ショスタコーヴィチ

2013年6月15日 (土)

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番 ザンデルリンク/ロイヤル・コンセルトへボウ管のライブ盤

81hjtilpfpl__aa1500_クルト・ザンデルリンク指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管(1999年録音/コンセルトへボウ管弦楽団アンソロジー第6集1990-2000より)

ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団による自主制作CD第6集には、ザンデルリングが指揮したものとして、前回ご紹介のブルックナー交響曲第3番の他にショスタコーヴィチ第5番という一品が収められています。

ザンデルリンクが引退したのは2002年ですが、最晩年の録音には1999年にシュトゥットガルト放送響に客演したライブのブルックナー第7番が有り、それは正に天を仰ぎ見るような壮大な演奏であり、僕のブル7のベストを争う愛聴盤です。その同じ年にライブ録音されたのが、このショスタコーヴィチ第5番ですので、最晩年の巨匠の威容を聴けるという点で大変に貴重です。

ザンデルリンクは旧東ドイツ出身ですが、東西冷戦時代にはソヴィエトのレニングラードで、ムラヴィンスキーの下で指揮者をしていました。ですので、この人は純正ドイツもの以外にも、ロシアのチャイコフスキー、ショスタコーヴィチ、あるいは北欧のシべリウスなどをレパートリーとしています。それでも、やはりこの人はドイツものが最高ですし、晩年には心の故郷に戻ったかのように、ドイツものを多く演奏していましたが、最晩年に名門コンセルトへボウと演奏したショスタコーヴィチということであれば興味は尽きません。

この自主制作CDはどれも録音が優秀で、しかも変に音をいじくりまわしていないので安心です。この曲も冒頭の力強い響きにすぐに引き込まれます。

第1楽章では、山あり谷ありという派手なドラマの演出はしていません。このあたりはいつものザンデルリンクそのものです。最晩年ということで緊張感の減衰が心配ですが、このひとに関してはそんなマイナスは見られません。元々アンサンブルに必要以上に神経質になったりはしませんが、自然な指揮ぶりに名門オケが忠実に応えています。そして巨大なスケール感がじわりじわりと膨れてゆきます。けれどもテンポが極端に遅い訳では無く、聴感上ではむしろこの10年も前にベルリン響と録音したブラームス交響曲全集の新盤のほうがずっと遅く感じられます。

第2楽章も同様にスケールが大きく、凄く重量感は有るものの、少しももたれたり推進力が失われたりしません。

第3楽章はムラヴィンスキーのように凍りつく様な冷たさを感じることもなく、それほど暗い悲壮感に包まれているわけではないのですが、何か非常に深いものを感じます。コンセルトへボウの音はそれは美しいのですが、決して表面的な美しさでは無く、内面的な美を浮かび上がらせているような気がしてなりません。

第4楽章は冒頭から気迫に驚かされます。ザンデルリンクにしては意外に速めのテンポに感じますが、巨大なものがぐんぐんと迫り来るようであり、良い意味での威圧感に圧倒される思いです。表情も大きく、引退前の巨匠のどこからこれほどのパワーが溢れだしてくるのか不思議になります。終結部の巨大さはやはりザンデルリンクです。ムラヴィンスキー/レニングラードにも匹敵する充実ぶりで、「天空の城ラピュタ」(?)という感じでしょうか。終演後に収録されている拍手の大きさには聴衆の満足感が現れていると思います。

いやぁ、ザンデルリンクはホント最後まで凄かったのですね。

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2013年2月 8日 (金)

ショスタコーヴィチ 交響曲第5番 ニ短調 op.47 名盤

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まだまだ寒い日が続きますが、立春も過ぎれば、少しづつハルの足音、じゃなかった、春の足音が聞こえてきますね。いつまでもロシア音楽特集でもありませんので、今回で最終回とします。そこで取り上げようと思いついたのが、ドミートリ・ショスタコーヴィチです。

ショスタコーヴィチが20世紀を代表する交響曲(だけではありませんが)作曲家であるのは間違いありません。「20世紀に書かれた交響曲」というなら、個人的にはシベリウスの方が、ずっと好きですが、なんといっても全15曲の大軍団には多勢に無勢で圧倒されます。

ところでショスタコーヴィチは、これまで一度も記事にしたことが有りませんでした。そうなのです。正直言うと、熱中するほど好きでは無いからです。こんなことを書くと、世のタコ・マニアからは怒られるでしょうが、その理由は良く分りません。馬が疾走したり、飛び跳ねたりするようなリズムや、ブラスバンドのようにバリバリと鳴る管楽器の扱いには大いに面白さを感じますが、どうも僕の肌には今一つしっくりと来ません。これは単に感性の問題なのでしょうけれども。
ところがタコ・マニアというのは熱狂的(偏執的??)で、僕の大学オケの後輩には、ショスタコーヴィチの交響曲だけを演奏するためにわざわざ専用のアマチュア・オーケストラを結成してしまった猛者が居ました。ここまで行くと脱帽です。

そんなショスタコーヴィチの15曲のシンフォニーの中で、最も好きだと言えるのは第5番です。真正タコ・マニアには評価の微妙なこの曲ですが、後期ロマン派好きな自分にとっては最も楽しめます。この曲をめぐっては、当時反体制派として見られて立場の危うかったショスタコーヴィチが、意に反して社会主義を賛美する音楽を書いたと言われていますが、僕は余りそのような意識を持って聴いたことは有りません。あくまでも純音楽的に聴くことがほとんどなのです。そうしてみると、交響曲としての形式を忠実に踏襲したこの曲は、非常にまとまりの良い名曲に思えます。

この曲の初演はムラヴィンスキーによって行われました。そのリハーサルには、ショスタコ―ヴィチが立ち合っていましたが、ムラヴィンスキーとは演奏解釈をめぐって激論を交わしたそうです。それでも無事に初演が行われましたので、最終的には意見がまとまったのでしょう。

なお、この作品を「革命」の副題で呼ぶことが有りますが、ショスタコーヴィチ自身はそのような命名は行っていません。

それでは、愛聴盤のご紹介です。

51h0qp0k65lエフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1965年録音/ドリームライフ盤) やはり初演者としての貫禄は他を圧倒しています。これは、モスクワ音楽院大ホールでの一連の録音の中に含まれますが、昔のLP時代には出ていなかったように記憶します。翌年1966年のレニングラードでの演奏と似ていますが、演奏の出来栄えは66年盤には及びません。録音も並みレベルです。従って、全盛期のムラヴィンスキーの演奏を聴けるという点では価値が有ると思いますが、マニア以外には特にお勧めはしません。

413n12nkrul__sl500_aa300_エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1966年録音/RussianDISC盤) ムラヴィンスキーの数ある録音の中でも、最も好きな演奏です。速いテンポで激しく突き進み、切り裂くような音の迫力に圧倒されます。テンポの微妙な変化も自家薬篭中の上手さを感じます。初演者がいつでも一番良いとは限りませんが、この曲に関しては、どの部分の表現をとっても最も説得力を感じます。3楽章の情感の深さも、凡百の指揮者の及ぶところではありません。録音年代が古い割には、音質が明瞭で、各楽器の音が生々しく鳴り響いています。

51s73wwsb8lエフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1973年録音/Altus盤) これはムラヴィンスキーの記念すべき初来日の時の東京文化会館でのライブ録音です。60年代の演奏と比べると、テンポが幾らか遅めとなり、音の切れ味が弱まりましたが、その代わりにスケール感が増しています。録音も良好で、文化会館の1階で聴いているような生々しさが伝わって来ます。残念ながら自分は実演を聴き逃しましたが、この演奏に接した当時のファンは本当に幸運でした。来日直前にレニングラードで録音された演奏も近年リリースされましたが、そちらは未聴です。

51ftnqf2d5lエフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1984年録音/ERATO盤) 晩年のデジタル録音ですので、音質は最も優れています。確かに第3楽章などでは更に深みを増していて極めて感動的ですが、その反面、全体のアンサンブルの精度やリズムのキレの良さ、音の凝縮力などに弱まりを感じます。もちろん他の指揮者と比べれば充分素晴らしいのですが、個人的には60年代、70年代の演奏を好んでいます。もっとも1978年のウイーン録音盤は、音質が余りに柔らかすぎて好みません。

51bhwoyugqlレナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1959年録音/SONY盤) ムラヴィンスキーと並ぶ人気を誇るのはバーンスタインです。東西冷戦時代にニューヨーク・フィルとモスクワで演奏会を行ない、ショスタコ―ヴィチから絶賛を受けたエピソードは有名です。但し、それをもって演奏解釈が全て認められたとは思いません。その熱演ぶりに胸を打たれたということだったのかもしれないからです。モスクワ公演の直後にボストンで録音した演奏は、やはりエネルギーに満ち溢れた名演です。フィナーレは非常な快速テンポで煽りますが、少々バタバタした感無きにしもあらずです。金管の音色が明る過ぎるのも気になります。終結部が楽天的なのも「冷戦、そんなの関係ねー」と言ってるみたいで、同時代のロシアの演奏家のようなシリアスな感じが希薄なのには、幾らか抵抗を感じます。

51tcdmh5hqlレナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1979年録音/SONY盤) これはムラヴィンスキーの僅か6年後に、同じ東京文化会館で行われたライブ演奏です。当時の演奏家と言うのはつくづく凄い人たちが居ました。1959年録音の旧盤は演奏の若々しさで人気が高いですが、この新盤では、ずしりとした手ごたえで全体的に深みを増しているのが魅力です。終結部も旧盤のように楽天的には感じません。もっとも、これはショスタコーヴィチというよりもマーラー寄りの演奏なのかも知れません。どちらの演奏も魅力的なのですが、個人的には新盤を好んでいます。

Kondra011キリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィル(1968年録音/ヴェネチア盤) コンドラシンは世界で初めて、タコ交響曲全集を完成させた指揮者です。ヴェネチア・レーベルから全集盤がライセンス販売されています。この曲では、ムラヴィンスキーばりの超快速テンポで、贅肉が完全に削ぎ落とされた、すさまじい切れ味と凄みを聞かせています。当時のモスクワ・フィルは極めて優秀でした。ムラヴィンスキーやコンドラシンのシリアスな演奏を聴いてしまうと、東西冷戦時代の西側の演奏家のアプローチがいかにも微温的に感じられてしまいます。音質が硬いのがマイナスですが、これはリマスターの影響だけでは無いと思います。全集盤については、また別の機会に取り上げたいと思います。

41haadctn4lエフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1992年録音/CANYON盤) チャイコフスキーを演奏させると極めて重厚でワイルドなスヴェトラーノフは、さしずめロシアのスギちゃんです(笑)。この曲では全体的にテンポは遅めで重厚ですので、20世紀の音楽というよりは、後期ロマン派の曲を聴いているような印象を与えられます。それでもオケの迫力ある響きは、まぎれもないロシアの音です。この演奏は、生粋のタコ・マニアにはどう受けとめられているのでしょうか。「オレはムラヴィンスキーじゃないぜ、スヴェちゃんだぜ。ワイルドだろう~」なんて、言うはずは無いですが、終結部のパワフルさとド迫力はさすがです。CANYONの録音は極めて優秀です。

6110ipi39ilルドルフ・バルシャイ指揮ケルン放送響(1996年録音/ブリリアント盤) バルシャイのタコ全集は録音も優秀ですし廉価盤ですので、まとめて揃えたい人にはお勧めできると思います。演奏がドイツの放送オケということもあって、響きがそれほど刺激的にならず、冷た過ぎないので聴き易いです。個人的にはロシアの硬質な響きの方が、タコらしさを感じますが、これはこれで良いと思います。バルシャイはこの曲に関しては、ゆったりとしたテンポで重厚に演奏しています。2楽章などはなんだかマーラーを聴いているような趣があります。欠点は金管群にロシアの楽団のような馬力が無いことです。終結部では息切れしているように聞こえます。

ということで、この曲は誰が何と言おうとムラヴィンスキーが最高です。録音の数が多過ぎて、どれを選ぶかは迷うところでしょうが、僕の最も好きなのは1966年のRussianDISC盤です。次いでは、1973年の来日公演盤(Altus)です。

ムラヴィンスキー以外では、コンドラシン盤が非常に気に入っています。ムラヴィンスキーの気迫に最も接近しているように思います。次いでは重量感あふれるスヴェトラーノフ盤が好きです。

以上ですが、ショスタコ―ヴィチの他の曲に関しては、そのうちにまた取り上げてみたいと思います。

実は、明日から3日間、「八重の桜」で話題の会津若松へ旅行しますので、コメントへのお返事が遅れると思います。帰りましたら必ずお返ししますので、その間はどうかお許しください。

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