機的なところが魅力です。2楽章はしっとりと美しく、高貴さえ漂わせます。3、4楽章も堂々とした恰幅の良さが見事です。SKベルリンの響きはドイツ的で、古雅な美しさを持ち魅力的です。それを捉えた録音も素晴らしいです。

91wmcdauwbl_ac_sl1500__20230524112601 ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管(1987年録音/フィリップス盤) ハイティンクとしては二回目の全集盤に収められています。何度も繰り返しますが、ヨーロッパ伝統の豊穣の響きと言うべきコンセルトヘボウ管の音は本当に魅力的です。演奏としては、1楽章は中庸の速さでじっくりと進み、重量感と推進力のバランスが絶妙です。2楽章は美しいですが割と普通です。終楽章も速過ぎず、むしろ恰幅の良さが充分な聴き応えを感じさせます。フィリップスによる録音は柔らかく美しいです。

Beethoven-19-apmt2mpcl_20230525114201 サー・コリン・デイヴィス指揮ドレスデン国立歌劇場管(1993年録音/フィリップス盤) 交響曲全集に含まれます。1楽章から非常に気合が入っています。主部のテンポは遅めですが、勇壮で堂々たるものです。リズムを厳格に刻み、弦楽をマルカートで弾く楽団の音には凄味すら有ります。2楽章もカッチリとしていてムードには流されません。3楽章には重厚さが有ります。終楽章はテンポこそ中庸ですが、仰ぎ見るような造形感が有り、ぶ厚い響きと共に立派なことこの上ありません。録音も優れます。

Beethoven-19-kr7idozvl_20230525164501 ダニエル・バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場管(1999年録音/テルデック盤) 交響曲全集に含まれます。1楽章は主部への移りに流れの不自然さが有る気がしましたが、その後はスケール大きく厚い響きが悪くは無いです。2楽章は遅めですが、音楽の流れにもたつき感が有るのが気に成ります。3、4楽章は堂々とした構えで自然な高揚感があり聴き応えがあります。ただ、オーケストラの響きにスウィトナー時代の端正さは有りませんし、ティンパニの強打に唐突感が感じられる箇所が有ります。

Beethoven-19-_ac_ サイモン・ラトル指揮ウィーン・フィル(2002年録音/EMI盤) ウィーンのムジークフェラインで行われた連続演奏会のライヴ録音です。楽譜はベーレンライター版を使用しています。1楽章のテンポは速めで推進力が有り、キレの良い快演です。2楽章も弦楽をノン・ヴィヴラート気味に弾かせて端正な美しさですが、木管もとても魅力的です。3、4楽章はリズムが弾んで生き生きとしています。ラトルに時に見られるディナーミクの過剰な変化も無く、無理なく惹き込まれる新鮮な名演です。録音も優秀です。

Beethoven-19-l1500 リッカルド・シャイー指揮ゲヴァントハウス管(2009年録音/DECCA盤) 全集盤に含まれます。この全集はどの曲も例外なくテンポが快速です。この曲も息子クライバー並みの速さです。そのうえオーケストラの音は明るく、腰が軽く、かつてのこの楽団のドイツ的な音は見事に消え去っています。「You can change!」ふとそんな言葉が耳の奥で聞こえます。。。しかし、最近は古楽器オケの快速演奏にも慣れてきたので、どうして抵抗が有るのか考えてみると、これがゲヴァントハウス管だからかもしれません。このオケには古の響きを守って欲しかったという気持ちが有るからでしょうか。録音は明快で優秀です。

Beethoven-19-dk-yajwl_20230527135701 クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィル(2009年録音/SONY盤) ウィーン楽友協会大ホールで行われたベートーヴェン・チクルスのライブ収録による全集に含まれます。1楽章はゆっくりと始まり、主部に入っても遅めのテンポで重厚に進みます。最近流行りの快速演奏とはまるで異なり、往年の大巨匠達のごとしです。それこそがティーレマンの魅力です。2楽章、3楽章はそれぞれの楽想に忠実な表現ですが、終楽章は重厚感と躍動感のバランスが絶妙です。実際にウィーン・フィルを黄金のホールで聴いているような優秀録音です。

最後に古楽器オーケストラのCDも上げておきます。

Beethoven-19-aidmmnl_ac_ フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ(1990年録音/フィリップス盤) 全集盤に含まれます。1楽章導入部は遅く、主部に入ると速くなりますが、最近流行りの超快速というほどでは有りません。しかし音には気迫が込められています。結局のところはノン・ヴィブラートの古楽器奏法による古雅な響きが最大の特徴です。2楽章はかなり速く、音が薄いので、バロック・オケ的とさえ言えそうです。速い3楽章を過ぎて、終楽章は特別速くなく、1楽章と同様の特徴です。古楽器の音色を楽しむには良い演奏です。

Beethoven-19-ga08hkoll_ac_ ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク(1993年録音/アルヒーフ盤) 全集盤に含まれます。以前は古楽器オーケストラには懐疑的だったのですが、このガーディナー盤には驚かされました。超快速テンポでありながら、演奏が上滑りすることなく、細かいニュアンスが込められています。それを可能とするのは楽団の技量の尋常ではないレベルの高さ、ガーディナーのアーティキュレーションの上手さでしょう。演奏には単なる学究派とは次元の異なる愉しさで溢れます。録音もバランス、明瞭さが極上です。

というわけで、好きな演奏は多いですが、中でもワルター、コンヴィチュニー、ムラヴィンスキーの3つは特に好きです。

次回は、もちろん・・・第5です。フルトヴェングラーなどのモノラル録音盤から聴いていきます。

| | コメント (30) | トラックバック (0)

2010年9月17日 (金)

ベートーヴェン 交響曲第4番変ロ長調op.60 名盤(モノラル録音編)

Image51 第4交響曲は、第3番「英雄」と、第5番「運命」の間の曲なので余り目立たない存在です。そのうえ副題も付いていないので尚更です。けれども、この曲は大変素晴らしく、実に魅力的だと思います。シューマンがこの曲を「二人の北欧神話の巨人(3番と5番)の間にはさまれたギリシアの乙女」と例えたと伝えられています。さすがは音楽評論家でもあったシューマン先生ですね。でもこの曲は「乙女」と呼ぶほどやわな曲でもないと思います。激しさも充分に持ち合わせているからです。それともギリシア美人はもしや案外と激しい気性を秘めているのでしょうか。シューマン先生はもしかしたら、そんなギリシア美人もお気に入りだったのかもしれませんね。

この曲は僕も昔から大好きですが、特に素晴らしいのが第1楽章です。不気味な静けさの導入部からアレグロの主部へ移るときのスリルは何度聴いても興奮します。そして気分を高揚させたまま、表情を刻々と変化させてゆくのは最高の聴きものです。第2楽章アダージョも深いロマンの香りが溢れていて実に美しいです。第3楽章スケルツォも楽しいですが、ベートーヴェンとしては平均的な出来というところでしょうか。第4楽章アレグロでは再び躍動感と楽しさに溢れます。というわけで、この第4交響曲は全体が短めで簡潔なせいもありますが、一度聴き始めるとあっという間に聴き終えて、また初めから聴き直したくなるほどです。

さて、僕の愛聴盤のご紹介ですが、まずはモノラル録音からです。まずはフルトヴェングラーから聴いてみましょう。

Beethoven4jpg ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1943年録音/メロディア盤) 僕が初めて聴いたべト4の演奏はこの演奏でした。第二次大戦中のライブ録音です。廉価LP盤の音は貧弱でしたが、演奏の凄さに感動しました。お化けが出そうに不気味な導入部に続くアレグロの推進力と迫力が凄く、フォルテの音の激しさは尋常ではありません。ティンパニーの強打にも鳥肌が立ちます。第2楽章ではロマンティックな雰囲気が一杯で音楽に陶酔させてくれます。それは極めてロマン的で古い演奏スタイルかもしれませんが、フルトヴェングラーの演奏でこの曲を聴くと、3番と5番にも決して見劣りしない曲に思えてきます。

803 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1943年録音/オーパス蔵盤) これはメロディア盤の演奏会に先立って聴衆無しで放送用に録音された別テイクです。ですので、ここにはライブ演奏の鬼気迫るような雰囲気は有りません。ティンパニーの強打などはかなりのものですが、フォルテの音は常識範囲に留まっています。オーパス蔵の板起こし(アナログ盤からの直接復刻)の音質はメロディア盤よりもずっと良好ですので、この曲のロマン的な面と古典的な面をバランスよく楽しむことが出来ます。

Beethoven4_furjpg ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1952年録音/EMI盤) 戦時中の演奏と比べるとテンポがずっと遅くゆったりとしています。全体的に少々生ぬる過ぎる印象が残りますが、逆にウイーン・フィルの柔らかな音でくつろげる良さが有ります。この曲には、激しい演奏と穏やかな演奏のどちらでも許容できる音楽の懐の深さを感じます。僕はこの演奏もとても好きです。第4楽章のイン・テンポでスケール大きく広がりのあるところなどは特に気に入っています。EMIへのスタジオ録音ですので音質は良好です。僕はこれも海外References盤で聴いています。

ここからはフルトヴェングラー以外の指揮者です。

Beethoven-19-lngal_ac_ ウィレム・メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1940年録音/フィリップス盤) アムステルダムで行われたライブの全集盤に収められます。古典的な造形性は皆無、ロマン派然とした演奏です。メンゲルベルクお得意のテンポの変化やルバートが度々現れますが、それほど奇異には感じません。むしろフォルムを整えることばかり考える現代の演奏へのアンチテーゼとして貴重です。随所でのティンパニの強打も爽快です。録音はチリチリとノイズが常に入りますが、気にしないことです。

Toscanini_beethoven_3_4 アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1951年録音/RCA盤) ギリシア彫刻を思わせるような力強く明快な演奏です。これは乙女どころではなく、若くたくましい男性のイメージです。1楽章アレグロ部の躍動感には聴いていて思わず腰が動いてしまいます。2楽章ではロマンに深く沈滞することなく明るく健康的に歌われます。3楽章は速めでリズムが実に生きています。終楽章は速過ぎず遅過ぎず実に良いテンポです。そしてこの強靭な生命力に惚れ惚れしてしまいます。

Schu_bet_758 カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管(1958年録音/EMI盤) これもEMIへの全集に収められています。この年でモノラル録音なのは残念です。シューリヒトの古典派の演奏は案外トスカニーニと共通点が有ります。速めのテンポで引き締まっていること、基本的にイン・テンポなのに時々デフォルメを見せること、強靭ともいえる生命力があること、楽譜の読みが非常に深いこと、オケを自分の手足のように統率すること、などです。そしてどちらも本当に素晴らしいので、とても甲乙などは付けられません。

次回はステレオ録音編です。モノラル盤に負けず劣らず素晴らしい演奏が色々と有ります。

| | コメント (16) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

A.ヴィヴァルディ G.F.ヘンデル J.S.バッハ(カンタータ、オラトリオ他) J.S.バッハ(ミサ曲、受難曲) J.S.バッハ(協奏曲) J.S.バッハ(器楽曲:弦楽器、管楽器) J.S.バッハ(器楽曲:鍵盤楽器) J.S.バッハ(管弦楽曲) J.S.バッハ(諸々その他) イギリス音楽(ホルスト、ヴォーン・ウイリアムズ、デーリアス他) イタリアのバロック音楽(モンテヴェルディ、ペルゴレージ、コレッリ他) ウェーバー エルガー グラズノフ グリーグ サン=サーンス シベリウス シベリウス(交響曲全集) シベリウス(交響曲) シベリウス(協奏曲) シベリウス(室内楽曲) シベリウス(管弦楽曲) シューベルト(交響曲) シューベルト(器楽曲) シューベルト(声楽曲) シューベルト(室内楽曲) シューベルト(管弦楽曲) シューマン(交響曲) シューマン(協奏曲) シューマン(器楽曲) シューマン(声楽曲) シューマン(室内楽曲) ショスタコーヴィチ(交響曲) ショパン(協奏曲) ショパン(器楽曲) ストラヴィンスキー スペインの音楽(ファリャ、ロドリーゴ他) スメタナ チェコ、ボヘミア音楽 チャイコフスキー(交響曲) チャイコフスキー(協奏曲) チャイコフスキー(室内楽曲) チャイコフスキー(管弦楽曲) ドイツ、オーストリアのバロック音楽(パッヘルベル、ビーバー、シュッツ他) ドイツ・オーストリア音楽 ドビュッシー ドヴォルザーク(交響曲全集) ドヴォルザーク(交響曲) ドヴォルザーク(協奏曲) ドヴォルザーク(室内楽曲) ドヴォルザーク(管弦楽曲) ハイドン(交響曲) ハンガリーの音楽 ビゼー フォーレ(声楽曲) フォーレ(室内楽曲) フランク フランス音楽(ドリーヴ、プーランク、サティ他) ブラームス(交響曲全集) ブラームス(交響曲第1番~4番) ブラームス(協奏曲:ピアノ) ブラームス(協奏曲:ヴァイオリン他) ブラームス(器楽曲) ブラームス(声楽曲) ブラームス(室内楽曲) ブラームス(管弦楽曲) ブルックナー(交響曲全集) ブルックナー(交響曲第0番~3番) ブルックナー(交響曲第4番~6番) ブルックナー(交響曲第7番~9番) ブルッフ プッチーニ プロコフィエフ ベルリオーズ ベートーヴェン ベートーヴェン(交響曲全集) ベートーヴェン(交響曲第1番~3番) ベートーヴェン(交響曲第4番~6番) ベートーヴェン(交響曲第7番~9番) ベートーヴェン(協奏曲) ベートーヴェン(器楽曲) ベートーヴェン(室内楽曲) ベートーヴェン(弦楽四重奏曲全集) ベートーヴェン(弦楽四重奏曲:初期~中期) ベートーヴェン(弦楽四重奏曲:後期) ベートーヴェン(歌劇、声楽曲) マーラー(交響曲第1番~4番) マーラー(交響曲第5番~7番) マーラー(交響曲第8番~10番、大地の歌) マーラー(声楽曲) メンデルスゾーン モーツァルト(交響曲) モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第01~9番) モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第10~19番) モーツァルト(協奏曲: ピアノ 第20~27番) モーツァルト(協奏曲:ヴァイオリン) モーツァルト(協奏曲:管楽器) モーツァルト(器楽曲) モーツァルト(声楽曲) モーツァルト(室内楽曲) モーツァルト(歌劇) モーツァルト(諸々その他) ヤナーチェク ヨハン・シュトラウス ラフマニノフ(交響曲) ラフマニノフ(協奏曲) ラフマニノフ(室内楽曲) ラヴェル リヒャルト・シュトラウス(楽劇) リヒャルト・シュトラウス(歌曲) リヒャルト・シュトラウス(管弦楽曲) リムスキー=コルサコフ レスピーギ ロシア音楽(ムソルグスキー、ボロディン、カリンニコフ他) ワーグナー(楽劇) ワーグナー(歌劇) ワーグナー(管弦楽曲) ヴェルディ(声楽曲) ヴェルディ(歌劇) 名チェリスト 名ピアニスト 名ヴァイオリニスト 名指揮者 政治・経済問題 文化・芸術 旅行・地域 日本人作品 映画 映画(音楽映画) 歌舞伎 演奏会(オムニバス) 舞踏&バレエ 芸能・スポーツ 読書 趣味 音楽やその他諸事 音楽(やぎりん関連) 音楽(アニメ主題歌) 音楽(シャンソン・タンゴ・ボサノヴァ) 音楽(ジャズ) 音楽(ポップス) 音楽(ロック) 音楽(和楽)