シューベルト(交響曲)

2015年6月 5日 (金)

ウイーン・フィルで聴こう! シューベルト 交響曲第8(9)番「グレート」 続・名盤

今年のゴールデンウイークの特別企画だったはずの「ウイーン・フィルで聴こう!」は一体どこへ行ってしまったのかとお思いでしょう。と言うか、それすらも既にご記憶に無いことと思います。(汗)
まぁ、始まったと思ったらあっという間に終わってしまうのがGWですので・・・(と苦しい言い訳)

それはそれとして、大変遅れましたが第2弾のシューベルトの交響曲「グレート」を取り上げてみます。

ウイーン近郊で生まれて、生涯をほぼウイーンで過ごしたシューベルトの曲には、やはりウイーン・フィルの音が一番よく似合います。

それではさっそくCDの紹介です。

Schubert_furtwangler792ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1953年録音/グランド・スラム盤) フルトヴェングラーの「グレート」と言えばベルリン・フィルとの戦中、戦後のライブ二種が有名ですが、これはウイーン・フィルとのライブです。平林直哉氏が、かつて日本のRVCが発売したLP盤から復刻しました。「最高の音質」と称するだけあってこれは年代を考えたら、素晴らしい音質です。ウイーン・フィルの持つ音色もやはり魅力的です。問題はテンポを自由自在に変化させるフルトヴェングラーの指揮で、決して退屈しない代わりにアクが強過ぎて、これが果たしてシューベルトかと幾らか疑問を感じさせます。デモーニッシュな物々しい雰囲気はともかくとしても、余りに人間的な音楽がこの曲の天国的な雰囲気を損ねているようにも思えてしまうのです。

Shubert_kertez_uccd7223m01dl_4イシュトヴァン・ケルテス指揮ウイーン・フィル(1963年録音/DECCA盤) 若くして亡くなったケルテスは生前非常に評価が高かったですが、時に表現意欲の旺盛さが裏目に出てしまうことがあります。フォルテで金管を強調したり、ティンパニを強打させるのはシューベルトの美しい音楽を台無しにしています。ダイナミクスの大きさは過剰であり、デリカシーの無い指揮ぶりに閉口します。第2楽章は早めのテンポで颯爽と進みますが、立派さや孤独感が感じられず物足りません。良いところは無いのか?と聴かれれば、ウイーン・フィルの楽器の音色ということになりますが、マイナスが余りに多いので、人にはお勧めしません。

Schubert_solti_31th8sc2velサー・ゲオルグ・ショルティ指揮ウイーン・フィル(1981年録音/DECCA盤) ウイーン・フィルさえも力づくでグイグイ締め上げるようなショルティの剛腕ぶりはここでは余り感じさせません。しかも金管群の響きがフォルテでも上手くブレンドされているので美しいです。やはりコンダクターとして一日の長が有る様に思います。1、2楽章ではテンポ設定にはゆとりが有りますが、後半の3、4楽章はリズムが心地良く、この曲の長丁場に”もたれる”ことがありません。デッカの優秀な録音はウイーン・フィルの美音を忠実に捉えていますし、このCDは中々にお勧め出来ます。

Schubert_xat1245572172リッカルド・ムーティ指揮ウイーン・フィル(1986年録音/EMI盤) ムーティもオケをドライブさせますが、決して力づくではなく自然に湧き立つ感であるのが素晴らしいです。ダイナミクスにも巾が有り、ティンパニも目立ちますが、騒々しさは感じません。ショルティに比べても表現に自在さが加わっていて、聴き進むうちにぐいぐいと惹き込まれてしまいます。3楽章の弾むリズムと歌い回しは非常に魅力的ですし、終楽章の喜びに溢れた高揚感も聴き応え充分です。その中で時々音を溜めるのも効果的です。EMIにしては録音も優れていますし、ウイーン・フィルの美音を味わうのに何ら不満は感じません。

Schubert_415vdk8ccclジョン・エリオット・ガ-ディナー指揮ウイーン・フィル(1997年録音/グラモフォン盤) 今回取り上げた中では最も新しい録音です。ザルツブルグ音楽祭のライブ収録ですが、信じられないほどの完成度の高さです。過去の巨匠指揮者達と比べればスッキリと贅肉の取れた演奏ですが、ことさら古楽器的な奏法にこだわっているわけではありません。キビキビしたテンポと透明感の有る響きが非常に爽やかです。老熟した壮年の印象では無く、多感な青年シューベルトを想わせます。録音は非常に優秀で、過去の録音とは次元が異なります。手垢の落とされた新時代の名盤だと言っても差し支えありません。

以上を聴いてみて、過去のウイーン・フィルのグレートの代表的名盤であるカール・ベームの来日ライブを越えるほどの演奏には出会えませんでした。
それでも、この中ではムーティの演奏が最も気に入りました。これは折にふれて愛聴したいです。

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シューベルト 交響曲第8(9)番「グレート」 名盤

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2012年7月14日 (土)

シューベルト 交響曲第8(9)番ハ長調D.944「ザ・グレート」 名盤

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「グレート○○」と言えば、直ぐに思い浮かぶのが、グレート東郷、グレート草津、ザ・グレート・カブキと、昔のプロレスラーたちです。何故かリング・ネームに良く使われました。やはり、強そうなイメージが有るからですね。
と、いきなり脱線してスミマセンでした。(苦笑)

さて、シューベルトの「ザ・グレート」という呼び名は、第6番ハ長調と区別するために6番を「小ハ長調」、8番を「大(Great)ハ長調」とイギリスの楽譜出版社が付けたことから始まったそうです。ですので初めは単に「大きい」程度の意味合いだったのが、楽曲そのものが長大で優れていることから「巨大な」「偉大な」という意味を持つようになりました。あのシューマンが、この曲を「天国的な長さ」と呼んだのも適切です。古典派と浪漫派の境目の時代に、後期ロマン派に匹敵する大シンフォニーとなったのはこの曲とベートーヴェンの「第九」だけですね。もっともシューベルトはピアノソナタも長大な曲が多いので、元々長いのが好きだったのでしょう。

実はこの曲も「未完成」と同様に、演奏によって曲の印象が大きく変わります。好きな演奏であれば、曲の長大さが「天国的」に感じられますが、嫌いな演奏では、延々と続く同じような音楽が苦痛になります。

表情を変えながら段々と盛り上がりを見せてゆく第1楽章も素晴らしいですが、僕が好むのは第2楽章です。木管による、いかにもシューベルトらしい哀愁漂う旋律と、威厳の有るフォルテが何度も交互に現れるのが魅力的です。中間部の静けさと美しさにも心惹かれます。第3楽章のスケルツォは、まぁ普通に楽しいですが、素晴らしいのは中間部です。突然、広々とした天空に漂うかのような浮遊感を感じます。ここは実は全曲で最も好きな部分です。終楽章も決して悪くは有りませんが、繰り返しが長すぎて少々くどさを感じます。よほど良い演奏で聴いても、どうも長いなぁと感じてしまいます。

ということで、僕の愛聴盤のご紹介です。現在はそれほど多く有りません。

B0056240_2085326ウイルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1951年録音/グラモフォン盤) 僕がフルトヴェングラーのブルックナーを余り好まないのは、演奏に熱中し過ぎてしまい客観性を失ってしまうからです。ベートーヴェンの場合の強みが逆に弱点となります。シューベルトにもやや同じことが言えます。ただ、この演奏はスタジオ録音ですので、他の指揮者のライブ以上の高揚はしますが、ぎりぎりの許容範囲です。音質は標準的レベルで、更に良ければ、演奏の印象が高まったと思われます。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ウイルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1953年録音/RIAS盤) RIAS放送協会の録音ですが、1951年盤よりも音質が優れます。解釈に大きな差は感じませんし、演奏の安定感もスタジオ録音に比べて、それほど劣りません。従って個人的には、こちらをフルトヴェングラーの「グレート」のファースト・チョイスとしたいです。但しグラモフォン盤を聴いている方には、無理にお勧めする必要も無いと思います。

Arc2_11カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1956年録音/archiphon盤) シューリヒトの「未完成」はオケがウイーン・フィルということもあって、儚い夢のような演奏でしたが、「グレート」の場合には古典的な造形性が非常に良く出ています。幾らか速めのテンポできりりと進むオーソドックスな演奏ですが、この人特有の”閃き”は有りません。放送局のライブでモノラル録音ですが、非常にしっかりした音で、後述の1960年ステレオ盤よりも優れていると思います。

226ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1959年録音/CBS盤) 冒頭から、歌い方の柔らかさに魅了されます。オケの響きの薄さも、必要以上にカロリー過多にならずに好ましく思えます。ゆったりとした落ち着きと推進力のバランスも自分には丁度良く感じられます。スタジオ録音なので楽器の分離は良いですが、金管を常に抑え目に吹かせて、弦と溶け合わせるのはウイーン・スタイルでしょう。曲のどの部分をとっても表情に意味が有るので、この長い曲を少しも飽きさせません。特筆すべきは3楽章の中間部で、これほど浮遊感を感じさせる演奏は有りません。さすがに終楽章では音の薄さがマイナスに思えないことも有りませんが、騒々しいよりは好ましいので、これで充分満足です。

Img_1229640_38249975_0カール・シューリヒト指揮南ドイツ放送響(1960年録音/Scribendum盤) 原盤がコンサートホールなので、音質が余り優れません。特にフォルテで音が割れ気味です。演奏解釈は1956年ライブと同じですが、加えてスタジオセッションらしいきめ細かさを感じます。特に後半の2楽章は単調になりがちなこの曲を、リズムを生かした名人芸で味わい深く乗り切っています。音質さえ良ければ、ランクがぐっと上がる、素晴らしい演奏だと思います。

41jhx1wpgvl__sl500_aa300_カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(1963年録音/グラモフォン盤) ベーム壮年期の全集は記念碑的な名盤だと思います。ベルリン・フィルの当時の暗く厚い響きは本当に魅力的でした。この曲の場合も、堂々と立派な造形性が見事ですが、それでいて無機的に感じさせないのが素晴らしいです。弦楽と木管のしっとりとした音色や表情にはとても惹かれますが、金管が目立ち過ぎる点が自分の好みからは幾らか外れます。このあたりは恐らく好みの問題だと思います。

Schubert_great_bohmカール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) 日本ツアーのNHKホールでのライブ録音です。オーケストラの音色で言えば、シューベルトはやはりウイーン・フィルが一番です。金管、木管、弦楽の全てが柔らかく溶け合って、極上にブレンドされた響きを聴かせるからです。録音もオフ・マイクなので会場で聴いているような臨場感が感じられます。その分、逆に楽器の分離、バランス的に少々のっぺりとした感じになるのは仕方が有りません。テンポは3種の中で一番ゆったりしていて重量感を感じます。

Bohm_sch8カール・ベーム指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1979年録音/グラモフォン盤) 晩年のライブですが、演奏には驚くほどの若々しさを感じます。テンポは日本ライブよりも速めで、響きは引き締まって迫力が有ります。弦や木管の柔らかい音色はこのオケらしい魅力なのですが、金管が少々張り出し過ぎに感じられます。これは演奏の気迫と裏腹ですのでやむを得ないところかもしれません。「晩年のベームは年寄り臭い」とお思いの方は、きっと認識が覆される演奏でしょう。

この曲の演奏においては、余りに感情移入が激しいものは好みません。例えばフルトヴェングラーが第二次大戦中に指揮した壮絶な演奏が有りますが、個人的には余り好んでいません。クナッパーツブッシュ/ウイーン・フィルのライブ盤(グラモフォン)もクナ・ファン曰く「片手で地球をひっくり返したような凄演」として大変に人気が有りますが、僕は違和感を感じます。期待して聴いたクレメンス・クラウス/ウイーン交響楽団(テルデック)の演奏もさほど良い印象が残っていません。フランツ・コンヴィチュニーが珍しくチェコ・フィルを指揮した演奏(スプラフォン)は、金管のド迫力が自分には論外でした。イシュトヴァン・ケルテス/ウイーン・フィル(DECCA)、それにウイーン子のヨーゼフ・クリップス/ロンドン響(DECCA)も、さほど良い印象が有りません。

そうしてみると、好むのは結局のところワルターとベームの二人に絞られます。特にワルターの演奏は奇跡的な素晴らしさだと思います。ウイーン、ベルリン、ドレスデンと世界に冠たる名楽団を三つ指揮したベームが、アメリカのセッション・オーケストラを指揮したワルターに敵わないのですから、これは驚くべきことです。

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2012年7月 7日 (土)

シューベルト 交響曲第7(8)番ロ短調D.759「未完成」 名盤 ~三大交響曲~

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「未完成交響楽」(1933年 ドイツ=オーストリア作品)

昔、クラシック音楽を聴き始めた頃には、いわゆる「三大交響曲」と言えば、「運命」「未完成」「新世界より」でした。この他にも一般によく知られた交響曲は幾つも有りましたが、こと「三大」と呼べば、やはりこの御三家だったような気がします。それにしても完成していない曲が堂々と入るのですから大したものですね。

子供の頃に、テレビでよく古い名作映画を放送していました。音楽家ものも案外と多かったです。それらの中で特に記憶に残っているのが「未完成交響楽」という映画です。大人になって、懐かしさからDVDで購入しましたが、1933年の作品でした。随分と古い映画だったわけです。話の内容はシューベルトがハンガリー貴族の令嬢と恋に落ちるが、実らずに終わってしまう悲恋映画です。事実を幾らかモチーフにしている面も有りますが、基本的には完全なフィクションなので、間違ってもシューベルトの歴史物語とは言えません。にもかかわらず、モノクロの映像と音の悪い背景音楽が不思議と郷愁を誘います。仮に子供のころに観ていなくても、この映画にはそのような雰囲気が一杯です。それにしても、この映画で演奏をしているウイーン・フィルの当時の音の甘さと柔らかさは、ちょっと浮世離れをしています。

未完成のままに終わってしまった音楽作品というのは、歴史上に数えられないほど存在するでしょうが、最も有名な作品は、やはりシューベルトのこの曲です。通常の4楽章形式の前半しか書かれていないのに、これほどに名曲の扱いを受けているのは驚異です。それもこれも、とてもこの世のものとは思えないような音楽の美しさからでしょう。

シューベルトが何故この交響曲を第3楽章スケルツォの冒頭のスケッチでペンを置いてしまったのかは不明です。あの美しい2楽章に続くのに相応しいスケルツォ楽章がどうしても書けなかったのは、何となく分るような気もします。しかし、もしも後半の3、4楽章が完成していたら、「グレート」にも匹敵する長大な作品になったことでしょう。但し、引き替えに「未完成」という有名なタイトルを失うことにはなりますが。

僕はもちろんこの曲は大好きです。けれどもこの曲の魅力は演奏に極端に左右されるように思います。気に入った演奏で聴くと大変な名曲に感じますが、もしも気に入らない演奏で聴くと、退屈極まりない曲に感じてしまいます。それでは、それを左右するのは何かということですが、ごく簡単に言えば、「この世のものと思えないような音」を聴かせてくれれば好き、逆に音が単なる楽器の音に聞えてしまう場合は嫌い、ということです。たとえば第1楽章のフォルテで金管が強奏したりすると、すぐに耳が拒絶反応を起こしてしまいます。弦と管がしっかりと柔らかく溶け合った音を出してくれないと駄目なのです。そこに古き良きウイーンの情緒が加われば最高ですね。第2楽章の神秘的な美しさもブルックナーやシベリウスの世界に匹敵します。古典派と浪漫派の境界の時代にこんな音楽を書いたとは全くもって驚きです。

では、そういう基準で愛聴盤をご紹介してみます。

Walter_betho6_wien ブルーノ・ワルター指揮ウイーン・フィル(1936年録音/EMI盤) SP盤からの復刻ですので、当然音質は古めかしいのですが、あの「未完成交響楽」で聴いた懐かしい雰囲気をそのままに味うことが出来ます。ウイーンで生まれてウイーンで死んだシューベルトの音楽を演奏するウイーン・フィルの夢見るように甘く柔らかい音は何物にも代えられません。その音は戦後のウイーン・フィルをもってしても、もはや出すことは出来ないのです。参考ですが、オーパス蔵の復刻盤よりも東芝GR盤のほうが好みの音でした。

Mi0001086295 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1950年録音/EMI盤) フルトヴェングラーの「未完成」は演奏が物々し過ぎるので余り好みではありません。但し、ウイーン・フィルとの演奏はベルリン・フィルほどの激しさは有りませんし、弦楽器中心の響きですので好ましく思います。音の柔らかさは戦前のワルターほどではありませんが良く感じられます。年代を考えるともう少し録音が良くてもよいと思いますが、逆にレトロさが出ていることでもあり、良しとしておきます。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1953年録音/audite盤) このベルリンでのライブ演奏はRIASボックスで持っているものです。個人的にはフルトヴェングラーが「未完成」で聞かせる強烈なフォルテやアタックはこの曲には余計だと思っています。フレージングもくどすぎて、ウイーンの洒落っ気が全く感じられません。このボックスには1948年の演奏も収録されていますが、印象は同じです。録音が良い分、こちらを取るべきです。

Schurichtカール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1956年録音/IMG盤) DECCA音源ですが、僕はIMG盤で所有しています。この演奏はシューリヒトのファンにも滅多に取り上げられませんが、僕は素晴らしい演奏だと思っています。速いテンポで飄々と進み、フォルテもアタックも弱く軽く流しています。まるで霞のような印象なのですが、それが何とも儚さを感じさせます。2楽章も淡々として浮世離れした雰囲気ですが、儚さや寂寥感を他のどの演奏よりも感じてしまいます。

000000221656097934_10204ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィル(1958年録音/CBS盤) ワルターの代表盤の一つです。これがアメリカの楽団の音だとは信じられないほどに柔らかく美しい響きを醸し出しています。ロマンティックな雰囲気も最高です。ウイーン・フィル以外のオケとこれほど美しい演奏が可能なのはワルターだけでしょう。ウイーン・フィルを超えるかと聞かれれば、そうとは言えませんが、これはステレオ録音ですし、不滅の価値を持っていると思います。

Mah4130 ブルーノ・ワルター指揮ウイーン・フィル(1960年録音/Music&Arts) マーラー生誕100年記念コンサートにワルターが招かれて指揮した時の演奏です。メインのマーラー4番の前に演奏されました。このコンサートはワルターとウイーンフィルの最後のコンサートです。マイクが近いので、楽器の分離が明確で、室内楽的なアンサンブルを楽しめます。時にバランスのおかしな箇所も見受けられますが、録音も悪くありません。歴史的なコンサートということを抜きにしても、素晴らしく味わいのある演奏です。

Shubert_kertez_uccd7223m01dlイシュトヴァン・ケルテス指揮ウイーン・フィル(1963年録音/DECCA盤) 若くして亡くなる前に極めて評価の高かったケルテスでしたが、この「未完成」はいただけません。ウイーン・フィルを締め上げてダイナミックスの大きな演奏をさせているところは同郷のショルティさながらです。フォルテの音は硬く威圧的に感じられ、トロンボーンの強奏は耳をつんざき騒々しいです。弱音部ではウイーン・フィルの美しい音が聴けるのですが、前述の欠点が音楽全体を台無しにしていて残念です。

41jhx1wpgvl__sl500_aa300_カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(1966年録音/グラモフォン盤) ベーム壮年期の記念碑的な交響曲全集に含まれます。ウイーン風ではない、純ドイツ風の演奏ですが、当時のベルリン・フィルの暗く厚い響きがシューベルトの仄暗い抒情性に適していてとても魅力的です。金管が目立つことも無く、常に弦と木管との絶妙なブレンドを響かせています。この曲の場合は余り立派な造形性はマイナスに思えますが、ベームはそれを少しも感じさせません。個人的には同じベルリン・フィルでは「グレート」以上の名演だと思っています。

G4312699wオットー・クレンペラー指揮ウイーン・フィル(1968年録音/テスタメント盤) ウイーン芸術週間ライブBOXの中に収められています。いくらか遅めのインテンポで淡々と進みます。俗世に背を向けたような趣は良いのですが、それにしては今一つ心を動かされません。録音もウイーン・フィルの美しい音が充分に再現されているとも思えません。ですので自分にとっては「普通に良い演奏」どまりです。

Beethoven5_bohmカール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1977年録音/グラモフォン盤) オーストリアのホーエンエムスで行われたシューベルト音楽祭でのライブ録音です。かなり遅いテンポで、力んだところの全く見られない枯淡の境地とも言える演奏です。フォルテでも管楽器が弦と完全に溶け合っていますので、外面的な迫力は有りません。そこが素晴らしいのです。それにしても、このしみじみとした味わいはどうでしょう。黄泉の国へと誘われるかのような雰囲気は極めてユニークですが、これこそがこの曲の本質なのではないかと思えるほどです。このコンビの日本公演も美しい演奏でしたが、録音の良さも相まって、このウイーンでのライブが更に上を行くと思います。

Ph06008 ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘン・フィル(2000年録音/Profile盤) ブルックナーを得意とするヴァントの音造りはこの曲にも適していると思います。管弦楽的な音よりも自然音に近い音が望ましいからです。1楽章はウイーン風の甘い情緒こそ有りませんが、繊細なフレージングと美しい響きが素晴らしいです。贅沢を言えば、金管の響きがもう一つ抑えられていれば更に満足できますが、凡百の指揮者よりはよほど優れています。2楽章はゾクゾクするほど瑞々しい美しさに包まれていて、現実離れした世界に我々を誘います。

Img_1023790_20551577_0 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(2000年録音/RCA盤) 東京初台のオペラシティでのライブ録音です。メインのブルックナー9番の前に演奏されました。僕は、このコンサートに行ったのですが、仕事で遅刻してしまい「未完成」は聴き逃しました。同じ年の演奏なので、ミュンヘン盤と基本的解釈は変わりません。暗い北ドイツと明るめのミュンヘンとのオケの音色の違いが有るだけです。優劣は付けがたいですが、今回聴き比べた限りではミュンヘン盤のほうが良いような気がしました。

この他に、記憶に残るのはまずムラヴィンスキー/レニングラードPOです。2楽章の途中で通常フォルテで演奏する部分を逆にぐっと音量を抑えて、まるで地獄の淵を覗かせるような緊張感を感じさせました。しかしシューベルトとしてはエクセントリックに思うので好みません。ケルテス/ウイーンPOも定評有りますが、情緒に溺れない指揮ぶりがやはり好みでは有りません。Cクライバーも同じように好みでは有りません。カラヤン/BPOは最初のDG盤をLP時代に聴きましたが、曲の良さを全く感じませんでした。ジュリーニ/シカゴ響なんてのも有りましたが、オケの迫力ある音が曲に不釣り合いでした。

ということで、この曲の自分の好みは余り一般的では無いかと思います。最も好きなのがワルター/ウイーン・フィルの1936年盤。2番目がベーム/ウイーン・フィルの1977年ライブ盤。3番目がシューリヒト/ウイーン・フィルの1956年盤。以上となります。恐らくは皆さんの好みと、だいぶ異ってしまうのではないでしょうか。

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