ファリャ、ロドリーゴ、他スペイン音楽

2010年7月19日 (月)

ファリャ バレエ音楽「恋は魔術師」 愛聴盤 ~火祭りの踊り~

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うっとうしかった梅雨もついに明けましたね。東京でも梅雨明け十日の猛暑に見舞われています。いやぁ、それにしても暑いのなんのって。(汗汗) ビールが実に美味しいのはありがたいのですけどねぇ・・・

こうも暑いと、さすがにマーラーを聴こうという気分でもなくなります。涼しさを感じる音楽として、僕が毎年夏場に聴きたくなるのは、まずボヘミア音楽です。スメタナ、ドヴォルザーク、爽やかでいいですよね。ただし余りに暑いときには、むしろ照りつける太陽と乾いた土の雰囲気のスペイン音楽なのですよ。ロドリーゴのアランフェス協奏曲も夏の夕暮れには最高なのですが、もう一人のスペインの大作曲家マヌエル・デ・ファリャもいいです。僕が特に好きなのはバレエ音楽「恋は魔術師」です。

この曲は、初めはスペインの劇作家シェルラという人が、アンダルシア地方の民話をもとにして書いた台本による1幕のバレエ「アンダルシアのジプシーの情景」でした。それをコンサート演奏用に楽器を増やして、独唱をつけた形に編曲したのものです。

その台本はといえば、おおよそこんな内容です。

『官能的なジプシー女カンデラスは夫が死んだ後に、若くハンサムなジプシー男と恋に落ちます。ところが死んだ夫が亡霊になって現れて二人の恋の邪魔をします。困ったカンデラスが思いついた作戦は、生前美女に弱かった夫の亡霊を、友人のルシアに誘惑してもらうということです。夫の亡霊がルシアにうつつをぬかしている間に、愛する恋人たちはどんな魔術も効き目を失うというといわれる完全な愛の接吻をして、めでたく結ばれます。』

いかにも情熱的なスペインらしい話ではありませんか。生きてる人も亡霊になっても、みなさん情熱的に恋をしているのですねぇ。自分もぜひ見習いたいものです。

現在広く演奏されているのはコンサート用の全曲版です。なんといっても有名なのが第5曲の「火祭りの踊り」です。怪しげに始まってメラメラと燃え上がってゆく躍動的な曲です。この曲は昔からとっても好きなんですよ。第8曲の「無言劇(パントマイム)」もロマンティクでいいですね。歌入りの曲ではメゾ・ソプラノがいかにもジプシーっぽく情熱的に歌います。その艶めかしいことときたら、たとえ幽霊でもクラっと来ちゃうでしょうね。もちろん、うぶなワタクシなんぞはイチコロです。

さて、CDの数はそれほど多くありませんが、愛聴盤をご紹介します。

00000452006 ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮ニュー・フィルハーモニア管(1966年録音/DECCA盤) ブルゴスはスペインとドイツのハーフなので、どちらの音楽も得意です。3年前にドレスデン・フィルと来日したときに聴いたブラームスの1番なんかは中々堂々としていました。でも、この人は昔からスペイン物で知られています。この若い時代の演奏も彼の代表盤といえます。やはりスペインの雰囲気がよく出ていて上手いものです。

Falla002 ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮スペイン国立管(1998年録音/BMG盤) DECCA盤があれば鑑賞にはこと欠きませんが、不満を言うとすれば、オケの音に土臭さが無いことでした。そこで30年の時を超えて新録音された演奏があります。オケは嬉しいことに名門のスペイン国立響です。いやー、これこそスペインの乾いた赤土の音です。ファンファーレは闘牛場を思わせますし、メゾ・ソプラノもなんだか声楽家というよりも民謡歌手みたいです。これは120%本場ものを味わえる最高の演奏です。ただし入手性は悪いかもしれません。

Falla001 ペドロ・デ・フレイタス・ブランコ指揮マドリード・コンサート管(1959年録音/EMI盤) ずいぶん古い本場ものの録音です。指揮者もオーケストラも名前はまったく知りませんし、読み方もこれでいいのかどうか分かりません。もともと乾いた音のオケが残響の少ない録音で、実に乾き切っています。けれどもこのローカルな味わいには惹かれます。このメゾ・ソプラノもドスのきいた声で演歌歌手みたいです。現在では、たとえローカル都市でもこんな演奏が聴かれるのかどうかは疑問ですね。いいなぁ、スペイン!フラメンコ!ジプシーの美女!

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2009年8月 7日 (金)

ロドリーゴ 「アランフェス協奏曲」 名盤 ~太陽と情熱の国スペイン~ 

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今年の夏はどうやら冷夏のようですね。それでも日中に陽が射せば、やっぱり随分と暑くなります。そこで夏らしく「太陽と情熱の国」スペインへ行ってみましょう。この国の音楽といえばフラメンコ。ギターの伴奏に合わせて情熱的に踊るスペイン女性。いいですね~。情熱的な女性に弱いフーテンのハルくんは一発で参ってしまいます。

スペインのホアキン・ロドリーゴが20世紀で最も有名なギターの名曲を作曲しました。あの「アランフェス協奏曲」です。ロドリーゴは幼い頃に失明して盲目となりました。実は彼はギターという楽器を弾けなかったそうですが、ギターの魅力を熟知していたのでこの史上最高のギター名曲を生んだのです。

クラシック音楽は真夏の暑苦しい季節感にはなんとなくそぐわない気がしないでもないですが、そんな時でも僕がよく聴きたくなるのが「アランフェス協奏曲」です。フラメンコ調のギターの軽快なリズムで始まる第1楽章アレグロからして素晴らしいです。なんという爽やかな曲なのでしょう。スペインの乾燥した赤土の上を風が吹き抜けて行くような風情なのですね。スペイン民謡をイメージしたメロディが至るところに現れるのも魅力的です。

第2楽章アダージョは有名な「アランフェス」のテーマです。この楽章はアランフェスに古くから有る宮殿に結び付けられてみたり、あるいはロドリーゴ自身の心境が影響したように言われています。でも僕の個人的なイメージでは、昼間の灼熱の太陽で焼けた赤土の大地が夕暮れとともにだんだんに冷めてゆく雰囲気を感じるのです。ですので僕は真夏の夕暮れにこの曲を聴くのが好きなのです。その時にはエアコンは付けません。下着1枚になっても我慢して聴きます。そうして外の気温がだんだんに下がってゆくのを肌で感じるのが良いのです。

第3楽章アレグロも軽快で楽しい曲です。1、2楽章の閃きに比べるとやや平凡ですがやはり良い曲です。

それでは僕の愛聴盤をご紹介しましょう。この曲は、もちろん独奏ギターが重要なのですが、スペインの溢れる雰囲気を表わすには管弦楽の音色も非常に大事です。余り上手すぎて流麗な楽団だとかえって雰囲気が失われてしまいます。下手でも乾いた音で情熱的に演奏される方がスペインの雰囲気が出て良いのです。

Cci00009 レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ(独奏)、アルフテル指揮マニュエル・デ・ファリャ管(1962年録音/RCA盤) デ・ラ・マーサはこの曲の初演者です。その人の演奏がタワーレコードからRCAのライセンスで発売されています。このCDは実は興味半分で聴いてみたのですが、今では非常に気に入っています。冒頭のギターから、ゆったりとおおらかで温かみのある演奏に惹きこまれます。但しテクニックはまるで乏しく、速い部分などでは、指が完全にもつれてヨレヨレです。けれども情感の豊かさは比類が無いので、聴けば聴くほどに味わいが深まる不思議な演奏と言えます。オケ伴奏がド演歌のように濃厚に歌うのもご愛嬌ですが、これが良いのです。

P1_j2000108w ナルシソ・イエペス(独奏)、アルヘンタ指揮スペイン国立管(セヴンシーズ盤) 母国スペインの生んだ有名なギタリスト、イエペスはこの曲を何度も録音しましたが、これは最初の録音です。伴奏指揮もスペインの生んだ天才指揮者アルヘンタ。昔からこの曲の代表的な名演奏に上げられている名盤です。若き30代のイエペスが若々しくインスピレーションに溢れるギターを弾いていますが、それはアルヘンタの素晴らしい伴奏指揮に触発されたのかもしれません。但したった一つだけ問題が有ります。2楽章のコールアングレの有名なメロディの音量が小さ過ぎるのです。これは録音バランス上の問題なのですが、何しろ肝心な部分なので非常に残念です。

Cci00009k ナルシソ・イエペス(独奏)、アロンソ指揮スペイン放送響(1969年録音/グラモフォン盤) この演奏は管弦楽の録音がすこぶるデッドでエコーが少ないのです。ですので元々上手くないであろうオケが余計に下手に聞こえます。ところがこの乾いた音色が良いのですよ。これこそが焼けた赤土のイメージにぴったりだと思うのです。2楽章のコールアングレの音量もとてもバランスが良く情感も不足しません。こういう雰囲気はやっぱり自国の楽団ならではです。イエペスは端正に何気なくギターを弾きますが、それでいて味わいが深いのですね。旧盤と比べてもずっとゆっくりと弾いています。僕は個人的にはこちらの演奏を好んでいます。

さて、アランフェスはクラシック以外でも色々とアレンジを変えて演奏されますが、その中でも特に好きなものをご紹介します。

41766dsdopl__ss500_ マイルス・デイヴィス(トランペット)(1959年録音/CBS盤) ジャズ界の帝王マイルスもこの曲を演奏しました。「スケッチ・オブ・スペイン」というアルバムに収められています。実際にはプロデューサーの企画で製作されたものですが、マイルスはアメリカ生れの黒人ですのでスペインの風土うんぬんというよりは、自分のブルースとしてこの曲を演奏しています。ところがさすがに一流が演奏すると実にサマになるのです。深夜に一人静かにグラスでも傾けて聴くにはむしろ一番かもしれません。「う~むマイルス!」 ジャズファンなら誰でも知っているこのアルバムですが、クラシックファンの方でもたまにはこういうのも面白いのではないでしょうか。

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