ブラームス(交響曲第1番~4番)

2014年11月28日 (金)

ブラームス 今年聴いた交響曲のCDから

それでは今年聴いたブラームスの交響曲CDの単独盤をご紹介します。古い奴だとお思いでしょうが・・・相変わらず古いCDばかりです。(苦笑)

交響曲第1番

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ヨーゼフ・クリップス指揮ウイーン・フィル(1956年録音/DECCA盤)

クリップスによる最初期のステレオ録音ですが、音質は良好で許容出来ます。それにしても当時のウイーン・フィルの響きの何とも魅力的なこと!堅牢な造形を誇るドイツ・スタイルとはまるで異なる柔らかい音のウイーン風ですが、ゆったりと構えて下手なテンポ操作を行わないオーソドックスな指揮なので、安心して耳を委ねられます。と言うよりも、演奏に心が自然と惹き込まれてしまい、気付けば陶酔して浸り切っている自分が居ます。特に2楽章の歌いぶりの何と甘く柔らかいことか。単なる伴奏音型さえもがドキッとさせるほどに魅力的なのです。ヴァイオリン独奏も魅惑の限りで、名前の記述は無いのですが、恐らくはウイリー・ボスコフスキーでしょう。終楽章の序奏はあっさりと始まりますが、第1主題の歌も軽く流すようです。展開部でも力みが一切有りませんので、迫力不足に感じられるでしょうが、これこそが古くて粋なウイーンのスタイルです。

交響曲第3番

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グィド・カンテルリ指揮フィルハーモニア管(1955年録音/EMI盤)

これはEMIの9枚組BOXの中の1曲です。録音の大半はモノラルですが、この曲はステレオ録音ですので聴き易く、同じくこのBOXに収められた第1番のモノラル録音とは音質に大差が有ります。音にざらつきも少なく、当時のEMIの録音にしてはかなり良質な部類です。しかしオーケストラの管楽と弦楽をふっくらと柔らかくブレンドさせた心地良い響きを造り出しているのはカンテルリの実力なのでしょう。テンポも速からず遅からず中庸で落ち着きが有り、イン・テンポをしっかりと守るので安心して聴いていられます。大袈裟に歌わせないのもかかわらず情感にも事欠きません。ドイツの武骨さこそ有りませんが、これは極めてオードソックスなブラームスという印象です。イタリアの若手指揮者がこれだけのブラームスを振れるのは驚きで、飛行機事故による死がつくづく惜しまれます。

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イシュトヴァン・ケルテス指揮ウイーン・フィル(1973年録音/DECCA盤)

奇しくも若くして事故死した指揮者が続きますが、その割にはケルテスには録音の数が案外と多く、ブラームスも交響曲全集を残しました。同じ1970年代のウイーン・フィルとの録音とあればグラモフォンのベーム盤と比べたくなりますが、あくまで自然体で立派な貫禄を感じさせるベームとは対照的な演奏です。こちらは「積極的表現主義」とでも言えそうな、楽譜の読み方からして表現意欲が満々だからです。パートごとの音量バランスやダイナミクスがかなり極端です。特定の音型が強調されたり、通常は目立たない金管の音が浮き上がってみたりと、それはマーラーやワーグナーなら大成功するような手法です。しかしブラームスではどうか・・・。少なくとも自分は違和感を憶えてしまいます。愉しめないどころかわずらわしさを感じてしまうのです。基本テンポがいじられずにイン・テンポを守っているのは唯一の救いです。これが若さに任せた演奏だとすれば、円熟したこの人がどんなブラームスを演奏したか聴いてみたかった気はします。

交響曲第4番

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サー・ジョン・バルビローリ指揮ウイーン・フィル(1967年録音/EMI盤)

バルビローリの全集はかつて廉価のDisky盤で持っていましたが、現在は有りません。ところがこの第4番の演奏を熱烈に支持されるCBEDさんからコメントを頂いてからというもの再び聴きたくなってしまいました。そこで入手したのは中古の東芝盤です。最新リマスターに良くありがちな高域強調型でない為にEMI録音にしては聴き易さを感じます。改めて聴いてみて、つくづく深い情感に覆われた演奏だと思います。この人のマーラー演奏のようにテンポは遅く、一歩一歩を踏みしめながら歩みますが、演奏スタイルと同期しているせいか不思議と不自然さやもたれる印象は受けません。ブラームスの古典的造形は希薄でも、内面のロマンティシズムのほとばしりによって、他には例が無いぐらい強い説得力を持ちます。恐らくはバルビローリにしか演奏が出来ない非常に個性的なブラームスです。

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イシュトヴァン・ケルテス指揮ウイーン・フィル(1972年録音/DECCA盤)

現在出ているCDでは、上述の第3番とカップリングされています。お買得ですが、演奏そのものは第3番の表現スタイルと同じです。けれども1、2楽章には抵抗感は感じられず、逆に青春の光と陰のような新鮮なブラームスを愉しめました。問題は3、4楽章で、極めて積極的でダイナミックな表現がブラームスのイメージからは遠ざかります。但し、それも聴き手の好み次第ですし、こういうブラームスが好きだという方は案外と多いのではないでしょうか。自分自身、普段は枯れたブラームスを好んで聴いているので、余り固定概念にとらわれないようにする為に、時にはこのような演奏を耳にするのも良いのかもしれません。

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ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管(1996年録音/DECCA盤)

シュターツカペレ・ドレスデン、北ドイツ放送響の他にもうひとつ”ブラームス・オーケストラ”を上げるとすればライプチッヒ・ゲヴァントハウス管でしょう。ところが残念なことにコンヴィチュニー以降、指揮者に余り恵まれなかった為に目ぼしいディスク録音が有りません。この演奏もいかにもブロムシュテットらしい誠実な演奏です。けれどもこの曲の魅力を充分に引き出しているかというと疑問です。古典的な造形性は素晴らしく保たれていますが、センチメンタリズムやロマンティシズムが不足です。第1番や第2番であれば構いませんが、第4番がこれでは頂けません。表情があっさりし過ぎている部分も多いですし、気迫や重厚さにも不足して感じられる箇所が見受けられます。管弦楽の響きが素晴らしいだけに残念でなりません。もっとも、このディスクには作品74-1や作品110の3つのモテット、作品109「祭典と記念の格言」といった無伴奏合唱曲が収録されていて、むしろこちらのほうが価値が高い気がします。

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2013年11月29日 (金)

秋のブラームス祭り フィナーレ ~今年聴いたシンフォニーのCDから~

すっかり寒くなってきました。昨日は北国だけではなく西日本でも雪がちらついたそうです。”冬将軍”の足音もどんどんと大きくなって、晩秋も終わりを遂げようとしています。
ということで「秋のブラームス祭り」も、いよいよフィナーレですが、締めくくりはやはりシンフォニー特集と行きましょう。但し、今年は新しく聴いたブラームスの交響曲のCDが例年に比べて不作でした。これも異常気象と猛暑の影響なのでしょうか。夏の暑さがずっと続いて、秋の訪れが遅れてしまっては、さすがのブラージアーナーといえどもブラームスを聴く気分が減退させられても不思議は有りません。ブラームス愛好家の減少を防ぐためにも、世界の温暖化対策の実施は火急の責務でしょう。(ホント?)

などなどと、妙ちくりんな話をウジウジと並べたてる、こういう性格こそがブラームジアーナーたる所以なのですが。(苦笑)

ともかく、今年ご紹介するブラームスのシンフォニーCDは本当に少ないのですよ。フィナーレと呼ぶのもはばかれる枚数ですが、順にご紹介してゆきます。

交響曲第1番

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クリストフ・エッシェンバッハ指揮北ドイツ放送響(2000年録音/En Larmes盤)

いきなり海賊盤CD-Rが登場するあたり、今年の不作を物語りますが、エッシェンバッハのブラームスは昨年、ヒューストン響と録音した交響曲全集をご紹介しました。まるでドイツのオケと間違えるような響きを醸し出したスケールの大きな名演奏ですが、細部にこだわって聴いてみると微妙な違いにはどうしても気付かされてしまいます。そこで、北ドイツ放送響あたりとの再録音を望みたいと書いたのでしたが、その夢が多少でも適ったのが、この海賊盤です。海賊盤のCD-Rにはメジャーレーベルの正規盤以上の音質のものも数多く存在しますが、もちろん逆のものも有ります。En Larmesはレーベルとしては優秀な方だと思っていますが、実際に聴いてみるまでは分かりません。
で、このディスクの音質は最優秀では有りませんが、合格です。最強音時に僅かに音のざらつきをを感じますが、全体的にはバランスも良く、下手なアナログ・リマスター盤よりはずっとまともです。EMI録音のヒューストン響と比べても、やはりドイツのオケの音を聴いている実感が湧いてきます。実際に聴いたこのオケの生の音に近いのが嬉しいです。シュターツカペレ・ドレスデン、それにゲヴァントハウス管と並んで、ドイツの三大ブラームス・オーケストラと僕が考えている北ドイツ放送響のいかにも「プロシア的」な厚く暗い響きを聴くことが出来ます。エッシェンバッハの指揮は遅めのテンポでスケールが大きいですが、そこに微妙なテンポの加減を与えて情熱的に盛り上げます。全体のバランスや造形性を損ねたりしないのが実に素晴らしいです。あのフルトヴェングラーやカラヤンが失敗するブラームス演奏の愚を決して行なったりはしません。ますます、このオケとの組み合わせで全集録音を聴いてみたくなります。

交響曲第3番

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コリン・デイヴィス指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1992年録音/Profile盤)

ディヴィスはSKドレスデンの首席指揮者にこそ就いたことは有りませんが、数多くの共演、録音を行ないました。これは1992年の本拠地ゼンパーオーパーでのライブ録音です。このオケのブラームスというと、どうしても不動の名盤であるザンデルリンクの全集録音と比べてしまうので気の毒です。それはともかく、ディヴィスの演奏のテンポは遅めですが、ザンデルリンクよりは速いです。リズムの腰の座り方もザンデルリンクのテコでも動かない安定感と比べれば遜色を感じます。それは単にテンポの問題では無く、リズムの刻みの深さの違いだと思われます。ただし、旋律をだらしなくベタベタと歌い崩さないのは理想的です。オケの響きについては、ザンデルリンクが正にこのオケの持つ古雅な響きが最も魅力的であった1970年代に録音しましたので、それを越えることは不可能です。それに実演のハンディでもあるのでしょう、頭の音に微妙なズレを感じることが幾度となく有ります。従って、どうしてもザンデルリンク盤には劣る印象ですが、”最高のブラームス・オーケストラ”という肩書きを返上する必要は有りません。同じ年代の録音で、これ以上のブラ3の演奏もそうそう思いつかないからです。それがシュターツカペレ・ドレスデンたる所以です。

交響曲第4番

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クルト・ザンデルリンク指揮スウェーデン放送響(1990年録音/WEITBLICK盤)

”ブラームス演奏の神様”ザンデルリンクのブラ4と言えば、代表的なところでは1972年のSKドレスデン盤、1984年のミュンヘン・フィル盤、1990年のベルリン響盤があります。今回のスウェーデン放送響盤と同じ年の録音であるベルリン響盤は、もたれるほどに遅いテンポによる沈み込むような味わいの名演奏でした。但し、聴いていて時に覇気に欠けるように感じてしまう部分も有ります。このスウェーデン放送響盤ではテンポは遅めですが、ベルリン響盤のようにもたれる印象は受けません。これは実演による流れの良さが有るからでしょう。特筆すべきは、旋律を大きく歌わせて、感情を思いきり吐露していることです。その点では、これまでの客観的で大袈裟に感情移入しない演奏スタイルとはだいぶ異なります。晩年においてもザンデルリンクは決して枯れることなく、非常にロマンティックなハートを持ち続けていたことの証明です。スウェーデン放送響の音はドイツ的というわけでも無いのですが、とても美しくブレンドされた厚みのある響きでブラームスを堪能させてくれます。やはり優れたオーケストラです。録音が生々しいのも理想的で、残響過多のベルリン響盤よりもずっと好みます。ザンデルリンクのブラ4では、これからSKドレスデン盤と並んで愛聴しそうです。カップリングされているのは「悲劇的序曲」ですが、交響曲全集の新盤にこの曲は含まれていなかったので大変貴重です。演奏も実に素晴らしいです。ということで、これを今年聴いたブラームスのシンフォニーのCDのベスト盤にしたいと思います。

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ルドルフ・ケンぺ指揮BBC響(1976年録音/BBC Music)

ケンぺは同じドイツの指揮者でもザンデルリンクのような重量級では無く、中量級のイメージです。リズムにテコでも動かないような念押しは有りませんし、表情を刻々と変化させてゆく軽妙なフットワークを持っています。それでももちろんドイツ人ですので音楽を上滑りさせるようなことはありません。特にこの晩年のライブでは、英国放送のオーケストラを感情豊かに歌わせて、聴き手の心に強く訴えかけています。元々ケンぺはスタジオ録音では冷静で居ても、実演になると気迫を前面に押し出して、聴衆を圧倒するタイプでした。カール・ベームに似ています。ここでも、その実演での良さが一杯に現れています。第1楽章では後半になればなるほど熱気が増してきて非常に充実感を感じさせます。第2楽章は中庸で引き締まったテンポですが、旋律が充分に歌い切れていて寂しい情感が心に深く染み入ります。第3楽章では他の楽章とのバランス的には幾らか遅めに感じます。爆演とはかけ離れた充実した響きと重みのある素晴らしい演奏です。ドイツのオケに比べて金管の音質が明るめなのと、トランぺットの音量が高めなのが少々引っ掛かりますが、許容範囲です。終楽章も好演です。イギリスのオケにこれだけのブラームスを演奏させるのは決して容易なことでは無いと思います。カップリングはシューベルトの交響曲第5番ですが、これも素晴らしい演奏です。

ということで、今年もまた「秋のブラームス祭り」にお付き合い下さいまして誠にありがとうございました。次回は、シベリアからやってくる冬将軍閣下の到来に合わせて「冬のロシア音楽祭り」をスタートします。

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2013年1月 3日 (木)

ブラームス 交響曲第1番 テンシュテットの1992年ロンドン・ライブ盤

今年のマニュフェストに「脱ブラームス、卒ブラームス」を掲げたために、ブラームスの記事を止めないで欲しいというコメントを幾つか頂いてしまいました。
そこで、大きな声では言えませんが、実は「や・め・ま・せ・ん。」(笑) これが信憑性の低い「マニュフェスト」の良いところ??ですね。

ということで、新年の初聴きはブラームスの交響曲第1番です。(爆)

なにしろ完成までに20年以上の歳月を要したこの曲は、完全主義者ブラームスの代名詞のような作品で、ベートーヴェンの「第10交響曲」とも呼ばれています。年末恒例の曲が「第九」ならば、それに続く「第10」を新年に、というのも、また一興ではないでしょうか。何と言っても、この曲の気宇壮大さと、終楽章に高らかに歌い上げられる勝利の歌は、新しい年の始まりに相応しい気がします。

第1交響曲については、これまで「モノラル録音の名盤」、「ステレオ録音の名盤」で愛聴盤をご紹介しました。そこで、今回は昨年末にリリースされたばかりの新盤をご紹介します。

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クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィルハーモニー(1992年録音/BBC盤)

テンシュテットという指揮者は、マーラーの演奏に於いては、バーンスタインと並び立つ存在だと思います。もちろんワルターやバルビローリ、ベルティーニ、ノイマンなどの素晴らしいマーラーを演奏する指揮者は何人も存在しますが、この二人ほど心底圧倒される演奏を聴かせる指揮者は、まず居ないと思うのです。但し、マーラー以外の曲の演奏に関しては、正直そこまでの認識は持っていません。テンシュテットの熱烈なファンからは反論を受けそうですが。

実はブラームスについても、あの余りに凄いマーラーの一連の演奏が、逆にブラームスの音楽には遠いイメージとなっていて、これまで食指を動かされたことが有りませんでした。

この人のブラームスの第1交響曲の演奏は、既に1983年のスタジオ録音(EMI盤)、1990年のライブ盤(BBCレジェンド盤)などが出ていましたが、あいにく聴いたことが有りません。そこへ今回、新しく1992年のライブ盤がリリースされたので、テンシュテットのブラームスを一度ぐらいは聴いておいても悪くないと思い、聴いてみました。これはロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライブ録音です。

第1楽章冒頭のテンポはゆったりと、しかし緊張感を一杯に湛えており、ティンパニーが非常に力強く叩かれていて後の凄演を予感させます。主部に入ってもテンポはゆったり気味ですが、イン・テンポで緊張感を保ちながら、リズムに念押しを加えてゆくのがプロシア風のブラームスが感じられて心地よいです。響きも金管だけが浮かび上がることなく、弦楽と溶け合っているのが良いです。低弦がうねるような迫力を感じさせるのは、ややワーグナー、マーラー風ですが、ブラームスも元々響きを分厚く書いているので違和感を感じるどころか、逆に魅力的です。

第2楽章も非常にゆったりとロマンティックに聴かせています。甘さよりも悲劇性を強く感じさせるのは、音楽の本質を突いているように思います。

第3楽章でも、遅めのテンポで立体的に響かせているのが良いです。爽やかではありませんが重厚さがたまりません。

第4楽章では、冒頭のティンパニの強打にいきなり驚かされます。同時に「大丈夫かな。爆演になってしまうのかな?」と不安が心をよぎります。聴き進むとホルンによる有名な主題は朗々と響き、ドイツのオケにも聴き劣りがしないほどです。続く弦による主題も悪くは有りませんが、水準レベルというところです。展開部に入ると、にわかに熱気を帯びてきて、楽器が力強く鳴り出します。徐々に爆演に成りかけてきます。あぶないあぶない。更に聴き進むと、全般にティンパニの音が過剰気味ではありますが、幸い金管のボリュームは許容範囲内です。終結部に入ってもある程度の抑制が効いていますので違和感は有りません。終結部では、ずしりとタメを効かせて、中々に満足感を与えます。ちなみに、同じホールでのカラヤン/ベルリンPOの1988年ライブ(Testament盤)では、終結部の余りの強奏にいささか辟易しました。それに比べれば遥かに抵抗感が無く、素晴らしいです。ブラームス演奏は熱演の中にも、やはり一定の節度が無くてはいけません。

このCDは2枚セットで、もう一枚には1983年のライブでブラームスの第3交響曲が収められています。そちらも遅めのテンポで堂々とした演奏なのですが、どういうわけか録音がのっぺりしているので第1番よりも、かなり聴き劣りしてしまいます。録音が良ければ、もっと真価を理解できるのかもしれないので残念です。

ということで、第1番に限っては、愛聴盤の仲間入りをさせたいと思います。

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2012年12月28日 (金)

ブラームス 交響曲第4番 エッシェンバッハの東京ライブ盤 ~千秋楽 結びの1番、ではなく4番~

今年のブラームス秋場所も、とうとう千秋楽を迎えました。今場所はブラームスの若い10代から最晩年に至るまでの作品を早足で(早過ぎ??)たどりながら、これまで記事に取り上げていなかった曲や愛聴盤をご紹介してみました。

後期ロマン派の革新的な音楽の時代に在りながら、古典的な様式を基盤にして作曲を続けたブラームスは、当時の先進的な音楽家たちから、どんなに批判や揶揄をされようとも、頑固なまでに我が道を行きました。さすがは北ドイツ生れのプロシア人です。どすこい!paper

それにもかかわらず、彼の音楽は当時の多くの聴衆に愛されましたし、時を経て20世紀の後半にもなり、マーラーやブルックナーが一大ブームになった現代でも、ブラームスの音楽は少しも変わらず多くのファンに愛好され続けています。それはいったいどうしてなのでしょう。

たとえ様式的には古くても、肝心の音楽の中身が他の誰よりもロマンティックであり、人間の喜びや哀しみに満ち溢れているからではないでしょうか。そこには、背筋をぴんと伸ばして、すっくと立ち、心の中の哀しみを隠して大げさな涙を見せないブラームスの姿があります。この人の音楽には、そんな成熟した大人の風格を感じます。

また、ブラームスはシューベルトやシューマン、もしくはドヴォルザークのように、初めから魅惑的な旋律を生み出すタイプではなく、ひとつの動機を職人芸によって発展させてゆく術にすこぶる長けていると思います。従って、最も「変奏曲」を得意とした人だと言えるのではないでしょうか。ブラームスの優れた代表作を選ぶとすれば、僕が真っ先に思い浮かぶのは第4交響曲です。そして極め付きがその終楽章です。個人的には第3交響曲をとても好んでいますし、第1交響曲の壮大さにも惹かれます。しかし最高傑作の名前に最もふさわしいのは、やはり第4番を置いて他に有りません。この曲を今場所の結びの一番としたいです。

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クリストフ・エッシェンバッハ指揮シュレスヴィヒ・ホルシュタイン祝祭管弦楽団(2005年録音/独ヘンスラー盤)

さて、どの演奏を聴こうかと迷いましたが、特筆すべき演奏だと改めて感じたのが、以前の記事でも一度ご紹介した、クリストフ・エッシェンバッハが2005年にサントリーホールでシュレスヴィヒ・ホルシュタイン祝祭管弦楽団を率いて演奏したときのライブ録音です。これはまるでフルトヴェングラーのようにロマンティクで自在な表現でありながら、フルトヴェングラーでは夢中に成り過ぎて失われてしまった造形性をしっかり保持するという、正に離れ業を成し遂げた演奏なのです。前回の記事では、うっかり「技術的には完璧とは言えません」と書いてしまいましたが、それは「SKドレスデンや北ドイツ放送響の熟した楽団には及びませんが」と書き直すべきです。臨時編成でありながら、充分に上手いオーケストラです。これほどのブラームスが日本で演奏されて、それを自分が生で聴けたことは幸運だったとしか言いようが有りません。ウイーン・フィルやSKDのコンサートは毎回話題に事欠きませんが、目立たないコンサートの中にもこんなに素晴らしいものが有るのですね。是非ヘンスラー・レーベルから出ている、この時のライブCDをお聴きになられてください。録音も会場の臨場感が充分に感じられる優れたものです。

<関連記事> ブラームス 交響曲第4番 名盤 ~温故知新~

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2011年10月15日 (土)

ヤノフスキ/ベルリン放送交響楽団 2011日本公演 ~秋の夜はブラームス~

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「秋の夜はブラームス」。これは、ブラームスの音楽を愛する人の合言葉ですね。日を追うごとに肌寒さを感じてくる秋の夜、人恋しくなったときに聴く音楽として、これほどふさわしいものは有りません。そんな昨夜は、ブラームスのコンサートを聴きに行きました。演奏は来日中のベルリン放送交響楽団で、指揮はマレク・ヤノフスキです。そしてプログラムは、ブラームスの交響曲第3番、第4番という、これこそ秋の夜のコンサートにピッタリの曲です。

「ベルリン放送交響楽団」という名前は、実は誤解しやすいのです。戦後ベルリンが東と西に分かれた時代に、それぞれに全く別の団体が存在したからです。オールド・ファンにはなじみが有りますが、東独の団体はかつてヘルマン・アーベントロートやハインツ・レーグナーが指揮しました。西独の団体はフェレンツ・フリッチャイや若きロリン・マゼールが指揮しました。東独の団体は昔も現在も同じ名前なのですが、西独の団体は現在はベルリン・ドイツ交響楽団と名前が変わっています。

ということで、今回来日しているのは旧東独の団体です。北の街ハンブルクに生まれ育ったブラームスの音楽の暗く、厚い響きを再現するのにはやはりドイツ北部の街のオーケストラが適しています。とは言っても、同じベルリンのオーケストラでありながら、現在のベルリン・フィルハーモニーは既にドイツ人だけでなく、世界中から選りすぐりのプレーヤーが集まっていますので、伝統的なドイツの音とは言えません。その点、今日のステージの上のこのオーケストラを見渡すと、大半がドイツ人団員のようです。それには安心します(ホッ)。意外に美女が多いのにも感心します(ドキドキ)。

前置きが長く成りましたが、プログラム前半の曲が第3番です。演奏はというと、弦楽器がベースになって管楽器をブレンドさせる音造りがいかにもドイツ・スタイルです。ヤノフスキがしきりに管楽器の音を抑えるようなしぐさをしていたのが印象的でした。弦楽は最前列から最後列まで実に同じような音が出ています。日本のオケだと中々こうは行きません。ヤノフスキのテンポは好みで言うと幾らか速めに思いましたが、音楽の流れが良くて悪くありません。それでも刻むリズムが堅牢なので、決して前にのめりません。さすがにドイツ人たちです。個々のプレーヤーが飛びぬけて優秀という印象では有りませんが、全体としてまとまったときに大きな魅力となるのです。いい第3番でした。

後半の第4番では、1楽章の前半が何とも安全運転(ならし運転?)のようで、アレレという感じ。ところが後半に入ると突然ギアが入った(速くなるわけではありません。気持ちがです。)ようで、音の表情が豊かになり惹きつけられました。この曲はアマチュア・オケで演奏したことが有りますが、弾いていると非常に興奮する曲なんです。それが往々にして爆演になってしまう原因なのでしょうが、やはりブラームスの演奏は、このように「内に秘めたる炎」であって欲しいです。1939年生まれのベテラン・マエストロ、ヤノフスキさんは職人タイプですが、特別な才気に富んだ印象は有りません。それでもオーソドックスな演奏というものは、下手に表現意欲旺盛な演奏よりも好ましく思うことが有ります。昨夜はそんな演奏を楽しみました。

それにしても、本当に3番と4番は好きですね。ブラームス「らしい」最高のプログラムでした。僕が指揮者なら、更に前プロに「悲劇的序曲」でも加えちゃうんですけどね。現代のプレーヤーからはブーブーでしょうけど、昔のプログラムは今よりもずっと長かったんですよ。

アンコールはシューベルトの「ロザムンデ」からあの静かな「間奏曲」でした。秋の夜の音楽会の余韻に浸れる、良い選曲でしたね。

11月には、このブログで晩秋のブラームス特集をしてみたいと思っています。

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2011年3月30日 (水)

ブラームス 交響曲第4番ホ短調op.98 名盤 ~温故知新~

さてブラームスの交響曲特集ですが、早くも最後の第4番になってしまいました。

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交響曲第3番を完成させたブラームスは、その翌年には早くも第4番の1、2楽章を書き上げました。更に次の年には3、4楽章を書いて、この曲を完成させました。第1番の完成迄には、あれほど苦労したのが嘘のようです。しかも最後の交響曲だけあって、ブラームスの円熟の極みの作品となりました。

ロマン派全盛の時代にあっても、古典派形式を踏襲したブラームスは、新古典派などとも呼ばれましたが、この交響曲の終楽章では古典派どころか、バロック時代の変奏曲形式であるシャコンヌ(パッサカリアとも言います)を用いました。当時の楽壇の中には、「古臭くて陳腐だ」とけなす人も居たそうです。あのマーラーでさえこの作品を「からっぽな音の桟敷」と酷評したぐらいです。けれども、若きリヒャルト・シュトラウスは、父親への手紙の中で「間違いなく巨人のような作品です。とてつもない楽想、そして創造力。形式の扱いや長編としての構造は、まさに天才的です。」と書いています。リヒャルト・シュトラウスはかく語りきです。

この曲の凄さを理解したシュトラウスは、ブラームス自身の指揮で行なわれた初演の際のオーケストラでトライアングルを担当しました。あの3楽章で、チンチンチンとやったのですね。想像すると何だか愉快です。ともかく、この曲はブラームスのシンフォニーの最高傑作です。第1番は大変な力作ですし、第2番、第3番も名作なのですが、そのことだけは疑いの無い事実です。ブラームスはこの作品で正に「温故知新」を完遂させたのです。

第1楽章の冒頭は、いきなり第1主題がヴァイオリンのH(ハー)の音で開始されます。これは非常に演奏が難しいです。音の強さ、表情、テンポ、以後との関連づけと色々な要素が有り過ぎるからです。それにしてもこの楽章は、いかにもブラームスらしい哀愁と暗い情熱の高まりが一体化している傑作です。続く、第2楽章も寂寥感いっぱいでノスタルジックな深い深い浪漫がブラームジアーナーを泣かせます。第3楽章はスケルツォ楽章ですが、粗野で荒々しく、ラプソディックな性格は、ヴァイオリン協奏曲の終楽章あたりと似ています。そして、終楽章のシャコンヌです。これは200年も前の古い様式を使って、主題に続く30回もの変奏を、ありとあらゆる手練手管を駆使して書かれた変奏曲の一大傑作です。演奏の難しさは極まっていて、下手な指揮者の場合は気持ちが前面に出過ぎて、派手な響きで管楽器が咆哮する爆演に終わることが往々です。コンサートでは盛大な拍手を受けるでしょうが、大抵の場合には空虚さだけが残ります。

この曲は、僕が大学のオーケストラに入って初めて定期演奏会で弾いた思い出深い曲です。当然ながら、半年間来る日も来る日も必死でパート譜とスコアとにらめっこをしました。ですので、逆に曲の隅々が頭の中に残っています。そういう曲なので、演奏については他の曲以上にうるさくなるのかもしれません。

ともかくは愛聴盤のご紹介に移りましょう。

Cci00054 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1943年録音/ターラ盤) 戦時中のライブですが、僕はターラ盤のセットで聴いています。昔から「冒頭のHの音をあんな風に出せる指揮者は他には決していない」と言われてきました。確かに、まるで首のうなじにそっと触れられるようなゾクゾク感が有ります。うーん、なんてエッチなんでしょう!この演奏は完全に後期ロマン派的な演奏で、古典的造形性には著しく欠けています。テンポの急激な変化や加速、極端に大きなルバートが頻出します。本来は僕の好まないタイプの演奏なのですけれども、嫌でも引きずり込まれてしまいます。録音はざらつきが多いものの、年代にしては明瞭です。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1948年録音/audite盤) ベルリンのティタニア・パラストでのライブです。長い間EMIから発売されていましたが、昨年RIAS放送のオリジナルテープからCD化されて、各パートの音像がずっと明確になりました(といっても所詮は年代による限界が有ります)。演奏の基本スタイルは43年の演奏と同じですが、録音の良さで、聴きごたえがずっと増しています。演奏そのものも、我を忘れるほどに興奮したオケの熱演度が更に凄いので、これこそは好き嫌いを超えた超演と呼べるのではないでしょうか。

049_2 ブルーノ・ワルター/コロムビア響(1959年録音/CBS SONY盤) オーケストラの音は薄っぺたく、迫力や重厚とさは無縁ですが、言い方を変えれば透明感の有る室内楽的な響きです。いかにもワルターらしい実に滋味に溢れた演奏ですが、とても美しくロマンティックに歌うので、聴いていると何かとても懐かしさを感じさせられます。ワルターのステレオ録音のブラームスでは第1番以上に素晴らしい出来栄えですので、この演奏は時々聴きたくなる時があります。

Cci00036b カール・シューリヒト指揮バイエルン放送響(1961年録音/Scribendum盤) 以前DENONからも出ていましたが、典型的なシューリヒト・スタイルの軽く颯爽と進む演奏で、およそブラームスの重厚な音は聞こえてきません。引き締まった造形性だけは見事ですが、ロマンティシズムが希薄です。某評論家がこの演奏を推薦していましたが、慌てて騙されてはいけません。シューリヒトのブラームスの名演奏は最晩年のシュトゥットガルト放送響との2番だけです。

Schu869 カール・シューリヒト指揮ウイーン・フィル(1965年録音/Altus盤) ハルくんのウソつきと言うことなかれ。このウイーンでのライブは良い演奏です。バイエルン盤から僅か5年後ですが、テンポが著しく遅くなりました。それでいて演奏の緊張感は保たれています。ウイーン・フィルそのものの持つ音色も魅力的ですが、要所でロマンティックに歌わせるので味わい深さが有ります。造形性も損なっていません。年代相応のモノラル録音ですが、マスタリングが高音強調なのは頂けません。

4110061113 クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1972年録音/DENON盤) SKドレスデンのことを「幾ら引っ張ろうとしても動かない牛車のようだ」と称したのは、指揮者フリッツ・ブッシュ(アドルフ・ブッシュの兄)でしたが、遅めで微動だにしないイン・テンポを守るザンデルリンクが振ると、その特徴が最高に生きてきます。良い例が終楽章のコーダの第273小節からで、念押しするリズムが巨大なスケール感を生み出します。厳格なマルカート奏法には凄みすら感じますし、柔らかく目のつんだ典雅で厚みのある響きには心底魅了されます。そして管楽器奏者たちの音楽的な上手さにも惚れ惚れします。ティンパニーのゾンダーマンの妙技も冴えわたっています。1970年代のこのオケは本当に凄かったです。

Brahms_14ハンス・シュミット-イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1973年録音/EMI盤) これも北ドイツ放送響(NDR)とのライブ録音の全集です。NDRの暗くくすんだ音色がこの曲に良く合います。どっしりと構えたテンポも、いかにもドイツ的です。この念押しする感覚が無いとブラームスには聞こえず、一体誰の音楽を聴いていたのか分らなくなります。その点、この演奏は安心して聴くことができます。ちょうどザンデルリンクのスケールを一回り小さくしたような印象です。その分、良い演奏なのですが損をしているように思います。

Brahms_bohem_14 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) ウイーン録音の全集盤です。ウイーン・フィルの透明感のある響きを立体的に生かしています。1楽章の前半は少々解説口調で音楽との隙間を感じますが、後半では一体になっています。2楽章は不健康さは感じませんが、ウイーンフィルが非常に流麗で美しいです。3楽章は立派ですが幾らか冷静過ぎる気はします。終楽章は巨大な建造物のようなスケール感があります。聴後の充実感は中々のものです。

Tah474 オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1976年録音/ターラ盤) ヨッフムのライブ録音のボックス・セットです。ヨッフムは基本的に後期ロマン派のタイプですので、厳格なイン・テンポを刻むのでは無く、テンポに揺れを感じます。けれどもフルトヴェングラーのように極端ではありません。この演奏はテンポがさほど遅くもなく、リズムの念押しも無いので、全体的にスタイリッシュに感じられて幾らか物足りなさを感じます。

795 オイゲン・ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1979年録音/WEITBRICK盤) この演奏は3年前に一度記事にしました(こちら)。ヨッフムのロマン的な気質とSKドレスデンの堅牢な奏法とが高次元で一体化した素晴らしい演奏です。これを聴いてみるとザンデルリンクの名盤も、SKドレスデンの力に由る部分が相当多いことが分かります。76年のコンセルトへボウ盤と比べると、僅か3年の違いでずっとテンポが遅く重厚です。そこにロマンの味わいが加わるのですからたまりません。欠点はマスタリングで高域がやや硬いことだけです。

Brahms4_jochum オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送響(1970年代録音/Green HILL盤) このライブ録音は正確な録音年が不明です。けれどもテンポがSKドレスデン盤と似かよっているので70年代の終わり頃ではないかと思います。堅牢でプロシア的な音のSKドレスデンに対して南ドイツ的に明るくしなやかな音ですが、これも非常に魅力的です。むしろヨッフムのロマン的な資質がストレートに出ています。海賊盤ながら音質は極上で、マスタリングの良さからSKドレスデン盤を上回ります。

515r2b7qvll__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1983年録音/オルフェオ盤) これもミュンヘン・ライブの全集盤です。ここまで4曲を聴いてきて共通して感じるのは、クーベリックのリズムに念押しが足りないことです。結果としてどの部分でも呼吸の浅さを感じてしまいます。ブラームスに重厚さを求めない聴き手には構わないことでしょうが、僕の場合は満足し切れなさが残ります。それでいて終楽章のコーダで突然テンポを落として念押しするのは唐突感が残ります。録音も優れていて一般的には悪い演奏では無いのですが。

Brahms_kurt619_2 クルト・ザンデルリンク指揮ミュンヘン・フィル(1984年録音/WEITBRICK盤) ミュンヘンのヘラクレスザールでのライブです。SKドレスデンの旧盤とベルリン響の新盤の間の時期になります。ですので基本テンポもちょうど中間で、SKD盤よりも遅く、ベルリン盤よりも早いです。興味深いのは、オケがかなりレガート気味に弾いているのと金管の明るい音色です。ある種、耽美的とも言える美しさを感じます。これはチェリビダッケの影響が大なのでしょうね。3楽章の荒々しくスカッとした演奏はザンデルリンクでは無い別人のようです。これはこれで楽しめます。

Suitner_brahms4 オトマール・スイトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン(1985年録音/シャルプラッテン盤) スイトナーの80年代のブラームス全集では3番と並ぶ名演だと思います。テンポは決して遅くは有りませんが、呼吸の深さが有るので腰が据わった印象です。全体に古典的な造形感を感じますが、それでいてロマン的な味わいが充分有ります。相変わらず弦と管が柔らかく溶け合った響きがとても美しいですし、強奏部分も管が少しもうるさくなりません。

Vcm_s_kf_repr_500x500 クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン響(1990年録音/カプリッチオ盤) ベルリン響との新盤の中では最も好きな演奏です。1楽章では、もたれるほどに遅いテンポが沈滞したロマンを感じさせます。2楽章も深いロマンの海に沈み込むようです。3楽章はSKドレスデンの切れの良さには敵いません。終楽章は遅いテンポでスケールが大きいですが、33小節からの第4変奏でぐぐっと重さを増すところは非常に素晴らしいです。後半の高揚ぶりも見事ですが、コーダの凄さはやはり特筆ものです。

41mqvx5jevl__sl500_aa300_ カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1989年録音/グラモフォン盤) ジュリーニは、この曲でも遅いテンポでイン・テンポを守り、ゆったりとスケールの大きさを感じます。少しも力みが無いのに、緊張感を失うことがありません。但し、3楽章は落ち着き過ぎで、ラプソディックな性格が薄いです。全体を通してカンタービレがよく効いていますが、ごく自然で美しいです。ウイーン・フィルの響きはSKドレスデンのいぶし銀の音とは異なりますが、流麗で非常に美しいです。これはジュリーニの全集の中のベストだと思います。

というわけで、マイ・フェイヴァリットを一つ選ぶとすれば、やはりこの曲でも不動のザンデルリンク/シュターツカペレ・ドレスデン盤です。

続く次点は激戦です。ザンデルリンクのミュンヘン・フィル盤はとても楽しめますし、ベルリン響盤も新全集の中では最も優れていると思います。ヨッフムも素晴らしく、SKドレスデン盤はマスタリングさえ良ければザンデルリンクに迫る名演奏です。けれども、僕はむしろバイエルン放送響の海賊盤を上位にしたいと思います。更にスイトナー/シュターツカペレ・ベルリン盤も外せません。

番外としてはフルトヴェングラー/ベルリン・フィルの壮絶な1948年盤とワルター/コロムビア響盤を上げておきたいです。さて、皆さんの愛聴盤はどれでしょうか。

それにしても、こうして聴いていると、やっぱり4番はいいですね。う~ん、ブラームス!

<追記> ジュリーニ盤を後から加筆しました。次点グループには間違いなく入りますし、その中でもトップクラスです。

<後日記事>
ブラームス 交響曲第4番 エッシェンバッハの東京ライブ盤
今年聴いたブラームスの交響曲のCD

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2011年3月24日 (木)

ブラームス 交響曲第3番ヘ長調op.90 名盤 ~ブラームスはお好き~

東北関東大地震から10日以上が経ちました。東京では交通機関の乱れもかなり改善されましたし、ガソリン不足や計画停電の不自由さも被災地の困窮に比べれば何ということはありません。その被災地でも少しづつ復旧が進んではいるようですが、物資の不足は相変わらず改善されていないと伝えられています。そんな今、こんな風に音楽を聴いていて良いのだろうかという気持ちも有ります。けれども太古の昔から、音楽は人間の生活と切っても切れない存在でした。欧米では戦時中、毎晩爆撃されるような状況下でも、コンサートは続けられました。それを無理に断つというのも不自然な気がします。今、音楽を聴けることに心から感謝したいと思います。

それではブラームスの交響曲特集の再開です。

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「ブラームスはお好き?」という言葉は、フランソワーズ・サガンの同名小説の中で25歳の青年シモンが39歳の離婚独身女性ポールをコンサートに誘う手紙の中で出てきます。ブルックナーでないのは賢明です。デートが不成功に終わる確立が相当高いでしょう。この小説は映画化もされましたが、英語版タイトルでは「Goodbye Again」と変えられました。なにゆえ「さようならをもう一度」なのか。エスプリの効いた原題タイトルに対して、何ともアメリカ的な単純明瞭なタイトルです。映画の内容が分かりやすいことは確かですけれどもね。きっと、原題のままではアメリカの観客は集まらないと考えられたのでしょう。おっと、日本語タイトルも同じですね。

小説の中のコンサートの場面で演奏されるのはヴァイオリン協奏曲という設定ですが、映画でメインで使用されているのは交響曲第3番の第3楽章です。センチメンタルなメロディが大人の恋愛映画によく似合います。この美しい曲を聴きさえすれば、アメリカ人もすっかり魅了されたことでしょう。

それにしても映画のポール役のイングリッド・バーグマンって本当に綺麗ですよね。気品が有りますよね。こんな美人と一緒にブラームスを聴きに行ってみたいものです。映画っていいですね。非現実的で。(苦笑)

つまらない話はこれぐらいにして、第3番はブラームスの交響曲では最も私的な作品だと思います。全楽章がピアニシモで終わるという珍しい構成ですが、他の作品のように妙に凝り過ぎていません。実に簡潔明瞭です。この曲も第2番と同じように、大半がウイーンでは無く、避暑地のウイースヴァーデンで作曲されました。なんでもブラームスは森の中を散歩しながら、くつろいだ気分でこの曲を書いたそうです。

この曲の第1楽章冒頭で本来の6/4拍子が何拍子か分りにくいように聞こえるのは、恩師シューマンの第3番「ライン」の冒頭がやはり3/4拍子が分かりずらく書かれているのと同じです。リズム音型がよく似ています。学生時代に両曲ともアマチュアオケで演奏しましたが、その時に譜面を見てそう感じました。これは弟子のブラームスが同じ第3交響曲ということで、意識して書いたのかもしれません。展開部で身体が大きな波に揺さぶられるれるような部分も聴きものです。第2楽章は一転してクラリネットとファゴットが淡々とした足取りで大人の男の雰囲気を漂わせて歌います。ゆったりと、けれども毅然と歩くような演奏が僕は好きです。第3楽章は甘く美しいメロディがとても有名ですが、後ろ姿に寂しさを漂わせた男の姿が目に浮かびます。終楽章は情熱的に高揚しますが、一気苛性の追い込みがたまりません。

この曲は個人的にはブラームスのシンフォニーの中で最も好きかもしれません。それでは愛聴盤をご紹介します。

41uvmjpcql__sl500_aa300_ ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1954年録音/audite盤) ベルリンのティタニア・パラストでのライブです。昨年発売されたRIASボックス盤は、従来のグラモフォン盤よりも音質が飛躍的に向上しました。フルトヴェングラーのブラームス演奏は頻繁にテンポが揺れていて後期ロマン派寄りなのが正直好みでは有りません。造形性に欠けるからです。けれども、これだけ明瞭な音で鑑賞できると、フルトヴェングラーの世界にどっぷり浸かろうという気持ちになれます。終楽章展開部以降の情熱と迫力は凄まじい限りです。なお、このボックスには1949年の演奏も含まれていて更に凄まじい演奏なのですが、音質は大分劣ります。

Brahms_monteux ピエール・モントゥー指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1960年録音/TAHRA盤) これもライブ録音です。モントゥーのブラームスは世評の割に僕はそれほど感心したことがありません。けれどもこの演奏は中々聞かせます。テンポは中庸ですが、重圧さを感じさせます。この曲の歌謡性と情熱的な要素の表現も意外に自分の肝に合っているように思います。2、3楽章は味わい深く、終楽章は情熱的に盛り上がります。録音はモノラルですが明瞭です。そういえばこの人はブラームスはお好きなんだそうです。(ホントの話)

Brahms_kempeルドルフ・ケンぺ指揮ベルリン・フィル(1960年録音/EMI盤) ケンぺのベルリン・フィルとのEMI録音は1番と3番のみがステレオ録音です。やはり当時のベルリン・フィルのドイツ的な響きは良いのですが、速めのイン・テンポで押し通すので、ややスタイリッシュに過ぎる気がします。逆に遅いテンポが嫌いな人には丁度良いと思います。東芝EMI盤はこの曲でも高音に強調感が有りますので、やはりテスタメント盤で購入されたほうが良いでしょうね。

41gh0rfq9cl_2 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウイーン・フィル(1961年録音/DECCA盤) いつもブラームスの曲からは”壮年の紳士”を連想させられるのですが、この演奏からはアラ・サーのスマートな青年を想わされます。確かに当時のウイーン・フィルの音は非常に美しいですし、流麗な歌い回しも(幾らか過剰なほどですが)魅力です。所々でリズムに更にドイツ的な念押しが有ればとは思いますが、これは自分のブラームスのイメージなので仕方ありません。全体的に若さ溢れる名演で、この3年後に録音したベルリン・フィル盤(DG)よりもずっと好みます。

Bra618 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮シュトゥットガルト放送響(1963年録音/ヘンスラー盤) 大学生の時にこの曲のクナ/ベルリン・フィルの1943年盤の海賊盤を大金はたいて買いました。天地が引っくり返るような巨大な演奏でしたが、そのうち異形に感じられて聴かなくなりました。この最晩年の演奏は、それを更に上回る巨大さで信じられません。ブラームスというよりは、まるで「ニーベルンクの指輪」みたいです。モノラルですが音質は良いので、興味の有る方は一度お聴きになると面白いです。但し腰を抜かさないようにご注意を。

Brahms41rsb0rr8kl_sx355_サー・ジョン・バルビローリ指揮ウイーン・フィル(1967年録音/EMI盤) ゆったりとしたテンポで一歩一歩を踏みしめながら歩みを進めます。情緒豊かで深い情感に覆われているのもバルビローリのファンにはこたえられないと思います。3楽章ではこの人にしては寂寥感が足りないかなと思っていると最後に情緒面々と歌いあげて挽回します。終楽章でもブラームスの古典的造形性が希薄なのが気になります。トータルの出来映えとしては第4番のほうが高いと思います。古いCDのために最新リマスターにありがちな高域強調型でないのがブラームスにはむしろ幸いです。

Cci00062b ハンス・シュミット-イッセルシュテット指揮バイエルン放送響(1967年録音/GreenHILL盤) ライブ演奏ですが、海賊盤ながらも高音質で定評の有るグリーンヒル盤です。オケは南ドイツ的な明るめの音ですが、しなやかでとても美しいです。といってウイーンのオケほど柔らかくはなりません。古典的な造形性とロマンティシズムがこれほど高次元でバランスの取れている演奏は珍しいです。終楽章の高揚感も実に素晴らしいです。なお、カップリングのシェリング独奏のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲も最高の演奏です。未聴の方は是非とも中古店で見つけて聴かれてほしいです。

Brahms_14 ハンス・シュミット-イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1968年録音/EMI盤) 北ドイツ放送響(NDR)とのライブ録音の全集です。 2番はともかくとしても、北ドイツの楽団の音はブラームスの音楽に本当に合います。バイエルン放送響も音が南ドイツの晴れた空を想わせるのに対して、こちらは北ドイツのどんよりした曇り空のようです。ドイツ的ということももちろんですが、非常に内向的な演奏だと思います。1、4楽章は外面的な爆発は一切無く、3楽章の歌い方も実に地味です。個人的にはバイエルン放送盤のほうを好みます。

4110061114クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1972年録音/DENON盤) ザンデルリンクが全盛期のSKドレスデンを振った旧全集ですが、相変わらず遅めのインテンポを頑固に守り、強固なリズムとマルカート奏法がドイツ的な重厚さを生み出します。それが推進力と黄金比のバランスを取っています。1楽章展開部の大波に揺れるような凄みや、終楽章の充実感も最高です。SKドレスデンの柔らかで目のつんだ音の弦に管が完全に溶け合って、実に厚みのある音を聞かせます。管のソロ奏者達の上手さも本当に魅力的です。録音から40年経た今でもこの音と演奏を越えるものは未だに聴いたことが有りません。

522 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1972年録音/Scribendum盤) モスクワでのライブ録音です。4番の演奏なんかもそうですが、ムラヴィンスキーの演奏としては良くてもブラームスとしては不満です。まず各パートのリズムにドイツ的な厳格さが足りません。全体の響きも一つに溶け合ったドイツ的な厚みを感じません。ムラヴィンスキーとしては精一杯客観的な演奏を行なっているのは分かりますが、伝統の重みというのはそれほど簡単には片付けられません。

Brahms_bohem_14 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) ウイーンで録音された全集盤です。この曲ではウイーン・フィルの透明感のある響きがややマイナスに感じます。ドイツのオケのようにマルカートで無く流麗に過ぎるので全体的にムード的に聞こえます。遅いテンポの2楽章は特にダレているように感じます。ならば3楽章に期待したいところですが、意外に面白くありません。終楽章の高揚もいま一つですし、ベームのブラームスとしては消化不良に感じます。

515r2b7qvll__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1983年録音/オルフェオ盤) これもミュンヘン・ライブの全集盤です。幾らか明るくてもドイツ的なオケの音は好ましいですし、クーベリックの指揮に不満は無いのですが、しいて言えば中間楽章がいま一つです。2楽章のリズムに厳しさが欠けるのと、3楽章の歌いまわしがやや物足りません。両端楽章は非常に充実していて聴きごたえが有ります。全体としては中々に良い演奏だと思います。

Suitner_brahms3 オトマール・スイトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン(1985年録音/シャルプラッテン盤) スイトナーの80年代のブラームス全集は全てが気に入っている訳ではありませんが、3番の演奏はとても好きです。弦と管が柔らかく溶け合った響きが厚みを感じさせてとても良いです。1楽章の重厚なテンポは聴きごたえが有りますし、2楽章も味わいが有ります。3楽章はしなやかに歌いますが節度が合って良いです。終楽章はじっくりとしたインテンポですが、非常に高揚感が有ります。時に重く念押しするリズムもたまりません。

Vcm_s_kf_repr_500x500 クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン響(1990年録音/カプリッチオ盤) 旧盤に比べてテンポが大分遅くなりました。ところが推進力を失ってしまったので、聴いていてどうももたれます。終楽章などはスケール感は有りますが、緊張感に欠けます。またベルリン響をどうしても旧盤のSKドレスデンと比べてしまいますが、個々の奏者の力量では全く敵いません。残響の非常に多い録音もムード的に聞こえるので余り好きではありません。

41mqvx5jevl__sl500_aa300_ カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1990年録音/グラモフォン盤) 全集盤の録音です。1楽章は遅めの非常に良いテンポです。イン・テンポを守るのも良しです。音には張りと緊張感が有ります。但し、ドイツ的な武骨なリズムの強調よりは、流麗なカンタービレが印象的です。2楽章の味わいも良いですが、3楽章の主題を弱い音で控えめに奏でるのがユニークです。4楽章も遅いインテンポですが、ライブのような迫力が有ります。金管が前面に出がちで、音色も明るいのは北ドイツ・スタイルとは異なりますが、感興の高まってゆくのにぐいぐい惹きこまれます。

F6421 クルト・ザンデルリンク指揮ウイーン響(1997年録音/WEITBRICK盤) 3年前に発売されたときにこのブログで酷評して以来、ほとんど聴きませんでしたが、棚にはまだ残されていましたので改めて聴いてみました。うーん、やはりオケの響きが柔らかいのは良いとしても厚み不足なのですね。ザンデルリンクの指揮にも厳しさが有りません。ベルリン響との新盤よりは良いかもしれませんが、SKドレスデンとの旧盤とは全く勝負になりません。残念ながら3年前と感想はほとんど変わりませんでした。

というわけで、マイ・フェイヴァリットは不動明王(?)のザンデルリンク/シュターツカペレ・ドレスデンです。これはザンデルリンクの旧全集の中でも1、2を争う名演なので当然です。次点としては、海賊盤ながらもシュミット-イッセルシュテット/バイエルン放送響盤を置きたいです。これも本当に素晴らしい演奏です。そして僅差で続くのがスイトナー/シュターツカペレ・ベルリン盤です。

さて皆さんは、どのブラームスがお好きですか?

<追記> ジュリーニ盤、カラヤン盤、バルビローリ盤を後から加筆しました。特にジュリーニ盤は、ザンデルリンクには及ばないまでも、次点グループに充分割って入ります。ウイーン・フィルの3番としては最上ではないでしょうか。

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2011年3月10日 (木)

ブラームス 交響曲第2番ニ長調op.73 名盤

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― ブラームスが滞在したペルチャッハの城館 ―

さて、ブラームスの交響曲の特集ですが、今回は第2番です。第1番の完成に20年以上の歳月をかけたブラームスでしたが、この曲はオーストリアのウェルター湖畔の避暑地ペルチャッハに滞在しながら僅か4か月で完成させてしまいました。この曲には、そうしたくつろいだ気分が反映されているので、ブラームスの「田園交響曲」などと呼ばれたりもしています。確かにその通り、曲全体に牧歌的な雰囲気を湛えています。開放的でメロディアスですが、どこか寂しさを感じさせる第1楽章、抒情的でオーストリアの美しい自然をいっぱいに想い抱かせる第2楽章、いじらしいほどに愛らしい第3楽章と実に魅力的です。終楽章はうって変わって躍動感に溢れ、イケイケどんどん的な単純さがブラームスの曲想としては幾らか物足り無さを感じますが、それでも中間部でぐっと抒情的に歌うところなどはブラームスの醍醐味です。

この曲の演奏は意外に難しく、その理由の一つは金管の響きに有ります。フォルテでどうしても金属的な音に聞こえやすいのです。それが気にならない演奏は指揮者の音のバランスが優れていると言えるでしょう。もう一つは好みの問題なのですが、終楽章を爆演するパターンです。常識的にはフィナーレですので、盛り上げるためにどうしても指揮棒に力が入ります。テンポは上がって、金管の強奏、ティンパニの強打となります。けれども、それではブラームスの書いた音楽の造形性と響きが失われてしまいます。いい例がブルーノ・ワルターのニューヨーク・フィルとのモノラル盤です。尊敬する宇野功芳先生はこの演奏を推薦されていますが、僕は全く好みません。このことを知っておいて頂けると、これからご紹介する僕の愛聴盤に納得されることと思います。

131 フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン放送響(1953年録音/audite盤) ベルリンでのライブですが、自由ベルリン放送(RIAS)の優れたモノラル録音で楽しめます。引き締まった演奏タイプの多いハンガリーの指揮者の中で、フリッチャイはロマンティックなスタイルで一線を画します。豊かな表現力が時に絶大な魅力となります。この演奏もゆったりと非常に表情が豊かですが、基本的にインテンポで造形の崩れは感じません。終楽章もかなりの迫力を見せますが、騒々しくなることはありません。

C0986599フェレンツ・フリッチャイ指揮ウイーンフィル(1963年録音/グラモフォン盤) ザルツブルクでのライブです。モノラルなのが残念ですし、録音はむしろ前述のRIAS録音の方が明瞭です。元々抒情的なこの曲を、フリッチャイは造形が崩れるほど目いっぱい抒情的に演奏しています。その点ではRIAS盤以上です。それはオケがウイーン・フィルということもあるでしょう。随所にかかるポルタメントも少々煩わしく感じるほどです。終楽章はRIAS盤よりも更にドラマティックですので好まれる方はいらっしゃるでしょう。

Cci00003 カール・ シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響(1966年録音/archiphon盤) 巨匠シューリヒト最晩年の貴重なライブでのステレオ録音です。この人は通常は早いテンポで颯爽とした演奏をしますが、ここでは別人のように遅いテンポで全ての音符を慈しむように奏でます。全体を通してしみじみとした味わいが胸にしみ入ってたまりません。時にルバートを見せますが、基本的にはイン・テンポですので造形が崩れるほどではありません。評論家にはウイーン・フィルとのDECCA盤がよく取り上げられますが、僕は断然こちらの方を好みます。この録音は現在はヘンスラー盤で出ていますが、マスタリングが高音に強調感が有るらしいので、出来れば中古店でarchiphon盤をお探しになるほうが良さそうです。

695 ヨゼフ・カイルベルト指揮バイエルン放送響(1966年録音/オルフェオ盤) カイルベルトにはベルリン・フィルとのスタジオ録音も有りますが、これはミュンヘンでのライブ録音です。カぺルマイスターのカイルベルトの指揮は柔らかいウイーン・スタイルではなく堅牢なプロシア・スタイルですが、非常にオーソドックスで、ゆったりと曲そのものの良さを充分に引き出しています。2楽章は美しく、終楽章は堂々とした力演で充実感が有り、非常に聴きごたえがあります。終結部がやや爆演気味ですが許容範囲です。バイエルン放送響の音は南ドイツ的な明るさが有りますが、2番の場合にはそれが向いています。

Brahms_14 ハンス・シュミット-イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1967年録音/EMI盤) 北ドイツ放送響とのライブによる全集ですが、2番以降は全てステレオ録音です。高音強調型のマスタリングが気になりますが許容範囲です。Sイッセルシュテットは指揮するオケや音楽への順応性が非常に高く、この曲では北ドイツ放送響の暗く厚い響きをそのままに、堅牢一辺倒では無く、しなやかさも感じさせます。但し歌い方が控えめなので少々地味過ぎるように感じます。ハニカミ屋のヨハネス青年という感じかな。でも真面目なので好きですよ。

51avvm74jl__ss500_ サー・ジョン・バルビローリ指揮バイエルン放送響(1970年録音/オルフェオ盤) この人にはウイーン・フィルとの全集がありますが、1、2番に関しては透明感の有り過ぎる音と気の抜けた感じの演奏が余り好みでは有りませんでした。けれども、このバイエルン放送響とのライブ盤はオケの音色が曲に適しているのと、演奏に気合が入っているので好きです。後期ロマン派寄りのたっぷりとした表現で、2楽章では弦の歌いまわしが震えるほどの美しさです。終楽章の遅いテンポでのじわりじわりとした高揚感とスケールの大きさにも思わず惹きこまれてしまいます。

416gjxaqwml__sl500_aa300_ クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1972年録音/DENON盤) 徹底したマルカート奏法のSKドレスデンを聴くと、これぞドイツの音だと実感します。そのオケをザンデルリンクは頑固一徹にイン・テンポで押し通します。ブラームスの音楽が古典的な書法であることを最も感じさせる演奏です。大抵の指揮者がアッチェランド気味に煽る終楽章の終結部でも、逆に腰を据えた感じで大きな充実感を生み出します。ところで、何故かDENONのクレスト1000シリーズは、2番だけが20bitの新リマスターではありません。このことはsource manさんがDENONに直接確認されたのを教えて頂きました。元々LP時代から2番の録音は他の曲よりも幾らか音質が劣るような印象は有りましたが、因果関係は全く分かりません。但し通常は言われないと気にならない程度の違いですので心配は有りません。

Brahms_bohem_14 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) 全集盤に収められています。まず、ムジーク・フェラインでの美しい響きの録音に惚れ惚れします。金管の和音がとても美しく、スタジオ録音のメリットが出ていると思います。もちろん弦や木管の美しさも特筆ものです。ベームの演奏は非常に呼吸が深く、しかもどこまでも自然なので安心して身を委ねられる雰囲気です。独特のたおやかさを感じます。終楽章も少しも騒々しくならないのが良いです。ベームは何もライブだけの人では決してありません。

Hmv_2683414 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1977年録音/TDK盤) 全集盤から2年後の日本公演のライブです。東京文化会館でのTDKの録音は優れていますが、ムジーク・フェラインの美しい響きには及びません。ベームの解釈は変わりませんが、ほんの少しだけテンポが速くなっていて、呼吸の深さは全集盤のほうが強く感じます。但し、終楽章だけは曲想のせいで、躍動感と高揚感に勝るライブの方が一般的に好まれるのは間違いありません。

175 オイゲン・ヨッフム指揮ウイーン・フィル(1981年録音/Altus盤) もうひとつウイーン・フィルの良い演奏があります。これは実はベーム追悼演奏会のライブです。会場は楽友協会大ホールですが、美しい響きが聞ける名録音だと思います。特に中低域の音が厚いので嬉しいです。ここはどうしてもベームの演奏との比較になりますが、元々テンポを微妙に揺らすヨッフムはベームほどの貫禄は有りません。けれども逆にしなやかさを感じますので、これはこれでとても魅力的です。終楽章も少しもうるさくならずに熱演しています。敬愛するベームを悼んで襟を正して真剣に演奏するウイーンの楽団員たちの姿が目に浮かぶようです。

515r2b7qvll__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1983年録音/オルフェオ盤) ミュンヘン・ライブの全集です。元々明るい音色のバイエルン放送響ですが、この演奏は金管の音量バランスが幾らか強めで目立ちます。うるさいわけではありませんが、もう少し控えめのほうが落ち着きます。リズムに念押しが無いので腰の軽さを感じさせます。プロシア魂は感じさせない演奏です。かといって流麗なウイーン・スタイルでもありませんので、スタイルがやや中途半端な印象です。決して悪い演奏ではありませんが特徴に欠けます。

Vcm_s_kf_repr_500x500クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン響(1990年録音/カプリッチオ盤) SKドレスデン盤から18年後の再録音全集です。残響の深いイエスキリスト教会で、更にオフ気味の録音なのでムード的に聞こえます。演奏そのものもSKドレスデンのように徹底したマルカート奏法では無いにしても、圭角がまるで取れて聞こえます。テンポは大分遅くなっていて、幾らかもたつきを感じますが、スケールの大きさでは旧盤を上回ります。新盤の良さも無いわけではないのですが、全体的にはやはり旧盤を上にしたいと思います。

41mqvx5jevl__sl500_aa300_ カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1991年録音/グラモフォン盤) 全集盤の録音です。この演奏は中野雄さんが推薦されていたので気になっていました。ウイーン・フィルの奏するブラームスでは最も適性を感じるのが第2番だからです。全体に遅いテンポで重厚な響きなのですが、旋律を美しく奏でる弦楽器と木管の音が確かにこの曲にはうってつけです。2楽章のカンタービレの美しさはいかばかりでしょう。終楽章のスケールの大きさもザンデルリンクに匹敵します。

以上を改めて聴き直した結果のマイ・フェイヴァリットは、ベーム/ウイーン・フィルのグラモフォン盤です。次点としてはシューリヒト/シュトゥットガルト放送響、ザンデルリンク/シュターツカペレ・ドレスデンです。
他には、カイルベルト/バイエルン放送響、バルビローリ/バイエルン放送響、ベーム/ウイーン・フィルのTDK盤、ヨッフム/ウイーン・フィルと続いて、中々の激戦状態です。

こうしてみると南ドイツ、オーストリアの楽団が大勢を占めていて、第1番で北ドイツの楽団が優勢であったのとは逆のねじれ現象が起こりました。これは明らかに曲想の違いだと思います。

<追記> ジュリーニ盤を後から加筆しました。ベームと並ぶウイーン・フィルによる素晴らしい演奏で、この曲のベストを争う1枚だと思います。

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2011年3月 2日 (水)

ブラームス 交響曲第1番ハ短調op.68 名盤(ステレオ録音編)

ブラームスの交響曲第1番の愛聴盤ご紹介ですが、前回の「モノラル録音編」に続いて今回はステレオ録音編です。懐かしい往年の名指揮者が順に登場しますが、これらは全くの僕個人の趣味ですので、ご了承ください。

Xat1245253140 エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1958年録音) 最近は、すっかり忘れ去られた感のあるベイヌムですが、僕が学生の頃には中々に人気が有りました。引き締まって切れの良いリズムが非常に魅力的でした。このブラームスも速めのテンポで躍動感の有るスタイルで、後述のベーム/ベルリン・フィルに共通していますが、少々引き締まり過ぎていて、もう少しゆったりとした余裕が欲しい気がします。

Walter3200081099 ブルーノ・ワルター指揮コロムビア響(1959年録音/CBS SONY盤) 僕はワルターのニューヨーク・フィルとのモノラル盤は好みません。かつての柔らかいヨーロピアン・スタイルとはかけ離れたアメリカ的な激しい表現だからです。その点ステレオ盤では、ゆったりとした雰囲気を取り戻していて、非常に魅力的です。曲のどこをとっても柔らかく美しい表情で一杯です。オケの音の薄さも不思議と気になりません。晩年のステレオ盤では2番と3番は音が荒くいただけないのですが、この1番と4番はとても出来が良いと思います。

41ce7fgfjsl__sl500_aa300_ カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(1959年録音/グラモフォン盤)  ベームがまだ60代の壮年期の演奏です。後年の演奏よりもテンポが速く、活力に溢れています。当時のベルリン・フィルもドイツ的な暗い音色を残していてブラームスに適しています。ただ、音が余りに凝縮され過ぎているので、聴いていて息苦しさを感じます。一つはスタジオ録音のせいでもあるでしょう。個人的には後年のライブ録音の方に強い魅力を感じます。

Brahms_kempe ルドルフ・ケンぺ指揮ベルリン・フィル(1959年録音/EMI盤) ケンぺは晩年のミュンヘン・フィルとの録音も有りますが、響きが薄く好みません。その点、暗く厚い音を持つ当時のベルリン・フィルとの演奏には満足できます。厳格なイン・テンポでじわじわと高揚させてゆく辺りはやはりドイツ人です。それでいてベーム/ベルリン・フィルのような息苦しさも感じません。僕が持っているCDは東芝EMI盤なので高音に強調感が有ります。現在はテスタメント盤が出ていますので、これから購入される方はそちらを選ぶべきです。

Brahms1_konvic フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(1962年録音/シャルプラッテン盤) コンヴィチュニー最晩年の録音です。ベートーヴェンやシューマンであれほど素晴らしいドイツの音を聞かせた全盛期のゲヴァントハウスとのブラームス全集が無いのは痛恨の極みですが、唯一録音が残された1番は、期待通りの演奏です。弦も管も古色蒼然としたオケの音色が最高で、特に終楽章冒頭のホルンには言葉を失います。テンポはもちろん厳格なイン・テンポ。これでこそブラームスの音楽は生きます。それにしても、この素晴らしい演奏が廃盤なのはドイツ音楽ファンにとって大きな損失です。

4105110900 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル(1962年録音/スプラフォン盤) 1楽章の導入部は速めですが主部に入るとじっくりと進行します。リズムやアクセントの厳格な刻みがドイツのオケ以上なのに目を見張ります。推進力が有りますが、決して上滑りしないのはブラームスに適しています。チェコ・フィルの清涼感の有る音色は悪くありませんが、管楽器の大きなビブラートが目立つのは微妙です。終楽章でもイン・テンポでじわじわと高揚する辺りは聴き応えが有ります。僕はこの演奏は意外に好きです。

Brahms_bohem_1 カール・ベーム指揮バイエルン放送響(1969年録音/オルフェオ盤)  ミュンヘンでのライブ録音です。ベームのこの曲の録音の中でも最も燃えに燃えている演奏です。ある評論家が「まるで阿修羅のようだ」と記述していましたが、とても的を得た表現です。老境に入る前のベームがライブでひとたび燃え上がるとどれだけ凄かったかが良く分かる最高の記録でしょう。但しその分、晩年の演奏に比べて音楽の翳りがやや乏しい面が有ります。バイエルン放送響の音色は幾分明るめに感じられますが、違和感は有りません。録音は年代相応というところです。

4110061114クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1971年録音/DENON盤) 全盛期のSKドレスデンをブラームスの音楽を最も得意とするザンデルリンクが振った演奏です。やや遅めでインテンポを守りますが、アフフタクトを強調して念押しするような強固なリズムや、ドイツ的なマルカート奏法が重厚さをもたらしています。それでいて推進力を失いませんので、終楽章などは充実感で一杯です。SKドレスデンの典雅な響きも最高です。柔らかく目のつんだ弦の音に管が完全に溶け合って、実に厚みのある音を聞かせます。終楽章の弦の主題の高貴さは類例がないと思います。管のソロ奏者達も皆上手く極めて魅力的です。録音から40年経た今でもこの音と演奏を越えるものは未だに聴いたことが有りません。

Sander416 クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1973年録音/TDK盤) SKドレスデンの初来日時のライブ録音です。テンポといい鳴らし方といい、2年前のスタジオ録音と全く変わりません。録音は大差有りませんが、柔らかく深い響きはドレスデンのルカ教会で録音されたスタジオ盤のほうが勝ります。後述のベーム/ウイーン・フィルと並んで、過去日本で演奏された最上のブラームスだと思いますが、どちらかを選べと言われれば、僕は迷うことなく’71年のスタジオ録音盤をとります。

Cci00014b_2 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) 日本公演のライブです。NHKホールのこの時の演奏はオールドファンの語り草となっています。バイエルン放送響盤よりもゆったりとしたテンポでスケールが非常に大きいのですが、一方で高揚感も充分に有ります。また、ウイーン・フィルらしからぬ重厚な響きも大変に魅力的です。厳格なプロシア風とは言い難いですが、雄大なアルプスを感じさせる演奏です。これはベームの最上の演奏記録だと思います。NHKの録音も低域まで充実していて非常に優秀です。

Brahms_bohem_14 カール・ベーム指揮ウイーン・フィル(1975年録音/グラモフォン盤) ベームとウイーン・フィルは日本公演から2か月後にウイーンで全集録音を行いました。音楽の造りはほぼ同じです。ムジーク・フェラインの美しい響きを捉えた録音も素晴らしいのですが、少々落ち着き過ぎている印象はあります。実演になると別人の如く気合の入るベームですので、この曲に関してはやはりNHKのライブ盤のほうを第一に取りたいと思います。

Brahms1_381 オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・ドイツ響(1981年録音/WEITBRLICK盤) ヨッフムはブルックナーほど多くの録音を残してはいませんが、ブラームスも重要なレパートリーです。幾らかテンポの浮遊感を感じますし、リズムの念押しも普通なので、特別に重厚な印象は有りません。古典派よりも幾らかロマン派に傾倒した演奏です。金管も部分的に強奏されます。人によっては好まれるのではないでしょうか。但し終楽章でフルートとホルンが聴きどころで音が不安定になるのは頂けません。ベルリン・ドイツ響はかつてのフリッチャイの西ベルリンの放送響です。レーグナーの東ベルリンの放送響とは異なります。

515r2b7qvll__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1983年録音/オルフェオ盤) ミュンヘンでのライブの全集盤です。冒頭のテンポが速いので「これは爆演タイプかな」と警戒していると、主部では念押しした重圧なリズムになるので安心します。あとは最後までインテンポを通すのは我が意を得たりです。ホールトーンを生かした柔らかい録音なので響きがとても美しく心地よいです。終楽章の終結部で金管が開放的に奏されますが、騒々しくなることは無く許容範囲内と言えます。

Brahms1_karajan_1988 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(1988年録音/テスタメント盤) 実は高校時代に初めて買ったブラームス全集はカラヤンの最初のグラモフォン盤でした。但しそれは1年後ぐらいに友人のフルトヴェングラーのEMIの全集と交換してしまいました。これはカラヤン晩年のロンドンでのライブ録音です。この時は、会場への楽器の到着が遅れるアクシデントが有ったために、リハーサルなしの本番だったとのことです。その影響が有ったかどうかは知りませんが、全体にカラヤンにしては遅めのテンポで堂々としています。但し古典派よりもロマン派に傾倒した演奏です。終楽章の弦の主題がいい例でレガートに歌うのでムード的です。BBCの録音のせいか、響きはいつものベルリン・フィルのように騒々しくは感じません。ところが終楽章では何事かと思うような凄まじい金管の強奏とティンパニの強打で本来のカラヤンに戻るので、耳にこたえます。

F0123532_851327 オトマール・スウィトナー指揮シュターツカペレ・ベルリン(1988年録音/Altus盤) スウィトナーがパーキンソン病で引退する2年前のサントリーホールでのライブ録音です。この人はモーツァルトを演奏すると非常に軽快ですが、このような重厚な音楽はその通り忠実に演奏します。1楽章のドイツ風に念押しするリズムは、さながらザンデルリンクのようです。ただ、2楽章以降は造形性が幾らか緩やかになります。特に終楽章ではテンポの揺れが有ったり、部分的にフォルテを強調したりとロマン派調に傾きます。弦に管が溶け合う響きはやはりドイツのオーケストラです。

Vcm_s_kf_repr_500x500 クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン響(1990年録音/カプリッチオ盤) SKドレスデン盤から18年後の再録音全集です。テンポが非常に遅くなりました。そのうえで念押しするリズムは変わりませんので、かなりもたれます。1楽章などは推進力が全く失われているので、じれったいほどです。2楽章以降もやはり同様にもたれています。但し終楽章の弦による主題以降は推進力を感じます。ベルリン響の音については、このCDを推薦する評論家は「真にドイツ風の響きだ」と言いますが、イエスキリスト教会の深い響きに助けられているだけです。オケの魅力はSKドレスデンに遥かに及びません。

41mqvx5jevl__sl500_aa300_ カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウイーン・フィル(1991年録音/グラモフォン盤) 全集盤の録音です。遅いテンポでイン・テンポを守り、一音一音念押しするリズムがいかにもブラームスです。1楽章は緊張感と重厚な響きが素晴らしく、ベストを争うほどの出来栄えです。2楽章はゆったりとして、ウイーン・フィルがとても美しいです。4楽章もスケールが大きく、緊張感を保っていて良いです。カンタービレがやや過剰気味なのが自分の好みから離れてしまいますが、全体的には非常に良い演奏です。

869 ベルナルト・ハイティンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(2002年録音/Querstand盤) 実はハイティンクは余り好きでは無いのでこのCDは購入していませんでした。それを昨年末にsource manさんからディスクを頂戴したのです。考えてみれば、ブラームスに最適なSKドレスデンですので、これまで聴かなかったのは不思議です。これはドレスデンでのライブ録音ですが、当然音質は優秀です。オケの響きも管が弦に完全に溶け込むSKDサウンドです。元々自己主張を強くしないハイティンクはSKDには向いているかもしれません。但し、この演奏がザンデルリンク盤を超えるかというと、そうとは言えません。剛直なプロイセン魂をザンデルリンク盤には感じますが、ハイティンクには残念ながらそれは感じません。SKDも40年前の方がドイツ的な体質をより強く保持していたのは否定できません。ディスクとして比較すると、どうしてもそんなことを感じてしまいます。けれども、これは最新の録音で聴くことが出来る最上のブラームスだと思います。このCDをお贈り頂いたsource manさんに改めて御礼申し上げます。

51qxycs6il__sl500_aa300_ 小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ(2010年録音/DECCA盤) 小澤さんの若い頃の演奏は非常に若々しくフレッシュでとても好きでした。ところが年齢を重ねるにつれて、それほど好きでは無くなりました。しかし食道癌との闘病後の昨年末にニューヨークのカーネギーホールで行った復帰コンサートをCDにされては聴かない訳にはいきません。このオケはもちろん常設団体では有りませんが、今回のメンバーは特に管楽に世界の著名オケの首席クラスが大勢加わっています。彼らが齋藤秀雄氏に関係が有るのか無いのか良く分かりませんが、スーパーヴィルティオーゾ・オーケストラと呼ぶのに躊躇いは有りません。演奏は遅めのテンポでゆとりが有りますが、メンバーの非常に高揚した気分を感じます。管楽はさすがに素晴らしいです。常設オケのような同一性や熟した印象は無くとも、逆に緊張感を感じます。弦楽も細部の表情がとても豊かで感心します。小澤さんの指揮にはドイツ的な音のタメこそ有りませんが、新鮮さの有るブラームスです。全体の響きがまろやかなのも良く、これは決して録音によるだけでは無いと思います。この演奏をこれから何度も繰り返して聴きたくなるかどうか現時点では分かりませんが、何年か後に自分がどう感じるか楽しみな1枚です。

ということで、この曲の所有CDを改めて聴き直しましたが、モノラル/ステレオ盤を合わせてのマイ・フェイヴァリットは、やはりザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデンの1971年盤でした。これは自分にとっては完全無欠の「ブラ1」です。そして2番目はベーム/ウイーン・フィルの1975年NHKライブです。これも本当に素晴らしく、正に記念碑的な演奏だと思います。3番目グループとしては、フルトヴェングラー/北ドイツ放送響の1951年盤、コンヴィチュニー/ゲヴァントハウス管の1962年盤、シュミット-イッセルシュテット/北ドイツ放送響の1967年盤、ハイティンク/SKドレスデンの2002年盤が続きます。それ以外も、実はみな好きな演奏です。やはり自分はブラームジアーナーに間違い有りません。

<追記> ジュリーニ盤を後から加筆しました。この演奏は3番目グループに加えたいと思います。

<関連記事>
今年聴いたブラームスの交響曲のCD

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2011年2月24日 (木)

ブラームス 交響曲第1番ハ短調op.68 名盤(モノラル録音編)

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今年の目標の一つにブラームスの交響曲を1曲づつ記事にしたいということを上げました。自称ブラームジアーナーの僕ですが、意外なことに、これまでは4曲をまとめて「ブラームスの交響曲」として記事にしただけで、個々の曲について詳しく取り上げたことはありません。第3番だけは、ザンデルリンクの新盤が出た時に取り上げましたが、それも完全なものではありません。そこで今回あらためて交響曲の特集をしたいと思います。但し、前に一度触れた演奏については恐らく同じような内容になってしまうことと思います。まずは第1番からです。

ブラームスの第1交響曲は、構想開始から完成までに20年以上の月日がかかったことはよく知られています。ベートーヴェンの偉大な交響曲を継承する作曲家が中々現れずに、どんどんとロマン派に移りゆく音楽界を意識してブラームスはこの作品に取り組みました。それを成し遂げられるとすれば自分しかいないという強い使命感を持っていた為に、完全に納得出来る作品を目指したのでしょう。そしてついに、この作品を完成させます。名指揮者ハンス・フォン・ビューローが、この曲を「ベートーヴェンの第10交響曲である」と絶賛したことは有名ですが、事実、疑いもなく最も優れた交響曲の一つに数えられます。この作品は、いかにも「これぞクラシック音楽である」という雰囲気です。作品としては、頭で考えた理屈っぽさを感じないでもありませんが、その一方で大衆に喜ばれるようなサービス精神を随所に発揮しています。こんな作品は、やはりブラームスにしか書けないと思います。この曲の解説は色々な所で読むことが出来ますので省きますが、意外と書かれていないことは、独特のブラームス・リズムについてです。アウフタクトがとにかく多様されていることです。何気なく聴いていると、強拍の音のように聞こえている音附が、実は弱拍であることが非常に多いのです。これは何を意味するかというと、リズムの重厚さを生み出します。演奏の際にそれを強調しないと、何とも腰の軽い感じになります。ドイツ人以外の演奏家が、しばしば陥るのがそのようなブラームスです。逆に、これを最も忠実に演奏するのはシュターツカペレ・ドレスデンであり、指揮者で言えばクルト・ザンデルリンクです。

さて、僕の愛聴盤を順にご紹介してゆきますが、やはり自分にとってはブラームスと言えばザンデルリンク、ザンデルリンクと言えばブラームスというぐらいに唯一無二の存在です。けれども今回は無心の状態になって、改めて所有している全CDを聴き比べたいと思います。まずは前半のモノラル録音編です。

1198031254 ウイルヘルム・フルトヴェングラー指揮北ドイツ放送響(1951年録音/TAHRA盤) フルトヴェングラーはもちろんブラームスを得意にしていましたが、個人的には必ずしも好みません。ロマンティシズムばかりが余りに目立って、造形性に欠けるからです。ブラームスの演奏には二つの要素の両立が必須だと思うからです。それでもフルトヴェングラーの演奏の中から一つ選ぶとすれば、この北ドイツ放送響とのライブ盤を取ります。驚くほど深刻に始まり、凄まじく白熱して終わりますが、フルトヴェングラーの表現スタイルとして徹底され尽くしています。北ドイツ放送響もブラームスに相応しい音を持っています。録音は年代相応です。(補足:デルタ盤のリマスターが良いと言う評判です。自分は未聴ですが、これから購入されるかたはそちらが良さそうです。)

B00005 ウイルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル(1952年録音/グラモフォン盤) ティタニア・パラストでのライブ録音です。当時のベルリン・フィルの弦は北ドイツ放送響よりもずっとボルタメントが多いので、甘くロマンティックに聞こえます。2楽章の独奏ヴァイオリンも、おそらくジークフリート・ボリスでしょう。濃厚な甘さです。これは好みの問題ですが、僕は北ドイツ放送響盤の方を好みます。またフルトヴェングラーにしては演奏に白熱度の不足を感じます。終楽章などは明らかに北ドイツ放送盤に及びません。録音も北ドイツ放送盤のほうが良好です。

Brahms_sym1 クレメンス・クラウス指揮ブレーメン国立フィル(1952年録音/TAHARA盤) 速めのイン・テンポで颯爽と進みますが、機械的な感じがしないのは流石に名人指揮者です。実はすぐに気付かないほどの微妙な間が多く有るからです。音楽の勢いとの絶妙なバランスが素晴らしいです。決して超一流のオケでは無いのに表現がニュアンスで満ち溢れていて、どこをとっても音楽に香りが漂っています。ただホルンが何度も音を外すのは困ったものです。終楽章もアクセルを踏み込んで熱狂するのは良いのですが、少々せせこましい感無きにしもあらずです。録音は明快で生々しい音が味わえます。

Brahms_sym1_schuri カール・シューリヒト指揮スイス・ロマンド管(1953年録音/archiphon盤) ジュネーヴでのライブ録音です。シューリヒトは総じて快速テンポで腰の軽い演奏が多いので、ブラームスの音楽に余り向いてはいません。1楽章はある程度の重さを感じますが、妙な弦のポルタメントが耳につきます。2、3楽章での流れの良さは悪くありません。終楽章は快速で駆け抜けるシューリヒト調ですが、念押しの無い前のめりのリズムがどうも頂けません。録音は並み程度です。

Brahms_monteux ピエール・モントゥー指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1963年録音/TAHRA盤) これもライブ録音です。モントゥーは好きな指揮者に入るのですが、ブラームスに関してはそれほど感心したことがありません。このライブ盤も絶賛している評論家が居ますが、正直わざわざモノラル盤を推すほどのことは無いと思います。「フランス人にしては」という条件付きでは決して悪くない演奏ですが、リズムにドイツ的な厳格さが無いのが不満です。ブラームスはやはりドイツの語法で奏して欲しいです。

Brahms_14 ハンス・シュミット-イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1967年録音/EMI盤) 北ドイツ放送響(NDR)とのライブ録音の全集ですが、何故か1番だけがモノラルです。この録音年でモノラルなのは残念です。戦後創設されたNDRを鍛え上げたのはこの人とシューリヒトですが、二人が「我々のオーケストラ」と呼ぶぐらいにNDRは素晴らしいオケです。この人はウイーン・フィルを振るときには音の柔らかさを生かしますが、ドイツのオケを振るときには非常に重圧な指揮ぶりになります。かくて、この演奏は正真正銘ドイツ風の実に聴きごたえのあるブラームスです。

以上のモノラル盤に限定すれば好きなのは、フルトヴェングラー/NDR盤とSイッセルシュテット/NDR盤です。奇しくも両方ともNDRという、ブラームスの生まれ故郷ハンブルグのオーケストラになりました。やはりブラームスの音楽は彼らにとっては特別なものなのではないでしょうか。

ということで、次回はステレオ録音編です。

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