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2022年12月27日 (火)

ブラームス 「ドイツ・レクイエム」Op.45 名盤 ~人は皆 草のごとく、草は枯れ、花は散る~

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今年もいよいよ終わりに近づきました。もう三年目となる新型コロナ禍は未だに終息には至っていませんし、プーチン/ロシアによるウクライナ侵攻、安倍元総理銃撃事件など衝撃的な事件が起きて、本当に不穏な一年でした。ですので、第九で幕を閉じるのも良いのですが、むしろ「慰めの音楽」であるブラームスの「ドイツ・レクイエム」で一年を締めくくりたい気持ちになりました。

この曲は、過去に二度記事にしたことが有りますが、その後に聴いた演奏も多数あるので、それらをまとめてリメイク版として書き直してみました。

ブラームスの「ドイツ・レクイエム」は宗教合唱曲の大傑作であり、人によってはシンフォニー以上に高く評価します。確かにこの曲は、あの第4交響曲をも凌駕するかもしれません。それだけ素晴らしい作品です。演奏によっては70分を越える大作ですので、最初は馴染むのに時間がかかりますが、繰り返して聴いているうちに、その奥深い魅力に誰しもが惹き込まれずにはいられないでしょう。

ブラームスが「レクイエム」を書こうと思ったのは、恩師ロベルト・シューマンの死去で、葬送カンタータの作曲を思い立ったことからです。けれども曲の一部を書いたところで創作は止まってしまいます。それを数年後にようやく完成させるきっかけとなったのは、今度は自分の母親クリスティアーネの死だったのです。

通常「レクイエム」というと、カトリック協会のミサの典礼文になるので、言葉はラテン語です。ところがこの作品はプロテスタントの信者であったブラームスがマルチン・ルター訳のドイツ語の聖書から選び出して曲にしました。ですのでこれはミサ用では無く、コンサート用の作品なのです。大バッハの影響を受けている部分が少なからず有りますが、声楽曲として素晴らしく充実しています。作品番号からも分かるように、この作品は交響曲第1番よりも以前の作品ですが、オーケストラと合唱の重厚な響きは紛れもないブラームスの作品です。

全体は7曲構成ですが、各曲の概要は次の通りです。

第1曲 悲しんでいる人たちは幸いである。彼らは慰められるであろう。 非常に美しく厳粛な曲です。この曲ではヴァイオリンが演奏をしませんので、音色がとてもくすんでいます。

第2曲 人は皆 草のごとく、その栄華は草の花に似ている。草は枯れ、花は散る。 葬送行進曲ですが、悲しみだけではなく威厳も美しさも有ります。とても聴き易く魅力的ですので、全体に中々馴染めない方は、この曲だけを取り出して聴くのも一つの方法だと思います。

第3曲 主よ、私の一生があとどれぐらいあるかを私に知らせ、命のはかなさを教えてください。 独唱バリトンも合唱も素晴らしいですが、最後のフーガは堂々としていて大バッハを思わせます。

第4曲 雲の中で天使が歌う 比較的短めの曲で、7曲のちょうど真ん中に間奏曲のように置かれています。清らかな合唱が非常に美しく、正に天国的です。

第5曲 あなたがたも今は憂いあり 独唱ソプラノが静かに歌うこの曲も短めですが、やはり味わい深いです。

第6曲 この地上には永遠の土地は無い カトリックの典礼文で言えば「怒りの日」に相当しますが、ブラームスは歌詞から「最後の審判」を外しています。現世で死せるものは最後のラッパにより、誰もが天国に迎えられる、と解釈できそうです。曲の後半の壮絶な盛り上がりは圧巻で、ヴェルディのそれをも思い出しそうです。壮大に続くフーガは正にこの曲の最高の聴きどころです。

第7曲 今からのち、主にありて死ぬ人は幸せである。 終曲は優しく慰めに満ちています。死により天上で永遠の命を与えられる、と美しく歌われます。

以上ですが、この曲の歌詞中には“Herr”(主よ)という言葉が何度となく出て来ますが、“Jesus”(イエス)や“Christe”(キリスト)という言葉は一度も出て決ません。つまり、この曲のテーマは”イエスの死・犠牲による救済”では無くて、もっと人間的な「慰め」であることが読み取れます。

この曲は歌詞がドイツ語ですので、合唱はドイツ語を母国語とする団体が理想的です。というのも、そうでない国の合唱団だと大抵は子音の発音が曖昧になってしまっていて違和感を感じます。ただしハーモニーとしての美しさに関してはどこの国でなければということは有りません。
これだけの名曲なので余り話題にならないディスクにも素晴らしいものは多く存在しますが、何はともあれ現在の愛聴盤をご紹介します。書き直しに辺り、以前の記事での感想と多少変わったものも有ります。

Bra81gfqqlsnzl_ac_sl1300_ ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィル/楽友協会合唱団(1947年録音/EMI盤) カラヤンは第二次大戦後に連合軍当局によりドイツ・オーストリアでの活動を禁止されましたが、活動解禁後の初コンサートがこの曲だったそうです。但し、これはEMIのウォルター・レッグのプロデュースによるセッション録音です。まだ若きカラヤンの端正でストレートな表現が印象的で、後年の演奏に見られる表面的に磨き上げるカラヤンらしさが無いのが好ましいです。良く言われるように基本的にアマチュアの楽友協会合唱団の質は必ずしも最上では有りませんが、柔らかみのあるコーラスには”慰め”を感じさせます。またソリストのシュヴァルツコップとホッターの名唱は全体の印象を大きく高めています。録音はモノラルですが、年代を考えると明瞭で鑑賞には充分耐えます。

Brah-71m56wpho1l_ac_sl1425_ ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ストックホルム・フィル/合唱団(1948年録音/EMI盤)LP盤時代から、録音の悪さで知られるストックホルムにおけるライブで、第1曲冒頭から情けない音に閉口しますが、徐々に慣れることで聴き易くは成ります。迫真の合唱も胸にずしりと響きます。第2曲以降は、更にフルトヴェングラーの魔力にかかった腹の底まで響き渡る壮絶な演奏に圧倒されます。音楽の深淵に潜り込むような徹底した表現ぶりで、こうなると解釈がどうの、演奏スタイルがどうのと言う気にも成れません。この大河のような奔流に、ただただ身を任せることしか出来ません。写真のブラームスBOXで所有しますが、このマスタリングは案外良好だと思います。

Brah0109511_7362539 ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィル/ウェストミンスター合唱団 (1954年録音/SONY盤) ワルターもこの曲は頻繁に演奏していたようですが、残念ながらステレオ録音が有りません。比較的録音が良いものとしてはこのCBSのセッション録音が有ります。フルトヴェングラーのライブのような物々しさは当然有りませんが、ソリストにイルムガルト・ゼーフリートとジョージ・ロンドンを得て、恰幅の良い堂々たる演奏を繰り広げています。合唱はおおらかで元気が良い分、繊細さはやや薄い印象です。ワルター自身、そのようなことをどこかで漏らしたという話も有りますが、この録音では正当な評価は難しい気がします。とはいえ、この生命力と慰めの両方に溢れる演奏は、やはりワルターならではと言えそうです。

Brah-71gudma610l_ac_sl1200_ ルドルフ・ケンペ指揮ベルリン・フィル/聖ヘドヴィヒ大聖堂聖歌隊(1955年録音/EMI盤) ベルリンのイエス・キリスト教会でのセッション録音です。第1曲から聖ヘドヴィヒ聖歌隊は厳かな歌声で、本物のミサを聴く気分です。第2曲でも厳かさをそのままに保ちます。進む足取りも緩やかで、ことさら劇的に盛り上げようとしないのが逆に神々しさを感じさせます。エリザベス・グリュンマーの美しい声と感情表現は流石ですが、DF=ディースカウが後年の狡猾ささえ感じられる過度な表現が見られないどころか、真実味の有る真摯な歌唱なのが胸に迫ります。ベルリン・フィルもまだドイツ的な暗い音色を残している時代なので、同質性を持つ合唱と渾然一体となり非常に素晴らしいです。これはケンペの特筆すべき遺産の一つだと思います。モノラル録音なのが残念ですが、写真のオランダ盤のリマスターは良好です。 

Brah-uccg90354_dyr_extralarge フリッツ・レーマン(指揮) ベルリン・フィル/聖ヘトヴィヒ大聖堂聖歌隊、ベルリン・モテット合唱団(1955年録音/グラモフォン盤) ロッテ・レーマンの弟であるフリッツ・レーマンは、宗教合唱曲の演奏に定評があり、グラモフォンがアルヒーフ・レーベルの中心指揮者として計画をしましたが、僅か51才で「マタイ受難曲」の演奏中に急逝してしまいます。その後継となったのがカール・リヒターであるのは言うまでも有りません。この「ドイツ・レクイエム」はその亡くなる前年にベルリンのイエス・キリスト教会で行われたセッション録音です。第1曲から非常にゆっくりとして厳かな雰囲気に満ちていて、どこかクナッパーツブッシュの「パルジファル」を連想します。奇しくもEMIの同年録音のケンペ盤と同じオーケストラと合唱団ですが、合唱の美しさと完成度、それによる感銘度合いはケンペ盤を上回ります。ベルリン・フィルの音にも何と心が籠っていることでしょう。ソリストのマリア・シュターダー、オットー・ヴィーナーも素晴らしいです。モノラル録音ですが、ケンペ盤以上に優秀な音質です。

Klempe77d オットー・クレンペラー指揮ウィーン・フィル/ウィーン楽友協会合唱団(1958年録音/テスタメント盤) クレンペラーには後述のフィルハーモニア管とのEMI録音も有りますが、これはその3年前のウィーンでのライブ録音です。但し、これはボックスセットの中の付録盤です。ソリストはウィルマ・リップとエーべルハルト・ヴェヒター。コーラスはウィーン楽友協会合唱団です。1950年代の演奏ですので、合唱団もオーケストラも精密さにおいては緩さが有りますが、その甘く柔らかい音が肌のぬくもりを感じさせ、優しい表情が胸に染み入ります。クレンペラーの指揮は普通の速さのインテンポで、ディナーミクの変化が大きく、時には大胆なほどですが、それが少しもわざとらしくなく好感が持てます。モノラル録音ですが、音は良好で細部も明瞭に聴き取れます。

Schuli50032_0 カール・シューリヒト指揮シュトゥットガルト放送響/合唱団(1959年録音/Tresor盤) これはシュトゥットガルトでのライブ録音です。フランクフルト放送からの応援を得た合唱団がとても力強く魅力的です。シューリヒトのテンポは沈滞することなく速めですが、流石はシューリヒトで情感溢れる味わいに富んでいます。ソリストのマリア・シュターダー、ヘルマン・プライも素晴らしいです。明瞭なモノラル録音ですが、フォルテで高音が歪むのが残念です。この演奏は、以前archiphonから出ていましたが、現在所有しているTresor盤の音質は全く同じです。

Brah51vyhzqgmol_ac_ オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管/合唱団(1961年録音/EMI盤) クレンペラーはひたすらインテンポを守り牛車のごとき指揮ぶりです。そのテコでも動かない堅牢さがドイツ的だと言えないことも無いのですが、オーケストラの響きと合唱団の発声がやはりイギリスの団体だと感じさせてしまいます。ただ合唱は美しいので、ここは好みの問題と成ります。管弦楽に関しては金管を要所で目立たせるのが面白いです。ソリストでは、この時のFディースカウには上手さが時々鼻に付くように感じられますが、シュワルツコップが素晴らしいです。録音は当時のEMIの水準レベルなものの、コーラスの強音で幾らか歪むように感じます。それでもクレンペラーの演奏としてはこちらがスタンダードとなるでしょう。

Brah51wh2nul9xl_ac_ ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル/ウィーン楽友協会合唱団(1964年録音/グラモフォン盤) 上述したウィーン・フィルとの1947年盤に続く2度目の録音になりますが、カラヤンはこの後も1976年にベルリン・フィルと、1983年にウィーン・フィルと再録音を行い、更には古いライブ盤や映像ものも有ります。複数録音の多いカラヤンのレパートリーの中でも特に多い作品です。ベルリン・フィルが暗くドイツ的な響きを失う前の‘60年代の録音なのですが、カラヤン特有の磨き抜かれた音と表情付けが、確かに「美しい」と言えば美しいのですが、このような曲の場合には、それが虚飾に彩られた感無きにしも非ずです。その点、1947年盤ではストレートに演奏に感動出来ました。もちろんそれも聴き手の好みの問題ですから、実際に聴き比べられることをお勧めします。ソリストのグンドゥラ・ヤノヴィッツは美しいですが温かみに欠けます。エーベルハルト・ヴェヒターは悪くはありません。合唱はこの団体のおおらかさが“慰め“を感じさせて魅力的です。ベルリン・フィルを起用しましたが、録音はウィーンのムジークフェラインで行われましたが、この年代としては優れています。

Brahms_koch_deutschesa_requiem ヘルムート・コッホ指揮ベルリン放送響/合唱団(1973年録音/Berlin Classics盤) コッホはドイツの合唱指揮者ですが、そのコッホがドイツのオーケストラと合唱団を指揮した演奏で、第1曲から合唱の美しさに感心します。第2曲あたりは力強さよりも声の美しさが目立つので幾らか物足りなさを感じます。それでも中間部の合唱はやはり美しいです。コーラスパートの対旋律もとてもよく聞き取れます。ソリストに関してはアンナ・トモワ=シントウは美しいですが、ギュンター・ライブは線が細い印象です。オーケストラはあくまで合唱の脇役であり、完全に主役は合唱です。全体的に劇的な表現は行わないので地味ですが、この曲を宗教合唱曲的に聴かれたい方には良い演奏だと思います。但し録音のせいか、合唱の強音がザラつき気味なのはやや気に成ります。

Brahams_re_607 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送響/合唱団(1978年録音/audite盤) これはミュンヘンでのライブ録音です。テンポは比較的速めで颯爽と進み行きますが、リズムが厳格なのでドイツ的ながっちりとした手応えも感じさせます。第6曲は凄まじく白熱化して聴き応えが有ります。合唱はとても明瞭で美しく、またドイツ語の発音も明確に聞きとれます。ソリストはエディット・マティスがやはり流石の美しさですし、ウォルフガング・ブレンデルもまずは手堅いところで悪くありません。録音はとても優れていて、響きが自然で柔らかいのにもかかわらず分離に優れます。低域には量感が有り、低弦群やティンパニに重量感を感じられて良いです。

Bra792644l6pgqj1073901 ベルナルト・ハイティンク指揮ウィーン・フィル/国立歌劇場合唱団(1980年録音/フィリップス盤) ハイティンクは長く率いたコンセルトヘボウとはオケの響きの良さから良いと思うものも多いのですが、それ以外はそれほど好んでいません。この演奏は遅めのテンポで静かに始まり、徐々にスケール壮大になってゆくパースペクティブの良さは見事です。名合唱指揮者バラッチュがまとめ上げた合唱は素晴らしいですが、ソリストのヤノヴィッツは既にピークは過ぎた印象なのと、クラウゼは幾らか外面的に聞こえるというマイナスが有ります。全体的に彫が深く美しさが有るのですが、深いところでの祈りに欠ける印象で感動に直接結びつきません。録音も優秀ですし音そのものにはかなりの圧力が有るのにもどかしいです。

Brah71ds2mhnmal_ac_sl1200_ ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン放送響/合唱団、ミュンヘン音楽大室内合唱団(1983年録音/オルフェオ盤) ミュンヘンのヘラクレスザールでのライブ録音です。サヴァリッシュがミュンヘンで活躍した時代の演奏には名盤が多いですが、この「ドイツ・レクイエム」も例外ではありません。若い頃の熱く速い演奏スタイルと比べると、落ち着いた円熟ぶりを感じさせますが、さりとて重過ぎるような演奏ではありません。ドイツ的でオーソドックスな演奏です。オーケストラも合唱も優秀で、さらにソリストのマーガレット・プライスは非常に美しく、トーマス・アレンも太めの声質のバリトンで好ましいです。同じオーケストラ、同じバイエルン放送録音のクーベリック盤と幾らか重なる印象を受けますが、全体の完成度では上回り、感銘度合いにおいてもかなり迫ると言えるのではないでしょうか。余り話題には上がらない盤なのは残念です。なお、サヴァリッシュには若い頃のウィーン響とのセッション録音も有りますが未聴です。

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クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィル/合唱団、BBCシンフォニー・コーラス(1984年録音/EMI盤) EMIのセッション録音ですが、テンシュテットにはこの他にBBCレーベルのライブ盤も有ります。そちらは未聴ですが、このEMI盤は中々に聴き応えが有ります。ゆったりとした構えのスケールの大きい演奏で壮大さも有りますが、セッションのせいか熱く成り過ぎることがありません。それでも時にこの人らしいドラマティックな顔を見せたり、弦楽に濃い表情付けが有ったりもします。合唱は透明感が有り美しいですが、英国のコーラスなので発音も含めてドイツ的な重さに欠け、何となく英国音楽のようにも聞こえます。ソリストのジェシー・ノーマンはさすがの美声ですがドスが効き過ぎているのが難点で、ヨルマ・ヒュニネンは歌い方がオペラっぽいのがいま一つです。録音はEMIらしいホールトーン的なもので、曲には合っています。

Bra877 ヘルベルト・ケーゲル指揮ライプチヒ放送響/合唱団(1985年録音/カプリッチオ盤) ケーゲルもまたドイツ人で初めは合唱指揮者でした。良い意味で神経質なほどに繊細な印象です。合唱の弱音が非常に美しく、厳かに静寂を保っている部分はさしずめ天国からの調べのようです。神々しささえ感じてしまいます。オーケストラも合唱と溶け合ったハーモニーが美しさの限りです。ケーゲルらしい非常に深みのある素晴らしい演奏だと思います。それでいて第2曲や第6曲などは非常に壮麗に盛り上がります。ソリストではソプラノのマリアンネ・ヘガンデルは平均的ですが、バリトンのジークフリート・ローレンツの真摯な歌唱が秀逸です。 ライプチヒの教会で行われた柔らかで広がりの有る録音も優秀です。それにしても、この録音から5年後にピストル自殺をしてしまうケーゲルはこの曲をどのような心境で指揮していたのでしょうか。

Brahmsa_req カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン・フィル/ウィーン楽友協会合唱団(1987年録音/グラモフォン盤) 遅めのテンポで悠然とした構えですが、非常に流麗で耽美的なまでの美しさが特徴的です。合唱とオーケストラのハーモニーの美しさは特筆に値します。但し、音がレガートに過ぎますので、ブラームスの音楽の持つドイツ的な圭角が失われてはいます。ソリストのバーバラ・ボニーはとても美しいですが、アンドレアス・シュミットは幾らか深みに欠けるようにも思います。曲の演奏全体としては、こと深刻さは余り感じませんが、壮麗で美しさと幸福感に満たされた良い演奏だと思います。

Bra78 ダニエル・バレンボイム指揮シカゴ響/合唱団(1990年録音/ERATO盤) バレンボイムの二度目の録音ですが、故宇野功芳先生が推薦していたのを記憶しています。確かにそれだけの演奏で、管弦楽も合唱も明瞭で澄み切ったハーモニーが美しいです。テンポもゆったりとして風格が有り、第2曲、第6曲などはスケール壮大で聴き応えがあります。シカゴ響の重量感も特筆されます。但しソリストに関してはバリトンのトーマス・ハンプソン、ソプラノのジャネット・ウイリアムス、どちらも余り良いとは思えません。当然のことながら全体はドイツ・オーストリア的とはちょっと違う響きの演奏ですが、逆に暗い響きが嫌いな人には良いのではと思います。

なにしろ名盤が多くて、どの演奏にも良さを感じますが、それでも自分が特別な愛着を感じるものとしては、フリッツ・レーマン盤とヘルベルト・ケーゲル盤の二つとなります。それとカラヤンの1947年盤とフルトヴェングラーの1948年盤は番外として上げたいです。

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コメント

あけましておめでとうございます。
その節はいろいろありがとうございました。
当方、いろいろあってしばらくご無沙汰しました。まめに閲覧して興味深い記事を拝見してます。また、何か思いついたら書き込みますので今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: ふうさん | 2023年1月 1日 (日) 18時43分

この曲のような長大な声楽曲で半数近くがモノラル録音なのは流石にどうかなと。
こうした著作権切れの演奏は、YouTubeはじめ各種サイトで無料で聴くべきなのでは?
また、せっかく聴き直した上で書かれているのであれば
①ステレオ録音・デジタル録音の名盤=定番=一般的な推薦盤
②ヒストリカル録音
③個性的・異端な演奏(チェリビダッケとか!)もしくは古楽器演奏
の3つに分けて、それぞれランキングした方が読みやすいのでは?

投稿: 宇宙刑事 | 2023年1月 3日 (火) 17時23分

ふうさん

明けましておめでとうございます。
いえいえ、お時間の有るときに気ままにコメント頂けたらと思います。
こちらこそどうぞよろしくお願いいたします!

投稿: ハルくん | 2023年1月 3日 (火) 17時33分

宇宙刑事さん

ご親切に色々とありがとうございます。
ですが、なにも名盤ガイドを書いているわけでも何でもなく、単なる個人の愛聴盤紹介です。
モノラル盤が多いのは趣味の問題で、自分の基準で鑑賞に耐えるものは上げています。近代管弦楽曲で自分でも聴かないような古い録音は当然ながらあげませんので。

細かく分類してランキングするというのは良い方法だとは思いますが、毎回悩みそうなのでどうでしょう。

YouTubeは皆さん大いに聴かれると良いと思いますが、CDと同じ音響環境で聴いている人は少ないのでは?便利な反面、音のハンディは感じます。利用の仕方ですよね。

投稿: ハルくん | 2023年1月 3日 (火) 17時48分

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