ベートーヴェン

~迎春~ ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.61 名盤

035615 皆様、明けましておめでとうございます。

昨年8月にこのブログをスタートしましたが、始めは訪れて頂く方も少なく寂しかったものです。それがいつの間にか多くの方にお立ち寄り頂くようになりました。皆様に心から感謝しております。未曾有の景気悪化の中で生活を維持するだけでも大変な時代ですが、音楽を愛する方々とブログを通じて日常的にふれ合えることは本当に大きな喜びです。皆様、本年もどうぞ宜しくお願い致します。そして良いお正月をお過ごしください。

さて、今年の聴き初めですが、聴き納めが第九でしたので年の初めもやっぱりベートーヴェンで行きましょう。曲はヴァイオリン協奏曲です。

ヴァイオリン協奏曲の中で特に好きなのはベートーヴェンとブラームスですが、この2曲は随分と雰囲気が違います。崇高な精神に溢れ、高貴なほどに気品のあるベートーヴェン。ジプシー調で激しい感情の起伏を荒々しく吐露するブラームス。謂わば「宮廷音楽家」と「旅回り大道芸人」ほどの違いが有るでしょう。ですので新たな気持ちで新年を迎えるような時にはやはりベートーヴェンが向いていますね。

でも、この曲は演奏が実に難しい曲です。技術的に易しいと言う評論家が居ましたがとんでも有りません。全ての音を美しく弾くことが必要ですが、それが出来ている人は意外と少ないのです。またパッションだけでもどうにもなりません。ブラームスならあるいは情熱と気迫だけでもそれなりに面白い演奏になるでしょう。ところがこの曲の場合、そうは行きません。また厳しい精神が不在だと何とも空虚な音楽になります。そのような難しい曲なので、並みの演奏を聴いた場合にこれほどつまらなく感じる曲は他に有りません。逆に良い演奏の場合には限りなく深い感動を与えられます。正に演奏家の本当の姿をさらけ出してしまう写し鏡のような怖い怖い曲なのです。

何はともあれ私の愛聴盤をひとつづつご紹介して行きましょう。

Cci00061 フリッツ・クライスラー(Vn)、ブレッヒ指揮ベルリン歌劇場管(1926年録音/NAXOS盤) 案外音が良い(はずは無いですが鑑賞は可能)です。ただしオケの音は非常に薄いです。ヴァイオリンのテクニックに怪しい部分は多々有るのですがそれが全然気になりません。余りに柔らかく甘い表情の音に気を取られてしまうからです。1楽章中間部や2楽章などは思わず聞き惚れてしまいます。反面、襟を正すような厳しさはここにはありません。3楽章でリズムがずっこけそうなのはご愛嬌です。

Cci00061b ブロニスラフ・フーベルマン(Vn)、セル指揮ウイーンフィル(1934年録音/EMI盤) 「ヴルトゥオーゾ」という呼び名がこの人ほど似合うヴァイオリニストは居ないでしょう。この演奏も正にそんな演奏です。他の人では考えられない即興的な節回しの大連発なのです。そうかと思うと意外にデリカシーを欠いて雑に弾き飛ばす部分も有ります。要するに現在の演奏家の尺度ではとても計りきれない規格外の大名人なのです。好き嫌いを越えて一度は聴いておくべき演奏だと思います。セル/ウイーンPOは実に立派で素晴らしいです。

P1000280 アドルフ・ブッシュ(Vn)、F.ブッシュ指揮ニューヨークフィル(1942年録音/biddulph盤) ブッシュはまるでベートーヴェンの魂そのものといったヴァイオリンを聞かせます。細かい技術云々を言う以前に、他の奏者とは全く格の違いを感じてしまうのです。加えるに兄フリッツ・ブッシュの指揮が素晴らしいのです。デンマーク放送響との第九などは余り大したことは無かったですが、この伴奏は実に立派です。第2楽章の限りない深さと高貴さなどは正に最良の伴奏です。写真は独EMIのLP盤ですが、biddulphの復刻CDが驚くほど音が良いのでお薦めできます。

571 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)、ミュンシュ/ボストン響(1955年録音/RCA盤) この人も20世紀を代表するヴルトゥオーゾである。ただしこの人はパフォーマーというよりはテクニック上の大名人といった感じです。とにかく音の一つ一つの存在感が他の奏者とは次元の違う上手さなのです。ですが正直言って「だからどうした?」というのが私の実感です。この肩で風を切るようなさっそうとしたベートーヴェンには違和感を感じてしまいます。これがチャイコフスキーだったら良かったのですが。

260 ダヴィド・オイストラフ(Vn)、クリュイタンス指揮フランス放送管(1958年録音/EMI盤) さあ困った。世評の高い演奏だが、ちっとも立派に聞こえないのです。極端に言えば、単にヴァイオリンが上手に音符をなぞっているだけに聞こえてしまいます。余りに楽天的で厳しさに欠けている気がするからです。これを「幸福感に満たされた」と受止めることも可能かもしれませんが、私には無理です。そうなるとハイフェッツよりもつまらなくなってしまいます。(オイストラフのファンの方ゴメンなさい) 強いて言えば曲想から唯一終楽章だけは楽しめます。

Cci00046 ヨゼフ・シゲティ(Vn)、ドラティ指揮ロンドン響(1961年録音/フィリップス盤) ハイフェッツ、オイストラフとはまるで別の曲を聴く趣きです。こちらはテクニックでなく深い精神性で際立っています。これほど衰えた腕で、これほどまでに人を感動させることのできる演奏家は他に決して存在しません。間違っても表面的な音にとらわれることなく、しっかりと心の耳でこれらの音の一つ一つに込められた意味の深さを是非とも聞き分けて頂きたいのです。ドラティの指揮も気迫に溢れてなかなか立派です。

461 ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn)、ヨッフム指揮ベルリンPO(1962年録音/グラモフォン盤) シュナイダーハンも大変な名人だと思います。モーツァルトを弾くと実に柔らかくウイーン風に、ブラームスを弾けば今度はがっちりとドイツ風に見事に弾き分けてしまうのです。ベートーヴェンはドイツ風に弾いています。フルトヴェングラーとのモノラル盤も実に素晴らしかったですが、この人の美しい音を味わうにはステレオ盤のほうがやはり良いと思います。ヨッフム/ベルリンPOの音も重厚で立派です。

221 ヘンリック・シェリング(Vn)、イッセルシュテット指揮ロンドン響(1965年録音/フィリップス盤) シェリングが最も得意とするレパートリーは疑いなくバッハの無伴奏とこのベートーヴェンの協奏曲です。この曲にはスタジオ録音やライブ録音が多く存在しますが、いずれの演奏も完璧。ライブであろうと一つとして怪しい音を出さないのには感服します。しかし本当に凄いのはそんな事では無く、技術と精神の両立なのです。謂わばハイフェッツとシゲティを足して二で割ればシェリングなのです。全ての音は優しさに包まれて美しく、なおかつ厳しいです。これは最初の録音盤ですが、全ての音符が「このように弾かれねばならぬ」という存在感を示しています。そんな演奏の出来る人は他に知りません。我が尊敬する中野雄さんもこの演奏を推しておられました。

Cci00062b ヘンリック・シェリング(Vn)、イッセルシュテット指揮バイエルン放送響(1966年録音/GreenHILL盤) 上記スタジオ録音の翌年のライブ演奏です。オケはバイエルン放送です。出だしのうちはスタジオ盤が上かなと思っているうちに、どんどんオケも独奏も高揚感と集中力が増してきてあっという間にスタジオ盤の記憶がどこかへ行ってしまいます。2楽章の深さ、3楽章の精神の高揚も比類ありません。中野先生ご推薦のあのスタジオ盤よりも遥かに上なのだから恐れ入ります。これは海賊盤ですが放送録音に定評の有るGreenHILLなので録音も優秀です。なおカップリングのブラームスSYM3番も絶品です。中古店で手に入るうちに是非。

267 ヘンリック・シェリング(Vn)、ハイティンク指揮コンセルトへボウ管(1973年録音/フィリップス盤) スタジオ盤ではどちらか言うと65年の旧盤を推薦する評論家が多いようですが、新盤のハイティンク盤も決して劣りはしません。コンセルトへボウの持つ音色や分厚い響きはロンドン響よりも上ですし、録音も含めればこちらを推しても良いぐらいです。ただし指揮の実力・品格で言えばむろんイッセルシュテットが上です。3楽章の高揚感にやや不足するのも惜しい点です。

Cci00062 ヘンリック・シェリング(Vn)、ツェンダー指揮ザールブリュッケン放送響(1982年録音/CPO盤) ハンス・ツェンダー・エディションの中の1枚。「田園」「1番」とカップリングされていますが演奏はVn協奏曲が優れています。実は73年盤でも僅かに感じていたのですが、ボウイングの滑らかさの減衰(衰えというほどのレベルではない)が更に感じられます。音楽の深さに変わりは無いですが、シゲティのように精神性だけで勝負するわけでは無いので多少のマイナスと言えるかもしれません。とは言え晩年の生演奏でミス無く完璧に弾き切る技術には改めて感服します。ツェンダーの指揮は悪くは無いですが特別に立派ということもありません。録音は優秀です。

Cci00063 カール・ズスケ(Vn)、マズア指揮ゲヴァントハウス管(1987年録音/シャルプラッテン盤) ズスケのヴァイオリンの生の音は昔カルテットの来日公演で耳にしました。非常に端正で美しい音でした。この演奏の音も全く同じです。誠実な弾き方はこの曲の場合は大いに好感が持てますし、2楽章の祈りの深さなどは素晴らしいと思います。ですが1楽章や特に3楽章になると真面目過ぎて物足りなさも多少感じてしまいます。マズアの指揮もやはり同じ印象です。

345 チョン・キョン‐ファ(Vn)、テンシュテット指揮コンセルトへボウ管(1989年録音/EMI盤) シゲティ、シェリングタイプの精神のヴァイオリニストであるキョンファは当然ベートーヴェンに向いています。甘さを排除した禁欲的な雰囲気がとても好ましいと思います。1楽章は重々しいオケの伴奏がテンシュテット節全開。その分ややキョンファの音楽とのずれを感じないでもありません。2楽章の静かで深い沈滞も良いのですが、よくよく聴いているとベートーヴェンと言うよりはロマン派の曲のようです。テンシュテットファンは絶賛だろうと思います。ところが3楽章がソロ、オケとも軽めなのは意外です。いっそのこと最後まで重量級で通して欲しかった気がします。

以上の中で断然気に入っているのはシェリングのGreenHILL盤です。これほどの名演奏なのですから、放送局の正規録音で世に広く知られるようになると良いと思います。最近オルフェオから出たブラームスの協奏曲ライブ盤も最高だったからです。(http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-2fed.html) 次点にはシェリングの残りの演奏全て。それにブッシュ、シゲティは欠かせません。

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ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調op.125 「合唱」 名盤

Beethoven 年末に「第九」を聞くという習慣も、聞けば日本のみでなくヨーロッパなどでも段々増えているとか。果たして日本から逆輸入の文化として定着するのでしょうか。それにしても日本では12月にはオケコンサートも「第九」一色です。東京は最も著しく、在京オケは揃って数回づつコンサートを行いますから、プロオケだけでも全部で40回前後。アマオケも同じように演奏するので、第九の演奏会数は50~60回以上なのではないでしょうか。第九だけはチケットも良く売れますので、おそらく東京エリアだけでも延べ10万人くらいの人が第九を聴きに行く勘定です。確かにこの曲は、荒波にもまれた一年に禊を行う気分で聴いて、来る新年を迎えるにはとてもふさわしい音楽だと思います。「苦悩を突き抜けて歓喜へ」とは未曾有の景気悪化まっただ中の今年の年末には特にぴったりでしょう。とはいえ、私の財布も不景気なので、コンサートへ行く代わりにCDで「第九」三昧と行くことにしました。

Cci00054 フルトヴェングラー指揮ベルリンフィル(1942年録音)(写真はターラのフルヴェン戦時中録音集) ファンには有名な戦時中の演奏です。私が高校生の頃にカラヤンの次に買ったLP盤でした。その余りの違いに愕然とした。すっきりスタイリッシュなカラヤンと壮絶極まりないフルトヴェングラー。どちらに感動したかは言うまでも無いことです。感受性豊かな若い頃にこの演奏に出会ったことが私がクラシック音楽にのめり込む大きなきっかけになったと思います。さすがに今では滅多に聴くことは無いですが、クラシックファンなら一度は聴いておくべきだと思います。少々大げさに言えば人生観さえ変わるほどの凄さだからです。

Cci00058 フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団(1951年録音/グランドスラム盤) 最も有名な戦後バイロイト再開の年の記念演奏です。戦時中のあれほどの壮絶さは無いですが、限りなくスケール壮大な演奏です。いや単に「壮大」などとひと言では表現できない正に「宇宙的なまでの広がり」を持った演奏なのです。本家EMIリファレンス盤も悪くは無かったですが、平林直哉さんのグランドスラムレーベルによる初期LPからの復刻盤が非常に音が良いです。MYTHOS盤よりも良いような気もします。いままで団子状態だった弦楽の細かい刻みまで聞き取れるので感動新たなのです。ファンには是非のお薦めです。余談ですが、朝日カルチャー講座の後に一度お話の出来た平林さんはいかにも誠実そうな印象でした。氏の仕事ぶりも全く同じ印象です。

なお、同じ日の放送局正規録音として昨年オルフェオからCDが出ましたが、まったく同じ演奏ではありません。ということはEMI盤には編集部分が有ると考えられます。しかし今回のオルフェオ盤はEMIリファレンス盤と比べても音は落ちますし、平林盤と比べれば更に落ちるので正直余り存在意義を感じていません。フルトヴェングラーのCDなら全て集めるというマニア向けだと思います。(私は決してマニアではありません。)(^^)

Cci00054b フルトヴェングラー指揮ウイーンフィル(1953年録音/独グラモフォン盤) フルトヴェングラーのウイーンフィルとの第九録音は幾つか有りますが、中では演奏・録音のバランスが一番取れている「ウイーンフィル150周年記念」(1953.5.30録音)盤を好んでいます。ここではベルリン盤でもバイロイト盤でも聴けないウイーンフィルの弦の上手さ、美しさを味わえるので私はとても好きなのです。

263 フルトヴェングラー指揮フィルハーモニア(1954年年録音/OTAKEN盤) 昔、フルトヴェングラーが亡くなる直前のルツェルン音楽祭の第九がバイロイトよりも凄いという評判を聞いて、どうしても聴きたくなりプライヴェートLPを購入しました。大学生の身には高価でしたが実際に聴いてみてその噂通りの素晴らしさに本当に驚きました。但し音はかなり悪かったです。それが時を経て、いまから10年近く前にターラからオリジナルテープからの復刻CDが出た時にはその余りに明瞭な音に驚愕したものです。演奏の真価がようやく明らかになり、その時には本当にバイロイト盤よりも上だと思いました。今聴いているのはターラ盤よりも自然な音造りのOTAKEN盤です。これはどちらで聴いても満足できると思います。

以上、フルトヴェングラーの4種類があれば正直第九はもう充分と思わないでもありません。事実、これまで他のどの第九演奏を聴いてもフルトヴェングラーの良くて半分位の感動しか得られなかったからです。「感動」だけが鑑賞の尺度では無いとは思いますが、感動の無い第九など聴きたくも無いですし、録音状態の良し悪し以外でフルトヴェングラーの彫りの深い表現を超えるものには出会ったことがありません。まあそうは言いながらも他の指揮者を全て否定してしまうのもどうかと思いますので、私の好みでCDを幾つか挙げてみたいと思います。

Cci00055b カール・ベーム指揮ウイーン交響楽団(1957年録音/フィリップス盤) どうしようか迷いましたが、ベームは好きな指揮者なのでひとつ位は挙げておきます。ただし後年のグラモフォン盤の2種の録音では無く、まだまだベームが壮年期で演奏に元気が有るほうにします。とは言えやはりスタジオ録音ですのでベームにしては随分おとなしいです。欲を言えば70年辺りで条件の良いライブ録音が放送局に残っていないものだろうか。バイエルンやケルン放送からは随分良いものが色々と出ているからです。

Cci00055 フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプチッヒゲバントハウス管(1959年録音/edel盤) コンヴィチュニーのベートーヴェンは学生の頃に廉価盤のLPで良く聴きました。安っぽくひどいデザインのジャケットでしたが演奏はどれも一級品でした。曲によっては一番好んだ演奏も有ったほどです。CD化されたこの全集も第一に選びたいほどです。第九も実に素朴な味わいであり、よく言われるようにまるで古武士の如き堅牢な響きがなんとも魅力的です。合唱団、歌手陣も共にバランスが良いです。

Cci00059 ハンス・シュミット-イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響(1970年録音/ターラ盤) このCDはステレオ盤の方です(別のモノラル盤も有ります)。多少ざらつき感は有りますが奥行きの有る良好な録音なのが嬉しいです。どうもこの人はスタジオ録音の場合の柔和なイメージが強く、かなり誤解されているようです。ライブでも虚飾の無い実直なスタイルに変わりはないですが、力強さがまるで違うのです。この演奏も3楽章だけはあっさりしていますが、その他の楽章は非常に彫りが深く、剛健な北ドイツ放送響の音を充分に楽しめます。DECCA録音のあの穏やかなウイーンフィル盤とは次元の異なる貴重なCDです。

287 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1982年録音/オルフェオ盤) クーベリックも実演になると相当に人の変わる指揮者でした。スタジオ録音でも大抵バランス良くまとめてはいましたが、ライブの激しさを知るファンにとってはどうも物足りなさを感じることが多かったです。「第九」にもベルリンPOとのDG録音が有り、とてもよい演奏でした。ですが、やはり手兵のバイエルン放送とのライブ盤で聴きたいと思います。残響の多い録音なので所々に生々しさに欠けて聞こえる部分も無いわけではないですが、演奏自体は実に素晴らしいです。第3楽章、第4楽章の弦のしなやかな美しさなどは最高です。合唱もとても良く録れていて非常にスケールが大きいです。

Cci00057 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ベルリンフィル(1989年録音/グラモフォン盤) ジュリーニは不思議な指揮者で昔からイタリア的でもドイツ的でもない。何を振ってもジュリーニ的なのです。ベルリンPOも既にインターナショナルオケ化した後なのでこの演奏は決してドイツ的な音ではありません。第1楽章は遅めのテンポですが暗さは無く、およそ「苦悩」という雰囲気は生まれてきません。第3楽章も流麗で美しいですが神秘的ではありません。終楽章の合唱は力みの無いあっさりしたものです。後半になると少しも熱くならずにスケール大きく包み込むという、いかにもジュリーニ的な演奏です。

こうして並べてみると、ほとんど重量級の演奏が並んでしまいました。私の好みははっきりしています。ドイツ的で重厚かつ激しい演奏が好きなのです。重厚なだけでも激しいだけでも駄目なのです。そうなると演奏は案外絞られます。フルトヴェングラーの中ではバイロイト盤とルツェルン盤が双璧。フルトヴェングラー以外では、1にイッセルシュテット/北ドイツ放送、2にクーベリック/バイエルン放送というところです。

それでは皆様、よいお年をお迎え下さい。

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