東京ニューシティ管弦楽団定期演奏会 指揮 飯森範親 ピアノ 三原未紗子
日曜日は東京芸術劇場で行われた東京ニューシティ管弦楽団の定期演奏会へ行きました。
一昨年のブラームス国際コンクールのピアノ部門に優勝した三原未紗子さんがソリストを務め、コンクールのファイナルで弾いたブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴くことが出来るからです。三原さんは若手ピアニストでは珍しく、非常に懐の広い、含蓄のある演奏をする人です。つまりブラームスの音楽にピッタリですし、実際にコンクールでも審査員の先生方から「ブラームスの音をしていた」と評価されたと聞いています。
緊急事態宣言下の上に更に降雪予報が出ていたのでハラハラしましたが無事に開催されました。
この日指揮者を務めた飯森範親氏は現在契約している東京交響楽団から、こちらのオーケストラの音楽監督へ2022年に就任することが決まっているそうです。今日は就任決定後の初の演奏会であるからか、開演前にプレトークをされて、就任への並々ならぬ意気込みについて語られました。
ということで演奏に期待が高まりました。
前プロのキラールの作品は弦楽合奏で、ヴァイオリン、ヴィオラはスタンディングでの演奏でした。徐々にハーモニーやリズムが重なり合って盛り上がる面白い曲ですが、どこからか「ゴジラ」のテーマを連想してしまいました。
そして前半2曲目がブラームスです。この協奏曲第1番は実演では滅多に聴くことがありませんが、第2番とともに「溺愛する」と言える愛聴曲です。特に第1番はこのホールで1998年か99年にラドゥ・ルプーの独奏、ホルスト・シュタイン(懐かしいですね!)指揮バンベルク交響楽団で大変素晴らしい演奏を聴いたことがあります。(その記事はこちらから ブラームス ピアノ協奏曲第1番 名盤 )
なにしろこの曲を生で聴くのはそれ以来ですし、しかもソリストが三原さんなので胸が高まりました。
いよいよ三原さんが出て来て演奏開始です。冒頭には交響曲以上にシンフォニックな管弦楽が続きますが、中々に気合が入っている重厚な響きが聞こえ、「おっ、これは!」と思いました。
そしてピアノが入ります。それまでの管弦楽のテンポから幾らか落ち着いたテンポで、しかし緊張感の有る空気を作ります。そして曲が進み、ピアノと管弦楽が交互に演奏を繰り広げますが、三原さんの音は打鍵の強さは感じるものの、それが決して力任せでは無いしなやかさが有り、常に管弦楽と共に、ブラームスのあの地味ながら非常に美しいハーモニーをホールに響かせ続けました。
飯森氏の指揮に導かれるようにホルンも非常に好演、弦も木管もとても綺麗でした。それらが三原さんの弾くスタインウェイのピアノと良く溶け合っていて正に至福のブラームスでした。
そうなれば、第2楽章に益々期待します。夜空に浮かんだ月が雲の合間から出てはまた隠れる様を永遠に繰り返すような美しい音楽ですが、正にそんな雰囲気を醸し出してくれました。これぞブラームス!
静寂から一転して始まるフィナーレでは、三原さんは思いのほか速いテンポで弾き出しました。1、2楽章がゆったりと広がりの有るテンポでしたので、スリリングな対比に思わず興奮させられます。しかし基本テンポは速くても、聴かせどころではピアノも管弦楽も大きく歌い、心から堪能させてくれます。
なにしろトータル演奏時間が交響曲よりも長いという長大な協奏曲ですが、その長さを全く感じさせない素晴らしい演奏でした。それは恐らく、三原さんの飯森マエストロへのリスペクト、マエストロの三原さんへの高い信頼、オーケストラ団員の二人への信頼と共感、さらには出演者のこの一年に渡るコロナ禍での苦境を乗り越えての演奏会への気合や喜びや、会場に足を運んでくれたお客様の期待感、それらが全て一体になったからこそ、このような素晴らしい演奏会になったのだと思います。
おっと、後半のストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」についても。
この曲は元々ピアノ協奏曲的な要素が有りますが、三原さんは休憩中に普通の黒衣装に着替えて、今度は後方に下がったピアノに着きました。自らこの曲の演奏も買って出たそうです。凄いですね!
1947年の3管編成版でしたが、飯森氏の指揮は管弦楽を綺麗に鳴らしてまとめ上げ、且つこの曲がバレエ音楽であることを認識させてくれるようなリズム感と楽しさに溢れるとても良い演奏でした。
今後の音楽監督への就任が楽しみです。このオーケストラの実力を見直す演奏会でしたが、今後さらに飛躍させてくれること間違いなさそうです。いずれ三原さんとも次は第2番の協奏曲を聴かせてくれたら良いと思います。
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