チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、古今の数多くのピアノ協奏曲の中でも最も人気の高い作品でしょう。しかしチャイコフスキーは未完のものも含めれば全部で3曲のピアノ協奏曲を書いています。有名な協奏曲はそのうちの第1番です。そんなことも知らないとチコちゃんに叱られるぞ~
はて。それでは他の2曲はどうでも良い作品なのでしょうか?
確かに第3番は、当初「人生」と名付けた交響曲を作曲途中で破棄してピアノ協奏曲に変更したもので、完成する前にチャイコフスキーが死去したために第1楽章のみが遺作(Op.75)として出版されました。
一方で第2番は1880年に完成し、チャイコフスキーからの第1番の献呈申し出を断っていたニコライ・ルビンシュタインに再び献呈を申し出て、今度は受け入れられました。ルビンシュタインは初演でピアノを弾く予定でしたが、腸結核のためにパリで急死したことから、初演はニコライの兄のアントン・ルビンシテインの指揮でセルゲイ・タネーエフのピアノにより1882年にモスクワで行われました。
初版楽譜は1881年に出版されましたが、1897年にチャイコフスキーの弟子のジロティが一部に手を加えた改定版が出されます。これはチャイコフスキーの意図を逸脱していた為に、1955年にアレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルが自筆譜を元に原典版を復活させました。チャイコフスキー国際コンクールではこの原典版の使用が義務付けられていて、近年は第2番を演奏する奏者も増えているそうです。「2番ではいけないのでしょうか?」 ということは無いのですね!
第1楽章 アレグロ・ブリリアンテ・エ・モルト・ヴィヴァーチェ
第1番にも負けない壮大な楽章で、冒頭から立派で輝かしい管弦楽と共にピアノが激しく入って来ます。楽曲にはそれほど閃きは感じられませんが、初期の交響曲のようでとても分かり易く、チャイコフスキー・ファンには好まれるでしょう。展開部の後の長いカデンツァはピアノの妙技が大きな聴きものです。
第2楽章 アンダンテ・ノン・トロッポ
冒頭にヴァイオリンとチェロのソロによる長く美しい二重奏が奏されてからピアノが入ってくるのがユニークです。中間部でもピアノと管楽器、そして再びヴァイオリンとチェロのソロとの語り合いが非常に美しいです。
第3楽章 ロンド/アレグロ・コン・フォーコ
楽譜の指示通り生き生きと弾むような楽章で聴いていて心が躍ります。その楽想の楽しさはお得意のバレエ音楽のようで、目を閉じればバレエダンサー達が心に浮かびます。こんなに楽しい曲が余り聴かれないなんて勿体ない!
などと言いながら、リリースされているCDの数が少ないこともあり(言い訳)、愛聴盤は少ないです。
イーゴリ・ジューコフ(Pf)、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮モスクワ放送響(1968年録音/ヴェネチア盤:メロディア原盤)
かつては日本でもそれなりに知られたジューコフと、今でも人気の高いロジェストヴェンスキーの共演盤です。1楽章から両者とも絶好調で、ジューコフの打鍵の力強さはギレリス以上に思えます。モスクワ放送響の豪快な鳴りっぷりにも惚れ惚れします。2楽章の二重奏も美しさの限りで、その後のピアノと管弦楽との語らいも非常に魅力的です。3楽章の心の沸き立つような躍動感はロジェストヴェンスキーの真骨頂と言えます。録音も古いわりには明瞭です。写真の協奏曲3枚組セットに収められます。
エミール・ギレリス(Pf)、ロリン・マゼール指揮ニュー・フィルハーモニア管(1972年録音/EMI盤)
ギレリスにチャイコフスキーを弾かせるとやはり最高です。マゼールが統率する管弦楽の鳴りの良い生き生きした演奏に乗って水を得た魚のようです。強音の輝かしさ、力強さは相変らずですし、弱音でも弱くなり過ぎずに旋律の魅力を心から味合わせてくれます。2楽章も美しいですが、ヴァイオリンとチェロのソロの魅力はロジェストヴェンスキー盤には敵いません。3楽章は意外と冷静さを残していて、もう少ししゃにむに突っ走っても良かったような気はします。フィナーレの追い込みは素晴らしいです。2枚組CDに三曲が収められています。
デニス・マツーエフ(Pf)、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管(2013年録音/Mariinsky盤)
上述のジューコフ、ギレリス盤と比べるとずっと新しい録音の為か、曲へのアプローチにゆとりを感じます。冒頭も力むことなく落ち着きが有りますし、緩除部分ではテンポを落としてゆっくりと歌わせます。しかし展開部はスケール大きい管弦楽に乗って強靭な打鍵と正確な技巧に圧倒されます。2楽章のヴァイオリンとチェロのソロとの掛け合いも素晴らしいです。3楽章は快速テンポで飛ばしますが、それでいて優雅さが感じられて良いです。録音は流石に管弦楽の厚い音と、底光りのするピアノの音がしっかりと捉えられています。このCDには第1番も収録されています。
三者のピアノはいずれもロシアンピアノの醍醐味を聴かせているので甲乙つけがたいですが、個人的にはギレリス盤のオーケストラにはロシア的な味が薄いことから、ジューコフ/ロジェストヴェンスキー盤の直球勝負で火の玉のような演奏と、マツーエフ/ゲルギエフ盤のスケール大きく豊かな表現力の演奏を好みます。ただし入手性はギレリス盤が最も良いと思いますのでどうぞお好みで。
<関連記事>
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 名盤
最近のコメント