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2021年11月18日 (木)

ブルックナー 交響曲第4番「ロマンティック」 クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー CD新盤/決定盤

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ティーレマンのウィーン・フィルとのブルックナー交響曲全曲録音の第3弾は第4番「ロマンティック」です。先行した第8番第3番の素晴らしさから、今回の第4番も素晴らしいだろうと予測はしていましたが、いざ聴いてみると、予想した以上の『圧倒的な素晴らしさ』でした。演奏楽譜はハース版が使用されています。

全体のテンポはゆったりとしてスケールは大きく、どの楽章をとっても慌てて走り出したり、前のめりになるような部分は一箇所として見当たりません。それでいてもたれることも無く、ごく自然な大きな呼吸感と共に安心して身を任せられます。ブルックナーの演奏において、この「呼吸感」はとても大切で、例えばチェリビダッケのブルックナーは往々にしてスケールは巨大でもテンポが遅すぎて息が止まりそうになります。しかしティーレマンではそうは成りません。あくまでも大自然や宇宙と向かい合っての無理ない息づかいを与えられます。ティーレマンのブルックナーやワーグナーに共通した素晴らしさです。但し、これがベートーヴェンやブラームスの場合は、テンポの変化にごく僅かですが不自然さが現れます。ティーレマンの音楽の特徴です。

この第4番の素晴らしさは、もちろんティーレマンの指揮に有りますが、ウィーン・フィルの能力の高さにも負うところが大きいです。トゥッティでフォルテシモとなっても響きの美しさを失いません。相当な迫力で金管を鳴らしても騒々しくは成りません。そのハーモニーの美しさは特筆ものです。弦楽器の微に入り細にわたるデリカシー溢れる表情にも感心するばかりです。どの楽章がどうで、どの部分がこうでという説明はとても仕切れません。何故なら、最初から最後までどこをとってもそれが当てはまるからです。

クレジットに寄れば、録音は3番、8番を収録したウィーンのムジーク・フェラインでは無く、ザルツブルグの祝祭大劇場で2020年8月19日から22日の4日間で行われたと記載されています。一部のサイトに”ライブ録音”との記述も見かけましたが、疑わしいかもしれません。聴く限りではセッション録音の完成度を感じるからです。

録音の音の良さについても特筆に値します。大ホールの中央辺りの席で聴くような臨場感のあるふくよかな響きと明瞭さの絶妙なバランスで美しく録られています。

ティーレマンの指揮、ウィーン・フィルの優秀さと音の美しさ、そして録音の優秀さ、という三拍子揃って文句の付けようのない名盤の登場です。過去のこの曲の全てのディスクを凌駕すると言って過言ではありません。

こうなると、チクルスの残り、特に5番、7番、9番が楽しみでなりません。そして全曲が完成した暁には、最高のブルックナー全集が誕生することになるでしょう。既にそれは約束されたも同然のように思います。

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ブルックナー(交響曲第4番~6番)」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。

>ザルツブルグの祝祭大劇場で2020年8月19日から22日の4日間で行われたと記載

8月22日(午前11時からのマチネ)のライブ映像がBD(C MAJOR 805204) とDVD(C MAJOR 805108)で発売されておりますが、ご覧になられましたでしょうか? 私はBDのほうを入手し堪能しました。昨年2020年はザルツブルグ音楽祭100周年でしたが、コロナ対策のため、聴衆を3分の1にしてのコンサートだったようです。

気に入った演奏であれば、映像付きも発売されている場合は、音だけとは比べものにならないくらい情報量を得られますため、迷わずCDと両方購入してしまいます(笑。
まだ未入手でしたら、きっと多くの発見がありますので、絶対のおすすめですよ!

投稿: 斎藤 | 2021年11月19日 (金) 09時51分

おはようございます。

ティーレマンとウィーンPOによるブルックナーの4番、いいですよね。「一部のサイトに”ライブ録音”との記述も見かけましたが、疑わしいかもしれません。聴く限りではセッション録音の完成度を感じるからです」とのことですが、最近はセッションでもライブでも繋ぎ合せればどっちでもいいや、という風潮ですが、それだけはちょっと寂しいです。

昔は、ライブとレコードのベームは乗りが全然違うというふうに、特にライブでは一回一回の演奏の乗りが全然異なるのが当たり前だったのですが(だからNHK・FMで海外ライブ録音を聴くのを楽しみにしていた)、今の超一流の演奏家はセッションでもライブでも毎回同じテンションを保ち続けられるのでしょうかね?

スポーツでは、たとえばプロ・ゴルフでも、優勝した翌週が予選落ち、そのまた翌週はぶっちぎりで優勝なんてことは当り前ですが、本当はそういう演奏家のAIじゃないからこそな人間らしいところも鑑賞したいです。

投稿: 照る民 | 2021年11月19日 (金) 11時05分

斎藤さん、こんにちは。

映像の方は観ていません。オペラは別として、オーケストラの映像ディスクはほとんど購入しないのです。極端な言い方をすると、映像が演奏の集中鑑賞に邪魔することもあるからです。もちろんこれは自分の場合であって、そうでない方は良いですよね。

投稿: ハルくん | 2021年11月19日 (金) 12時45分

照る民さん、こんにちは。

ライブ録音と称しながら、音の切り貼り編集が行われるのは、今に始まったことでもなく、有名なフルトヴェングラーのバイロイト第九もそうですね。
ただ、一音たりとも編集するのが悪いかと言えば、そんなことは無いと思います。レコード、CDは繰り返し鑑賞するものですので、それに耐えるように手を加えるのには抵抗ありません。
部分録りを重ねてのセッション録音では演奏の躍動感に影響は出ると思いますが、たとえばフルトヴェングラーがシューマンの4番のセッション録音の時に「これから1回だけ通して演奏するので、それが気に入れば発売しろ、気に入らなければしなくて良い」とか言って振り出した話は有名ですね。要は環境だけでもなく集中の問題でしょうね。

投稿: ハルくん | 2021年11月19日 (金) 12時55分

こんにちは。

ティーレマンとウィーンPOでは、ブルックナーの8番や3番の録音は聴きましたが、新しい4番は未聴です。8番3番は素晴らしい演奏だとは感じましたが、ティーレマンという指揮者については、クラシック界を背負う指揮者になるんだったら、何と言ったらいいいか、もう少しだけ、ワクワクさせる華が欲しいところです。音楽が歳の割に老成し過ぎなのが、少し気になります。

投稿: Henri | 2021年11月19日 (金) 13時01分

Henriさん、こんにちは。

そうでしょうか?
この人のベートーヴェンやブラームスには表現意欲が見え隠れしてしまい、「まだまだ青いなぁ」と感じています。一方、ブルックナーやワーグナーでは正にドイツ音楽の歴史を感じさせるような堂々としたスタイルなので大満足しています。これは受け取り方でしょうかね。

投稿: ハルくん | 2021年11月19日 (金) 13時09分

申し訳ありません。
再コメントです。

>映像が演奏の集中鑑賞に邪魔することもあるからです。

おっしゃることは、よく理解できます。しかし、たとえばマーラー交響曲などであれば、明らかに視覚効果も狙って書いていますよ。「巨人」の終楽章コーダで楽譜通りホルンを起立させているかどうか? 木管のベルアップはどこで行われているか? 「悲劇的」のハンマーはどんなものを使っているか?とか、カウベルはどの場所で鳴らしているか等々。

ブルックナーでも8番のハープは何台か? とか、5番の終楽章はフィナーレで金管バンダを使用しているか?とか、現在のウィーンPOのメンバーは昔とどう変わったか?とか、楽器配置は?とか 男女比は?とか興味が尽きません。  

それと、このBDについては48kHz24bit PCMで聴いたところ音もいいので、画面を見たくない時は消して音だけ聴いていればいいだけですので何の不満もございません。知的好奇心は保留にしておいても充分楽しめますよ。何よりCDの演奏と別テイクを聴けることは、意味がありませんか?

投稿: 斎藤 | 2021年11月19日 (金) 13時43分

>レコード、CDは繰り返し鑑賞するものですので、それに耐えるように手を加えるのには抵抗ありません。

往年のジャズライブであれば、録音日時と場所は、大きな意味を持っているじゃないですか。
まあ、CDは撮り直しを重ねた末にCG修正を加えて作り込まれた映画みたいなものだと割り切って考えればいいだけなんでしょうけどね。

でも、それでも、EXTON録音みたいにサントリーホールの演奏と別日の横浜みなとみらいホールの演奏を繋ぎ合せた、オーケストラのライブ録音は大嫌いですし、バイロイトの第九録音についてのエピソードは、やはり気持ち良いものではないです。

投稿: 照る民 | 2021年11月19日 (金) 14時47分

斎藤さん

誤解の無いようにですが、映像が演奏の集中鑑賞に邪魔するのは私に限ってのことです。
様々な楽器や奏法については、これまで実演でほとんど観てきていますので、それほどの新しさは感じません。

もちろん、サウンドや別テイクについてなどは、その価値を感じられる聴き手(また懐に余裕をお持ちの)の方がご購入されるのは宜しいことだと思いますよ!

投稿: ハルくん | 2021年11月19日 (金) 15時31分

照る民さん

クラシックでも、歴史的な演奏会など録音日時と場所に大きな意味を持っているケースは有りますよね。

異なるホールの演奏を編集してライブ盤として売り出すのはどうかと思いますよね。
バイロイトの第九録音も本来なら編集無しで出して欲しかったですね。

投稿: ハルくん | 2021年11月19日 (金) 15時39分

こんにちは。

ティーレマン&ウィーン・フィルの4番、未聴ですが、良さそうなので入手して聴いてみます。ご紹介いただきありがとうございます。

録音にまつわるコメントを読み、自分が実演を聴いたコンサートライブがCD化されたものを聴くと、大抵の場合どこか記憶と違っていて、「はて、ここではトランペットがひっくり返っていたし、あそこでは弦が揃っていなかったし、でも全体的にはもっと勢いがあったはずなのに、このような演奏では無かったはずだが?」といった感想になることが実に多いことを、改めて思い起こしました。

投稿: 小笠原高雄 | 2021年11月19日 (金) 15時40分

>この人のベートーヴェンやブラームスには表現意欲が見え隠れしてしまい、「まだまだ青いなぁ」と感じています。

そうです、それこそが大切なんですよ!
そういうところを残していないと、伸びしろが無いじゃないですか。

もしもティーレマンのブルックナー解釈が今が頂点で完成してしまっっているのなら、良いほうに大化けする楽しみが無くてつまらないということを言いたかっただけです。

投稿: Henri | 2021年11月19日 (金) 20時35分

おはようございます。

ティーレマンのブル4は未聴ですが、8番や3番はハルくんさん紹介記事もあって聴きました。確かに現在望み得るブルックナー演奏の最高峰かも知れませぬなあ。

ティーレマンは今年62歳、私の親父は口癖で、
「四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ」
などとほざいておりますが、これは渋沢栄一の言葉という説もあるようですな。奏者がそれでは困りますが、指揮者の人生としては理想的ですなあ。

投稿: 音頭丸殿 | 2021年11月20日 (土) 08時50分

おはようございます。

ティーレマンのベートーヴェンやブラームスはまだまだ青いですか??
僕からしたら、十分素晴らしいです!!

「三十にして立つ」という言葉があります。人は三〇歳くらいになると、独立してやっていけるようにならなければいけない、三〇歳で、自己の立場を確立し、自立する必要があります!!

他人は気楽に「青い」などとのたまいますが、偉大な先人のマネだけしていても仕方ないですし、若い世代は次代を切り拓かなくてはならず、恵まれた高齢者とは違って大変なんですよ!!

ご紹介のCDは未聴です、聴いてみます!!

投稿: 海の王子 | 2021年11月20日 (土) 09時13分

小笠原高雄さん

この4番ですが、耳の越えた友人の間でもかなり評判が良いです。ぜひお聴きになられてはいかがでしょう。ご感想を楽しみにしております。

投稿: ハルくん | 2021年11月25日 (木) 11時29分

音頭丸殿さん

3番、8番も相当良いとは思いますが、自分にはまだ「ベストの一つ」という位置づけでした。
そこへゆくと4番は完全な「ベスト」です。
そこが驚きでした。

投稿: ハルくん | 2021年11月25日 (木) 11時34分

海の王子さん

ティーレマンのベートーヴェンもブラームスも充分良いですよ。好きです。
ただし、この人はやはり後期ロマン派の人だと思います。
なので「青い」というより、ティーレマンの古典形式との楽曲との相性の問題ですね。
個人的にはそう思っています。

投稿: ハルくん | 2021年11月25日 (木) 11時39分

ハルくん様
12月に来演のベルリン・シュターツカペレの指揮者が、バレンボイム氏が降板し代役がティーレマンとの情報が、主催事務所テンポ・プリモのHPに載っておりました。ハルくん様、むしろこの指揮者交代、却って興味がそそられるのでは、ないでしょうか?
でも、大阪公演のチケット代¥28000では、一考せざるを得ませんね(笑)。

投稿: リゴレットさん | 2022年10月29日 (土) 13時51分

リゴレットさん

お返事が遅くなりました。
今回の指揮者交代はむしろ喜んだ人が多そうですね。
最近の外来オーケストラの入場料の高騰は世界の様々な情勢の影響とはいえ、庶民には高根の花となりました。
経済的に余裕のある同じ人達だけが聴きに行ける音楽界というのもいかがなものかと思います。。。

投稿: ハルくん | 2022年11月 4日 (金) 11時41分

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