ブルックナー(交響曲第7番~9番)

2016年12月27日 (火)

ブルックナー 交響曲第7番 クリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデン ~今年聴いたCDから~

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さて、”今年聴いたCD”の締めくくりはクリスティアン・ティーレマンのブルックナーの交響曲第7番です。

この2枚組のCDがリリースされたのは今年の夏ですが、1枚目に収められているのは2012年9月のシュターツカペレ・ドレスデンへのティーレマンの首席指揮者就任祝いの演奏会でのブルックナー交響曲第7番、そして2枚目には2013年5月のワーグナー生誕200周年記念特別演奏会でのワーグナーの男声合唱とオーケストラのための『使徒の愛餐』が収められています。

ティーレマンは押しも押されぬ当代随一の人気指揮者ですが、伝統的なドイツ音楽の継承者として他には考えられない存在です。この人は常に遅めのテンポでスケールの大きい音楽を創り出していて、現代流行りの速いテンポによる切れの良さを求めた演奏スタイルに背を向けたところが逆にファンに支持される理由なのでしょう。

ですのでこの人が最も得意とするのは当然後期ロマン派ですし、若いころからオペラハウスの現場で鍛えられたワーグナーが一番です。次いでリヒャルト・シュトラウスやアントン・ブルックナーが上げられます。ブラームスやベートーヴェンもやはりスケールが大きく素晴らしいものの、このような古典的造形性を持つ音楽ではテンポを不自然に変えてしまう悪い癖が時々現れてしまう為に手放しでは称賛出来ません。

ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンはこの演奏会の直ぐ後に行われた日本ツアーでも第7番を演奏していて、僕は残念ながら聴いていませんが評判は凄く良かったようです。

このCDの音質については、柔らかく美しいもののホールトーンの成分がやや過多に感じられて細部の分離に幾らか不満を感じます。編集段階で多少残響を付加しているのかもしれませんね。ただ、その代わり何気なく聞いている分には会場で生で聴いているような心地良さが感じられます。強音には僅かに歪み成分が混じるようですが気にするほどではありません。

肝心の演奏の基本テンポは遅めですし、呼吸の深さも妥当です。チェリビダッケのような極度に遅いテンポでは呼吸困難に陥る自分には丁度良いレベルです。

オーケストラについてはさしものシュターツカペレ・ドレスデンといえどもライブでは完璧とは言えません。しかしこれもCDではなく会場で聴いていれば果たして気になるかどうかという程度ですし、ライブでこれだけの演奏が可能なのはやはり凄いことです。これを名だたるセッション録音の名盤と比べたら瑕だらけ、ライブ盤として割り切って聴けば文句なし、そんなところでしょうか。

何だか褒めているようなケチを付けているような分かりにくい感想ですみません。自分としても良く分からないまま何度も繰り返して聴いています。それで最後まで聞き通せるのですから結局は気に入っているのでしょうね。特に終楽章は集結部に向かってじっくりと腰を落して立派に構えていて、壮麗な金管も少しもうるささを感じずに充実した音楽を味わえる稀有な名演奏だと思います。

『使徒の愛餐』は、「男性合唱と大オーケストラのための聖書の情景」と副題が付いていて、ワーグナーがドレスデンの音楽監督となった頃に書かれた作品で、1843年にワーグナーの指揮により100人のオーケストラと1200人の合唱によりフラウエン(聖母)教会で初演された記録が残っているそうです。

曲は聖霊降臨の場面に基づいた内容で、前半はアカペラによって壮麗に歌われ、後半ではオーケストラが加わって「パルジファル」の世界を想わせます。元々この曲はCDが少ないので、ワーグナー記念の年に初演の場所で行われた演奏会録音は貴重ですね。

【収録情報】
Disc1 [69:58]
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調 WAB107 (1944年、ハース版)
 録音時期:2012年9月2日
 録音場所:ドレスデン、ゼンパーオーパー

Disc2 [29:47]
ワーグナー:使徒の愛餐 WWV69
 録音時期:2013年5月18日
 録音場所:ドレスデン、聖母教会

 ドレスデン国立歌劇場合唱団 (Disc2)
 チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー合唱団 (Disc2)
 ライプツィヒMDR放送合唱団 (Disc2)
 ドレスデン・フィルハーモニー合唱団 (Disc2)
 ドレスデン室内合唱団 (Disc2)

 シュターツカペレ・ドレスデン(演奏)
 クリスティアン・ティーレマン(指揮)

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ブルックナー 交響曲第7番 名盤

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2012年2月16日 (木)

ブルックナー 交響曲第9番 サヴァリッシュ/ウイーン・フィルのライブ盤

このブログを読まれていると、古い録音盤が大半なので、さぞや古い奴だとお思いでしょう。それは否定できませんが(苦笑)、大きな理由は新盤が高価だからです。価格と感動は決して正比例はしませんので、どうしてもコストパフォーマンスの高い古いCDを、それも中古店で購入することが多くなります。

まあ、そうは言いましても新盤を聴きたいと思うこともあります。そんな新盤の試聴記として「新盤アワー」のスタートです。

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今回は、最新の録音ではありませんが、Altusから昨年12月にリリースされたCDです。NHK交響楽団を約40年間に渡り指揮して、日本の音楽ファンに大変親しまれましたが、すでに現役を引退した、ウォルフガング・サヴァリッシュさんがザルツブルク音楽祭でウイーン・フィルを指揮したブルックナーの交響曲第9番です。これは1983年のライブ録音です。(ALT222/3)

このCDは、何といってもオーケストラがウイーン・フィルです。出身のミュンヘンの楽団やウイーン交響楽団を指揮する機会が多かったサヴァリッシュさんは、ウイーン・フィルからずいぶんと熱望されていたにもかかわらず、指揮台に登った回数はかなり少なかったそうです。

サヴァリッシュさんは、ウイーン交響楽団からブルックナー・メダルを授与されたほどですので、ブルックナーは得意のはずです。けれどもCDにはほとんどめぼしいものが見当たらず、実際に聴いた記憶が有りません。N響の定期でも取り上げていたこととは思いますが、これもまた記憶が定かではありません。そんな中で、ブルックナー最晩年の傑作、交響曲第9番をウイーン・フィルとの演奏で聴くことが出来るので、どうしても聴いてみたくなりました。

それでは、演奏を聴いてみましょう。

第1楽章冒頭のトゥッティが力強く奏されます。幾らか荒々しいほどです。その後のピチカートはあっさりとしていますが、弦楽で主題が歌われる部分では、テンポが速めです。呼吸が浅いというほどではありません。テンポは速めですが、歌いまわしが大きく、彫が深い印象です。この辺りは非常に遅いテンポで息がし辛くなるチェリビダッケとはまるで正反対です。後半のフォルテの音は荒々しいほどに迫力が有り、必ずしも美しさを意識して響せてはいません。カラヤンが指揮したライブCDのような騒々しさは感じませんが、相当に壮絶な印象です。

第2楽章はかなり速く、何かに追い立てられているような緊迫感があります。金管もティンパニも強奏強打されて凄まじいかぎりですが、悪く言えば幾らかドタバタ感が残ります。中間部はウイーン・フィルとしては標準的な美しさで、寂寥感の表出も普通という感じです。

第3楽章も前半のトゥッティが迫力充分ですが、やはり無機的なうるささは感じません。その後に押し寄せるであろうドラマティックな演奏を予感させます。果たして、感情一杯に大きく歌わせますが、ブルックナー特有のはかなさとか、この世の終わりのような雰囲気はそれほど強く感じさせません。どちらか言えば現世的な演奏かもしれません。終結部は壮大に盛り上がって聴きごたえ充分です。

まとめてみると、ヴァントやチェリビダッケのようにひたすらハーモニーを整えて、響きを豊かに膨らませるようなタイプのブルックナーでは有りません。しいて言えばヨッフムや、同じN響にゆかりの深いマタチッチのように豪快タイプの演奏です。それも相当にドラマティックです。けれども、ブルックナーの本質から外れているようには少しも感じられず、中々にユニークな名演奏だと思います。少なくとも自分にとっては、シューリヒト/ウイーン・フィル盤やヨッフム/ミュンヘン・フィル盤のような奇跡的な名演奏には及びませんが、この個性的なブルックナーは、時々取り出して聴きたくなるような、ある種の「毒」を持っている気がします。

録音は極めて明瞭で分離が良いです。雰囲気を感じる音ではありませんが、コンサート会場の比較的ステージ寄りの席で聴いているような臨場感が有って楽しめます。

<過去記事>ブルックナー 交響曲第9番 名盤

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2010年8月13日 (金)

ブルックナー 交響曲弟7番 ベーム&チェリビダッケのミュンヘン・ライブ盤

実は、随分前にブルックナーの第7番のCDを二つ購入していました。一つはカール・ベームとバイエルン放送響の演奏です。もう一つはチェリビダッケとミュンヘン・フィルの演奏です。録音時期は17年も離れていますが、ベーム/バイエルンの会場はヘラクレス・ザール、チェリビダッケ/ミュンヘンはガスタイク・ホールと、どちらも同じミュンヘンのコンサート・ホールでのライブ録音です。好対照の両者の演奏ですが、同曲の旧記事に書き加えましたので、ご興味が有りましたらご覧になられてください。

<旧記事>
「ブルックナー 交響曲第7番 名盤」

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2010年5月14日 (金)

ブルックナー 交響曲第9番ニ短調 名盤

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ブルックナーは最後の交響曲である第9番を第3楽章まで書き上げましたが、完成をさせることが出来ずにこの世を去りました。終楽章には巨大なフーガ楽章を置こうと考えていたようです。けれども、この曲は未完成であるにもかかわらず、音楽のとてつもない深遠さによって圧倒的な存在感を与えています。幸いなのは第3楽章アダージョが、あたかも完成された曲の終結部のように感じられることです。この楽章までを聴き終わった後に少しも不自然さを感じずに済みます。むしろ、この楽章に続くのにふさわしい音楽が果たして存在し得るかどうか疑問に感じてしまいます。もしや未完成に終わったのは、ブルックナーの命の時間切れの為ではなく、人智では到底作曲が不可能だったからなのではないでしょうか。

それにしても、この第9交響曲はとんでもない曲です。これはもう音楽であって音楽でない、とてもこの世界のものとは思えない、宇宙そのもののような印象です。初めてこの曲を聴いた時には、遠い宇宙の果てに一瞬にしてワープさせられたような感覚に陥りました。音楽を聴いていて、そんな体験をしたのは、後にも先にもこの曲のみです。
第1楽章の導入部は真に圧倒的で、これほどまでに印象的なファンファーレはリヒャルト・シュトラウスの「ツアラトゥストラはかく語りき」ぐらいしか思いつきません。正にカオスの中に生れた宇宙のビッグバンです。そして宇宙の鳴動のような第2楽章を経て、第3楽章アダージョの終結部のカタルシスが過ぎ去ったあとに訪れる静寂は、天国的というよりも、全てが「無」に帰ってしまったかのごとき印象を与えられます。

この曲を鑑賞して「愉しむ」ことはなかなか難しいかと思います。余りに音楽が厳し過ぎるからです。けれども、この曲に真摯に向きあった時には、とてつもない感動が得られます。これほどの音楽に匹敵するのは、交響曲に限定すれば、マーラーの9番、ブルックナーの8番、ベートーヴェンの第九ぐらいではないでしょうか。

ところで、僕は大学生の時にこの曲を演奏した経験が有ります。ジュネス・コンサートで、指揮は山岡重信氏、会場はNHKホールでした。大学選抜のメンバーですが、もちろんアマチュアです。前の年にはマーラーの「復活」を演奏しましたが、ブルックナーのほうが音楽にするのが遙かに難しいと感じました。そのときに思ったことは、『アマチュアがブルックナーを演奏するのは考えものだ』ということです。

それはさておき、僕がこれまで接することができた生演奏のベストとしては、ギュンター・ヴァントが2000年に北ドイツ放送響と来日して行なったコンサートです。ヴァントの最後の日本ツアーでブルックナーの9番を聴けたことは本当に幸運でした。

愛聴盤については、昔からいろいろな録音を聴いてきましたが、それらを順にご紹介してみます。

Brucknerknapハンス・クナッパーツブッシュ指揮ベルリン・フィル(1950年録音/Music & arts盤) クナの所有盤はこのベルリン・フィル盤のみです。モノラルですし古いライブ録音で音質はお世辞にも良質とは言えません。演奏については随所がデフォルメされた相当にクナの体臭を強く感じるもので、ブルックナーの本質からは外れていると思っています。ロマンティシズムに溢れた濃厚な表情付けが面白いことは面白いのですが聴後にブルックナーを味わったという喜びは感じません。これは筋金入りのクナファンのみが満足できる演奏だと思います。

51ckzaa796l__sl500_aa300_ ヨゼフ・カイルベルト指揮ハンブルク国立フィル(1956年録音/テレフンケン盤) 僕がブルックナーを聴き始めた頃にLP盤で愛聴した演奏です。オケは技術的には荒さがありますが、古色蒼然とした音色は現在聴くととても魅力的です。失われたドイツの響きが聞こえてきます。カイルベルトも質実剛健な指揮ぶりで、特にスケルツォが素晴らしく、厳格に刻むリズムには凄みを感じます。1、2楽章はテンポがやや速めに感じますが、味わい深さはなかなか有ります。

Buru9_schu カール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1961年録音/EMI盤) 僕がブルックナーに目覚めた演奏です。初めはもちろんLP盤でした。冒頭の音から衝撃的でした。ことさらに大げさでは無いのに、完璧に溶け合った響きがどこまでも大きく広がります。表情はどこをとっても実に自然で流れるようです。特に1楽章が完璧といって良く、単に「音楽」を聴いているのでなく、宇宙を感じることのできる、最高のブルックナーです。2楽章も透徹し切った、真に厳しい演奏です。3楽章の美しさは比類が無いほどですが、スケールの大きさという点で幾らかの物足りなさを感じる方もいるかもしれません。

Sss0007 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチッヒ放送響(1962年録音/WEITBLICK盤) ステレオ録音とありますがモノラルだと思います。コンヴィチュニーの無骨で豪快なスタイルは、手兵であったゲヴァントハウス管のときと変わりませんが、時折見せるロマンティックな表情と造形の乱れに古めかしさを感じます。この曲は本当に演奏が難しいので、一昔前の演奏には造形が崩れているものが多く、なかなか良いものが有りません。この演奏は限界ぎりぎりで、魅力と抵抗感が半々というところです。

1197111145 オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィル(1964年録音/グラモフォン盤) この演奏もLP盤でよく聴きました。ベルリンフィルがまだまだドイツ的な暗い音色を残しているのが嬉しいです。ハンブルク・フィルやライプチッヒ放送響と比べてもオケの上手さはずっと上ですし、ヨッフムの指揮は豪快で、細部にこだわるよりも大きな流れに乗ったような勢いを感じます。1楽章の終結部のたたみかけるような迫力や3楽章後半のカタルシスも壮絶です。後年のドレスデン盤も有りますが、この旧盤も忘れることはできません。

186 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1966年録音/グラモフォン盤) ヨッフム盤から僅か2年後に、グラモフォンは再びベルリン・フィルでこの曲を録音しました。今では考えられないような音楽産業全盛期の時代です。ベルリンフィルは70年代から急速に音が明るくなりますので、その前の貴重なドイツ的な音色を味わえます。スケルツォの重厚な低弦も惚れ惚れします。トゥッティではヨッフム以上にオケを鳴らしていますが、過ぎたるは及ばざるが如しで、ヨッフム盤のほうが美しさを感じます。

Buru9_krajan_wien ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル(1967年録音/グラモフォン盤) ウイーン・フィル150周年シリーズの中の1枚は、カラヤンのライブ録音です。ライブという条件が今こうしてCDで聴いてしまうと必ずしも成功しているとは思えません。ティンパニーの強打は許せるとしても、金管がフォルテで力むあまりに響きが汚いのです。ウイーン・フィルとは思えないほどヒステリックに聞こえます。ベルリンPOとのスタジオ録音でも似た傾向でしたが、ライブではそれに輪をかけています。弦楽に関しては余り神秘性は出ていないものの、ロマンティックによく歌っていて悪くありません。  

00000698318 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1978年録音/EMI盤) ヨッフムはベルリン・フィルとのグラモフィン盤が相当に豪快な演奏でしたが、ドレスデンとの再録音盤も、テンポや表現はよく似かよっています。但し荒々しさが過ぎて、美感を損ねている部分がしばしば有ります。トゥッティでの金管の音が、耳にうるさく感じられてしまいます。しばしば大胆なアッチェレランドを見せるのも、ヨッフムの壮年期までの特徴ですが、それが往々にしてスケール感を損うことがあります。ベルリン盤とは大きな差はありませんが、どちらかいうとベルリン盤を好むかもしれません。

3202041015 ロブロ・フォン・マタチッチ指揮チェコ・フィル(1980年録音/スプラフォン盤) マタチッチ/チェコ・フィルのブルックナーといえば67年の7番、70年の5番という名盤を生んだにもかかわらず、録音がストップしてしまいました。唯一9番が10年後にライブ録音されました。ライブとは思えないほどの完成度の高さです。1、3楽章での少しもうるささを感じさせないオケの鳴らしぶりはさすがです。但しスケルツォは意外におとなしい印象です。84年にもウイーン響とのライブ盤が有りますが、僕はチェコ・フィル盤を好みます。

Buru9_litner972 フェルディナント・ライトナー指揮シュットゥットガルト放送響(1983年録音/ヘンスラー盤) ライトナーはかつてN響を振っていたので、日本のオールド・ファンには懐かしい名前でしょう。一方、録音は伴奏指揮がほとんどなので、若い世代の方には馴染みが薄いと思います。そんなこの人の大曲のライブ演奏です。スケールの大きさに驚きますが、むしろ印象的なのは遅い部分のゆったりとした自然な歌わせ方です。なんと美しいのでしょうか。欠点はトゥッティでの金管強奏がやはりうるさく耳につくことです。それ以外が見事なので非常に残念です。

Img_214390_34269880_0 オイゲン・ヨッフム指揮ミュンヘン・フィル(1983年録音/WEITBLICK盤) ヨッフムのブル9には、グラモフォン、EMIのスタジオ盤の他に78年のベルリン・フィルとのライブ盤も有りますが、それらの中で最も素晴らしいのがこのミュンヘンでのライブです。海賊盤では前から出ていましたが、3年前に正規音源が出た時にはとうとうシューリヒトに匹敵する名盤が登場したかと心が躍りました。ミュンヘン・フィルも絶好調ですが、特に1楽章の第1主題以降や3楽章の主題部での、大波が何度も何度も繰り返してくるような大きな歌には心の底から感動させられます。深みのあるオーケストラの響きも大変に魅力的です。

Buru9_kube ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1985年録音/Orfeo盤) クーベリックのブルックナーは金管のうるささが気になることがよく有りますが、この演奏では全然感じません。けれども決して大人しいわけではなく、クーベリックらしく燃焼した演奏です。ようするにフォルテでの楽器の音量バランスが良いのです。スケールも大きいですし、適度にロマンティックな味わいや美しさも持ち合わせていて、大変に魅力的です。正規音源の録音も優れているので、自分のコレクションからは外せない1枚です。

478858e30ad04663a620ba93877f29bd カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1988年録音/グラモフォン盤) 全体を通して相当遅いテンポで粘ってよく歌うので、悪く言えばしつこい演奏です。以前はこの演奏は嫌いでした。現在でも決して好きではないのですが、齢をとって許容の巾がユルくなったのか(笑)、それなりに愉しむことができます。カンタービレを過度に効かせたフレージングに音楽の「厳しさ」は薄れているかもしれません。ですがウイーン・フィルの美しい音を生かした演奏にゆったりと浸かるのも悪くはありません。終楽章のカタルシスは凄まじさの限りです。

Albrecht_bruckner_9_min ゲルト・アルブレヒト指揮チェコ・フィル(1994年録音/CANYON盤) アルブレヒトはかつて読売日響の常任をしていたので日本ではお馴染みの指揮者です。CANYONへは8番も録音していますが、それは腰の軽過ぎる演奏で好みませんでした。ところがこの9番は中々落ち着いて良い演奏です。全体的に凝縮された厳しさは全く無く、とても柔和な印象ですが、ニュアンスの変化が豊かで、しかもツボにはまっているので思わず惹かれます。チェコ・フィルも少しも機能的でなく素朴で、とても好感を覚えます。思わぬ掘り出し物の演奏です。 

1196090920 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1995年録音/DECCA盤) ゲヴァントハウス管との全集の新録音を終えたブロムシュテットですが、これは旧録音になります。ドイツ的な武骨さを残したオーケストラの響きが魅力です。フォルテシモの豪放で分厚い音がとても素晴らしいです。ブロムシュテットの指揮はオーソドックスで目新しいものは有りませんし、部分的にはもう少し歌わせて欲しい気もしますが、その実直さがこの人の美徳です。聴き終わった後には不思議と充実感が残ります。

Cheli_buru9 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1995年録音/EMI盤) チェリビダッケ最晩年のライブですが、演奏はこの人のいつもの「勝利の方程式」通りです。2楽章、3楽章では呼吸が止まるぐらいに遅いテンポで、深淵長大な世界を創り上げます。熱烈なファンにはこたえられないでしょうが、残念ながら僕にとっては同じミュンヘン・フィルを指揮したヨッフムのような感動は得られません。それでも金管が強奏して騒々しく感じないのは、さすがにチェリビダッケです。

Bru9_juri123 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シュットゥットガルト放送響(1996年録音/ヘンスラー盤) ウイーン・フィル盤から6年後の演奏ですが、ライブの為かテンポは多少速めです。フレージングに効かせるカンタービレもウイーン・フィルよりは薄めの印象です。ですので逆に音楽の「厳しさ」は増した気がします。このあたりの受止めかたは人によって変わると思います。トゥッティでの金管もこの演奏の方が抑制が効いていて美しさを感じます。ですので個人的には全体としてウイーン・フィル盤よりもこちらの演奏を好みます。録音も優秀です。

Ph06045 ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘン・フィル(1998年録音/Profile盤) ミュンヘンでのライブ演奏です。当然同じ晩年のベルリン・フィルとのライブ盤との比較になるのですが、これまで何度か書いたとおり、ベルリン・フィルは上手くても音が華やか過ぎるので余り好みません。ミュンヘン・フィルの音も明るいのですが、野趣の趣を僅かに残しているので好きです。但し強奏部分では音がやや荒れてうるささを感じます。各主題は遅いテンポで歌われますが、フレーズのつながりにいまひとつ流れの悪さを感じます。ブルックナー指揮職人の人間国宝にしてはやや不満が残ります。

Img_1023790_20551577_0 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(2000年録音/RCA盤) 「ヴァントが街にやってきた」演奏です。街というのは東京初台のオペラシティですが、この時の演奏は本当に素晴らしかったです。北ドイツ放送響の音は色彩が暗くモノトーンのようなのですが、この曲に正にぴったりでした。この録音は実際の音をかなり忠実に捉えていると思います。金管の強奏では分厚く鳴り響いてもうるささを感じません。それにフレージングの流れの良さもミュンヘン・フィル盤よりも上だと思います。3楽章では神の光を見たような気さえしました。この演奏を生で聴けたことは一生の宝です。

Oc218 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/ザール・ブリュッケン放送響(2001録音/OEHMS盤) 柔らかく音が溶け合った良い録音です。弦楽器は非常にしなやかで美しいですし、管がそれに上手く乗っかって、とても美しい響きを生み出しています。いたるところにハッとするアクセントや、音のバランスの変化、間合いが見られて飽きません。職人技を120%出し切った演奏ですが、聴いているうちにそれが段々としつこく感じてくるかもしれません。とは言え、この演奏はスクロヴァチェフスキ・ファンならずとも一聴の価値があると思います。

この曲は不思議と上手いオーケストラが普通に演奏すると、どれも標準点に達します。意外と差が出にくいのです。けれども、自分が心底素晴らしいと思っている演奏を選ぶとすれば、迷うことなくシューリヒト/ウイーン・フィルのEMI盤とヨッフム/ミュンヘン・フィルのライブ盤の二つが双璧です。それにもう一つ加えるとすれば、ヴァント/北ドイツ放送響の日本ライブ盤です。

毎回、新しい記事を書くときには手持ちのCDを全部聴き直してみることにしているのですが、今回は疲れました。この曲はそう続けて聴けるものではありません。それほど集中力が要求されます。次回はマーラーの第9。またまたしんどそうです。

<補足>
ブロムシュテット/ゲヴァントハウス管盤クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィル盤を追記しました。

<関連記事>
ブルックナー 交響曲第9番 サヴァリッシュ/ウイーン・フィルのライブ盤

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2010年4月25日 (日)

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調 名盤

1214769634 ブルックナーは交響曲を第9番まで書きましたが、その第9番は未完成に終わっていますので、完成出来た最後の交響曲は第8番になります。それにしてもブルックナーの後期の作品は、もはや一般的な音楽の概念を超越してしまい、まるで「神の啓示」か、あるいは「自然界の創造物」であるかのような印象を与えます。ブルックナーは自分の作品の中で、間違いなく「神」を見ていたのだと思います。とりわけ曲の規模の大きさと内容の充実さから言っても第8番は、仮にマーラーの「千人の交響曲」を東の横綱とすれば、正に西の横綱というところでしょう。

第7番までの作品は当時の楽壇で決して大成功を収めたわけでは有りませんでしたし、ブルックナーの相変わらずの楽譜修正癖から、この8番も作曲着手から初演までに8年間を要しました。ですので、晴れてウイーンにおいてフィルハーモニーの演奏で行われた初演が大成功を収めたことをブルックナーは心底喜んだそうです。

ゆったりと静かに始まり、徐々に天地が創造されるかのように徐々に盛り上がる第1楽章アレグロモデラートからして素晴らしいですが、巨大な宇宙の乱舞のごとき第2楽章スケルツォも非常に魅力的です。そして深遠極まり無いほどの美しさの第3楽章アダージョに至って音楽はいよいよ最高潮に達します。それを受けて全てを終結させる壮大な規模の第4楽章と、曲のどこをとっても充実し切っています。ブルックナー・ファンの間で最も人気の有る作品であるのは当然です。

それではこの曲の僕の愛聴盤を順にご紹介してみます。

302 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーン・フィル(1954年録音/オーパス蔵盤) フルトヴェングラーのブルックナーは余り聴きませんが、その理由はテンポの変化が極端過ぎるのと録音が悪いことからです。その中では最晩年のこの演奏は比較的聴き易さを感じます。1楽章は最も抵抗感が少ないですし、2楽章もフルトヴェングラーにしては夢中に成り過ぎない落ち着きを感じます。3楽章も過度にロマンティックとは言え深みが有り美しいです。終楽章は遅めのテンポでスケールが大きく重厚感が有ります。過度なアッチェレランドが影を潜めているのはプラスです。但し終結部での強奏は荒く響きが濁っています。当時の市販テープから復刻された音はブルックナーを鑑賞するには不充分ですが、それほど悪くありません。

Buru8_convi フランツ・コンヴィチュニー指揮ベルリン放送響(1959年録音/WEIBLICK盤) ステレオと表記されていますが、実際はモノラルです。但し録音は良好ですし、手兵のゲヴァントハウスとは5番、7番しか録音していませんので貴重です。面白いのは、オケがゲヴァントハウスと同じような古武士風な音色であることです。1、2楽章とも幾分速めの足取りで、男性的にたくましく奏します。けれどもリズムがドイツ風にガッチリしているので、せかついた感じはしません。3、4楽章も深遠でスケール大きいです。この豪傑風はクナと良く似ています。正に「ドイツの頑固親父」というイメージの演奏です。(ちなみにドイツ人の親父は皆ハゲ親父ですが)

4543638002252ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1961年録音/Altus盤) ブル8の名盤と言えば、昔は後述のクナ/ミュンヘンと相場が決まっていました。クナのそれ以外のライブ録音では、このウイーン・フィル盤が優れています。人によってはミュンヘン盤以上に評価する方も居ます。確かに弦のしなやかさや陶酔感はウイーン・フィルのほうが上ですし、トゥッティでの迫力も相当なものです。その反面、この曲にしては弦の表情の甘さが過度のようにも感じられます。僕としては、この曲にはもう少し禁欲的な音と表情のほうが好ましいように思うのです。この演奏は、従来は海賊盤でしか聴くことが出来ませんでした。廃盤のMemories盤が比較的音の状態が良好でしたが、ようやくAltusからリリースされた正規音源盤は、モノラル録音ですが、大幅に改善された明瞭な音質になっています。

Buru8_kuna_b000h9i ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィル(1963年録音/DREAMLIFE盤) この演奏こそは、クナのウエストミンスターへのスタジオ録音の直前に行われたコンサートの録音です。演奏そのものはスタジオ録音を凌ぐ演奏としてマニアに評価されて来ましたが、これまで音質の悪い海賊盤でしか聴くことが出来ませんでした。それがようやく放送局の正規音源からCD化されて、格段に良い音質で聴くことが出来るようになったのは大きな喜びです。安定感の有るウエストミンスター盤に、更に実演ならではの豪快さと感興の高さが加わった素晴らしい演奏です。

41p86b8v3ml__sl500_ ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィル(1963年録音/ウエストミンスター盤) 余りにも有名なブル8です。オールドファンでこの演奏を耳にしていないとすればモグリと言われても仕方が無いほどです。けれども、残響の少ないオンマイクの録音は決して耳当たりが良いわけではありません。表面的な音に惑わされたりすれば、この演奏の真価は理解できないでしょう。どこまでも無骨で男っぽい、正に野人ブルックナーを感じる演奏ですが、一度この深い味わいを知ってしまったら、決して離れられません。ウイーン・フィルの流麗な演奏をもってしても越えられない良さが有るからです。前述のミュンヘンでのライブ盤との比較では、僕はウエストミンスター盤を支持します。音質の差がやはり歴然として有るからです。

Buru8_schurihi カール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1963年録音/IMG盤) クナ/ミュンヘン盤と並んで古くから有名な演奏です。遅いテンポで勇壮重厚なクナに対して、かなり速いテンポで進みますが、表現の彫りが非常に深いのでせわしなさは微塵も感じさせません。トゥッティでは厳しくコントロールされた音を壮絶に鳴り響かせます。柔らかい部分ではウイーン・フィルの過度な甘さを排除して、素晴らしく深みのある音を引き出しています。その長所が最も出たのが3楽章アダージョです。おそらく歴史上で最も美しい演奏だと思います。但しそれは決して表面的な美しさでは無く、どこまでも精神世界の美に思えます。僕は写真の「20世紀のグレート・コンダクター・シリーズ」で聴いていますが、リマスタリングがとても気に入っています。

Buru8_keilberth ヨゼフ・カイルベルト指揮ケルン放送響(1966年録音/オルフェオ盤) ドイツのカペルマイスター、カイルベルトはバイロイトでの「リング」や「オランダ人」の非常に素晴らしい録音が有りますが、ブルックナーにも9番の名演を残しています。このケルンでのライブの8番は奇しくも8年後のベーム/ケルン放送盤とテンポといい響きといい随分良く似た演奏です。ベームのほうがオケの統制が取れているので、それに比べると随分荒っぽく聞こえますが、それがまた魅力といえば魅力です。後半3、4楽章でゆったり歌う部分などは逆にカイルベルトの方が感動的かな、とも思います。不思議と惹かれる演奏です。

Kempe_bru8 ルドルフ・ケンペ指揮チューリッヒ・トーンハレ管(1971年録音/英Somm盤) ケンペのブルックナーは学生時代にミュンヘン・フィルとの4番、5番をLP盤で愛聴しましたが、8番は聴きませんでした。何故ならオケがミュンヘン・フィルよりも劣ることを知っていたからです。けれども30年後に思い立ってCDで聴いてみたところ、素晴らしい演奏だったので、つくづく思いこみというのはいけないものだと反省しました。ゆったりと大きな構えの素朴で男っぽいブルックナーですが、弦や木管は美しく優しさに溢れます。金管だけは時々音の荒さを感じますが、品の無い騒々しさは感じません。さすがはケンペです。

Buru5_behem895 カール・ベーム指揮ケルン放送響(1974年録音/EMI盤) 。これは「20世紀のグレート・コンダクター・シリーズ」の中のディスクで、ウイーン・フィルとのグラモフォン盤の2年前にケルンで行ったライブ録音です。実演のベームらしく、グラモフォン盤よりも速めのテンポで気迫に溢れる演奏となっています。ベームはトゥッティを壮絶な音で鳴らしているのですが、残響の豊かな録音が耳への刺激を中和させています。美しい部分も中々の素晴らしさです。『ベームのブルックナー』としては、僕はウイーン・フィル盤よりもむしろこちらの方を好んでいます。

Buru8_bohm カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1976年録音/グラモフォン盤) ベームはブルックナーを頻繁に演奏していましたし、重要なレパートリーだと思います。けれども僕が唯一気になる点が、フォルテの音が余りに凝縮されて硬くなりがちなことです。それは元々ベームの音の特徴であって、古典作品の場合には気にならないのですが、後期ロマン派のように大きな広がりを持つような響きの作品の場合にはどうも気になることがあります。最も著しいのがブルックナー、それにワーグナーです。この演奏も全体的には良いと思うのですが、第1楽章で時に響きが硬く耳障りに感じられる部分が有るのが残念です。

414zmzvftdl__sl500_aa300_ オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1976年録音/EMI盤) ブルックナーの交響曲の全集録音を二種類も残していて、それに加えて多くのライブ録音のあるヨッフムの演奏はどれもが素晴らしいと思います。この8番も速めのテンポでぐいぐいと押し進む、とてもスタジオ録音とは思えないほどの壮絶な演奏なのですが、ドレスデンのオケの柔らかい音色が刺激を押さえて、耳に快適に響きます。一転してアダージョでは中声部を中心としたほの暗い響きがドイツの奥深い森を思わせるようです。ところがそれが終結部と第4楽章に至って、再び凄まじい盛り上がりを聞かせます。

Bruckner_sym8_kubelik ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1977年録音/BR KLASSIK盤) 以前はMETEORの海賊盤で出ていた演奏ですが、正規盤でリリースされました。とても美しい部分も有りますし、非常にドラマティックでスケールも大きいので、一般的にはとても支持される演奏だと思います。ですが、強奏でトランペットが目立ち過ぎるのと金管が今ひとつ溶け合っていない為に、迫力は有ってもうるささを感じます。これは僕がブルックナーを聴く時の重要なポイントですので、いまひとつ好きになれません。クーベリックはブルックナーを少なからず演奏していましたが、僕がこの人を最上のブルックナー指揮者とは思わない理由はそのところなのです。

Buru_box_joch オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1984年録音/TAHRA盤) ドレスデン盤から8年後のライブ録音です。コンセルトへボウとは晩年に5番、7番の超名演を残していますが、この8番も素晴らしい演奏です。但し前半の2楽章までは、響きの融け具合がまだ本調子ではありません。3楽章の後半以降からがコンセルトへボウ本来の深い響きを取り戻して、素晴らしく感動的です。全曲を聴き終えた後には、実演と一緒で「終わり良ければ全て良し」となります。僕はこの演奏は選集で持っていますが、単独でも出ています。

Bruckner_s8 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1984年録音/グラモフォン盤) ジュリーニらしい遅いテンポで造形の大きさを感じさせる演奏です。弦に効かせるイタリア風のカンタービレがブルックナーの音楽の寂寥感を損ねがちなのはいつもの欠点ですが、3楽章あたりは非常に深々とした雰囲気を出しています。金管は分厚く、幾らか金属的に鳴ってはいますが、騒々しさを感じさせる一歩手前で踏み止まるのは、同じウイーン・フィルのカラヤン、ハイティンク盤よりは好ましいです。全体に聴き応えが有るのは確かですし、ウイーン・フィルの録音でシューリヒト盤以降のものであれはジュリーニ盤を選びたいと思います。

Buru41b4ioxenhlロブロ・フォン・マタチッチ指揮NHK交響楽団(1984年録音/DENON盤) 今では伝説ともなったNHKホールでのライブの記録です。マタチッチの野趣あふれるブルックナーは大好きなので、チェコ・フィルとの第5、第7番のCDは愛聴しています。このN響とのライブも力の入った演奏で聴きごたえがありますが、実演で聴くのならばともかく、CDで聴くとどうしても演奏の瑕や金管の音の荒さが気になるのです。それは後述の朝比奈さんのライブ盤についてもしかりです。これはあくまでも我が国におけるブルックナーの演奏会の”記録”として鑑賞すべきだと思います。

Buru8_suitner570 オトマール・スウィトナー指揮ベルリン国立歌劇場管(1986年録音/WEITBLICK盤) スウィトナーにはこの曲のスタジオ録音も有りますが、これはベルリンでのライブ録音です。まろやかに溶け合った響きがとても美しく耳に心地が良く、ブルックナーの法悦感がとても感じられます。テンポも中庸で、速過ぎも遅過ぎもせずに極めて自然です。表情も特に深刻になる訳でも無く大げさ過ぎないのですが、聴き応えに不足する訳ではありません。実にオーソドックスな素晴らしいブルックナーだと思います。

Karajan_buru8 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル(1988年録音/グラモフォン盤) 実は、この演奏は愛聴盤ではありません。1楽章は汚い音で咆哮する金管に耳をおおいたくなりますし、2楽章のリズムはだらしなく鈍重ですし、ここまでは聴いているのがしんどいです。3、4楽章ではだいぶ修正されますが、それでもカラヤンにとってはブルックナーもリヒャルト・シュトラウスも同じ、物理的な音を響き渡らせる材料に過ぎないとしか思えません。共感している感じが全然しないのです。ブルックナーで唯一カラヤン向きなのは、流麗な7番のみだと思います。 

Oc217 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー指揮ザールブリュッケン放送響(1993年録音/Arte Nova盤) とうとう現役のブルックナー指揮者の筆頭格になってしまったスクロヴァチェフスキーの8番は何年か前にN響定期で聴きましたが、とても良い演奏で大いに楽しめました。最近の読響での常任退任コンサートも非常に素晴らしかったようです。このCDは17年も前の録音ですが、既にこの人のブルックナースタイルは出来上がっていて、弦楽を中心に引き締まったとても美しい演奏です。金管も中々壮絶なのですが、時に音が若干安っぽく聞こえる感が無きにしもあらずでしょうか。

41yv7qmr0yl__sl500_aa300_セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1993年録音/EMI盤) この人のブルックナーは概してテンポが遅過ぎて、息が詰まる感じがしてしまうので余り好んではいません。けれども8番は元から大曲なので、中では一番向いているように思います。特に3楽章以降が凄いです。トゥッティで強奏しても響きが汚くならないのはさすがです。マニアの間では「リスボン・ライブ」の人気が高いですが、その前の年のミュンヘン・ライブも中々に素晴らしい演奏だと思います。

Buru8_cheri セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1994年録音/AUDIOR盤) ミュンヘンフィルのリスボンでの公演をCD化したもので、チェリ・マニアの間では「リスボン・ライブ」として余りにも有名な海賊盤です。海賊盤と言っても録音は優秀で、音をいじっていない分メジャーレーベルよりも好ましいと思います。実際の会場で聴くチェリ/ミュンヘン・フィルの美しい音が幾らかでも想像できる様な気がします。テンポは相変わらず遅く息苦しいですが、呼吸困難に陥るほどではありません。終楽章の巨大さは確かに圧巻です。僕はチェリビダッケは普段ほとんど聴きませんが、このCDは例外です。

Buru8_haithin ベルナルト・ハイティンク指揮ウイーン・フィル(1995年録音/フィリップス盤) 僕はこの人の70年代の演奏を幾つか聴いて一度も感心した事が無かったために、いつしか全く聴かなくなりました。それでも、この演奏は世評が高かったので、騙されたと思って聴いてみたのです。その結果ですが・・・「凡才の努力賞」という感じです。ウイーン・フィルの音はもちろん美しいですし、特にアダージョには深みを感じます。終楽章も途中までは良い演奏だと思いますが、後半では壮絶な迫力が力みにつながってしまい没入できません。結局この演奏に天才の「閃き」は感じませんし、どうしてこの人が「巨匠」と呼ばれるのか理解に苦しみます。

Ph06008 ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘン・フィル(2000年録音/Profile盤) ヴァントには後述のベルリン・フィル盤も有りますが、その前年に録音されたこちらのミュンヘン・フィル盤を好みます。というのもオケの魅力に大きな差が有るからです。特に管楽器のブルックナーの音楽への共感度の深さの違いは明らかです。これはいくら名人揃いのベルリン・フィルでもどうしようもありません。その点、ミュンヘン・フィルは素晴らしいブルックナーを演奏します。もっとも前半の1、2楽章はオーソドックス過ぎる演奏であることもあって、幾らか食い足りなさを感じます。3楽章後半から終楽章になると演奏が非常に高揚して聴き応え充分です。とりわけ終楽章の後半は極めて感動的です。

51lvxtiinalギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィル(2001年録音/RCA盤) ヴァントのベルリン・フィルとの一連のライブ録音シリーズは総じて好みません。もちろんこれだけ聴いていれば決して悪いことは有りませんが、ミュンヘン・フィルや北ドイツ放送響との名演を知る以上、オーケストラとしてブルックナーの音楽への共感度に欠けるベルリン・フィルではたとえ技術的に上手くてもどうしようもありません。長大なこの曲を聴き進むうちに自分の耳の集中力は徐々に減衰してゆき、最後には幾らか飽きてしまいます。

Buru8_asahina 朝比奈隆指揮大阪フィル(1994年録音/CANYON盤) 東国の外れ、日の出る国の生んだ奇跡のブルックナー指揮者朝比奈隆の演奏についても触れてみます。僕はこの人のブル8の生演奏は東京都響でしか聴いていませんが、確かに感動的でした。CDでは大阪フィルとの二種類を所有しています。一つ目は94年サントリーライブです。随分評判となった演奏会ですが、今こうしてCDで聴いてみると、どうしてもオケの非力さが目立ち過ぎます。テンポ感もよく言われるほどずっしりとは感じられません。気迫の余りにどこか浮ついた感じがします。これは飽く迄も会場で感動すべき演奏なのではないかと思います。

3202010666 朝比奈隆指揮大阪フィル(2001年録音/オクタヴィアレコード盤) 晩年の朝比奈隆は我が国のファンの間では神様扱いでしたが、僕は正直そこまではのめりこんではいませんでした。日本人が振った日本のオケのブルックナーとしては奇跡としても、本場のオケの演奏と比べて勝るとはとても思えなかったからです。各パートの歌い回しがどうしても外国人の話すドイツ語のように子音の発音がハッキリしないのも気に成ります。それでもこの演奏は腰の浮ついた94年盤よりは随分どっしりと感じられますので、朝比奈さんの演奏ならばこちらを選びます。

これらの中から僕のベスト3を選ぶとすれば、シューリヒト/ウイーン・フィル(EMI)、クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル(ウエストミンスター)、ヨッフム/コンセルトへボウ(TAHRA)です。次点は・・・一応ヴァント/ミュンヘン・フィル(Profile)、もしくはチェリビダッケ/ミュンヘン・フィル(リスボンライブ)としておきます。

残念なのが、マタチッチ/チェコ・フィルとケンペ/ミュンヘン・フィルという名コンビの録音が残されていないことです。とはいえこの曲には多くのCDが存在しますので、皆さんのお気に入りの演奏を色々と教えて頂けると嬉しいです。

ところで余談ですが、先日のティーレマン/ミュンヘン・フィルの「ブル8」横浜公演は聴きたかったのですが、財政難で諦めました。はたして出来栄えはどうだったのでしょうね。 

<補足>
フルトヴェングラー、クーベリック、ジュリーニ盤を追加して、クナッパーツブッシュ/ウイーン・フィル盤の紹介を正規盤に書き替えました。 

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2010年4月 4日 (日)

ブルックナー 交響曲第7番ホ長調 名盤

Bur8th_pic_04 ブルックナーの交響曲で第5番以降の曲は、曲想が非常にがっちりしているので、ある意味「男性的」と言えると思います。その中で唯一、第7番だけは前半の1、2楽章が弦楽を中心として、ゆったりとなだらかに歌う音楽なので、誤解を恐れずに言えば「女性的」な印象を受けます。旋律は美しく、とても親しみ易いですし、3楽章のスケルツォも大変聴き易いので、この交響曲は昔からとても人気が有ります。ブルックナーを聴き始める人が、最初にまず第4番「ロマンティック」から入ると、次には大抵この第7番に移るのが普通です。ただ反面、他の後期の曲と比べると幾らか聴き応えに不足する印象が無きにしもあらずです。それでも第5、7、8、9番の4曲はどれも大好きですし、昔から変わることなく愛聴し続けています。

ブルックナーは、この曲の第2楽章アダージョで、リヒャルト・ワーグナーが考案して「ニーベルングの指輪」で使用した楽器ワーグナー・チューバを使用しました。そして、この楽章の作曲が終わりかけた時に、偶然にもワーグナーの死の知らせがブルックナーの元に届きました。ワーグナーを非常に尊敬していたブルックナーは号泣したそうです。そして、2楽章のコーダを書き上げて、これをワーグナーの為の「葬送の音楽」としたそうです。

それでは僕の愛聴盤をご紹介します。枚数は多いですが、頑張って全部聴き直してみました。

Burukunacci00011 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1949年録音/Music&arts盤) クナとウイーン・フィルの演奏が聴けるのは幸運です。ザルツブルクでのライブですが、録音もこの年代としては良好です。但し、ここには晩年の巨大なスケール感は有りません。クナにしてはむしろ速めのテンポであっさりと進んでいきます。それでもどこもかしこも深い味わいが有るのは、さすがにクナです。ウイーン・フィルの流麗さもこの曲にぴったりです。なおこの演奏はオルフェオ盤でも出ていますが、僕の所有しているのはMusic&artsのブルックナー選集です。

Brucknerknap7 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ケルン放送響(1963年録音/オルフェオ盤) クナ最晩年のライブの正規音源盤がリリースされたのは貴重です。ただ元々クナの本領は5番や8番のような豪放な曲で発揮され、7番のような流麗な曲では今一つのように感じます。その点1949年録音ではウイーン・フィルの音色に助けられていました。このケルン放送盤は前半1、2楽章はウイーン盤とテンポも変わらず、曲の特徴からやや分の悪さを感じます。しかし、後半の3、4楽章では曲想が剛直なドイツ楽団に合うのと、テンポがウイーン盤に比べてぐっと遅くなり”クナらしさ”が格段に増します。こうなるとモノラルとはいえ録音の良さも含めてケルン盤を上位に置きたくなります。

Cci00036b カール・シューリヒト指揮ハーグ・フィル(1964年録音/Scribendum盤) シューリヒトがウイーン・フィルとEMIに録音した何曲かは全てが名演でしたが、この7番だけはマイナーなオケとレーベルへの録音でした。オケの音は薄いですし、力不足は如何ともしがたいので、この演奏が他人に薦められるかといえばノーです。ところが、嫌いかというと決して嫌いではありません。音の輪郭は極めて明瞭で、速いテンポで飄々と即興的に進みますが、聴いているうちに、いつの間にか惹きつけられるのです。これは何とも不思議な演奏です。なお僕の所有しているのはScribendumの組物ですが、DENONからは単品で出ていました。

Buru7_konvi フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管(1958年録音/Berlin classics盤) コンヴィチュニーは第5番では非常に圭角のある豪快な演奏をしていましたが、この7番では曲想に合わせた流麗な演奏をしています。と言っても最近のオケのように洗練され尽くした音ではなく、あくまでも無骨なドイツ魂を感じさせる音です。トゥッティでは金管が突出することもなく、厚い響きを美しく聞かせます。この時代のゲヴァントハウス管は本当に魅力的な音色をしています。テンポは全体に速過ぎも遅過ぎもせず、しっかりとした足取りで進みます。第2楽章も非常に表情が美しいです。録音は古いステレオですが優れています。

Buru7_matachi ロブロ・フォン・マタチッチ指揮チェコ・フィル(1967年録音/スプラフォン盤) 僕が学生の頃にブル7と言えば、この演奏でした。マタチッチの豪快なブルックナーは今聞いても本当に魅力的で、8番以外の5、7、9番をチェコ・フィルと録音してくれたのは幸運でした。ゆったりとしたテンポで大きな広がりをもっていて、それは神々しいほどの雰囲気です。分厚いハーモニーが素晴らしく、特に第1楽章が美しさの限りです。第2楽章も良いですが、むしろ重量感のあるスケルツォ楽章を好んでいます。DENONのリマスターも非常に優秀で、自然な響きを心から堪能出来ます。

Buru_hss ハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1968年録音/TAHRA盤) この人のブルックナーはほとんど正規レコーディングされていませんが、さすがはドイツの名匠だけあって素晴らしいブルックナーです。広がりのある部分はゆったりと、動きのある部分は生き生きと描き分けていますが実に自然です。オケの音も柔らかく溶け合っていて、ハーモニーがとても美しいです。第2楽章も中々に感動的です。ライブですが録音も良いですし、隠れた名演だと思います。

Buru_box_joch オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1970年録音/TAHRA盤) ヨッフムは7番に多くの録音が残っています。本人が曲を好んでいたのか、単に人気の有る曲だったからは知りませんが、どれもが名演奏なのは確かです。この演奏は単売もされているはずですが、僕のは選集の中に含まれています。晩年にさしかかる以前の演奏ですので、足取りに若々しさを感じます。金管も中々に強奏していますので、迫力を感じますし、1楽章の展開部では音がうねるようです。一転して2楽章はかなり内省的な表現ですが、静かなる感動を呼び起こされます。録音も優れています。

Buru7_joch_wien オイゲン・ヨッフム指揮ウイーン・フィル(1974年録音/The Bells of Saint Florian盤) 「聖フローリアンの鐘」という変わった名の海賊レーベルのCDです。ヨッフムがウイーン・フィルを振ったブルックナーは珍しいので紹介しておきます。録音は万全では無いですが、悪くはありません。さすがにウイーン・フィルの弦楽の流麗さは別格で、柔らかい木管と金管が美しいハーモニーを奏でています。他の演奏には無い、独特の”たおやかさ”を感じるので、もしもこの演奏が音質の更に良い正規盤で登場すれば、独自の位置を占める名盤になることでしょう。

Buru_cci00007 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1976年録音/EMI盤) ヨッフムの二度目の交響曲全集での録音です。やはりスタジオ録音のせいか全体は落ち着いた感じです。ヨッフムにしては随分繊細な演奏ですが、必要以上に神経質にならない大らかさが好きです。最近の指揮者によくありがちな、変に神経質でいて肝心なところが無神経、というのとは全く違います。ドレスデンもウイーン・フィルと遜色のない柔らかくまろやかでしっとりとした美音を堪能させてくれます。一方で3楽章、4楽章では分厚いハーモニーで適度に荒々しい迫力を感じさせてくれます。

083 オイゲン・ヨッフム指揮ミュンヘン・フィル(1979年録音/WEITBRICK盤) これはブルックナーを得意としているミュンヘン・フィルとの本拠地でのライブ演奏です。ヨッフムのブルックナーはどれもが素晴らしいので、いちいち細かいところを比べるのも躊躇われますが、分厚い響きでどっしりとしたドレスデンEMI盤と比べると、やや落ち着きの無さを感じます。弦楽もほんの僅かに雑に聞こえる部分も有りますし、金管の強奏も迫力とうるささとの紙一重です。それでもあまたの演奏と比べれば遙かに素晴らしいのですけれども。マスタリングは高音に多少強調感を感じます。

Buru7_johu オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1986年録音/Altus盤) ヨッフムが亡くなる半年前にコンセルトへボウを連れて日本に来た時のライブ録音です。会場は人見記念講堂です。この時はTVでも映像が放送されたので、記憶に良く残っています。最晩年だけあって枯淡の境地のような演奏なので、以前のどの演奏とも異なる印象です。緊張感を感じさせるよりも、ゆったりと深く瞑想させるような、まるで彼岸の雰囲気と言えるでしょう。やはりこの演奏は不世出のブルックナー指揮者ヨッフムのかけがえの無い特別な記録です。

Buru7_kara ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) カラヤンはブルックナーの交響曲全集を残していますが、元々カラヤンの演奏を余り好まないのでほとんど聴いていません。それでも7番はカラヤンに向いているかと思ったので珍しく持っています。この演奏は弦楽や木管は中々に美しいと思いますが、問題は金管です。トゥッティで容赦なく強奏するのが、騒々しくてハーモニーを壊しているからです。どうも品が無いように感じます。本来のブルックナー指揮者であれば、こんなことを感じることは無いと思います。ですので、この人の他のブルックナーを聴こうという気にはやはりなれないのです。

Buru7_fulo 朝比奈隆指揮大阪フィル(1975年録音/ビクター盤) 日本が生んだ奇跡のブルックナー指揮者朝比奈隆が手兵の大阪フィルとヨーロッパ・ツアーに行った際に、ブルックナーいにしえのリンツ聖フローリアン教会で演奏したライブ録音です。これは日本の楽団が演奏したブルックナーとしては最上の演奏記録だと思います。教会の深い残響に助けられているせいも有るでしょうが、演奏のアラ、傷もそれほど感じられません。そして何よりも教会の雰囲気に団員を特別な雰囲気にさせたのでしょう。アダージョが静かに終わった直後に、外から鐘の音が遠く聞こえて来るのが収録されています。

Bruckner_7__bohm1500_カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1976年録音/グラモフォン盤) 流麗さのある第7番ですので、ウイーン・フィルの音が非常に生きています。録音も良く、新録音と比べてもさほど聴き劣りしません。演奏はどういうわけか第1楽章でベームの呼吸が僅かに浅くなり、テンポが前のめりに感じられなくもありませんが、第2楽章以降はじっくりと音楽を堪能させてくれます。第3楽章の重厚な厳しさは流石はベームです。もし、この曲をウイーン・フィルでそれも良い音質で聴きたい場合には第一に上げたい演奏です。

Buru7_933 カール・ベーム指揮バイエルン放送響(1977年録音/audite盤) 前述のウイーン・フィルとのグラモフォン盤の翌年にミュンヘンで行ったライブです。オーケストラがドイツのオケなので、本来のベームらしい剛直で男性的な印象が強いです。もちろん美しさにも欠けていませんが、ウイーンスタイルの流麗で柔らかい印象とは趣がだいぶ異なります。全体にテンポは速めで緊張感が強く、音楽が緩むことが全くありません。金管がよく鳴っていますが、全体の均衡がとれているのでうるささを感じません。これも中々に良い演奏だと思います。

Buru7_burom ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ドレスデン国立歌劇場管(1980年録音/DENON盤) 同じドレスデンを振ったブルックナーとして、どうしてもヨッフムのEMI盤と比べたくなってしまいます。この演奏は普通に良い演奏だとは思います。けれども、フレージングの大きさや呼吸の深さ、それにハーモニーの美しさという点で、やはりヨッフムの域にはまだまだ達していないと感じます。テンポが硬直している為に退屈しやすいのも気になります。ちなみにブロムシュテットは、最近ゲヴァントハウス管と新盤を出しましたが、それも評判がいまひとつなので聴いていません。

Bruckner_s7_1 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1986年録音/グラモフォン盤) ジュリーニのブル9のテンポの遅さは尋常ではありませんでしたが、7番では割に普通のテンポです。特に第1楽章を速めに流していて音のタメも有りません。どうも呼吸の浅さを感じます。全体を通して強調される弦楽のカンタービレもブルックナーとは幾らか異質に感じられます。寂寥感を失わせているからです。ただ、やはりウイーン・フィルの持つ音の柔らかさには大きな魅力が有ります。それだけで高水準の演奏ですが、特別なものは余り感じられません。好き嫌いはともかく、ジュリーニはもっとジュリーニらしい方が面白いです。

F4ccc935 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル(1989年録音/グラモフォン盤) ベルリン・フィル盤では「どうだ」とばかりに金管を鳴らすのに抵抗を感じましたが、このウイーン・フィル盤ではそういう事は有りません。1、2楽章は力みが無く、とても美しい演奏です。3、4楽章も、かつての馬力の有る演奏とは違って実に淡々としているので、何だかカラヤンでは無いみたいです。それもそのはず、これはカラヤンが亡くなる3か月前の最後となった録音です。ですので、この美しい”白鳥の歌”は自分も含めてアンチ・カラヤンの方こそ聴くべき演奏だと思います。

Bru7_want_41jzbkt6ejlギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(1992年録音/RCA盤) ハンブルク、ムジークハレでのライブ録音です。ヴァントは必ずしもスケールの大きい指揮者では有りませんが、この演奏は幾らか速めのテンポですっきりと進みます。後期ロマン的な巨大化した印象は全く感じさせずに、透徹した音楽を感じさせます。7番の演奏スタイルとしてはシューリヒトに近いのかもしれません。弦楽器と管楽器も響きが美しく溶け合っています。ヴァントは既に最円熟期を迎えていますし、個人的には後述のベルリン・フィル盤よりもずっと好みます。

Bur7_asa 朝比奈隆指揮大阪フィル(1992年録音/CANYON盤) 朝比奈隆のブルックナーは生演奏を何度か聴きに行って感動しました。けれども多く残されたCDを後から聴いて感銘を受けることは決して多くはありません。どうしても日本の楽団の力不足を感じてしまうからです。フレージング感覚も何となくドイツ・オーストリアの楽団とは違う気がします。そんな中で比較的気に入っている演奏として、この録音を上げておきます。フローリアン教会ほどの残響が無いので、細部が明瞭に聴き取れる半面、どうしてもアラ、傷は目立ちます。それでも全体としては中々高いレベルにあると思います。

Cheli_buru7 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1994年録音/EMI盤) チェリビダッケの晩年の演奏に共通した特徴ですが、終始一貫して遅いテンポで変化が無いために、聴いているうちにだんだんに息が詰まってしまいます。音楽の流れが非常に悪いのです。スケルツォの重く切れの無いリズムにも耐えられません。しいて言えば終楽章だけはスケールの大きさで一聴に値します。オケの音についても、よく言われるような特別に美しい音色だとも思いません。ですので、この演奏には特に心を動かされないのです。当然、このCDは自分の愛聴盤には成り得ません。

Buru7_vant ギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィル(1999年録音/RCA盤) ヴァントの最晩年に近づいた録音ですが、’92年の北ドイツ放送盤と似通っていて、同じような速めのテンポですっきりと進みます。どうしても気になるのは、カラヤンほどでは無いにしても金管の強奏が刺激的で耳につくことです。ですのでトゥッティが壮大なわりには感動できません。やはりベルリン・フィルはブルックナーの音楽には、ベストの楽団では無いと感じてしまいます。

Bru7_sander クルト・ザンデルリンク指揮シュトゥットガルト放送響(1999年録音/ヘンスラー盤) これはライブ録音ですが、ザンデルリンクのブルックナーは録音が少ないので貴重です。ゆったりとしたテンポでスケールの大きい1楽章はブルックナーを聴く醍醐味を与えてくれます。2楽章では、静かな悲しみをいっぱいに湛えて「葬送の音楽」の印象を強く感じさせます。これほど悲劇性の強い演奏も珍しい気がします。後半の3、4楽章もやはりスケールが大きく、巨人の足取りを感じます。オケの出来栄えも優れていて不満は有りません。さすがにドイツの楽団です。

以上の中から自分のフェイバリットを上げるとすれば、ヨッフム/ドレスデンのEMI盤、ヨッフム/コンセルトへボウの1986年盤、マタチッチ/チェコ・フィル盤、ベーム/ウイーン・フィル盤、そしてザンデルリンク/シュトゥットガルト放送響盤です。
番外としては、朝比奈/大阪フィルの聖フローリアン盤、それにヨッフム/ウイーン・フィルの海賊盤を上げたいと思います。しかし、こうしてみると7番はヨッフムが質量ともに大きく他を圧倒しています。さて、みなさんのお気に入りの演奏はどれでしょうか。

<補足>
ベーム/ウイーン・フィル、ジュリーニ/ウイーン・フィル、ヴァント/北ドイツ放送響盤クナッパーツブッシュ指揮ケルン放送響盤追記しました。合わせて関連ディスクの記述を多少書き換えました。

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ブルックナー 交響曲第7番 ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデン盤

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