ブルックナー(交響曲第4番~6番)

2015年8月17日 (月)

ウイーン・フィルで聴こう! ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」 続々・名盤

Matterhorn

ゴールデンウイークの特別企画「ウイーン・フィルで聴こう!」は全くの尻切れトンボ。しかし、すっかり忘れてしまって、どこ吹く風の極楽トンボというわけではありません。

そこで、夏休み特別企画!(やっぱり極楽だぁ) 『ウイーン・フィルで聴こう!第3弾 ブルックナー交響曲「ロマンティック」』です。

ブルックナーの曲もまた、ウイーン・フィルに演奏をさせると、やはり絶品ですよね。初期の曲から晩年の曲まで一貫してブルックナーの音楽に最適な音の質を持ち合わせているからです。

もちろん、ウイーン・フィル以外のオーケストラのブルックナーが駄目かと言えば、決してそんなことは無く、たとえば「5番」や「8番」のように厳しく構築的な曲は、むしろドイツのオーケストラの方が向いているかもしれません。

ウイーン・フィルに最も向いていると思わせるのは曲想の流麗な「7番」と「4番」です。特に第4番「ロマンティック」は、「ウイーン・フィルで聴きたい!」と思わずにはいられないのですね。

それは、この曲がアルプスの雄大な山々や広々とした風景を連想させるからです。第1楽章の出だしから、山のかなたから聞こえてくるアルペンホルンの響きそのものですし、第3楽章の狩りのホルンも他のオケでは中々考えられません。

この曲は、元々ブルックナーの他の曲に比べて響きが余り厚く無く、その分、音の透明感が強いので、ウイーン・フィルの持つ澄んだ音にピッタリなのです。

ということで、ウイーン・フィルの演奏したCDを見渡してみますが、それが意外と多くはないのですね。カール・ベームのDECCA録音が定番中の定番と呼べますが、それ以外に優れた録音盤を探すとなると、今回上げたハイティンクとアバドぐらいです。

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ベルナルト・ハイティンク指揮ウイーン・フィル(1985年録音/フィリップス盤)

ベームの録音が1973年ですから、その13年後の録音と言うことに成ります。ハイティンクは必ずしも大好きな指揮者ではありませんが、この演奏はスケールも大きく、細部も手堅く処理されていますし、同じウイーン・フィルとの「8番」のような金管の過剰な強奏も見られません。欠点はおよそ見当たりません。しかし、「これは!」という魅力に乏しいのも事実です。「面白みのない優等生」という印象です。録音も優れていますが、ベームの優秀なアナログ録音よりも優位性が感じられるほどでは有りません。
ウイーン・フィルの「ロマンティック」として絶対に悪い演奏では無いのですが、個人的には特別にお勧めするほどではありません。

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クラウディオ・アバド指揮ウイーン・フィル(1990年録音/グラモフォン盤)

それにしても、この演奏はチャーミングです。アルプスの高原の爽やかな風が頬を撫で、暖かな陽光が一杯に感じられるような気持ちの良さや美しさに溢れています。細部の表情にはデリカシーがとても感じられて優しさの極みです。トゥッティの響きの綺麗さも特筆もので、「アルプスとは何と美しいところか!」と感嘆すること請け合いです。
ただし、それはあくまでもアルプスの一面です。巨峰マッターホルンやモンブランの威容、人間が簡単に近づけない自然の厳しさもまたアルプスの一面なのです。そのような厳しさはベームの演奏からはとても感じられますが、アバドの演奏には少々不足していると言わざるを得ません。
しかし、これはどちらかが全てと言うことでは無く、あくまでも登る人(聴き手)の好みですし、「険しい山は嫌だ、楽しく歩ける山が良い」という方にお勧めできるのはアバド盤です。ですので、出来ればベーム盤と両方を聴いてそれぞれの良さを楽しむべきです。

ということで、この曲ではベームとアバドの両ウイーン・フィル盤がお気に入りです。

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ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1964年録音/イタリア・メモリーズ盤)

しかし忘れてならないのは、巨人ハンス・クナッパーツブッシュがモノラル時代にDECCAに録音した演奏でした。モノラルながらも、こぼれるような歌と美感のちょっと類例を見ることの出来無い演奏でした。また、ライブでは1964年のクナのラストコンサート盤が有ります。ライブですので、気合の入り方はスタジオ録音の比ではありません。最近イタリアのメモリーズがブルックナーの主要な交響曲のクナのライブ演奏を揃えてCD6枚セットとして再リリースしましたが、以前所有していたゴールデンメロドラム盤の劣悪な音質と比べると音質が大幅に改善されています。個人的にはモノラル録音のブルックナーはほとんど聴きませんが、これだけ翳りが濃く、個性のあるブルックナーならば聴いてみようという気に成ります。フルトヴェングラーにもやはりウイーン・フィルを指揮したライブ盤が有りますが、感情的にのめり込み過ぎていてブルックナーを聴いた気がしません。その点、クナの演奏からはブルックナーの音楽を確かに感じ取ることが出来ます。

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ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」 続・名盤

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2013年1月 5日 (土)

ブルックナー 交響曲第5番 アイヒホルンの聖フローリアン・ライブ

聴き初めにブラームス、マーラーと大曲を聴きましたので、ここはいっそヘビーローテーションということで、AKB・・・じゃなかった、ブルックナーを聴くことにします。いやー、年始からヘビーな曲が続きます。まぁ、なにせ今年はヘビー年ですから。ヽ(´▽`)/
へえ、おあとがよろしいようで。(笑)

さて、新春早々馬鹿な事を言っていないで主題に戻ります。ブルックナーの曲では、最近は、最後期の8番、9番ではなく、5番、7番が聴きたくなります。特に5番の荘厳な雰囲気は新年に相応しいと思います。

あいにく、5番の演奏で未紹介のディスクは一つだけですが、それをご紹介します。隠れ名盤として世評の高い(ならば”隠れ”では無いか?)演奏です。

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クルト・アイヒホルン指揮バイエルン放送響(1990年録音/カプリチオ盤)

アイヒホルンという人は1994年に亡くなっていますが、永年ブルックナーの演奏に尽くしたので、ブルックナー協会からメダルを授与されている、いわゆるブルックナー指揮者ですね。録音も多く残しています。ところが僕はこれまで聴いたことは有りませんでした。理由は、手兵のリンツ・ブルックナー管弦楽団というのが、マイナーオケで、どうも実力がいま一つという評を聞いていたからです。単に食指を動かされなかったということです。

けれども、この1枚だけは目に留まりました。演奏がバイエルン放送響であることと、何といっても演奏会場が、ブルックナーの聖地であるオーストリア・リンツの聖フローリアン修道院だからです。故朝比奈隆氏が大阪フィルを率いて1975年にこの場所でブルックナーの第7番を演奏したことは余りに有名です。ここで演奏した第5交響曲とあっては聴かない訳には行きません。

さて、その演奏ですが、1楽章導入部から、非常に気迫の有る音で驚かされます。響きをふっくらと美しく整えるのではなく、こちらに迫るような押しの強い響きです。主部に入ると幾らか速めのテンポで荒々しいほどの迫力を聞かせます。さしずめマタチッチのようです。残響の極めて長いフローリアンで、これだけ荒々しく聞こえるのは相当なものですが、その理由はトランペットとトロンボーンがかかなり強めだからです。アイヒホルンの指示だとすれば、僕はイメージが覆されます。ただ、アインザッツが頻繁にずれるところをみると、アイヒホルンという人はオケ・コントロールは割合に緩い人なのかもしれません。このあたりが気にならなければ、中々に良い演奏です。

2楽章は、勇壮で美しく、大変聴きごたえが有ります。これはフローリアンの響きの豊かさが充分に生かされているのでしょう。心も充分にこもっています。

3楽章は、荒々しい迫力が有ります。曲が曲だけに、これは悪くありません。

終楽章は、おそらくもっとも出来が良いです。気迫がマイナスでは無く完全にプラスに働いています。表情が豊かで、彫が深く立体的、オケの響きも美感を増していて、非常に感動的な素晴らしい演奏となりました。

録音については、聖フローリアンの残響の長く柔らかい響きを忠実に捉えていて、バイエルン放送響の出す荒々しい音を美しく中和させています。それでいて各パートの分離も明瞭です。相反する要素を生かした優秀録音です。

ということで、5番の演奏としては、ヨッフム/コンセルトへボウの1986年盤はおよそ並ぶもののない奇跡的な名盤ですが、それ以外のクナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルのライブ、ケンペ/ミュンヘン・フィル、マタチッチ/チェコ・フィル、ヴァント/ミュンヘン・フィル、ティーレマン/ミュンヘン・フィルといった愛聴盤達の仲間に加えても構わないと思います。

<過去記事>

ブルックナー 交響曲第5番 名盤

ティーレマン/ミュンヘン・フィルのブルックナー第5番

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2010年7月 8日 (木)

ブルックナー交響曲第5番 ティーレマン/ミュンヘン・フィル盤

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ドイツ後期ロマン派の伝統的な演奏スタイルというと、深遠で巨大、重圧というような言葉が思いつきますが、それらは現代ではすっかり失われてしまった感が有ります。かつての大巨匠たち、フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ、クレンペラーなどに代表されるスタイルは、すっかり遠い過去のものとなりました。けれども、現代の演奏家の中にも、そのようなスタイルを追求しようという人が存在しないわけではありません。たとえばクリストフ・エッシェンバッハ、それにクリスティアン・ティーレマンです。エッシェンバッハはマーラーを好んで取り上げていますが、ティーレマンのほうはブルックナー、ワーグナーを好んでいるようです。彼は今年の3月にミュンヘン・フィルと来日してブルックナーの第8番を演奏しましたが、残念ながら僕は聴き逃しました。

同じミュンヘン・フィルとは第5番のCDが有ります。これは、しばらく前に聴いて中々気に入っていたのですが、記事にするのが後回しになっていました。

ティーレマンの遅く重圧な指揮ぶりを「伝統的なふりをしている」というように意地悪く書かれているのを見かけることがあります。けれども、実際に聴いてみると、どうしてどうして、あたかも往年の巨匠が現代に蘇ったみたいなので嬉しくなります。たとえ「ふり」だろうが何だろうが、聴いて良けりゃ文句はありません。ミュンヘン・フィルは昔からブルックナー指揮者にとても恵まれていて、クナッパーツブッシュ~ケンペ~ヨッフム~チェリビダッケ~ヴァントの元で何度も演奏を繰り返してきました。第5番の録音も数多く存在します。ティーレマンは、2004年にミュンヘン・フィルの常任指揮者としての就任記念の演奏会で、この曲を選んだのですが、その時のライブ録音がこれです。その前には、ギュンター・ヴァントが1995年に残したやはりライブ盤がありますが、同じガスタイク・ホールでのコンサートなので響きがとてもよく似ています。どちらも弦と管のハーモニーに注意をはらっています。決して金管を騒々しく咆哮させるような真似はしません。ヴァントよりもティーレマンのほうが幾分金管の音量が強めなのですが、それはほんの僅かの差です。テンポは全体的にティーレマンのほうが遅く、第2楽章あたりは少々もたれ気味ではありますが、チェリビダッケのように息ができないほどに遅いわけではありません。素晴らしいのは終楽章で、巨大なフーガも聴き応え充分ですが、それ以上に魅力的なのは弦楽で奏される中間部です。旋律が美しく織り合わされて、まるで合唱のように聞こえます。この楽章が、これほど魅力的に奏されたのも稀な気がします。

この演奏は、オイゲン・ヨッフム/コンセルトへボウ盤(但し1986年録音)の神々しさには及びませんが、マタチッチ/チェコ・フィル、ケンペ/ミュンヘン・フィル、ヴァント/ミュンヘン・フィルといった名盤に充分肩を並べると思います。今後の彼には大いに期待したいと思います。

でも、CDジャケットの写真はちょいとスカし過ぎですよねぇ。こういう写真が古いファンから悪印象を持たれるのかもしれません。クナやマタチッチの無骨な顔と表情を真似しなくっちゃ。そりゃムリか・・・(笑)

<過去記事> 「ブルックナー交響曲第5番 名盤」

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2010年3月11日 (木)

ブルックナー 交響曲第6番イ短調 名盤

Bru156 ブルックナーは第5交響曲において、孤高の高みに一気に到達しました。それは後期3大交響曲である第7、第8、第9にも引けを取らないほどの傑作です。それでは、その傑作群の狭間となる第6番の位置づけは果たしてどうなのでしょうか。一般のクラシック音楽ファンはもちろんのこと、よほどのブルックナー・ファンでない限りは、この曲はまずお聴きにならないと思います。その一方で、熱烈なブルックナー・ファンの間では後期の曲に準じる人気が有りますし、第2楽章アダージョに限っては本当に美しく魅力的な音楽です。けれども曲全体を見渡してみると、どうしても大傑作の5、7、8、9番と比べると聴き劣りします。よほど優れた演奏でないと曲の魅力が余り伝わって来ないのです。

この曲は1883年に何故か未完成のまま第2、3楽章だけがウイーン・フィルによって演奏されました。その後1899年にマーラー指揮のウイーン・フィルが全曲初演を行いましたが、その時には相当の楽譜のカットが有ったそうです。でも聴いてみたかったですよね。マーラーの指揮でしたら。結局、完全な全曲初演が行われたのは1901年のウイーンだそうです。

第1楽章 マエストーソ この楽章は不思議な曲です。弦の特徴的なリズムが厳格に刻まれた後に、同じリズムを打楽器が引き継ぎ、その上を派手な金管によって主題が奏されますが、それが何だか映画「ベン・ハー」とか「スパルタカス」、あるいは「信長の野望」か何かのテーマ音楽のように聞こえるのです。僕は正直言って、この部分は未だにそれほど好きになれないでいます。ところがそれが一転して弦による美しく深みの有る曲想に変わります。どうもこの大きな落差にとまどうのですね。

第2楽章 アダージョ これは後期のブルックナーにも通じる深遠な雰囲気を持つ絶美の曲です。ほの暗く深い寂寥感を感じさせますが、真に魅力的な楽章ですので何度聴いても飽きません。

第3楽章 スケルツオ このスケルツオ楽章は主題がシンプルで楽しいです。但しトリオは色々な主題の寄せ集めのようで、何となく散漫な印象を受けます。 

第4楽章 快活に/速すぎず この楽章の主題として出てくるファンファーレも随分と派手です。この楽章にもまとまりの無さを感じてしまうのです。恐らく第1、第4楽章の作曲が遅れてしまった理由はブルックナーに良いインスピレーションが沸かずに苦労したからではないかという気がします。

この曲の所有CDはそれほど多くは有りませんが、ご紹介します。

Bru_yoh06 オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送響(1966年録音/グラモフォン盤) グラモフォンへの一度目の全集の中の演奏です。僕が最初に買った演奏でした(アナログLPでしたが)。バイエルン放送の音はブルックナーに良く適しています。弦楽はとても瑞々しいですし、金管の音も柔らかく溶け合っています。特に第3楽章アダージョは深い情感を湛えていて非常に美しいです。深い祈りを感じさせます。残りの楽章も素晴らしく、全体的にとても良い演奏だと思います。

Cci00010 ラファエル・クーべリック指揮バイエルン放送響(1970年代/METEOR盤) 海賊盤ですがクーベリックのブルックナーの録音は少ないのでご紹介しておきます。同じバイエルン放送でも指揮のせいか、ライブのせいか、力演になっています。1楽章は金管を大いに鳴らしていますし、ティンパニーも強めなので幾分騒々しく感じます。2楽章も悪くは有りませんが、ヨッフムのあの深みと比較をしてしいますと少々分が悪いと感じます。3、4楽章でもオケをよく鳴らしていますが、ここでは騒々しくなるぎりぎりの所で踏みとどまっています。この海賊CDの録音は良好です。

9101bc9bc5aa51ad68815093ee6a489c1 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立管(1978年録音/EMI盤) ヨッフム二度目の全集の中の演奏です。当然グラモフォンの旧盤との比較になるわけですが、この新盤は弱音部で音が痩せ気味なのがどうも気になります。金管も何となく引き締まっていない気がします。全体的にドレスデンの美しい音が上手く生かし切れていません。第2楽章の深みもバイエルン盤に比べると大分劣ります。録音についても、むしろ旧盤のほうが明快で優れています。この曲に関してはグラモフォンの旧盤を選ぶべきだと思います。

Cci00029 オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1980年録音/TAHRA盤) ヨッフム/コンセルトへボウのライブ選集に含まれています。第1楽章では金管を強く吹かせているにもかかわらず、派手過ぎには感じません。むしろ厚い響きによる音楽の充実感が素晴らしいです。これは名門コンセルトへボウでこそなし得る業でしょう。第2楽章も音楽がどこまでも深みに入ってゆくようで実に感動的です。第3、第4楽章の音楽の充実度も素晴らしいです。この演奏で聴くと第6番の良さが最も感じられますし、曲の品格が一段上がった感じがします。録音も優れているのでもっと広く聴かれると良いのですが、埋もれた感じで大変残念です。

Buru6 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1991年録音/EMI盤) チェリビダッケの晩年の演奏はどれも遅過ぎて息苦しくなり嫌いだと、さんざん書きましたが、この曲に関してはそれほど遅くはありません。また、ライブにもかかわらず非常に良く整った響きの演奏はさすがです。特に2楽章の主部の耽美的とも言える美しさはとても魅力的です。けれども1楽章や4楽章のような、ブルックナーとして演奏の難しい音楽になると、”音響体”としての響きの凄さは有っても、ヨッフムのようなブルックナーの良さは余り感じられません。従って何度も聴きたくなる演奏ではありません。

41pakvk0anl__sl500_aa300_ スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー指揮ザールブリュッケン放送響(1997年録音/ARTE NOVA盤) スクロヴァチェフスキーはギュンター・ヴァントと同時代を生きてどちらもブルックナーを得意としました。指揮者としての名声はヴァントの方がずっと高いですし、それは誰も否定できません。けれども、スクロヴァチェフスキーにも非常に良い演奏が有ります。その代表格がこの第6番の演奏です。全体的に響きが美しく、第1楽章も少しも派手に陥りません。第2楽章の美しさ、祈りの深さも傑出しています。第3楽章も中間部が非常に美しいです。終楽章も豪快な感じは有りませんが、その代りに実に美しい演奏です。この演奏は非常に気に入っています。

以上の中の僕のベストは、ヨッフム/コンセルトへボウ盤です。但し、これは単売されていないと思いますので、これから購入されようという方にはスクロヴァチェフスキー盤を是非お薦めしたいと思います。それに、もう一つ上げるとすれば、ヨッフム/バイエルン放送響盤です。

この他では、ヴァント/北ドイツ放送も良かったのですが所有をしていません。あとは余談になりますが、第1楽章が最も派手で正に「スパルタカス」を感じさせるのは、ハインツ・ボンガルツ/ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(Berlin Classics)です。ブルックナーの音楽には全く聞こえないこの演奏を推薦している音楽評論家がおられたのには正直言って驚きました。

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2010年2月14日 (日)

ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調 名盤

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交響曲第5番はブルックナー中期の傑作です。後期の作品に匹敵するか、あるいはそれ以上のスケールの大きさを持つ、正に聳え立つ巨峰です。ブルックナー自身はこの曲を「対位法的」と呼びましたが、最も典型的なのは巨大なコラールが対位法と一体になった終楽章です。もちろん、他の楽章も構築性において一段と際立つ作品です。がっちりとした構築性と堅牢な管弦楽の響きは、あたかもドイツのゴシック様式の巨大な大聖堂を仰ぎ見るような印象を受けます。
この曲は初演の際には、指揮者のフランク・シャルクが聴衆に受け入れ易くする為に楽譜に大幅なカットと、金管、打楽器を追加するという改定(改悪?)を行いました。もちろん現在では通常、原典版で演奏されていますが、改定版はクナッパーツブッシュの録音で聴くことが出来ます。

第1楽章”アダージョ~アレグロ” 荘重な導入部に続く主部は、スピード感有る印象的な主題が何度も転調しながら繰り返されます。これには心が躍るような感動を覚えさせられます。正にブルックナーの音楽の醍醐味を味わえます。

第2楽章”アダージョ、非常にゆっくりと” 冒頭、弦のピチカートによる三連音の上に、オーボエが二連音で哀しげな旋律を奏でて非常に印象的に始まります。その後、弦楽が大河の流れのような広がりを持つ旋律を歌い、とても荘厳な雰囲気を感じさせます。本当に感動的な楽章です。

第3楽章”スケルツオ‐モルト・ヴィヴァーチェ” 2楽章の三連音がそのまま急速な伴奏形となり、トウッティで激しく奏されます。野趣に溢れた豪快な迫力が魅力的です。

第4楽章”フィナーレ、アダージョ~アレグロ・モデラート” 最終楽章は対位法を駆使して作曲された正に音の大伽藍です。その巨大なフーガとコラールは圧倒的なスケールで心の底から感動させられます。

この曲も素晴らしい演奏が多く有りますので、順にご紹介します。

Buru5_kuna2 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1956年録音/DECCA盤) 大学生になった頃に初めてこの曲を聴いた演奏(もちろんアナログLPで)でした。曲の良さが直ぐに理解出来たのは演奏が良かったからでしょう。珍しいシャルク改訂版による演奏なのですが、指揮の意味深さによる演奏の魅力が音楽を充分にカバーしています。テンポは全体に早めなのにもかかわらず、せかせかしたところが全く無く、クナの呼吸の深さをつくづく感じます。当時のウイーン・フィルの柔らかい音は一聴すると音に迫力が無い様に感じるかもしれませんが、音楽そのものの聴き応えは充分です。特に第2楽章の弦楽の美しさは例えようも有りません。

Buru5_kuna3 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィル(1959年録音/DREAMLIFE盤) DECCA盤と同じ改定版によるミュンヘンでのライブ演奏です。以前から何種類かの海賊盤が出回っていて、中でもGreenHILL盤はかなり良い音質でしたが、ようやく正規音源盤が出て、この演奏の凄さを存分に味わう事が出来るようになりました。ブルックナーをモノラル録音で鑑賞するのは適さないのですが、クナ位凄い演奏になると鑑賞に耐えます。ウイーン・フィルの美音には劣るものの、野趣に溢れたミュンヘン・フィルの音はこの曲には相応しいです。基本テンポはやはり早めですが、ここぞという所でクナは(足で床をドンと鳴らして)オケに気合を入れますので、のけ反るような迫力が生れます。若輩指揮者には真似のできない至芸です。

Buru5_konvi フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1961年録音/BERLIN Classics盤) 名指揮者コンヴィチュニーもブルックナーをよく振りました。極めて男性的で豪快な演奏です。金管を強奏するので直接的な迫力が有ります。しかしトランペットがいささか強過ぎるので全体のバランスを欠き、響きに「法悦」を感じる事が出来ません。音が汚いというわけでは有りませんが少々やかましく聞こえます。その点がクナの響きとは大分異なります。けれども第2楽章アダージョはたっぷりと深みを感じて中々に魅力的です。

Buru5_schu カール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1963年録音/グラモフォン盤) これはウイーンでのライブ録音です。この人とウイーン・フィルとのブルックナーの正規録音が3、8、9番しか無いのは残念ですが、モノラル録音ながらも状態の良い5番が残されたのは喜びです。シューリヒトは普段は早めのテンポで淡々と音楽を進めますが、この演奏はテンポがたびたび変化しますし、表現も非常に濃厚で劇的です。けれどもそれが決して外面的に陥ることが無く、どこまでも音楽の内面的な感動に結びつくのは流石にシューリヒトです。フィナーレもクナに負けないほどの迫力です。

Klenpelar_wien オットー・クレンペラー指揮ウイーン・フィル(1968年録音/Testament盤) クレンペラーがウイーン・フィルに1968年に客演した際の録音がテスタメントからBOXで出たのはとても嬉しい出来事でした。この曲はかつてセブンシーズからも出ていましたが、リマスタリングで音質が格段に向上しています。いかにもクレンペラーらしいインテンポのがっちりした指揮ぶりですが、ウイーン・フィルの音が演奏に瑞々しさを与えてくれています。一本調子の所が面白みが無いと言ってしまえばそれまでですが、こういう真面目な曲を真面目な演奏で聴くのも悪くはないでしょう。

Buru5_mata ロブロ・フォン・マタチッチ指揮チェコ・フィル(1970年録音/スプラフォン盤) 年配ファンには懐かしいマタチッチですけれども、最近はやや忘れ去られているようです。録音が少ないので仕方が有りませんが、かつてN響の定期で聴いたワグナーの管弦楽の美しくも豪放な響きは今でも耳の底に焼きついています。ブルックナーの正規録音は5、7、9番しか残っていませんが、どれもが貴重な財産です。この5番はテンポは全体に早めで極めて豪快なのですが、それがブルックナーの持つ野趣の面を強く感じさせてくれて納得します。機械的に上手く空虚な音の演奏とは正に対極に位置します。1楽章の主部などは相当に快速ですが、その一方で2楽章の弦楽はゆったりと味わい深く非常に感動的です。

Buru5_kenpe ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィル(1975年録音/BASF盤) ケンペはクナの指揮でブルックナーが体に染み付いているミュンヘン・フィルと素晴らしい録音を残しました。これはケンペの最大の遺産の一つと言えるでしょう。ゆったりした部分はより遅く、速い部分はスピード感を持って、非常にメリハリが利いています。スケールは大きいのですが、もたついた感じが無いのは流石です。堅牢なオケの響きが、正に石造りの大聖堂を仰ぎ見るようです。響きはやや固めですが金管のバランスが良いので決してうるさくなりません。ケンペとミュンヘンフィルの正規録音が他には4番しかないのが本当に残念です。なお、この演奏は海外のPILZから廉価盤で出ていますが、音が薄いので避けるべきです。国内テイチク旧盤のほうが遙かに優れていますので、最近出たXrcd盤かどちらかを選ぶべきです。

Buru5_eu オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1980年録音/EMI盤) EMIへの全集盤に含まれる演奏です。最円熟期を迎えたヨッフムが全集録音を残すには一番良い時期に完成させてくれたと思います。5番ではマタチッチほどでは無いですが、テンポにかなり緩急をつけています。オケを豪快に鳴らしていますが、ドレスデン管弦楽団のまろやかに溶け合う音が騒々しさを感じさせません。いつもながらこのオケの自然で素朴な音色が魅力的です。音だけで大自然の広がりを感じさせます。マイナスは1楽章の終結部でたたみ込むようにアッチェレランドしてスケールが小さくなったことです。

Buru5_johu オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1986年録音/TAHRA盤) ヨッフムが最晩年にコンセルトへボウと演奏したライブ録音を仏ターラが幾つもCD化してくれたことはブルックナー・ファンにとって感涙の喜びでした。特にこの5番は白眉の演奏で、名演中の名演です。録音が良いのも嬉しいです。柔らかくふくよかにブレンドされた名門コンセルトへボウの音が実に美しく捉えられていて正に「法悦」を感じます。6年前のEMI盤よりもスケールが大きく、1楽章終結部も自然です。2楽章のたっぷりとした深さも素晴らしく、これほどまでに崇高で感動的な演奏も稀です。後半の3、4楽章ももちろん素晴らしいですが、特に終結部の巨大なスケールは圧倒的です。

Buru5_cheri セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1986年録音/Altus盤) 第5番ともなればチェリビダッケを無視する訳には行かないでしょう。但しチェリ・ファンでは無い僕は幾つもCDを持っていません。晩年のミュンヘン・ライブと、このサントリーホールでのライブ盤のみです。相変わらず極度に遅いテンポで、音楽の自然な流れを感じられないために、聴いていて息が詰まります。オーケストラの状態も必ずしもベストでは無かったように感じます。録音も1993年盤の方が良いと思うので、よほどのチェリ・ファンでなければこのディスクは必要無いのではないでしょうか。

Bruckner5_743ベルナルト・ハイティンク指揮ウイーン・フィル(1988年録音/フィリップス盤) 良い演奏が無いわけでは無いハイティンクなのですが、自分とはどうも相性が合いません。普通の意味では「良い」演奏かもしれませんが、自分にはいま一つです。まずウイーン・フィルに演奏させて、この響きは無いだろうと思います。ブルックナーの敬虔な響きが聞こえて来ないからです。フレージングの呼吸の浅さも気に成ります。第3楽章までは、ほとんど聴きどころがないと言って良いぐらい。強いて言うと終楽章ではコラールがスケール大きく鳴り響き、ようやく充実感が得られました。全体的には愛聴盤からは遠い存在です。

Bruckner_5セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1993年録音/EMI盤) 熱心なチェリ・ファンでは無い自分は、この人の演奏を聴いているとどうも極度に遅いテンポに付いて行けずに呼吸困難に陥ってしまいます。ファンはそこが凄いと言うのでしょうけれども。けれども、この演奏は元々巨大な造形美を誇る曲ですので、チェリの良さが発揮されていると思います。テンポの遅さは感じても1986年のサントリー・ライブよりも音楽の流れが感じられますし、響きの美しさや神秘感もこのミュンヘン録音の方がよく感じられます。従ってチェリの第5であれば、この演奏を選びます。

Buru5_want ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘン・フィル(1995年録音/Profil盤) ヴァントのブルックナーには北ドイツ放送やベルリンフィルとの録音が多く存在しますが、個人的に最も好むのは晩年のミュンヘン・フィルとの演奏です。それは、このオケの元々南ドイツ的な素朴で明るめの音がクナ、ケンペ、チェリビダッケという歴代のブルックナー指揮者によってしっかりと受け継がれてきたからです。現代的で都会的なベルリンフィルの音との違いは明らかです。木管のセンスなんかも随分隔たりが有ると感じます。真面目な職人ヴァントは大見得を切ったりはしないので時に面白みの無さを感じたりもしますが、極めてオーソドックスな演奏で曲そのものを味わうにはとても良いと思います。

これらの中で個人的にベスト3を選ぶとすれば、ヨッフム/コンセルトへボウの1986年盤がダントツのナンバー(オンリー)ワンです。そしてケンペ/ミュンヘン・フィル盤がナンバー2。残り一つはマタチッチ/チェコ・フィル、ヨッフム/ドレスデン国立管、ヴァント/ミュンヘン・フィル等と乱立状態ですが、むしろ改訂版のハンディを乗り越えてクナッパーツブッシュのミュンヘン、ウイーン両盤といきたい所です。余り好まないチェリビダッケも1993年盤だけは残しておきたいです。

未聴のCDの中では、もうじきミュンヘン・フィルと来日して第8を演奏するティーレマン盤を聴いてみたいと思っていますが、その感想はその時にまた。

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2010年1月31日 (日)

ブルックナー 交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」 続・名盤

ブルックナー&マーラーの交響曲特集も第4番までやって来ました。ブルックナーの4番だけはこの特集の前に一度、ブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」 名盤というタイトルで記事にしたことがありました。そこで、今回のディスクのご紹介は続編とします。

Brucner8第4番はブルックナーのマニアには一段低く見られがちの作品で、第3番のほうを上にする評論家諸氏も居ます。僕個人としては、多くの曲想が混ざってやや散漫な印象を受ける3番よりもシンプルな曲想で勝負している4番を好んでいます。例えて言えば3番は「幕の内弁当」で4番は「とんかつ弁当」のようなものです。ブルックナーは5番以降で飛躍的に音楽の深みを増しますので、4番をそれらの作品と比べればどうしても浅い印象は受けます。ですがその分、これからブルックナーを聴き始めようという方には逆に親しみ易いかもしれません。副題の「ロマンティック」も作曲者本人が付けたかどうかは定かで有りませんが、知らない人が聴いてみたくなる効用は有るでしょう。

第1楽章はオーストリアはアルプスの大自然です。冒頭のホルンは山々にこだまするアルペンホルンの響き以外の何物でも有りません。巨峰の威容、山間の自然の美しさが次々と目の前に現われます。第2楽章は弦のピチカートとともに自然の中をゆっくりと逍遥する人間です。この楽章は初めは退屈に思えるかもしれませんが、心静かに美しさを味わって欲しいと思います。第3楽章はブルックナーが曲に馴染みやすくする為に「城から騎士達が白馬に乗って現われる・・・」などと説明を付けています。雰囲気としては確かにそんなイメージも湧きますが、余りとらわれることなく純音楽的に聴いても充分楽しめると思います。中間部トリオの木管と弦の美しさ可憐さは、さしずめ花畑を目にするようで得も言われません。終楽章は後期の作品に匹敵する深みに達しています。特に終結部はブルックナーの本質である「宇宙的な広がり」「悠久の自然」を感じさせて非常に感動的です。

この曲のCDでは何といってもカール・ベーム/ウイーンフィルとギュンター・ヴァント/ミュンヘンフィルが絶対のお薦めですが、前回には触れなかったCDをご紹介します。

Burufuru ウイルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウイーンフィル(1951年録音/DECCA盤) ミュンヘンでのライブ演奏です。ベートーヴェンの演奏は正に神業で未だに絶大な人気を集めていますが、ことブルックナーとなると現在フルトヴェングラーの演奏が話題になることは無いと思います。急激なアッチェレランド、粘る歌いまわし、人間感情の爆発というブルックナー演奏の禁じ手が頻繁に現われるからです。それは録音状態を云々する以前の問題であって、この演奏を聴いてブルックナーを聴いた気には到底なれません。その点でクナッパーツブッシュとは天地の開きです。しかしフルトヴェングラーのファンでもしも聴かれていない方には試しにご自分で聴かれることも一興ではないでしょうか。

Cci00030 ハンス・シュミット‐イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1966年録音/TAHRA盤) この人はDECCA録音のベートーヴェンあたりだけを聴いていると穏健でいかにも特徴の無い指揮者と思われてしまいそうですが、北ドイツやバイエルンの放送響を指揮したライブではドイツ魂を感じさせる勇壮な演奏が多く存在します。この録音も実にオーソドックスで素晴らしいブルックナーです。ゆったり気味のテンポですが緊張感を保ち、何よりふくらみの有る美しい響きを引き出していて見事です。といっても最近のベルリンフィルやアメリカのオケのような無機的な美しさとは無縁です。第2楽章や終楽章終結部には非常に奥深い情緒的な味わいが有ります。思わず聞き惚れてしまう好きな演奏です。   

Cci00029 オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1975年録音/TAHRA盤) コンセルトへボウとのライブのブルックナー選集に含まれています。ドレスデンとの全集と同じ年の演奏です。基本的なテンポ設定や解釈にほとんど変わりは無く、オケの持つ音色と録音の違いだけです。コンセルトへボウとヨッフムは長年共演していたのでブルックナーの音楽が自然に染み付いていまし、どちらのオケも最優秀なので甲乙は付けられません。そうなると決め手は録音ですが、透明感の有る録音のこちらのほうを個人的には好んでいます。

Brch4 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1975年録音/EMI盤) ヨッフム/ドレスデンのEMIへの全集録音のひとつです。1楽章は早めのテンポでオケを豪快に鳴らしています。さすがにドレスデンの音は柔らかく、金管も金属的な音になったりはしないのでうるさいとは感じませんが、この豪放な鳴りっぷりは相当なものです。2楽章、3楽章では美しくブルックナーの音楽を味わせてくれます。終楽章もやはり早めのテンポで豪放ですが、至る所でちょっとした変化やアクセントが生きていて聴き応えを増しているのはさすがです。 

Bru950 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ドレスデン国立歌劇場管(1980年録音/DENON盤) ブロムシュテットというのはつくづく指揮者の匂いを感じさせない人だと思います。いくらブルックナーでも少しは指揮者の匂いを感じさせても良いのではとも思います。余りにも真面目すぎる音楽が少々面白みに欠ける気がします。とは言え、ドレスデンの音は柔らかく素朴なのでブルックナーにとても向いています。ウイーンフィルの透明な響きとは違いますが、金属的にならずにふっくらと溶け合った響きが何とも心地良いのです。

Brch950 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1981年録音/CBS SONY盤) 冒頭のホルン~第1主題とゆったりと開始されますが、リズミカルな第2主題は速めになります。主題の性格を忠実に描き分けている感じです。トゥッティでの力強さはさすがバイエルン放送なのですが、トランペットのバランスがほんの僅かに強過ぎる気がします。その結果、耳への心地良さがいまひとつなのです。弦楽は綺麗ですが、特別な閃きまでは感じさせません。この辺りがクーベリックのブルックナーの一つの限界かなという気もします。但し終楽章終結部は深い寂寥感の味わいが良く出ています。

51yayd5unl__ss500_ セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1988年録音/EMI盤) とにかく両端楽章の遅さは尋常では有りません。音楽は演奏時にはもちろん、鑑賞時にも一緒に呼吸をすることが基本と思っていますが、この演奏では息が出来ずに酸欠状態に陥ってしまうのです。良く聴くとミュンヘンPOの金管ですら息切れしています。(苦笑) ということで僕はずっとチェリさんの演奏は嫌いだったのですが、このごろは一緒に呼吸をしなければ良いことに気がつき、案外と聴けるようになりました。そうすると所々での非常に美しい部分に惹かれるのも確かです。演奏全体で好きか嫌いか問われると答えに困りますが、これは確かにユニークな演奏です。 

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2009年5月30日 (土)

ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」 名盤 ~アルプスへの旅~ 

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さて、ライン地方の風景を満喫して、毎日ビールを飲んだくれていたフーテンのハルくんでしたが、旅を続けて次にやって来たのはオーストリア、アルプス山脈の麓にあるリンツです。たいそう美しいこの街には有名な聖フローリアン教会が有るのですが、かつてこの教会のオルガニストを勤めていたのがアントン・ブルックナーです。この人は一般的には決してポピュラーとは言えないでしょうが、日本では本場ドイツ・オーストリア以上に人気が有ります。それぐらいファンの間では熱烈に支持されています。それは一体何故か?ブルックナーの音楽の本質をごく簡単に説明すると「悠久の大自然や宇宙を前にしたはかなさ」ということです。これは他の作曲家の音楽が感じさせるものとはだいぶ異なっています。しいて言えば晩年のシベリウスが似たような性質を持っているぐらいです。要するに、音楽に「人間臭さ」が全く感じられないのです。其処にあるのはアルプスの巨大な山々や、のどかな森林やお花畑、更に晩年の作品に至っては、大自然の風景すらを超越して、まるで大宇宙そのものと自然の摂理みたいな音楽です。いや、ことによると音楽すら越えてしまっているのかもしれません。

数年前にベストセラーになった藤原正彦さんの「国家の品格」の中に、日本人の持つ特徴として『自然に対する繊細な感受性が他の国民よりも格段に豊かであり、悠久の自然の儚い人生に美を感じる』とあります。僕はこの文章を読んだときに、まるでブルックナーの音楽を言い表しているなぁ、と思いました。それゆえに多くの日本人がブルックナーの音楽の本質を理解し愛好するのでしょう。

もっとも、「音楽を聴いて大宇宙や人間の存在の小ささをを感じるなんてつまらない。そんなのはまっぴら御免だ。」という方も居るでしょう。そんな方には、この交響曲第4番は、彼の作品の中では一番アルプスの山々や大自然どまりの雰囲気なので親しみ易いと思います。終楽章の終結部は流石に宇宙を感じさせますが、それ以外は馴染みやすいと思います。その分、後期の一連の作品のような奥深さには不足するのですけれども。しかし、曲の副題が「ロマンティック」というのはちょっといただけないですね。いっそのこと「アルプスシンフォニー」にでもすればいいのにね。それは他にあるって?そうでしたね。さあ涼しい風を体いっぱいに感じながらアルプスの山々を眺めましょう。

それでは愛聴ディスクのご紹介です。

343 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1973年録音/DECCA盤) アルプスの空気と言えばやはりウイーン・フィルの澄み切った清涼な音で聞きたいですね。しかもベームはオーストリアの山岳地帯グラーツの出身です。このコンビぐらいにイメージがピッタリする組み合わせは中々見当たらないでしょう。弦楽も木管も実に美しいですが、音を割ったウインナホルンの威力がアルプスの威容を目の当たりに感じさせてくれます。録音もアナログ全盛期のDECCAだけあって非常に優秀です。

Ph06046 ギュンター・ヴァント指揮ミュンヘン・フィル(2001年録音/Profil盤) アルプスをリンツからドイツ側に下るとミュンヘンが有ります。その為か、昔からミュンヘンのオーケストラはブルックナーを得意にしています。ヴァントもブルックナーを最も得意とした指揮者で、この曲を何度も録音していますが、特に優れたものの一つがこの最晩年のライブ演奏です。この頃のヴァントは元々持っていた職人技を極めて、正に人間国宝のような域に達していたと思います。

108 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(2001年録音/RCA盤) ミュンヘン・フィル盤が2001年9月の録音で、こちらは10月の録音です。そして、このコンサートがヴァントの最後の演奏会になりました。ですので、このコンビが直前の2000年に日本で第9番を聴かせてくれたのは実に幸運でした。あの時の生の音は決して忘れることができません。この第4番の演奏には団員もまるでヴァントの死期を予感していたかのような一種特別な雰囲気が漂っています。枯れているといえばそうなのですが、それが独特の魅力を湛えていて実に感慨深いものが有ります。

Cci00039_2 ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィル(1972年録音/IMG盤) これはライブ録音であり、昔出ていたスタジオ録音とは違います。ケンペもブルックナーを得意としていて、同じミュンヘン・フィルとは第5番の名盤を残していますが、このライブの第4番もそれに匹敵する素晴らしい出来栄えです。この名匠の腕による彫りの深い演奏はどちらかいうとアルプスの自然よりはミュンヘンの街のあのゴシック様式の巨大な聖母教会を想わせる様な立派さです。僕が生で聴くことができたその聖母教会のパイプオルガンの地響きを立てるような音はミュンヘン・フィルの響きに通じていると感じます。

Cci00039b ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1955年録音/DECCA盤) クナ抜きにブルックナー演奏は語れません。但しこの演奏はスタジオ録音ということもあって非常に柔らかい演奏で、あのクナの地響きを立てるようなライブ演奏とはかけ離れています。ところが、それでも魅力を失わないのがクナの面目躍如です。何と美しい響き、表現の演奏なのでしょう。クナには最晩年1964年に同じウイーン・フィルとのライブ録音が有り、それは正に空前絶後、恐らく最も素晴らしい第4番の演奏なのですが、残念なことに音質の悪い非正規盤しか有りません。是非とも正規盤で聴きたいと思うのですが。

Cci00040 カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1955年録音/Archiphon盤) 最後にもう一人ブルックナーを得意としたシューリヒトの演奏もご紹介します。ウイーン・フィルとの録音の3、5、8、9番ほどの名演とは言い難いので、まあこんなのも有りますよ、という程度です。軽い足取りはアルプスの野原を早足でさっさと散策しているかのようです。ドイツでビールを飲んだくれてお腹がポッコン、体の重くなったフーテンのハルくんにはこの速さに付いて行くのはちょっと辛いです。

ブルックナーの他の曲、特に好きな第5、第7、第8、第9番などについてはそのうちにじっくり触れたいと思っています。

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