ファリャ バレエ音楽「恋は魔術師」 愛聴盤 ~火祭りの踊り~
うっとうしかった梅雨もついに明けましたね。東京でも梅雨明け十日の猛暑に見舞われています。いやぁ、それにしても暑いのなんのって。(汗汗) ビールが実に美味しいのはありがたいのですけどねぇ・・・
こうも暑いと、さすがにマーラーを聴こうという気分でもなくなります。涼しさを感じる音楽として、僕が毎年夏場に聴きたくなるのは、まずボヘミア音楽です。スメタナ、ドヴォルザーク、爽やかでいいですよね。ただし余りに暑いときには、むしろ照りつける太陽と乾いた土の雰囲気のスペイン音楽なのですよ。ロドリーゴのアランフェス協奏曲も夏の夕暮れには最高なのですが、もう一人のスペインの大作曲家マヌエル・デ・ファリャもいいです。僕が特に好きなのはバレエ音楽「恋は魔術師」です。
この曲は、初めはスペインの劇作家シェルラという人が、アンダルシア地方の民話をもとにして書いた台本による1幕のバレエ「アンダルシアのジプシーの情景」でした。それをコンサート演奏用に楽器を増やして、独唱をつけた形に編曲したのものです。
その台本はといえば、おおよそこんな内容です。
『官能的なジプシー女カンデラスは夫が死んだ後に、若くハンサムなジプシー男と恋に落ちます。ところが死んだ夫が亡霊になって現れて二人の恋の邪魔をします。困ったカンデラスが思いついた作戦は、生前美女に弱かった夫の亡霊を、友人のルシアに誘惑してもらうということです。夫の亡霊がルシアにうつつをぬかしている間に、愛する恋人たちはどんな魔術も効き目を失うというといわれる完全な愛の接吻をして、めでたく結ばれます。』
いかにも情熱的なスペインらしい話ではありませんか。生きてる人も亡霊になっても、みなさん情熱的に恋をしているのですねぇ。自分もぜひ見習いたいものです。
現在広く演奏されているのはコンサート用の全曲版です。なんといっても有名なのが第5曲の「火祭りの踊り」です。怪しげに始まってメラメラと燃え上がってゆく躍動的な曲です。この曲は昔からとっても好きなんですよ。第8曲の「無言劇(パントマイム)」もロマンティクでいいですね。歌入りの曲ではメゾ・ソプラノがいかにもジプシーっぽく情熱的に歌います。その艶めかしいことときたら、たとえ幽霊でもクラっと来ちゃうでしょうね。もちろん、うぶなワタクシなんぞはイチコロです。
さて、CDの数はそれほど多くありませんが、愛聴盤をご紹介します。
ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮ニュー・フィルハーモニア管(1966年録音/DECCA盤) ブルゴスはスペインとドイツのハーフなので、どちらの音楽も得意です。3年前にドレスデン・フィルと来日したときに聴いたブラームスの1番なんかは中々堂々としていました。でも、この人は昔からスペイン物で知られています。この若い時代の演奏も彼の代表盤といえます。やはりスペインの雰囲気がよく出ていて上手いものです。
ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス指揮スペイン国立管(1998年録音/BMG盤) DECCA盤があれば鑑賞にはこと欠きませんが、不満を言うとすれば、オケの音に土臭さが無いことでした。そこで30年の時を超えて新録音された演奏があります。オケは嬉しいことに名門のスペイン国立響です。いやー、これこそスペインの乾いた赤土の音です。ファンファーレは闘牛場を思わせますし、メゾ・ソプラノもなんだか声楽家というよりも民謡歌手みたいです。これは120%本場ものを味わえる最高の演奏です。ただし入手性は悪いかもしれません。
ペドロ・デ・フレイタス・ブランコ指揮マドリード・コンサート管(1959年録音/EMI盤) ずいぶん古い本場ものの録音です。指揮者もオーケストラも名前はまったく知りませんし、読み方もこれでいいのかどうか分かりません。もともと乾いた音のオケが残響の少ない録音で、実に乾き切っています。けれどもこのローカルな味わいには惹かれます。このメゾ・ソプラノもドスのきいた声で演歌歌手みたいです。現在では、たとえローカル都市でもこんな演奏が聴かれるのかどうかは疑問ですね。いいなぁ、スペイン!フラメンコ!ジプシーの美女!
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