シベリウス ヴァイオリン協奏曲 続・名盤 ~二つのヘルシンキ・ライブ~
ヴァイオリンのための協奏曲と言えば、特に好きな曲はブラームス、ベートーヴェン、チャイコフスキー、それにシベリウスです。メンデルスゾーンはどうしたと言われそうですが、自分の4大協奏曲は上記の通りです。中でもシベリウスの曲は、技術的にも難曲ですが、それ以上に透徹した心象世界を表現できるかどうかの音楽性が求められますので、演奏が真に難しい曲だと思います。
そんなこの曲の愛聴盤については、過去の記事「シベリウス ヴァイオリン協奏曲 名盤」でご紹介しましたが、独奏者とオーケストラの演奏のどちらもが比類の無い素晴らしさなのは、フィンランド出身のペッカ・クーシストとセーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルの演奏です。チョン・キョンファや諏訪内晶子の名演も本当に素晴らしいですが、クーシストの演奏は更にその上を行くという完全無欠の演奏です。その後も、幾つかの演奏を聴きましたが、やはり同様の印象でした。ですが、その中からご紹介して面白いと思われるものを二つ取り上げてみます。奇しくも二つともシベリウスの母国、フィンランドのヘルシンキで行われたライブ演奏です。
リサ・バティアシュヴィリ(Vn)、サカリ・オラモ指揮フィンランド放送響(2007年録音/SONY盤)
彼女は1979年生まれのグルジア出身の若手注目株です。最近グルジアからはピアノのブニアティシヴィリとか、美人演奏家が次々と現れています。きっと美人の宝庫なのですねー(うるうる)。こうなると、我が諏訪内晶子とヒラリー・ハーンとの日米欧美女コンテスト??が楽しみです。結果は第1位諏訪内、第2位バティアシュヴィリ、3位ハーンです。但し顔の好みですが。(笑)
冗談はさておき、彼女は16歳で1995年のシベリウス・コンクールで第2位に入賞した実力者です。惜しくも優勝を逃したこの年の優勝者こそ誰有ろう、僕の大絶賛するペッカ・クーシストなのです。
バティアシュヴィリのこのCDはヘルシンキのフィンランディア・ホールで行なわれたコンサートの録音です。実際に聴いてみると、音がとても柔らかく、人間の肌のぬくもりを感じます。音量も小さめなように想像されます。フレージングには少しもメカニカルな雰囲気が無く、あくまでも人間的な印象です。本来、この曲には、もう少し透徹したクールさが適すると思いますが、違和感を覚えることはありません。また、造形性やディレクションの点では弱さを感じなくもありません。1楽章や3楽章では迫力に物足りなさを感じますし、スケールも小さいです。けれども、それが彼女の味なのですね。それは恐らく性格から来るのではないでしょうか。とても優しそうな顔ですものねぇ。2楽章ではアットホームな雰囲気が心に浸みてきます。良いなぁ。こういう演奏家って現代では少なくなりましたからね。嫁にするなら、ヒラリーよりも絶対にリサだなぁ。すると晶子は・・・愛人??(笑)
オラモの指揮については、諏訪内盤のときの演奏と違って、もっと優しく包み込むような演奏に終始しています。これは明らかにソリストに合わせたのでしょう。
彼女は、また最近ブラームスの協奏曲をティーレマンと録音しました。そちらについては、また別の機会に改めてご紹介します。
オレグ・カガン(Vn)、タウノ・ハンニカイネン指揮フィンランド放送響(1965年録音/独Live Classics盤)
クーシストとバティアシュヴィリがシベリウス・コンクールに出場した1995年から遡ること30年前の1965年開催の年に優勝したのは、43歳という若さで世を去ってしまったロシアのオレグ・カガンです。優勝した時のヘルシンキでの記念コンサートのライブ録音が残されています。注目すべきは、伴奏指揮が、何とタウノ・ハンニカイネンなのです。この人は知る人ぞ知るフィンランドの名指揮者ですが、なにせ録音が少なく、シンフォニア・オブ・ロンドンと録音したシベリウスの交響曲第2番、第5番は、一部の評価は高いものの、オケの音が幾らか安っぽいために実力を出し切れていませんでした。けれどもこのライブではフィンランド放送響を指揮していますので期待は大です。
この演奏は古いライブ収録の割に明瞭な音質なので嬉しいです。広がりは少な目ですが、優れた録音です。カガンのヴァイオリンは、この人特有のよく澄んだ端正な音で清涼感を感じさせて、この曲にとても適しています。フレージングには多少の緩さを感じないでもないですが、やはり優勝しただけのことはあります。3楽章では目立つミスが有りましたが、ライブですので、これはご愛嬌。
ハンニカイネンとフィンランド放送響の演奏は非常に素晴らしいです。ロシアから来た若者を後ろから支えて、貫禄充分のサポートを行っています。
40年以上の時を隔てて、同じヘルシンキで行われた二つのシベリウスのコンサートのライブCDですが、どちらも充分に楽しませて貰いました。
| 固定リンク
| コメント (7)
| トラックバック (0)
最近のコメント