シベリウス(室内楽)

2012年8月31日 (金)

シベリウス 弦楽四重奏曲全集/シベリウス・アカデミー四重奏団 ~内なる声~

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シベリウスの書いた弦楽四重奏曲は全部で4曲有ります。但し、そのうちの3曲は若い時代の作品で、作品番号が付けられたのは2曲しか有りません。

①変ホ長調(1885年作曲)
②イ短調(1889年作曲)
③変ロ長調 作品4(1890年作曲)
④ニ短調 作品56「親愛の声」(1909年作曲) 

それぞれの曲について、もう少し詳しく触れてみます。

弦楽四重奏曲変ホ長調1885年作曲) ヘルシンキ大学時代の記念すべき第1作です。と言ってもシベリウスは最初、法律を学んでいたので、音楽の専門教育を受ける前の作品です。それにしては中々良く出来ていますが、まだウイーン古典派の作風ですし、鑑賞用としては少々物足りません。

弦楽四重奏曲イ短調(1889年作曲) 大学で法律と並行して音楽を学び、卒業した年の作品です。フィンランド国内では「期待の新星が現れた」と大きな反響を呼びました。当時シベリウスは、この曲を弦楽四重奏曲第1番とするつもりだったようです。大きな反響を呼んだだけのことは有るチャーミングな作品だとは思いますが、作品番号が付けられなかったのは、シベリウス本人にとっては幾らか満足出来なかったのではないでしょうか。

弦楽四重奏曲変ロ長調作品4(1890年作曲) 卒業の翌年にはベルリンへ行ってドイツ音楽を学びますが、その時の作品です。この曲は弦楽四重奏曲第2番とするつもりだったようです。作品番号を付けただけのことは有って、前作と比べても音楽の充実感がグンと増しています。既にシベリウス特有の内省的な雰囲気を大いに感じます。4楽章とも魅了的ですが、民謡のような抒情感をたたえた第2楽章アダージョ、第3楽章プレストのスケルツォ、伸び伸びと高揚する第4楽章アレグロのフィナーレと、どれも親しみ易く、それでいて飽きさせません。シベリウスの弦楽四重奏曲の傑作は、決して「親愛の声」だけでは有りません。

弦楽四重奏曲ニ短調作品56「親愛の声」(1909年作曲) 作曲年代から言えば、交響曲第3番と第4番の間に位置する円熟期の作品です。ラテン語のタイトル「Voces Intimate」は、日本語では「親愛の声」や「親愛なる声」あるいは「内なる声」と色々と訳されています。完成度が最も高く、以前の作品に比べて、風格が一段も二段も上になりました。同じ国民楽派のヤナーチェクの作品に共通した雰囲気も有りますが、シベリウス特有の澄んだ空気感に強く惹かれます。この曲は変則の全5楽章構成ですが、単なる室内楽作品の枠を超えて、非常にシンフォニックな印象を受けます。交響曲のモチーフによく似た部分が頻出します。けれども咽喉に腫瘍が出来て、「死」や「自己の内面」を意識した時代の作品ですので、第4交響曲と共通した暗さや内向性を強く感じずにはいられません。ですので、個人的には曲のタイトルは「内なる声」と訳するのが一番ふさわしいのではないかという気がします。

4曲の中では当然、最後の「親愛の声」を何を置いても聴かなければなりませんが、作品4も非常に素晴らしく必聴の曲ですので、やはり全曲盤で揃えておいたほうが良いと思います。そこで僕の愛聴盤をご紹介します。

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シベリウス・アカデミー四重奏団(1980、84、88年録音/FINLANDIA盤)

1stヴァイオリンのトゥキアイネン、2ndヴァイオリンのカントラ、ヴィオラのコソネン、チェロのノラスの4人全員がシベリウス・アカデミーの教授達で編成されています。この中では、チェロのアルト・ノラスは独奏者としても知られています。4曲を収めた全集盤というのは決して多くは有りませんが、このメンバーによる演奏には、何かとても安心して身を任せられる雰囲気が有ります。テクニック的に更に優れた団体が主要曲を録音していますが、全ての曲を聴いて心からシベリウスの音楽を聴いたという満足感を得られる点では、やはり最右翼なのではないでしょうか。メンバー全員にとって、シベリウスの音楽は彼らの体の血であり肉であり、日常的に使う言葉だからなのでしょう。

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2010年8月11日 (水)

シベリウス ヴァイオリン小品集 ~アイノラにて~

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夏の暑いときには北欧の音楽もまたボヘミア音楽と並んで清涼感が最高です。冷房の効いた部屋でうっかり聴いていると風邪でもひきそうなくらいの涼しさを感じます。北欧はフィンランドの生んだ偉大な音楽家シベリウスというと、交響曲や管弦楽曲を直ぐに思い浮かべますが、実は室内楽曲も随分と書いています。そんな中で、夜に一人静かに楽しむのにお気に入りのCDがあります。ヴァイオリンとピアノのための小品集です。このCDは実は特別な録音です。その理由は、これがシベリウスが1904年に移り住んだイェルヴェンバーの自宅アイノラで録音されたものだからです。

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ベリウスは都会での生活の煩わしさが嫌になって、田舎イェルヴェンバーの湖のほとりに引っ越しました。その家は愛妻アイノの名前をとって「アイノラ(アイノの家)」と名づけられました。ここでシベリウスは中期以降のあの深遠な交響曲の創作を行うわけですが、その合間には、とても親しみ易い小品集を幾つも作曲しました。そんな曲たちを、フィンランドの若手奏者が、シベリウスが実際に使っていたピアノを使用して演奏・録音しました。ヴァイオリンを弾くのはペッカ・クーシストです。この人は19歳の時にフィンランドのシベリウス・ヴァイオリンコンクールで優勝して、自国では一躍有名になりました。その直後に録音したシベリウスのヴァイオリン協奏曲は、セーゲルスタム/ヘルシンキ・フィルの素晴らしい伴奏とも相まって、僕の大好きな演奏です。<旧記事>シベリウス ヴァイオリン協奏曲 名盤

けれどもクーシストはその後、ヴァイオリンの通常名曲にはほとんど目もくれず、シベリウスの室内楽作品ばかりを録音したり、北欧の民謡をフォーク/ジャズ風に演奏したりと非常にユニークな活動をしています。

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これは、そんなクーシストがシベリウスの小品を集めた愛すべきCDです(フィンランドONDINEレーベル盤)。シベリウス使用のピアノを弾いて息の合った伴奏を聞かせているのは、ヘイニ・カルッカイネンというやはりフィンランドの若手女性ピアニストですが、二人はまるでホームコンサートのようにリラックスした演奏ぶりです。録音もアイノラの室内の柔らかい響きを捉えているので、一緒に部屋の中で聴いているような臨場感が味わえます。

それでは曲目を下記に紹介します。

・5つの小品 op.81 

・4つの小品 op.78

・5つの田園舞曲 op.106

・4つの小品 op.115

・3つの小品 op.116

作品番号から判るように、これらは中期から最晩年に書かれたものです。前半の三作品は、まるでクライスラーの小品のように洒落ていて楽しい曲想です。但し、晩年の作品115と116では深い心象風景を感じずにいられません。どことなく印象派ドヴュッシーの作品のような雰囲気を漂わせています。このCDを静かに聴きながら、アイノラで家族でくつろぐシベリウスの姿を思い浮かべていると、とても幸せな気持ちになってしまいます。

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