ティーレマン/ウィーン・フィルのブルックナー交響曲第9番
もうひとつ今年リリースされて購入したCDにティーレマン/ウィーン・フィルのブルックナー交響曲第9番がありました。ただし、早くも全集盤化されたのには驚きと大きな不満が有ります。
だって自分も既存の3番、4番、5番、8番と買ってきて、あとは7番、9番ぐらいは買おうかなと思っていました。それが、まだ7番などが出ていない段階での全集の発売です。これまでせっせと1枚づつ揃えてきたファンに、全集を買い直せということでっか!SONYのセールス戦略にはがっかりです。こうなりゃ意地でも全集は買わん!
それはそれとして3月にリリースされた9番ですが、最初に一度聴いたときに、なんだかシューリヒト/ウィーン・フィル盤によく似ている印象を受けました。実際に全体のテンポはティーレマンにしては随分と速めであっさり、サクサクと進みます。特に第1楽章の演奏時間は僅か23分ちょっとと、シューリヒトよりも短いです。しかし演奏はライブですが、さすがウィーン・フィル。当然編集はされているでしょうが、アンサンブル、ハーモニーはライブとしてはほぼ完璧です。
第2楽章スケルツォもシューリヒトのテンポ、演奏時間とほぼ同じで更に似ています。ただ、前半はリズムを刻む厳しさがやや物足りません。中間部の寂寥感もシューリヒトの方が上です。しかし後半は俄然興が乗って来て聴き応えが増すのは実演ならではです。
さて、かなりユニークなのが第3楽章アダージョです。冒頭、弦楽に少しも力こぶが入らずに、淡々と奏されます。ありゃ、なんと気の抜けた演奏か。。。いや、しかしまてよ、意図的にサラリと流しているのかも?と困惑させられます。しかし聴くうちに、これはことさら仰々しく思いのたけをぶちまけるような演奏とは真逆の演奏であることに気づかされます。特に弦楽が一聴するとシューリヒトよりも淡白な演奏に感じられますが、実はその裏には深い深い情感が秘められています。それを感じた途端にこれはとんでもなくユニークで千利休のわび茶のように奥深い味わいの有る演奏であることに気付きます。終結部のトゥッティも迫力は有りますが騒々しくならないのは良いです。ただ、ハーモニーがパーフェクトでは無いので、チェリならダメ出しするかも(笑)。
9番のディスクとしては自分はシューリヒト/ウィーン・フィル盤とヨッフム/ミュンヘン・フィル盤を双璧として好みますが、それに続くカイルベルト/ハンブルクやヴァント/NDRの東京ライブと並びそうです。
ティーレマンのこのシリーズでは、4番が最も優れていると思いますが、この9番も8番と並ぶ素晴らしさです。やはりティーレマンのブルックナーは素晴らしい!ぜひ全集盤を購入されてください(笑)。
クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(2022年7月28、30日録音/SONY盤)
録音会場:ザルツブルク祝祭大劇場
ノーヴァク校訂原典版(1951年出版 新全集)使用
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