メンデルスゾーン

2021年2月25日 (木)

メンデルスゾーン 劇付随音楽「真夏の夜の夢」 名盤

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「真夏の夜の夢」(原題:A Midsummer Night's Dream)は、有名なシェイクスピアの書いた喜劇戯曲です。

物語には、森に住む妖精たちや、そこに入り込んだ人間たちが登場します。二組の人間の恋人たちは、惚れ薬のために相手を取り違えてしまったり、妖精の王様と女王は養子を巡って喧嘩をしたりと大騒ぎです。しかし最後には、妖精の王の画策や妖精パックの活躍によってハッピーエンドとなります。

ところで、英語タイトルの Midsummer は、「夏至」(6月21日頃)を意味しますが、この戯曲は6月のことではなく、森で起こる騒動は五月祭の前夜の4月30日のこととなっています。
戯曲のタイトルと内容の時期の不一致については研究家の間でも謎で、シェイクスピアが何故「A Midsummer Night's Dream」としたのかは分からないようです。

日本でも長い間「真夏の夜の夢」とされて来ましたが、近年は文学界も音楽界も「夏の夜の夢」とされる傾向に有ります。

この戯曲に基づいてメンデルスゾーンが有名な「劇付随音楽」作品61を作曲しますが、「序曲」のみは作品21として先行して書かれました。これはメンデルスゾーンが元々はピアノ連弾曲として書いたもので、それを管弦楽用に編曲して完成させたのは僅か17歳のことです。
神秘的な序奏に続いて特徴的な音型や楽器を駆使して、森の中で跳ね回る妖精たちや、ロバの鳴き声、動物たちの幻想的な世界の描写が天才的ですね。
「劇付随音楽」は、この序曲を聴いて感銘を受けたプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世の命令により作曲することとなります。

序曲に続く「劇付随音楽」は全12曲で、以下の通りとなります。

序曲 (作品21)
1. スケルツォ
2. 妖精たちの行進「丘を越え谷を越え」
3. 妖精の歌「まだら模様のお蛇さん」
4. 情景「魔法をかける」
5. 間奏曲
6. 情景「ぶざまな田舎者どもが」
7. 夜想曲
8. 情景「魔法が解ける」
9. 結婚行進曲
10.葬送行進曲
11.武骨者の踊り(ベルガマスク舞曲)
12.終曲

このうち、「情景」は短く、演奏されなくてもさほど影響が無いので除かれ、序曲を含めて全10曲で演奏されるケースが多いです。また、「序曲」「スケルツォ」「間奏曲」「夜想曲」「結婚行進曲」の5曲の組形としてもよく演奏されますが、その場合チャーミングな「妖精の歌」が抜けるのは残念です。

曲の中で最も有名なのは「結婚行進曲」です。高度経済成長期の豪華な結婚披露宴にはぴったりでしたが、バブル崩壊以降には、落ち着いたワーグナーの「婚礼の合唱(結婚行進曲)」が使われることが多くなったような気がします。歌は世につれ世は歌につれ、ですね。

この作品はもちろん舞台劇として公演が行われますが、音楽と題材がバレエにとても適します。以前、オーストラリアバレエ団が日本で公演を行ったので観に行きましたが、実に楽しかったです。もっと取り上げられて良いと思います。

それでは愛聴盤のご紹介です。

81f6uxyo95l_ac_sl1500_ オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1960年録音/EMI盤) オールド・ファンにはお馴染みの定番ですが、現在聴いても幾らかゆったりしたテンポでスケールの大きい演奏に圧倒されます。実に立派でシンフォニーを聴くかのような聴き応えが有りますが、その反面この曲にしては重くもたれる気もしますハーパーとベイカーの歌は上手いですがやや厚化粧に感じます。録音もさすがに古くなった感はあります。

511fbx0m2rl_ac_ アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響(1976年録音/EMI盤) プレヴィンの適度に軽快でロマンティックな雰囲気造りが、この曲にピッタリです。ロンドン響も落ち着いた響きと安定感のある演奏で不満は有りません。コーラスに児童合唱を起用しているのが、下手だと批判されることもありますが、僕はメルヘン的で好きです。完全全曲版であるのも大きなポイントです。録音はどうしても幾らか鮮度が落ちた感は有ります。

41btqb3tdl_ac_ ギュンター・ヘルヴィッヒ指揮シュターツカぺレ・ベルリン(1976-77年録音/キング:シャルプラッテン原盤) 当時の東ドイツ陣営の演奏なので、管弦楽の響きは渋く、生真面目です。西側の華麗なメンデルスゾーンとは一線を画します。しかし古典音楽の形式感が強く感じられていて今聴くと逆に新鮮です。全般的に速いテンポで颯爽としていますが、オーケストラは非常に上手く、キレの良さの中にも、それはかとなくロマンティックな歌心を感じさせるのは、あのアーベントロートに師事したヘルヴィッヒだからでしょうか。録音も演奏に相応しい落ち着いた音造りです。

Previn_midsummer_nights アンドレ・プレヴィン指揮ウィーン・フィル(1986年録音/フィリップス盤) プレヴィンの再録音で、旧盤と基本解釈は変わりませんが、最大のポイントはウィーン・フィルの起用です。ことさら甘く演奏させている訳ではなくても弦楽や管楽の音の美しさはやはり
大きな魅力です。夜想曲のホルンにも魅了されます。コーラスはウィーン・ジュネス合唱団とありますが、少年合唱団よりも年齢が上のように聞こえます。録音は最新では有りませんが優れています。

Za81liitjyi7l_ac_sl1100_ クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィル(1995年録音/SONY盤) 大晦日恒例のベルリン・フィルのジルベスターコンサートのライブです。全編にナレーションが入っているので対訳を見ながら劇を味わうのは楽しいですが、音楽を何度も聴くうえでは邪魔に感じるかもしれません。石丸幹二による日本語版も制作されています。アバドの指揮はきびきびしたテンポで良いですが、オーケストラの編成が大きくマイクが遠めな為に、楽器の音のキレが悪く聞こえてしまいます。実際にはそんなことは無いのでしょうが、ライブの弊害です。演奏はメンデルスゾーンにしてはグラマラスに過ぎる気もしますが、表現は豊かですし雰囲気一杯ですので楽しめます。

ということで、完全全曲のプレヴィン/ロンドン響盤が自分のファースト・チョイスにはなりますが、唯一のウィーン・フィルによるプレヴィン盤、シュターツカぺレ・ベルリンのヘルヴィッヒ盤はオーケストラの音の魅力で上回ります。

なお、5曲の組曲としては一つだけ印象深い演奏が有ります。

61btjawwbrl_ac__20210225165401 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管(1967年録音/SONY盤) 速いテンポで颯爽と演奏していて、その完璧な合奏能力に舌を巻きます。録音もパートごとに透明感が有るので、響きが重ったるくなりません。妖精が想像されるような神秘性にはもしかしたら乏しいかもしれませんが、器楽的、純音楽的にこれほど素晴らしい演奏は知りません。是非一度聴いて頂きたいと思います。

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2019年5月 5日 (日)

メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64 名盤 ~メンコン大特集~

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平成から令和に変り空前の10連休ですが、この機会にメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴きまくりました。何故かこの曲は今まで記事にしたことが無かったのです。CDの数が多すぎるせいかもしれません。

メンデルゾーンの大傑作と言うだけでなく、古今のクラシック名曲の中の大輪の花、ヴァイオリン協奏曲ホ短調は、略して「メンコン」と呼ばれて世に広く親しまれています。ヴァイオ リン協奏曲のジャンルでは、個人的にはブラームス、ベートーヴェン、シベリウスなどを特に好みますが、この曲の持つロマンティシズムの極みの味わいは他には決して代えられないものです。第一楽章冒頭にいきなり登場するあの有名な主旋律や第二楽章の耽美的なまでの美しさは正に天才の業です。

ところが演奏においては、このような王道の曲は逆に難しくなります。楽譜を単に形にするだけならこの曲以上の難曲は幾らでもあります。しかしこれほど知られている名曲というのは、これまで大家の手によりさんざん演奏されていますので、音色の綺麗さや音程の正確さ、歌いまわしの流麗さなどの差が直ぐに分かってしまうからです。ベートーヴェンのそれとは幾らか要素が異なりますが、本当の難しさにおいて双璧だと思います。

ともあれこの曲はメンデルスゾーンの恵まれた人生そのもののように苦悩や暗さを感じさせない、甘いロマンティシズムと幸福感に満ち溢れた作品ですし、新しい令和の時代にこのような音楽を聴いて幸せな気分に浸るのも悪くありません。

それでは、改めて聴き直したCDを順にご紹介してみたいと思います。

51oj92zlpzl__sy355_ フリッツ・クライスラー独奏、レオ・ブレッヒ指揮ベルリン国立歌劇場管(1926年録音/EMI原盤、ナクソス盤) もう1世紀近く前の古い古い録音ですが、当時のSP盤からの復刻はことのほか音が明瞭で鑑賞に支障ありません。但し管弦楽の音はかなり薄いです。とにかくクライスラー本人のヴァイオリンでメンコンが聴けるのですから、歴史的な価値は大きいです。演奏は現代の若手のほうがよほど正確に弾けるのは確かですが、しかしこの柔らかな味わいは中々聴けるものではありません。第二楽章の甘く柔らかなボルタメントはどうでしょう!

517p6dgwbdl__sy355_ ヤッシャ・ハイフェッツ独奏、アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC響(1944年録音/RCA原盤、ナクソス盤) ハイフェッツ全盛期の魔人のようなヴァイオリンと鬼神トスカニーニががっぷり四つに組んだ唖然とする凄演です。第一楽章は快速テンポで飛ばしますが迫力が尋常でありません。第二楽章も随分速いのですが、その中で大きく歌い上げていて流石です。終楽章の速さについては驚異的です。こんな速さで弾いた人は後にも先にも有りません。フィナーレに向かっての怒涛のたたみ掛けには言葉が出ません。ライブなので聴衆の盛大な拍手も楽しめます。

51yh9srtaml__sx300_ ユーディ・メニューイン独奏、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1952年録音/EMI盤) だいぶ時代が新しくなりましたが、それでも70年近く前のモノラル録音です。メニューインの技巧が衰える前の録音ですので、安定した音で弾いています。ボルタメントが適度でツボにはまり、甘さも過剰に成りませんし、2楽章では感傷的な雰囲気がにじみ出ています。管弦楽はフルトヴェングラーの本領発揮出来る曲ではありませんが重厚で立派です。

Cci00030 ジョコンダ・デ・ヴィート独奏、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮トリノRAI響(1952年録音/IDI盤) トリノでのライブの放送録音で音質がかなり貧弱です。演奏はデ・ヴィートらしい一音一音やフレージングを大切に扱った好感の持てるものです。終楽章は一転して突き進み、気迫に満ちています。これでもう少し録音が良ければとつくづく思います。もしもフルトヴェングラーの指揮を聴きたい場合にはメニューイン盤で聴くに限ります。

Cci00030b イダ・ヘンデル独奏、ハンス・ミュラー=クレイ指揮シュトゥットガルト放送響(1953年録音/ヘンスラー盤) ヘンデルがまだ20代でのライブ録音です。音質はデ・ヴィート盤とは雲泥の差で優れています。技巧的には現代の基準ではアマい部分も散見されますが、歌心の有るフレージングは魅力的です。クレイ指揮の管弦楽もしっかりした演奏を聴かせます。

51b2yqwfql_sx355_ ヨハンナ・マルツィ独奏、パウル・クレツキ指揮フルハーモニア管(1955年録音/EMI盤) 古いファンには根強い人気のマルツィですが、彼女ならではの甘さを排除したメンコンです。背筋をピンと伸ばしたような気高い精神を感じます。この曲の演奏としては聴き手の好みが分かれるかもしれません。技術的には高いレベルに有ります。クレツキ指揮の管弦楽も安定しています。モノラルですが音質は良好です。

413f47tmt6l 渡辺茂夫独奏、上田仁指揮東京交響楽団(1955年録音/東芝EMI盤) 渡辺君は7歳でパガニーニを弾きこなし、神童と呼ばれて多くのプロオケと共演しました。ハイフェッツの推薦でジュリアード音楽院に入学して米国でも演奏が評判になりましたが、2年後に精神不安定から服毒自殺を図ってしまいました。命は取り留めたものの障害が残り、二度と演奏することは有りませんでした。これは留学する前にTBSが録音した記録です。この見事な演奏を聴くと、14歳でこれほどの演奏を聴かせる子供が現代でも果たしているかどうか。もしも事故無く成長していたらどうなっていたかと思わずにはいられません。正に悲劇です。

51cd0dcpsnl_sy355_ ダヴィド・オイストラフ独奏、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管(1955年録音/CBS盤) オイストラフはこの曲をステレオ録音で残さなかったのでモノラルです。1,2楽章を遅めのテンポで大きくたっぷりと歌い上げていて、さながら王者の貫禄です。しかしどうも分厚いステーキのような味わいで曲のイメージからはみ出します。メンデルスゾーンには幾らかでも爽やかさを残してほしいです。終楽章は速く気迫が溢れますが、オケの音が引っ込んだ録音バランスなのがマイナスです。

51hffygjmrl_1 クリスティアン・フェラス独奏、コンスタンティン・シルヴェストリ指揮フィルハーモニア管(1957年録音/EMI盤) ここからはステレオ録音になります。二十歳過ぎから天才として活躍したフェラスが24歳の時の録音ですが、爽やかな美音と高い技巧に感嘆します。テンポは比較的速めで淡々としていて、フレージングもおおむねサラリとしたものなので強い個性や濃厚なロマンティシズムの表出は有りませんが、品の良い音楽の香りが至る所から漂い来るようです。

Brahms_violin_con_02 ユーディ・メニューイン独奏、エフレム・クルツ指揮フィルハーモニア管(1958年録音/EMI盤) 6年前のフルトヴェングラー盤と比べると若干技巧の衰えを感じます。天才少年として余りに早く舞台に数多く上がり過ぎた代償だと言われます。音質はもちろんこちらが良好ですが、音楽そのものは6年前の演奏が優れます。指揮者の力量の違いも大きいでしょう。こちらも悪い演奏では無いですが、どちらかを選べと言われれば迷うことなくフルトヴェングラー盤を取ります。

51em1nccsgl__sl500_ アイザック・スターン独奏、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管(1958年録音/CBS盤) スターン全盛期のこの演奏は素晴らしいです。音楽のゆとりと感興の高さとが奇跡的なレベルで両立しています。スターンのハイポジションの美しさ、G線の音を割る迫力に魅了されます。管弦楽の立派さ、充実感も特筆されますので、この曲を何の過不足もなく味わい尽くせます。技術的にも音楽的にもこれほど完成度の高い演奏には中々お目にかかれないと思います。

316looeko2l__ac_ul640_ql65_ ヤッシャ・ハイフェッツ独奏、シャルル・ミュンシュ指揮ボストン響(1959年録音/RCA盤) ハイフェッツが58歳での録音ですが、この録音の半年後に事故で腰を痛めて演奏が激減しますので最後の輝きです。44年録音よりは遅くなりましたが、それでも一般の演奏よりは相当速いです。セッション録音のせいも有るのか、音の切れ味や凄みが和らいではいますがまだまだ魔人健在です。但しこの人の真の凄さを聴きたければ44年盤を勧めます。

51b2yqwfql_sx355_ ヨハンナ・マルツィ独奏、ハンス・ミュラー=クレイ指揮シュトゥットガルト放送響(1959年録音/ヘンスラー盤) マルツィにはライブ録音盤も有りますが、放送局のテープ音源なので同じモノラルながら音質はEMI盤を凌ぎます。演奏もライブでの傷は微細ですし、ソロもオーケストラも非常に安定しています。音楽の勢いや表現の豊かさ、感興の高さにおいてもこちらが上ですので、マルツィのメンコンとしてはこちらをお勧めしたいと思います。

814lnxyugl_sl1500_ ジノ・フランチェスカッティ独奏、ジョージ・セル指揮コロムビア響(1962年録音/CBS盤) ヴァイオリンの音色の美しさでは当代随一だったこの人のステレオ録音が残されたのは嬉しいです。速いテンポで流れるように進みますが、美音と洒落たニュアンスが一杯で惚れ惚れします。充分上手いですが精密さよりは味わいを重視するのも好ましいです。セル指揮の管弦楽もしっかりとした造形感を持ちピタリと合わせています。

51uwbpowiwl ミシェル・オークレール独奏、ロベルト・ワーグナー指揮インスブルック響(1963年録音/フィリップス盤)ティボーの弟子のオークレールはテクニック的には特に見るべきものは無いですが、いかにもパリジェンヌという小粋な歌い方や節回しが確かに魅力的です。日本の若手には是非こういうところを学んで欲しいと思います。ただこの演奏では指揮者の力量はともかくも、オーケストラがアマオケみたいと言っては言い過ぎですが、音の薄さがどうしても気に成ります。

51q02cn2l4l アルテュール・グリュミオー独奏、カール・シューリヒト指揮フランス国立放送管(1963年録音/Altus盤) 珍しい組み合わせの共演のライブですが、嬉しいことに良好なステレオ録音です。グリュミオーの美音が感じられます。けれども技術的に傷とも言えない些細な傷が案外所々に存在します。オケとのズレも何か所か有りますし、終楽章冒頭ではリズムが合っていません。グリュミオーの実演はいつもこんな感じだったのでしょうか。もう少し聴いて確かめてみたいです。

81dxu7xvzjl__sx355_ ヘンリク・シェリング独奏、アンタル・ドラティ指揮ロンドン響(1964年録音/マーキュリー盤) シェリングの三大B以外の録音はそれほど多くは無いと思いますが、「メンコン」も珍しい印象です。端正な美音が印象的ですが、どこをとってもハッタリの無い演奏なのでこの曲にしてはやや面白みに不足する感が無きにしも非ずです。もう少しロマンティシズムを醸し出してくれた方が良いように思います。ドラティの指揮にも同じことが言えます。

71pprasliql_sl1060_ アイザック・スターン独奏、レナード・バーンスタイン指揮イスラエル・フィル(1967年録音/SONY盤)。これは東西分断以後、初めて再統一されたエルサレムで再出発したイスラエル・フィルの歴史的なコンサートの記録です。スターンは実演にもかかわらず完璧な演奏で、更に歌いまわしの情感の深さが1958年盤を上回ります。バーンスタインの指揮も非常にドラマティックさが有ります。ですので1958年盤とどちらか片方のみを選択するのは困難です。それでも心情的には感動の深さでこちらの記念碑的ライブを取りたいところです。

51wjhflunzl__ss500_ ナタン・ミルシテイン独奏、クラウディオ・アバド指揮ウイーン・フィル(1972年録音/グラモフォン) ミルシテイン晩年の録音ですが、技巧は安定しており、比較的速めで子気味良く進む中で演奏の端々に気の利いた味わいやニュアンスを感じさせる辺りはやはり往年の大家の一人です。管弦楽がアバドとウイーン・フィルとあれば今更何をいわんやです。特に第二楽章ではソロとオケとが非常に美しく溶け合っています。

81rqqjkzjpl_sy355_ イツァ―ク・パールマン独奏、アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響(1972年録音/EMI盤) パールマンのまだ若い時代の録音ですが、美音と技巧が冴え渡ります。しかしこの演奏には聴き手を圧倒するような押しつけがましさは無く、第一楽章は遅いテンポで名旋律をたっぷり、ゆったり味合わせてくれますし、第二楽章では夢見るように優しく傍らに寄り添って来るようです。終楽章も煽り立てるのではなくリズミカルで自然な盛り上がりを聴かせます。プレヴィンの指揮と管弦楽も実に美しいです。

91ca63d7s3l__sl1500_ レオニード・コーガン独奏、ロリン・マゼール指揮ベルリン放送響(1974年録音/DENON盤) いかにもコーガンらしい、情緒に溺れずに、きりりと背筋を正すような立派な演奏です。曲の性格からも50年代の頃のあの快刀乱麻のごとき緊張感は見せませんが、音の切れ味と上手さは健在です。マゼールもオケをヴァイオリンにピタリと合わせて素晴らしいハーモニーを醸し出しています。決して無味乾燥な演奏ではありませんが、この曲に”甘さ”を求める人は向かないかもしれません。

51dsvqfs4ol アイザック・スターン独奏、小澤征爾指揮ボストン響(1980年録音/SONY盤) スターンの二度目のセッション録音に成ります。ライブも含めた過去二種の演奏と比べると技術的に少々衰えを見せています。もっとも他の奏者と比べればよほど上手いのですが、それまでが余りに完璧過ぎました。表現的にも取り立てて深みを増しているわけでは無いですし、小澤の指揮もアンサンブルは上手く合わせているのですが、余りにまとめ過ぎている為にとても美しいものの少々インパクトに欠けます。

4197tcsj9dl チョン・キョンファ独奏、シャルル・デュトワ指揮モントリオール響(1981年録音/DECCA盤) キョンファが70年代初めに録音したシベリウスやブルッフの演奏にはその素晴らしさに衝撃を受けました。それに比べるとこのメンデルスゾーンはそれほどのインパクトは有りません。彼女特有の鋭い切れ味を出すわけでも無く、この曲のロマンティシズムを押し出すわけでも無く、どことなく中途半端に聞こえます。それは恐らく曲との相性の問題ではないでしょうか。水準以上の良い演奏ではありますがメンコンの特別な名演には感じません。

144 アンネ=ゾフィー・ムター独奏、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1980年録音/グラモフォン盤) この録音の時にムターは17歳でした。彼女はカラヤンに気に入られて多くの録音を残しましたが、どれも完成された技術と音の美しさに驚かされました。このメンコンも同様です。しかし反面、音楽の奥深さやロマンティシズムを十全に出せているとは言い難く、全般的に一本調子に感じなくも有りません。こと音楽表現に関してはまだまだ未成熟だと感じます。

911oksahbwl__sl1500_ ナージャ・サレルノ=ソネンバーグ独奏、ジェラード・シュウォーツ指揮ニューヨーク室内響(1987年録音/EMI盤) ナージャがまだ二十代後半での録音です。ゆったりとしたテンポで大胆に歌い上げようとする意欲に好感が持てます。少なくとも前述のムターの演奏よりもずっと面白く聴けます。しかし表現意欲が徐々にしつこく感じられるのも事実です。二楽章も思い入れがたっぷりの割には胸に響きません。全般的にヴァイオリンの音も僅かですが粗く感じられます。

81pczsd46sl_sl1410_ マキシム・ヴェンゲーロフ独奏、クルト・マズア指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1993年録音/テルデック盤) ヴェンゲーロフの若い時代の録音ですが、決して歌い崩すことなく節度を保ってカッチリとした造形性を感じさせます。その点ではスターンの1958年盤に似ています。それでいて情緒的にも不足することが無いところも似ています。テクニック的にも最高レベルに位置しますし、マズアとゲヴァントハウスの響きも立派この上なく、最上のオーケストラサポートです。あえて難を言えば、ライブ的な高揚感には幾らか不足しているかもしれません。

Suwanai__1 諏訪内晶子独奏、ウラディーミル・アシュケナージ指揮チェコ・フィル(2000年録音/フィリップス盤) 諏訪内さんも貫禄の演奏を聴かせています。中庸の速さですが、高度な技巧で弾き切り、過度にロマンティックにならない節度ある歌い方が好ましいです。いかにも現代的な名演なのですが、このような演奏スタイルでは曲想的にシベリウスの方が向いているとは思います。アシュケナージ指揮チェコ・フィルは立派な響きで好サポートをしています。

51kuoh9xyl 五嶋みどり独奏、マリス・ヤンソンス指揮ベルリン・フィル(2003年録音/SONY盤) ベルリンでのライブ収録ですが、演奏の完成度はセッション録音に引けを取らないのは流石です。ヴァイオリンの音量も意図的にバランスを大きくされていないので生演奏の臨場感が心地よく感じられます。円熟した五嶋みどりが美しい音で入魂の演奏をしているのが良く感じられて感銘を受けます。しかし彼女は表情オーバーに弾くわけではなくあくまでも内面的な没入感を感じさせるという風でしょうか。

以上、名演奏は数多く有りますが、マイ・フェヴァリットをあえて選べば、本命は王道の極みのスターンのオーマンディ盤とバーンスタイン盤の両盤です。対抗としてはフランチェスカッティ/セル盤とパールマン/プレヴィン盤を上げます。大穴は壮絶なハイフェッツ/トスカニーニ盤で決まりで、これはむしろ大本命にしたいぐらいです。あとはメニューイン/フルトヴェングラーが捨て難いところです。もしも録音の音質優先で選びたいという方には諏訪内晶子盤と五嶋みどり盤がお薦めです。

<補足>スターンが余りに素晴らしいので、バーンスタインとのライブ盤と小澤征爾との再録音盤も聴きました。またグリュミオー/シューリヒト盤を書き漏らしていたのでそれぞれ記事中に加筆しました。更にはオークレール盤とヴェンゲーロフ盤を加筆しました。

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2017年4月 7日 (金)

メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第1番ニ短調op.49 名盤 ~メントリは1羽?~

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先日のルッツ・レスコヴィッツさん達のメンデルスゾーンのピアノ・トリオの名演奏の余韻がいまだに残っていて、手持ちのCDを改めて聴き直しています。

ところで、このピアノ三重奏曲第1番は演奏家の間では通称「メントリ」と呼ばれています。決してメンドリ(雌鶏)ではありません!

確かにこの曲はメンデルスゾーン円熟期の素晴らしい名作です。メンデルスゾーンには晩年に書かれたピアノ・トリオの第2番が有るのですが、「メントリ」と言えば第1番ということになっています。随分と不公平な扱いですが、大変美しく分り易いメロディが次から次へと出てくる第1番に人気が集中するのは容易に理解出来ます。ブラームスの書いたあの3曲のピアノ・トリオの含蓄の深さには及びませんが、このジャンルを代表する傑作の一つであることは間違いありません。

この曲は4楽章で構成されています。

第1楽章 アレグロ・モルト・アジタート 3/4拍子 チェロによりほの暗く美しい旋律が感情豊かに奏されて開始されます。旋律はヴァイオリンが引き継いで、そこにピアノが見事に絡み合い情熱的に進みます。その後いかにもメンデルスゾーンらしい甘く美しい曲想に変化して飽きさせません。終結部も壮大に盛り上がり、この曲の要である楽章です。

第2楽章 アンダンテ・コン・モート・トランクィロ 4/4拍子 第1楽章から一転して静けさと幸福感に覆われた極めて美しい音楽に変わります。正に「無言歌」といった風情です。

第3楽章 スケルツォ 6/8拍子 急速なスケルツォは、「真夏の夜の夢」の妖精たちが飛び回る光景そのままです。

第4楽章 フィナーレ:アレグロ・アッサイ・アパショナート 4/4拍子 エキゾチックな旋律とリズムが大変印象的で一度聴いたら忘れられないことでしょう。主題を繰り返すうちに徐々に感興が高まってゆき、やがてそれが爆発して最後は情熱的に盛り上がります。

それでは所有CD盤をご紹介します。

51ejw4igywlティボー(Vn)、カザルス(Vc)、コルトー(Pf)(1927年録音/EMI盤) SP録音時代に一世を風靡したトリオの名演奏です。自分は写真の海外盤のセットで聴いていますが、1枚物でも出ています。なにせに90年前の録音ですので音は貧弱です。しかしこの演奏から一杯に湧き上がる濃厚なロマンの香りは如何ばかりでしょう!こんな演奏が聴けていた時代が有ったのです。時代が変わり、生きている人間も変わり、演奏スタイルも変わりました。演奏にミスが有るか無いか、そんなことが演奏の評価を左右することのない古き良き時代。聴衆にとってはどちらが幸せなのでしょう。そんなことを改めて考えさせられる演奏です。一度はお聴きになられて欲しいです。

51uoqbiaoelシュナイダー(Vn)、カザルス(Vc)、ホルショフスキー(Pf)(1961年録音/CBSソニー盤) カザルスがホワイトハウスに招かれて演奏会を行いました。ケネディ大統領の御前演奏です。この日はアンコールで「鳥の歌」も演奏されました。共演したシュナイダーはブダペスト四重奏団の第2ヴァイオリン奏者ですが、大変な実力者にしてカザルスの盟友です。演奏はその気宇の大きさに圧倒されます。激しく気迫に溢れていてメンデルスゾーンの美感は確かに損なわれていますが、そんなことよりももっと大切な「真の音楽とは何か」ということを教えられるようです。モノラル録音で音質はクリアというわけには行きませんが、「歴史的」という名に恥じない物凄い演奏です。

61jxmpplyflスーク(Vn)、フッフロ(Vc)、パネンカ(Pf)(1966年録音/スプラフォン盤) スークのヴァイオリンは爽やかで清潔感に溢れますが、特に若い時代には音の線が細くすっきりとし過ぎているきらいが有りました。フッフロとパネンカも同質の傾向ですので、それが古典派やボヘミア物だと大いに魅力となりますが、ロマン派の音楽には幾らか物足り無さを感じてしまいます。このメンデルスゾーンも端正で誠実な演奏で好感が持てますが、もう少し艶や色気が欲しいところです。そうなると後述のスターン達の演奏が自分にとっては理想形に近いです。

510p5wluyel__sx425_スターン(Vn)、ローズ(Vc)、イストミン(Pf)(1966年録音/CBSソニー盤) スターンが大ヴァイオリニストの割には意外に華やかさに欠けるトリオでしたが、演奏は実に素晴らしいです。古典的な様式感、造形性を保っているので、派手さは受けませんが、スターンの精緻かつ音楽的な演奏とやはり実力者の二人とが相まって、非常にバランスの良い名演奏を繰り広げています。ある程度たっぷりとしたロマンティシズムも感じさせますので、スーク達のように物足り無さを感じさせることも有りません。もっともオーソドックスな名盤だと言えます。

91w8sr5qphl__sl1500_チョン・キョンファ(Vn)、トルトゥリエ(Vc)、プレヴィン(Pf)(1978年録音/EMI盤) 全盛期のキョンファのヴァイオリンが凄いです。一音一音に凄まじい切れと気迫が漲っていて圧巻です。音色は暗く甘さが無いので、通常のメンデルスゾーンのイメージとは少々異なります。その分トルトゥリエはいかにも大家らしくたっぷりとチェロを歌わせて全体が一本調子に陥るのを防いでいます。プレヴィンのピアノも健闘しています。非常に聴き応えの有る名演奏に違いありませんので是非お薦めしたいです。また、カップリングされたシューマンのトリオ第1番では音楽との距離はより密接にあると思います。

ということでマイ・フェイヴァリットはカザルス達のホワイトハウス・ライヴ盤、リファレンスにしたいスターン盤、個性的なチョン・キョンファ盤で、これらはことあるごとに聴きたくなります。

なお、ここには挙げていませんがムターがハレル、プレヴィンと共演したグラモフォン録音盤も3、4楽章など必要以上の快速なのでどうかとは思いますが、面白さは抜群です。

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2012年7月21日 (土)

メンデルスゾーン 交響曲第4番イ長調「イタリア」op.90 不滅の名盤

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メンデルスゾーンは一年前に、交響曲第3番「スコットランド」を記事にしましたが、それ以外にもヴァイオリン協奏曲や「真夏の夜の夢」という屈指の名曲が有りますね。それらと並んで、とても人気が有るのは交響曲第4番「イタリア」でしょう。個人的には「スコットランド」のほうが好きですが、「イタリア」の輝くばかりの生命力と躍動感は大変に魅力的です。

この曲が「イタリア」と呼ばれるのは、メンデルスゾーンがイタリア旅行中に作品を書き始めたことと、第4楽章にはイタリア舞曲の「サルタレロ」が使われているからです。

第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ どの楽章も魅力的ですが、白眉はやはり第1楽章ですね。木管の速いスタッカート伴奏に乗って、さっそうと登場する第1主題は夏の暑さを吹き飛ばす爽快感が有ります。うーん、イタリア!ティ・ア~モ!

第2楽章アンダンテ・コン・モト ほの暗く甘いメランコリックな歌がとても魅力的です。メンデルゾーンの面目躍如です。

第3楽章コン・モト・モデラート スケルツォに相当しますが、甘く柔らかく歌われる旋律が何とも素敵です。

第4楽章サルタレロ・プレスト イタリアの民族舞曲のサルタレロですが、これはメンデルスゾーンがローマのカーニバルで観た印象を曲にしたそうです。さすがはイタリア、情熱的ですねぇ。

実は、この曲の愛聴盤はごく限られています。オールド・ファンなら誰でもご存じの定番中の定番です。

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アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団(1954年録音/RCA盤) 

ギリシア彫刻のような頑強な造形に、炎のように燃え上がる情熱と甘く歌うカンタービレが同居していて、何度聴いても魅了されます。メンデルスゾーンの演奏としては少々武骨に過ぎて、もう少し柔らかさが欲しいかなと思わないでもありませんが、これを一たび聴き始めると、やはり有無を言わせない説得力を感じてしまいます。
1楽章の強靭に刻むリズムは、どこまでが曲本来の姿なのか、トスカニーニ固有の特徴なのか良く分りませんが、それが中間では突然微妙なルバートが現れてハッとさせられます。こういう名人芸はさすがトスカニーニです。終楽章も単に速さで押し切るのではなく、強靭なリズムに音楽の重さ(”重ったるい”のとは意味が異なります)と聴きごたえを与えてくれます。弦楽パートの切り裂くような凄みやティンパニの一打一打の気迫には、心底圧倒される思いです。古いモノラル録音ですが、トスカニーニ最晩年の録音ですので、当時の音質としては優れています。

僕は決して、よく言われるような「最初に聴いた演奏の刷り込み」というのはまず起こらないタイプなのですが、どの演奏を聴いてもトスカニーニを越えるようには感じられません。ただ、これが幾ら”不滅の名盤”だとしても、他にも良い演奏は有りますのでご紹介したいと思います。

Img_1039 グィド・カンテルリ指揮フィルハーモニア管(1955年録音/EMI盤) 古いモノラル盤ばかり続いて気が引けますが、この曲はやはりイタリア人の指揮者に向いているようです。早世したカンテルリがトスカニーニ盤の翌年に素晴らしい録音を残しています。トスカニーニほどの凄みは有りませんが、若々しい熱い情熱の迸りを感じます。しなやかな歌も魅力的です。音質はこの時代としてはまずます良好というところです。これはBOXセットで持っていますが、確かテスタメントから単独盤でも出ていた記憶が有ります。

91gqqjkh1zl_ac_sl1500_ オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1960年録音/EMI盤) あの素晴らしい第3番「スコットランド」と共に昔から人気が有りますが、こちらは1楽章の非常に遅いテンポには好みが分かれるところでしょう。しかし陽光輝くイタリア旅行は何も若者だけとは限らず、老齢夫婦がのんびりと旅するのも素敵だと思います。そうしてみるとこれもまた大変魅力的な演奏に感じます。当時のEMIの録音に古さは感じますが、鑑賞の妨げに成ることは有りません。

61btjawwbrl_ac_ ジョージ・セル指揮クリーヴランド管(1962年録音/SONY盤:コロムビア原盤) 極限まで追い込んだ精緻なアンサンブルと透明な響きがややクールですが、速いテンポも相まって非常に爽快感を覚えます。これはこれでメンデルスゾーンの音楽の一つの魅力を伝えていると思います。もちろん歌を忘れているわけでは無く、早春の爽やかさというところでしょうか。終楽章は一段と快速で、オーケストラの弦楽も管楽もその上手さに唖然とさせられます。

51mvh2mxyl_ac_ クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮ウィーン・フィル(1978年録音/DECCA盤) これは交響曲全集の中からの分売となります。当時ドホナーニは中堅指揮者として地味な存在でしたが、ここではウイーン・フィルという名器を得て中々の名演と成っています。1楽章では幾らか遅めのテンポで”イタリアの陽光輝く”とは行きませんが、その分2楽章や3楽章での美しい音と歌いまわしはえらく魅力的です。終楽章も躍動感が有り聴き応えが有ります。

41bfx8bh6rl_ac_ クラウス・テンシュテット指揮ベルリン・フィル(1980年録音/EMI盤) ロマン派の中でも古典派よりのスッキリとした響きの印象があるメンデルスゾーンですが、この演奏は編成が大きいのか、重厚な響きで大変立派な音楽になっています。それはテンシュテットだからか、それともベルリン・フィルだからか、いやいや両者だからです。最近の古楽楽器志向のファンなら卒倒しそうですが、ベルリン・フィル各奏者の鮮やかな妙技も聴けることから、これはこれで充分に楽しめます。

61qfkdabil_ac_ クラウディオ・アバド指揮ロンドン響(1984年録音/グラモフォン盤) アバドは若い頃にDECCAに同じロンドン響と録音していますが、これはグラモフォンへ全集録音に収められている二度目の録音と成ります。この楽団との相性は良く、それ感じさせるような名演となっています。3楽章の歌いまわしや4楽章の煽り立てるような熱量など音楽は素晴らしいです。ただマイク遠めの音録りの影響から、アンサンブルの精緻さにおいてはトスカニーニやセルのオーケストラのような凄みを感じません。

Ss81liitjyi7l_ac_sl1100 クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィル(1995年録音/SONY盤) これは大晦日恒例のベルリン・フィルのジルヴェスター・コンサートで「真夏の夜の夢」と共に演奏されたライブ録音です。世評では前述のロンドン響盤をしのぐとまで言われるようですが、この演奏は決してテンポ、演奏そのものが重いわけではないのですが、管弦楽の響きがどうにもグラマラスで、その点テンシュテット盤以上です。ですのでメンデルスゾーンとしては、むしろロンドン響盤を好みます。

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2011年8月18日 (木)

~サマースペシャル・名曲シリーズ~ メンデルスゾーン 交響曲第3番イ短調「スコットランド」 名盤

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今日もまあ暑かったですね。(大汗) でも、お盆を過ぎると夏ももうじき終わりだなぁと思います。昼間はまだまだ暑くても、朝なんかは気温が段々に下がってくるからです。さて、スコットランドにちなんだ曲が続いたところで、もう一曲聴きましょう。とすれば、やはりこの曲かな。

メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」です。メンデルスゾーンは20歳の時に初めてイギリスに渡り、スコットランド地方を旅しました。その時にこの曲の作曲を始めましたが、途中で中断したこともあって、全曲が完成したのは、その13年後の33歳になった時でした。この人には第4番「イタリア」や第5番「宗教改革」が有りますが、実際には、この第3番が最後に完成した交響曲です。番号は出版された順につけられたからです。ですので、この交響曲は、青春の息吹のような爽やかさと、円熟した作風とが上手く同居しています。曲のタイトルは、もちろんスコットランド旅行中に書き始めたからです。

第1楽章アンダンテ・コンモート 悲哀に溢れた幻想的で長い序奏部分は荒れてしまった古城を想わせます。まるで滝廉太郎の「荒城の月」みたいです。そして序奏が終わって主部への移り方は、実に美しく素晴らしいです。徐々にクレッシェンドして盛り上ってゆきますが、ここは北海の荒々しい海を想わせます。

第2楽章ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポはスケルツォ楽章にあたります。スコットランド民謡を思わせるような軽快な主題がとても魅力的ですね。

第3楽章アダージョはメンデルスゾーンの魅力全開の、息の長いメロディが非常に美しくロマンティックです。中間部の峻厳な雰囲気も素晴らしいです。

第4楽章アレグロ・ヴィヴァッチェシモでは、音楽が情熱的に躍動しながら行進しますが、明るさと同時にどこか暗さを感じさせます。また幾らか攻撃的なようにも感じます。長い主部が終わると終結部では、全く新しい主題によって壮大で高らかに勝利の歌が歌われて曲を結びます。

この曲の愛聴盤ですが、古いファンなら誰でもご存じの定番が中心です。ともかくはご紹介します。

417jhqpb0wl__sl500_aa300_ ペーター・マーク指揮ロンドン響(1957年録音/DECCA盤) マークは日本のオケにも度々客演しましたし、この演奏もかつては高く評価されていました。けれども最近ではすっかり忘れ去られた感が有ります。素晴らしい指揮者なので非常に残念です。この演奏を改めて聴いてみると、本当に若々しく瑞々しい演奏なので、若きメンデルスゾーンの異国への旅における喜びが余すところなく表現されていると思います。DECCAの録音も年代を感じさせないほどに秀れているので不満は感じません。

91gqqjkh1zl_ac_sl1500_ オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管(1960年録音/EMI盤) 昔から「スコットランド」と言えばクレンペラーと言われるほどの定番中の定番です。遅いテンポでゆったりと構えているので、メンデルスゾーンの持つ音楽の明るさが減衰している印象です。常にクールで熱く成り過ぎないのです。でも、この曲にはむしろ適していると思います。特に第2楽章の遅さは、このテンポだからこそ、あのチャーミングなメロディが生きるのだと思います。他の部分も甘さ控えめで落ち着いた大人の魅力です。こんなメンデルスゾーンは、ちょっと他の指揮者には真似が出来ないでしょう。

3198070030 オットー・クレンペラー指揮バイエルン放送響(1969年録音/EMI盤) ミュンヘンでのライブ録音ですが、オーケストラは優秀ですし、スタジオ盤を上回るほどの出来栄えです。ところが、ひとつ大きな問題が有ります。クレンペラーは、この曲の終結部が気に入らなかったようで、自分で勝手にコーダを書き換えてしまいました。それは短調のまま静かに終わるので、確かに面白いと思います。でもメンデルスゾーンが13年かけて書き上げたものに手を加えるというのは、如何なものかなぁという気がします。聴き慣れているせいもあるでしょうが、個人的にも通常版のコーダは好きです。従って、これはあくまでもセカンドチョイスとせざるを得ません。

51mvh2mxyl_ac_ クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮ウィーン・フィル(1976年録音/DECCA盤) これは交響曲全集の中からの分売となります。当時ドホナーニは中堅指揮者として地味な存在でしたが、ここではウィーン・フィルという名器を得て名演と成っています。導入部からして瑞々しい美音に耳を奪われます。主部に入っても音楽の深みはともかく、美音と響きの厚さに魅了されます。2楽章では太鼓と金管がややうるさいですが、木管と弦楽の上手さと味わいが最高です。3楽章の美しさにももはや言葉は有りません。終楽章は切迫感と所々の楽器の仕掛けがラトルっぽいですが(笑)聴いていて楽しくは有ります。

61qfkdabil_ac_ クラウディオ・アバド指揮ロンドン響(1984年録音/グラモフォン盤) アバドは若い頃にDECCAに同じロンドン響と録音していますが、これはグラモフォンへ全集録音に収められている二度目の録音と成ります。この楽団との相性は良かったようで、とても緻密なアンサンブルを造り上げています。この曲でも細部まで神経を行き届かせて音楽を仕上げていますが、この曲の持つ北海の厳しさや虚無感の表出に於いては僅かながら物足りないように感じます。

ということで、音楽的にはクレンペラー盤が一番ですが、オーケストラの音色の美しさも含めるとドホナーニ盤がそれに並びます。マーク盤も捨てがたいところです。

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