« 2023年1月 | トップページ | 2023年4月 »

2023年2月

2023年2月11日 (土)

シベリウス 交響曲全集 クラウス・マケラ/オスロ・フィルの新盤

Sibelius840

クラウス・マケラ指揮オスロ・フィルハーモニー管弦楽団(2021年録音/DECCA盤) 

フィンランド出身の若手指揮者クラウス・マケラは1996年生まれなので、まだ今年で27歳です。12歳からシベリウス・アカデミーでチェロと指揮を学びましたが、指揮はあの“隠れた手”と呼ばれるフィンランドの名教授ヨルマ・パヌラの門下です。 

マケラは若くしてスウェーデン放送響の首席客指揮者に就いたかと思えば、2020年にはノルウェーのオスロ・フィルの首席指揮者に、2021年にはパリ管の音楽監督に就き、ついに2027年からはロイヤル・コンセルトヘボウ管の首席指揮者に就任する予定という驚異のスピード出世ぶりです。 

そんなマケラがデッカと専属契約を結び、最初の録音となったのが、オスロ・フィルとのシベリウス交響曲全集です。昨年のリリース時から興味は有りましたが、オーケストラがフィンランドでは無くノルウェーの団体なので、ちょっと間を置いてしまいましたが、今回ようやく聴いてみました。 

順に聴いてみますと、1番は予想していた通りオスロ・フィルらしい穏健な響きで、弦楽がとても美しい反面、木管の民族的な味わいや金管の荒々しさが不足していて物足りません。もちろんシベリウスなのでロシア風に爆演されても困りますが、もう少し北の国の厳しさを感じたいです。ただ、旋律を息長く歌わせるのはマケラの魅力です。録音も素晴らしいですし、こうした優しさのある1番も楽しいです。 

2番はゆっくりしたテンポで開始します。北海の押し寄せる荒波を想うには厳しさが足りませんが、広々とした空の大気を感じます。良く歌い、ロマンティックで、これまでのフィンランド指揮者のシベリウスとはタイプが違います。 

3番は弦楽のがっちりと明確なアンサンブルで開始しますが、立派過ぎて曲の素朴感が薄いと言うのは天邪鬼?この曲にスケールの大きさを注ぎ込んだ点は特筆もので、2楽章の寂寥感、終楽章の広がりと美しさにも惹き込まれます。 

4番はとかく晦渋と言われる曲ですが、この演奏は非常に聴き易いです。メリハリが実に上手く付いていて、良く歌ってロマンティックさを感じさせてくれます。ハーモニーも非常に美しく、この曲が難しいと思われる方には一番にお勧めしたいです。 

5番はオスロ・フィルの清涼な音色がそのまま生かされています。早春の光が明るく感じられ、音楽が大気中に広がってゆくようです。ただし、北欧の自然の厳しさや孤高さが幾らか薄く感じられます。終楽章で力み無く壮大な広がりを感じさせるのは素晴らしいです。 

6番はオスロ・フィルの弦楽が美しく、心に沁み込んできます。ロマンティックな味わいが強く、晦渋さが無いことから親しみ易いです。あえて言うなら、この作品の深遠さが幾らか薄く感じられますが、それもまた長所と短所が表裏一体だからでしょう。 

7番は本当に美しい演奏です。しかしこの作品には彼岸のような、現世を超越した雰囲気を求めてしまいます。その点、ほんの僅かながら現世的な美のように感じられなくも有りません。これだけ美しければいいじゃないかという気にもなるのですが。 

個々の曲について好みが出るのは当然ですが、全集として非常に新鮮で、マケラの若き才能を嫌と言うほど感じさせられる出来栄えです。全体の爽やかさはマケラの資質とオスロ・フィルの特徴が見事に合致したものでしょう。録音も優秀です。

なお、この全集には最後の交響詩「タピオラ」と、交響曲第8番と思われる自筆のスケッチを基にオーケストレーションが施された「3つのフラグメント」が収録されています。

オーソドックスなシベリウスの交響曲全集としては、ベルグルンド、カム、ヴァンスカなどのフィンランドの楽団の演奏によるものを本命としたいですが、この全集は非常に楽しめます。ですので、いずれ母国の楽団と再録音をしてくれたら嬉しいです。 

ちなみに今年の秋には、マケラとオスロ・フィルの来日ツアーが有るようです。ちょっと聴いてみたいですね。

<関連記事>
シベリウス 交響曲全集 名盤

| | コメント (2)

« 2023年1月 | トップページ | 2023年4月 »