モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲変ホ長調K.364 名盤
今日の曲は、モーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲K364」ですが、これは本当に素晴らしい名曲です。ヴァイオリン協奏曲の第3番、4番、5番と比べても曲の充実度において、それらを凌ぐ傑作だと思います。3曲の協奏曲を誉め讃えたアインシュタインも、この協奏交響曲については「モーツァルトがヴァイオリン・コンチェルトで追及したものの頂点である」と述べています。
曲は下記の3楽章構成です。
第1楽章アレグロ・マエストーソ
第2楽章アンダンテ
第3楽章プレスト
この曲は、もちろんコンチェルトのカテゴリーに含まれますが、「協奏交響曲」というタイトルからもシンフォニックな色合いが濃いです。また、独奏楽器が2台のいわゆる”二重協奏曲”なのですが、ヴァイオリンとヴィオラにはカバーする音域こそ異なっても、どの楽章に於いても全く同じ音型が与えられていて、お互いが後に先にとそれを繰り返すように書かれています。”二重協奏曲”に夫婦の意味合いを込めたのはブラームスでしたが、モーツァルトのこの協奏曲では、『外に出て稼ぐのは夫、家事をするのは妻』という昔ながらの役割分担ではなく、『夫も妻も外で仕事をこなし、家事も育児も公平に分担する』という、非常に欧米的な新時代の関係になっています。安倍総理は”女性の社会進出”を積極的に進めたいと訴えていますが、そのためには例えば育児休暇を夫が妻と半年交代で取得できるような社会の仕組みが確立されなければなりません。でなければ、結局は女性に家事の負担が重なるだけですし、社会進出の為に結婚も子育ても犠牲にするようないびつな構造になります。「女性の社会進出」が「晩婚化」「少子化」に増々拍車をかけるだけの結果になりかねません。
大きく話が脱線しましたが、それぐらい”男女平等の精神”を実践したような名曲です。さすがはモーツァルトです。
それはさておき、かつてアマチュアでヴィオラを弾いていた頃に、演奏をしたい”憧れの曲”と言えば、ブラームスのヴィオラ・ソナタでしたが、さすがに難し過ぎて手も足も出なかったです。その点、このモーツァルトの協奏交響曲は名曲の割に、アマチュアが一応弾くにはそれほど難しく無いので、よく一人でヴィオラパートだけを弾いて遊びました。
そこで、押入れから本当に久しぶりに楽器を引っ張り出してきて弾いてみましたが、ブランクが余りに長くて、指が全く言うことを聞いてくれません。音符を一つづつ確かめて、たどたどしく追って行くしか無いのですが、それでもとても懐かしく楽しかったです。やはり楽器は良いですね。
ということで、僕の愛聴盤紹介に移ります。
アルトゥール・グリュミオー(Vn)、アッリゴ・ペリッチャ(Va)、コリン・デイヴィス指揮ロンドン響(1964年録音/フィリップス盤) LP時代から愛聴して来た演奏です。デイヴィスの名伴奏に支えられて、独奏の二人が生き生きとこの名曲を奏でています。グリュミオーが素晴らしいのはもちろんなのですが、イタリア人のペリッチャがそれに少しもひけを取りません。両端楽章のキレの良さと、2楽章でロマンティックに綿々と歌い、沈み込んでゆくような雰囲気が最高です。正に何一つ文句の付けようの無い名演奏だと思います。
トマス・ブランディス(Vn)、ジュスト・カッポーネ(Va)、カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(1964年録音/グラモフォン盤) ベームの指揮は非常に風格が有ります。愉悦感に不足しますし、2楽章のムードも今一つなのですが、この曲を”交響曲”のように立派に演奏したものとしては最右翼ではないでしょうか。独奏者の二人も余り目立とうとせずに管弦楽に溶け込もうとしているように感じられます。そういう点ではユニークな演奏だと思いますが、カッポーネのヴィオラが少々弱いのが気に成ります。
イーゴリ・オイストラフ(Vn)、ダヴィド・オイストラフ(Va&指揮)、ベルリン・フィル(1972年録音/EMI盤) 同じベルリン・フィルを指揮してもベームのような風格には及びませんが決して悪くはありません。2楽章のドラマティックなうねりなどは圧巻です。オイストラフのヴィオラは上手いのですが、ヴィオラらしい音の厚みに不足するので、何となくヴァイオリンが2台で弾いているようにも感じられます。イーゴリのヴァイオリンは悪くありませんが、さりとて特別な魅力は有りません。それに二人ともダイナミックでやや繊細さに不足するようにも感じられます。
ゲルハルト・ヘッツェル(Vn)、ルドルフ・シュトレング(Va)、リッカルド・ムーティ指揮ウイーン・フィル(1974年録音/オルフェオ盤) ウイーン・フィルの首席の名手同士が独奏を務めるというザルツブルクでのライブです。実演ということも影響して、ベーム盤以上にソロが目立ちにくい録音ではあります。ヘッツェルはユーゴスラヴィア生まれで必ずしも生粋のウイーン風の弾き方ではありませんが、これをムーティ/ウイーン・フィルによる”交響曲”的な演奏として聴く分には中々に味わいが有って良いです。
ということで、上記の内で”完全無欠のモーツァルティアン”??を満足させてくれる演奏は、グリュミオー/ペリッチャ/Cデイヴィス盤です。
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