シベリウス(協奏曲)

2013年2月19日 (火)

シベリウス ヴァイオリン協奏曲 続・名盤 ~二つのヘルシンキ・ライブ~

ヴァイオリンのための協奏曲と言えば、特に好きな曲はブラームス、ベートーヴェン、チャイコフスキー、それにシベリウスです。メンデルスゾーンはどうしたと言われそうですが、自分の4大協奏曲は上記の通りです。中でもシベリウスの曲は、技術的にも難曲ですが、それ以上に透徹した心象世界を表現できるかどうかの音楽性が求められますので、演奏が真に難しい曲だと思います。

そんなこの曲の愛聴盤については、過去の記事「シベリウス ヴァイオリン協奏曲 名盤」でご紹介しましたが、独奏者とオーケストラの演奏のどちらもが比類の無い素晴らしさなのは、フィンランド出身のペッカ・クーシストとセーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルの演奏です。チョン・キョンファや諏訪内晶子の名演も本当に素晴らしいですが、クーシストの演奏は更にその上を行くという完全無欠の演奏です。その後も、幾つかの演奏を聴きましたが、やはり同様の印象でした。ですが、その中からご紹介して面白いと思われるものを二つ取り上げてみます。奇しくも二つともシベリウスの母国、フィンランドのヘルシンキで行われたライブ演奏です。

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リサ・バティアシュヴィリ(Vn)、サカリ・オラモ指揮フィンランド放送響(2007年録音/SONY盤) 

彼女は1979年生まれのグルジア出身の若手注目株です。最近グルジアからはピアノのブニアティシヴィリとか、美人演奏家が次々と現れています。きっと美人の宝庫なのですねー(うるうる)。こうなると、我が諏訪内晶子とヒラリー・ハーンとの日米欧美女コンテスト??が楽しみです。結果は第1位諏訪内、第2位バティアシュヴィリ、3位ハーンです。但し顔の好みですが。(笑)
冗談はさておき、彼女は16歳で1995年のシベリウス・コンクールで第2位に入賞した実力者です。惜しくも優勝を逃したこの年の優勝者こそ誰有ろう、僕の大絶賛するペッカ・クーシストなのです。
バティアシュヴィリのこのCDはヘルシンキのフィンランディア・ホールで行なわれたコンサートの録音です。実際に聴いてみると、音がとても柔らかく、人間の肌のぬくもりを感じます。音量も小さめなように想像されます。フレージングには少しもメカニカルな雰囲気が無く、あくまでも人間的な印象です。本来、この曲には、もう少し透徹したクールさが適すると思いますが、違和感を覚えることはありません。また、造形性やディレクションの点では弱さを感じなくもありません。1楽章や3楽章では迫力に物足りなさを感じますし、スケールも小さいです。けれども、それが彼女の味なのですね。それは恐らく性格から来るのではないでしょうか。とても優しそうな顔ですものねぇ。2楽章ではアットホームな雰囲気が心に浸みてきます。良いなぁ。こういう演奏家って現代では少なくなりましたからね。嫁にするなら、ヒラリーよりも絶対にリサだなぁ。すると晶子は・・・愛人??(笑)
オラモの指揮については、諏訪内盤のときの演奏と違って、もっと優しく包み込むような演奏に終始しています。これは明らかにソリストに合わせたのでしょう。
彼女は、また最近ブラームスの協奏曲をティーレマンと録音しました。そちらについては、また別の機会に改めてご紹介します。

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オレグ・カガン(Vn)、タウノ・ハンニカイネン指揮フィンランド放送響(1965年録音/独Live Classics盤)

クーシストとバティアシュヴィリがシベリウス・コンクールに出場した1995年から遡ること30年前の1965年開催の年に優勝したのは、43歳という若さで世を去ってしまったロシアのオレグ・カガンです。優勝した時のヘルシンキでの記念コンサートのライブ録音が残されています。注目すべきは、伴奏指揮が、何とタウノ・ハンニカイネンなのです。この人は知る人ぞ知るフィンランドの名指揮者ですが、なにせ録音が少なく、シンフォニア・オブ・ロンドンと録音したシベリウスの交響曲第2番、第5番は、一部の評価は高いものの、オケの音が幾らか安っぽいために実力を出し切れていませんでした。けれどもこのライブではフィンランド放送響を指揮していますので期待は大です。
この演奏は古いライブ収録の割に明瞭な音質なので嬉しいです。広がりは少な目ですが、優れた録音です。カガンのヴァイオリンは、この人特有のよく澄んだ端正な音で清涼感を感じさせて、この曲にとても適しています。フレージングには多少の緩さを感じないでもないですが、やはり優勝しただけのことはあります。3楽章では目立つミスが有りましたが、ライブですので、これはご愛嬌。
ハンニカイネンとフィンランド放送響の演奏は非常に素晴らしいです。ロシアから来た若者を後ろから支えて、貫禄充分のサポートを行っています。

40年以上の時を隔てて、同じヘルシンキで行われた二つのシベリウスのコンサートのライブCDですが、どちらも充分に楽しませて貰いました。

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2009年3月 3日 (火)

シベリウス ヴァイオリン協奏曲二短調op.47 名盤

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北欧は森と湖の国フィンランドの作曲家ヤン・シベリウス。僕はこの人の音楽が大好きです。その音楽の特徴はフィンランドの自然や風土を表わしながら、いつしか心象風景をも感じさせることです。彼の作品では何といっても7曲の交響曲が傑作ですが、それらの真の魅力を聴き取るにはある程度の時間をかけてじっくりと鑑賞していく必要が有ります。その点、もっとずっと親しみやすくポピュラーな作品といえばヴァイオリン協奏曲二短調です。この曲は第一楽章が始まったとたんに北欧の清涼な空気が流れてくる気分になりますし、曲が進むと更にうっそうとした森の中分け入ったり、凛とした一輪の花が咲いている雰囲気だったりと正に北欧の自然そのものなのです。第二楽章はあたかも北欧の夏の夜想曲。涼しく静かに夜が更けて空には満点の星空が・・・というイメージです。第三楽章は一転して何やら荒々しいリズムの原始的な舞曲のようです。但しそれは決して大げさなものではなくて、ずっと内省的なものなのです。僕はこの曲は大好きで、あまたのヴァイオリン協奏曲の中でもベートーヴェン、ブラームスに次ぐベスト3の位置をチャイコフスキーと争います。

それではそんな僕の愛聴盤をいくつかご紹介させて頂きます。

51u0djixiqlダヴィド・オイストラフ(Vn)、オーマンディ指揮フィラデルフィア管(1959年録音/CBS盤) この曲は、演奏効果を狙って過剰に歌いまわしたりすると本来の魅力が歪曲されてしまいます。たとえばオイストラフとロジェストヴェンスキーのライブ盤が典型です。バイオリン演奏的には優れていても、シベリウスとして優れているかと言うと別なのです。モスクワ放送響の音がまるでチャイコフスキーなのも頂けませんでした。同じオイストラフならば、このオーマンディ伴奏盤の方がむしろシベリウスの音楽には近いと思います。この曲にしては人間的な温かみが少々過剰ですが、それを好む方もおられることと思います。

053 チョン・キョンファ(Vn)、プレヴィン指揮ロンドン響(1972年録音/DECCA盤) これは昔から評論家の宇野功芳先生が激賞してきた名盤です。僕もこの演奏でこの曲の魅力を長いこと堪能してきました。キョンファのバイオリンの音は端正で余計な脂肪分が無く、厳しさと優しさが両立しているのがこの曲の持つ雰囲気にピッタリなのです。若い頃の彼女の独特の切れ味もまた魅力となっています。プレヴィンの伴奏オケも同傾向で非常に美しく、この演奏はいまだにこの曲の名盤の一角を占めていると思います。

Sicci00015 チョン・キョンファ(Vn)、ラトル指揮フィルハーモニア管(1982年録音/DRUMCAN盤) この演奏は正規盤ではなく所謂海賊CD-R盤です。ですが演奏も録音も非常に素晴らしいので是非ご紹介します。DECCA盤よりも後年の演奏だけあってずっと円熟味を増したゆとりを感じますが、音楽の厳しさは相変わらずです。ラトルの伴奏も美しさと厳しさを持っていて非常に見事です。DECCA盤と両方を楽しみたいところですが、どちらか片方を選べと言われれば僕はこの感興の高いライブ演奏の方を選ぶでしょう。

51eornh0jfl__sl500_ ジョセフ・スヴェンセン(Vn)、サラステ指揮フィンランド放送響(1989年録音/RCA盤) スヴェンセンはアメリカ生まれですがノルウェー人と日本人の両親を持ちます。現在ではヴァイオリニストと指揮者の両方で活躍中です。この録音は余り知られていませんが、安定したテクニックと適度にロマンティックな表現のソロで中々に聴かせてくれます。そして何しろオーケストラが素晴らしいです。こういう演奏を聴いてしまうとやはりシベリウスはフィンランドの楽団に「限る」かなと改めて思えてしまいます。隠れ名盤のトップに成り得る良い演奏です。

51vg6rqyvl五嶋みどり(Vn)、メータ指揮イスラエル・フィル(1993年録音) 五嶋みどりが初期に録音した演奏です。1楽章ではクールに端正に弾いていて中々の出来栄えです。けれども2楽章では、あの北欧のロマンの表現に少々物足りなさを感じます。また3楽章ではリズムや表情に僅かですが妙なクセが感じられます。キョンファが曲の魅力を十全に感じさせてくれるのとは異なります。メータ指揮のオケは伴奏としては素晴らしいのですが、シベリウスの透徹した美しい響きには遠いと言わざるをえません。その点、この曲よりもむしろカップリングの「スコットランド幻想曲」のほうが楽しめます。

Sibe_vnc ペッカ・クーシスト(Vn)、セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィル(1996年録音/ONDINE盤) 元々本場物に人一倍こだわりのある僕を心底満足させる名演が有ります。クーシストは1995年、19歳にして母国のシベリウス・コンクールに優勝して、その翌年にこのCDを録音しました。フィンランドでは大変なベストセラーになりましたが、日本ではほとんど知られていません。端正で凛とした美しさの音はキョンファにも通じますが、キョンファが時折演奏家の個性を感じさせるのに対して、クーシストはシベリウスの音楽そのものしか感じさせません。これは個性が無いこととは全く異なり、それでこそシベリウスの音楽は生きるのです。過剰な表現が一切無いのに全然物足り無さを感じません。技術的にも優秀ですが、それより何より、母国の偉大な芸術家への敬愛の念というものを、この演奏以上に感じさせられたことは有りません。セーゲルスタム/ヘルシンキ・フィルの演奏も非常に美しく、時には荒々しくと正に理想的で、あらゆる中でベストのオーケストラ伴奏と言えます。これは音楽と演奏とが真に一体化した最高の演奏です。

9d22f1f4 諏訪内晶子(Vn)、オラモ指揮バーミンガム市響(2002年録音/フィリップス盤) このCDは実はジャケット買いしました。(^^) なんという美しいお顔でしょうか!美人に滅法弱いワタクシはイチコロなのです。ですので大甘の演奏評価になるとは思いますが、実は掛け値なしに素晴らしい演奏なのです。この曲の特徴あるリズムやフレージングの掘り下げが実に見事です。楽器の音もやはり端正で余計な脂肪分の無いタイプですので、シベリウスに向いています。やはりシベリウスは「クール&ビューティ」でなくては!そういえばやはり女性に弱い宇野先生も最近は推薦盤をキョンファからこの諏訪内に寝返りさせました。まったく齢がいもなくねぇ。(笑) ただ、彼女は一昨年僕がこの曲を生で聴いた時、更には昨年秋のNHK音楽祭と、確実に音楽の深みを増しています。やはり山谷有りの人生経験は人そのものを成長させるのでしょうね。

659ヒラリー・ハーン(Vn)、サロネン指揮スウェーデン放送響(2007年録音/グラモフォン盤) 彼女は若いし可愛いのでおじさん的には贔屓したいのですが、美しい音で楽譜に忠実に弾いているのは良いとしても、どうも演奏家の意思が余り感じられません。この曲はやたらに熱く弾かれても違和感を感じますが、余りに客観的に弾かれても退屈してしまいます。若い彼女にはまだまだシベリウスの音楽を自分のものにできていないような気がします。同じ若い奏者でもシベリウスの母国フィンランド生れのクーシストと比べてしまうとその差は大きいです。特に第1楽章に音楽の掘り下げ不足を感じます。それでも、第2楽章では中々に美しく弾いていますし、第3楽章は若々しい躍動感が有って楽しむことができます。サロネンの指揮は、さすがにフィンランド出身ということもあり素晴らしい演奏です。

この他では、オーケストラ演奏に期待して、ミリアム・フリード(Vn)、オッコ・カム指揮ヘルシンキ・フィル盤とか、カヴァコス(Vn)、ヴァンスカ指揮ラハティ響盤、あるいはイダ・ヘンデル(Vn)、ベルグルンド指揮ボーンマス響盤なども聴いてはみましたがいずれもオーケストラの伴奏は良いのですが、バイオリンに魅力を感じません。フリードは上手いのですがシベリウスらしくありませんし、ヘンデルとカヴァコスにはテクニックに頼り無さを感じます。僕の大好きなバイオリニストのシェリングとロジェストヴェンスキー盤も全くの期待はずれでした。

比較的新しいところでイリア・グリンゴルツ(Vn)、ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団が有りますが、オーケストラは非常に素晴らしいもののグリンゴルツの個性と癖がこの曲との距離を感じてしまいます。技巧的にも意外と細部に詰めの甘さが残ります。

ということで、マイ・フェイヴァリットは圧倒的にクーシスト/セーゲルスタム盤です。次いではキョンファ/ラトル盤とプレヴィン盤、スヴェンセン/サラステ盤、そして諏訪内晶子/オラモ盤です。CDジャケットで選べば、もちろん諏訪内晶子が断トツです。って何だか訳が分からなくなって申し訳ありません。(苦笑)

<関連記事>
シベリウス ヴァイオリン協奏曲 続・名盤 ~二つのヘルシンキ・ライブ~

<補足>
五嶋みどり/メータ盤、スヴェンセン/サラステ盤を追記しました。

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