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2020年12月 4日 (金)

ブルックナー 交響曲第8番 クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー CD新盤/決定盤

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今やドイツ・オーストリア音楽の盟主となったクリスティアン・ティーレマンはウィーンでもドレスデンでもバイロイトでも引っ張りだこですが、口の悪い輩には、やれ「指揮が下手だ」とケチを付けられるようです。確かにしゃくりあげる(アッパースイングの)指揮姿は格好の良いものでは無く、見ているだけで心を奪われるカルロス・クライバーの指揮姿とは雲泥の差が有ります。だが、個人的にはビジュアルイメージほどには好まない演奏が案外と有るクライバーよりも、映像では無く音だけを聴いていた方が良いと思えるティーレマンに好感を持ちます。

そんなティーレマンがウィーン・フィルとブルックナーの全曲演奏、全曲録音を開始しました。これまでミュンヘンやドレスデンでブルックナー録音を残してきたこの人の一大プロジェクトは大歓迎です。

その皮切りは第8番で、いきなり初球から剛速球を投げ込まれた印象です。これは昨年の10月に録音されたもので、このコンビは日本でもこの曲を演奏しましたね。その生演奏を聴いた人の話では、ご本人はとても良いと感じたらしいのですが、周りの知人にはそれほど称賛されてなかったそうです。

そしてこのCDがリリースされる直前にNHKでウィーンでのライブ映像が流れました。当然観ましたが、やはり映像だと指揮姿に気を取られてしまい、演奏そのものに集中出来ませんでした。要は良いのか悪いのかよく分からなかったのです。

そして今回、ようやくCDでじっくりと音楽に集中出来ました。そして感想はと言えば。。。素晴らしい!!です。

第1楽章からゆったりとしたテンポで構えが大きく、それでいて少しももたれません。いいテンポです。目新しいことは何もしません。実にオーソドックスです。ブルックナーの音楽の魅力がごくごく自然に心に浸み込んで来ます。トゥッティの響きも素晴らしく、これはウィーン・フィルなら当然と言えば当然なのですが、それを捉えるバランスの良い録音も上出来の仕事です。

第2楽章も少しも慌てず騒がず、しかし堂々とした進軍で聴き応えが有ります。ここぞという時にはぐっと重みを与えるセンスも良しです。中間部ではウィーン・フィルの美しい弦の魅力が全開です。

第3楽章のハーモニーの美しさも当然過ぎるものの、やはり美しい!です。どこまでもゆったりとブルックナーの法悦の世界に浸り切れます。

第4楽章もまた雄渾でスケールが大きく、しかしもたれない良いテンポです。チェリビダッケのような異形の凄みさえ有りませんが、全体も細部も充実し切っています。

全曲を聴き終えてみて、これはオーソドックスなスタイルでの究極の演奏だという気がします。これまで個人的に好んでいたクナッパ―ツブッシュ、シューリヒト、チェリビダッケは比べてみれば、やはり個性やアクの強さが相当に有ります。極めて高い次元のオーソドックスさで並ぶのはヴァントのみでしょう。ヴァント晩年の北ドイツ放送響やミュンヘン・フィルとの演奏は本当に素晴らしいですが、このティーレマン新盤の決定的なアドヴァンテージはやはりウィーン・フィルというブルックナー・オーケストラとして最上の名器です。特にヴァイオリン群と木管群の音色と歌わせ方の素晴らしさは他のどこの楽団も及びません。

これから出て来る後続の曲の特に5番、7番、9番などの演奏が楽しみでなりません。

※この他のCDの鑑賞記は下記をご覧ください。
ブルックナー 交響曲第8番 名盤

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ブルックナー(交響曲第7番~9番)」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。

ティーレマン60歳時?指揮のウィーンPOによる、解釈に癖や隙のないブル8の名演、名録音、新たな決定盤の誕生ということであれば、それはぜひ購入し聴いてみたいです。

巨匠崇拝の時代は過ぎ、影響力がある評論家からの洗脳も解け、自分も含めた口うるさい旧クラヲタ文化も高齢化の波と共に影響力は弱まり、学オケで下手な技術でブル8演奏に参加したりしつつブルックナーに入れ込んでいたころとは隔世の感があります。

音楽の趣味に対してハングリー精神に溢れていた、あのころの自分を懐かしく思い出しつつ、ご紹介の新しい名演を味わいたいです。

投稿: 犍陀多 | 2020年12月 4日 (金) 20時47分

今晩は。
ハル君はブルックナーはウィーンフィルでという強いこだわりがおありですね!ご紹介のこのティーレマンはまだ聴いてません。
手持ちのCDは

クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘンフィル
シューリヒト指揮ウィーンフィル
朝比奈指揮大阪フィル

の3種ですが、小生はシューリヒトが未だに一番好きです。
それより去年聴いたベルリンフィル!(メータ指揮)このオケのナマも初めて、ブル8のナマも初めてという体験でしたが、やはり凄かったです。ハル君はベルリンフィルもグローバル化されて特徴が薄れたという旨を確か書かれていたと思いますが、それでもいくつかのオケを体験してきた耳で聴くと、このオケはやはり”最強”のオケであると実感しました。
「メータのブルックナーなど聴きに行く方が・・・」と昔、宇野先生が書かれていましたが、体調も万全でない中、大らかに曲を描いて少なくとも小生には全く嫌な所はなく、名曲の名演奏だったです。
ウィーンフィルの記事にベルリンフィルのことを書き込んですみません・・・。

投稿: ふうさん | 2020年12月 5日 (土) 20時15分

はじめまして。

ティーレマンは絶対見るより聴くほうがいいです。指揮姿だけ見たらドジョウすくいみたいで、若いのにかっこよくないです。ビジュアル全盛の時代に気を使わないところが逆に本物の巨匠になるやも知れないと期待せます。

投稿: 海の王子 | 2020年12月 7日 (月) 09時47分

犍陀多さん、こんにちは。

巨匠崇拝の時代を生きてきた自分としては、いまでもそれらの大巨匠には畏怖を感じます。やはり凄い時代だったなぁと思いますよね。
ティーレマンもその時代を引き継ぐ数少ない一人ですが、大巨匠のような強烈な個性では無くずっとバランスの取れたものです。
結局はリスナーの好みになりますが、お聴きになられてご損は無いのではと思います。

投稿: ハルくん | 2020年12月 7日 (月) 10時35分

ふうさん、こんにちは。

いくらウイーン・フィルがブルックナーを演奏しても指揮者が気に入らなければ好きな演奏とはなりませんね。逆に他のオケでも好きな演奏は幾つもあります。ベルリン・フィルでも同様です。

しかし指揮者との組み合わせがハマった場合にはやはりウイーン・フィルのブルックナーはやはり最高です。
これは自分の趣味ですので必ずしもそうでないという方もおられるでしょうが。

投稿: ハルくん | 2020年12月 7日 (月) 11時05分

海の王子さん

はじめまして。コメント下さりありがとうございました。

全く同感です!
「ドジョウすくいみたい」な指揮で、ウイーン、ドレスデン、バイロイトとドイツ/オーストリア音楽の中心で引っ張りだこなのは、既に本物の巨匠入りですね。得意の後期ロマン派に集中して更にそれを極めて欲しいものです。

投稿: ハルくん | 2020年12月 7日 (月) 11時44分

またまたお邪魔します。

アマゾンで注文した、お薦めのティーレマン指揮ブルックナー8番のCDを早速聴きながらコメントしていました!! 期待通りの名演奏で心から満足しました!! 一方で、確かにウィーンフィルに花を持たせた演奏であることも間違いないですね!! オケの魅力でお腹いっぱいになりました!!

これから法律の勉強があるので、本日はこれにて失礼します!!

投稿: 海の王子 | 2020年12月10日 (木) 12時14分

ブルックナーの『第8交響曲』の録音は、Deccaのショルティ、DGのベームとも、ウィーン・フィルによる好演とは必ずしも言い難いので、このティーレマン盤への期待が募ります。EMIのシューリヒトも速めの流すような面に、重厚さの不足をお感じの方も、おいででしょうし‥。世間一般では、政治、経済、スポーツ何れの分野でも各マスコミは、『まず現役第一線ありき。』のスタンスで語っておいでです。クラシック音楽界も、それで宜しいのでは、ないでしょうか。

投稿: リゴレットさん | 2020年12月11日 (金) 11時36分

勉強に身が入らないのでまたまたお邪魔します!!

昔、宇野さんが知人宅でブルックナーの4番が流れているのを聴いて、あまりにも感動的な演奏だったため、演奏者を確認したら、ムーティ指揮ベルリンフィルだったので腰を抜かした!! という出来事があって、しばらくこのCDを推薦盤になさっていましたね!!
ティーレマンのこの新盤も、ブラインド・テストをしたら、ほとんどの人が大巨匠の演奏だと信じ込むことでしょう!!

それと、他人の家のオーディオで聴くと、音色が聴き慣れていないため、どこのオケだかさっぱりわからなくなるので、録音を聴いて演奏の良し悪しを判断する時は、聴き慣れた自分の家のオーディオで聴くことが絶対必要ですよね!!

投稿: 海の王子 | 2020年12月11日 (金) 12時04分

リゴレットさん

まぁショルティはともかく、ベームもシューリヒトもウイーンフィルの好演だと思いますし好きですよ。
ティーレマンはそれに対してオーソドックスで欠点が無いと思っただけです。

大衆芸能とは別に音楽、美術、文学などの芸術は古きを知って新しきを訪ねるという姿勢が大切だと思います。私は得てして古き良きものに強く惹かれはしますが。

投稿: ハルくん | 2020年12月13日 (日) 12時32分

海の王子さん

オーディオ装置で印象が変わることは有ります。必ずしも高価であれば良いということでもなく音楽や演奏により相性が有るのも事実です。
自宅装置はもちろんですが他のお宅も色々と聴き比べてみると面白いですよ。

投稿: ハルくん | 2020年12月13日 (日) 12時36分

こんにちは。
ティーレマンとウィーンフィルのブルックナーは、交響曲第5番の2013年ザルツブルクでのライブ録音がウィーンフィルの自主制作盤で発売されていますね。
ウィーンフィルのオンラインショップで購入できるようです。
私はディスクユニオンで見つけて買いました。

投稿: ダンボー | 2021年1月 9日 (土) 07時10分

ダンボーさん、こんにちは。

5番のザルツブルクでのライブ盤が有るのですね。ミュンヘン・フィルとの5番も悪くなかったので、きっと良い演奏では無いですか?

ティーレマンは今回のチクルスで全曲を本拠地のムジークフェラインで演奏/録音すると思うので、1曲づつ入手しようと考えています。いずれは全集となりお買い得価格で出るのでしょうが、まぁ承知の上です。

投稿: ハルくん | 2021年1月 9日 (土) 09時57分

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