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2024年5月24日 (金)

チャイコフスキー バレエ音楽「眠れる森の美女」全曲 名盤

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最近、数年ぶりに「白鳥の湖」のバレエを観に行ったのをきっかけに三大バレエをよく聴いています。ところが「眠りの森の美女」をまだ記事にしていませんでしたので今日はこれです。 

チャイコフスキーが作曲した「眠れる森の美女」(英: The Sleeping Beauty)作品66は、「白鳥の湖」「くるみ割り人形」と合わせて“三大バレエ”とされます。 

初演は1890年にサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で行われました。その時の劇場支配人であったイワン・フセヴォロシスキーが、チャイコフスキーにペローの童話「眠れる森の美女」を基にしたバレエ音楽の作曲を依頼したのですが、かつて外交官としてパリに駐在していたフセヴォロシスキーはフランス文化の愛好者でした。 

フセヴォロシスキーはチャイコフスキーへの手紙の中で、ペローの「眠れる森の美女」のバレエ台本を自分が書いたことや、作品の時代背景はルイ14世の様式にしてミュージカル・ファンタジー風に、音楽を宮廷バレエ風なものにしたいこと、終幕にはペローの童話集から長靴をはいた猫、赤頭巾、シンデレラなど沢山のキャラクターを登場させたいことなどを書き記しました。チャイコフスキーはフセヴォロシスキーの台本にすっかり魅了されると作曲を快諾します。
バレエの振付は、マリインスキー劇場の首席バレエマスターのマリウス・プティパが担当しました。 

初演は貴族や批評家からは余り好意的には受け止められませんでしたが、聴衆の間では公演を重ねるうちに大評判となってゆき、その後マリインスキー劇場の重要レパートリーとなります。 

<あらすじ>

プロローグ とある国のフロレスタン王にオーロラという姫が誕生して洗礼式が行われる。式には6人の妖精たちが招かれるが、悪の妖精カラボスは自分が式に招かれなかったことに激怒して、「オーロラ姫は16歳の誕生日に、紡錘(ぼうすい:糸をつむぐ道具)に刺されて死ぬだろう」と呪いをかける。
人々は嘆き悲しむが、リラの精が「呪いを解くことはできないが、弱めることはできる。姫は死ぬのではなく眠りについて、百年後に王子の口づけによって目覚めるだろう」と予言をする。 

第1幕 美しく成長したオーロラ姫の16歳の誕生日となり、姫の元に求婚者たちがやってくる。姫は4人の求婚者と踊るが、その後に姫は見知らぬ老婆から花束を受け取ると、仕込まれていた紡錘で指を刺して倒れてしまう。老婆に変装していたカラボスが正体を現して去っていく。そこへリラの精がやって来て、「姫は予言通りに眠りについたのだ」と告げる。リラの精は、魔法でその場にいる全員を眠らせ、辺りに木々を茂らせて城全体を森で包み込む。 

第2幕 百年が過ぎ、デジレ王子と家来たちが森へ狩りにやってくるが、王子は狩りが楽しく無く、物思いにふけている。そこにリラの精が現れてオーロラ姫の幻影を見せると王子はたちまち姫の美しさの虜となる。王子はリラの精に導かれて城へ行き、そこに眠るオーロラ姫に口づけをする。すると姫は予言通り目覚める。 

第3幕  オーロラ姫とデジレ王子の結婚式が盛大に催される。宝石の精や、様々な童話の主人公たちが招かれていて、長靴をはいた猫と白い猫、赤ずきんと狼、フロリナ王女と青い鳥などがそれぞれの踊りを披露する。人々が祝福する中をオーロラ姫とデジレ王子が踊って幕となる。 

以上ですが、台本はとてもシンプルで分かりやすく、豪華絢爛な舞台が一般庶民には「王宮への憧れ」として受け入れられたのでしょう。それにしても男が美女に弱いのは万国共通。女性だってハンサムな王子様に口づけをされては、そりゃ寝てなんかいられない!ですよね。 

チャイコフスキーの音楽は非常にシンフォニックで美しいです。全体は華麗で明るく、「白鳥の湖」のような哀愁漂う情緒感が薄いので、初めは長い全曲版は馴染みにくいかもしれませんが、聴き込むうちにその夢のような美しさに必ず虜になるはずです。 

それでは愛聴盤をご紹介します。 

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アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響(1974年録音/EMI盤)
チャイコフスキーの三大バレエを全曲録音した指揮者では古くはアンセルメが思い浮かびます。録音された1960年前後では画期的でしたが、現在の耳で満足出来るかは疑問です。そしてプレヴィン盤の登場となります。ちょうど半世紀前の録音で音の鮮度は多少落ちていますが、鑑賞に支障はありません。プレヴィンの指揮は若々しく、生き生きと弾けるリズム感が素晴らしく、バレエの舞台を彷彿させます。劇音楽を得意とするだけにドラマティックな雰囲気も充分です。反面、儚いばかりの情緒感はやや薄く感じられます。ロンドン響は優秀ですが、管弦楽の響きの魅力においては、さすがに後述するコンセルトヘボウやキーロフ(マリインスキー)の持つ美音には一歩及びません。

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アンタル・ドラティ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1979-81年録音/フィリップス盤) 
ドラティは1955年にミネアポリス響とモノラル録音を行っているので、このディスクは二回目の全曲録音です。今回はヨーロッパを代表する王立楽団なので、この作品に相応しいです、と言うことも無いのですが、実際にこの名門楽団の持つ重厚かつ、類まれなほどに美しい芳醇の響きは、ちょっと他の楽団からは味わうことが出来ません。ドラティの指揮はリズムがやや固めでバレエダンサーのリズムカルな舞踏は浮かびません。それは決して重ったるいという意味では無く、それぐらい立派であたかも交響曲を聴くようにシンフォニックだということです。コンセルトヘボウの楽団、ホールの響き、フィリップスによる録音が揃って初めて成し遂げられる名ディスクでしょう。 

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エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立響(1988年録音/メロディア盤) 
スヴェトラーノフのチャイコフスキーは大好きですし、「白鳥の湖」のいかにもロシアらしい豪放さと美感の両立した演奏は絶品でした。もちろんこの「眠れる森の美女」でも夢見るような美しさを聴かせてくれますし、この作品の持つロシア風の味わいにかけても充分に湛えてくれています。ただし問題なのは、壮麗な部分での金管の豪放な鳴りっぷりがいささか過剰気味で、行進曲や三幕の終曲などは、まるで「1812年」でも聴いているようです。その点、後述するゲルギエフ盤は古都サンクトペテルブルクの本家としての品の良さを保持していて、モスクワ派の荒々しさの有る演奏とは一味も二味も違います。 写真は所有する三大バレエのBOXセットです。

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ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管(1992年録音/フィリップス盤)
ソ連時代の名称“キーロフ歌劇場”は現在では元の“マリインスキー劇場”に戻っています。これこそ本家の演奏です。ゲルギエフの指揮はロシア風の味わいたっぷりですが、他のロシアの指揮者よりも洗練されたハーモニーの美しさを求めます。それは西ヨーロッパの演奏家には求められないもので、バランスの良さは比類有りません。このバレエでも華麗な美しさに加えて、ロシア風の味を随所に感じさせます。またリズム感の良さも特筆されます。つまりこれほど、この作品に相応しい演奏の組み合わせは他に有りません。フィリップスによる録音は、管弦楽の夢見るように繊細な美しさと迫力有る響きを忠実に捉えた素晴らしさで、全てにおいて完璧なディスクだと断言します。現在はDECCAから再リリースされています

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