ドヴォルザーク(室内楽)

2010年8月 9日 (月)

ドヴォルザーク ヴァイオリンとピアノのための作品全集

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ドヴォルザークは室内楽作品も多く作曲しましたが、ピアノやヴァイオリンの独奏曲はとても少ないです。そのことは彼の尊敬するブラームスと似ているかもしれません。けれどもそれらの作品はいずれも愛すべき佳曲です。それもまたブラームスに似ています。そんな作品の中で、ヴァイオリンとピアノのための楽曲を集めた素晴らしいCDが有りますので是非ご紹介したいと思います。

ヴァイオリンを弾くのはチェコが輩出した名ヴァイオリニストのヨゼフ・スークです。この人はドヴォルザークの曾孫にあたりますので、作曲家の血を受け継いだ名手による演奏を聴くことが出来ます。スークのヴァイオリンは非常に端正で虚飾の無い表現が特徴です。楽器の音そのものの特徴も同じです。なのでブラームスやベートーヴェンの場合にはやや線の細さを感じることが多いです。この「線の細さ」は、左手のヴィヴラートの幅が小さいことと、右手の弓の使い方にあるでしょう。清潔感があって脂肪分が少ない音なので、曲によっては物足りなさを感じてしまいます。ところがドヴォルザークになると、音楽そのものが非常に清涼感に溢れているので、スークの音にぴったりです。そして実はこの音の特徴は、同郷のスメタナ四重奏団やチェコ・フィルなんかの音と全く同じです。これこそが「チェコの弦」の特徴なのですね。

ここで、ご紹介するのは2枚組のCDです。僕はアナログ盤時代に2枚に分売されていたものを愛聴しましたが、今は2枚が組み合わされて廉価CDで出ていますのでお買い得です。ピアノ伴奏は同郷のアルフレート・ホレチェクです。ヴァイオリンにぴったり合わせて文句有りません。

曲目は以下の通りです。

・ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調op.57 

・ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ ト長調op.100

・マズレック ホ短調op.49

・4つのロマンティックな小品op.75

・バラード ニ短調op.15

・夜想曲 ロ長調op.40

・スラブ舞曲第2番 ホ短調op.46-2

・ユモレスク 変ト長調op107-7

この中で、一番有名なのは「ユモレスク」でしょう。ピアノ独奏曲からヴァイオリンに編曲されましたが、曲の懐かしい雰囲気がヴァイオリンにぴったりです。大好きな曲です。けれども僕が一番愛して止まないのは、作品100の「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ」です。この曲はドヴォルザークが子供たちのために作りましたので、技巧的にとても易しく書かれています。僕は昔ビオラを弾いていましたが、友人から借りたヴァイオリンでこの曲を弾いて楽しんでいました。いかにもドヴォルザークらしい親しみやすく美しい曲です。鑑賞用としても第一級の名作です。他には作品75の「4つのロマンティックな小品」もとても魅力的です。

ということで、スークの爽やかな音で聴くドヴォルザークの小品は夏の夜にぴったりです。どうですか、今夜はグラスを傾けながらロマンティックな小品を楽しみませんか。

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2008年9月13日 (土)

ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」 ~スメタナ四重奏団の忘れられない思い出~ 

Dvorak ドヴォルザークには、もう1曲どうしても外せない我が心の名曲が有ります。それは弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」です。

この曲は、ドヴォルザークが祖国チェコからアメリカに渡って作曲しました。だから曲名が「アメリカ」です。でも、曲にアメリカ臭さはあまり無く、黒人霊歌のメロディの影響が有るものの、ほとんどボヘミア民謡丸出しです。ならば曲名は「ボヘミア」とか「スロバキア」とかに変えたほうが良いかも知れませんね。この曲は、とてもノスタルジックで心を和ませてくれます。仕事に疲れて家に辿り着き、ようやく落ち着いた時に一人で心静かに聴くには一番の、宝物のような曲なのです。

実は、僕には忘れられない思い出が有ります。チェコの名カルテット、スメタナ弦楽四重奏団は、かつて何度も日本に来ましたが、僕は幸いにも二度聴くことが出来ました。その二度目のコンサートは一橋大学講堂での学園コンサートだったのですが、この時に彼らの「アメリカ」の生演奏を聴くことが出来たのです。それは本当に素晴らしい体験でした。

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ところが、それから数日後に、たまたま日生劇場でヤナーチェックのオペラ「利口な子狐の物語」公演が有って観に行ったのですが、何とそこに彼ら4人が一緒に観客として来ていたのです。僕はすかさず駆け寄って、彼らの学園でのコンサートを聴いたことを(下手な英語で)伝えると、とても喜んでいました。僕は当時、大学のオーケストラでヴィオラを弾いていたので、ヴィオラ奏者のミラン・シュカンパさんにそれを話すと、嬉しそうに大きな手で握手してくれました。このことは本当に忘れられません。

Cci00029彼らは「アメリカ」を全部で5回録音しています。時代と共にスタイルは少しだけ変りますが、全て名演です。中でも特に素晴らしいのは4回目の1980年の日本ツアーの際の神戸文化会館でのライブ盤です。技術の衰えは感じませんし、時に大きなルバートや音のタメが見られる、彼らとしては最もドラマティックに歌わせた演奏なのです。とは言っても、いつもの彼ららしく基本的に端正で、決して過剰に弾き崩したりをしません。彼らの演奏を聴いていると、他のアンサンブルがもっと歌って弾き崩した演奏(たとえばアマデウスSQのように)を聴いても、どうもしっくり来ません。このDENON録音のCDはこともあろうに廃盤扱いですが(メーカーは何を考えているのでしょう!)、中古店で時々見かけますので、「アメリカ」やスメタナ弦楽四重奏団がお好きな方には是非ともお聴き頂きたいと思います。

41zm8h2t6al__sl500_aa300_ それ以外の彼らの演奏としては、僕は1966年のEMI録音も愛聴しています。非常にスタイリッシュな演奏で、80年の神戸ライブのようなルバートや音のタメは有りません。従ってドラマティックさは余り感じません。けれども音が非常にしなやかですし、切れの良さや流れの良さが格別です。メンバーの技術的にも最も完璧です。ですので80年のライブと合わせて僕の大好きな演奏です。

307 彼らは、晩年の1987年にプラハの芸術家の家でスタジオ録音を行いました。80年の神戸ライブに比べると、技術的にだいぶ衰えを感じます。特に第1ヴァイオリンのノヴァークにそれを感じます。アンサンブルとしても明らかに結晶度が落ちています。けれども、つまらない演奏かと言えば決してそんなことは無く、80年ライブが無ければ充分に素晴らしい演奏ですし、他の多くの団体の演奏に比べても遥かに好みます。彼らのドヴォルザークの演奏は、本当にどれもが素晴らしいと思っています。

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