フランス音楽(サン=サーンス、ドリーヴ、プーランクなど)

2018年3月30日 (金)

ピアニスト 山田磨依 ファーストCD「ダマーズ生誕90年によせて」

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発売:ソナーレ・アートオフィス(SONARE1037)/2017年7月録音

新進ピアニストで個性的な活動をしている山田磨依がファーストCDをリリースしました。

彼女はとにかくフランス音楽を愛していて、本場パリの音楽院に留学し研鑽を積みました。そのまだ留学中に一時帰国した際に東京で開かれた演奏会を聴く機会が有ったのですが、そのピアノの音の美しさと軽やかさに耳を奪われました。著名コンクールで上位入賞するピアニストのような超絶技巧と音で圧倒されるタイプとは少々異なるように感じました。と言えば誤解されるかもしれませんが、彼女は正確な技巧を十分に持ち合わせていて、たとえラフマニノフの協奏曲でも破たん無く弾きこなしてしまいます。しかし彼女の指先から出てくる音には得も言われぬ洒脱さや、まぎれもないフランスのエスプリが香り漂うのです。

もちろんフランス出身の演奏家にはそのような特徴を持つピアニストが多く存在しますが、さて日本人でそれほどの印象を与えてくれる演奏家がどれだけ居るかというと疑問です。そういう点でも貴重な存在のピアニストであることは確かです。

そんな山田磨依のファーストアルバムは当然のことながらフランス物で固められました。中心となっているのはジャン=ミシェル・ダマーズ(1928-2013)です。普段滅多に聴く機会の少ないダマーズのピアノピースを集めているのは今年がダマーズの生誕90年に当るからです。彼女はそのダマーズの誕生日である1月27日にリサイタルを開きました。それほど思い入れのある作曲家であれば演奏にも愛情が200パーセント注がれているのは想像できます。

ダマーズの音楽というのはとにかく美しく爽やかで、晦渋さや神妙さが有りません。良い意味でBGM的に聴いていても大変癒されます。それは山田磨依の美しいピアノで聴くと尚更です。このアルバムには「ソナチネ」の他に3曲の合計4曲が収められています。

ダマーズ以外ではドビュッシーが印象的です。彼女が得意とする「喜びの島」の洒落たリズムとピアノの色彩感が秀逸です。

フランス物ではもう一曲、デュカスの「ラモーの主題による変奏曲、間奏曲と終曲」が有ります。

また唯一イギリスの作曲家でエドムンド・ハーツェルの作品「ダンデライオン」が収められていますが、これは作品そのものが山田磨依に献呈されていて世界初録音となります。

もともと私はフランス音楽を特別に好む方ではありませんが、彼女の演奏でそれを聴いていると改めて色々と聴いてみたくなります。このCDは単なる若手ピアニストのデビューアルバムとは異なり、コンセプトが非常に明確で異彩を放つ秀作だと思います。事実、音楽雑誌「レコード芸術」でも二人の評論家から準特選を得ています。

これは今からセカンドアルバムが待ち遠しくなるような素晴らしいファーストアルバムです。

♪ ピアニスト 山田磨依 公式ホームページ

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2016年11月13日 (日)

「Breeze」 ジャン-ピエール・ラクール&長谷川ゆき ~1900年パリ万国博覧会時代の響き~

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元パリ管弦楽団のヴァイオリニスト、ジャン-ピエール・ラクールとフランスで学び現在もパリと日本で活躍しているピアニスト長谷川ゆきの共演による新しいCDが発売されました。

タイトルの「Breeze」とは英語の”(心地よい)そよ風”の意味ですが、どうせならフランス語で「La brise」として欲しかったかなぁ。余計なことですが。

このアルバムには3曲のヴァイオリン・ソナタが収録されています。

 グラナドス:ヴァイオリン・ソナタ
 ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ「遺作」
 ヴィエルヌ:ヴァイオリン・ソナタト短調作品23

”1900年万国博覧会時代のパリの響きを”というのがアルバムのコンセプトです。モーリス・ラヴェルとルイ・ヴィエルヌの二人はフランス人ですが、エンリケ・グラナドスはスペイン人でもフランスに移り住みました。1900年万博の頃、3人は共にパリで活躍をしていたのです。

それにしても、どれも演奏機会が決して多くは無いにもかかわらず素晴らしい名曲です。このような曲を並べる辺りは、フランスの演奏家でなければ出来ないことでしょう。

ラヴェルには晩年に書かれたヴァイオリン・ソナタが他にあり、そちらは3楽章構成ですが、この遺作ソナタは単一楽章です。但し、長大なので実際の演奏時間は遺作のほうがむしろ長くなります。とても詩情に溢れた名作で、個人的にはこちらのほうを好みます。

グラナドスのソナタも単一楽章ですが、この曲は元々は複数楽章で書かれる構想だったらしく、そのスケッチが残っているそうです。現在演奏される場合は完成した第一楽章に当たるこの曲だけが演奏されます。

ヴィエルヌは4楽章構成で完成されていて全てを耳にすることが出来ます。

演奏については、ラクールのヴァイオリンの何とも素敵なこと。フランスで生まれてフランスで活躍してきた人でなければ弾けないようなとても洒脱で美しい演奏です。フランスのヴァイオリニストには”大家”という感じの人は少ないですが、みなラクールと同じような魅力を持つ点で共通していますね。

長谷川ゆきもフランスの空気を長く吸って、体中にその空気が一杯に詰まっていることからラクールと一体感のある演奏を繰り広げていて素晴らしいです。

CDの録音は日本で行われたようですが、あたかも響きの豊かな教会で録音したかのようなとてもフランス音楽に向いた音造りとなっています。

普段中々耳にすることの少ない名曲を~爽やかに しなやかに そよ風のように~心地良く楽しめるCDとしてお勧めしたいと思います。

なお、演奏者の長谷川ゆきさんからCDを直接購入されると詳細な曲目解説が付いてきます。特にヴィエルヌのソナタの解説はフランス語文献を読み込んだ川田朔也氏による読み応えあるもので好評だそうです。
長谷川さんのブログ末尾のリンクからのご購入が対象ですので、ご注文される方はこちらからがよろしいと思います。
長谷川ゆきさんのブログへ

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2012年10月14日 (日)

ドリーブ バレエ音楽「コッペリア」 名盤

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ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」は、わら人形を主人公としたバレエでしたが、同じように人形が登場するフランスのバレエにレオ・ドリーブの「コッペリア」があります。ドリーブは”フランス・バレエ音楽の父”と呼ばれた作曲家です。

ロシアバレエ団のディアギレフは、当時のパリの上流階級の単なる娯楽に陥っていたバレエの芸術性を極限にまで高めようとストラヴィンスキーの革新的な音楽を使いましたが、それより40年も前の1870年にパリ・オペラ座で初演された「コッペリア」は、誰が聴いても楽しめる非常に解り易い音楽です。「プレリュード」、「スワニルダのワルツ」、「チャールダッシュ」など、曲名に憶えは無くても、必ずどこかで耳にしたメロディが幾つも登場することでしょう。

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話の内容は、人間のように動く人形に恋をするという人間の狂気性をベースに登場人物が繰り広げる喜劇となっています。

―あらすじ―

第1幕 人形作り職人のコッペリウスは変わり者ですが、家の二階のベランダでは、からくり人形の少女、コッペリアが座って本を読んでいます。けれども誰もコッペリアが人形だとは知りません。

向かいに住むスワニルダは明るい少女で村の人気ものですが、彼女の恋人フランツは、最近可愛いコッペリアが気になる様子。それを知ったスワニルダは焼きもちを焼いてフランツと喧嘩をしてしまいます。

ある日、コッペリウスは町に出かけますが、家の前にカギを落としてゆきます。それを見つけたスワニルダと友達は好奇心からコッペリウスの家に忍び込みます。

第2幕 薄暗いコッペリウスの家には人形が並んでいて、スワニルダたちはコッペリアも人形だったと知ります。そこへコッペリウスが戻って来たため、友達は逃げ帰りますが、スワニルダは一人で部屋に隠れます。

そこへ何も知らないフランツがコッペリアに会いに来ますが、コッペリウスはフランツに薬を飲ませて眠らせ、命を抜いて、それをコッペリアに吹き込もうとします。

それを陰から見ていたスワニルダはコッペリアに成りすまし、コッペリアをからかって悪戯の限りを尽くします。その騒ぎで目を覚ましたフランツは、コッペリアの正体を悟ってスワニルダと仲直りします。

第3幕 村の祭りの日に、スワニルダとフランツは結婚式を上げます。その祝宴に人形を壊されて起こったコッペリウスが怒鳴り込んで来ますが、村長の取り成しで二人はコッペリウスに謝り、コッペリウスは機嫌を直します。祝宴の踊りが続き、最後は全員のギャロップによるフィナーレとなります。

このように初演での演出はハッピーエンドで楽しく幕を閉じますが、フィナーレは演出によって異なります。僕が生で観た新国立劇場で公演されたローラン・プティによる演出版では、コッペリウスは祝宴から離れて部屋で一人、足元にバラバラに壊れたコッペリアの人形の傍で呆然と立ち尽くすという、とても可哀そうな幕切れとなります。これはドンチャン騒ぎのフィナーレよりも、ずっと心に余韻を残すエスプリを感じる演出なので大好きです。新国立劇場では何度か再演していますので、是非一度ご覧になられることをお勧めします。

それにしても、最近では人間の心を癒すヒーリング・ロボットがよく話題になりますが、考えてみればコッペリアはその元祖かもしれませんね。うん?寂しい大人の男性を癒す女性型の人形?それって、もしやダッチワイフとかいうのでは・・・??

この曲には、初演されたパリ・オペラ座のオーケストラの演奏による全曲盤が有るのでご紹介します。
41bsm4ah4glジャン=バティスト・マリ指揮パリ国立歌劇場管(1977年録音/EMI盤)

「コッペリア」というとLP盤時代に聴いたエルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンド管の演奏がとても懐かしいのですが、現在はこのバレエが初演されたパリ・オペラ座の管弦楽団(但し名称は変わりました)による演奏を愛聴しています。このオーケストラはその後、バスティーユ管弦楽団となり、チョン・ミュンフンが飛躍的に向上させましたが、そもそもフランス人は練習嫌いなので、昔はリハーサルと本番のメンバーが入れ替わるなんてのは珍しいことではなかったそうです。初めから厳しいアンサンブルなどは望むべきで無かったのでしょうね。この演奏にもそういうユルさが見受けられるのですが、逆にそれがフランスを感じさせます。柔らかいフランス語で恋を語るかのような甘く軽味のある音です。それはまるで、古き良き時代のパリの劇場で聴いているような雰囲気と言えるでしょう。

指揮をしているのはフランスの名匠ジャン=バディスト・マリです。この人は、かつて東京フィハーモニーにしばしば客演していましたので、オールド・ファンには懐かしいでしょう。僕も何度か実演で聴いた覚えが有ります。

フランス人指揮者とフランスの劇場のオーケストラが演奏するフランスのバレエ音楽。これ以上の組み合わせはちょっと考えられないような気がします。元々、本場もの嗜好が人一倍強い自分ですが、こういう演奏を聴いてしまうと、心から納得してしまうのです。

楽しき哉、巴里の街!これぞ、おフランスざんす~

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