ドヴォルザーク 「スラヴ舞曲集」op.46&72 名盤
ドヴォルザークの作品の中でもとても人気は高いですし、珠玉の名曲集と言って良いでしょう。僕自身も大好きです。この曲集はとても変化に富んで飽きさせませんが、それはこれが「スラヴ舞曲集」だからでしょう。スラヴは非常に大きな民族のカテゴリーで現在のロシア、ウクライナからポーランド、チェコ、スロヴァキア、セルビア、クロアチア、ブルガリアまで含まれます。ですので単に狭いボヘミア地方の舞曲集では無いのです。とは言っても作品46は大半がボヘミア舞曲ですので、チェコ&スロヴァキアの音楽と考えても悪いことは有りません。それに対して作品72は完全に「スラブ舞曲集」です。元々はブラームスの「ハンガリー舞曲集」に続く「柳の下の二匹目のどじょう」を狙ってピアノ連弾用に書かれましたが、ドヴォルザーク自身が管弦楽に編曲したこともあり素晴らしい作品となりました。第1集と第2集それぞれが8曲づつの合計16曲です。
「スラヴ舞曲第1集 作品46」
第1番「フリアント」は急速なテンポで激しいボヘミア舞曲です。ドヴォルザークは交響曲でも第6番のようにスケルツォ楽章にこのフリアントを取り入れている場合があり、非常に特徴的です。それもそのはず語源は「目立ちたがり屋」なのですね。きっと村の祭りで派手な連中がこの踊りを踊ったのでしょう。
第2番「ドゥムカ」は哀愁漂うスローな曲です。これは実はウクライナの舞曲なのですね。但し中間部は速いモラヴィア舞曲になっています。
第3番「ポルカ」はボヘミアの楽しい曲です。そういえば昔「老人と子供達のポルカ」なんて曲が流行りましたが、あれもポルカなのですかねぇ?
第4番「ソウセツカー」は収穫祭の後の踊りでボヘミアのワルツです。スローで哀愁と喜びの気分が交錯しますが、とても好きな曲です。
第5番「スコチナー」は早いテンポのボヘミア舞曲です。心が躍ります。
第6番「ソウセツカー」もやはり哀愁と喜びの気分が現れている曲で好きです。
第7番「スコチナー」はモラヴィア地方の民謡を題材にしているそうです。スケールも大きく魅力的で、この曲は非常に好きなのです。
第8番「フリアント」やはり第1集の絞めはフリアントです。初曲と終曲にもってくるだけあってやはりボヘミアの代表的な舞曲なのでしょう。チェコのオケのコンサートのアンコールにもよく使われます。
「スラヴ舞曲第2集 作品72」
第1番「オドゼメック」も急速なテンポのボヘミア舞曲ですが、中間部ではテンポをぐっと落として叙情的になり非常に魅力的です。
第2番「ドゥムカ」こそはこの曲集の白眉であり、単独でも広く愛されている名曲中の名曲です。なんという哀愁漂う絶美のメロディなのでしょうか。ヴァイオリン独奏にも編曲されていますが、そういえばこの曲は弾いたことが有りませんでした。そのうちに弾いてみたいです。
第3番「スコチナー」、第4番「ドゥムカ」、第5番「シュパチールカ」、「ポロネーズ」と続きますが、中では第5番シュパチールカが魅力的なボヘミア舞曲であり、途中からチャルダーシュのように盛り上がるのも楽しく、シンフォニックなアレンジがまた最高です。
第7番「コロ」はセルヴィアの大勢で輪になって踊る輪舞曲です。フリアントのように激しく楽しい曲なので大好きです。この曲もアンコールでよく演奏されます。
第8番「ソウセツカー」 第2集の終曲はゆったりとした曲が選ばれました。やはり第1集で大成功したので第2集では気分に余裕が生れたのでしょうね。
ということで僕の愛聴盤のご紹介をしましょう。
カレル・シェイナ指揮チェコ・フィル(1959年録音/スプラフォン盤) ターリッヒ、アンチェル時代のチェコフィル副指揮者のシェイナは全く有名ではありません。 ですがやはり同国人ならではの血の通った指揮ぶりには安心します。むしろアンチェルやノイマンと比べると非常に素朴で豪快な面が強く、この曲集の場合はそれがプラスに感じられます。
ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・フィル(1979年録音/スプラフォン盤) コシュラーの旧録音です。この人は必ずしも晩年の演奏が優れている訳でもなく、若いころから天才的な表現力を持っているかと思うと平凡な演奏をしたりと実に不思議な人でした。この録音はチェコフィルの美音を生かしたという点では後述のノイマン盤に引けを取らない名演奏です。
ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1985年録音/スプラフォン盤) 何と言ってもオーソドックスな名演奏であり、一番安心して聴くことが出来る名盤だと思います。リズムの切れ、楽器バランスの良さ、職人的な上手さには文句が有りません。これは実は大変なことなのです。チェコフィルの美音を忠実に捉えた録音も優れています。ノイマン/チェコのコンサートのアンコールで聴いた生の音を思い起こさせます。
ズデニェック・コシュラー指揮スロヴァキア・フィル(1987年録音/ナクソス盤) 前述のチェコ・フィルとのスプラフォン盤の影が薄くなるほどの驚くべき名演奏です。私見ではコシュラーはスロヴァキアフィルと最も相性が良く、「新世界より」や「我が祖国」にベストを争う名盤を残しています。彼らはお互いに信頼し切った謂わば最高の夫婦関係にあったのでしょう。羨ましい限りです(?)。スロヴァキアフィルは技術的にも優れていますが音色はローカルの味わいを持ち、決して「宮廷舞踏」では無い、農民達の素朴な踊りを感じさせてくれます。また作品72-2のドゥムカが最も美しいのもこの演奏です。録音も優れていますし、これは廉価ナクソスレーベルの中でも飛びぬけて価値の高い名盤ですので絶対のお薦めです。
他ではセル/クリーヴランドやクーベリック/バイエルンも悪くは有りませんが、僕はやはり本場の純血の演奏を好みます。その点でここにヴァーツラフ・ターリッヒの演奏が無かったことに気がつきました。何故ならば「ターリッヒを聴かずしてチェコの演奏を語ること無かれ」だからです。とは言え僕はコシュラー/スロヴァキア盤とノイマン/チェコ盤で充分過ぎるほど満足はしています。
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