メンデルスゾーン

2017年4月 7日 (金)

メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第1番ニ短調op.49 名盤 ~メントリは1羽?~

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先日のルッツ・レスコヴィッツさん達のメンデルスゾーンのピアノ・トリオの名演奏の余韻がいまだに残っていて、手持ちのCDを改めて聴き直しています。

ところで、このピアノ三重奏曲第1番は演奏家の間では通称「メントリ」と呼ばれています。決してメンドリ(雌鶏)ではありません!

確かにこの曲はメンデルスゾーン円熟期の素晴らしい名作です。メンデルスゾーンには晩年に書かれたピアノ・トリオの第2番が有るのですが、「メントリ」と言えば第1番ということになっています。随分と不公平な扱いですが、大変美しく分り易いメロディが次から次へと出てくる第1番に人気が集中するのは容易に理解出来ます。ブラームスの書いたあの3曲のピアノ・トリオの含蓄の深さには及びませんが、このジャンルを代表する傑作の一つであることは間違いありません。

この曲は4楽章で構成されています。

第1楽章 アレグロ・モルト・アジタート 3/4拍子 チェロによりほの暗く美しい旋律が感情豊かに奏されて開始されます。旋律はヴァイオリンが引き継いで、そこにピアノが見事に絡み合い情熱的に進みます。その後いかにもメンデルスゾーンらしい甘く美しい曲想に変化して飽きさせません。終結部も壮大に盛り上がり、この曲の要である楽章です。

第2楽章 アンダンテ・コン・モート・トランクィロ 4/4拍子 第1楽章から一転して静けさと幸福感に覆われた極めて美しい音楽に変わります。正に「無言歌」といった風情です。

第3楽章 スケルツォ 6/8拍子 急速なスケルツォは、「真夏の夜の夢」の妖精たちが飛び回る光景そのままです。

第4楽章 フィナーレ:アレグロ・アッサイ・アパショナート 4/4拍子 エキゾチックな旋律とリズムが大変印象的で一度聴いたら忘れられないことでしょう。主題を繰り返すうちに徐々に感興が高まってゆき、やがてそれが爆発して最後は情熱的に盛り上がります。

それでは所有CD盤をご紹介します。

51ejw4igywlティボー(Vn)、カザルス(Vc)、コルトー(Pf)(1927年録音/EMI盤) SP録音時代に一世を風靡したトリオの名演奏です。自分は写真の海外盤のセットで聴いていますが、1枚物でも出ています。なにせに90年前の録音ですので音は貧弱です。しかしこの演奏から一杯に湧き上がる濃厚なロマンの香りは如何ばかりでしょう!こんな演奏が聴けていた時代が有ったのです。時代が変わり、生きている人間も変わり、演奏スタイルも変わりました。演奏にミスが有るか無いか、そんなことが演奏の評価を左右することのない古き良き時代。聴衆にとってはどちらが幸せなのでしょう。そんなことを改めて考えさせられる演奏です。一度はお聴きになられて欲しいです。

51uoqbiaoelシュナイダー(Vn)、カザルス(Vc)、ホルショフスキー(Pf)(1961年録音/CBSソニー盤) カザルスがホワイトハウスに招かれて演奏会を行いました。ケネディ大統領の御前演奏です。この日はアンコールで「鳥の歌」も演奏されました。共演したシュナイダーはブダペスト四重奏団の第2ヴァイオリン奏者ですが、大変な実力者にしてカザルスの盟友です。演奏はその気宇の大きさに圧倒されます。激しく気迫に溢れていてメンデルスゾーンの美感は確かに損なわれていますが、そんなことよりももっと大切な「真の音楽とは何か」ということを教えられるようです。モノラル録音で音質はクリアというわけには行きませんが、「歴史的」という名に恥じない物凄い演奏です。

61jxmpplyflスーク(Vn)、フッフロ(Vc)、パネンカ(Pf)(1966年録音/スプラフォン盤) スークのヴァイオリンは爽やかで清潔感に溢れますが、特に若い時代には音の線が細くすっきりとし過ぎているきらいが有りました。フッフロとパネンカも同質の傾向ですので、それが古典派やボヘミア物だと大いに魅力となりますが、ロマン派の音楽には幾らか物足り無さを感じてしまいます。このメンデルスゾーンも端正で誠実な演奏で好感が持てますが、もう少し艶や色気が欲しいところです。そうなると後述のスターン達の演奏が自分にとっては理想形に近いです。

510p5wluyel__sx425_スターン(Vn)、ローズ(Vc)、イストミン(Pf)(1966年録音/CBSソニー盤) スターンが大ヴァイオリニストの割には意外に華やかさに欠けるトリオでしたが、演奏は実に素晴らしいです。古典的な様式感、造形性を保っているので、派手さは受けませんが、スターンの精緻かつ音楽的な演奏とやはり実力者の二人とが相まって、非常にバランスの良い名演奏を繰り広げています。ある程度たっぷりとしたロマンティシズムも感じさせますので、スーク達のように物足り無さを感じさせることも有りません。もっともオーソドックスな名盤だと言えます。

91w8sr5qphl__sl1500_チョン・キョンファ(Vn)、トルトゥリエ(Vc)、プレヴィン(Pf)(1978年録音/EMI盤) 全盛期のキョンファのヴァイオリンが凄いです。一音一音に凄まじい切れと気迫が漲っていて圧巻です。音色は暗く甘さが無いので、通常のメンデルスゾーンのイメージとは少々異なります。その分トルトゥリエはいかにも大家らしくたっぷりとチェロを歌わせて全体が一本調子に陥るのを防いでいます。プレヴィンのピアノも健闘しています。非常に聴き応えの有る名演奏に違いありませんので是非お薦めしたいです。また、カップリングされたシューマンのトリオ第1番では音楽との距離はより密接にあると思います。

ということでマイ・フェイヴァリットはカザルス達のホワイトハウス・ライヴ盤、リファレンスにしたいスターン盤、個性的なチョン・キョンファ盤で、これらはことあるごとに聴きたくなります。

なお、ここには挙げていませんがムターがハレル、プレヴィンと共演したグラモフォン録音盤も3、4楽章など必要以上の快速なのでどうかとは思いますが、面白さは抜群です。

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2012年7月21日 (土)

メンデルスゾーン 交響曲第4番イ長調「イタリア」op.90 不滅の名盤

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メンデルスゾーンは一年前に、交響曲第3番「スコットランド」を記事にしましたが、それ以外にもヴァイオリン協奏曲や「真夏の夜の夢」という屈指の名曲が有りますね。それらと並んで、とても人気が有るのは交響曲第4番「イタリア」でしょう。個人的には「スコットランド」のほうが好きですが、「イタリア」の輝くばかりの生命力と躍動感は大変に魅力的です。

この曲が「イタリア」と呼ばれるのは、メンデルスゾーンがイタリア旅行中に作品を書き始めたことと、第4楽章にはイタリア舞曲の「サルタレロ」が使われているからです。

第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ どの楽章も魅力的ですが、白眉はやはり第1楽章ですね。木管の速いスタッカート伴奏に乗って、さっそうと登場する第1主題は夏の暑さを吹き飛ばす爽快感が有ります。うーん、イタリア!ティ・ア~モ!

第2楽章アンダンテ・コン・モト ほの暗く甘いメランコリックな歌がとても魅力的です。メンデルゾーンの面目躍如です。

第3楽章コン・モト・モデラート スケルツォに相当しますが、甘く柔らかく歌われる旋律が何とも素敵です。

第4楽章サルタレロ・プレスト イタリアの民族舞曲のサルタレロですが、これはメンデルスゾーンがローマのカーニバルで観た印象を曲にしたそうです。さすがはイタリア、情熱的ですねぇ。

実は、この曲の愛聴盤はごく限られています。オールド・ファンなら誰でもご存じの定番中の定番です。

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アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団(1954年録音/RCA盤) 

ギリシア彫刻のような頑強な造形に、炎のように燃え上がる情熱と甘く歌うカンタービレが同居していて、何度聴いても魅了されます。メンデルスゾーンの演奏としては少々武骨に過ぎて、もう少し柔らかさが欲しいかなと思わないでもありませんが、これを一たび聴き始めると、やはり有無を言わせない説得力を感じてしまいます。
1楽章の強靭に刻むリズムは、どこまでが曲本来の姿なのか、トスカニーニ固有の特徴なのか良く分りませんが、それが中間では突然微妙なルバートが現れてハッとさせられます。こういう名人芸はさすがトスカニーニです。終楽章も単に速さで押し切るのではなく、強靭なリズムに音楽の重さ(”重ったるい”のとは意味が異なります)と聴きごたえを与えてくれます。弦楽パートの切り裂くような凄みやティンパニの一打一打の気迫には、心底圧倒される思いです。古いモノラル録音ですが、トスカニーニ最晩年の録音ですので、当時の音質としては優れています。

僕は決して、よく言われるような「最初に聴いた演奏の刷り込み」というのはまず起こらないタイプなのですが、この演奏ばかりは、他のミンシュ、カラヤン、クレンペラー、アバドなど、どの演奏を聴いても、これを越えるようには中々感じられませんでした。もちろん音の良いステレオ録音で、気に入った演奏を聴きたいとは思っていますが、今後もしも期待出来るとすれば現役ではパーヴォ・ヤルヴィあたりでしょうか。

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2011年8月18日 (木)

~サマースペシャル・名曲シリーズ~ メンデルスゾーン 交響曲第3番イ短調「スコットランド」

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今日もまあ暑かったですね。(大汗) でも、お盆を過ぎると夏ももうじき終わりだなぁと思います。昼間はまだまだ暑くても、朝なんかは気温が段々に下がってくるからです。さて、スコットランドにちなんだ曲が続いたところで、もう一曲聴きましょう。とすれば、やはりこの曲かな。

メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」です。メンデルスゾーンは20歳の時に初めてイギリスに渡り、スコットランド地方を旅しました。その時にこの曲の作曲を始めましたが、途中で中断したこともあって、全曲が完成したのは、その13年後の33歳になった時でした。この人には第4番「イタリア」や第5番「宗教改革」が有りますが、実際には、この第3番が最後に完成した交響曲です。番号は出版された順につけられたからです。ですので、この交響曲は、青春の息吹のような爽やかさと、円熟した作風とが上手く同居しています。曲のタイトルは、もちろんスコットランド旅行中に書き始めたからです。

第1楽章アンダンテ・コンモート 悲哀に溢れた幻想的で長い序奏部分は荒れてしまった古城を想わせます。まるで滝廉太郎の「荒城の月」みたいです。そして序奏が終わって主部への移り方は、実に美しく素晴らしいです。徐々にクレッシェンドして盛り上ってゆきますが、ここは北海の荒々しい海を想わせます。

第2楽章ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポはスケルツォ楽章にあたります。スコットランド民謡を思わせるような軽快な主題がとても魅力的ですね。

第3楽章アダージョはメンデルスゾーンの魅力全開の、息の長いメロディが非常に美しくロマンティックです。中間部の峻厳な雰囲気も素晴らしいです。

第4楽章アレグロ・ヴィヴァッチェシモでは、音楽が情熱的に躍動しながら行進しますが、明るさと同時にどこか暗さを感じさせます。また幾らか攻撃的なようにも感じます。長い主部が終わると終結部では、全く新しい主題によって壮大で高らかに勝利の歌が歌われて曲を結びます。

この曲の愛聴盤ですが、古いファンなら誰でもご存じの定番です。これですっかり満足しているということでもあるのですが、ともかくはご紹介しておきます。

417jhqpb0wl__sl500_aa300_ ペーター・マーク指揮ロンドン響(1957年録音/DECCA盤) マークは日本のオケにも度々客演しましたし、この演奏もかつては高く評価されていました。けれども最近ではすっかり忘れ去られた感が有ります。非常に残念です。改めて聴いてみると、本当に若々しく瑞々しい演奏なので、若きメンデルスゾーンの異国への旅における喜びが余すところなく表現されていると思います。DECCAの録音も年代を感じさせないほどに秀れているので不満は感じません。

D0ed6f6c7 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1960年録音/EMI盤) 昔から「スコットランド」と言えばクレンペラーと言われるほどの定番中の定番です。遅いテンポでゆったりと構えているので、メンデルスゾーンの持つ音楽の明るさが減衰している印象です。常にクールで熱く成り過ぎないのです。でも、この曲にはむしろ適していると思います。特に第2楽章の遅さは、このテンポだからこそ、あのチャーミングなメロディが生きるのだと思います。他の部分も甘さ控えめで落ち着いた大人の魅力です。こんなメンデルスゾーンは、ちょっと他の指揮者には真似が出来ないでしょう。

3198070030 オットー・クレンペラー指揮バイエルン放送響(1969年録音/EMI盤) ミュンヘンでのライブ録音ですが、オーケストラは優秀ですし、スタジオ盤を上回るほどの出来栄えです。ところが、ひとつ問題が有ります。クレンペラーは、この曲の終結部が気に入らなかったようで、自分で勝手にコーダを書き換えてしまいました。それは短調のまま静かに終わるので、確かに面白いと思います。でもメンデルスゾーンが13年かけて書き上げたものに手を加えるというのは、如何なものかなぁという気がします。聴き慣れているせいもあるでしょうが、個人的にも通常版のコーダは好きです。従って、これはあくまでもセカンドチョイスとせざるを得ません。

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