ベートーヴェン(弦楽四重奏曲:初期~中期)

2017年5月25日 (木)

N響メンバーによるベートーヴェン弦楽四重奏曲 全曲演奏会 第1回

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N響メンバーのカルテット”コスモス弦楽四重奏団”によるベートーヴェン弦楽四重奏曲の全曲チクルスがスタートしました。半年ごとに行われて3年で完結予定です。21日はその第1回目でしたので会場の渋谷ラトリエに行ってきました。

第1番から4番までの4曲が演奏されましたが、いくら初期とは言ってもやはりベートーヴェン。聴きごたえのあるプログラムでした。滅多に生演奏で聴く機会が無いので良かったです。

演奏も非常に素晴らしかったです。さすがはN響の同じメンバーで何年も前からカルテットの活動をされているだけあり、アンサンブルの呼吸はぴったりですし、音楽の表情、ダイナミクスなどが練り上げられていたのに感動です。第1ヴァイオリンはN響のコンマスを長年務めて現在は退団されている山口裕之さんですが、緊張感を持った間合い、音の出を合わせる際の絶妙な指示と息遣いなど正に熟達の技でした。弦楽四重奏の魅力を心行くまで楽しませて貰えました。

次回の第2回は11/11ですが、第5番、第6番、それにラズモフスキー1番が演奏される予定です。詳しくは追ってご紹介したいと思います。

来年5月予定の第3回にはラズモフスキー2、3番、ハープ、セリオーソの4曲を1回で演奏するそうですがこれは凄いですね!

第2ヴァイオリンの宇根さんは私の地元厚木にお住まいの方ですし、ヴィオラの飛澤さんとお二人とに終演後にお話しが出来たのは楽しかったです。

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2013年5月19日 (日)

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 「セリオーソ」 作品95 名盤

ウイーンで「傑作の森」を邁進するベートーヴェンが、第10番「ハープ」から1年後に書いた中期最後の弦楽四重奏曲です。内容が非常に凝縮されて書かれていて、全弦楽四重奏曲の中でも演奏時間が最も短くなっています。ところが、タイトルが示す「セリオーソ(厳粛)」の通り、ピンと背筋を伸ばし襟を正して聴かなければいけないような、非常に厳かな雰囲気が漂います。それでいて悲壮感を伴う熱い情熱をも感じさせて、個人的にも大好きな作品です。

第1楽章は極度の集中力の高さが求められる激しい音楽で、嵐のようにたたみ掛けてくる音符に圧倒されます。途中で何度も繰り返して「コレデモカ!コレデモカ!」と聞こえてしまうのは、案外と僕だけでは無いと思います。

第2楽章は音の進行が斬新で、いずれ無調音楽が生まれるであろうという予感が感じられます。

第3楽章はスケルツォに相当する楽章ですが、ベートーヴェンが「セリオーソ」という表記を付けたのはこの楽章です。従って演奏にはその雰囲気を感じさせなくてはなりません。

第4楽章は主部にアレグレット・アジタートの表記が有るように、第15番作品132の終楽章に似た、悲壮感を伴う情緒的な旋律を持つ情熱的な音楽です。

それでは、僕の愛聴盤をご紹介します。

51u9dbjsblブッシュ弦楽四重奏団(1932年録音/EMI盤) ブッシュはアメリカに渡った1939年以降は良い意味で演奏に近代的な普遍性が加わったと思いますが、それ以前のヨーロッパ録音には、頻発するポルタメントなどに、どうしても古めかしさを感じます。もちろんそれが彼らの魅力と言えばそれまでなのですが、個人的にはアメリカでの録音の方が条件抜きで好きな演奏が多いように思います。この演奏に関しても、濃厚なロマンが印象的ですが、愛聴しているというほどではありません。

1196111190バリリ弦楽四重奏団(1952年録音/MCAビクター盤) ウエストミンスター録音です。古い録音でも、バリリになるとずっとスマートさが加わるので抵抗有りませんし、それでいて現代の演奏に無い人間的な肌触りを感じます。速いテンポでメカニカルに弾き飛ばすことが無いので、ゆったりと曲の旋律線を味わえるのが魅力です。かといって緊張感に欠けたダラダラした演奏だということではありません。ウイーンの甘い歌い回しと現代的な構築性を兼ね備えた素晴らしい演奏です。モノラル録音ですが音質は優れています。

90650dc0bfe3c81c14f641d351d90ca5ブダペスト弦楽四重奏団(1958年録音/CBS盤) 全集盤です。4人の極めて集中力の高いアンサンブルと激しい音のアタックに圧倒されますが、多用するポルタメントが演奏に甘さを加味します。この一見相反するような要素が彼らの最大の特徴です。残響の少ないむき出しの音は、中々耳に馴染み難いかもしれませんが、これほど最初から最後まで求道的なまでに厳しく厳粛な演奏は有りません。正に究極のセリオーソです。ずっしりとした聴き応えが他の演奏とはまるで別次元です。

1197040876ヴェラー弦楽四重奏団(1964年録音/DECCA盤) 実は、彼らの「ハープ」以上に気に入っているのが「セリオーソ」の演奏です。アンサンブルも優秀ですが、英デッカの名録音が、ウイーンらしい柔らかな美音を余すところなく捕えています。しかも第3楽章のリズムにはハッとするような閃きを感じさせます。こんな見事なセンスの良さは聴いたことが有りません。第4楽章もしなやかに歌い非常に美しいです。彼らがベートーヴェンを僅か2曲しか録音してくれなかったのが本当に残念です。もしも全集を録音してくれていれば、バリリSQ以上の歴史に残る全集となった可能性すら有ると思います。ヴェラーさん、あんたどうして指揮者になんかなったのヨ!

151ジュリアード弦楽四重奏団(1970年録音/CBS盤) 旧盤の全集からです。昔、LP盤で聴いた時には、メカニカルで無機的に感じられて余り好みませんでした。けれども現在改めて聴き直すと、バリリQやブダペストQの録音から10年ほどしか経ていない時代に、これほど先鋭的な演奏をしていたことに驚きます。彼らの技術的に全盛期の凄まじい切れ味と迫力が、この曲の持つ曲想に見事に合致していて素晴らしいです。

V4871ヴェーグ弦楽四重奏団(1973年録音/仏Naive盤) 全集盤です。この時代、ジュリアードSQの登場以降、猫も杓子も精緻さを追求するようになりましたが、音楽の魅力はそれだけでは無いことを強く訴えかける演奏です。ここには大戦前の極めて情感豊かなヒューマニズムに溢れたスタイルの演奏が有ります。彼らこそ、その最後の生き残りだったかもしれません。現在はこんな演奏を聴くことは決して出来ません。第4楽章がなんとアジタートに歌われてることか!

Suske_beethoven_lateズスケ弦楽四重奏団(1975年録音/Berlin Classics盤) 第1楽章は彼らの演奏の中でも最も切れが良く、ソリッドな印象すら与えられます。第3楽章もやはり同様です。第4楽章ではリズムが明確過ぎて旋律が流れるように聞こえないのが少々マイナスです。全体的にドイツ的な構築性も感じさせますが、時代を先取りしたような先鋭性は、現在のゲヴァントハウスSQの演奏を聴いているような気になります。 

D0021969_10143431アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1978年録音/EMI盤) 全集盤です。第1楽章で猛烈なスピードでたたみ掛けて来ますし、凄まじいアタックはまるで暴漢に襲われているようです。コレデモカ、コレデモカと耳元で叫ばれるようで、正直不快です。第2楽章は何となくせせこましい印象ですし、第3楽章、第4楽章も速めでスッキリしていますが、意外に心に響いてきません。「悪い」とまでは言いませんが、これは本当に多くの評論家が絶賛しているような良い演奏なのでしょうか?EMI特有の残響の多過ぎる録音も相変わらずです。

G7138122wスメタナ弦楽四重奏団(1981年録音/DENON盤) 全集盤です。アルバン・ベルクSQの後に聴くと大人しく聞こえますが、テンポと言いダイナミクスと言い、適度なバランスと、しなやかで美しい音に支えられた演奏です。ボヘミアの草原のような爽やかさが心地良いのですが、反面ベートーヴェンのアクの強さが希薄なので人によっては物足り無さを感じるかもしれません。個人的には思い出深いカルテットなので、何の抵抗感も無く安心して身を委ねられます。

51f03m0kttlジュリアード弦楽四重奏団(1982年録音/CBS盤) ワシントン国会図書館ホールでのライブ録音による新盤です。第1楽章はアルバン・ベルクSQ並みに激しいですが、暴力的に成る手前で踏み止まっているので安心です。第2楽章以降は案外とロマンティックで揺らぎを感じさせるのが心地良いです。ここにはメカニカルで直線的なイメージの彼らの姿は全く有りません。音楽の柄が非常に大きく感じられて実に聴き応えが有ります。

Imagesca41p4peメロス弦楽四重奏団(1984年録音/グラモフォン盤) 全体に比較的速めのテンポですが、決して前のめりに成らないリズムに重みが有り、ドイツ音楽を感じます。フレージングの良さも素晴らしく、旋律線の魅力を充分に引き出している言えます。個人芸が浮き上がることが無く、あくまでも総合体としての音楽の厚みを感じさせるのは、ドイツのオーケストラと共通しています。この演奏は非常に気に入りました。

36305935ボロディン弦楽四重奏団(1989年録音/Virgin盤) 全体的にテンポはゆったり気味です。音の厳しさよりはウイーン的な柔らかさを感じますが、録音がEMIによるのでしょう、残響の過多の影響も有ると思います。アルバン・ベルクSQの録音と同じで、どうも好きになれません。第1楽章の最後などかなり壮絶だと思うのですが、オブラートにかかったようで気の毒です。それでも第4楽章では余りマイナスを感じさせずに、しなやかな歌が中々に魅力的です。

61vvfzeifl__sl500_aa300_ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(1991年録音/PLATZ盤) 全集盤からです。PLATZ録音も残響が多いのですが、音に芯が有るのでEMIよりも好みます。第1楽章では気迫のこもった激しい音が迫り来ます。一転して第2楽章では、ウイーン的な甘く柔らかい音が魅力です。第3楽章のリズムの取り方は、幾らかヴェラーSQに似ています。どうやら先輩の影響を受けたのでしょうか。第4楽章は緊迫感が有りますが、情緒がこぼれ落ちそうで惹きつけられます。

Emersonbeethovenエマーソン弦楽四重奏団(1995年録音/グラモフォン盤) 全集盤からです。全体を18分台と大変な速さで演奏しています。ところが、全ての音符が明確に弾き切れているので浮ついた感じはせず、アルバン・ベルクSQに感じたような疑問はこの演奏に対しては起こりません。第1楽章は壮絶極まりなく、怖ろしいほどに音の凄みを感じます。第2楽章以下も素晴らしいです。ライブ録音なのが信じられないほどの完成度の高さです。この曲は第1ヴァイオリンをフィリップ・セッツァーが弾いています。テクニックは文句有りませんが、歌いまわしはドラッカーの方が上手い気がします。

312ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(2002年録音/NCA盤) 全集盤からです。この曲でもがっちりとした構築と凛とした趣の演奏を聴かせてくれます。第3、第4楽章などウイーンの団体の持つ「揺らぎ」とは異なる非常に厳格なリズムを刻みます。いかにもドイツ的です。それがまた「厳粛」さにつながるので、この曲にはとても適していると思います。先鋭性を感じはしても、あくまで彼らのベースに有るのは伝統的なスタイルです。

この曲に関しては、必ずしも「厳粛」というイメージが強くは有りませんが、ヴェラーSQを一番好んでいます。独特のセンスの良さに何とも惹きつけられます。他にはブダペストSQ、ジュリアードSQ新旧両盤、メロスSQ、ウイーン・ムジークフェラインSQ、エマーソンSQと、どれも素晴らしく混戦状態です。

<追記> ジュリアード四重奏団の旧盤を後から加筆しました。

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2013年5月 6日 (月)

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 「ハープ」 作品74 名盤

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第10番は、ラズモフスキー・セットから3年後に書かれました。この曲に「ハープ」という副題が付けらているのは、第1楽章で登場するピツィカートによる伴奏音型がハープを連想させるからですね。これは、もう皆さんご存知のことだと思います。全体的に優美な曲想を持つことと、この副題から、ともするとこの曲は女性的だと思われがちです。ところがどっこい、そこはベートーヴェンです。優しさを持つ曲でも、やはり「男の」優しさじゃないかなという気がします。ですので、この曲を余りに優美に演奏されると、心地良さは感じても、ある種の物足りなさを感じるかもしれません。

第1楽章はタイトルの由来となっていますのでピツィカートの活躍が印象的です。第2楽章のアダージョは優美な優しさを持ちますが、同時に厳かな祈りの雰囲気も感じさせますね。さすがは楽聖ベートーヴェンです。第3楽章プレストはスケルツォ楽章に相当しますが、運命動機のような4連附が頻繁に登場する緊迫感に息を飲みます。第4楽章は変奏曲ですが、フィナーレにしては高揚感よりもずっと落ち着きを感じさせます。いかにもベートーヴェンらしい人間の深い感情を味合わせてくれるので、個人的にはこの曲で最も好きな楽章です。

というところで、僕の愛聴盤をご紹介します。

10845ウイーン・コンツェルトハウス四重奏団(1952年録音/ユニヴァーサル・ミュージック盤) ウエストミンスター録音です。バリリSQ盤よりは音が固いですが、優れた録音です。全体的に遅いテンポでゆったりと歌っていますが、演奏の古めかしさに逆に魅力を感じます。第3楽章などは意外に速いテンポで緊迫感を感じさせますが、第4楽章のまったり感は時代錯誤と言えるほどです。この得も言われぬ懐かしさこそが聴き手を強く惹き付けて止みません。

Barylli_1012バリリ弦楽四重奏団(1956年録音/MCAビクター盤) ウエストミンスター録音です。バリリSQの中でも人気の高かった演奏だったように記憶します。第1楽章はWコンツェルトハウス以上に遅くのんびりとしています。これぞ古きウイーンの味わいですね。ピツィカートが一番ハープらしく聞こえます。第2楽章の歌の美しさも格別で魅了されます。第3楽章は始めは緊張感に乏しく感じますが、徐々に情緒の深さに惹かれてしまいます。第4楽章では変奏を慌てず騒がず奏する音楽の翳りの濃さが魅力です。Wコンツェルトハウスと同じように、失われてしまった時の大切さをつくづく感じてしまう素晴らしい演奏です。

90650dc0bfe3c81c14f641d351d90ca5ブダペスト弦楽四重奏団(1958年録音/CBS盤) 全集盤です。この曲の女性的なイメージを覆す、極めて男っぽい演奏です。ナヨナヨしたところは皆無で、骨太の力強さを見せています。と言って繊細さに欠けるということでは無く、むしろ第2楽章など、いかにもベートーヴェンらしい男の優しさを他のどの演奏よりも滲み出しています。第4楽章の各変奏曲での情感の豊かさも出色です。表面的な美しさには背を向けて、音楽の持つ真実性を深くえぐり出した感動的な演奏だと思います。

1197040876ヴェラー弦楽四重奏団(1964年録音/DECCA盤) ウイーン・フィルのコンサートマスター、ワルター・ヴェラーの残した希少なベートーヴェン録音です。ウイーン的な甘く柔らかい音が、この曲の優美な側面を十全に表していて素晴らしいです。アタックは過剰に強調されませんし、およそ音と表情の美しさで言えば最右翼だと思います。技術的にも優れています。但し、この曲の男性的な面を聞き知る為には、この演奏だけでは不足します。そのことを認識した上で、座右に置いておきたい名盤だと思います。

151ジュリアード弦楽四重奏団(1965年録音/CBS盤) 旧盤の全集からです。昔、LP盤で聴いた時には、メカニカルで無機的に感じられて余り好みませんでした。けれども現在改めて聴き直すと、確かに技術的に全盛期のジュリアードの実力は圧倒的ですが、4人が織成す音の美しさと透徹感に魅了されます。曲も彼らのハードボイルドなスタイルに意外なほどに適合しています。甘さ、柔らかさばかりがこの曲の魅力で無いことを見事に証明しています。

V4871ヴェーグ弦楽四重奏団(1973年録音/仏Naive盤) 全集盤です。ブダペストSQのような堅牢な造形性は求められませんが、情感の深い表現力に置いてはウイーン・コンツェルトハウスにも肩を並べます。この曲でも第2楽章の深い味わいには心から魅了されます。第4楽章での各変奏の大きな歌いまわしと深い情感の表出はこのカルテット独特のものです。それも全て第1Vnのシャーンドル・ヴェーグの存在が有ればこそです。

61zqixj1x9lズスケ弦楽四重奏団(1975年録音/Berlin Classics盤) 音は美しいし、しなやかな表情も良いし、アンサンブルは優れているし、バランスの良さから言ってもリファレンスに最適な演奏だと思います。けれども余りに整い過ぎているというか、サラリとし過ぎているというか、何に置いても強い個性が感じられないのです。昔、実演に接した時も同じように感じました。確かに欠点の無い演奏には違いないのですが、彼らならではの個性が欲しくなるのは我儘でしょうか。

D0021969_10143431アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1978年録音/EMI盤) 全集盤です。EMI特有の残響の多い録音はどうも苦手です。特に第1楽章では、全体の輪郭は聞こえても細部の音が団子に聞こえてしまいます。それでも、第2楽章のしっとりとした歌は美しいですし、第3楽章のリズムにもキレが有ります。第4楽章の各変奏の表情が豊かな点も見事です。ウイーン的な甘く柔らかい音に先進性を適当に織り交ぜて上手くブレンドされた良い演奏だと思います。

G7138122wスメタナ弦楽四重奏団(1979年録音/DENON盤) 全集盤です。彼らはウイーンの団体のような甘さは無いものの、非常にしなやかで美しい音はこの曲に適しています。第1楽章のピツィカートが一番ハープに聞えるのもこの演奏です。全体的に落ち着きが有ってテンポを煽ることも無く、とてもオードソックスな美演です。この曲としては特に不足は感じられないものの、個人的には更にアクの強さを求めたくならないでもありません。

51f03m0kttlジュリアード弦楽四重奏団(1982年録音/CBS盤) ワシントン国会図書館ホールでのライブ録音による新盤です。彼らのかつてのメカニカルなイメージを払拭するような、非常にドラマティックで人間的な演奏です。第2楽章でのロバート・マンのヴァイオリンが何と大きく真実味に溢れた歌を聴かせてくれることでしょうか。これは正に大芸術家の成せる業です。録音のリアルさも加わって、第3、第4楽章の演奏の生々しさにも圧倒されます。アンサンブルの些細な傷などは全く気にならなくなるぐらい凄みの有る演奏です。

Imagesca41p4peメロス弦楽四重奏団(1984年録音/グラモフォン盤) 第1楽章はアンサンブルが優秀ですし、オーソドックスで非常に美しく優れた演奏です。第2楽章は美しいものの心に迫る真実味に欠ける感が有ります。第3楽章は速いテンポで切迫感を出そうとして、逆に上滑りしている印象です。第4楽章で再び聴き応えの有る充実した演奏をしてくれているので、中間の2楽章の出来栄えが少々残念です。

338アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1989年録音/EMI盤) 二度目の全集の第1巻に含まれます。残響の多い音造りは旧全集と同様ですが、こちらの方が音に芯を感じるので良いです。ライブ演奏によるであろう緊迫感も優れます。特に旧盤で不満を感じた第1楽章が上出来です。第2楽章以降についても音の翳りが深く、真実味が増しているので、旧盤とどちらを選ぶかと問われれば、僕は迷うことなく新盤の方を取ります。

61vvfzeifl__sl500_aa300_ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(1991年録音/PLATZ盤) 全集盤からです。これもEMIの録音に似た、非常に残響の深い音造りで、確かにこんな風に聞こえるホールもヨーロッパには有るでしょうが、家で鑑賞するには少々煩わしく感じます。演奏としてはウイーンの甘さと柔らかさに現代的な機能性と鋭敏性をブレンドさせた印象で、現代のミニ・ウイーンフィルという風情なのは決して悪くありません。第3楽章も足が地に付いた上での切迫感の表出が見事です。第4楽章も充実しています。

Emersonbeethovenエマーソン弦楽四重奏団(1995年録音/グラモフォン盤) 全集盤からです。第1楽章の甘く柔らかい音はウイーンの団体以上にさえ感じますが、緊迫感のある部分での激しいアタックには、何もここまでと思ってしまいます。第2楽章の懐かしい歌いっぷりには感心しますし、第3楽章の集中力と迫力も凄いです。第4楽章でも充実した演奏を聴かせますが、特別な演奏と言うほどではありません。この曲は全体的には彼らの先鋭性を発揮する余地はそれほど多くは無かったようです。

312ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(2002年録音/NCA盤) 全集盤からです。一音一画を曖昧にすることの無い、いかにもドイツ的な演奏です。歌い崩すことが無いので、第2楽章など物足りなく成りそうなものですが、意外に深々とした祈りの雰囲気を感じさせます。第3楽章のキレの良さには現代の団体らしい先鋭性を感じます。第4楽章の各変奏の弾き分け方も見事です。メンバーは入れ替わっても歴史の重みと新しさ、それに優れた技術を兼ね備えた名演奏だと思います。録音も優秀です。

以上を聴き終えて、優れた演奏は色々と有りますが、特に強く印象に残るのは、ブダペストSQと、ジュリアードSQの新旧両盤です。音楽の風格が他の演奏とは断然違います。その他では、ウイーン・コンツェルトハウスSQ、ヴェラーSQ、ゲヴァントハウスSQあたりが上げられます。

<追記> ジュリアード四重奏団の旧盤を後から加筆しました。

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2013年4月26日 (金)

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第9番 ハ長調 「ラズモフスキー第3番」 作品59-3 名盤

ラズモフスキー四重奏の最後を飾る「第3番」は非常に斬新な作品です。この曲は20世紀のカルテットの姿を予見していたかのように思えてしまいます。それまで伝統的に、第1ヴァイオリンが専制君主的に演奏全体をリードして、自分の歌いたいように旋律を歌い、他のメンバーはそれを伴奏して支えるという弦楽四重奏の構成を、この曲では4つのパートの役割が完全に均等に割り当てられています。顕著なのは第1楽章と第4楽章ですが、特にフーガの手法を用いた第4楽章は、4つのパートの比重が全くの平等ですし、最初の主題を一番地味な音色のヴィオラから始めて、以後チェロ→第2ヴァイオリン→第1ヴァイオリンと受け継いでゆくので、段々と音色の明確度が高まり、楽器の特性が生かされるという作曲の閃きが実に素晴らしいです。

以上のことを考えてみると、昔の専制君主型のカルテットのスタイルではこの曲の真価を表すことは難しかったでしょう。20世紀も半ばになって、ブダペスト弦楽四重奏団によって、初めてこの曲の真価が表されたと言っても過言では無さそうです。「ハ長調」という調性もあって、作曲された当時、3曲の中で最も聴衆に理解されたとの話ですが、本当にこの曲の真価が演奏によって表されるには、更に時の流れが必要だったと思います。

もっとも「第3番」は非常にストレートな曲なので、最初に聴いた時のインパクトは大きいのですが、何度も繰り返して聴くと、第1番、第2番に比べて、幾らか飽きが来やすいようにも思います。大傑作であることに変わりは無いのですけれど。

この曲の演奏の良し悪しの判断には第1楽章と第4楽章の出来栄えが大きく影響しますし、メンバーの力量の均一性が非常に重要です。演奏する側にとっては非常な難曲です。ところが、こともあろうに僕はこの曲の第4楽章を演奏会で演奏した経験が有ります。それは大学の卒業記念の演奏会で、オーケストラ部の卒業生の数名同士でメンバーを組んで短い室内楽曲を演奏したのです。小ホールでのミニ・コンサートでしたが、僕は仲間とカルテットを組んで、選んだ曲が何とこの曲の第4楽章でした。
それにしても、この曲を人前で弾くと言うのは何とも無謀極まり無く、ヴィオラのソロで曲を開始しましたが、緊張で指が空回りしてしまい悲惨な状況と成りました。恐らく聴いていた人には冗談音楽に聞こえたことでしょう。(苦笑)

この曲を聴くと、今でもそんな青春時代の悪夢??が蘇りますが、世界の一流プロは流石に上手いです。そんなこの曲の愛聴盤をご紹介します。

51u9dbjsblブッシュ弦楽四重奏団(1933年録音/EMI盤) アドルフ・ブッシュは20世紀の偉大なヴァイオリニストですが、この曲の場合には他の3人に同等の力量が要求されるように書かれているので、やや聴き劣りします。ヴィオラ、チェロの音程の甘さは気になるところです。第4楽章で拍の長さが均一で無いのも(もちろん意図的な表現なのでしょうが)抵抗を感じます。第2楽章の悲壮感溢れる歌は流石なものの、全体的には古めかしさを感じてしまいます。録音はもちろん古いです。

10845ウイーン・コンツェルトハウス四重奏団(1952年録音/ユニヴァーサル・ミュージック盤) ウエストミンスター録音です。1楽章で主部に入っても慌てず騒がず、じっくりと進む様は、さながらクレンペラーかクナッパーツブッシュを思わせます。第3楽章での大時代がかった遅さにも驚きますが、第4楽章こそ彼らの真骨頂です。非常に遅いテンポで歌うように進むので旋律線が明確に聴き取れます。速いだけが能では有りませんよ、とでも言っているようです。この曲に関しては、同じ古めかしいスタイルでも、僕はブッシュSQよりもこちらの方が好きです。録音は古いながら明瞭です。

1196111187_2バリリ弦楽四重奏団(1955年録音/MCAビクター盤) ウエストミンスター録音です。コンツェルトハウスSQに比べると、メンバー全員が若く技量が上がっているので、この曲本来の音の構築性が充分に表現出来るように成りました。第2楽章での音の重なり合いの美しさと深い祈りの雰囲気も非常に素晴らしいです。第3楽章ではウイーン的な甘さと柔らかさに魅了されます。そうした美感を持ちながら、情緒至上主義には終わらないので、第4楽章では現代的な機能性も持ち合わせているところを感じさせます。録音はモノラルですが極上です。

90650dc0bfe3c81c14f641d351d90ca5ブダペスト弦楽四重奏団(1958年録音/CBS盤) 全集盤です。古くからの第1ヴァイオリン専制君主型から脱して、4人の民主政治型の演奏スタイルを確立したのはブダペストSQですが、それに最も適したのがこの曲です。4人のメンバーの力量が完全に均等で、アンサンブルが完璧であった為に、当時は「即物的だ」などと言われたそうですが、それぐらい上手かったわけです。現在聴くと、無機的な印象は全く無く、人間的な味わいも強く感じます。圧巻は第4楽章で、現代の速さを競うスポーツ競技のような演奏とは全く異なり、速過ぎも遅過ぎもしない理想のテンポで重戦車が爆走するような迫力と聴き応えを感じます。

151ジュリアード弦楽四重奏団(1964年録音/CBS盤) 旧盤の全集からです。昔、LP盤で聴いた時には、テンポも速過ぎ、メカニカルで無機的に感じられて余り好みませんでした。けれども現在改めて聴き直すと、メンバー4人の高度な技術が一体と成った合奏の切れ味と迫力には圧倒されるばかりです。終楽章の速さも新盤以上で、手持ちの演奏でこれより早いのはエマーソンSQのみです。バリリQやブダペストQの録音から10年も経ていない時代に、このような演奏をしていたとは、今更ながら本当に驚きです。

61zqixj1x9lズスケ弦楽四重奏団(1967-68年録音/Berlin Classics盤) ベルリン歌劇場管弦楽団のメンバーで編成されたこのカルテットの技量は専門の団体に劣らない技量を持ちました。ですので、この曲でも充分に弾きこなしています。強いて言うと、チェロの速い音が時々曖昧に聞こえる箇所が有りますが許せる範囲です。全体に東ドイツ的な堅牢さよりも、むしろ音のしなやかさを強く感じさせますが、オーソドックスな名演奏として何の抵抗も無く安心して曲そのものを味わえます。

V4871ヴェーグ弦楽四重奏団(1973年録音/仏Naive盤) 全集盤です。第1Vnのシャーンドル・ヴェーグは、情緒的な表現力ではブッシュ、カンパ―並みの素晴らしさですが、アンサンブルに現代的な意味での洗練度は求められません。そこがブダペストSQに及ばない点です。従って、この曲には不向きなように思えますが、聴いてみると案外その弱みが気に成りません。機械的な冷たさではなく人間的な温か味が感じられて、これはこれで悪くありません。

1939ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(1977年録音/ビクター盤) 「第2番」の感想と同じようになってしまいますが、コンビチュニー時代のゲヴァントハウス管の「野武士」に例えられる武骨な響きの名残を感じさせる演奏です。頑固なまでに融通の利かないイン・テンポを守っていて、ずしりとした手ごたえが有ります。柔らかいウイーン・スタイルでも現代的にスマートなスタイルでも無い、これこそは古きドイツ風と呼べるでしょう。このような貴重な演奏の録音が我が国で行われたことに感謝したいと思います。

D0021969_10143431アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1978年録音/EMI盤) 全集盤です。EMI特有の残響の多い録音は生の会場に近いのかもしれませんが、細部が聴き取りにくいのが欠点です。彼らは第1楽章を速いテンポで疾走しますが、16分音符が団子に聞こえてしまい残念です。第2楽章はギュンター・ピヒラーを中心にしなやかに歌わせています。第3楽章はさすがにウイーンの団体らしく甘く美しくとても魅力的です。第4楽章でも録音のマイナスは有りますが、集中力の高いアンサンブルを繰り広げています。

G7138122wスメタナ弦楽四重奏団(1979年録音/DENON盤) 全集盤です。スメタナSQのチェコものは掛け値なしに好きですが、ベートーヴェンは当時の評価の高さほどには凄いと思っていません。彼らの生演奏に接した時にもそう感じました。この曲でもオーソドックスな表現で聴き易い反面、ベートーヴェンらしいアクの強さが薄いような気がします。メンバーではチェロのコホウトが幾らか弱く感じられるのもマイナスです。

51f03m0kttlジュリアード弦楽四重奏団(1982年録音/CBS盤) ワシントン国会図書館ホールでのライブによる新盤です。ブダペストSQと同様、目の前で演奏しているような生々しいCBS録音は好きです。機能的に追い込んだアンサンブルも凄いですが、ライブのせいで無機的な冷たさは感じさせず、メンバー全員の実在感の有る音と演奏の凄みだけが伝わって来ます。第4楽章は相当な速さですが、僅かに音符が前のめり気味です。大して気になるほどでは無いのですが。

Imagesca41p4peメロス弦楽四重奏団(1984年録音/グラモフォン盤) 当時の新世代のドイツのカルテットとして非常に優秀なアンサンブルを誇りましたが、この曲を聴く限り、第3楽章はとても美しいものの、第1楽章や第4楽章では速いテンポに幾らか音符が鳴り切っていないように感じてしまいます。カラヤンやクライバーを意識した訳でも無いでしょうが、無理に飛ばしている印象です。時代の流れでは仕方有りませんが、重厚なドイツの演奏スタイルは既に消え去る運命だったのでしょうか。

36305935ボロディン弦楽四重奏団(1987年録音/Virgin盤) ラズモの1番では残響過多の録音に閉口しましたが、2年前に録音された3番の方が良好です。演奏も非常にオーソドックスで好感を持てます。古くも無く先鋭的でも無く、僕のような年代には安心して聴いていられます。アンサンブルは優れていますがメカニカルには感じません。ロシア演奏家のドイツものは余り趣味では無いのですが、彼らは例外です。時にウイーン的な甘さを感じさせるセンスの良さが魅力的です。4楽章ではゆとりと貫禄を感じさせます。

61vvfzeifl__sl500_aa300_ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(1990年録音/PLATZ盤) 全集盤からです。第1楽章から速いテンポでかっ飛ばすので、チェロが付いて行けずに苦労しています。全体もバタついた印象です。第2、第3楽章も速めですが、さすがに美しく良く歌っています。第4楽章は驚くほど速いですが、音符を弾き飛ばしている印象が有り、意外に感銘を受けません。別にジュリアードやABQに対抗する必要は無いと思うのですがねぇ。

Emersonbeethovenエマーソン弦楽四重奏団(1994年録音/グラモフォン盤) 全集盤からです。4人の奏者の存在感が全くの五分という点においてはブダペストSQ以来だと思います。第1楽章を相当速いテンポで弾いているにもかかわらず、一つ一つの音符の迫力と凄みは驚くほどです。第2、第3楽章では旋律を甘く柔らかく歌いますが、対旋律や伴奏音型にことごとく意味が込められているのにも目からうろこです。そして白眉は第4楽章で、圧倒的な猛スピードでありながら、弾き飛ばすどころか細部に聴かせどころ満載です。手に汗握る展開に言葉も失い、ただただ息を止めて聴き入る他有りません。

312ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(2003年録音/NCA盤) 全集盤からです。録音の良さも加わって、冒頭の和音の美しさに耳を奪われます。ビブラート少なめでピッチが正確だからでしょう。主部に入っても一音一画を曖昧にすることなくキッチリと音にしています。ダイナミクスやアクセントが明確なのはいかにもドイツ的です。第2、第3楽章も美しい響きをベースによく歌い聞かせます。第4楽章は無理の無い速さで、弾き飛ばすこと無く丁寧に音にしています。とても味わいの深さを感じます。

以上ですが、この曲の場合は、やはり第4楽章で受ける感銘の度合いで勝負が決まるように思います。そうなると圧倒的な聴き応えという点でブダペストSQが最高ですが、もう一つそれに匹敵するのがエマーソンSQです。さしずめブダペストが東の横綱大鵬ならば、エマーソンが西の横綱柏戸という両横綱です。そして大関の座には、ジュリアードSQの新旧両盤に後ろ髪を強く引かれ(抜けそうになり)ながらも、新旧のゲヴァントハウスSQの両盤を据えたいと思います。

<追記> ジュリアード四重奏団の旧盤を後から加筆しました。

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2013年4月20日 (土)

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 「ラズモフスキー第2番」 作品59-2 名盤

ラズモフスキー四重奏の3曲の中でも、第1番と第3番は外へと向かう広がりを感じるのに対して、第2番は反対に内へ内へと向かうような求心力の強さを感じます。それは、この曲だけが短調で書かれているせいもあるでしょう。第1番と第3番の人気の高さに比べると地味で陰に隠れ気味ですが、充実度としては少しも劣りません。一聴して理解がし易い第3番も傑作ですが、内省的で切迫感のある第2番のほうが、むしろ何度聴いても飽きが来ないかもしれません。

第1楽章 冒頭の激しい和音が、あの「コリオラン」序曲の出だしを連想させます。それに続く緊迫感の有る音楽の始まりを予感させています。

第2楽章 極めて内省的な音楽で、ベートーヴェンの深い祈りに他なりません。心が洗われる気持ちになります。

第3楽章 揺れるような情緒溢れる歌が魅力的です。不安定な心の内の表出に他なりません。

第4楽章 切迫感溢れる嵐のように激しいリズムは、第7交響曲の終楽章を想わせます。途中に現れる情緒的な旋律も非常に印象的です。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

10845ウイーン・コンツェルトハウス四重奏団(1951年録音/ユニヴァーサル・ミュージック盤) ウエストミンスター録音です。録音は明瞭ですが、やや固さを感じます。けれども聴き進むうちに演奏の素晴らしさに惹きこまれてしまします。ゆったりとしたテンポで情緒綿々と歌う演奏は、現代ではとても聴けないようなオールド・スタイルですが、なんと人間の心の襞や翳を深く表していることでしょう。終楽章でも意外に緊迫感を感じさせて見事です。この曲でもアントン・カンパーのヴァイオリンは甘く懐かしい音で聴き手を魅了しますが、こんな奏者はもう現れないでしょう。

1196111187バリリ弦楽四重奏団(1956年録音/MCAビクター盤) ウエストミンスター録音です。バリリSQも懐かしいウイーンの音を持ちますが、同時期に録音されたコンツェルトハウスSQと比べるとイン・テンポでかっちりと演奏していて、良くも悪くもスマートさを感じます。これはメンバー全員の世代が若いからでしょう。それでも、このウイーン的な情緒は非常に魅力的なので、彼らが全曲を録音してくれたのは貴重です。第2楽章の祈りの歌は非常に感動的です。終楽章の立体的な構築性も立派です。

90650dc0bfe3c81c14f641d351d90ca5ブダペスト弦楽四重奏団(1958年録音/CBS盤) 全集盤からです。半世紀以上も前に、これほどの演奏をしていたというのは驚異です。曖昧なところが少しも無い完璧な演奏は現代の演奏の先駆けであり、よくジュリアードSQが革新的と言われましたが、ブダペストが居てはじめてジュリアードが登場したのです。当時はブダペストよりもバリリSQの方が人気が有りましたが、時代の耳が追いつけなかったのでしょう。残響の無い録音が楽器の生々しい音を際立たせますが、表面的な綺麗さを求めては彼らの音の真の美しさは感じ取れないかもしれません。この曲の緊迫した曲想が第1番よりも更に彼らに適していると思います。

151ジュリアード弦楽四重奏団(1964年録音/CBS盤) 旧盤の全集からです。昔、LP盤で聴いた時には、テンポも速過ぎ、メカニカルで無機的に感じられて余り好みませんでした。けれども現在改めて聴き直すと、4人が織成す音の凄まじい切れ味と迫力に、しばし呆然とするばかりです。技術的に正に全盛期のジュリアードの実力は圧倒的です。バリリQやブダペストQの録音から10年も経ていない時代に、このような先鋭的な演奏をしていたとは、今更ながら本当に驚きです。

61zqixj1x9lズスケ弦楽四重奏団(1967-68年録音/Berlin Classics盤) 武骨なドイツの音を予想すると、非常にしなやかで美しい音なのに驚くことでしょう。ウイーン風の柔らかさとドイツ風の堅牢さを両立したような印象です。強烈な個性を持たない代わりに、音楽そのものをゆっくりと味わうには最適だと思います。反面、この破格の四重奏曲にしては幾らかの物足りなさを感じられる人も多いかもしれません。自分の場合も、どちらかと言えば後者側の聴き手なのですが、こういう演奏もやはり手放したくありません。

V4871ヴェーグ弦楽四重奏団(1972年録音/仏Naive盤) 全集盤からです。この曲のように張り詰めた緊張感を持つ曲はブダペストSQのほうが適しているとは思います。それでも終楽章の切迫感は充分ですが。少しもメカニカルな雰囲気が無く、あくまでも人間的な肌触りと精神を感じさせるタイプは今となっては貴重です。同じタイプのブッシュSQやウイーン・コンツェルトハウスSQは全曲の録音が残されていないので、ヴェーグSQが全集を完成させてくれたのはつくづく有り難いです。オールド・ファンは是非とも聴かれるべきです。もちろん最近のファンにもですが。

1939ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(1977年録音/ビクター盤) これこそは真正ドイツの演奏です。微動だにしない堅牢なテンポを守って太い音を響かせます。伴奏形の音の刻みの男性的なことも比類有りません。昔よく、母体のゲヴァントハウス管が「野武士」に例えられたような印象そのままです。ウイーンの流麗な演奏とは異なる、質実剛健なドイツ風のベートーヴェンはずしりとした手ごたえが有り、その魅力は絶大です。ボッセ教授がカルテット引退前に貴重な録音を残してくれたことに感謝です。

G7138122wスメタナ弦楽四重奏団(1979年録音/DENON盤) 全集盤からです。曲の持つ緊迫感を充分に表に出した演奏です。音そのものは流麗でとても美しいのですが、この曲では、しばしば音を割って激しく演奏しています。彼らは、ともすると穏健なイメージに思われますが、それが決して正しく無いことを再認識させられます。2楽章でも単に美しいだけで無く、驚くほど壮絶です。3、4楽章では速めのテンポによる熱演ぶりに思わず熱くなります。

D0021969_10143431アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1979年録音/EMI盤) 旧全集盤からです。1楽章は過激とも言えるようなダイナミクスが印象的です。それは「怒り」にさえ聞こえて、ちょっと平常心ではいられなくなります。2楽章は「祈り」が感じられる良い演奏です。3、4楽章は速いテンポで緊迫感が有りますが、少々せわしなく感じられるのが自分の好みからは離れます。全体にイコライジングがかかったような録音も、生の楽器の音とは異なって聞えて抵抗が有ります。

51f03m0kttlジュリアード弦楽四重奏団(1982年録音/CBS盤) ワシントン国会図書館ホールでのライブによる新盤です。速いテンポで凄まじい切れ味と迫力を感じさせる旧盤に対して新盤では、驚くほど情感重視のロマンティックな演奏スタイルに変化しています。もちろん激しさも持ちますが、そこに不自然なダイナミクスは感じさせず、あくまでも自然な高揚感を呼び起こします。それが、この曲にピッタリであり、ウイーン的でもドイツ的でも無いにもかかわらず、心の底からベートーヴェンを聴いたという充実感に浸らせてくれます。

Imagesca41p4peメロス弦楽四重奏団(1984年録音/グラモフォン盤) 第1楽章ではインテンポによりズシリとした手応えを感じさせて、これぞドイツという満足感に浸れます。2楽章も深い情感を持ちます。ところが3楽章では幾らか情感不足を感じさせてマイナス。4楽章では速めで前のめりのリズムがどうもせわしなく、1楽章との統一性を失わせています。どうも全体のまとまりに欠けているように思えるのが残念です。

61vvfzeifl__sl500_aa300_ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(1990年録音/PLATZ盤) 全集盤からです。シンフォニックなこの曲を、その印象の通り演奏しています。まるでウイーン・フィルの演奏のようです。録音は良いのですが、残響の多さが初めは気に成りますが、じきに演奏の良さに忘れてしまいます。ウイーンの音の柔らかさと、現代的な鋭さが見事に同居していますし、テンポ、表現の全体の統一性が見事です。さすがはウイーン・フィルのメンバーです。意外に気迫のこもった音に驚かされたりもします。

Emersonbeethovenエマーソン弦楽四重奏団(1994-95年録音/グラモフォン盤) 全集盤からです。全くこれがライブ収録とはとても信じられません。全員のテクニックとアンサンブルは完璧ですが、更にダイナミクスの巾が大きくて彫が深いので、極めて立体的な構築性を感じます。音のアタックの激しさにも圧倒されます。シンフォニックな点においては間違いなく最右翼です。ドイツ的でもウイーン的でもありませんが、非常に豊かな純音楽性を感じずにはいられません。味わいも深いです。ちなみにこの曲では第1Vnをフィリップ・セッツァーが弾いています。

312ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(2003年録音/NCA盤) 全集盤からです。ボッセ時代の野武士的な剛直さと重量感は失われましたが、それでもドイツ的な味わいを残しているのが嬉しいです。じっくりとイン・テンポを守っていて、決して前のめりになったりしません。彼らのこの曲の演奏は3年前に紀尾井ホールで聴きましたが、その時には、相当速いテンポで先鋭的な印象を受けました。それがライブだからかは分りませんが、やはり時間の経過と共に演奏スタイルが変化しているのかもしれません。美しく厚い響きもとても魅力的です。

以上ですが、大変な激戦区なので特に好む愛聴盤もウイーン・コンツェルトハウス、バリリ、ブダペスト、スメタナ、ジュリアードの新旧両盤、ウイーン・ムジークフェライン、エマーソン、ゲヴァントハウスの新旧両盤と、なかなか多くて絞り込めません。

<追記> ジュリアード四重奏団の旧盤を後から加筆しました。

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2013年4月 5日 (金)

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第7番 ヘ長調 「ラズモフスキー第1番」 作品59-1 名盤

Razumovskiアンドレイ・キリロヴィチ・ラズモフスキー侯爵(ウイーン駐在ロシア大使)

ベートーヴェン中期の弦楽四重奏曲は「傑作の森」の名に相応しい作品ばかりですが、特に「ラズモフスキー四重奏曲」の3曲については、その素晴らしさを何と形容したら良いか判らないほどで、正に弦楽四重奏曲の歴史における一大傑作です。

この曲集はベートーヴェンがラズモフスキー侯爵の依頼で作曲したために、その名称で呼ばれることは良く知られています。この人はロシアの貴族ですが、海軍軍人から外交官へ転身してウイーン駐在大使に任じられました。もちろんお金持ちなのでしょうが、羽振りが相当良かったようです。それに音楽と美術の大変な愛好家でもありました。自分のお抱えの弦楽四重奏団を持っていましたが、しばしば自らも第2ヴァイオリンを奏したそうですので、中々の腕前だったのでしょう。

その弦楽四重奏団は、ベートーヴェンとも親しいヴァイオリンの名手イグナーツ・シュパンツィヒが在籍していて、ヨーロッパで最も優れたカルテットと評判でした。そんな名カルテットのために作曲を依頼されれば、ベートーヴェンも創作に力が入ろうというものです。そして、かつてない最高の四重奏曲を書き上げました。

3曲はそれぞれ性格が異なり、実にヴァラエティに富んでいます。中でも第1番は最も曲の規模が大きく長大で、演奏に約40分を要します。壮大な広がりを持つ曲想が、どことなく「英雄交響曲」を連想させます。それとは対照的に、第2番と第3番は切迫感を持ち、強固に凝縮された音楽が「運命」を想わせます。音楽の驚くほど豊かな内容は作品18とは比べものにならず、後期の四重奏曲の深淵さとも異なる魅力に溢れています。

ラズモフスキー第1番の第1楽章は「英雄」の第1楽章と似ている気宇壮大なスケール感の有る傑作です。第2楽章はスケルツォ楽章ですが、通常は2楽章に置かれる緩徐楽章と入れ替えるという斬新さは自身の「第九」の先取りだと言えます。けれどもこの楽章は、当時の聴衆には全く理解されずに、ベートーヴェンは冗談でこの曲を書いたのだと思われたそうです。第3楽章は悲壮感に満ちたアダージョです。高貴なことこの上ありません。第4楽章はリズミカルな躍動感に溢れますが、展開部のシンコペーションが生み出す緊張感に強く惹かれます。4つの楽章はどれもが魅力に溢れていて大変に聴きごたえが有ります。

ベートーヴェンの中期以降の作品は4つの楽器が互いに競い合うように書かれている傾向が有りますが、それでもこのラズモフスキー第1番では、第1ヴァイオリンの重要性が相当に高いので、その奏者の力量や音楽性は演奏の出来栄えに大きく影響します。

この曲は非常に好きな曲なので、もしも全集盤の良し悪しを幾つかの曲で判断する際には、この曲と、それに第14番、第15番あたりを聴くことにしています。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

00143708ブッシュ弦楽四重奏団(1942年録音/CBS盤) 学生時代にLP盤で聴いて、この曲に開眼した想い出深い演奏です。ブッシュは戦前の一連の演奏からは想像出来ないほどに遅めのテンポでゆったりと歌っています。淡々としていながらも驚くほど味わいが深く、一音一音の意味深さが凄いです。3楽章でのブッシュのヴァイオリンの奏する悲壮感には言葉を失います。この演奏を聴いて、いつも連想するのがフルトヴェングラーの戦後のEMI録音の「エロイカ」です。単に精密なだけやスピード感の有る演奏とは全く次元の異なる素晴らしさです。時代を越えた演奏とは正にこのようなものです。これは偉大なブッシュの残した最高の遺産の一つです。録音も古い割に明瞭です。

10845ウイーン・コンツェルトハウス四重奏団(1951年録音/ユニヴァーサル・ミュージック盤) 彼らがウエストミンスターにベートーヴェンも主要な曲の録音を残してくれたのは嬉しいです。ブッシュ以上にゆったりとした演奏で、ウイーンの田舎の情緒がこぼれるようです。少々まったりし過ぎで迫力には欠けていますが、アントン・カンパーのヴァイオリンは悲壮感においてアドルフ・ブッシュに肉薄していますし、現代ではとても聴けないような甘さと柔らかさが非常に魅力的です。嗚呼、何と美しき哉、古き良きウイーン!

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バリリ弦楽四重奏団(1955年録音/MCAビクター盤) ウエストミンスター録音です。もちろんバリリもウイーン的な甘く柔らかい音を持ちますが、コンツェルトハウスSQに比べれば、ずっと若い世代になるので都会的でスマートです。アンサンブルの精度は上がっていますし、2、4楽章では躍動するリズム感が素晴らしいです。反面、3楽章などは案外とスッキリしていて、悲壮感の表出に幾らかの物足りなさを覚えます。

90650dc0bfe3c81c14f641d351d90ca5ブダペスト弦楽四重奏団(1958年録音/CBS盤) 昔はバリリSQに比べると無味乾燥のように思われていた彼らですが、余りに厳しい音には当時の評価を想い起させます。面白いのはリズムやダイナミックの強調が現代の団体並みに先鋭的でメカニカルなのに、ポルタメントを多用した旋律の歌いまわしが情緒一杯で極めて人間的であることです。特に第1Vnのヨゼフ・ロイスマンの泣き節はシゲティにも匹敵するほどです。この一見アンバランスとも思われる要素が見事に融合しているのが凄いです。1950年代のモノラル録音盤も良いですが、音楽的に更に深いステレオ録音盤を取ります。

151ジュリアード弦楽四重奏団(1964年録音/CBS盤) 旧盤の全集からです。昔、吉田秀和氏が絶賛していたのでLP盤で購入しましたが、メカニカルな窮屈さを感じて好みませんでした。けれども現在改めて聴き直すと音そのものの持つ迫力と力強さに圧倒されて、このハードボイルドな演奏も悪く無いなと思います。優秀なテクニックによる精緻な演奏はセル/クリーヴランド管のイメージとも重なります。アダージョも情に流されるタイプでは有りませんが、決して無味乾燥ということはなく案外と心に響いてきます。

61zqixj1x9lズスケ弦楽四重奏団(1967-68年録音/Berlin Classics盤) カール・ズスケはゲヴァントハウス管からベルリン歌劇場に移り、ベルリンSQを結成しました。それがこの団体です。東ドイツ的な堅牢さを持ちますが、ゲヴァントハウスSQと比べると、ずっとしなやかさを感じます。これはズスケの個性でしょう。テンポも幾らか速めですし、ダイナミクスも随分と現代的に強調されています。これは古いファンにも若いファンにも受け入れられそうな秀演だと思います。3楽章でのズスケのヴァイオリンは澄み切っていて、単なる感傷性を越えた崇高さをも感じさせます。

V4871ヴェーグ弦楽四重奏団(1973年録音/仏Naive盤) アメリカに渡ったブダペストSQは強靭なアンサンブルを有しましたが、ヴェーグSQは現代の感覚からすれば、まったりした「ゆるキャラ」です。神経質なメカニカルさは微塵も無く、常に人間の肌の温もりを感じさせてくれます。ですので、第3楽章はそれほど深刻ではないのに悲しみが心の奥に浸みわたって来ます。ある種、戦前のレトロさと同質の味わいを感じさせてくれる演奏です。個人的には堪らなく好きです。

1939ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(1977年録音/ビクター盤) 彼らの演奏旅行の合い間に日本でラズモフスキーの3曲が録音されたのは貴重でした。第2Vnはズスケからギュンター・グラスに代わりましたが、第1Vnのゲルハルト・ボッセ教授は健在です。テンポは一貫して中庸ですが、念押しするリズムに良い意味での重みを感じます。音もウイーン流の柔らかい音とは異なる、正に堅牢なドイツの音であり、全体が質実剛健な雰囲気に包まれています。嗚呼、古き良きドイツよ!

G7138122wスメタナ弦楽四重奏団(1978年録音/DENON盤) 作品18の演奏は少々爽やかに過ぎるように感じましたが、ラズモフスキーでは音に強さを増していて不満が解消されました。と言っても、元々彼らはチェコの団体らしく、流麗で美しい演奏をすることには変わりありません。ベートーヴェンの音楽の持つアクの強さを更に打ち出してくれたほうが良いと思わないこともありませんが、この純音楽的な表現と美感が彼らの特徴ですので、そのまま味わいたいと思います。先鋭的に過ぎない演奏には安心して身を任せていられます。3楽章も非常に美しいです。

D0021969_10143431アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1979年録音/EMI盤) 1、2楽章は速いテンポでダイナミズムが過激です。アンサンブルは優秀ですが、聴いていて「ゆとり」が感じられないのが好みから離れます。ところが3楽章になると一変してゆったりと甘く歌い、深い沈滞感を醸し出します。1stVnのギュンター・ピヒラーの味わいに満ちた歌いまわしにも魅了されます。4楽章は中庸のテンポですが、躍動感に溢れるリズムに乗った歌が非常に楽しいです。前後半で評価は分かれますが、全体的には悪くありません。

51f03m0kttlジュリアード弦楽四重奏団(1982年録音/CBS盤) これはワシントン国会図書館ホールでのライブによる新盤です。精緻な旧盤に比べるとアンサンブルに幾らか緩みを感じますが、それが逆に人間的で好ましいです。 それよりもロバート・マンのヴァイオリンが非常にロマンティックなのには驚かされます。アダージョの痛切さは如何ばかりでしょう。これはウイーン的でもドイツ的でもありませんが、間違いなくベートーヴェンの心に肉薄する感動的な演奏です。残響の少ない録音も演奏が生々しく聞こえて好みです。

Imagesca41p4peメロス弦楽四重奏団(1984年録音/グラモフォン盤) 彼らが登場したころは、ドイツの団体も世代が変わったなぁと思いました。速めのテンポで流麗に歌うのは、さしづめカラヤン/ベルリン・フィルのようです。それでも表現そのものはオーソドックスなので、異形な印象は受けません。ウイーン的な甘さを排除した、やはりドイツの伝統を受け継いだ団体です。余り強い個性を感じないのが好悪の分かれ目でしょうが、音は美しくアンサンブルも優れた美しい良い演奏だと思います。

36305935ボロディン弦楽四重奏団(1989年録音/Virgin盤) 彼らはショスタコーヴィチの素晴らしい全集を残していますが、一方でドイツ音楽を演奏した場合にはウイーン的な甘さを表現するのが、とても好きです。ベートーヴェンにも主要な曲の録音を残してくれました。これは第1Vnのコぺルマンが東京カルテットに移籍してしまう前の録音であり、彼を中心に優れたアンサンブルで非常に美しい演奏を行なっています。欠点としては、まるで銭湯の中で録音したような残響過多な録音の為に細部が聴き取り難いことです。これは少々残念です。

338アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1989年録音/EMI盤) 二度目の全集がライブというのはジュリアードSQと同じです。第1Vのピヒラーの語るところによれば、スタジオ録音に比べて細部の完成度は失われても、それに代わって得られるものが有るためにライブによる再録音を行なったそうです。確かに表現が過激とも言えるほどに大胆になりましたが、個人的には細部の犠牲の見返りほどの大きな魅力は感じていません。その点がジュリアードとの違いです。

61vvfzeifl__sl500_aa300_ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(1990年録音/PLATZ盤) 全集盤からです。ウイーンの伝統である甘く柔らかい音が基盤となっていて、正にミニ・ウイーン・フィルです。ウイーンの情緒がこぼれそうです。弦楽器同士の紡ぎ合いが何とも美しいです。けれども同時に現代的な迫真性も持ち合わせているので、決してノンビリまったりというわけではありません。充分な音の迫力も持っています。古き良きウイーンの魅力と現代性の絶妙な融合ぶりが見事です。録音については残響が少々過多のように感じます。

Emersonbeethovenエマーソン弦楽四重奏団(1994-95年録音/グラモフォン盤) 全集盤からです。これがライブ収録とはとても信じられません。他の団体のスタジオ録音を遥かに凌ぐ上手さです。アンサンブルの精緻さに加えて、個々の奏者の音程が完璧で、ハーモニーが極上の美しさです。ダイナミックな迫力を見せる部分と、柔らかく歌う部分の対比が実に見事で、千辺万化する表情の豊かさが得も言われぬ素晴らしさです。ドイツ的でもウイーン的でも無い、純粋に「音楽的な」名演奏だと思います。強いて欠点を上げれば、3楽章に深刻さが不足することでしょうか。それにしても第1Vnを弾くユージン・ドラッカーの上手さとセンスの良さは圧巻です。やはりこの人が第1Vnを弾く時が最強だと思います(このカルテットは第1Vnと第2Vnが曲によってローテーションをします)。

312ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(2003年録音/NCA盤) 全集盤からです。ボッセ時代の質実剛健さとは随分変わりました。早いテンポで颯爽と駆け抜ける演奏は、実に現代的です。オーケストラが母体のカルテットとしては非常に優秀ですが、さすがにエマーソンSQの後に聴いてしまうと少々聞き劣りします。それでもドイツ的な音の香りが完全に失われているわけでは無いので、やはりそこが魅力です。

以上のどれもが中々に良い演奏なので甲乙が付け難いところですが、ブッシュ弦楽四重奏団の演奏だけは別格的存在です。その理由はアドルフ・ブッシュの弾くヴァイオリンが他の奏者とは次元の異なる素晴らしさだからです。

ブッシュが余りに素晴らしいので、その他の演奏は特にどれとは言い難いところですが、しいて上げるとすれば、ブダペストSQとジュリアードSQの新盤の二つでしょうか。片やヨゼフ・ロイスマン、そしてロバート・マンという第1ヴァイオリンの存在感が圧倒的です。やっぱりこの曲は男(マン)の音楽なのかなぁ。

<追記> ジュリアード四重奏団の旧盤を後から加筆しました。

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2013年3月29日 (金)

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第1番~第6番 作品18 名盤

Beethoven111
ベートーヴェンの作品ジャンルの金字塔と言えば、交響曲(9曲)、ピアノソナタ(32曲)、それに弦楽四重奏曲(16曲)の三つというのは、誰もが意見一致するところでしょう。ただ、僕にとって交響曲と並ぶ重要な存在であるのが弦楽四重奏曲です。その理由は多分、かつて自分がヴィオラを弾いていたので、どうしても弦楽器に対する思い入れが強いからだと思います。

外向的な性格の交響曲に対して、弦楽四重奏曲は極めて内向的な性格を持っています。これまでこのブログで一度も取り上げなかったのも、余りに深い領域に足を踏み入れるような気がして、中々手を出す気にならなかったからです。でも、それではいつになっても記事を書けませんからね。肩の力を抜いて書いてみることにします。ということで、しばらくはベートーヴェンの弦楽四重奏曲の特集です。

さて、良く知られている通り、ベートーヴェンの創作期は大きく3つに分れています。

-初期- 生れ故郷のボンからウィーンに移り住んでからの最初の10年間

-中期- 難聴となり自殺まで考えるものの不屈の精神で立ち直り、作曲に邁進する10年間(いわゆる「傑作の森」の時期)

-後期- 私生活における多くのトラブルに巻き込まれつつも、芸術的に益々深化していく晩年

弦楽四重奏曲は、1番から6番までが「初期」、7番から11番までが「中期」、12番から16番までが「後期」というように、はっきりと分かれていますので、それぞれの曲の位置づけが非常に分かり易いです。

このうち「初期」の1番から6番までの6曲については、1798年から1800年の2年間に集中して書かれていて、「作品18」として6曲をまとめた形で楽譜出版されました。まだまだハイドンやモーツァルトの影響を強く残していますし、あの中期以降の傑作群と比べてしまえば、どうしても物足りなさを感じます。でも、決して未熟だということでは無く、のちのベートーヴェン作品の芽をあちこちに聴くことが出来ます。また、熟達の演奏家用に書かれた中期以降の演奏難易度の高い作品とは違って、アマチュアの演奏家でも手を出す余地が残されているので、楽器の心得の有る人が集まれば、演奏を楽しむことも可能です。

6曲の実際に書かれた順番は、3番、1番、2番、5番、6番、4番という順番です。出版の際に順番を入れ替えたのは、ヴァイオリニストで友人でもあったシュパンツィッヒのアドヴァイスによるものだそうです。

この中では、最後に書かれた第4番だけが短調で、しかもハ短調というベートーヴェン的な調で書かれているので、悲壮感を伴う傑作として人気が高く、最もよく演奏されます。僕も大学オケ時代には、仲の良いメンバーとカルテットを組んで演奏を楽しんだことが有りました。特に魅力的なのは緊迫感と激しさを持つ1楽章と4楽章で、中々に初期の作品とは思えません。

次に演奏されることが多いのは第1番ですが、これは第2楽章のアダージョが非常に深刻な雰囲気を湛えていて、ベートーヴェン自身がこの楽章を「ロメオとジュリエットの墓場の場面を思い描いた」という逸話が残されているからでしょう。第4楽章の中間部では、「エロイカ」の終楽章によく似た音型が登場します。この作品は確かに魅力作です。

けれども、曲として一層充実していて飽きのこないのは、やはり第5番と第6番だと思います。

第5番では、美しいメヌエットの2楽章に続く、3楽章の長大なアンダンテ・カンタービレが傑作です。変奏形式ですが、穏やかな主題が変奏ごとに力強さを増してゆき、最後にはいかにもベートーヴェンらしい高らかな勝利の行進の歌となるのがユニークです。終楽章では「運命交響曲」の第1楽章の原型となるような音型が登場するのが面白いです。

第6番では、2楽章の悟ったような美しさと哀しみは中期以降を想わせます。終楽章に<メランコリー>と名付けた序奏を置くのもユニークで、完全にベートーヴェンそのものの独創性を感じます。この序奏は中間でも再び登場します。曲全体の和音と転調の魅力も素晴らしく、とても初期作品とは思えません。

残る第2番や第3番は地味ですが、これらも決してつまらない作品では有りません。
要するに、既に「ポスト・ハイドン&モーツァルト」であって「プリ・ベートーヴェン」という時期の作品として、尽きせぬ魅力を持っているのが作品18の6曲だと思います。

それでは、僕の愛聴盤をご紹介します。

474b3550lバリリ弦楽四重奏団(1952‐53年録音/MCAビクター盤) 有名なウエストミンスター録音の全集です。かつてはバリリかブダペストかと比較された栄光の時代が有りました。厳しい音のブダペストSQに対して、ウイーン的な柔らかい音を持つバリリSQは現在でも根強いファンを持っています。テンポは速過ぎず、遅過ぎず、常に中庸で、意外に解釈はスマートですが、メヌエットのトリオなどではゆったりと歌っていて本当に美しいです。どのメンバーの音からもウイーンの情緒がこぼれる辺りは伝統なのでしょう。機械的な息苦しさとは無縁の、心を癒される音楽がここにはあります。

90650dc0bfe3c81c14f641d351d90ca5ブダペスト弦楽四重奏団(1958年録音/CBS盤) 20世紀の最も偉大なカルテットである彼らはSP、モノラル、ステレオ各時代に全集録音を行なっています。この当時のブダペストSQは全員ロシア出身のメンバーで、アメリカに居住していましたが、演奏スタイルはハンガリー的というユニークな団体でした。彼らの重厚で彫が深く、厳しい音造りには畏怖心を覚えます。初期の作品も、まるで中期以降の作品のように聞えます。余りの真剣勝負の姿勢が辛口に過ぎるために、日常的に聴くには不向きかもしれません。当時のCBSのオンマイクで残響の少ない録音もそれを助長します。けれどもベートーヴェンの音楽に真剣に向かい合いたいと思った時には、彼ら以上の演奏は有りません。たとえ新しい団体がどれほどメカニカルな方向性で突き詰めたところで、とても越えられる音楽では無いからです。最初のSP時代の演奏も素晴らしいのですが、僕は最後のステレオ録音盤を好んでいます。

0031832bcゲヴァントハウス弦楽四重奏団(1967年録音/ETERNA盤) 当時の古色蒼然としたゲヴァントハウス管の音そのままの カルテットです。頑固で無愛想だし冗談を言ったりもしないけれど、本当は優しいドイツ親父のようなイメージです。第1Vnのゲルハルト・ボッセ教授は晩年は指揮者として知られていますが、当時はゲヴァントハウス管の名コンマスです。端正で禁欲的な音が素晴らしいです。第2Vnを弾いているのがカール・ズスケというのも豪華です。全体のアンサンブルは非常に堅牢ですが、少しもメカニカルな印象がしないのは、さすがにドイツの歴史ある団体です。

V4871ヴェーグ弦楽四重奏団(1973-74年録音/仏Naive盤) ウエストミンスターにウイーン・コンツェルトハウスSQの作品18の録音が無いのが残念ですが、その代替えになるのがヴェーグSQです。この古き良き時代の田舎風の情緒満点の演奏と比べると、バリリSQの方がよほどスマートで都会的に聞こえます(あくまで比較の上の話)。第5番のアンダンテ・カンタービレの懐かしさは最高です。音に翳の濃いのはいかにもハンガリーですが、ブダペストSQを聴くのには緊張感を強いられますが、ヴェーグには心からの癒しを与えられます。どちらが好きということでは無く、両方ともかけがえのない演奏です。倍音のよく捉えられたアナログ的なリマスターですので余計レトロに感じられるのも幸いです。

51i52fglul__sl500_ss500_ズスケ弦楽四重奏団(1976-77年録音/Berlin Classics盤) 20代の頃に来日公演を聴きに行った頃は”ベルリン弦楽四重奏団”の名称でしたので、今でもその方が親しみが有ります。その時にも第4番を聴いた覚えが有りますが、ズスケの音はゲヴァントハウスのボッセに比べるとしなやかで、瑞々しさが優っていました。その美しい音がこのCDには忠実に捉えられています。ドイツといいながらも、ウイーンに近い柔らかい印象の音が魅力です。第2Vn以下のメンバーのレベルが高く、アンサンブルが優秀なので聴き応えが有ります。

G7138122wスメタナ弦楽四重奏団(1976-78年録音/DENON盤) 大学オケでヴィオラを弾いていた頃には、このメンバーのシュカンパさんの大ファンでした。生で聴いた彼らのチェコものやベートーヴェンの演奏は最高の思い出です。ですが、ベートーヴェンの作品18に関する限り、現在CDで改めて聴き直すと、少々爽やかに過ぎるように感じます。いくら初期の作品でも、もう少し個性を表に出して欲しかったかなぁというのが正直なところです。

D0021969_10143431アルバン・ベルク弦楽四重奏団(1980-81年録音/EMI盤) スメタナSQ時代に取って替わって一世を風靡した彼らのベストセラー全集です。ウイーン出身団体としての柔らかさも持ちますが、それよりも(録音当時は)新世代としての先鋭的な側面の印象を強く感じます。演奏表現のダイナミックレンジが広い割に、大ホールで聴くような遠い録音で楽器の微細が聴き取りにくいのが難点です。楽章ごとのテンポ設定にも幾らか不自然さを感じますし、少なくとも作品18に関しては特別な愛着を感じてはいません。但し、第6番だけは先鋭的な演奏が成功していて素晴らしい出来栄えです。この全集盤の欠点は、6曲があちこちに分散して収められているのが不便です。
尚、彼らには1989年のライブ録音による新盤が有りますが、録音は細部が明瞭で良いものの、演奏自体は「こんな風に演奏できるのだぞ」という表現意欲が旧盤以上に旺盛なので、少なくとも初期の作品については正直言ってわずらわしさを感じます。

61vvfzeifl__sl500_aa300_ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(1990-92年録音/PLATZ盤) ライナー・キュッヘルを中心としたウイーン・フィルの団体です。バリリSQの名盤以降に、ワルター・ウェラーやヘッツェルが成し得なかった全集を完成させてくれたのは意義深いです。同じウイーンの団体でもアルバン・ベルクSQの先鋭的な演奏とは異なり、あくまでもウイーンの伝統の色濃い演奏であり、そこが正に魅力です。ウイーン情緒に溢れた柔らかな弦楽器が紡ぎ合う響きの何という美しさでしょう。その割に第6番あたりはアルバン・ベルクSQを意識したのか、意外に先鋭的な面も見せています。録音も優秀ですし、日常的に聴くには最適だと思います。

Emersonbeethovenエマーソン弦楽四重奏団(1994-95年録音/グラモフォン盤) ライブ収録による全集盤からです。エマーソンというと、僕はいまだにエマーソン、レイク&パーマーを連想してしまいます(苦笑)。しかも、この演奏は、ウイーン情緒などには目もくれず、疾走するテンポと激しさが、あたかもELPの「タルカス」のようです。聴いていると、これは作品18では無くて中期以降の作品のように思えてくるほどです。第1ヴァイオリン以外の楽器も、極めて雄弁なことは特筆に値します。ライブというのも彼らの自信の表れでしょう。同じライブでも精緻さにおいてアルバン・ベルクSQを凌駕します。この演奏から連想するのはカルロス・クライバーのベートーヴェンですが、あれが好きな方は手放しで気に入られることと思います。自分はというと、少々とまどいを感じますが、反面彼らの演奏の中毒にかかりそうでもあります。

312ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(2003年録音/NCA盤) 全集盤からです。ボッセ時代から40年近くも経っているのですから、母体のオケも変わったように、音が変わっても当たり前です。それでも演奏のベースにはしっかりとドイツ的な堅牢さが有って、そこへアンサンブルの緻密さとダイナミズムをブレンドさせている印象です。これは新しい世代の素晴らしい演奏です。アルバン・ベルクSQがウイーン的なら、こちらはやはりドイツ的です。ずっと新しい録音だけあって音質も非常に優れています。

これ以外では、ディスクを手放してしまいましたが、セーケイ・ゾルターン率いるハンガリー弦楽四重奏団の演奏が案外良かったように記憶しています。これはもう一度聴き直してみたい気がします。

また第1番のみでは、あの偉大なブッシュ弦楽四重奏団のEMI録音が有ります。演奏の歴史において貴重な記録です。

ということで、作品18のマイ・フィヴァリットは、ブダペストSQ盤とヴェーグSQ盤のふたつです。もちろんバリリSQやズスケSQも忘れることは出来ません。
ただ、これでは「古い奴だ」と思われそうなので、新しい世代から、ウイーンの情緒と新しさが上手くブレンドされたウイーン・ムジークフェラインSQを選びます。

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