ブルックナー(交響曲第0番~3番)

2013年5月28日 (火)

ブルックナー 交響曲第3番 ザンデルリング/ロイヤル・コンセルトへボウ管のライブ盤

81hjtilpfpl__aa1500_クルト・ザンデルリンク指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管(1996年録音/コンセルトへボウ管弦楽団アンソロジー第6集1990-2000より)

ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団による自主制作CDについては、クラウス・テンシュテットのマーラー交響曲第5番の演奏をご紹介しましたが、このセットには興味をそそられる録音が目白押しです。そこで今回は、その第2弾としてクルト・ザンデルリングの指揮したブルックナー交響曲第3番をご紹介します。

ブル3といえば、ザンデルリング・ファンには1963年にライプチッヒ・ゲヴァントハウス管を指揮した録音が隠れ名盤として余りにも有名です。(じゃ”隠れ”では無いだろって?それもそうですね。) コンヴィチュニー時代のゲヴァントハウス管の武骨な音をそのまま生かしたスケール大で豪快な演奏でした。それから33年後の演奏と言うことですが、名門コンセルトへボウが相手とあれば期待に胸が膨らみます。

第1楽章はコンセルトへボウの美音を生かした厚みのある響きを醸し出しています。フォルテで音が固くならず、ふくよかな響きが非常に心地良いです。柔らかく歌う弦楽の美しさも旧盤を凌ぎます。反面、音の凝縮が幾らか弱い印象を感じ、旧盤での緊張感は減衰しています。これはライブという条件のせいかもしれません。

第2楽章の美しさは旧盤を大きく凌ぎます。コンセルトへボウの底光りするような響きは本当に美しいです。ヨッフムがこのオケと残した幾つかの名盤を思い出してしまいます。

第3楽章に入ると、音の集中力が高まってきた印象を受けます。けれども響きはあくまでも柔らかく、金属的な響きに陥ることが有りません。

第4楽章もまた同様で、迫力は有っても金管をむやみに強奏させないので響きが濁らず、音の美しさが失われません。ブラームスやブルックナーの演奏にはこの点が不可欠だと思いますが、多くの有名指揮者が過ちを犯すところです。中間部でゆったりと落ち着きを持って歌わせるのにも強く惹かれます。

決して枯れているわけではなく、生命力を充分に感じますが、全体的にゆとりと気宇の大きさを感じさせる正に大人のブルックナーという風情です。正に円熟のザンデルリングによる至芸の極みです。旧盤とどちらが好きかと問われれば、個人的には迷わず新盤と答えるでしょう。

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ブルックナー 交響曲第3番 名盤

ヘルベルト・ケーゲルのブルックナー交響曲第3番

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2010年5月28日 (金)

ヘルベルト・ケーゲルのブルックナー交響曲第3番

本当はマーラーの9番の記事を書くためにCDを順に聴き直しているのですが、中々進まないのでひとつ別の記事にします。

Bur3_kegel

ヘルベルト・ケーゲルは東ドイツで活躍した指揮者ですが、1990年にピストル自殺しました。自殺の原因は明らかでは無く、東西ドイツの統一後に仕事が減ったことに落胆しただとか、色々と言われてはいます。この人のレパートリーは意外に広く、ベートーヴェン、ブルックナー、マーラーといったドイツものだけでなくショスタコーヴィチからシベリウス、ビゼーまで、ジャンルも元々は合唱指揮者だけあってオペラなども得意としていました。実はケーゲルには熱烈なファンが多く、その人達にとってはほとんどが大変な名演とされています。僕はケーゲルを多くは聴いていませんが、残念ながらこれまで最高レベルに気に入った演奏は有りません。中ではマーラーの「大地の歌」が、例えれば『棺に体を半分収めたような』暗く重苦しい、ユニークで印象的な演奏でした。この人の録音はほとんどが、ライプチヒ放送響、もしくはドレスデン・フィルです。どちらのオケも超一流とは言いがたいので(ライプチヒ放送は、以前のアーベントロート時代には優秀でしたが)、どうも聞き劣りするのも正直なところです。そんなケーゲルが珍しく、名門ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団を指揮してブルックナーの3番を演奏したCDが有ります(1986年録音/WEITBRICK盤)。これを最近聴いてみたのですが、中々に良いのです。なんといっても純ドイツ的で無骨な音色を残したゲヴァントハウス管そのものに惹かれます。けれども、そのオケの響きを生かしてブルックナーの魅力を引き出したケーゲルも素晴らしいと思います。繊細であっても神経質にならず、スケールの大きさはあっても騒々しくならず、ほぼ理想のブルックナーです。さすがにクナッパーツブッシュのような風格は感じませんけれども、とても素晴らしい演奏だと思います。以前に、第3番の記事を書きましたが、録音の良い演奏では特別に気入ったものが無いので、これは僕のベスト盤のひとつに上げられるかもしれません。そうなると自ら命を絶たずに、ゲヴァントハウスやシュターツカペレ・ドレスデンのように優秀なオケともっと録音を残して欲しかったと思います。

<過去記事>「ブルックナー交響曲第3番 名盤」

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2010年1月 3日 (日)

ブルックナー 交響曲第3番ニ短調 名盤

Bru226058822早いもので新年三が日も今日で終わり、明日からはまた仕事です。今年も頑張りましょう!

さてニューイヤーの「新世界より」で中断したブルックナー&マーラー特集でしたが、ブルックナーの第3番から再開です。ブルックナーの交響曲は第3番から第6番までが中期と呼べるでしょうが、その中での最高峰が第5番というのは誰もが認めるところです。けれども、この第3番も中々に人気があります。楽想の豊かさでは第4、第6を凌ぐかもしれません。

この曲は初稿がワーグナーに捧げられた為に「ワーグナー交響曲」の愛称で呼ばれます。実際に初稿ではワーグナーの旋律が引用されていましたが、現在一般に演奏されている晩年に改定を行った第3稿では全て省かれています。その為か、この曲は何となく全体のスタイルが統一感に欠ける印象も拭い切れませんが、やはりとても美しくチャーミングな佳作です。ちなみに初稿でのCDも発売されてはいますが、個人的には一度聴いたらそれで充分と言う気がします。

第1楽章<中庸の速さで躍動的に> 弦のトレモロに乗って吹き鳴らされるトランペットで始まり、スケール大きく響き渡るトゥッティとなる楽想は中期の魅力で一杯です。後期の曲ほどに深刻でないので理屈抜きに楽しめますが、反面深さに欠けるのはやむを得ません。頻発する二連と三連音符の組み合わさった美しい動機は典型的なブルックナーの楽曲です。

第2楽章<アダージョ・クワジ・アンダンテ> アダージョですが、後期と違って幸福感を湛えた明るさが有ります。自然や神への祈りをも感じるとても美しい楽曲です。

第3楽章<スケルツオ> 初期の曲よりも段違いに充実しています。激しいリズムの主部に対比されるトリオのゆったりとした舞曲は明るく素朴で何とも魅力的です。

第4楽章<フィナーレ・アレグロ> 急速で厳しい響きの第1主題が終わると、明るいヴァイオリンの伴奏に乗って荘重なコラールが歌われます。この部分も大変にチャーミングで、初中期ならではという感じです。終結部は例によって壮大に鳴り響いて感動的なエンディングとなります。

それでは僕の愛聴盤をご紹介します。

Brucci00010 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1954年録音/DECCA盤) 昔から宇野功芳先生が推薦している有名な演奏です。僕も学生時代にLP盤を購入してよく聴きました。モノラル録音にしては良好な音質で昔のウイーン・フィルの陶酔感溢れる美音がこぼれ落ちるようですが、現在となってはやはり音質への不満が無いわけではありません。第1~3楽章まではクナにしては速めのテンポで進めていて緊張感も有って良いのですが、第4楽章に緊張感が不足するのが大きなマイナスです。後述のライブ盤の凄演を知っているファンにとってはこの"ゆるい"スタジオ録音盤に満足するのはちょっと難しいと思います。

Bru899 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ウイーン・フィル(1960年録音/Altus盤) 楽友協会大ホールでのライブ録音です。演奏だけを取ればDECCAの54年盤よりも格段に優れた出来栄えです。ウイーンフィルの甘くこぼれるような美音と晩年のクナのスケールの大きさを兼ね備えた理想的な演奏だからです。第1楽章の二連/三連主題の弦の柔らかさはDECCA盤以上ですし、トゥッティの緊張感を持つ響きには凄みすら感じさせます。但し問題はマスタリングで、中音部の抜けた高音強調型の音がキンキンうるさいことです。データを見るとエンジニアが巷で悪評の高いアイヒンガー&クラウスとあります。これでは貴重な音源の発掘価値がぶち壊しというもので非常に残念です。 

Burukunacci00011 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮北ドイツ放送響(1962年録音/Music&Arts盤) 晩年のハンブルクでのライブ録音です。音質が非常に良いのが嬉しいです。60年盤と違って中低音がぶ厚い録音(マスタリング)なので、クナのスケールの大きさが充分に感じられます。第1楽章の前半では遅いテンポに緊張感がまだ付いていきていませんが、後半は緊張感が増してスケール壮大となります。第2楽章もたっぷりとして良いのですが、ウイーン・フィルの柔らかく魅惑的な表情と比べると聞き劣りがします。第3楽章は一転して厳しく豪快なリズムが素晴らしいです。音楽がオケに合っているのでしょう。終楽章も同様で遅いテンポで巨大な音楽となっています。コラールも非常にゆったりとして懐かしさを感じさせて素晴らしいです。

■ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィル(1964年録音) 写真が無いのは現在はCDを持っていないからです。以前、ゴールデンメロドラム盤で聴いていましたので触れておきます。この演奏は中野雄先生が実際にお聴きになられたコンサートとのことで、著述もされています。曰く「地鳴りのような響きの記憶は鮮明に耳の奥に残っている」です。Gメロドラム盤の音質が余りに貧弱なので手放しましたが、いつか正規録音盤が出ないかと期待をしています。クナのこのミュンヘンでのラストコンサートは貧弱な音からもその凄さを知る事が出来ますし、中野先生の記憶が全くその通りであろうことが良く判ります。この最晩年のクナの演奏はウイーンでの1960年盤と並ぶかそれを越えるものである気がしますので、それを正規音源で確かめたくてなりません。

0021512bc クルト・ザンデルリンク指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1963年録音/Berlin classics盤) かつてゲヴァントハウスの首席指揮者を務めたコンヴィチュニーがブルックナーの5番、7番に名盤を残していますが、これは彼が他界した翌年の録音です。ですのでオケの響きがコンヴィチュニー時代そのままの質実剛健で古色蒼然としたものです。ウイーンスタイルの柔らかさは有りませんが、素朴で下手な味付けの無い音色に逆に惹かれます。それでも第1楽章の二連/三連部分などは弦もとてもよく歌っています。若きザンデルリンクの豪快さも凄いですが、個人的な好みでは少々音を鳴らし過ぎで、管の強奏がやや耳につきます。第2楽章の弦の素朴な音色は良いですが、盛り上がりのカロリーは中々高めです。第3楽章は速めのテンポで実に豪快ですが、トリオではゆったりと歌っています。第4楽章はじっくりとやや遅めのテンポですが迫力は満点。後年のザンデルリンクのスタイルを感じさせます。クナ以外では最も豪快な演奏と言えるでしょう。但しコラールはゆったりと魅力的です。

Bruchcci00010 カール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1965年録音/EMI盤) 同じウイーン・フィルを振ってもクナの豪傑型のスタイルとは全然異って実にスッキリと端正な演奏です。初期の曲という点ではシューリヒトの方が正統的なのではないかと思ったりもします。シューリヒトが同じEMIに残した8番、9番と比べると出来栄えは落ちるかもしれませんが、これも60年代のウイーン・フィルの美感を捉えた名演だと思います。トゥッティになっても音の柔らかさと張りを兼ね備えていて実に素晴らしいです。第2楽章の純粋な美しさも非常に印象的ですし、第3楽章の良い意味で"軽み"の有るリズムも素晴らしいです。第4楽章は少しもうるさくならずに徐々に高揚してゆく辺りは流石にシューリヒトの匠の技です。録音は古めですが、僕の持っているドイツプレス盤はしっとりとした音でさして不満は感じません。。

41z9svllqklカール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1970年録音/DECCA盤) この演奏は昔聴いた時には金管の音が金属的に感じられて余り良い印象は有りませんでしたが、いま改めて聴くとやはり素晴らしい演奏です。ベームの引き出す厳しく引き締まった響きは音楽の穏やかさや陶酔感を遠ざけるものの、造形感や構築力が見事で、音楽が立派に聞こえることこの上もありません。とても迫力が有りますが荒さは感じません。ウイーン・フィルの音の美しさ、繊細さを生かしながら豪快さと両立をさせていて聴き応え充分の名演奏です。

Cci00007 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1977年録音/EMI盤) 当時の同じ東ドイツの楽団としてゲヴァントハウスを聴いた後に聴くと、いかにもふっくらと柔らかい音に感じます。と言ってもウイーンの洗練された艶っぽさとは異なるずっと素朴な音です。オランダプレスの全集盤ではその音をそのまま味わう事ができます。トゥッティでの溶け合った美しい響きには法悦感さえ感じます。ゲヴァントハウスでは残念ながらこういう感覚は得られません。但し70年代のヨッフムの指揮はスケールが大きい訳ではなく、第1楽章の最後などはややアッチェレランド気味なのでスケールは小さくなります。第2楽章以降はヨッフムがことさら何かをしている訳ではなくオケの美しい響きに任せているという印象です。ですので聴いている時にはとても心地が良いのですが、聴き終えた後にそれほど強い印象は残りません。

Bru951 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1980年録音/SONY盤) ドイツ音楽を得意にするクーベリックだったのにブルックナーのスタジオ録音は僅かにSONYへの3番、4番のみでした。これは大変に残念な事です。遅めのテンポでゆったりとスケール大きくオケを響かせますが、弦と管が上手くブレンドさせて美しく、トゥッティでもうるさくなることが有りません。ミュンヘン・フィルといいバイエルン放送といい南ドイツのオケは本当にブルックナーに適正を感じます。唯一気に入らないのは4楽章のコラール部分のヴァイオリン伴奏です。少々ぶっきらぼうでいじらしさに欠けている気がします。クーベリックには他に70年のライブ録音(Audite)も有るのでとても興味が有りますが未聴です。

Brucknersymphonie3wsmataciccoverロブロ・フォン・マタチッチ指揮ウイーン響(1982年録音/METEOR盤) 海賊盤ですが上げておきたいと思います。マタチッチの第3にセッション録音は有りませんが、このMETEOR盤の他にはBBCレーベルから出たフィルハーモニア管との1983年ライブ盤が有ります。この1982年盤は録音もまずまずですし、ウイーン響の音にはしなやかさが有って中々に良いです。マタチッチですので豪快さとおおらかさを兼ね備えて余り神経質にならないのはこの曲には好ましいです。ライブ特有の演奏の傷は散見されますが気になるほどでは無いですし、何よりマタチッチの演奏を聴けるだけでも有難いです。

Bruckner71lp1ko6byl__sl1429_ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送響(1985年録音/Profile盤) ヴァントのブルックナーは出来不出来が少なく常に高次元を保っていると思いますが、この演奏からは意外に感銘を受けませんでした。大きな理由としては金管のハーモニーがそれほど美しく感じられないからです。かといってクナッパーツブッシュのライブのような豪快な迫力も有りません。実演で聴けばともかく、CDで聴く分にはライヴ録音のデメリットが出てしまったようです。同じ北ドイツ放送響とのライヴに1992年録音(RCA盤)も有って自分は未聴ですが、そちらのほうが恐らく出来映えは良いのではないでしょうか。

Chli_bru3 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1987年録音/EMI盤) クナッパーツブッシュやクレンペラーのテンポの「遅さ」が凄いと感じるのは、通常早い部分で遅くなるからです。元々遅い部分では驚くほど遅くはないのです。ところが晩年のチェリビダッケの場合は、元々遅い部分が更に遅くなります。それで聴いていて息が詰まってしまうのです。この3番の演奏も典型的な晩年のスタイルです。スケールの大きさを感じるよりも、聴き通すのに長さを感じてしまいます。この演奏に関しては、オケの響きも特別に美しいとも思いません。

実は第3番にはベストと呼べるCDが有りません。強いて言えば一番楽しめるのはクナッパーツブッシュ/ウイーン・フィルの1960年ライブ盤というところです。これが良質なマスタリングのステレオ録音だったら良かったのですけれど・・・。
そこで現段階で上げておくのはベーム/ウイーン・フィル盤です。

<後日記事>
ヘルベルト・ケーゲルのブルックナー交響曲第3番

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2009年12月19日 (土)

ブルックナー 交響曲第2番ハ短調 名盤

200_2 曲の完成順で言えば、「第1番」、「第0番」、「第2番」の3曲がブルックナーの初期の交響曲です。後期の作品のあの深遠な世界に魅入られてファンになった(入信した?)人達にとっては初期の作品もまた大変味わい深い作品群です。これらを聴いて初めてブルックナー鑑賞の最終段階と言えるでしょう。ですが逆に初期作品から聴き始めると音楽の持つ魅力を理解する前に退屈してしまう恐れがあります。ですのでこれからブルックナーを聴いてみようかと思われる方には、中後期の「7番」辺りから聴き始めて「3番」「4番」「5番」「8番」「9番」と順に制覇して頂くことをお薦めします。

初期の3曲の中では、やはり最後の「第2番」の出来栄えが優れています。中には中期の「第3番」「第4番」よりも好む方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。第1楽章モデラートは、さながら心を弾ませてアルプスの野山を散策しているような雰囲気です。遠くの雄大な山々を眺めてみたり、足元に咲く花々に目を留めたり、爽やかな空気を吸ったりと、大自然の美しさを満喫できます。第2楽章アンダンテも同様なのですが、もっとゆったりとした曲想でずっと瞑想的です。第3楽章スケルツオは、いかにも初期のブルックナー的な野趣に溢れたとても楽しい曲です。そして第4楽章フィナーレは非常に印象的な、心が沸き立つような曲です。この楽章だけは初めて聴く方でも即座に魅了されることでしょう。

それでは、僕の愛聴盤をご紹介します。後期の曲に比べると普段聴く回数がずっと少ないので所有するCDは限られています。

Bru_yoh02 オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送響(1968年録音/グラモフォン盤) ヨッフムの一度目の全集はベルリン・フィルとバイエルン放送響とを曲によって振り分けていますが、音の傾向からするとバイエルン放送響のほうがブルックナーには適していると思います。オーストリアに最も近く、アルプス山脈の麓と言っても良いミュンヘンの楽団は昔からブルックナーが得意です。恐らくはドイツの国の中でもオーストリアと気質が似ているのと、素朴で明るい音が適しているのだと思います。この演奏はそんな特色が生かされた素晴らしい演奏です。曲の隅々までデリカシーに溢れて美しいですし、3、4楽章の切れの良さも最高です。現在は分売もされているので、これ1枚でこの曲を楽しむのにも何ら不足は有りません。

Bru_holst ホルスト・シュタイン指揮ウイーン・フィル(1973年録音/DECCA盤) シュタインはわが国のN響を何度も指揮しましたのでオールドファンには良く知られるドイツ正統派ですが、僕はこれまで特別感動した演奏を聴いたことが有りません。全て中の中レベルどまりでした。とは言え、この演奏はウイーン・フィルを指揮したブルックナーなので期待は高まります。ところが第1楽章は早めのテンポにどうも忙しなさを感じてしまいますし、響きも少々うるさい感じです。第2楽章はさすがにウイーン・フィルで美しいですが、第3、第4楽章になると切れの良い力演であるものの、やはり全体的にうるささを感じます。なお、この演奏はハース版ですが、ノヴァーク原典版の方が良いと思います。

Cci00007 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン歌劇場管(1980年録音/EMI盤) ヨッフム二度目の全集への録音ですが、バイエルン放送盤の名演をも更に上回る最高の出来栄えです。基本的な表現は同じですし、どちらのオケも魅力的なので1、2楽章では甲乙が付け難いですが、3楽章は新盤の方が幾分遅いテンポでスケールの大きいことがプラスです。後期の曲的な演奏と言えるでしょう。逆に終楽章ではテンポを速めて緊迫感が増していて、思わず惹きこまれます。これはブルックナーの指定の"速く"を徹底した結果です。僕はこの演奏を第2番のベスト盤にしたいのですが、現在出ている海外EMI盤のBoxセットはArtリマスターであり、高音が強調されているためにドレスデンの音らしからぬ響きに聞こえます。そこで旧盤(オランダ盤)に買い換えたところ、中低域の音がずっと厚くなり、本来のドレスデンらしい音になって非常に満足しています。

Bru_scro02 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー指揮ザールブリュッケン放送響(1999年録音/ARTE NOVA盤) スクロヴァチェフスキーの演奏も非常に魅力的です。この人のブルックナーの中でも特に優れた1枚ではないでしょうか。スタイルとしてはヨッフムの旧盤に似ています。1、2楽章はとても美しいですし、スケルツォや終楽章の切れの良さもヨッフムに比べても遜色が有りません。ザールブリュッケン放送響も中々に優れたオケですし、音色に素朴さを失わないのがプラスです。これは廉価盤ですが録音も優秀ですし、このCDだけでも曲の魅力を充分に味わうことが出来ると思います。

<記事追記>

Bru034 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン響(1974年録音/TESTAMENT盤) ブログお友達のたろうさんの愛聴盤ということでとても興味が有り、たまたま中古店で見つけたので購入してみました。後年のジュリーニの遅いテンポで粘りつくような演奏とはだいぶ異なります。非常に良く歌う演奏ですが、もたれることは有りません。ウイーン響の音もとても美しく、トゥッティでうるさくならないのも良いです。流麗なカンタービレは正にジュリーニ調ですが、明るい表情がややイタリア的?に感じられる気もします。3、4楽章はスケールは非常に大きいですが、音楽の厳しさという点ではやはりヨッフムのほうが優る印象です。全体的にとても美しく良い演奏だと思いますが、僕の好みでいえばやはりヨッフム/ドレスデン盤がベストです。

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2009年12月14日 (月)

ブルックナー 交響曲第0番二短調 名盤

Bruckner アントン・ブルックナーの交響曲には第1番から9番の他にもへ短調交響曲と第0番が存在します。このうちのヘ短調は全くの習作ですが、第0番のほうは少々ややこしいのです。この曲に着手したのは第1番よりも以前ですが、完成したのは実は第1番よりも後だというのが現在の定説です。ですがブルックナー自身は2番の名称を与えることなく0番としました。その理由は分かりませんが、ちょっと可哀相な作品です。ですので一昔前には交響曲全集にも含まれませんでしたし、単独でも録音がされることは滅多に有りませんでした。けれども最近は全集に含まれるケースが増えましたし、ファンの間では結構愛聴されています。

ブルックナー・ファンにとってはこの曲からアルプスの山々の美しさや悠久の自然を感じ取る事は容易です。第1楽章アレグロは少々変化に乏しく長ったるく感じないでも有りません。しかし第2楽章アンダンテは非常に美しい曲ですし、第3楽章スケルツオも素朴で野趣を感じるあたりは初期の作品としてよく出来ています。第4楽章モデラートはバロック的な対位法による旋律の絡みが主体の曲ですが、初期作品とはいえ音楽はとても立派です。

とは言え僕は第1番も第2番も普段は余り聴きませんし、0番になると更に聴くことが少なくなります。ですので所有CDも僅かに1種類だけなのですが、ご紹介します。

Buru0 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー指揮ザール・ブリュッケン放送響(1999年録音/ARTE NOVA盤) ブルックナー指揮者には大きく分けてクナッパーツブッシュ、マタチッチ、ヨッフム、朝比奈などに代表される細部にこだわらない無手勝流豪快型と、細部を彫琢して積み重ねていくシューリヒトやヴァントに代表される職人型の二つのタイプが有ると思います。スクロヴァチェフスキーは完全に後者の職人型です。但しシューリヒトやヴァントは職人として100%完成の域に到達しましたが、スクロヴァチェフスキーは2人と比べてしまうとせいぜい90%というところでしょうか。何年か前にこの人がN響定期で振った8番を聴いてなかなか感心しましたが、後期の曲の場合には更なる高みを望んでしまいます。

とはいえザール・ブリュッケン放送響と残した全集の中でも初期の曲については、非常に満足のできるレベルです。初期の曲を後期の曲のように巨大に演奏するのも一つのやり方ですが、その曲の等身大の大きさの演奏というのもリファレンスとして貴重だと思います。そういう点でスクロヴァチェフスキー盤は安心して曲を楽しむ事が出来ます。ザールブリュッケン放送響は技術的にも問題は有りませんし、この曲に名演奏を残してくれた事を喜びたいと思います。

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2009年11月24日 (火)

ブルックナー 交響曲第1番ハ短調 名盤

335pxantonbruckner_2 アントン・ブルックナーはオーストリアのリンツにある聖フローリアン教会でオルガニストを勤めていました。敬虔なカトリック信者である彼は自らの作品を神様に捧げようとしたのです。このことだけでも彼が随分浮世離れした人物であったことが分ります。彼の作品の中心は交響曲と宗教曲ですが、一般に人気の有るのは何と言っても一連の交響曲作品です。よく彼の作品は「オルガン的」と言われますが、それは単に管弦楽の響きの方法論であって、決して音楽の本質では有りません。本質は、浮世(俗世間)を離れた、あたかも自然界や宇宙界、森羅万象の世界を想像させる、およそ他のいかなる作曲家とも異なる独自のものです。けれども、このような音楽というのは、自然や季節の移り変わりや"もののあはれ"を理解する日本人にとっては感覚的に案外受け入れ易いと思います。ですので日本には本国ドイツ、オーストリア以上にブルックナー・ファンが大勢居ます。数年前迄は朝比奈隆やギュンター・ヴァントというブルックナーを得意とする指揮者が現役でしたので、ブルックナー・ファン達も非常に賑やかでしたが、最近は少々沈静化してしまった感が有ります。巨匠の時代の終わりと共に、ブルックナー演奏の時代も区切りが付いてしまったとすれば大変残念な事です。

ブルックナーの交響曲には第1番から未完成で終わった9番迄の作品の他にも、第0番、習作の第00番が有ります。近年は全集盤に0番と00番が入るものも増えています。ところで僕はブルックナーは大好きですが、全ての交響曲を万遍無く聴いている訳でも有りません。愛聴していると言えるのは後期の大曲である5番、7番、8番、9番ぐらいです。次いでは3番、4番でしょうか。1番、2番、6番ももちろん好きですが、普段はほとんど聴きません。ところが熱烈なブルックナーファンは初期の0、1、2番も愛好しますし、8番、9番あたりの曲は、あらゆる録音を全て聴くという人も決して珍しくは有りません。事実自分の友人にも存在します。そういう意味では自分は熱烈なブルックナーファンでも無いかもしれません。

交響曲第1番は1868年にブルックナー自身の指揮で初演されました。マーラーの第1番の初演が1889年ですので、先んじること21年です。規律正しくいかにも独欧系の音楽という風情で進行する第1楽章アレグロ、オーストリアの美しい自然を想わせる第2楽章アダージョ、野趣に溢れた第3楽章スケルツオ、激しく高揚する第4楽章フィナーレと、いずれも魅力的です。ブルックナーファンにとっては無条件で楽しめます。しかしファン以外が聴いて楽しめるかというと果たしてどうでしょうか。正直よく分かりません。これからブルックナーを聴かれるという方は、まず先に3、4、5、7、8、9番を聴かれた後からでも遅くないと思います。

この曲は普段聴く事が無いので所有するCDの種類もごく限られてはいますが、ご紹介しておきます。

41kqn94kz0l__ss500_ オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィル(1965年録音/グラモフォン盤) ヨッフムもブルックナーを得意にしていた名指揮者です。特に晩年の幾つかのライブ録音はいずれも最上のブルックナーでした。この1番はグラモフォンでの最初の交響曲全集の中の録音で、宇野功芳先生が昔から絶賛している演奏です。ベルリン・フィルがフルトヴェングラー時代のドイツ的な音色をかろうじて残している時期の録音なので幸運でした。元々パワフルなオケが音楽を踏み外さずに、力強く、かつ美しく響かせているのはやはりヨッフムの実力だと思います。終楽章などは実に見事です。アダージョの美感やスケルツオの切れの良いリズム感などにも惚れ惚れします。

2059c48ea678dc0cfe8109975a4bb3591 オイゲン・ヨッフム指揮ドレスデン国立歌劇場管(1978年録音/EMI盤) グラモフォン盤に続いて二度目の全集の中の録音です。完全無欠のベルリン・フィル盤に対して、ドレスデン盤はどこか集中力にスキが有るような気がします。それはオケの持つ性格も有るのかもしれません。宇野先生などは明らかにベルリン盤の方が上と言われています。ところが人の好みというのは面白いもので、僕はむしろドレスデン盤に惹かれます。聴きようによってはややメカニカルな音に聞こえるベルリン・フィルよりも、音に素朴さが有るドレスデンの方が聴いていて心地よいのです。とは言え、どちらか片方を選んでも問題は有りませんし、両方を聴かれればもちろん更に良いと思います。

ヨッフム以外であれば、たぶんヴァントかスクロヴァチェフスキー辺りが無難なところではないでしょうか。但し僕は聴いていません。

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