舞踏&バレエ

ストラヴィンスキー バレエ「春の祭典」 ライプチッヒバレエ団

このところ仕事が忙しかったのと、その他にもあれやらこれやらで記事のアップがなかなか出来ませんでした。そこで今日は、今年の春に出た「春の祭典」のバレエDVDについてお話しようかと思います。

Cci00043_3 振り付けは5年前に45歳で亡くなったウヴェ・シュルツ、バレエ団はライプチッヒバレエ団、オケはゲヴァントハウス管弦楽団です(2003年収録)。ストラヴィンスキーのこのバレエ音楽は言わずと知れた20世紀の大傑作です。コンサートピースとしてあらゆる国で日常的に演奏され、CDの数に至ってはどれくらい有る事か分らない位です。ですがこの曲は元々はバレエ音楽なのです。皆さん「あたしそれぐらい知ってるわよん。」とおっしゃられることでしょう。(女性の場合。オカマではありません。) では、このバレエを実際にご覧になった経験が有りますか?公演を観たことのある方は相当少ないはずです。なにせ滅多にやらないのですから。昨年、東京バレエ団がモーリス・ベジャールの追悼公演としてこの演目をやりましたが、私も観たのはそれが初めて。でも残念ですが生オーケストラ演奏ではなくて録音テープでした。舞踏は素晴らしかったのですが。

このバレエはDVDで観た方もほとんどいらっしゃらないでしょう。何しろ今までこれといったものが無かったのですから。ということで今回のDVDは正に待望のものでした。このDVDにはオーケストラ伴奏版と2台のピアノ伴奏版と二種類が収録されているのも楽しいです。ピアノ伴奏版は男性ダンサーがたった一人で現代ダンスを踊るのですが、ステージのバックにはスクリーンが有って様々な映像が踊りとシンクロして映しだされます。この映像がパロディもありでなかなか面白いのです。白鳥の湖のジークフリート王子とオデットの湖畔のシーンかな、と思っていると、王子がオデットを襲おうと木々の間を執拗に追い掛け回して彼女が必死に逃げ回ったりとか、あるいはお城の寝室のシーンでは、可憐なお姫様が大胆にも王子のモッコリ股間にぐっと手を伸ばしたりとか、なかなかドキッとさせられます。オケ版のほうはそれに比べると衝撃性は少ないけれど、それでも生贄を捧げるシーンでは女性ダンサーがおっぱいをポロリとしたりで結構楽しめます。(ってどうもビデオの種類を勘違いしているような・・・) 主役の日本人、木村規予香さんもハルくん好みの日本人らしい端正な体型の美人なので、彼女を見ているだけでも楽しめます。ただ全体としてはベジャール振り付けのほうが好きかなぁ。いずれにしてもこの貴重なDVDを是非一度ご覧になってみて下さい。

それにしても、この演目を20世紀の初めにパリで初演して大きな衝撃を与えたディアギレフ率いるロシアバレエ団の凄さといったら無いですね。当時は社交界の娯楽に成り下がっていたパリのバレエ界に、最高の舞踏と最高の音楽でセンセーションを巻き起こしたのですから。天才男性ダンサーのニジンスキーは「ジャンプしたまま空中にそのまま止まる」と評されました。書き下ろしの音楽はストラヴィンスキーの「火の鳥」や「春の祭典」です。なんという芸術の質の高さなのでしょう。それに比べて果たして現代のバレエ界は当時のロシアバレ団の志を越えていると言えるのでしょうか。などと、素人の私が偉そうに言うのもどうかと思うのでこのあたりで止めておきます。

ところで「春の祭典」はもちろん音楽だけをCDで聴いても楽しめますので、私の気に入った演奏をいくつかご紹介します。

Cci00042 ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管(1999年録音/Philips盤) もう10年近く前ですがこのコンビの「春の祭典」は東京で生演奏を聴いています。その時はどちらかいうとスマートな印象(席が遠かったせいかも)だったのですが、その頃に録音されたCDでは随分と荒々しさを加えて素晴らしい出来栄えです。精緻さとバーバリズムの共存というこの曲の正に理想的な名盤となりました。いたるところでロシアの大地の雰囲気を感じさせるのもやはり自国の楽団ならではです。たったひとつベストCDを選ぶとすれば迷うことなくこのゲルギエフ盤です。100点満点。

5111kaaeapl__ss500_ コリン・ディヴィス指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1976年録音/Philips盤) このCDはアナログ録音でありながら非常に音が良いです。というか逆に優秀なアナログ録音だからこそコンセルトへボウの分厚い音の響きを充分に捉えられたのかもしれません。まさに圧倒されるようなパワーなのですが少しもうるささを感じません。これはデイヴィスの指揮と楽団の優秀さのせいでしょう。弦楽や管楽の各パートの上手なことはまさに特筆ものです。ただし前半はややおとなしめ。「春のロンド」あたりから音の厚味を増して本領発揮は後半です。90点。

41spkgnk6sl__ss500_ ピエール・ブーレーズ指揮クリーヴランド管(1969年録音/Sony盤) 一世を風靡した歴史的名盤ですね。よく言われることですが各楽器の音が全て聞こえる分離の良い演奏は録音技術によるものであって、生のステージでは有り得ないでしょう。しかしこの切れ味鋭い演奏はやはり素晴らしいです。ブーレーズはずっと後にベルリンフィルと再録音をしていますが、聴いていて面白いのは断然このクリーヴランド盤のほうです。85点。

Cci00042b レナード・バーンスタイン指揮ニューヨークフィル(1958年録音/Sony盤) ヤング・レニーのかつてのベストセラーなのですが、何故かCDは後年のロンドン響との再録音のほうばかりが販売されていてニューヨーク盤は廃盤状態が続いています(僕のもレニーのエッセンシャル盤です)。なんでやろね?デビュー直後のレニー/NYPの演奏は随分と荒削りではあっても若々しい情熱に溢れていて実に魅力的なのです。彼こそは本物の「青春の巨匠」ですよ。この演奏も出だしはなんだかつたなくてヨロヨロしていますが、「春のロンド」あたりから突然アクセルがかかってノッてきます。そういえば曲が「ウエストサイドストーリー」みたいだものね。いや影響を受けたのは作曲家レニーのほうなのでした。これはやっぱり時々聴いてみたくなる演奏です。75点。

というわけで、推薦CD「ハルの採点」でした。おあとがよろしいようで。

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ボリショイバレエ/ザハーロワ 「白鳥の湖」 東京公演 

Cci00041 今夜は来日中のロシア国立ボリショイバレエの「白鳥の湖」を観に行ってきました。会場は上野の東京文化会館です。寒い冬になってチャイコフスキーのバレエを生の舞台で観るのは楽しいものです。年末に「白鳥の湖」を観るのはこれで3年連続となりますが、一昨年はマリインスキー劇場バレエ、昨年はモスクワ音楽劇場バレエでした。

今年のボリショイのお目当ては何といってもプリマのスヴェトラ・ザハーロワです。C社のデジカメのTVCMでオデットを踊っているので御馴染みでしょう。さてその姿は予想を遥かに越えて美しかったです。すらりと伸びた肢体は白鳥というよりもフラミンゴか丹頂鶴みたいでした。それにしても何て細くて長い手足なのでしょうか。そしてあの繊細極まりない表現!オデットの役は彼女の為にあると言っても過言で無いのじゃないでしょうか。いやー素晴らしい!ジークフリート王子のウヴァーロフも背が高くがっちりしていて実にカッコいいので、彼がオデットを高々とリフトすると何とも見栄えがするのです。

ボリショイの舞台はもちろん老舗の素晴らしさなのですが、個人的には昔話の絵本をそのまま舞台にしたようなマリインスキーの方が好みです。コール・ド・バレエ(群舞)もマリインスキーにはちょっと適わないと思います。オーケストラは専属の楽団だったのは良いですが、随分と荒っぽい音でした。まあロシア的と言えないことも無いのかもしれませんが、もう少し繊細にやって欲しかったです。

ちなみに最後は悪魔がオデットを連れ去ってしまい王子が一人呆然とするという悲劇の終わり方のほうでした。私は「最後に愛は勝つ」(^^)のハッピーエンドが好きなのだけどなぁ。カーテンコールは盛り上がって凄かです。熱烈なファンがステージの前に殺到して拍手が鳴り止まず。さすがにザハーロワは本当に人気が高いですね。

さて、私が家で「白鳥の湖」を楽しむ場合にはDVDとCDの両方ですが、普段鑑賞しているディスクをご紹介させて頂きます。

Cci00040 マリインスキー劇場のDVD(2006年収録) これは指揮がワレリー・ゲルギエフ。オデットはロパートキナ。小柄の彼女は可愛いので好きです。ゲルギエフの振るテンポは完全にコンサート向きなので、ダンサーにとっては速すぎたり遅すぎたりと随分踊りにくそうな部分も見うけられます。なので純粋なバレエファンには必ずしも評判は良くないのだそうです。だが、私は純粋なバレエファンでは無いので大好きです。何故ならこれほど音楽的に素晴らしい「白鳥の湖」は無いからです。薄明るく淡い色彩の舞台も本当に美しいです。そしてマリインスキーのコール・ド・バレエの美しさ。これは生の舞台に接すると言葉にならないほどなのですが、DVDでも充分美しいです。話の最後も王子が見事に悪魔をやっつけてハッピーエンドの終わり方なので私は満足。この素晴らしいDVDは普段バレエを見ないクラシック音楽ファンにこそ是非観てもらいたいお薦め品です。

Cci00039 パリ・オペラ座バレエのDVD(1992年収録) マリインスキー、ボリショイと肩を並べられるのはパリオペラ座でしょう。ジョナサン・ダーリントン指揮。オデットはマリー=クロード・ピエトロガラでジークフリートはパトリック・デュポンという素晴らしい組み合わせです。10年前くらいはピエトロガラはシルヴィ・ギエムと並んで非常に人気が高かったけれど最近はどうなのでしょう。この上演版は最後に王子がオデットを抱いて湖に沈み天国へ登るという終わり方です。デュポンの演技が見事ですし演出もドラマティックで素晴らしいです。指揮とオケの方についてはパリのオケには最初から無理な相談なのですが、チャイコフスキーだけに本来は演奏にロシアの味わいが欲しいところです。

CDで「白鳥の湖」を聴く場合に、よく全曲盤は長過ぎると言う人が居ますが、私はそうは思いません。全曲で無いと聴いた気がしないのです。確かに単なる繋ぎの退屈な曲が無いとは言いませんが、何しろこの曲は数多くの魅力的なメロディの宝庫ですので絶対に全曲盤で聴くべきだと思います。

739 ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管のCD(2006年録音フィリップス盤) これはDVDとは別の録音なのですが、やはり素晴らしい演奏です。「白鳥の湖」をこれほど美しく詩情豊かに演奏した録音はかつて聴いた覚えが有りません。ド迫力を求めるファンも居るようですが、このいじらしい程に繊細な演奏を聴いてどうして感動できないのでしょうか。私には不思議でなりません。

Cci00039sゲンナジ・ ロジェストヴェンスキー指揮USSR RTV Rarge Symphony Orchestra(早い話がモスクワ放送響)(1969年録音メロディア盤) 全盛期のロジェヴェン/モスクワ放送のコンビの演奏だけあってなかなか凄いです。耳をつんざく金管、躍動感溢れる切れの良いリズムが最高です。そしてミヒャエル・チェルニャコフスキーのヴァイオリン独奏がとても良いのです。コテコテのロシア節で土臭く弾いてくれて味わいが最高だからです。元々この曲の独奏パートはコンチェルトかと思うほどに技術的に難しく、並みのバレエ楽団のコンマスでは手に負えないのですが、この人はオイストラフかと思うくらいに上手に弾いています。こういう演奏を聴いてしまうと私はこの曲はロシアの楽団以外ではちょっと聴こうという気が起きなくなります。

以上は決してバレエ鑑賞が専門ではない私の勝手な意見ですので、その道の専門家から見たらおかしく思えることも有るかもしれません。その点はどうぞご承知置き下さい。

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