チャイコフスキー&ロシア音楽

チャイコフスキー「交響曲全集」 スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立響 

Cci00011 チャイコフスキーに一度は別れを告げてシベリウスへ移ろうとしましたが、またまたチャイコフスキーを聴いています。というのは、この冬に色々演奏を聴き直しているうちにエフゲニ・スヴェトラーノフの演奏はやっぱり良いなぁと改めて感じ入ったのです。彼の演奏は1990年の東京ライブと1993年のモスクワ録音と2種類の全集が有り、どちらも掛け値なしに素晴らしい演奏なのですが、僕はこれまで最初の1967年のメロディア録音盤というのを聴いていなかったのです。その理由は、昔LPでチャイコフスキーの交響曲全集を購入した時にはロジェストヴェンスキー/モスクワ放送響盤を選んだことと、その後もスヴェトラーノフには演奏/録音ともに優秀な全集が2種類も有るし、昔の演奏は若々しい演奏だろうけれどどうせあのメロディアの良いとは言えない録音なのだろうし、と決め込んでいたからです。でも最近はスヴェトラーノフが以前にも増して好きになり、やっぱり昔のものも聴いてみたくなったのです。幸い現在は韓国Aulosが安価でリマスター盤を販売してくれています。

さて、いざ聴いてみて非常に素晴らしい全集であることに驚きました。予想をはるかに越えていたのです。確かにこれはロシアの最初のステレオ録音によるチャイコフスキーの交響曲全集ですし、あのコンドラシンのショスタコーヴィチ交響曲全集と並ぶ正に記念碑的な全集なのですが、演奏そのものも単に若々しいなどと簡単に済まされるものでなく、楽曲に向かう気迫が半端でありません。4番、5番、6番のマッシヴでいて壮絶な演奏は、ムラヴィンスキーにも引けを取りません。「悲愴」第1楽章のアレグロ・ヴィーヴォの異常なまでの迫力も五分と五分です。これは大変なことです。何故スヴェトラーノフが僅か30代の若さでソヴィエト国立響の常任指揮者に抜擢されて、全集録音までをも任されたかが良くよく理解できるというものです。もっとも1番から3番まではどちらか言うと晩年のじっくりとした演奏の方が私は好きです。ロジェストヴェンスキー/モスクワ放送響の全集は1番~3番の演奏がとても魅力的で、後期の出来が今ひとつだったのと逆なのは面白い現象です。どうも迫力ばかりを強調しましたが、情緒的な味わいも実に深いのは、やはりロシアの演奏家ならではです。それと当時のソヴィエト国立響が上手い事。現在(名前はロシア国立響に変わりましたが)よりも数段上だと思います。さすがに冷戦時代の共産主義国家の文化レベルは凄いものです。

とにもかくにも、この全集は全てのロシア音楽ファン、チャイコフスキーファンにとって聴く価値の有るものだと思います。決して晩年の全集以上とは言いませんが、いずれの全集もかけがえのない不滅の価値を持っているのは間違い有りません。しいて欠点を言えば、昔のメロディア録音なので非常に音が硬いことです。これには耳の慣れがちょっと必要かもしれません。Aulosのリマスターは余り評価されないレヴューも見受けられますが、僕はなかなか良いリマスターだと思っています。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」ロ短調op.74 名盤

昨日関東地方にもハルいちばん、じゃ無くて春一番が吹いて、昨日はまるで春の様な気温でした。今年の冬も大いに聴きまくったチャイコフスキーにもそろそろお別れ、また来年です。そこで今回は特集の締めくくりとして代表作「悲愴」を取り上げることにします。

Img_1337242_48284092_2s_2 チャイコフスキーの音楽は非常に分かり易いメロディと豪放な管弦楽ゆえに、この人の作品をたとえばブルックナーやマーラーなどに比べて一段低いものように考えられているクラシック通も決して少なく無い気がします。また、その一方で熱烈なファンが非常に多いのも事実だと思います。僕はもちろん後者の方なのですが。最後の交響曲第6番「悲愴」は疑いなく彼の最高傑作であるばかりでなく、古今の多くの交響曲の中においても大衆性と芸術性の両方を兼ね備えた稀有な名作だと思います。遠く地の底から響いてくるようなコントラバスのロングトーンに始まり、そこにうめくようなファゴットがかぶる冒頭からして只ならぬ雰囲気ですが、主部に入っても嘆き苦しみ、悲しみを美しく歌った末に再び荒れ狂い最後には破滅に至るという第1楽章は傑作中の傑作です。第2楽章のワルツも2+3拍子の5拍子という非常に不安感をかき立てるようなリズムと旋律が魅力的ですね。第3楽章の行進曲は通常のスケルツォ楽章の代わりですが、明るさには程遠く、破滅に向かう雰囲気を強く感じてしまいます。そして第4楽章では再びどこまでも深く深く悲しみの底に沈んでいきます。マーラーの厭世感に似ているかもしれませんが、旋律に甘さが有る分だけ私は結構楽しんで聴いていられます。

この曲は昨年11月にサンクトペテルブルク・フィルのコンサートを聴いた時の記事で愛聴盤についても触れました。http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-a1a3.html

この時にご紹介したフリッチャイのグラモフォン盤、オルフェオ盤の二種類と、ムラヴィンスキーのグラモフォン盤のCDは正に別格の演奏です。敢えて難を言えば、フリッチャイ盤にはロシアの味わいに欠ける点が物足りないことです。これはまあドイツの楽団では仕方がないでしょう。一方ムラヴィンスキー盤は楽器の録音バランスがやや不自然な点が気になります。弦楽器が異常に目立つのはスタジオ録音でしか有り得ないからです。まるで指揮台か客席最前列で聴いている感じです。これは録音スタッフがオケの余りの凄さに驚いて意図的にこのように録音したのかもしれませんね。

この3つの演奏がやはり自分のベスト3である事は変わりません。しかし、他にも好きな演奏はまだまだ色々と有りますので順にご紹介させて頂きます。

Cci00005 ウイレム・メンゲルベルク指揮コンセルトへボウ管(1937年録音/テレフンケン盤) 僕が聴いているのはMusic&Arts盤ですが音は悪くないです。よく言われるように1941年盤よりも録音バランス、演奏ともにこの方が良いと思います。全体のテンポ、表情の変幻自在さは相変わらずのメンゲルベルク調ですが、なかでも第1楽章のあの美しいメロディを何とロマンティックに甘くとろけるように奏でることでしょうか。一度は絶対に聴いて頂きたいと思います。と言いながら何度聴いても感激させられますが。

Cci00005b ヘルマン・アーベントロート指揮ライプチッヒ放送響(1952年録音/シャルプラッテン盤) これはよく紹介されてる有名な演奏で、以前は僕も気に入っていました。ですが今改めて聴いてみると、この時代のドイツでの演奏としてはなかなかのものなのですがメンゲルベルクほどの面白さは無いですし、結構ドラマティックな演出のはずですが、それほど心は動かされません。似たようなタイプならばフリッチャイ盤の方が完成度がずっと高いと思います。

Cci00009 キリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィル(1965年録音/メロディア盤) 名匠コンドラシンの本国でのスタジオ録音です。この人は早々とショスタコーヴィチの全集を録音しましたが、チャイコフスキーの録音は少ないのです。同じモスクワでスヴェトラーノフが全集録音を行った影響もあるのかもしれません。それにしても当時のモスクワの新興オケの実力には目を見張ります。それだけに後任のキタエンコ時代にどんどんレベルが下がった(と私は思います)のが非常に残念です。ムラヴィンスキーのような手練手管こそ見せませんが、早めのテンポで非常に引き締まった良い演奏だと思います。

Cci00006 キリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィル(1967年録音/Altus盤) これはメロディア盤から僅か2年後の日本公演でのライブ録音です。NHKによる録音はメロディア盤よりもずっと優れています。演奏はライブの為に多少の不安定さが有りますが、オーケストラの優秀さはやはり変わりません。スタジオ盤と同じく速めでストレートな演奏ですが、更に実演ならではの感情移入の深さを感じますし、これも非常に良い演奏だと思います。

Cci00006b エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(1983年録音/ERATO盤) 露メロディアによる録音で、私のCDでは1982年録音と有りますが、これは正しくは83年録音である様です。あのスタジオ録音のような彫琢の限りを尽くしたような精密さは有りません。その代わりにライブならではの荒々しさが凄いです。金管の強奏などは耳をつんざくほどです。ある意味神経質なスタジオ盤よりもこの方が自然な熱演かもしれません。全体の音質は良いのですがフォルテシモでレコーダーの限界を超えてビリつくのがちょっと残念です。ムラヴィンスキーの消え入りそうなピアニシモと凄まじいフォルテの両方を録音収録するのは当時のロシアの機材では無理だったということでしょう。

Cci00007b エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1990年録音/CANYON盤) 有名な日本での全曲チクルス録音の一つです。当然3年後のスタジオ録音と基本的には似ています。ライブ演奏なので時々不安定な部分は有りますが、気になる事は有りません。逆に音楽に勢いが有るので非常に魅力的です。こちらの荒々しさを好む人も多い事でしょう。録音もとても良いですし、僕自身こちらにも大いに惹かれます。

Cci00018 エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1993年録音/CANYON盤) スヴェトラノフは日本ライブの僅か3年後に再び本国モスクワで全曲録音を行いました。これはポニーキャニオンの強い希望であるでしょう。ライブとは違って全体的にはゆったりと落ち着いたテンポでスケールが大きいです。ですがひとたびアレグロヴィーヴォになると一変して荒れ狂って凄い迫力を見せます。第3楽章もことさら力まないのに堂々としています。終楽章は深く美しくかつ壮大です。これは最も「ロシアらしい音」を味わうことのできる名演奏、名録音だと思います。

Cci00009_2 ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィル(1992年録音/RCA盤) 昨年の生演奏は素晴らしかったです。どうしてもその印象と比べると物足りなく感じてしまうのですが、これはこれで悪くない演奏です。ムラヴィンスキー時代の音の凄みと迫力は有りませんが、逆にムラヴィンスキーがそっけなく感じる部分などはテミルカーノフの方がゆったりとした雰囲気が有って美しいと思います。

877 ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ管(1995年録音/フィリップス盤) 彼はこの後にウイーンフィルを振って後期交響曲の3曲を録音しますが、最も優れた演奏は5番であり、4番、6番は何となく今ひとつに思います。そこでどうせ6番を聴くなら、僕は手兵キーロフ管とのロシア風の音の演奏の方が好きです。荒々しさと洗練さのバランスがとても良く、およそ欠点の無い現代ロシアのリファレンス的な名演奏だと思います。

Cci00007 ウラジミール・フェドセーエフ指揮モスクワ放送響(1999年録音/Relief盤) これはモスクワでのライブ演奏です。彼はこの前に一度チャイコフスキーの自筆譜による録音も行っています。通常譜との一番の違いは終楽章の速度指定が通常のアダージョではなくアンダンテ、つまり速めであることです。こちらのライブ盤の記載にはアダージョと有るので通常譜らしいです。ですが実際のテンポは自筆譜盤と似たようなものです。ということは指揮者による演奏の違いの方が大きいのだから譜面は別にどっちでもいいじゃないかというのが正直なところです。演奏そのものもこちらのライブ盤のほうが遥かに良いです。ただしスヴェトラーノフほどの荒々しさと土臭さは感じませんし、テミルカーノフやゲルギエフほど現代的に洗練された面が有る訳でもないので、どうしても印象が薄くなるのが気の毒です。それでも2楽章の沈んだ雰囲気などはなかなか素晴らしいと思います。

ということで、しばしの間チャイコフスキー特集をご笑読頂きまして有り難うございました。改めて色々と演奏を聴きなおしてみて感じた事なのですが、自分はやっぱり自国の演奏家によるものが好きだなぁということです。これまではそれほどこだわらなかった後期の5番、6番あたりについてもロシアの演奏家のものが益々好きになりました。なので今回挙げたほとんどの録音はみな僕にとって大切な愛すべき演奏なのだということです。

さて、僕は例年ですと春の足取りが遠くから近づく今ごろからはシベリウスが無性に聴きたくなるのですが、いきなり春の陽気になってしまってはその気にならないかもしれません。そのときはどうしましょうか・・・。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

チャイコフスキー ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の想い出」 もうひとつの名演

チャイコフスキーの大傑作ピアノトリオ「偉大な芸術家の想い出」については少し前に記事にしたばかりです。http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-9199.html

その時の記事の中で、コーガン/ギレリス/ロストロポーヴィチの古い演奏を、比類なき名演だとご紹介しました。それについては全くの事実なのですが、実はその後にたまたま中古ショップで珍しいCDを見つけました。

Cci00020b 演奏はダヴィド・オイストラフ(Vn)、レフ・オボーリン(Pf)、スヴャトスラフ・クヌシェヴィツキー(Vc)のトリオで、1961年のライブ録音と記載されています。イギリスのマスタートーン・マルチメディアという会社が「レニングラードマスターズ」というシリーズ?で出したようですが、現在は恐らく廃盤扱いでしょう。実は相当の音の悪さを覚悟の上で購入したのですが、実際に聴いてみると録音は予想以上でした。まあ、この手は粗悪な音の物が多いので最初から期待はしていないからでしたが、幸いにも鑑賞には支障のない良好なレベルでした。そして肝心の演奏が何とも素晴らしいものだったのです。これはまあメンバーを考えれば当然のことではあるのですけれども。コーガン/ギレリス/ロストロポーヴィチの演奏はインテンポで極めて堅牢な造形でありながらもロシアの味わいに満ち溢れた正に純血ロシアンでなければ出来ない演奏でした。こちらはそれに比べればややゆったりとしたテンポでたっぷり歌うことに重点を置いた演奏です。特に素晴らしいのがやはりオイストラフのヴァイオリンです。この人はライブになると本当に良いです。ほれぼれするほど楽器が歌っており素晴らしい味わいです。クヌシェヴィツキーのチェロも非常に上手いです。この人は今まであまり聴いたことは有りませんでしたが、品格から言えばロストロポーヴィチに全然負けていません。ヴァイオリンとチェロに関しては、この両トリオは全くの互角だと思います。残るオボーリンのピアノだけがテクニック面でギレリスと比べるとだいぶ劣っています。個々を比べればそのようになるのですが、アンサンブル全体として比べた場合には、音楽の造形と凄み、迫力でコーガン/ギレリス/ロストロポーヴィチ盤が優れ、豊かな表情と情緒表現の点ではオイストラフ/オボーリン/クヌシェヴィツキー盤が更にその上を行くと思います。私としてはこの両盤にとても優劣はつけることは出来ません。そしてどちらもつくづく純血ロシアンの演奏なのだと感じ入るばかりです。それにしてもこれほどの名曲の名演奏が現在どちらも陽の目を浴びていないとはかえすがえすも残念なことです。

尚、このメンバーは1950年頃にスタジオ録音を残していることも今回知りました。部分的に試聴した限りでは後年のライブの円熟味と深さには及ばない気がしますが、その演奏を全部聴いた方がいらっしゃればご感想を是非お聞きしたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ短調op.35 名盤

立春と言っても名ばかりで寒い日が続いています。まだまだチャイコフスキーを聴くのに適した気候です。寒い外から帰って冷えた体をウオッカで(といいたいところですが実は芋焼酎で)暖めながら、ロシア音楽を聴く楽しみは格別です。

チャイコフスキーはヴァイオリン協奏曲にも名作を残しました。曲の激しさにおいてはブラームスと双璧でしょう。ブラームスはジプシー民族の情熱を、こちらはロシア民族の情熱を余すところなく歌い上げます。第1楽章のポロネーズ調に爆発するところなどは何度耳にしても興奮させられます。第2楽章の感傷的な曲想にも心惹かれますし、第3楽章の高揚するパッションも比類ないところです。ところが、この曲は最初大ヴァイオリニストのアウアーにして「演奏不能」と言われてしまいます。初演後にも酷評されてしまい、曰く「酷い曲で周囲に悪臭が漂う」とか。おそらくそれは演奏が余りに難しくて、本当にそのような演奏だったのでしょう。それでは曲の真価は判りませんものね。事実、現在でも本当に良いと思える演奏は少ないと思います。テクニックが欠ければ騒音にしか聞こえないし、情熱に欠ければ退屈するし、繊細さに欠ければ楽しめないし、オーケストラの音がしっかりしていないと拍子抜けするし、おまけにロシアの味わいも求めたい。などとこれら全ての条件を満たして初めてこの曲の魅力が伝えられると思います。

それでは僕の聴いている幾つかの演奏をご紹介させて頂きましょう。

123 ブロニスラフ・フーベルマン(Vn)、オーマンディ指揮フィルハーモニア(1946年録音/Music&Arts盤) 古い録音ですが音はとてもしっかりしています。これは正真正銘「世紀のヴルトゥオーゾ」の名に相応しい演奏です。但しテクニック的には現代の演奏家と比べると結構おおざっぱで、おおらか。とにかく凄いのは表現力が実に豊かで音楽が大きいことです。その自由奔放な弾き方は現在ではとても考えられない程です。3楽章の追い込みも迫力が凄まじいです。これは是非一度は耳にしておくべき演奏だと思います。          

429_2 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)、ライナー指揮シカゴ響(1957年録音/RCA盤) いつもながらの快速超特急の演奏です。ハイフェッツのヴァイオリンは全ての音符を粒立ちの良い明確な音でどんどんすっ飛ばしてゆくので、とても爽快ではあるのですが、ゆったりと情緒的に歌って欲しい部分までも同じように飛ばして行くのでおよそ味わいというものが感じられません。こういう演奏は幾ら凄くても僕の耳には少々辛すぎます。

163 ダヴィッド・オイストラフ(Vn)、オーマンディ指揮フィラデルフィア管(1959年録音/CBS SONY盤) オイストラフという人はもちろん非常に上手いのですが、スタジオ録音だとどうも気合が入らずにぬるま湯演奏になることが多いのです。これはオーマンディもしかりです。このCBS盤は昔は名盤と呼ばれてベストセラーでしたが、後年の素晴らしいライブ演奏が有る以上、今では余り存在価値が無いのではないかと思います。

049 ダヴィッド・オイストラフ(Vn)、ロジェストヴェンスキー指揮モスクワフィル(1968年録音/メロディア盤) これはライブ録音なので、CBS盤のようなぬるま湯の雰囲気は全く有りません。常に程よい緊張感を持ち続けます。それでいて歌心に溢れ、ちょっとしたスケールまでが味わい深いです。とにかくフレージングが大きくて自然なのです。オーケストラ伴奏も抜群です。ロシアの雰囲気もたっぷりですし、この曲の魅力を全て表現し尽した稀有な名演奏だと思います。 

053 チョン・キョンファ(Vn)、プレヴィン指揮ロンドン響(1970年録音/DECCA盤) チョン・キョンファの最初の方の録音です。彼女の若い時代の演奏はどれもとても好きでした。非常に端正で凛としていて、かつ切れの良さを見せるヴァイオリンは実に魅力的です。もちろん後年の円熟した演奏も素晴らしいのですが、この頃に持っていた若々しい良さは本当にかけがえの無いものだと思います。

205 諏訪内晶子(Vn)、キタエンコ指揮モスクワ・フィル(1990年録音/TELDEC盤) 彼女のチャイコフスキーコンクール優勝記念のライブ演奏です。はっきり言ってヴァイオリンは非常につたないです。テクニックに問題は無いのですが、フレージングがどうもギクシャクしているのです。ただ、それではこの演奏はつまらないかと言えば決してそんなことは有りません。何しろこの当時の彼女は本当に可憐でした。目の中に入れても痛くないぐらい可愛いと思いました。そんな少女がひたむきに弾く演奏にはおじさんはちょっと参ってしまうのです。なのでハイフェッツやオイストラフのスタジオ盤よりもこの方がよっぽど聴いていて心が湧き立ちます。3楽章の盛り上がりにはなかなか興奮させられます。

Suwanai__1 諏訪内晶子(Vn)、アシュケナージ指揮チェコ・フィル(2000年録音/フィリップス盤) コンクールから10年の時を経た再録音盤です。すっかり大人の女性になった彼女は実に美しいです。おじさんはますます参ってしまいます。彼女の姿を想像しながら聴いていれば演奏はどうでも良くなってしまいます。ならばCDでなくてDVDで鑑賞したいところですが、残念ながら出ていません。「たのむからDVDにしてくれ~」(苦笑) 冗談はさておき、この演奏はなかなか素晴らしいです。ここには10年前のぎくしゃくしたフレージングは既に無く、端正な弾き方は何となく現代音楽を思わせる部分も有ってユニークです。2楽章の深さも、3楽章の熱気も相当のものです。ただ、この録音からも既に9年が過ぎていますが、その間に彼女は結婚、出産、DV、離婚訴訟と私生活では天国と地獄を味わいました。なので最近はあの美しい顔が随分疲れた表情に見えるのが気の毒なのですが、ところが音楽は逆に深みが増しています。昨年末のNHKでのシベリウスなどは実に見事でした。今後の彼女には大いに期待したいところです。「おじさんは応援しているぞ~!再婚してもいいぞ~」ってそれは無いか。(苦笑)

753 ワディム・レーピン(Vn)、ゲルギエフ指揮キーロフ管(2002年録音/フィリップス盤) これはライブ録音です。レーピンは以前からテクニックには申し分が無かったですが、最近は円熟を増して音楽が実に深くなってきました。歌いまわしの上手さなどはオイストラフにも迫ると思います。それでいて繊細さはレーピンの方が上なのです。そしてなんと言ってもゲルギエフのオーケストラ伴奏はおよそ過去のあらゆる演奏の中で最高の素晴らしさです。これほど立派で情緒と表情が豊かな演奏は初めて耳にしました。

以上の中から私のベスト3はというと、1にオイストラフ/ロジェストヴェンスキー、2にレーピン/ゲルギエフ、3に諏訪内/アシュケナージとしたいです。  

| | コメント (8) | トラックバック (0)

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番変ロ短調op.23 名盤

Tchaikovsky チャイコフスキーは古今の音楽家の中でも稀代のメロディメーカーでしょう。私見ではプッチーニと正に双璧だと思います。白鳥の湖の「情景」や、「悲愴」の第1楽章中間部の有名なメロディなどはチャイコフスキーの代名詞と言える名旋律でしょうし、このピアノ協奏曲第1番の冒頭と第1主題も実に素晴らしいと思います。まさに「これぞクラシック音楽!」と言いたいほどの大傑作です。ところが彼が34歳の時に完成したこの曲は、最初は母国ロシアの音楽家達に全く認められずに初演すら出来ませんでした。やむなく曲を贈った名指揮者のハンス・フォン・ビューローがボストンで初演したところ大絶賛されたのです。今ではとても考えられないことですね。

この曲は、まず冒頭のホルンの4つの音を聴いただけで完全にノックアウトされます。なんという天才的な序奏でしょうか。そこに更にあの美しい第1主題がたたみかけてきます。展開部のロシア風の舞曲もとても楽しいですし、壮麗な終結部も圧巻です。第2楽章の美しさも比類が有りません。詩情溢れるロシア風のメロディの主部に対して中間部のフランス風とも言える洒落た雰囲気の対比が正に絶妙です。第3楽章はロシア舞曲を基にしたような盛り上りに大興奮させられます。この曲は正にピアノ協奏曲の「女王」と言えるでしょう。えっ?それでは王様は何の曲かですって?それは決まっています。ブラームスの第2番です。するとさしずめ「皇帝」が皇太子というところですね。(笑)

これほどの名曲なので古今の名盤はあまたなれど、僕が特に愛聴するCDをご紹介させて頂きましょう。

Cci00013 ウラディミール・ホロヴィッツ(Pf)、セル指揮ニューヨークフィル(1953年録音/Otaken盤) ホロヴィッツにはトスカニーニと組んだ録音も幾つか有りますが音が悪すぎました。その点、このセルとの録音はかなり音が良く、特にピアノの音がとても明瞭です。実演なのでミスタッチが無いわけではないですが、いかに昔のヴィルトオーゾの演奏が凄まじいかをまざまざと思い知らされます。テンポは早めですが、味の濃さはちょっと比類が有りません。3楽章の最後の追い込みもセルともどもまるで鬼神のようです。全盛期のホロヴィッツの迫真の演奏は一度は聴いておくべきだと思います。

Cci00011 エミール・ギレリス(Pf)、ライナー指揮シカゴ響(1955年録音/RCA盤) ギレリスはおそらくこの曲の録音の数が一番多いと思います。まだ若い時代のこの録音は、非常にきりりと引き締まった、ピアノパートのみについてはあらゆる演奏のリファレンスと言えるような見事さです。ライナーの伴奏は少々色気の不足は感じるものの、ギレリスと同じように引き締まった良い演奏だと思います。

Cci00015b エミール・ギレリス(Pf)、メータ指揮ニューヨークフィル(1979年録音/CBS SONY盤) ギレリスのライブにはムラヴィンスキーやスヴェトラノフと組んだ非常に期待できるはずだった録音も有るのですが、ことごとく音が悪過ぎます。その点、このメータ盤は高弦の音がざらついてはいるものの全体としてはずっと良いです。ギレリスのピアノも若い頃よりも表現がずいぶん豊かになり、ライブならではの気迫が素晴らしいですし、2楽章の叙情性なども感心するばかりです。メータも同様に大熱演をしてくれているので非常に聴き応えが有ります。 

8361144 スヴャトスラフ・リヒテル(Pf)、カラヤン指揮ウイーン響(1962年録音/グラモフォン盤) リヒテルも全盛期のライブ録音が幾つか有りますが、やはり残念なことに録音の良いものは有りません。このカラヤンとの演奏は昔から定番として人気がありますが、両者ともどうも構えてしまってちっとも熱くなりません。非常に立派な音が鳴っているが故に、逆に僕にはそれが空虚に感じられてしまうのです。リヒテルには条件の良いライブ録音を是非とも残して欲しかったと思います。 

Cci00013b アルトゥール・ルービンシュタイン(Pf)、ラインスドルフ指揮ボストン響(1963年録音/RCA盤) 初演の地にちなんでボストンでの録音も挙げておきましょう。スタジオ録音ということもあるのでしょうが、ルービンシュタインのピアノがずいぶんと穏やかでおっとりした演奏です。余り刺激的でないので心地よさも感じますが、悪く言えばややBGMのようなのです。もちろん好みも有りますが、僕の耳には少々物足りません。オケ伴奏は決して悪くはありません。 

Cci00014b マルタ・アルゲリッチ(Pf)、コンドラシン指揮バイエルン放送響(1980年録音/フィリップス盤) アルゲリッチは若い頃の演奏はそれは大好きでした。出来栄えに凸凹は有っても、本能の命ずるままの閃きのある演奏にとても惹かれたからです。ところが後年は、すっかり演出臭い恣意的な演奏をするようになってしまいました。この人もこの曲には幾つかの録音が有りますが、中ではロシアの名匠コンドラシンの伴奏指揮で弾いたこの演奏が僕は一番好きです。 

Cci00014 エフゲニ・キーシン(Pf)、ゲルギエフ指揮サンクトペテルブルグアカデミー響(1987年録音/YEDANG盤) キーシンのデビュー間もない16歳の時に若きゲルギエフの伴奏指揮で弾いたライブ演奏です。翌年のカラヤン伴奏のグラモフォン録音盤は有名ですが、なんだかお爺さんの監視の下で子供がお行儀良く遊んでいるようで面白みの無い演奏でした。それに比べてこちらは近所のお兄さんと子供が元気一杯に遊んでいるような演奏なので断然楽しいです。力強く輝かしい打鍵でこんなにも上手く表現力豊かな天才少年にはほとほと驚かされます。

Cci00015 中村紘子(Pf)、スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1990年録音/CBS SONY盤) これは日本でのスタジオ録音です。中村紘子がどうしてまたここに登場するのかですが、理由はオケの伴奏が絶品だからです。金管の荒々しさと木管や弦の歌い回しはつくづくロシアのオケを感じさせて、「ああこの曲はやっぱりロシアの音楽だったのだ!」と改めて認識させてくれます。この曲の管弦楽の素晴らしさが初めて完全に味わえた気がします。紘子さんのピアノについては、もともと特別に音楽性が有る訳でもないですし強烈な打鍵を持つものでもないですが、ここでは一生懸命に表情をつけて立派に弾いています。オケの音にもしっとり溶け合ってとても美しいです。これは総合的に掛け値なしで僕の愛聴盤なのです。

以上、結局のところ僕はどれも楽しめてしまうのですが、独奏ピアノについては、ギレリス(SONY)、キーシン、アルゲリッチがベスト3。オケは断然スヴェトラーノフがナンバーワン。ところが実際にギレリスとスヴェトラーノフが共演した録音が有るのにそれほど良くないから、世の中なかなか上手くは行かないものですね。

| | コメント (10) | トラックバック (0)

チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調op.64 名盤

チャイコフスキーの交響曲の中でも「第5番」は「悲愴」と並んで特に人気の有る曲でしょう。クラシックの入門者が一度はとりこに成る曲ですね。逆にマニアにとってはそれほど人気は高く無いかもしれません。何故なら馴染み易いが為に、多く聴き過ぎて結果的に飽きてしまうからです。曲想も4番、6番と比べると少々深みに欠ける気がします。かく言う自分もこの曲を長いこと聴かない時期がありました。それを再びこの曲に引き戻してくれたのは、素晴らしい演奏の登場が有ったからです。それはワレリー・ゲルギエフが1998年のザルツブルク音楽祭でウイーンフィルを指揮したライブ録音のCDなのですが、詳しくは愛聴盤CDの所でお話ししたいと思います。

前にも書きましたが、第4番迄の交響曲は非常にロシア臭さが強いので、私はロシア人指揮者がロシアのオケを振った純血ロシアンの演奏を好みます。しかし第5番と第6番については、ロシアのオケ以外の演奏にも好きなものが結構存在します。おそらくそれはチャイコフスキーの音楽が晩年はロシアのローカルな曲想から抜け出して、もっと国境を越えた普遍性を得たからだと思います。特にこの第5番は様々な国の指揮者やオケが世界のいたるところで頻繁に取り上げる定番のコンサートピースです。第1楽章の勇壮さと情熱、第2楽章のロマンティックなメロディ、第3楽章の楽しいワルツ、第4楽章の絢爛豪華な終結と、初めから終わりまで聴き手を楽しませてくれる実にサービス満点の曲です。もちろんところどころに現れるロシア的な味わいにも不足していません。

それでは僕が愛聴しているCDを順にご紹介させて頂きましょう。

125 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル(1960年録音/グラモフォン盤) 言わずと知れた3大交響曲のグラモフォンによるセッション録音です。但し演奏の出来栄えとしては4番、6番の順に良く、5番が一番落ちると思います。曲を面白く聞かせるために表現にありとあらゆる工夫をこらしていて、凄いことには違いないのですが、仕掛けが過剰に過ぎて逆にやや「姑息」に感じてしまうからなのです。これは天才ムラヴィンスキーだからこそ起こしてしまった失敗ではないでしょうか。

Cci00009 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル(1983年録音/メロディア盤) ムラヴィンスキーはこの曲を頻繁に演奏していたのでライブ録音の数も非常に多いです。ところがどうも決定打になり得る演奏を聴いたことが無いのです。特に最近宇野功芳先生が推薦されている1977年の日本ライブは酷すぎます。ムラヴィンスキーとは思えない乱暴な管の咆哮と、まるで昔のカセットデンスケで録音したような酷い録音には失望しました。そのCDをこれから聴かれる方はどうぞご覚悟されることを。自分ならば録音の良い1983年盤をとりたいと思います。晩年の演奏で迫力には欠けますが、ずっとオーソドックスであり以前の演奏のような違和感を感じないからです。 

496 アルヴィド・ヤンソンス指揮レニングラードフィル(1970年録音/Altus盤) この人はマリス・ヤンソンスの父親です。レニングラードフィルの日本演奏旅行のときにムラヴィンスキーの代わりに大阪で指揮した録音が運よく残されています。ムラヴィンスキーに比べれば何とオーソドックスな指揮ぶりでありましょう。チャイコフスキーだからといってことさら過剰な表現を好まない人にはお薦めできると思います。事実この演奏を非常に好きな友人も居ます。

Cci00013エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1990年録音/CANYON盤) 有名な東京ライブ全曲チクルス演奏の中の白眉です。何といってもライブならではの気迫・迫力の凄まじさに圧倒されます。巨大なスケールでゆったりとした部分の味わいもロシアの楽団ならではです。何度も繰り返して聴くには3年後のモスクワでのスタジオ録音の方が適しているのかもしれませんが、この演奏の魅力は一度聴き始めてしまうと全てを忘れさせるほどです。

Cci00009_2 ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトぺテルブルグフィル(1992年録音/RCA盤) テミルカーノフはこの年に三大交響曲を録音していて、4番は出来がいまひとつでした。ところがこの5番は大変素晴らしいです。非常な弱音でゆっくりと始まる導入部からしてユニークですが、全楽章とも一貫してかなり遅いテンポで慌てず騒がずじっくりと音楽を進めるのが個性的です。終楽章も迫力は有りますが決して力みかえりません。ムラヴィンスキーのレニングラード時代の豪放かつ繊細なオケの音が健在なのが嬉しいところです。この演奏も非常に気に入っています。

Cci00065 ワレリー・ゲルギエフ指揮ウイーンフィル(1998年録音/フィリップス盤) 当時すっかりこの曲から離れていた自分を再びこの曲に引き戻してくれた名演奏です。ゲルギエフはこの曲を大変得意にしていて、世界のあちこちで演奏して聴衆を熱狂させています。ムラヴィンスキー並に表現力満点、振幅の大きいドラマティックな演奏ですが、それが自然で決して姑息などには感じさせないところが凄いです。ウイーンフィルの大熱演ぶりと、彼らにしては精一杯ロシアの味を出しているのに感心します。

Cci00065b ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ管(2005年録音/Harvest盤) ウイーンフィル盤は大好きですが、不満が有るとすればロシアのオケでないことだけです。その不満を解消してくれる素晴らしいディスクが有ります。手兵キーロフ管とのストックホルムでのライブ盤です。これは海賊盤ですが、最新のデジタル録音であり録音は超優秀です。演奏の勢いはウイーンフィル盤の方が勝っていますが、こちらにはロシアのオケしか持たない深く暗い音色が有ります。これは何物にも代えがたいのです。現在はこのキーロフ盤の方を好んで聴いています。

Cci00010 小林研一郎指揮チェコフィル(1999年録音/EXTON盤) ロシア人指揮者以外であれば何といってもコバケンでしょう。僕は昔からこの人が大好きです。あるアマチュアオケの練習の時に目の前で指揮されて楽器を弾いた経験が有るのですが、物凄いオーラを感じました。そうでなければハンガリーやチェコの名門オケをあれほど多く振ることは出来無いでしょう。チェコフィルは同じスラブ系とは言ってもロシアのオケの音色や節回しとはやはり似て異なりますし、この人は実演の人なのでスタジオ録音ではやや不完全燃焼を感じますが、やはりこれは表現力豊かな良い演奏だと思います。

以上の中から僕のベスト3を挙げるとすれば、ゲルギエフのウイーン、キーロフの両盤とスヴェトラーノフ盤です。次点としてはテミルカーノフ盤、それに「失敗」とは言いながらもやはりムラヴィンスキーのグラモフォン盤、というところでしょうか。

| | コメント (15) | トラックバック (0)

チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調op.36 名盤

758471840931893posters チャイコフスキーの初期の交響曲は第1番も第2番もロシアの雰囲気で一杯です。ところが第3番はなぜかタイトルが「ポーランド」。いきなり隣国に侵攻してしまいます。僕はこの3番はそれほど好んでいません。いっそのことタイトルを「ウクライナ」とか「シベリア」とかにして作曲した方が良かったのかもしれません。

作品の充実度で言えば何と言っても第4番以降の後期三大交響曲が優れています。中でも最高傑作であり、僕自身一番好きなのはやはり第6番「悲愴」です。第4番と第5番ではなかなかの良い勝負。ですがこの第4番の激しさ、豪快さは実に魅力的です。特に第1楽章と第4楽章の迫力は尋常で無いですし、第2楽章の正にロシア風のメロディもチャイコフスキーファンをしびれさせます。これはやはり傑作だと思います。

この曲もやはりロシア人指揮者が自国のオケを指揮した演奏で聴きたいところです。そんな僕の愛聴盤をご紹介させて頂きます。

125 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル(1960年録音/グラモフォン盤) 余りに有名な演奏なので今更何をいわんやですが、西ヨーロッパへ演奏旅行をしている途中の彼らとグラモフォンが後期三大交響曲をセッション録音してくれたのは本当に幸運でした。中でもこの4番の演奏が一番凄いのです。全てを切り裂くような鋭い金管、切れ味の鋭い弦楽器群、ロシアの味わい一杯の暗い音色の木管群と、どれをとっても最高ですが、それを厳格にコントロールするムラヴィンスキーの指揮の冴え。初めて聴いた時には、スタッカートの異常なまでの鋭さには度胆を抜かれたものです。この演奏が有れば他に何も要らないと言いたくなるほどです。

Cci00007 ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮レニングラードフィル(1971年録音/BBC Music盤) 全盛期のレニングラードフィルを指揮したロンドンでのライブ録音です。西側の国でのライブであった為か、異常に高揚した演奏です。同じ頃の手兵モスクワ放送響とのスタジオ録音と比べると雲泥の差と言ってよいでしょう。録音は多少バランスの悪さも感じますが、当時としては標準的なレベルでしょうか。ライブなので演奏に傷は有りますが、何しろ演奏の興奮度合いならばムラヴィンスキー以上の凄さですので爆演好きな方は是非ご一聴を。

Cci00007b ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮ソヴィエト国立文化省響(1990年録音/ERATO盤) BBCライブと比べるとずっと落ち着いてじっくりと聞かせます。この楽団は彼の為にわざわざ新設された団体なので、管楽器群のレベルは多少落ちる気もしますが、弦の滑らかな歌いぶりはとても素晴らしいです。第1楽章や第2楽章の沈み込むような佇まいにもとても惹かれます。ただし一般的な爆演好きな方はこの演奏はきっと物足りなく感じるだろうと思います。

Cci00009 ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィル(1992年録音/RCA盤) 昨年11月のこのコンビの日本公演はとても気に入りました。http://harucla.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-a1a3.html 但しこれは今から15年以上も前の録音です。ずいぶんゆっくりとした演奏ですが、テミルカーノフがまだ円熟していないために意外にスケール感を感じません。レニングラードフィルから名前が変わって楽団のレベルが落ちた訳では無いようですが、ムラヴィンスキーの表現力との差は如何ともし難かったのでしょう。このコンビでの今後の再録音に期待したいと思います。

Cci00008 エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立響(1993年録音/CANYON盤) ムラヴィンスキー盤は真の天才の名演。一方、スヴェトラーノフ盤は凡才の名演です。表現は野暮ったく、どこにも聴き手をはっとさせるような仕掛けや閃きは有りません。ですが、そこが良いのです。他の指揮者が変化球を織り交ぜて勝負してくるのを、この人は剛速球一本やり。最も土臭い素朴なロシアの大地を感じたい場合にはこの演奏が一番良いと思います。優秀な録音も、この重量級の演奏をとことん堪能させてくれます。

41v9jkyv4cl__ss500_ ワレリー・ゲルギエフ指揮ウイーン・フィル(2002年録音/フィリップス盤) ゲルギエフはウイーンフィルを振って後期の3曲をライブ録音しましたが、そのうち最初に録音した5番の演奏が最も優れていて、4番と6番はそれに比べるとやや劣ります。個人的にはむしろ手兵キーロフ管との演奏を聴いてみたい気がします。とは言え、ウイーンフィルにこれだけのチャイコフスキーを弾かせるのはさすがです。荒々しさ一本やりでなく、彼らしい洗練さを持ち合わせた、なかなか良い演奏だと思います。ややゆったり気味でスケールの大きい第1楽章などは良い出来ですが、反面第2楽章はどうしてもロシア風の節回しがいまひとつです。

以上、ムラヴィンスキー、ロジェストヴェンスキーBBC、スヴェトラーノフが僕のベスト3です。ゲルギエフが手兵のキーロフ管と将来再録音してくれたら是非聴きたいと思っています。ロシアの楽団以外では一つだけ、昔LP時代に友人宅で聴いたズデニェック・コシュラーが(たしか)チェコフィルかどこかを振った演奏が忘れられません。第1楽章が20分を越える遅いテンポで、深く深く沈みこんでゆくようなユニークな名演奏でした。この人のスロヴァキアフィルとの「新世界より」とかの名演が皆廃盤で、後年のそれ程でない演奏ばかりが販売されているのがどうにも不思議です。所詮レコード会社に演奏の価値が本当に分かる人などは少ないのかもしれませんね。

| | コメント (11) | トラックバック (1)

~厳寒~ チャイコフスキー 交響曲第1番「冬の日の幻想」ト短調op.13

Img_346836_25195970_0 毎日寒い日が続きます。おかげで毎日部屋の暖房をガンガンにしてチャイコフスキー三昧です。それもロシアの雰囲気が一杯の曲が良いですよね。僕は昔から哀愁漂うロシア民謡が好きで、「ともしび」や「トロイカ」「ポーリシュカ・ポーレ」などの大好きな歌がたくさん有ります。チャイコフスキーは後期の作品になるとかなり国際的な普遍性を持った雰囲気の曲が多くなりますが、初期の曲にはロシア民謡丸出しの作品が多く有ります。交響曲で言えば第4番辺りまでです。なかでも第1番「冬の日の幻想」と第2番「小ロシア」。この2曲は好きですね。チャイコフ好き~!なんちゃって。そこで今日は第1番の方を聴きながらロシアの冬の日を想像することにしましょう。

彼は交響曲の第1作目を完成させるのには少々苦労したようです。その理由はロシア音楽の先駆者グリンカも目指した、従来のヨーロッパの古典派、ロマン派の技法に何とか自国の音楽を融合させたいと考えたからです。果たして苦心の末に完成した第1交響曲はその通りの名作になりました。

この曲は「冬の日の幻想」というタイトル以外にも更に、第1楽章には副題が「冬の旅の夢想」、第2楽章には「陰鬱な土地、霧深き土地」と付いています。それはともかく、この曲は若々しい甘さとロシア風のほの暗いメロディが幾重にもつづられて非常に魅力的な作品です。僕が好きなのは第1楽章と第2楽章。実にロマンティックな名旋律の第2楽章はファンにとても人気が有ります。第4楽章もまるで「走れトロイカ!」。ロシア民謡丸出しのノリと迫力が実に楽しいです。

Cci00006 こういう曲だけはロシア人がロシアの楽団と演奏した本場物以外はちょっと私は聴く気になれません。よその国の人の歌うロシア民謡を聴かされるようなものですので。そうするとCDも限られてはきますが、僕が現在愛聴しているのは、エフゲニ・スベトラノフ指揮ロシア国立交響楽団(1993年録音/CANYON盤)です。スケールが大きく豪快でロシアの雰囲気に満ち溢れた良い演奏です。やはりこうでなくてはねぇ。録音もとても良いので大満足です。

僕がその昔、LP盤で聴いていたのは若きゲンナジ・ロジェストヴェンスキーが70年台初めに手兵モスクワ放送響と録音した全集の中の1枚でした。後期三大曲あたりではムラヴィンスキーあたりと比べるとまだまだ若造の棒だったのですが、初期の曲は逆に若さがプラスして非常に良い演奏でした。特に1番の2楽章などはロストロポーヴィチ級の主席チェロ奏者ヴィクトル・シモンが率いるチェロパートの歌いっぷりが抜群でしたし、ホルンのソロも最高でした。この演奏は全集でも分売でもどちらでもCDでの再発売を心待ちにしているところです。

ということで、しばらくはロシア音楽特集を続けて、雪解けが近くなった頃に大好きなシベリウスに行こうかと思っています。

| | コメント (17) | トラックバック (0)

チャイコフスキー ピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の想い出」イ短調0p.50 名盤

お正月気分もどこへやら。すっかり元のせわしない生活に戻ってしまいました。しかも寒さも厳しさを増して、明日は関東でも雪になるかもしれないそうです。こんな時には家で暖炉にあたりながら音楽を聴いていたいです。と言いたいところですが、我が家に暖炉なんてものは無いのでエアコンとファンヒーター併用でぬくぬくしながら音楽を聴きます。(^^)

Tchaikov 冬にはやっぱりチャイコフスキーの音楽がうってつけです。凍てつくロシアの大地を想像しながら、ワシーリーやゴーゴリー(誰だそれ?)になった気分で彼の音楽を聴いていれば気分はすっかり冬のロシアです。

チャイコフスキーは交響曲、ピアノやヴァイオリンの協奏曲、それにバレエ音楽も良いですが、室内楽にも名作が有ります。弦楽四重奏や六重奏です。しかしなんといってもピアノ三重奏曲が群を抜いた出来栄えの傑作です。「偉大な芸術家」というのはモスクワ音楽院の初代院長でピアニストのニコライ・ルービンシュタインのことです。(ポーランド出身のアメリカの大ピアニストのことでは有りません。)その院長の死を弔って書いた作品です。曲は長大壮大で、演奏時間に約50分を必要とします。第1楽章の中心となるのは悲歌風の主題です。これがチェロ、ヴァイオリン、ピアノと交代に何度も繰り返されます。なんと悲しくも美しいメロディなのでしょうか。チャイコフスキー一世一代の名旋律です。第二主題以降も魅力に溢れて本当に息つく暇も与えません。第1楽章はこの曲の中核であり、後半は二部に分かれた第2楽章です。僕は延々と変奏の続く第2楽章も大好きです。変奏の一つ一つがしゃれていたり激しかったり本当に変化に富んでいる傑作だからです。

この曲は彼の交響曲、それも後期のそれらと比べても同等かそれ以上に好きなのです。協奏曲だったらこちらの方がずっと好きですね。同じピアノトリオで比較をしても僕の大好きなブラームスの3曲よりも好きでしょう。ということは断然ナンバーワンです。

さてそれでは、僕がぬくぬくと温まりながら聴いているCDをご紹介させて頂きますのでお付き合いください。

Cci00064 コーガン(Vn)、ロストロポーヴィチ(Vc)、ギレリス(Pf)(1952年録音/Arecchino盤) これは昔、新世界レコードから出たLP盤で何度も愛聴した演奏です。少々古いモスクワでの録音ですが、3人の技術的レベルと音楽性が正に最高です。これから西側の音楽界へ羽ばたいて行こうとする若き3人の実力と気迫が凄まじいのです。三者が真剣で切り合うような凄みに満ちていますが、その力量が完くの同等なので見事な黄金比を形成しています。しかも全員が純血ロシアンメンバーなので母国の音楽への共感が限りなく深く、一つ一つの節回しにロシアの味わいが滲み出ています。正に桁違いの演奏です。この演奏は以前ビクターがCD化しましたが、現在は廃盤です。しかもそのビクター盤はこのイタリア盤よりも音の輝きが薄れていました。現在はカナダのDremiがセット物で出しているのみだと思います。やや高価ですが、この演奏を聴くだけでも充分価値が有るので是非。

1977 スーク(Vn)、フッフロ(Vc)、パネンカ(Pf)(1976年録音/スプラフォン盤) これは僕が学生の時にベストセラーになった演奏でした。このトリオはいかにも「室内楽」という感じで好感は持てるのですが、その分スケールは小さく、スーク以外の2人の技術が弱いです。なのでチャイコフスキーあたりになると聴いていてどうしても物足りなさを感じてしまうのです。ですので正直言って、この演奏でこの大曲を心底味わえるとは思えません。

Cci00005 カガン(Vn)、グートマン(Vc)、リヒテル(Pf)(1986年録音/Live Classics盤) これも純血ロシアンメンバーの演奏です。既に老境入りのリヒテルと若手2人との組み合わせなので、完全にリヒテル翁が主導権を握っています。翁の手のひらの上で2人が懸命に踊っている感じなのです。従ってコーガン達盤のような凄みに不足するのはやむを得ません。またライブ録音なので傷も多いですが、逆に感興の高さは充分です。スケールの大きさも素晴らしいですし、ロシアの味わいや悲歌の表現ぶりも見事です。

579 キョンファ(Vn)、ミュンファ(Vc)、ミュンフン(Pf)(1988年録音/EMI盤) 純血コリアンブラザー&シスターズの演奏です。ブラームスの時にも書きましたが、韓国の人は「恨(ハン)」という朝鮮民族特有の性質を心に秘めているそうです。なのでこういう悲歌を歌わせると実にツボにはまるのです。ロシア風とはちょっと違いますが、エレジーでの泣き節が非常によく似ている気がします。チェロが若干弱さを感じさせますが、それでも3人とも立派に弾いていて、なかなか見事です。

122 クレーメル(Vn)、マイスキー(Vc)、アルゲリッチ(Pf)(1998年録音/グラモフォン盤) これは東京のトリフォニーホールで演奏会が行われた際にセッション録音したものです。僕はその時の演奏会を生で聴きました。当然、前評判通りの実に興味深い演奏でありました。実力者3人がその持てる個性を披露し合ったのです。ところがどうもチャイコフスキーにはいまひとつ聞こえませんでした。演奏家の個性のほうが勝っていたのです。これは特にアルゲリッチに原因が有ると言って良いです。ご縁が有って後日、宇野功芳先生とこの時のコンサートについてお話する機会が有ったのですが、先生も僕と全く同じ感想を持たれていました。

Cci00064b スターン(Vn)、ロストロポーヴィチ(Vc)、ホロヴィッツ(Pf)(1976年録音/SONY盤) 凄い顔ぶれですが、この演奏は番外です。何故ならこれはカーネギーホール85周年記念演奏会で第一楽章のみ演奏された録音だからです。3人とも元々はロシア出身なのでこれもほぼ純血ロシアンメンバーと言って良いです。しかしホロヴィッツの個性が余りに強烈であるのとマイペースなので、コーガン達盤のような黄金バランスによる凄みは有りません。またライブ録音の為にどうしても音量バランス的にもピアノが勝っています。ですが、それでも聴き応え充分のこの演奏、もしも第二楽章も演奏されていればコーガン達盤に並び得る唯一の録音になっていたことでしょう。非常に残念です。

以下を追記加筆しました。(2009.10.18)

Cci00032 レーピン(Vn)、ヤブロンスキー(Vc)、べレゾフスキー(Pf)(1997年録音/Erato盤) ロシアの若手3人による新しい録音についてもご紹介しておきます。先輩達の歴史的録音のように大見得を切る事は有りません。それではこの演奏が味気ないかと言えば決してそんなことは無く、同郷人の共感がしっかりと胸の内に秘められているのを感じます。どの変奏曲もごく自然に歌われて曲の美しさを味わう事ができます。アルゲリッチ盤とは対照的な演奏なので好みは分かれるでしょうが、個人的にはこちらの方が好きです。テクニックも楽器バランスも申し分なく、録音も優秀です。

以上、この曲はコーガン/ロストロポーヴィチ/ギレリス盤が余りに凄すぎるので、他の演奏が少々気の毒です。それにしても、このような天下の名演がずっと廃盤のままというのは、一体なんとしたことでしょうか。レコード会社の見識の無さには呆れるばかりです。

なお、入手しやすいもので1枚、録音の良いものを求められる方にはレーピン達のCDを強くお薦めします。

| | コメント (22) | トラックバック (0)

サンクトぺテルブルク・フィル来日コンサート チャイコフスキー「悲愴」他

Cci00032_2 サンクトぺテルブルク・フィルが来日して「チャイコフスキーフェスティヴァル」と称してコンサートツアーを行っています。今日は、その初台オペラシティでのコンサートを聴きに行きました。プログラムは幻想序曲「ロミオとジュリエット」「ロココ風の主題による変奏曲」「悲愴交響曲」の3曲です。

指揮はユーリ・テミルカーノフ。彼は1988年にムラヴィンスキーの後を継いでこの楽団の常任になりました。ちょうど20年前です。その時にはこの楽団の名前はかの「レニングラード・フィルハーモニー」でした。

ムラヴィンスキー/レニングラードといえばもはや神格化された存在ですが、私の音楽人生最大の後悔といえばそのムラヴィンスキーを実演で聴いていないことです。しかし今ごろそう言っても始まらないので、いにしえの名楽団の現在を楽しむしかありません。

さて、そのコンサートですが、最初の「ロミオとジュリエット」からなかなかテンションの高い演奏を聞かてくれました。ムラヴィンスキー時代の研ぎ澄まされて怖ろしいほどの切れ味というのとは多少違いますが、弦も管も非常に凄みのある音は未だ健在と感じました。今年70歳になるテルミカーノフの棒(いやこの人はタクトは使わないが)(^^) は旋律の歌わせ方も堂に入っていてとても上手です。甘いメロディをたっぷりと味合わせてくれました。

次の「ロココ風の主題による変奏曲」は、独奏チェロがロシアの若手女流のタチアナ・ヴァシリエヴァ。とても上手いソリストでなかなか楽しめました。

そしてメインの「悲愴」ですが、演奏のテンションが益々上がり大変なものでした。そもそも第1Vnが9プルト18名、チェロが10名でコントラバスが同じ10名という編成自体もえらく分厚い弦楽の音を響かせましたが、それでいてアンサンブルの精度は非常に高く凄みがあります。この曲でも歌わせるべきところはたっぷり歌わせてくれるのが嬉しいです。そして第一楽章後半と終楽章のあの真のカタルシス!この曲はやはりこうでなければ。

やはりチャイコフスキーを聴くにはロシアの優秀な楽団に限ると改めて感じ入ったコンサートでありました。

さて、せっかくなのでここで私の愛聴盤をご紹介させて頂くことにします。

幻想序曲「ロミオとジュリエット」

877 ゲルギエフ指揮キーロフ管弦楽団(フィリップス盤) 私は現役指揮者の中ではゲルギエフが最も好きです。(というのもとっくに死んだ指揮者ばかりを聴いているから?)(^^) しかしこの演奏は実に素晴らしいです。切れの良さとロマンティックな歌わせ方がどちらも最高だからです。これは彼の「悲愴」の旧盤に組み合わされていますが、そちらの演奏もとても良いです。

交響曲第6番「悲愴」ロ短調 op.74

458 フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン放送響(グラモフォン盤) 既にファンには良く知られた最高の「悲愴」。私は普段は偏執的?(^^)なほどに本場物の演奏を好みますが、これだけはハンガリー人とドイツオケとの有無を言わせぬ圧倒的な名演奏なのです。第一楽章や終楽章の有名な旋律がかつてこれほどまでに悲しく響いたことがあったでしょうか。断じて有りません。しかも極めてドラマティックな展開も正に最高です。「悲愴」が好きでもしもこの演奏を聴いていない方が居たらそれは一生の不覚ですぞ。

172 フェレンツ・フリッチャイ指揮バイエルン放送響(オルフェオ盤) 実はフリッチャイには上記のグラモフォン録音とは別に1960年のライブ録音が有ります。これは知る人ぞ知る、演奏だけをとればベルリン放送盤をも更に(!)しのぐ凄演なのです。録音も極上のモノラルですので聴いていると音の違いは気にならなくなってしまいます。演奏解釈はベルリン盤とほぼ同じで、ライブでの感興の高さが更に増すだけです。ベルリン盤のファンにはこちらも是非聴いて頂きたいところです。それにしてもフリッチャイは病気リタイア後に復帰してからは何という演奏を行っていたことでしょうか。しかし結局は早死にしてしまうのですが、世界の楽壇のなんとも大きな損失でした。

125 ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル(ドイツグラモフォン盤) ここでこの演奏を外すわけにはいかないでしょう。これを初めて聴いた時、それまでカラヤンのゴージャスな響きに馴染んでいた学生(30年前の私です)の耳には非常にショッキングでした。脳天につきささるような鋭利な金管の響き、異常なほどに切れの良いリズム、徹底的に鍛え上げた凄みの有るアンサンブル。それでいていかにも自国の楽団でしか味わえないようなロシア風の歌いまわし。すっかりとりこになってしまいました。ムラヴィンスキーにはライブ盤も有りむろん素晴らしいのですけれど、このグラモフォン盤は原点と言えます。

他にも好きな演奏は幾つかありますが、この3枚はちょっと別格であるのです。

それにしても今日は帰り道が寒かったです。真冬になったら部屋の暖房をガンガンにしてチャイコフスキー三昧なんて生活が訪れるのももうすぐだなぁ(^^)

| | コメント (10) | トラックバック (0)