ドヴォルザーク(交響曲)

2017年2月15日 (水)

ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 再聴盤あれこれ

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”新世界交響曲”はニューイヤーコンサートでよく演奏されますね。新しい世界に足を踏み出すことが、新たな年の一歩に結び付けられるからでしょうね。

それにしても、これほど解かり易く魅力的な曲も珍しいです。僕自身も一番最初に好きなったクラシック音楽ですし、これからクラシックを聴いてみたいという方には真っ先にお勧めしたい曲です。

ですので、これまで色々なレコードやCDを聴いて来ました。そのうちの、お気に入りのディスクに関しては、ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」名盤隠れ名盤マッケラスのライヴ盤でご紹介しましたが、それらのほとんどはチェコもしくはスロヴァキアのいわゆる本場もののオーケストラ、指揮者の演奏でした。

その本場もの嗜好は今でも全く変わりませんが、年齢を重ねてゆくと人間、段々と丸くなるようで(体形の話ではありませぬ!)、世評に高い演奏でありながら、余り好きになれなかったものを改めて聴いてみようかという気になりました。但し一度レコードやCDを手放していますので再購入が必要でした。

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ジョージ・セル指揮クリーヴランド管(1959年録音/CBS盤)
 セルのCBS時代のセッション録音は概して精密ながら「機械的」で整い過ぎているのが面白くないというのが、かつての自分の印象でした。しかし好きな人は非常に好き。ということで再聴です。あっさりと始まる冒頭で「やはり・・・」と思いかけてみたものの、主部に入ると速いテンポで颯爽と飛ばします。よく”室内楽的”と評されるように各パートが緻密で正確無比です。そして剣の達人のごとき最高の切れ味で聴き手を圧倒します。全く何というオーケストラなのでしょう。けれど演奏に血が通っていないかというとそんなことは無く、意外にも熱い血潮が流れています。いい例が第2楽章で、テンポは速めでも豊かな情感を感じさせます。演奏には哀愁が迸っています。そういえばセル自身はハンガリー人ですが、母はスロヴァキア生まれなのでやはり影響は有るのかもしれません。後半3楽章のリズムの切れ味は最高、4楽章に入ると更に高揚感が増してゆき、これを単に「機械的」だなどという軽い言葉で済ますのは大きな誤りであることが分かります。基本はインテンポでも、ここぞというところでテンポを落すのが非常に効果的なのはトスカニーニと似ています。

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レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1962年録音/CBS盤)
 これは昔アナログ盤で愛聴した演奏でしたが、セルとは全く正反対のスタイルです。テンポは遅い部分と速い部分の差が非常に大きいので、現在聴くとそのアクセルとブレーキの切り替えの多さに車酔いを起こしそうです。たたみ掛ける迫力は凄いですし、更にダイナミクスの変化も大きいので、正に山あり谷ありのバーンスタイン・ワールドというところです。これがレニー得意のマーラーにおいて絶大な魅力となるのですが、ドヴォルザークではもう少しシンプルな進行が望ましいと思います。どうしても自分にはレニーの独りよがりの解釈に感じられてしまうのです。ニューヨーク・フィルも、ここでは幾らか雑な仕上がりに聞こえる部分も有りますが、これは当時レコーディングが目白押しだった弊害だと思います。

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イシュトヴァン・ケルテス指揮ウイーン・フィル(1961年録音/DECCA盤)
 これは録音当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍をしていたケルテスの代表盤のひとつで、現在でも非常に人気の高い演奏です。テンポの大きな変化、ダイナミクスの巾の大きさはバーンスタインと共通しますが、レニーがやや唐突感を感じてしまうのに対して、ケルテスは若いながらも計算され尽くした演奏である印象を受けます。チェコ出身の指揮者ではここまで自在な指揮はまずしませんが、好みは別として”天晴れ”を送りたいです。良く言われるように若手にもかかわらずウイーン・フィルを手綱で絞めて引き摺り回し、快演させること自体大変凄いことです。当時のウイーン・フィルの音色も都会的でなく田舎臭さを大いに残しているのは大きな魅力です。それでいて弦の音色などはまるで美しいシルクの印象を与えます。デッカの録音はとても聴き易く、古めかしさを感じないばかりか、アナログ的な柔らかさが心地良さを与えてくれます。

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ヴァーツラフ・スメターチェク指揮プラハ放送響(1966年録音/PRAGA盤)
 奇しくも昨年亡くなられた宇野功芳先生の推薦盤がケルテス、スメターチェクと続きます。これは”本場もの”の演奏ですね。実は、このCDも昔手放したもので、その後に随分とプレミアが付いたので再購入を躊躇していましたが、ようやくリーゾナブルな価格で入手できました。スメターチェクは元々ストレートで思い切りの良い直情的な演奏をしますが、そこに熱い血潮が感じられるのが宇野先生の好みであったようです。この演奏はプラハでのライヴなのでその傾向は明確です。洗練されていないオーケストラを熱くドライブさせて楽しませます。しかしオケの響きは薄めで、その割にティンパニを強打させますので、バランスが余り良いとは言えません。これを果たして「迫力」に感じるか、「貧弱」に感じるか、聴き手の耳がどちらに転ぶか際どいと思います。事実自分もかつては後者に感じたのでCDを手放したのでした。では今は?後者にも感じるが、それでも捨てがたい魅力を感じるという処です。やはり人間丸くなったみたいです。

さて、今回の”名盤”再聴の中で、一番気に入ったのはジョージ・セル盤でした。これはチェコやスロヴァキアの本場もの以外の演奏で一番のお気に入りとなりました。
でもまてよ、アメリカのオケの演奏は新世界としての”本場もの”だったかな。

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2014年3月 1日 (土)

ドヴォルザーク 交響曲第8番 ジョージ・セル/チェコ・フィルの1969年ライブ ~決定盤~

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ドヴォルザーク 交響曲第8番 チェコ・フィル(1969年録音)
ブラームス 交響曲第1番 ルツェルン祝祭管弦楽団(1961年録音)

このルツェルン音楽祭におけるライブ録音のCDは昨年9月に発売されたのですが、すぐに飛びつかなかったのはHMVとタワーレコードの紹介記事に騙されたからです。オーケストラが”ルツェルン祝祭管弦楽団”と書かれていたからです。最近のルツェルン管は”ベルリン・フィルの仮の姿のオーケストラ”とも呼べる優秀なヴィルトゥオーゾ・オケですが、当時はそれほどではなかったのでスルーしていたのです。
ところが、後からオーケストラはチェコ・フィルであることを知りました。製造元のauditeのCDケースには正しく記載されているのですが、どうやら輸入販売元のキング・インターナショナルが、カップリングのブラームス1番と混同したようです。そうなれば話は変わります。

1969年といえばセルがクリーヴランド管とEMI盤を録音する前の年です。あのEMI盤はそれ以前のCBS盤のメカニカルな冷たさを感じさせる演奏とは違って、温もりと立派さを兼ね備えた名演奏なので、自分の愛聴盤の一角を占めています。

さっそく今回のチェコ・フィル盤を入手して聴いたところ、これは大変な名演奏でした。EMIのクリーヴランド管盤と比べてみると、基本的にイン・テンポを通したクリーヴランド管盤に対して、テンポの緩急の巾の広さと呼吸の深さを感じます。歌い方も表情が豊かであり、かなり情緒的に感じられます。ロマンティックな度合いでは、ヴァーツラフ・ノイマンを大きく凌駕しています。例えば第3楽章は遅いテンポで陰影の非常に深い演奏ですが、特にあの美しい主題が中間部を過ぎて再び戻ってきたときの情緒的で翳の濃い歌には体がゾクゾクするほどです。
それでも、もちろんセルのことですから、全体の造形が崩れた感じは全くしません。終楽章では、じわりじわりと高揚感を増してゆきますが、クーベリックのライブのような爆演スタイルにはなりません。それでも終結部ともなると恐ろしいぐらいにたたみ掛けますので、これでもう充分に興奮、満足ができます。

ドヴォルザークの録音はステレオですが、非常に優秀なことが大きなポイントです。EMI録音のように過剰なエコーがかけられていない、とても自然な響きです。チェコ・フィルの美しい木管の音が分離良く忠実に捉えられています。弦楽にも音の伸びと潤いが感じられてとても良いです。実際のホールの真ん中あたりの席で聴いているような臨場感が有るのが素晴らしいです。EMI盤はもちろんのこと、ノイマン/チェコ・フィルの1981年デジタル録音盤よりもむしろ優れていると思います。

演奏のみで比較すれば、アンチェル/チェコ・フィルの1960年ライブ盤が最高だとは思いますが、この演奏もそれに匹敵する素晴らしさです。それに何しろ録音が良いので、総合的にはベストワンにしたいです。ドヴォルザークのファン、チェコ・フィルのファンには宝物のようなこのCDは絶対のお勧めです。

ご参考までに、このドヴォルザークはYouTubeで聴くことができます(こちら)。

カップリングされているルツェルン祝祭管弦楽団を指揮したブラームスの第1番も中々に良い演奏ですし、中々に優れたモノラル録音(疑似ステレオと表記)ではありますが、これはやはりドヴォルザークを聴くためのCDでしょう。

それにしても、こんな素晴らしいCD紹介を誤訳する輸入販売元には呆れかえります。プロの意識の欠如としか言いようが有りません。

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2013年11月 4日 (月)

ビエロフラーヴェク/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 2013 日本公演

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昨夜は、ミューザ川崎にチェコ・フィルハーモニーのコンサートを聴きに行きました。日本シリーズの最終戦が有るので家でテレビ観戦もしたかったのですが、それは諦めて出かけました。

今回指揮をするのはチェコ・フィルの首席指揮者に再び返り咲いたイルジー・ビエロフラーヴェクです。自分が名門チェコ・フィルの生演奏を聴いたのは、これまでにたったの一度だけ。今から30年以上も昔の、確か1976年のことです。自分は20代前半でした。その時の指揮者はヴァーツラフ・ノイマン。会場は東京文化会館。曲目はRシュトラウスの「ドン・ファン」とドヴォルザークの交響曲第8番だったのですが、オーケストラがよほど調子が良かったのか、弦の透明感あふれる瑞々しさも管楽器の輝かしさも最高でした。これまで聴いたウイーン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデンの音ともまた違う、けれども魅力の上では全く遜色の無い印象でした。その時以来の生演奏を聴くので本当に楽しみでした。

曲目は、グリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、ドヴォルザーク「新世界より」という、典型的な名曲プログラムですね。ピアノ独奏は日本人の河村尚子です。

イルジー・ビエロフラーヴェクはやはり自分の学生時代に日本フィルに客演したコンサートを聴いた記憶が有ります。ステージに登場した姿を見ると、すっかり貫禄が付いていて、時の流れを感じます。

さて、演奏が始まりましたが、「ルスランとリュドミラ」序曲はごく普通の前プロという印象。弦のアンサンブルの難しいこの曲ですが、特に完璧というほどでも無く、全体の音の厚みもそれなりでした。

「おっ」と思ったのは、二曲目のラフマニノフです。オケの音に非常に厚みが出て、各パートが良く歌います。とくにヴィオラの活躍する部分での押し出しの強さには感心しました。この曲の演奏には、甘くたっぷりと歌うハリウッド・スタイルと、暗く土着的に歌うロシアン・スタイルが有ると思いますが、この演奏は正にスラヴ的とでも呼べる印象です。河村さんのピアノは特別にロマンティックに没入するようなタイプではありませんが、この曲の魅力を中々に伝えていたと思います。まずは好演と言えるのではないでしょうか。

ここで休憩を挟みますが、楽天VS巨人の試合経過をワンセグでチェック。おおっ、楽天が2点のリードです!頑張れ!

後半はいよいよ「新世界より」です。チェコの楽団の演奏するドヴォルザークは言うまでもなく本場もの。本場ものの大好きな自分は最近では、どちらかいうとチェコ・フィルよりも更にローカル色の濃厚な、スロヴァキア・フィルやブラティスラヴァ放送響といったオケの音を好んで聴いています。しかしチェコ・フィルの音色はやはり素晴らしいです。現代的なオケの輝かしい極彩色の音とは全く異なる、ずっと暖色系のくすみがかった響きです。それはドイツの重量感のある音とも違います。チェコの爽やかな弦楽カルテットがそのまま大きくなったような弦楽器群の音に、重くなり過ぎない管楽器の音が絶妙にブレンドされているのです。昔、東京文化会館で聴いた音には、透明感と輝かしさを非常に感じたものですが、今日はそれよりもずっと古風な響きに感じられたのはホールや座席の違いも影響しているのかもしれません。けれども極めて魅力的な音であったのは確かです。ホルンの音色は本当に美しいですし、例の第2楽章のイングリッシュ・ホルンのソロの歌わせ方なども絶品です。ともすれば爆演になってしまう終楽章でも、騒々しさとはまるで無縁でハーモニーを”美しく”鳴り響かせる充実し切った演奏でした。

ビエロフラーヴェクの指揮はもちろん極めてオーソドックスなのですが、100%オケ任せで何もしないわけではありません。微妙なテンポの変化、楽器同士のバランスの扱い、聞かせどころでの楽器の目立たせ、アクセントなど、意外なほどコントロールしています。けれどもそれが全て適度な範囲なのですね。大袈裟にならないので全く違和感を感じません。それをみな消化して、伝統的な演奏スタイルを聞かせるチェコ・フィルという楽団。彼らが世代も越えて一体どれだけ演奏したかしれない「新世界より」という名曲。これを聴いていると例えてみれば、歌舞伎十八番の出し物を観ているかのような満足感を得られます。やはり、本場ものの伝統芸からは圧倒的な説得力と感銘を受けずにはいられません。

アンコールは、ブラームス「ハンガリア舞曲第5番」、ドヴォルザーク「スラヴ舞曲第3番」、日本の歌「ふるさと」でした。こういうオーソドックスな選曲、演奏がやはり良いのです。心から満足出来ました。

演奏会場を出て再び日本シリーズをチェックすると、楽天が3点リードをして、最終回に田中マー君が登場するではありませんか。電車の中で固唾を飲んで試合を見守っていると、ピンチを迎えたものの抑え切りゲームセット。やりましたね!

コンサートの余韻と日本シリーズの喜びとが混じり合って、なんとも心地良かったです。ジャイアンツは残念でした。でも今年も優勝してしまったら世の中から憎まれますよ。今年はこれで良かったのですよ。

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2013年7月19日 (金)

ドヴォルザーク 交響曲第8番&第9番「新世界より」 チャールズ・マッケラス/プラハ響のライブ盤

Mackerras_dvorak_0チャールズ・マッケラス指揮プラハ交響楽団(2005年録音/スプラフォン盤)

サー・チャールズ・マッケラスは、オーストラリア人ながら、自国の他にイギリス、ドイツ、チェコなどの国で活躍しました。レパートリーも幅広く、モーツァルトの交響曲や管弦楽曲の録音でも良く知られていますが、ユニークなのはヤナーチェックの音楽に造詣が深いことでしょう。恐らく20代の頃にプラハでヴァーツラフ・ターリッヒに師事した影響だと思われます。マッケラスがヤナーチェックのオペラを録音する時に、チェコ人の歌手たちにチェコ語で指示を出していたので皆を驚かせたそうです。また、チェコ・フィルの首席客演指揮者になった時期も有りますので、チェコの音楽全般を得意としています。

そんなマッケラスが亡くなる5年前の80歳の年、2005年にライブ録音されたドヴォルザークの交響曲第8番と第9番「新世界より」が有ります。最近、この演奏を聴いてみたのですが、非常に素晴らしかったのでご紹介します。

オーケストラはプラハ交響楽団、演奏会場はプラハのスメタナ・ホールです。チェコの管弦楽団の王座に君臨するチェコ・フィルは音色、技術ともに最高ですが、レコーディングに関してはヴァーツラフ・ノイマン時代に極め尽くされてしまった為に、その後の色々な指揮者の演奏にもそれほどの新鮮味を感じません。むしろ洗練されたチェコ・フィルよりもプラハ響、プラハ放送響、あるいはスロヴァキアのスロヴァキア・フィルやブラティスラヴァ放送響といった技術的には少々劣っていても、よりローカル色の強い味わいを持つ演奏の方に新鮮味を感じています。

さて、この演奏ですが、プラハ響は、とても美しく良い響きを出しています。録音もホール・トーンを生かしたコンサート会場の臨場感を感じさせる優秀なものです。

マッケラスの解釈は極めてオーソドックスで、まるでチェコ人が指揮しているような安心感を感じます。チェコ以外の国の指揮者が演奏すると、大抵の場合「曲を自分の腕でどんな風に料理してやろうか」という欲を感じるものです。そうすると面白くは有っても、チェコの音楽からは遠ざかってしまいます。そういう演奏は個人的には好みません。マッケラスのテンポ、歌いまわしは本当にチェコの伝統に忠実なので、人によってはつまらないと感じるかもしれません。自分のように「国民楽派は自国の演奏家が一番だ」と考える人には、きっと自然に受け入れられるでしょう。もちろんライブですので、高揚感は充分に有ります。しかし過剰と思えるような強奏やハッタリの要素はどこにも有りません。

プラハ響は、随分以前には実演だと技術的に粗さを感じてしまうことが有りましたが、この演奏にはほとんど感じられません。でも繰り返しますが、無機的なメカニカルさを感じることは全く有りませんし(そこまでは上手く無い?)、人間的な肌触りや、ローカルな素朴さを多く感じます。弦楽も美しいですが、木管の音質はチェコ・フィルと全く同質の美しさを持ちます。

第8番、第9番の2曲の出来栄えは、どちらも素晴らしいのですが、8つの楽章どれをとっても魅力的です。第8番であれば、第2楽章の抒情性、第3楽章の哀愁を一杯に湛えたゆったりとした歌いまわし、第4楽章の高揚感、どれもが心から満足できます。全般にアレグロ部で幾らかリズムが前のめりになりますが、これはむしろライブなのでプラスに感じられます。

第9番の演奏も、8番の特徴がそのまま当てはまりますが、出来栄えは第8番を更に上回るかもしれません。第1楽章での余り仰々しくならない音のタメ具合と、瑞々しく流れるようなフレージング、第2楽章での心の奥から淋しさが滲み出てくるような望郷の念、第3楽章の切れのあるリズム、第4楽章での高揚感を強く感じさせながらもドンチャン騒ぎの爆演に陥らない理性や、金管の強奏でも濁らずにふっくらと広がる響きの美しさ、どれも本当に素晴らしいです。

これまで自国演奏家でなければ、決して出来ないと思っていた、ボヘミアの自然の味わいと美しさに満ちた演奏をマッケラスは成し遂げています。この人にとってチェコは第2の故郷だったのかもしれませんね。

自分のフェイヴァリット盤としても、第8番では、アンチェル/チェコ・フィルの1960年ライブ(PRAGA)、ノイマン/チェコ・フィルの1982年盤(スプラフォン)に次いで、セル/クリーヴランド管(EMI)と並ぶベスト3に、第9番「新世界より」では、ノイマン/チェコ・フィルの1971年ライブ(PRAGA)、アンチェル/チェコ・フィル(スプラフォン)、ターリッヒ/チェコ・フィルの1954年盤(スプラフォン)のベスト3に続く、コシュラー/スロヴァキア・フィル(オーパス)、レナルト/ブラティスラヴァ放送響(Amadis)と並ぶ第二グループに加えたいと思います。2曲が1枚のディスクに収録されていて、どちらも非常に高い水準というのがポイントです。

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2013年7月13日 (土)

ドヴォルザーク 交響曲第8番 カレル・アンチェル/コンセルトへボウ管のライブ盤

31qbwg0ngblカレル・アンチェル指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1970年録音/EMI盤)

それにしても暑いですね~(汗汗)
毎日毎日、鉄板の上で焼かれてイヤになっちゃう、泳げたいやきくんになった気分です。(苦笑)

こういう季節にはクラシックよりも、むしろバリバリのロックやラテン・ミュージック、ボサノヴァなんかが聴きたくなりますが、クラシックであれば、ボヘミア音楽なんかは爽やかで良いですよね。ドヴォルザークとかスメタナとか。
ということで、今日はドヴォルザークです。
つい先日も、コシュラーのドボ8を記事にしたばかりですが、今度はカレル・アンチェルのドボ8です。

何年か前にIMGの企画、EMIの制作で出た「20世紀の不滅の大指揮者たち」は、非常に素晴らしい企画でしたので、僕も何人かのマエストロのディスクを購入しました。このシリーズの中の一人に、カレル・アンチェルが居ましたが、僕はアンチェル・ファンであるにもかかわらず、そのディスクは購入しなかったのです。理由は簡単、メインのドヴォルザークの交響曲第8番の演奏が、アムステルダム・コンセルトへボウ管だったからです。この名門オケの演奏とあれば飛びつきたいところですが、ことドヴォルザークに関しては、チェコおよびスロヴァキアのオーケストラの音が圧倒的に好きなので、他の国のオケには余り興味が沸かないのです。これはもう好みの問題ですので、どうにもなりません。

名指揮者アンチェルが西側へ亡命する前にチェコ・フィルとスプラフォン・レーベルに残したセッション録音には、ドヴォルザークの「新世界より」と、スメタナの「我が祖国」という、いまだに同曲中の決定盤とも呼べる名盤中の名盤があります。チェコ・フィルの前任の主席指揮者ヴァーツラフ・ターリッヒは、「指揮するたびに一度として同じ演奏はしなかった」と、同業のフルトヴェングラーに言わしめたほど即興性が高かったのですが、アンチェルはセッション録音を聴く限りでは、極めて構築性の強固な指揮者の印象です。ところがライブになるとまるで人が変わり、驚くほど開放的な演奏を行い、時には阿修羅のごとき爆演と化します。「新世界より」や「我が祖国」でのライブ盤が、それを証明しています。

この人には、ドヴォルザークの第8番のセッション録音が無いのが残念ですが、それでもチェコ・フィルとの1960年のライブ録音(PRAGA盤)が有るのが幸いで、モノラル録音であるハンディを度外視すれば、やはりベストの演奏だと思います。ですので、以前はコンセルトへボウ盤が出ても購入意欲が湧かなかったのです。ところが時が経つと人間の気持ちは変わるもので、せっかくのアンチェルのステレオ録音ならば一度は聴いてみるべきだったかな、と思い直しました。

このシリーズは既に廃盤なので、安価で入手するのには時間がかかりましたが、先日無事に入手することが出来ました。「いつ買うの?今でしょ!誰が買うの?君でしょ!」と言われた気がしました。(苦笑)

それでは聴後の感想をご紹介します。

第1楽章から非常に安定感が有ります。チェコ・フィルとのライブ盤での彫の深い歌い回しに比べると非常にオーソドックスな表現です。それでもフレージングが自然なのは、さすがに名匠です。コンセルトへボウはチェコ・フィルほどの素朴な音色ではありませんが、さりとて都会的でメカニカルな音でも無いので、このような曲には比較的適していると思います。少なくとも違和感は感じません。もっとも、このような曲での木管群の音は、やはりチェコ・フィルの素晴らしさには及びません。フィナーレの追い込みでの叩きつけるような迫力もチェコ・フィル盤の凄さには到達していません。

第2楽章は安定したテンポですっきりと流れます。得てして指揮者の思い入れが過剰でもたれるように歌うと、ボヘミアの爽やかな空気感が失われがちですが、そのような愚は犯しません。ヴァイオリン独奏部はなんだか怪しい出来栄えですので、おそらくは名コンマスのクレヴァースさんではなかったのでしょう。この楽章での楽器のハーモニーの美しさや翳りの濃さもチェコ・フィルに一日の長が有りそうです。

第3楽章の歌い方は美しいのですが、スラブ舞曲のリズムと歌の彫の深さではやはりチェコ・フィルに及びません。

第4楽章での厚く充実した音と迫力は素晴らしいです。この楽章だけはチェコ・フィル盤の熱演にかなり迫っています。フィナーレもチェコ・フィル盤の阿修羅のような追い込みには及ばないまでも相当なものです。

ということで、全体的にチェコ・フィルのライブ盤以上の魅力は感じませんが、なにしろ良質なステレオ録音ですし、アンチェルの数少ないドヴォルザークの至芸を味わえるという点では、ファンにとってはやはり有難い録音です。

なお、このディスクには他には自国のスメタナ、マルティヌ―、それにショスタコ―ヴィチの小品が収められています。

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2013年5月11日 (土)

ドヴォルザーク 交響曲第8番 ズデネェク・コシュラー/プラハ響のライブ盤

Dvorak_sym8_cd102010_2ズデネェク・コシュラー指揮プラハ交響楽団(1967年録音/英Orchestral Consert盤)

こんなCDに興味の有る人は少ないと思います。けれども新宿の中古ショップで偶然目にした僕は飛び付いてしまいました。チェコの名匠ズデネェク・コシュラーは、東京都交響楽団に長く客演してきたので知名度はそれなりに有るとは思います。しかし元々少ないCDの大半が廃盤であり、商業ベースで言えば、既に忘れ去られた存在でしょう。この人の実力を知る者としてはとても残念なことです。しかも、この人の録音は真価を出せている演奏は3割ぐらい。残りは比較的平凡な出来栄えです。打率が決して高くないのです。最高レベルの演奏は、スロヴァキア・フィルとのドヴォルザーク「新世界より」「スラヴ舞曲集」、スメタナ「我が祖国」、そしてチェコ・フィルとのドヴォルザーク「チェロ協奏曲」で、どれもがその曲のベストを争います。

そんなコシュラーのドヴォルザーク第8番には1970年代のスロヴァキア・フィルとのOPUS録音、1990年代のチェコ・ナショナル響とのビクター録音が有りますが、決して悪いとは言わないまでも、特別な閃きを見せた演奏では有りませんでした。ですので今回のCDを目にした時にも期待半ばでしたが、時々かっ飛ばす満塁ホームランの可能性に賭けてみました。

この録音はライブですが、1967年にプラハ響がイギリスのノッティンガムのアルバートホールで行ったコンサートのものです。コシュラーの出世のきっかけとなったミトロプーロス指揮者コンクールでの優勝(但しアバドと両者の優勝)の1963年から4年後で、プラハ響の首席指揮者に就任した年の貴重な記録です。

後年の二つの演奏は、ともにスタジオ録音ということも有って随分大人しく感じました。もう少し大胆さと熱っぽさが有ってよいかなぁと思わずには居られませんでした。ところが、この演奏はさすがにライブの熱っぽさ、それに表情の若々しさと大胆さを感じます。当時のプラハ響は技術的には大分低いように思いますが、それを忘れさせる魅力が有ります。ですので、聴き始めは音の粗さに抵抗が有りましたが、聴き進むうちに徐々に惹きつけられて行きました。

それにしても、やっぱり国民楽派の音楽は同じ血を分けた演奏家のものが良いなぁと、どうしても思ってしまいます。スロヴァキア・フィルやプラハ響はチェコ・フィルと比べると技術的には劣りますが、逆に機能的に成らない素朴さが魅力となるのです。

録音ソースがさほど優れたものではなさそうで、音質的には大して良いとは言えませんが、コシュラー・ファンにとっては聞き逃せない演奏でした。この人はやっぱり良いなぁ。

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ドヴォルザーク 交響曲第8番 セル/チェコ・フィルのライブ盤

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2010年6月13日 (日)

スロヴァキア・フィルハーモニー日本公演 ~スラヴの魂~

Slovak_po スロヴァキア・フィルが3年ぶりに来日しています。チェコを代表するのがチェコ・フィルならば、スロヴァキアを代表するのはスロヴァキア・フィルです。昔から地味なオーケストラでしたが、個人的には30年前に聴いた名匠ズデニェック・コシュラーとのドヴォルザークの交響曲の録音が余りに素晴らしかったので、忘れられない存在でした。とはいえ実際に生の音を聴いたのは、3年前の公演が初めてでした。チェコ・フィルがチェコの高級レストランの味だとすれば、スロヴァキア・フィルは片田舎のレストランの味とでも言いましょうか、実に素朴な音色と味わいなのです。僕がしばしば「本場もの」の演奏に固執するのは、こういう味わいにかけがえのなさを感じるからです。

昨夜、サントリーホールで聴いたプログラムはスメタナの「モルダウ」とドヴォルザークの「チェロ協奏曲」に「新世界より」という、これ以上の組み合わせはないというプログラムです。ツアー終盤の今週、東京芸術劇場と新潟の長岡では、話題の辻井伸行くんがショパンの協奏曲を弾くのと、メインもブラームスの1番です。そちらも興味深いプログラムですが、チケットはどうやら完売しているようです。

さて、昨日のコンサートですが、指揮はチェコのレオシュ・スワロフスキー。日本には何度も来ていますが地味な存在です。ノイマンやコシュラーに指揮を学んで、地元やヨーロッパでは随分と活躍しています。実は3年前の公演もこの人の指揮でしたので、今回も奇をてらわないオーソドックスな演奏だろうとは思っていました。1曲目の「モルダウ」は正にそういう演奏でした。安心して曲そのものの美しさをうっとりと味わえます。2曲目のチェロ協奏曲の独奏は、イスラエル人のガブリエル・リプキンでした。33歳ですから若手です。非常に表現力の豊かな人だなと感じました。ただし僕の席がバックステージで、ちょうどチェロが彼の体に隠れてしまうので、音がはっきり聞きとりづらかったです。ですので、音そのものの評価は出来ないと思います。それよりも感激したのは、オーケストラの響きです。僕はこの曲が本当に好きなのですが、CDで聴いて心の底から満足できるオケの演奏は、コシュラーがチェコ・フィルを指揮した録音(独奏は提剛さん)です。けれども、昨日のスロヴァキア・フィルの響きも本当に素晴らしいものでした。そしてメインの「新世界より」も、当然のことながら、このオケの民族的な響きを堪能できる名演奏でした。スワロフスキーの指揮は3年前よりも随分、テンポの動きや表情づけが大きくなった印象です。といってもアメリカ風やドイツ風の派手な表現とはまるで異なります。演奏がどんなに盛り上がっても、管が弦の音を掻き消すように咆哮することもありません。あくまでも節度があるのです。それでこそボヘミアの音楽は生きます。

アンコールは定番の「スラヴ舞曲集」から急速な曲の作品72の7です。これまで聴いた演奏の中でも特に速く切れの良い演奏だったので、体中の血が踊りました。これこそが本場のスラヴ舞曲ですね。スロヴァキア(スラヴの国)の民族の魂を聴いた気がします。演奏終了後の聴衆の拍手も凄かったです。

せっかくですので、僕の愛聴するスロヴァキア・フィルの名演をいくつかご紹介してみます。

Kosler_dvo9 ズデニェック・コシュラー指揮/ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」(オーパス/ビクター盤) この演奏こそが学生時代に聴いて感激した、コシュラー/スロヴァキア・フィルの名演です。この時にはこのコンビで交響曲全集を残したのですが、現在では全て廃盤です。せめて「新世界より」だけでも再リリースしてほしいところです。ちなみに自分の持っている海外盤CDは第3楽章の頭の音が編集ミスで欠如していますので、最近は仕方無く買いなおした中古LP盤で聴いています。コシュラーはこの後も、チェコ・フィルとのライブ盤、チェコ国立響との新盤を残しましたが、やはりスロヴァキア・フィルとの演奏が一番好きです。

Pesek_dvo9 リボール・ペシェク指揮/ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」(仏GMS盤) チェコの指揮者ペシェクは地味な存在ですが、幸いスロヴァキア・フィルと「新世界より」を残してくれました。デジタル録音でこのオケの音を味わえるのはとても有りがたいです。全集盤ではオケがロイヤル・リヴァプールPOでしたので、個人的には引いてしまいます。ただし、この演奏は速めのテンポで、実にあっさりとしていますので、アメリカ風やドイツ風の演奏スタイルに慣れたファンの耳にはたぶん物足りなく聞こえると思います。

Cci00008ズデニェック・コシュラー指揮/ドヴォルザーク「スラブ舞曲集」(ナクソス盤) コシュラーは「スラブ舞曲集」をスプラフォンレーベルにもチェコ・フィルと録音を残しましたが、それを上回る素晴らしい演奏です。やはりコシュラーはスロヴァキア・フィルと最も相性が良かったと思います。全曲ともローカルな味わいに溢れていて、いかにも農民達の踊りを感じさせてくれますし、作品72-2のドゥムカの情感の美しさは他にちょっとありません。個人的にはノイマン盤よりも好んでいます。録音も優秀ですし、入手もしやすいので絶対のお薦めです。

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2010年1月 2日 (土)

~新春第二弾~ ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 続・隠れ名盤

「新世界より」の隠れた名盤の筆頭はノイマン/チェコ・フィルの1971年ライブ盤だと思いますが、いかんせん廃盤で入手が難しいのが残念です。そこで"隠れ名盤”の続編として、もう1枚僕の愛して止まない演奏をご紹介したいと思います。もっともこの演奏は以前にも愛聴盤の記事の中で一度触れた事は有りますが、改めて詳しくご紹介したいと思うのです。

Cci00053b オンドレイ・レナルト指揮ブラティスラヴァ放送響(1987年録音/Amadis盤) オンドレイ・レナルトは何年も前から日本のオーケストラに客演をしているスロヴァキア出身の指揮者なので、ある程度馴染みが有ると思います。ですがこの人のCDの数は極めて少ないので、中堅の大したことの無い指揮者だと思われている方が多いのではないでしょうか。事実、僕もその一人でした。それでも「新世界より」や「我が祖国」となると、本場物の演奏なら何でも聴いてみたくなるので、この人の新世界を聴いてみたのです。オーケストラはブラティスラヴァ放送響です。ブラティスラヴァはチェコとスロヴァキアが分離した時にスロヴァキアの首都になった都市ですが、決して有名では有りません。この国のオーケストラとしてはズデニェック・コシュラーが率いたことのあるスロヴァキア・フィルのほうがよほど知られているでしょう。スロヴァキア・フィルは二年前に日本公演を聴きましたが、ローカルな音色に味わいの深い素晴らしいオーケストラです。ところがこのレナルト/ブラティスラヴァ放送響のCDを聴いてみて、スロヴァキア・フィル以上にローカルな音色なのに驚きました。もしも日本食に例えて言えば、チェコ・フィルの音は都心の高級料理屋で腕利きの板前さんが料理する極上和食のようなものです。ところがスロヴァキア・フィルやブラティスラヴァ放送響の音は、田舎の民家の囲炉裏端で味わう郷土料理のような味わいなのです。これはどちらが良いとか言うことでは無く、味わいの違いを楽しむべきなのです。そういう意味でこのレナルト/ブラティスラヴァ放送響の演奏は最上の演奏だと思います。これまで宇野功芳先生が推薦されたスメターチェク/プラハ放送響や、コシュラー/スロヴァキア・フィル、ペシェク/スロヴァキア・フィル、ヴァーレク/プラハ放送響といったチェコフィル以外の「新世界より」も聴いてきましたが、最もローカルの味わいが深い演奏はこのレナルト盤です。第1楽章導入部のホルンやティンパニの田舎臭い音色は驚くほどです。しかも主部に入ってからのレナルトの指揮は遅めのテンポで心がこもり切った素朴な味わいが最高です。この演奏には「激情」「演出」「洗練」そんな言葉は全く当てはまりません。第2楽章も同様に滋味に溢れていて実に感動的です。第3楽章、第4楽章も派手さは皆無ですが、充実した素朴な響きは満足感で一杯にさせてくれます。レナルトが他の曲で同じような感動を与えてくれるかどうかは分かりませんが、少なくともこの「新世界より」は他の多くのCDとは一線を画す素晴らしい名盤だと思うのです。

ちなみにこのCDはデジタル録音の現役盤ですが、HMVでは正価でも僅か800円そこそこです。騙されたと思って、是非ご自分の耳でこの演奏をお聴きになられることをお薦めします。このCDにはスラヴ舞曲集作品72から第1、2、7、8番の4曲も入っていて、やはりローカル色溢れる名演です。

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2010年1月 1日 (金)

~迎春2010~ ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 隠れ名盤

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明けましておめでとうございます!新しい年が皆様にとりまして素晴らしい年になりますように心から願っております。

さて、ニューイヤーの音楽といえばヨハン・シュトラウス&ウインナ・ワルツというのが定番です。それに次いでは「新世界より」では無いでしょうか。そこで2010年の聴き初めはドヴォルザークの「新世界より」で行きたいと思います。ところが、ここで大きな疑問に襲われてしまったのです。

どうして新年に「新世界より」なんじゃ~???

この曲は作曲家ドヴォルザークが故郷のチェコを離れて遠くアメリカへ渡り、ヨーロッパ伝統の音楽に新天地の音楽要素を取り入れて作り上げた傑作なので、恐らくは新しい領域(新年)に挑戦しよう!立ち向かおう!という意欲を感じるからなのでしょうね。第2楽章では遠い故郷へ戻りたいというノスタルジーに襲われて挫けそうになっても、第3楽章~第4楽章で一生懸命頑張って勝利を勝ち取るという曲に聞こえるのでしょう。確かに終楽章は華々しい勝利の歌です。新しい年を迎えるのにはとても相応しいかもしれません。

前にも書きましたが、この曲は僕の大好きな曲です。色々な演奏を聴いた回数では一番かもしれません。特に僕はお国もののチェコ、スロバキアの演奏家のものなら何でも聴いてみたくなる「お国もの新世界」オタクと言えるかも知れません。以前の記事ではそんな幾つかのCDについて触れました。<旧記事> ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 名盤

この時には、アンチェル1961年盤、ターリッヒ1954年盤、コシュラー1973年盤をベスト3に選びました。ところが知らぬ事とは恐ろしいもので、まだまだ大変な名盤が存在していたのです。そこでそのCDで本年の聴き始めをしながらご紹介したいと思います。

Dvocci00013 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1971年1月4日録音/PRAGA盤) ドヴォルザークの好きな方ならご存知の通りノイマンはチェコフィルとこの曲に複数の録音を残しています。①1972年(スプラフォン)②1982年(スプラフォン)③1993年ライブ(スプラフォン)④1995年(キャニオン)ですが、いずれも自国チェコフィルの美質を生かし切った名演奏です。但し、この人の特徴としては、少々冷静に過ぎるのです。先代のアンチェルはスタジオ録音では筋肉質で引き締まった造形を持ちましたが、実演になるとしばしば熱く成り過ぎて崩れを見せました。ノイマンはアンチェルほど厳しい造形は持ち合わせませんでしたが、ライブでも冷静で崩れを見せませんでした。それがノイマンの長所でも有り短所でも有った訳です。ところがこの1971年のプラハのドヴォルザークホールでのニューイヤーライブはノイマンが若かったせいも有るのでしょうが気合が入って熱気が前面に出ています。にもかかわらず、アンチェルのスタジオ録音のような筋肉質で引き締まった造形を保っているのです。言わばアンチェルとノイマンの長所を合わせたような演奏なのです。リズムは切れが良く、歌う情感もよくこもっていて正に理想的です。録音もとても優れていて、この時代のライブ録音としては最上の透明感が有り、管と弦とのバランスがベストです。第2楽章の弱音器を付けた繊細な音や、1楽章、4楽章の金管の強奏がとても良く録られています。

ということで、これまではノイマンのこの曲のベストは1981年の二度目のスプラフォン録音かなと思っていましたが、この71年ライブが断然ベスト盤になりました。またそれどころか前述のベスト3を凌駕して、現在はあらゆる「新世界より」の中でもナンバーワンかもしれません。残念な事にこのCDは既に廃盤で滅多に中古店でも見かけませんが、もしも見つけられた方は是非ご購入されることをお薦めします。

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2009年7月20日 (月)

ドヴォルザーク 交響曲第7番 ニ短調op.70 名盤

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ドヴォルザークの交響曲の中では、この「第7番」が「新世界より」「第8番」に次いで人気が高いです。それ以前の交響曲もどれもが佳曲と呼べますが、この3曲では音楽の充実度が明らかに増しています。第7番はドヴォルザークがブラームスの「交響曲第3番」を意識して作曲したと言われますが、確かにそれらしい曲想と重厚な響きを持つ作品になっています。もちろん、他の交響曲のようにボヘミアの雰囲気を漂わせていることには変わらないのですが、最もドイツ的な要素が強いのが第7番です。4楽章構成で、どの楽章も大変に魅力的ですが、個人的には第2楽章の牧歌的なアダージョと第3楽章の哀愁漂う名旋律のスラブ舞曲風スケルツォが大好きです。

ところで、この第7番はイギリスのロンドン・フィルハーモニー協会から依頼されて作曲をし、ドヴォルザーク自身の指揮でロンドンで初演されました。ということは「イギリス」の副題を付けるにふさわしいのは、第8番よりもむしろこちらの曲の方なのです。音楽業界も案外といい加減なものですね。

それでは恒例の愛聴盤のご紹介に移ります。

51stsqodil ジョージ・セル指揮クリーヴランド管(1960年録音/CBS盤) セルのスタジオ録音は大抵の場合で、演奏に冷静過ぎる印象が強く、余り好みません。この演奏はオーケストラのアンサンブルの切れの良さは最高ですし、非常に引き締まった音には凄みすら感じます。ボヘミアの情緒にも決して欠けるということでもありません。けれども、どうしても聴いていて息苦しさが感じられます。第8番のように晩年に再録音を残してくれていたら良かったのですが。

4125wgppchl ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・フィル(1964年録音/スプラフォン盤) コシュラーの録音としては最初期のものでとても貴重です。指揮解釈自体は極めて堅実なもので、少々地味過ぎるほどです。テンポは中庸、大袈裟に歌わせることは有りません。やや面白みには欠けますが、この演奏の最大のポイントは、アンチェル全盛時代のチェコ・フィルの厳しく引き締まった音で第7交響曲が聴けるという点です。これはチェコ・フィルのファンにとっては何物にも代え難いことです。

41mzerdas2lラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィル(1971年録音/グラモフォン盤) 僕が最初に買ったこの曲のディスク(ただしLP盤)はクーベリック指揮ウイーン・フィル(DECCA盤)でした。これは非常に良い演奏で愛聴しましたが、その後ベルリン・フィルとの全集(グラモフォンのLP盤)を買ってからは、愛聴盤はそちらに変わりました。ベルリン・フィルの演奏はスケールの大きさで他の演奏を圧倒しているのと、第7番以外の曲の場合のようにベルリン・フィルの近代的な響きが余り気にならないので好んでいます。

410jypp5j2l__ss500_ ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1972年録音/スプラフォン盤) ノイマンはこの曲を1972年と1981年の新旧2度の交響曲全集の為に録音を行っています。演奏の出来栄えとしては、ほとんど差が有りません。強いて言えば演奏の覇気を強く感じるのが旧盤で、まとまりの良さでは新盤というところです。けれどもその違いは極めて小さいものです。録音もアナログの旧盤とデジタルの新盤どちらも優秀ですので、これは音の好みの問題だと思います。個人的にはどちらかいうと旧盤の方に幾らか惹かれています。

418meqgepcl__ss500_ ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響(1978年録音/オルフェオ盤) ベルリン・フィル盤は非常に聴きごたえの有る素晴らしい演奏ですが、同時にボヘミアの素朴さも求めたくなると、ベルリン・フィルよりも手兵のバイエルン放送響のほうに適正を感じます。従って、この曲についてはその時の気分で聴き分けることにしています。それにしても、クーベリックの演奏で聴くと、この曲の風格が一段も二段も上がったように感じるのは流石です。

Dovocci00052_2 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1982年録音/スプラフォン盤) ノイマンにはこの曲に3種類の録音が有りますが、どれも解釈は似かよっていますし優れた演奏です。ですので、どれを選んでも失敗は有りません。この二度目の録音は、演奏のまとまりの良さでは一番なのですが、逆に特徴が薄く感じられるかもしれません。個人的な好みを言えば、前述の通り旧録音盤と、晩年のライブ盤のほうを僅かに気に入っています。

Cci00006 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1991年録音/CANYON盤) ノイマン/チェコ・フィルの3度目の録音は東京芸術劇場でのライブ盤です。この時のライブの第8番はスプラフォン盤に比べると劣っているように感じるのですが、第7番については逆にスプラフォン盤以上に気に入っています。円熟した演奏でありながら、覇気とスケールの大きさを一層感じさせるからです。一般的にノイマンは個性の無い指揮者と見られがちですが、晩年の一連のマーラー作品の録音などと合わせてそれが大きな誤りであることを充分証明する演奏です。

Cci00055 ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・ナショナル響(1994年録音/ビクター盤) コシュラーは1964年のチェコ・フィルとの録音のあとに、1970年代にはスロヴァキア・フィルと二度目の録音を行なっています。従ってこのチェコ・ナショナル響との録音は3度目になります。ところが8番、9番と違って意外に魅力を感じません。叙情的な部分ではさすがにコシュラーだけあって美しいのですが、緊迫感を要求される部分にそれが欠けている印象です。

ということで、僕が特に好きな演奏は、クーベリックのベルリン・フィル盤とバイエルン放送響盤の2種類、それにノイマン/チェコ・フィルの72年盤と91年盤の2種類です。この曲の持つスケール感とボヘミアの味わいを両立させている演奏は決して多くは無いと思います。

せっかくですので、次回は第1番から第6番までの曲についてを「全集盤」として触れてみようかと思います。

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ドヴォルザーク 交響曲全集 名盤

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