モーツァルト(協奏曲:ヴァイオリン)

2014年5月 4日 (日)

モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲変ホ長調K.364 名盤

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今日の曲は、モーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏交響曲K364」ですが、これは本当に素晴らしい名曲です。ヴァイオリン協奏曲の第3番、4番、5番と比べても曲の充実度において、それらを凌ぐ傑作だと思います。3曲の協奏曲を誉め讃えたアインシュタインも、この協奏交響曲については「モーツァルトがヴァイオリン・コンチェルトで追及したものの頂点である」と述べています。

曲は下記の3楽章構成です。

第1楽章アレグロ・マエストーソ
第2楽章アンダンテ
第3楽章プレスト

この曲は、もちろんコンチェルトのカテゴリーに含まれますが、「協奏交響曲」というタイトルからもシンフォニックな色合いが濃いです。また、独奏楽器が2台のいわゆる”二重協奏曲”なのですが、ヴァイオリンとヴィオラにはカバーする音域こそ異なっても、どの楽章に於いても全く同じ音型が与えられていて、お互いが後に先にとそれを繰り返すように書かれています。”二重協奏曲”に夫婦の意味合いを込めたのはブラームスでしたが、モーツァルトのこの協奏曲では、『外に出て稼ぐのは夫、家事をするのは妻』という昔ながらの役割分担ではなく、『夫も妻も外で仕事をこなし、家事も育児も公平に分担する』という、非常に欧米的な新時代の関係になっています。安倍総理は”女性の社会進出”を積極的に進めたいと訴えていますが、そのためには例えば育児休暇を夫が妻と半年交代で取得できるような社会の仕組みが確立されなければなりません。でなければ、結局は女性に家事の負担が重なるだけですし、社会進出の為に結婚も子育ても犠牲にするようないびつな構造になります。「女性の社会進出」が「晩婚化」「少子化」に増々拍車をかけるだけの結果になりかねません。

大きく話が脱線しましたが、それぐらい”男女平等の精神”を実践したような名曲です。さすがはモーツァルトです。

それはさておき、かつてアマチュアでヴィオラを弾いていた頃に、演奏をしたい”憧れの曲”と言えば、ブラームスのヴィオラ・ソナタでしたが、さすがに難し過ぎて手も足も出なかったです。その点、このモーツァルトの協奏交響曲は名曲の割に、アマチュアが一応弾くにはそれほど難しく無いので、よく一人でヴィオラパートだけを弾いて遊びました。
そこで、押入れから本当に久しぶりに楽器を引っ張り出してきて弾いてみましたが、ブランクが余りに長くて、指が全く言うことを聞いてくれません。音符を一つづつ確かめて、たどたどしく追って行くしか無いのですが、それでもとても懐かしく楽しかったです。やはり楽器は良いですね。

ということで、僕の愛聴盤紹介に移ります。

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アルトゥール・グリュミオー(Vn)、アッリゴ・ペリッチャ(Va)、コリン・デイヴィス指揮ロンドン響(1964年録音/フィリップス盤) LP時代から愛聴して来た演奏です。デイヴィスの名伴奏に支えられて、独奏の二人が生き生きとこの名曲を奏でています。グリュミオーが素晴らしいのはもちろんなのですが、イタリア人のペリッチャがそれに少しもひけを取りません。両端楽章のキレの良さと、2楽章でロマンティックに綿々と歌い、沈み込んでゆくような雰囲気が最高です。正に何一つ文句の付けようの無い名演奏だと思います。

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トマス・ブランディス(Vn)、ジュスト・カッポーネ(Va)、カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(1964年録音/グラモフォン盤) ベームの指揮は非常に風格が有ります。愉悦感に不足しますし、2楽章のムードも今一つなのですが、この曲を”交響曲”のように立派に演奏したものとしては最右翼ではないでしょうか。独奏者の二人も余り目立とうとせずに管弦楽に溶け込もうとしているように感じられます。そういう点ではユニークな演奏だと思いますが、カッポーネのヴィオラが少々弱いのが気に成ります。

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イーゴリ・オイストラフ(Vn)、ダヴィド・オイストラフ(Va&指揮)、ベルリン・フィル(1972年録音/EMI盤) 同じベルリン・フィルを指揮してもベームのような風格には及びませんが決して悪くはありません。2楽章のドラマティックなうねりなどは圧巻です。オイストラフのヴィオラは上手いのですが、ヴィオラらしい音の厚みに不足するので、何となくヴァイオリンが2台で弾いているようにも感じられます。イーゴリのヴァイオリンは悪くありませんが、さりとて特別な魅力は有りません。それに二人ともダイナミックでやや繊細さに不足するようにも感じられます。

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ゲルハルト・ヘッツェル(Vn)、ルドルフ・シュトレング(Va)、リッカルド・ムーティ指揮ウイーン・フィル(1974年録音/オルフェオ盤) ウイーン・フィルの首席の名手同士が独奏を務めるというザルツブルクでのライブです。実演ということも影響して、ベーム盤以上にソロが目立ちにくい録音ではあります。ヘッツェルはユーゴスラヴィア生まれで必ずしも生粋のウイーン風の弾き方ではありませんが、これをムーティ/ウイーン・フィルによる”交響曲”的な演奏として聴く分には中々に味わいが有って良いです。

ということで、上記の内で”完全無欠のモーツァルティアン”??を満足させてくれる演奏は、グリュミオー/ペリッチャ/Cデイヴィス盤です。

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2014年4月30日 (水)

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219「トルコ風」 名盤

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モーツァルトが20歳になる一か月前に書き上げたヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」K.219は、彼の最後のヴァイオリン協奏曲です。第3番や第4番も素晴らしい作品でしたが、第5番は音楽の充実度において更に進化を遂げた”最高傑作”と呼んで良いと思います。この曲の副題が「トルコ風」というのは、第3楽章にトルコ行進曲風のリズムが現れるからです。

もちろんこの曲でもフランス的なギャラント趣味は失われていませんが、第4番以上にドイツ・オーストリア的な曲想から成っています。

第1楽章アレグロ・アぺルト オーケストラによる提示部に心が涌きたてられた後、ヴァイオリンの序奏から主題に移ってゆく音楽の流れの素晴らしさにはほとほと感心します。主部では躍動感とチャーミングさが絶妙に融け合っているのが最高です。

第2楽章アダージョ 何という魅力的なアダージョなのでしょうか。ためらいがちに登場するヴァイオリン独奏のいじらしさには心が震える思いです。

第3楽章ロンド、テンポ・ディ・メヌエット 主部は素晴らしく優雅なメヌエットですが、中間部でアレグロに変り「トルコ行進曲」が登場します。トルコの軍隊が行進するときの太鼓を表すのに、この曲では打楽器が使われていません。モーツァルトはその代わりに弦楽器に”コル・レーニョ”という弓の裏側の木の部分を使って弦をビシビシと叩く演奏法を取り入れることによって、太鼓を表現しているのです。このコル・レーニョ奏法は、ベルリオーズの「幻想交響曲」やマーラーの幾つかの交響曲などで使われていますが、有名な作品に使われた例としてはこの曲が最初ではないでしょうか。もしかしたらモーツァルトの発案なのかもしれませんが、そこのところは良く分りません。
優雅なメヌエットとダイナミックなトルコ行進曲の対比が抜群のこの楽章は本当に愉しさ一杯です。

それでは、この曲の愛聴盤のご紹介です。

685 ダヴィド・オイストラフ独奏、エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1956年録音/オルフェオ盤) ロシア演奏家がウイーンに乗り込んでのライブ録音です。オイストラフは”ロシア風”ということではありませんが、初々しさからは遠い演奏です。歌い回しに、どうしてもくどさや粘り気を感じてしまいます。レニングラード・フィルも部分的にリズムがコケていたりして、この曲の伴奏は余り経験をしていないように感じられます。非常に興味をそそられた組み合わせの割には聴後の感動は薄かったです。モノラル録音ですが音質は水準以上です。

Ferras8c_2 クリスチャン・フェラス独奏、アンドレ・ヴァンデルノート指揮パリ音楽院管(1960年録音/EMI盤) フェラスのヴァイオリンの音はギャラント風のモーァルトとしては最上の一つだと思います。軽いリズム感と切れの良さは大切な要素なのですが、余りに過ぎた”小股の切れ上がり”も自分の好みから外れてしまいます。相変わらず装飾音のセンスの良さには溜息が出ますが、それが少しもしつこさを感じさせません。常に青春の瑞々しさを失わないのです。但し2楽章に陶酔感が幾らか不足しているようには感じられます。

61rtc442gfl アルトゥール・グリュミオー独奏、コリン・デイヴィス指揮ロンドン響(1961年録音/フィリップス盤) グリュミオーもギャラント風のモーァルトとして最上のものです。初々しさにおいてはフェラスの方が上ですが、逆にグリュミオーは歌い回しの素晴らしさだけでなく表情に艶っぽさが増していて、これもまた非常に魅力的です。1、3楽章での切れの良さはもちろんですが、2楽章の甘い陶酔感もフェラスを遥かに凌駕しています。デイヴィスの伴奏するロンドン響も、表情づけと躍動感が非常に素晴らしいです。フィリップスの柔らかい録音も優秀です。

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ユーディ・メニューイン独奏、指揮バース祝祭室内管(1961年録音/EMI盤) 晩年のメニューインはテクニック的には聴き劣りしますし、豊麗な音色を持っているわけでも有りません。けれでも落ち着いたテンポで常に音楽にゆとりを感じさせます。”小股の切れ上がった”演奏からは程遠い存在ですが、どの部分でもじっくりと弾き込んでいて、フレージングの端々から慈愛を一杯に感じさせてくれます。オーケストラは超一流とは言い難いですが、指揮振りですので、アンサンブルの呼吸はピタリと合っています。

41wcfg0pb0l ヴォルフガング・シュナイダーハン独奏、指揮ベルリン・フィル(1967年録音/グラモフォン盤) フェラス、グリュミオーとギャラント風の演奏を聴いた後だと、シュナイダーハンの落ち着いたウイーン・スタイルの魅力を改めて感じます。それは決して躍動感が損なわれているわけでは無く、歌い回しに常にゆとりが有るからです。2楽章もゆっくりとしたテンポで柔らかく歌い、しっとりとした情緒が一杯にこぼれますが、妙にベタベタすることはありません。こうした味わいは、やはりウイーンの音楽家ならではです。

41eymn18rkl_ac_ ギドン・クレーメル独奏、ニコラウス・アーノンクール指揮ウイーン・フィル(1987年録音/グラモフォン盤) 所有するのは3,4,5番が1枚になった国内盤です。3,4番はクレーメルの表現が過度に陥ることなく若きモーツァルトの魅力を引き出していました。しかしこの5番では旺盛な表現意欲が仇となり、少々しつこさが感じられます。ただ3楽章の中間部は楽しいです。クレーメルの楽器の音色自体は瑞々しい美しさに溢れていてモーツァルトにピッタリです。アーノンクールの指揮はオーソドックスなもので、ウイーン・フィルから美しい音を一杯に引き出しています。

51fi6elzyl モニカ・ハジェット独奏、指揮エイジ・オブ・インライトゥメント管(1993年録音/ヴァージン盤) ハジェットのモーツァルトとしても最高の出来栄えですが、なによりもハジェットの大胆な歌い回しによる豊かな表現力に脱帽します。それでいて、わざとらしいあざとさが全く感じられない自然さが凄いです。モーツァルトの演奏はどちらか言えば現代楽器の豊かな音を好みますが、この演奏の持つオーケストラも含めて古雅で美しい響きに心から魅了されてしまいます。3楽章のコル・レーニョが凄まじい叩き方で驚かされますが、奏者の弓が壊れないか心配になります(笑)。

ということで、この曲のマイ・フェイヴァリットとしては、アルトゥール・グリュミオー盤、ヴォルフガング・シュナイダーハン盤、そしてモニカ・ハジェット盤の3つです。

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2014年4月27日 (日)

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K.218 名盤

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番は、フランス的なギャラント・スタイルの第3番に続いて作曲されましたが、前作に比べると幾らかドイツ・オーストリア的な色彩が強くなりました。とは言え、やはり若きモーツァルトの作品だけあって、非常にチャーミングなことには変わり有りません。個人的には第3番と第5番が特に好きなのですが、第4番にもやはり惹かれます。この曲は第1楽章冒頭に登場する旋律から、よく「軍隊」の名で呼ばれます。

第1楽章アレグロ 冒頭の提示部の管弦楽による第1主題の勇壮な旋律が軍隊ラッパを想わせるのが、「軍隊」の呼び名の起こりです。但し、この主題が曲中で展開して使われることは無く、全体的には”軍隊”と言うには余りに華麗です。

第2楽章アンダンテ・カンタービレ ”セレナード”にでも使われそうな落ち着いた雰囲気のアンダンテですが、独奏ヴァイオリンは淡々としていながらも魅惑の極みです。

第3楽章ロンド 優雅さの有る軽やかなロンドですが、中間で出てくる変奏曲がとてもチャーミングで魅了されます。

それでは、愛聴盤をご紹介します。

51cd0dcpsnl_sy355_ ダヴィド・オイストラフ独奏、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管(1955年録音/CBS盤) オイストラフは晩年にベルリン・フィルを指揮しながら全曲を録音しましたが、これは米国でメンデルスゾーンとの組み合わせで録音したモノラル盤です。いかにもロシア流のモーツァルトですが、カロリーの高い音色でたっぷりと歌い上げていて楽しいです。オーマンディーの指揮がモノラル時代のワルターの様にグラマラスですが、オイストラフの演奏とぴったりです。個人的にはフランコ・ベルギー派やウィーン派のモーツァルトを好みますが、これもまた良しです。録音も鑑賞に差支え有りません。

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クリスチャン・フェラス独奏、アンドレ・ヴァンデルノート指揮パリ音楽院管(1960年録音/EMI盤) フェラスの弾くモーツァルトは本当に魅力的です。彼の清潔感の漂う美しい音は若く美しいパリジェンヌを連想させます。それは、まだ男性を手玉に取るような術を覚える前の初々しさを感じさせます。ヴァンデルノートの伴奏もまた、若く誠実な青年のようであり、”パリの散歩道”をピタリ寄り添ってエスコートしている雰囲気です。2楽章ではそんな二人が甘く恋を語らっているかのようであり、とても幸せな気持ちになってしまいます。いやぁ、若いっていいなぁ。これはEMIのボックスです。

61rtc442gfl アルトゥール・グリュミオー独奏、コリン・デイヴィス指揮ロンドン響(1962年録音/フィリップス盤) グリュミオーの弾くモーツァルトも実に魅力的です。やはり若い美人パリジェンヌを連想させますが、フェラスよりも艶っぽさがずっと増しています。この辺りは好みでしょうが、オトコとしては両方とも彼女にしたいところです。デイヴィスの伴奏は毅然とした立派なもので、正に青年将校のような風格が有り「軍隊」らしさが出ています。当時のフィリップスのアナログ録音は非常に柔らかく美しいです。

41wcfg0pb0l ヴォルフガング・シュナイダーハン独奏、指揮ベルリン・フィル(1965-7年録音/グラモフォン盤) ウイーン出身のシュナイダーハンとベルリン・フィルの組み合わせですと、パリの空気がすっかり消え去さって、ドイツ/オーストリア風に聞こえますが、こちらのほうがこの曲の本来の姿ではあるでしょう。特にシュナイダーハンのヴァイオリンがウイーン風に柔らかく奏でられていて素晴らしいです。2楽章などはさしずめ、”ウイーンの森での語らい”です。これだけのソロを聴かせられる人が果たしてその後のウイーンに現れたでしょうか。

41eymn18rkl_ac_ ギドン・クレーメル独奏、ニコラウス・アーノンクール指揮ウイーン・フィル(1987年録音/グラモフォン盤) 所有するのは3,4,5番が1枚になった国内盤ですが、どの曲もクレーメルの魅力満開の名演と言えます。クレーメルの楽器の音色は瑞々しい美しさに溢れていてモーツァルトにピッタリです。ニュアンスの変化が非常に豊かですが、それが若きモーツァルトの音楽に忠実に寄与します。アーノンクールの指揮も極めてオーソドックスなもので、ウイーン・フィルからモーツァルトの魅力を最高に引き出しています。

51fi6elzyl モニカ・ハジェット独奏、指揮エイジ・オブ・インライトゥメント管(1993年録音/ヴァージン盤) ハジェットにしては表現が控え目で端正な演奏です。古楽器による演奏としては充分に満足できる出来栄えなのですが、彼女であれば更にモーツァルトらしい自由奔放さと愉悦感を期待してしまいます。2楽章の歌も余りに淡々とし過ぎていて食い足りなさを覚えます。但し、オーケストラの響きは古雅でとても美しく文句無しです。

ということで、この曲のマイ・フェイヴァリットとしては、”パリの散歩道”のクリスチャン・フェラス盤と”ウイーンの森”のヴォルフガング・シュナイダーハン盤、ズバリこの二つですが、クレーメル盤にも惹かれます。

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2014年4月22日 (火)

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216 名盤

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モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は全部で5曲有りますが、第1番が書かれた翌々年に残りの4曲がまとめて書かれました。ですので、ほぼ同時期に書かれたことになりますが、曲の充実度においては第3番以降の3曲が圧倒的に優れています。モーツァルトの熱烈な愛好家としても知られたアインシュタインは、作品評については結構辛口ですが、この3曲については「モーツァルトの精神が生きている」と賛辞の言葉を記しています。

そのうちの第4番と第5番にはドイツ的な要素も感じられるため、最もフランス的で純粋なギャラント・スタイルの傑作が第3番ということになります。本当にチャーミングで、心から愛さずにはいられない作品です。

第1楽章アレグロ 冒頭から飛び出す第1主題が非常に印象的で、ヴァイオリンが提示部の後に再び第1主題を奏でますが、それだけでこの曲のとりこに成ってしまいます。

第2楽章アダージョ フランスの影響を受けた甘く夢見るような音楽の魅力に溢れていて、モーツァルトを聴く喜びに浸り切れます。

第3楽章ロンド、アレグロ やはりフランス風ですが、中間部で登場するアンダンテとアレグレットのチャーミングなことといったらありません。

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クリスチャン・フェラス独奏、カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥトガルト室内管(1954年録音/テスタメント盤:DECCA原盤) 昔、海外デッカのアナログ盤で愛聴した演奏です。モノラル録音とは思えない豊麗な音に耳を疑いました。これは最近テスタメントがリマスターしたCDですが、音の魅力はほぼ再現されています。ゆったりしたミュンヒンガーの伴奏に乗って、フェラスがこぼれるような美しい音と若々しい表情で曲を堪能させてくれます。いまだに魅力を失わない全くもって素晴らしい演奏です。

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ウイリー・ボスコフスキー独奏、カール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1960年録音/EMI盤) これはザルツブルク音楽祭でのライブ録音です。シューリヒトのテンポは意外にゆっくりで、ボスコフスキーが更にのんびりとした甘いウイーン節を奏でています。確かに古き良き時代のウイーンを感じさせますが、反面ギャラント風の味わいが消えてしまっていて多少戸惑います。録音は当時のライブとしては水準以上ですが、音色がどうしてもモノトーンに感じられるのが弱点です。

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アルトゥール・グリュミオー独奏、コリン・デイヴィス指揮ロンドン響(1961年録音/フィリップス盤) この録音当時のグリュミオーは最高でした。明るく美しい音色に加えて、ヴィブラートやトリルなどの装飾音のセンスの良さには溜息が出ます。デイヴィスの若々しく切れの良いオーケストラ伴奏に乗ってヴァイオリンが自由自在に駆け回っていて、若きモーツァルトの最良の姿と言えます。ギャラント風の演奏として最右翼の一つだと思います。フィリップスの柔らかい録音も素晴らしく、古さを全く感じさせません。

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ヴォルフガング・シュナイダーハン独奏、指揮ベルリン・フィル(1965-7年録音/グラモフォン盤) シュナイダーハンもウイーン出身のヴァイオリニストですが、ボスコフスキーが生粋のウイーンっ子という感じなのに比べると、ややドイツ的に感じます。どうせギャラント風で無いのであれば、ウイーン風に徹し切って欲しかったところですが、さりとて、この3曲をまとめて録音したウイーンの人も思い当らないのでやはり貴重です。楽器の音も相変わらず美しいです。自作のカデンツァはベートーヴェン的で微妙ですが、まぁファン・サービスだと思いましょう。

41eymn18rkl_ac_ ギドン・クレーメル独奏、ニコラウス・アーノンクール指揮ウイーン・フィル(1984年録音/グラモフォン盤) クレーメルの魅力満開の名演と言えるでしょう。クレーメルの音色は瑞々しい美しさに溢れています。微にいり細に入るほどニュアンスの変化が有りますが、それが青春のモーツァルトのイメージを壊すほどの姑息さや恣意的な印象は受けません。ウイーン・フィルの管弦楽演奏の素晴らしさはこの曲のベストだと思います。良く有るアーノンクールの奇をてらった表現もどこにも見られること無く、極めてオーソドックスなものです。

189 フランク・ペーター・ツィンマーマン独奏、ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮ベルリン・フィル(1995年録音/EMI盤) オール・ドイツ演奏家キャストなので洒落っ気やユーモアには乏しいですが、ツィンマーマンの美しい音と端正な弾き方はモーツァルトに適しています。サヴァリッシュがベルリン・フィルをがっちりと引き締めていて少々厳し過ぎるようには感じますが、立派で上手い伴奏ではあります。個人的には、ギャラント風の味わいが欠けるのがやはり物足りないような気がします。

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モニカ・ハジェット独奏、指揮エイジ・オブ・インライトゥメント管(1993年録音/ヴァージン盤) こちらはオール・イングランド演奏家キャストによる古楽器演奏ですが、自由奔放な表現がフランス的でギャラント・スタイルの味わいを感じさせます。ハジェットはバッハでも自由に演奏しますが、モーツァルトの音楽との相性は抜群です。洒落っ気やユーモアが一杯に溢れていて、モーツアァルト自身がヴァイオリンを弾いたらこんな感じではないかと思えるほどです。現代楽器、古楽器の領域を越えて非常に素晴らしい演奏だと思います。

ということで、マイ・フェイヴァリットとして、クリスチャン・フェラス盤、アルトゥール・グリュミオー盤、モニカ・ハジェット盤の3つを上げます。

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