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2021年1月

2021年1月27日 (水)

東京ニューシティ管弦楽団定期演奏会 指揮 飯森範親 ピアノ 三原未紗子

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日曜日は東京芸術劇場で行われた東京ニューシティ管弦楽団の定期演奏会へ行きました。
一昨年のブラームス国際コンクールのピアノ部門に優勝した三原未紗子さんがソリストを務め、コンクールのファイナルで弾いたブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴くことが出来るからです。三原さんは若手ピアニストでは珍しく、非常に懐の広い、含蓄のある演奏をする人です。つまりブラームスの音楽にピッタリですし、実際にコンクールでも審査員の先生方から「ブラームスの音をしていた」と評価されたと聞いています。

緊急事態宣言下の上に更に降雪予報が出ていたのでハラハラしましたが無事に開催されました。

この日指揮者を務めた飯森範親氏は現在契約している東京交響楽団から、こちらのオーケストラの音楽監督へ2022年に就任することが決まっているそうです。今日は就任決定後の初の演奏会であるからか、開演前にプレトークをされて、就任への並々ならぬ意気込みについて語られました。
ということで演奏に期待が高まりました。

前プロのキラールの作品は弦楽合奏で、ヴァイオリン、ヴィオラはスタンディングでの演奏でした。徐々にハーモニーやリズムが重なり合って盛り上がる面白い曲ですが、どこからか「ゴジラ」のテーマを連想してしまいました。

そして前半2曲目がブラームスです。この協奏曲第1番は実演では滅多に聴くことがありませんが、第2番とともに「溺愛する」と言える愛聴曲です。特に第1番はこのホールで1998年か99年にラドゥ・ルプーの独奏、ホルスト・シュタイン(懐かしいですね!)指揮バンベルク交響楽団で大変素晴らしい演奏を聴いたことがあります。(その記事はこちらから ブラームス ピアノ協奏曲第1番 名盤 )
なにしろこの曲を生で聴くのはそれ以来ですし、しかもソリストが三原さんなので胸が高まりました。

いよいよ三原さんが出て来て演奏開始です。冒頭には交響曲以上にシンフォニックな管弦楽が続きますが、中々に気合が入っている重厚な響きが聞こえ、「おっ、これは!」と思いました。
そしてピアノが入ります。それまでの管弦楽のテンポから幾らか落ち着いたテンポで、しかし緊張感の有る空気を作ります。そして曲が進み、ピアノと管弦楽が交互に演奏を繰り広げますが、三原さんの音は打鍵の強さは感じるものの、それが決して力任せでは無いしなやかさが有り、常に管弦楽と共に、ブラームスのあの地味ながら非常に美しいハーモニーをホールに響かせ続けました。
飯森氏の指揮に導かれるようにホルンも非常に好演、弦も木管もとても綺麗でした。それらが三原さんの弾くスタインウェイのピアノと良く溶け合っていて正に至福のブラームスでした。
そうなれば、第2楽章に益々期待します。夜空に浮かんだ月が雲の合間から出てはまた隠れる様を永遠に繰り返すような美しい音楽ですが、正にそんな雰囲気を醸し出してくれました。これぞブラームス!
静寂から一転して始まるフィナーレでは、三原さんは思いのほか速いテンポで弾き出しました。1、2楽章がゆったりと広がりの有るテンポでしたので、スリリングな対比に思わず興奮させられます。しかし基本テンポは速くても、聴かせどころではピアノも管弦楽も大きく歌い、心から堪能させてくれます。

なにしろトータル演奏時間が交響曲よりも長いという長大な協奏曲ですが、その長さを全く感じさせない素晴らしい演奏でした。それは恐らく、三原さんの飯森マエストロへのリスペクト、マエストロの三原さんへの高い信頼、オーケストラ団員の二人への信頼と共感、さらには出演者のこの一年に渡るコロナ禍での苦境を乗り越えての演奏会への気合や喜びや、会場に足を運んでくれたお客様の期待感、それらが全て一体になったからこそ、このような素晴らしい演奏会になったのだと思います。

おっと、後半のストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」についても。
この曲は元々ピアノ協奏曲的な要素が有りますが、三原さんは休憩中に普通の黒衣装に着替えて、今度は後方に下がったピアノに着きました。自らこの曲の演奏も買って出たそうです。凄いですね!
1947年の3管編成版でしたが、飯森氏の指揮は管弦楽を綺麗に鳴らしてまとめ上げ、且つこの曲がバレエ音楽であることを認識させてくれるようなリズム感と楽しさに溢れるとても良い演奏でした。
今後の音楽監督への就任が楽しみです。このオーケストラの実力を見直す演奏会でしたが、今後さらに飛躍させてくれること間違いなさそうです。いずれ三原さんとも次は第2番の協奏曲を聴かせてくれたら良いと思います。

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2021年1月21日 (木)

レハール 喜歌劇「メリー・ウィドウ」 名盤 ~陽気な未亡人~

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喜歌劇「メリー・ウィドウ」(原題はドイツ語で Die lustige Witwe “陽気な未亡人”の意)は、フランツ・レハール作曲のオペレッタで、ヨハン・シュトラウスの「こうもり」と並ぶ人気作品ですね。レハールお得意の甘く美しい旋律がふんだんに取り入れられていて魅了されます。

特に第二幕で未亡人ハンナが故郷を想いながら歌う「ヴィリアの歌」と、第三幕の“メリー・ウィドウ・ワルツ”として有名なハンナとダニロの二重唱「唇は語らずとも」(Lippen Schweigen)は名曲中の名曲です。

メリー・ウィドウ・ワルツは、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「ヴェニスに死す」の中にも使われていて、主人公の老作曲家がヴェニスのホテルへ到着すると、このワルツの調べが聞こえてきます。また、ディナーの前にロビーでお客たちが待つシーンでもオーケストラによりワルツが演奏されます。この映画はもちろんマーラーの交響曲第5番のアダージェットが余りにも有名ですが、メリー・ウィドー・ワルツも印象的です。

「メリー・ウィドウ」の原作はアンリ・メイヤックの「大使館付随員」で、それを元にヴィクトル・レオンとレオ・シュタインが台本を作りました。
初演は1905年にアン・デア・ウィーン劇場でレハール自身の指揮で行われました。

登場人物
ハンナ・グラヴァリ(ソプラノ):裕福な未亡人
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵(テノール):大使館の書記官、ハンナの元恋人
ツェータ男爵(バリトン):ポンテヴェドロ国のパリ駐在公使
ヴァランシエンヌ(ソプラノ):ツェータ男爵の妻
カミーユ・ド・ロジヨン(テノール):フランス人の大使館員、ヴァランシエンヌの愛人

あらすじ
第1幕 パリのポンデヴェドロ公使館
広間でポンデヴェドロ国王の誕生祝賀パーティーが開かれている。話題の中心はハンナ・グラヴァリ未亡人。ハンナはポンデヴェドロの老富豪と結婚し、そのわずか8日後に夫が急逝したために巨額の遺産を受け取ったのであった。

パーティーに出席したハンナは、多くの男性から口説かれる。しかしハンナがフランス人と結婚すれば、遺産がポンデヴェドロから失われることになるので、ポンデヴェドロ公使のツェータ男爵は、それを阻止するために書記官のダニロ・ダニロヴィチ伯爵とハンナを引き合わせようとする。実はダニロとハンナはかつては恋人同士であったが、二人の身分の違いが彼らを引き裂いたのだった。

ダニロは、ハンナの資産目当てで結婚すると見られるのを嫌い、わざとハンナと距離を置いている。その一方、カミーユ・ド・ロジヨンは、ツェータ男爵の美貌の夫人を熱心に口説くが、その気がないヴァランシエンヌはハンナをカミーユにあてがおうと画策する。

ハンナは踊りの相手にダニロを指名するが、ダニロはその権利を1万フランで売ると宣言する。しかし男たちは「とてもそんな大金は出せない」と諦める。そのため、2人は喧嘩しながらも踊り始める。

第2幕 ハンナの屋敷の庭
パーティーの翌日、来客を前にハンナはここに故郷の風景を再現すると言って「ヴィリアの歌」を歌う。

カミーユはなおもヴァランシエンヌに求愛している。そしてヴァランシエンヌの心が揺らいだと見るや、カミーユは彼女を庭のあずまやに連れ込む。そこにツェータ男爵が現れ、妻があずまやで誰かと会っているのではと勘繰るが、そこから出てきたのは何とカミーユとヴァランシエンヌの身代わりになったハンナであった。

騒動の結果、ハンナとカミーユが婚約宣言するはめになり、国家から富が失われるのを嘆くツェータ男爵とハンナへの想いを胸に秘めたダニロも動揺する。

第3幕 ハンナの屋敷の庭
庭にパリの有名レストラン「マキシム」風の飾り付けがなされ、踊り子たちも揃っている。そこへ故国から「もし富豪の遺産がわが国から失われると、国は破産の危機に瀕する」との電報が届く。決心したダニロはハンナに愛を告白する。

一方で、あずまやからヴァランシエンヌの扇子が見つかり、会っていたのはカミーユとヴァランシエンヌだったことが分かってします。怒ったツェータ男爵は、ヴァランシエンヌと離婚してハンナと結婚すると言い出す。

しかしハンナは、「もしも再婚すると遺産を失う」という夫の遺言を告げる。ツェータ男爵が結婚の申し出を撤回すると、資産を気にしなくて良いことが分かったダニロは、ついにハンナに求婚する。するとハンナは、夫の遺言の続きとして「遺産のすべてを失い、その遺産は再婚した夫のものとなる」と明かす。

ヴァランシエンヌは扇子の中に書かれた言葉を読んで欲しいと夫に請う。そこには、「私は貞淑な人妻です」と書かれてあった。妻を疑ったことに対してツェータ男爵が妻に許しを請い大円団となり幕を閉じる。

オペレッタは実演やDVDでの映像鑑賞が楽しいですが、さりとてCDで美しい音楽と演奏に集中して味わうのも良いものです。
ともかくは所有盤のご紹介をしてみます。

51kfceyu3nl_ac_ オットー・アッカーマン指揮フィルハーモニア管、シュワルツコップ(S)、クンツ(Br)、ゲッダ(T)他(1953年録音/EMI盤) ルーマニア生まれのアッカーマンは戦前からもっぱら各地の歌劇場で指揮者として活躍しましたが、録音はEMIに残したオペレッタが知られています。ロンドンのオケとの演奏でウィーンの味には欠けますが、元々作品の舞台がパリなので、これはこれで良いかもしれません。むしろモノラル録音のためにレトロな雰囲気が醸し出されていて、この作品に似合います。歌手陣に関しては文句無しで、往年の素晴らしい面々がずらりと揃っています。録音は明瞭で優れています。

410y41neh7l_ac_ ロベルト・シュトルツ指揮ウィーン国立歌劇場管、ギューデン(S)、グルンデン(Br)、クメント(T)他(1958年録音/DECCA盤) ウインナ・ワルツで有名なシュトルツはオペレッタの作曲家でもありましたが、この作品の初演時にはレハールの元で副指揮者を務めました。面白いのはシュトルツ作曲の序曲が本篇の前に置かれています。確かにいきなり舞台が始まる作品なのでアイディアとしては面白いです。ただ、少々平凡な序曲なので、飛ばして聴いても差し支えありません。しかし本編の演奏は素晴らしいです。‘50年代のウィーンの粋な味わいと情緒に満ち溢れていますし、それでいて第三幕の舞踏シーンの盛り上がりは凄いです。初演の舞台を彷彿させる点でかけがえがありません。DECCAのステレオ録音で音質も良好です。シュトルツには‘66年のベルリンでの録音も有りますが未聴です。

51ji6rpp5hl_ac_ ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮フィルハーモニア管、シュワルツコップ(S)、ヴェヒター(Br)、ゲッダ(T)他(1962年録音/EMI盤) これもロンドンのオケの演奏で、ウィーンの風味よりはパリ風味寄りです。マタチッチの指揮はやや甘さや軽快さには欠けますが、その反面立派な風格があり、登場人物の故郷ポンデヴェドロが、セルヴィアをモデルにしていることを考えると、マタチッチの持つ旧ユーゴの土臭さが生きているようで面白いです。ただ、主役の歌に関してはシュワルツコップのハンナもダニロもアッカーマン盤の方が魅力が勝るように感じます。録音は当時のEMIにしてはかなり優れていると思います。

41tktel40ol_ac_ ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル、ハーウッド(S)、コロ(T)、ホルヴェーク(T)他(1972-73年録音/グラモフォン盤) さすがカラヤンというか、演奏からはオペレッタの庶民性や猥雑さが後退して、すこぶる絢爛豪華さを感じます。元々は酒場の楽団として出発したベルリン・フィルもつくづく出世したものです。特に弦楽セクションの磨き抜かれた美音は、耳がとろけるような甘さに満ちていますし、弱音のデリカシーも素晴らしいです。歌手陣もそうしたコンセプトによる統一感が有り、各歌手の個性よりはアンサンブルの絶妙さに舌を巻きます。もちろん楽しさに事欠く訳では有りません。

71rppitcxcl_ac_sl1200_ ジョン・エリオット・ガーディナー指揮ウィーン・フィル、ステューダー(S)、スコウフス(Br)、トロースト(T)他(1994年録音/グラモフォン盤) 発売時「ウィーン・フィル初のメリー・ウィドウ録音」との触れ込みでしたが、実際にはシュトルツ盤が有るので、半分はウソになります。しかしそれぐらい稀少です。何しろウィーン・フィルが演奏するとワルツもポルカもことごとくウィーン風に聴こえます。ガーディナーがこの曲を指揮したのも意外でしたが、演奏は実に格調が高く、パリの華麗さよりはウィーンの上品さが感じられます。モンテヴェルディ合唱団が起用されたことも、それに輪をかけています。歌手陣も個々の個性は余り強調せずにアンサンブルとしてまとまっています。従って面白みには欠けるかもしれませんが、個人的にはとても気に入っています。

以上、歌手陣と楽しさの極みではアッカーマン盤、古き良きウィーンの味わいではシュトルツ盤が特にお気に入りです。しかしカラヤン盤やガーディナー盤も個性的な魅力が有るので惹かれます。

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2021年1月13日 (水)

ヨハン・シュトラウス(2世) 喜歌劇「こうもり」(Die Fledermaus) 名盤

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今年の初聴きはNHK衛星放送のニューイヤー・コンサートでしたが、それ以外にもウインナ・ワルツのCDを色々と聴いていました。それについてはまた来年。(笑)

代わりに喜歌劇「こうもり」(ドイツ語でDie Fledermaus)です。ヨハン・シュトラウス(2世)の代表オペレッタであるだけでなく、レハールの「メリー・ウイドー」と並ぶ、楽しい楽しい傑作ですね。作品の中にワルツやポルカの名曲がふんだんに盛り込まれていて、これ1曲でニューイヤー・コンサートをそのまま味わう気分になれます。

原作はベンディックスの喜劇『牢獄』に基づいてメイヤックとアレヴィが書いた喜劇『夜食』です。オペレッタの台本はそれをカール・ハフナーとリヒャルト・ジュネが手直ししました。

作品はヨハン・シュトラウスお得意の優雅で美しいワルツと楽しいポルカが全編に使われています。台本には日付の設定は特に有りませんが、ドイツ語圏の国では大晦日恒例の演目となっています。
本家のウィーンでは毎年年末年始に公演され、大晦日の国立歌劇場の「こうもり」と新年のウィーン・フィルの「ニューイヤー・コンサート」がウィーンでの恒例行事となっています。

一般的にオペレッタの楽しみというと、スコアにはほとんど書かれていない台詞が演出家の裁量で決められて、観客を笑わせるために世事などを取り上げたり、様々なアドリブが用いられます。音楽も他のウインナ・ワルツを自由に追加したり、逆に演奏しなかったりもします。ですので、本来オペレッタは「今回はどんな演出となるのだろう?」とワクワクさせられる実演が一番です。昔観たウィーン・フォルクス・オーパ―の公演は実に楽しかったです。

歌手の声域も厳密では無く、アイゼンシュタインを昔はテノールが歌うことが多かったですが、最近はバリトンで歌われることが多く、オルロフスキー侯爵はバリトンや女性歌手が歌う場合も有り、さらに地声で歌わせたりと趣向が凝らされます。看守役にはいつか二期会の公演だったか、コント55号の坂上二郎が扮していたのには笑わせられました。日本語上演で大いに楽しめるのもオペレッタならではです。

<登場人物>
アイゼンシュタイン男爵(テノールまたはバリトン)- 金持ちの銀行家
ロザリンデ(ソプラノ)- アイゼンシュタインの妻
フランク(バリトンまたはバス)- 刑務所長
オルロフスキー公爵(メゾソプラノまたはカウンターテナーやテノール)- ロシア貴族
アルフレード(テノール) - 声楽教師、ロザリンデの昔の恋人
ファルケ博士(バリトン) - アイゼンシュタインの友人、こうもり博士
アデーレ(ソプラノ) - ロザリンデの小間使い
フロッシュ(台詞) - 刑務所の看守

<あらすじ>
第1幕 アイゼンシュタイン邸
アイゼンシュタインの妻ロザリンデが嘆いている。夫が役人に暴力をふるってしまったことで8日間の禁固刑となってしまった為だ。
そんな折、昔の恋人アルフレードが、家の前で毎日セレナーデを歌ってはロザリンデに求愛をしている。夫が刑務所に入るので、その留守にロザリンデと逢引しようと企んでいる。ロザリンデもまんざらではないが、世間体を気にして躊躇している。

そこへファルケ博士がやって来てアイゼンシュタインに、「今夜、オルロフスキー公爵邸で舞踏会が開かれるので、楽しんでから刑務所に入ればいい」と勧める。妻をどうごまかすか躊躇するアイゼンシュタインをファルケは「いくらでもごまかせるさ」とそそのかす。その気になったアイゼンシュタインは、舞踏会に行くことに決めて小躍りする。

アイゼンシュタインが「礼服を出して」と言うので怪しみ気づいたロザリンデは、それなら自分も舞踏会へ行こうと決心し、小間使いのアデーレに暇を出す。アデーレも実は姉から手紙でオルロフスキー邸の舞踏会に誘われていた。

そしてアルフレードがやって来る。ロザリンデは喜び、二人で酒を飲み始める。ところが、そこへ夫を連行しに来た刑務所長フランクが現れる。男を家に引き入れたことが知られるとまずいと思ったロザリンデは、とっさにアルフレードを夫に仕立てる。困ったアルフレードもアイゼンシュタインに化けることを承知して、身代わりとなり刑務所に連れて行かれる。

第2幕 オルロフスキー公爵邸の舞踏会
オルロフスキー侯爵邸では華やかな舞踏会が開かれていた。侯爵がファルケに「何か面白いことは無いか」と言うとファルケは、「今夜は“こうもりの復讐”という楽しい余興がある」と言う。

やがて、女優に化けたアデーレや、フランスの侯爵ルナールを名乗ったアイゼンシュタイン、刑務所長らが次々にやってくる。
そこへ仮面をかぶってハンガリーの伯爵夫人に変装したロザリンデが現れる。
アイゼンシュタインは伯爵夫人が自分の妻だとは気づかずに口説き始める。ロザリンデは夫の浮気の証拠にしようと懐中時計を言葉巧みに取り上げる。人々は、仮面の女性の正体を知りたがるが、彼女はハンガリーのチャールダーシュを歌って「私はハンガリー人よ」と言う。

人々がファルケ博士に「“こうもりの話”をしてくれ」と言う。3年前ファルケとアイゼンシュタインが仮面舞踏会に出かけた帰りに、アイゼンシュタインが酔いつぶれたファルケを森に置き去りにした為に、翌日ファルケは日中、仮面舞踏会のこうもりの扮装で笑われがら帰宅する破目になり、「こうもり博士」というあだ名をつけられたのだった。

やがて舞踏会が最高潮に達するが、夜も更けると締めくくるワルツが始まり、全員が歌い踊る。

第3幕 刑務所の部屋
刑務所の中で、身代わりで捉えられているアルフレードがロザリンデへの愛の歌を歌っている。朝っぱらからブランデーで酔っ払った看守のフロッシュがくだを巻いていると、同じく酔っ払ってご機嫌なフランク所長が戻ってくる。

そこへアイゼンシュタインが出頭して来たので、所長は「既に牢にはアイゼンシュタイン氏が入っているんだが」と驚く。
更にそこへロザリンデが来たので、アイゼンシュタインは慌てて弁護士に変装する。ロザリンデは昨日の経緯を変装したアイゼンシュタインに話す。そこでアイゼンシュタインは正体を現して妻とアルフレートを責めるが、ロザリンデは舞踏会で奪い取った時計を取り出して見せ、逆に夫をやり込めてしまう。

そこにファルケとオルロフスキー公爵、その他舞踏会の客たちが現われる。
ファルケは「昨日舞踏会に誘ったのは、すべて私が仕組んだことで、3年前の“こうもりの復讐”だ。」と種明かしをする。「それでは浮気も芝居なのか」と安心するアイゼンシュタイン。アルフレードは「実際とは違うが、まあいいか」とつぶやく。
そしてロザリンデの歌う「シャンパンの歌」で幕となる。

とまあ、こんな具合です。
さて、それでは所有のCDのご紹介へ。

Sl1600 クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィル、国立歌劇場合唱団、ギューデン(S)、パツァーク(T)、リップ(S)他(1950年録音/DECCA盤) 当然ながらモノラル録音ですが、DECCAの優秀録音は鑑賞の妨げになりません。録音当時のウィーン・フィルの田舎情緒あふれる音色はいかばかりでしょう。クラウスの指揮は決して緩いばかりではなく、躍動感も充分です。しかしウインナ・ワルツ独特のリズムには、これこそが本物かと思わずにいられません。歌手達も当時ウィーンで活躍していた名歌手たちが揃い、その歌声には酔わされます。台詞は全てカットされていますが、CDで繰り返し聴く条件下では抵抗有りません。どれほど時代が変わっても普遍的な価値を持つ名演奏だと思います。

Zap2_aa015601w ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィル、国立歌劇場合唱団、ギューデン(S)、クメント(T)、ケート(S)他(1960年録音/DECCA盤) クラウス盤から10年経ち、ウィーン・フィルの音の田舎臭さは薄れたものの、柔らかく甘い音色は健在です。それにカラヤンの歯切れ良い指揮とが上手く融合して、極上の楽しさを味合わせてくれます。主要な役の歌手陣はクラウス盤からは幾らか見劣りますが、その代わりにこの録音には舞踏会の場面にガラ・パフォーマンスが挿入されていて、当時の世界的な歌手(テヴァルディ、モナコ、ニルソン、ビョルリンク、ベルガンサ他)が次々と登場します。ニルソンが歌う「踊り明かそう(マイ・フェアレディ)」など他のどこで聴けるでしょう!プロデューサー、カルショーが残した「ニーベルンクの指輪」全曲にある意味で匹敵する、現在では到底実現し得ない録音遺産です。

713puim9tpl_ac_sl1500__20210113153201 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン国立歌劇場、ギューデン(S)、ヴェヒター(T)、シュトライヒ(S)他(1960年録音/RCA盤) 上述のDECCA録音と同じ年の大晦日にウイーンで公演されたライブ録音です。歌手は何人か入れ替っていますが、カラヤンの人選ですのでDECCAと同等以上と言えます。ライブですのでノリの良さはこちらが当然上です。アンサンブルのずれは随所に有りますが、気にするだけ野暮というものです。舞踏会のガラパフォーマンスもさすがにDECCA盤には劣りますが、ステファノの「オーソレミオ」など豪華です。実演ならではのセリフが長いのはドイツ語の分かる人なら良いですが、そうでないと長ったらしく感じるかもしれません。モノラル録音ですが音質は明瞭です。

Img_1009 ウィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン響、国立歌劇場合唱団、ローテンベルガー(S)、ゲッダ(T)、ホルム(S)他(1971年録音/EMI盤) ウィーン・フィルの名コンサートマスターだったボスコフスキーはクラウスからニューイヤーコンサートを引き継ぎましたが、この録音ではウィーン・シンフォニカ―が使われました。クラウスに比べれば遥にスマートな演奏ですが、カラヤンよりもゆったりとしたテンポでウィーンのおおらかな雰囲気が漂います。歌手陣も名歌手が揃い、味わいが深いです。録音も良好ですし、名盤の一つに数えたいと思いますが、その反面、もしもこれがウィーン・フィルだったらと思うと幾らか残念な気もします。

912satdbol_ac_sl1500_ カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管、国立歌劇場合唱団、ヴァラディ(S)、プライ(Br)、ポップ(S)他(1975年録音/グラモフォン盤) もちろん有名な名盤ですし(と認めた上で)颯爽としたテンポで躍動感に溢れた「こうもり」は当時実に新鮮で驚きでした。序曲の中間部のほの暗い情緒や、挿入された「雷鳴と電光」の迫力には天才を感じたものです。旋律の歌いまわしの上手さも同様です。ただしそれはあくまでクライバーの「こうもり」であって、ウイーンの伝統的なそれではありません。そういった違和感は拭えません。歌手陣は平均的ですが、侯爵にロシア民謡歌手のイヴァン・レブロフを起用したのは、彼の妙な歌唱のおかげでシャンパンの歌が台無しに(自分にはそう聞こえる)なりました。これはクライバーのファンの為の「名盤」だと思います。

41gt1qhrn2l_ac_ アンドレ・プレヴィン指揮ウィーン・フィル、国立歌劇場合唱団、カナワ(S)、ブレンデル(Br)、グルべローヴァ(S)他(1990年録音/フィリップス盤) 録音がだいぶ後のものとなり、この中では録音が最も優れます。プレヴィンはウィーン・フィルの美しい音を生かしますし、クライバー盤よりはずっと伝統的なウインナ・オペレッタを楽しめます。ただし、ここにはクラウス、ボスコフスキー時代のおおらかな雰囲気とは別のものが有ります。その原因は歌手陣のオペラ調のドラマティックな歌い方に有るようです。オペレッタにはもう少し軽みのある歌唱が相応しいように思います。当然好みの問題なので、逆にこれで丁度良いと感じる方もおられるでしょうし、まずは実際にお聴きになられるしかないと思います。

ということで所有盤では、演奏に関してはクレメンス・クラウス盤を最も好みながらも、ガラ・パフォーマンスのボーナスポイントが絶大なカラヤンのDECCA盤が演奏、録音を含めた総合点でトップです。この両盤に続くのはカラヤンのライブ盤とボスコフスキー盤を上げたいです。

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2021年1月 1日 (金)

2021年 新年のご挨拶

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明けましておめでとうございます。

世界中が新型コロナに明け暮れた昨年となり、ベートーヴェンの生誕250周年記念は吹き飛んでしまいました。しかし、こんな時期だからこそ苦難に決して屈することのない精神力をもつこの人の音楽が求められるのではという声が多く発せられ、年末には各地でその演奏が行われました。

私の聴いた弦楽四重奏の演奏会ではメンバーがトークで「ベートーヴェンの誕生日は12月16日と言われています。ということは12月までは249歳でした。ようやく250歳となり、来年2021年の誕生日までは250歳です。まだ1年は250歳記念が続きます。」
と話されました。なるほど!
もう2021年となりましたが、250歳を祝い、今年もまたベートーヴェンの音楽を大いに聴いてゆきたいと思います。

それはそうと、上の写真は英国のプログレッヴ・ロック・バンド、ピンク・フロイドが1970年に発表したアルバム『原子心母』(げんししんぼ、原題:Atom Heart Mother)の有名なジャケットです。同じ英国のデザイナー集団ヒプノシスによるデザインでした。
タイトル曲の「原子心母」は当時のアナログLP盤のA面を全て使った大作で、チェロや金管楽器、合唱団を使ったクラシカルテイストの作品でした。今ではまず聴くことは有りませんが、ロック・ミュージックが多様に変化、進化していた楽しい時代でした。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

2021年 元旦 ハルくん

 

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