« ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調op.58 名盤 | トップページ | ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集 名盤 »

2020年8月16日 (日)

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 ハ短調op.37 名盤

Gettyimages11938000572048x2048

さて、ベートーヴェン生誕250年記念、今回はピアノ協奏曲第3番です。楽聖の残した5曲のピアノ協奏曲で、第5番「皇帝」に次いでは第4番が優れていると思いますが、逆境に立ち向かうような悲壮感と男っぽさという点でベートーヴェンらしいのは第3番です。

ベートーヴェンは元々この曲を「交響曲第1番」と同じ演奏会での初演を目指しましたが、第1楽章しか出来上っていなかったために断念しました。その3年後となる1803年にアン・デア・ウィーン劇場での演奏会で初演を行いましたが、ピアノ・パートが殆ど出来ていなかった為に、ベートーヴェンが自分でピアノを弾いて即興演奏で終わらせたそうです。それでも翌1804年には、ついにピアノ・パートの楽譜が完成して、ベートーヴェンの弟子のフェルディナント・リースがピアニストを務めて完全な初演をされました。

ベートーヴェンは、耳の疾患への絶望感などから1802年に、あの「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いていることから、この曲全体を覆う悲壮感はそこから生まれたような気がしますが、楽想そのものは、その2年前から既に出来ていたということになります。

曲の構成は、革新的な第4番とは異なり、古典的な協奏曲のスタイルを踏襲して書かれています。

第1楽章 ハ短調 アレグロ・コンブリオは「運命」と同じですが、「運命」ほど激しくは無いものの逆境に立ち向かう意志の力が大いに感じられます。

第2楽章 ホ長調 ラルゴは深い祈りに包まれた非常に美しい楽章で、この中間楽章は第4番のそれよりも出来が良いように思います。

第3楽章 ハ短調-ハ長調 モルト・アレグロはロンド形式で主題が繰り返された後、中間部を経過してドラマティックに盛り上がります。コーダはプレストとなり曲を閉じます。

それでは、いつも通りに愛聴盤CDをご紹介してみたいと思います。

71t0j0q8cfl_ss500_ アニー・フィッシャー独奏、フリッチャイ指揮バイエルン国立管(1957年録音/グラモフォン盤) フィッシャーはベートーヴェンを得意とした数少ない女流ピアニストの一人ですが協奏曲の録音は少なく、ステレオ最初期の録音のこの演奏は貴重です。彼女の力強い打鍵は正に”男勝り”で、この曲にピッタリです。と言って繊細さに欠けることも無く、変に神経質にならないおおらかさもベートーヴェン向きです。録音年代にしては音質は上々で、特にピアノの音は良く録れています。管弦楽の音がやや粗くは聞こえますが、フリッチャイの指揮に気迫が籠っていて中々に聴かせます。

410rqjyevvl__sl500_aa300_ ヴィルヘルム・バックハウス独奏、シュミット=イッセルシュテット指揮ウィーン・フィル(1958年録音/DECCA盤) バックハウスはいかにもドイツ的なピアニストですが、必ずしもイン・テンポを厳格に刻むタイプではありません。むしろ楽想に合わせたテンポの浮遊感を感じます。しかしそこから不自然な印象は全く受けません。音楽の流れにごく自然に感じられます。この曲でもベーゼンドルファーの骨太でいて柔らかく美しい音と、‘50年代のウィーン・フィルの柔らかな音とが極上に混ざり合っています。シュミット=イッセルシュテットは殊更に迫力を求めたりはしていませんが、それでいて聴き応えは充分です。DECCAのステレオ録音も明晰で素晴らしいです。

81ji3jgvqjl__ac_sl1500_ グレン・グールド独奏、バーンスタイン指揮コロムビア響(1959年録音/SONY盤) グールドの個々の録音を集めた全集に含まれます。衝撃的なバッハで世を席巻した時代の演奏ですが、このベートーヴェンでは古典的な楽曲のスケールを意識したように思えます。4番、5番のロマン的な弾き方に比べると、ずっと端正ですっきりとしたピアノなのです。しかし第2楽章では深い祈りの気分を聴かせます。バーンスタインもグールドの解釈に合わせたオーケストラの音造りをしていて、編成がやや小さめに聞こえますが、決して薄っぺらで軽い音では有りません。ドイツの伝統的な重厚な響きと比べて新鮮です。録音も明瞭で優れています。

B29368989916_1 ハンス・リヒター=ハーザー独奏、ジュリーニ指揮フィルハーモニア管(1960年録音/EMI盤) 真にドイツ的なピアニストと呼ばれたリヒター=ハーザーが同じ年にEMIに録音した3番から5番までのうちの1曲で、この3番のみ指揮がジュリーニです。リヒター=ハーザーは男性的で豪放とも呼べる打鍵を持ちますが、“がさつさ“とは無縁で、弱音部分では神経質に陥らない絶妙の繊細さも持ち合わせ、それらが全てドイツ音楽を感じさせる、ずしりとした手応えを聴き手に与えてくれます。ジュリーニのオーケストラ統率も手堅いです。録音は当時のEMIとしては上質で、これはリヒター=ハーザーのベートーヴェンボックスに含まれます。

41ploftjgjl__ac_ ヴィルヘルム・ケンプ独奏、ライトナー指揮ベルリン・フィル(1961年録音/グラモフォン盤) まず冒頭のライトナー指揮のベルリン・フィルの暗い音色で重々しい演奏が印象的です。この当時のこのオケの音色はプロシア的で本当に良かったです。ケンプはいわゆる男性的で豪放的な演奏とは異なりますが、ドイツの伝統を基本とした堅牢さに惹かれます。この人特有の優しさや虚飾の無い美しさも相変わらず魅力的です。第2楽章の祈りもとても深く感動的です。録音はピアノ、管弦楽ともアナログ的な落ち着いた響きで美しく録れています。

71jk1d9kx2l_ac_sl1200_ スヴャトスラフ・リヒテル独奏、ザンデルリンク指揮ウイーン響(1962年録音/グラモフォン盤) まず冒頭の長い導入部のザンデルリンクの造る音楽の雄大さ、素晴らしさに圧倒されます。気宇が極めて大きく、それでいて堅牢な古典的造形性が見事だからです。ウイーン響の持つ音のしなやかさとドイツ的な厚い響きが両立しているのも最高です。リヒテルはライブの時のあの我を忘れるような高揚こそ有りませんが、立派この上なく、技術的にも安定感抜群のピアノはザンデルリンクの音楽にピタリ一致します。全体の音楽を主導するのはザンデルリンクという印象ですが、それに埋もれるようなこの人では無く、両者の協調と競演が極めて高い次元で見事にバランスが取れています。

71dfn4bl1gl_ac_sl1050_ ルドルフ・ゼルキン独奏、バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1964年録音/CBS盤) この録音当時のゼルキンはCBSのドイツ音楽の看板ピアニストとして活躍しましたが、義理父のアドルフ・ブッシュの精神を受け継いだ、魂の演奏を聴かせてくれました。それは古典的で堅牢な演奏スタイルでは無く、ブッシュやフルトヴェングラーに代表される正に炎と化すような演奏でした。そういう点で、この頃のバーンスタインとの相性は非常によく、第1、第3楽章での白熱した演奏と、第2楽章の沈滞した表現との対比が素晴らしいです。

41smq4ndwl_ac__20200816173701 ダニエル・バレンボイム独奏、クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管(1967-68年録音/EMI盤) 若きバレンボイムと巨匠クレンペラーが共演した全曲録音の1曲です。第1楽章冒頭からクレンペラーの極度に遅いテンポとスケールの大きさに驚きます。しかしバレンボイムが入ってからも、その音楽に自然に溶け込んでいます。第2楽章もテンポは遅いですが静寂感が良いです。第3楽章は1楽章ほどの遅さは感じませんが、悠揚迫らざるスケールの大きさは相変わらずです。録音は当時のEMIの標準的レベルで過大な期待は禁物です。

510 エミール・ギレリス独奏、セル指揮ウィーン・フィル(1969年録音/オルフェオ盤) ギレリスはセル/クリーヴランド管とEMIに全集録音を行いましたが、これはザルツブルグ音楽祭でのライブです。「鋼鉄の音」と称された(自分にはそれは揶揄されたとしか思えないのですが)ギレリスの音はロシア物はともかく、ドイツ音楽にはそれほど食指を動かされません。しかしこの録音では音に適度な柔らかさが感じられて抵抗有りません。優れた技術に裏付けされつつ、ひたすら誠実に弾くのには好感が持てます。セルもクリーヴランド管とのCBS録音で見せた、完ぺきな機能主義による冷徹さが、ウィーン・フィルの柔らかな音に中和をさせられていて好ましいです。このCDには同日のメイン曲の「運命」も収録されていて、それもまた素晴らしいです。 

Emperar001 フリードリッヒ・グルダ独奏、シュタイン指揮ウィーン・フィル(1970年録音/DECCA盤) 冒頭からホルスト・シュタインの指揮するウィーン・フィルが引き締まった音で緊張感を持ち、それでいて美しい響きに思わず引き込まれます。要所で打ち込むティンパニも効果的です。グルダのピアノはここではドイツ的でがっちりとしていますが、切れの良さも十分で素晴らしいです。第1楽章の推進力と切迫感、第3楽章の躍動感に魅了されますが、第2楽章の美しさも特筆できます。DECCAの優秀なアナログ録音なのが嬉しいです。

81xkbvrwhsl_ac_sl1400_ マウリツィオ・ポリーニ独奏、ベーム指揮ウィーン・フィル(1977年録音/グラモフォン盤) ポリーニのピアニスティックな魅力は、優雅な曲想の第4番よりは「皇帝」やこの曲に発揮されるようです。研ぎ澄まされた硬質の音が好みかどうかは別にしても、一音一音の打鍵そのものに凄みが有るのは確かです。ベームの指揮に関しては、相変わらず貫禄充分でずしりとした重みを感じさせて素晴らしいです。それに、ウィーン・フィルから引出す、フォルテの引き締まった迫力ある音と、美しくしなやかな音との演奏の区分けが実に見事です。この時代のグラモフォンの録音は安心して楽しめます。

272 ルドルフ・ゼルキン独奏、クーベリック指揮バイエルン放送響(1977年録音/オルフェオ盤) ゼルキン74歳の時にミュンヘンで行った全曲チクルスのライブです。セッション録音の様にフォルムが整理し尽くされた演奏では無く、実演ならではの自在さが感じられて楽しめます。打鍵も‘64年録音盤と比べても決して聴き劣りしないのは流石です。その上に巨匠としての円熟が加わっていて非常に魅力的です。ゼルキンは真にドイツ的な僅か数名の巨匠ピアニストの一人だったと断言します。クーベリックの指揮もゼルキンを力強くサポートしていて素晴らしいです。録音はやや柔らか過ぎかもしれませんが、客席で聴く雰囲気充分で良いです。

818mdiyd7gl_ac_sl1417_ アルトゥーロ・ベネディッティ=ミケランジェリ独奏、ジュリーニ指揮ウィーン響(1979年録音/グラモフォン盤) クレンペラーほどは遅くありませんが、ジュリーニの遅めのテンポでスケール大きく開始されます。厚みが有りながらも、しなやかでウィーン的なオケの音も素晴らしいです。ミケランジェリも一音一音を丁寧に彫琢された音で弾いていますので両者の愛称は良いですが、音楽に奔流のような勢いはさほど感じません。しかし立派で高貴なベートーヴェンということでは比類が無く、そういう点では思わず引き込まれてしまいます。ライブですが演奏は完璧で、録音には臨場感が有り細部の再現も優れています。

7fcd8540eb49a9220748ae0f70890ff4 クラウディオ・アラウ独奏、ディヴィス指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1987年録音/フィリップス盤) アラウは南米チリの生まれですが、子供の時からドイツで学んだので、確かにドイツ的なピアノを弾きます。この録音時には84歳となっていて、遅めのイン・テンポで淡々と歩み行く、正に大家の演奏です。第2楽章の深い祈りの雰囲気が味わい深いですが、第1、第3楽章のスケールの大きさも中々の物です。極めて誠実で朴訥に弾いているのはバックハウス以上ですが、メリハリは弱く人によっては退屈に感じるかもしれません。ディヴィスはアラウに合わせた堅牢な指揮ぶりで、SKドレスデンの響きの良さに魅了されます。録音も良く、柔らかく厚みのある響きが最高です。

71csz0dey5l__ac_sl1400_ クリスティアン・ツィマーマン独奏、バーンスタイン指揮ウィーン・フィル(1989年録音/グラモフォン盤) 録音当時まだ33歳のツィマーマンをアラウの後に聴くと、良くも悪くも若さを感じます。もちろんテクニックは申し分無く、ピアノの音色も美しいのですが、幾らか落ち着きのなさが感じられます。それでも第2楽章などは情緒深く聴かせてはくれますし、第3楽章の切迫感も悪くはありません。バーンスタインは晩年にもかかわらず、重量感と生命力を感じさせて素晴らしいです。全体的には同じコンビの「皇帝」「4番」に比べて出来栄えがやや落ちるでしょうか。

41lxad4j66l__ac_ マウリツィオ・ポリーニ独奏、アバド/ベルリン・フィル(1992年録音/グラモフォン盤) ポリーニ15年ぶりの再録音は全曲チクルス演奏会のライブ収録です。良くも悪くも贅肉の無いポリーニのピアノに大きな違いは感じません。それでも自己主張がより明確になっているのは本人の円熟なのでしょうが、指揮者の違いも有るように思います。アバドの指揮は全体的にレガート気味で雰囲気は有りますが、ベームのような厳しさが感じられません。ベルリン・フィルの音も当然そのように聞こえます。ですので自分の好みで言えばベームとの旧録音を取ります。

51uwabwfp5l__sx466_ アンドラーシュ・シフ独奏、ハイティンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン(1996年録音/テルデック盤) シフが43歳の時の録音です。モダンピアノによる演奏ですが、奏法はいかにもシフらしく端正で古典スタイル寄りのものです。従って「現代的過ぎるのは嫌だが古楽器ピアノではちょっと」という方には丁度良いのではないでしょうか。古雅な音色を持つSKドレスデンとの組み合わせはとても良いです。ハイティンクもいつもながらの自己主張をしない指揮スタイルでこのオケの良さを引き出していて好感が持てます。録音も優秀です。

81gvgswskcl__sl1400_ アルフレード・ブレンデル独奏、ラトル指揮ウィーン・フィル(1997年録音/フィリップス盤) ブレンデルの三度目の全集盤に収められています。指揮者のラトルはEMIから借りてきた、いわば“ゲスト”なのですが、譜面の細部の読み方が深く、第1楽章の長い導入部からして既に主役の様に聞こえます。肝心のブレンデルの方が幾らか影が薄いです。それでもブレンデルは若い頃のような分析的なピアノ演奏では無く、ベートーヴェンの音楽に自然に向かい合う真摯さが好印象です。ラトルの譜読みは意図が見え見えなのは余り感心しませんが、それさえ気にならなければ全体的には良い演奏だと思います。特に第2楽章は美しいです。

61pzza8azrl_ac_sl1200_ マルタ・アルゲリッチ独奏、アバド指揮マーラー・チェンバー管(2004年録音/グラモフォン盤) アルゲリッチはベートーヴェンの協奏曲を1番、2番は良く演奏していますが、3番以降はほとんど知りません。ですので、このアバドとの共演のライブ録音は貴重です。しかも素晴らしい演奏です。基本の造形は押さえた上で随所に彼女らしい力強さと即興的な閃きを感じさせます。それでいてしばしば閉口させられる恣意的なアクの強い表情付けが有りません。第2楽章のまるでシューマンのような夢見るような美しさも絶品です。アバドの指揮も室内管の特性を生かした美しいもので、アルゲリッチとの息がピタリと合っています。ちなみにカップリングされた第2番のほうも同様に素晴らしいです。

ということで、この曲に関しては決定的なフェイヴァリット盤は存在しませんが、あえて上げれば、バックハウス/シュミット=イッセルシュテット盤、リヒテル/ザンデルリンク盤、グルダ/シュタイン盤でしょうか。そしてアルゲリッチ/アバド盤が僅差で肉薄します。
更に続くとすれば、ケンプ/ライトナー盤、ゼルキン/クーベリック盤、シフ/ハイティンク盤辺りです。

<補足>アニー・フィッシャー/フリッチャイ盤、リヒテル/ザンデルリンク盤、ギレリス/セルのオルフェオ盤、アルゲリッチ/アバド盤を追加しました。

|

« ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調op.58 名盤 | トップページ | ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集 名盤 »

ベートーヴェン(協奏曲)」カテゴリの記事

コメント

暑さが続いていますが、お変わりありませんか。久しぶりに、コメントさせて、いただきます。
今回。紹介されている演奏は、ほぼ所有しており、私も、バックハウス、グルダがピアノ、オーケストラ共、バランスがとれており、この曲に、相応しいと感じました。そこで、私が紹介したいのは、1969年、ザルツブルク音楽祭のライブで、オルフェオから出ている、ギレリス、セル/ウィーンPOの演奏です。ギレリスはセルとのコンビで、EMIに全集を録音し、私も聴いてみましたが、あまり。感銘を受けませんでした。しかし、ザルツブルクでのライブは、お互いに気分が乗った、素晴らしい出来映えになっています。おすすめの盤です。尚、このオルフェオ盤には、当日の演奏として、「エグモント」序曲と、交響曲第5番が併禄されています。

投稿: クレモナ | 2020年8月24日 (月) 21時47分

クレモナさん、お久しぶりです。

ありがとうございます。変りはございません。
クレモナさんもお元気そうでなによりです。

ギレリスとセル/ウイーンPOのライブ盤ですが、気憶違いでなければ随分前に購入して、その後に手放しています。
その時は余り感銘を受けなかった為と思いますが、当時とは嗜好も変化しており、改めて聴きたくなりました。聴き直しましたら追記したいと思います。

投稿: ハルくん | 2020年8月24日 (月) 23時51分

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番
(女性ピアニスト編)

ハルくん様

コロナ禍と猛暑が続きます。マスクをしてこの暑さの中を歩くと顔中汗だらけになります。早く涼しくなって欲しいが、涼しくなるとコロナウィルスが大暴れしそうでそれも困るし、本当に複雑な気持ちです。ハルくん様も御家族様もお身体には十分御注意下さい。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番は5曲のピアノ協奏曲の中で唯一の短調で、ハ短調というベートーベンの短調の傑作が沢山ある調です。
多くの録音がありますが、その中で案外女性ピアノに名盤が多いような気がします。そこで僕の手持ちの録音をいくつか紹介させていただきます。

・クララ・ハスキル/マルケヴィッチ ラムルー管

ハスキルと言えばモーツァルトですが、彼女は案外ベートーヴェンも多く録音しています。
このコンビによるモーツァルトは、マルケヴィッチの疾風怒濤のような伴奏があまりモーツァルト的でないので、ほとんど聴きませんが、ベートーヴェンでは逆に上手くいっているような気がします。ちょうど剛速球のピッチャーから技ありのヒットを打つようなスリリングな演奏です。マルケヴィッチの異才にハスキルの天才が絡んで世にも稀な名盤が生まれたというのが正直な感想です。しかしこうした名盤は二度と現れないと思います。

・アニー・フィッシャー/フリッチャイ バイエルン国立管弦楽団

ベートーヴェン弾きを語る時、彼女の名を落とすことはできません。
女性ピアニストによるピアノ・ソナタ全集を完成させたのは、彼女が初めてではないでしょうか。ベートーヴェンとシューマンは彼女の重要なレパートリーだったようで、録音も多くあります。しかし彼女は稀代の才能を持っていましたが、有名な録音嫌いで多くはライヴ録音です。
しかしこの録音は数少ないスタジオ録音で、指揮者がフリッチャイというドリームコンビによるもので、内容も凡庸な男性ピアニストなど足元にも及びません。

・内田光子/ラトル ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

内田さんは何と言ってもショパン・コンクールで第2位に輝いた実績を持ちます。海外では高い評価を得ているのに、案外日本では不人気です。何でもお犬様の品評会のように純潔でないと気が済まない日本人の悪い性癖でしょうか。
内田さんはザンデルリンクともこの曲を録音していますが、完成度ではラトルと共演したこちらの録音の方が高いと思います。
内田さんの演奏は例によって「肉を切らせて骨を切る」的な演奏で好みははっきりと分かれると思います。率直に言って僕も好きなタイプのピアニストではありませんが、それでも聴き続けなければならないピアニストです。

以上、長くなりましたが女性ピアニストはベートーヴェンは不向きという偏見がなくなればよいと思い、投稿させていただきました。

投稿: motosumiyosi | 2020年8月30日 (日) 16時14分

motosumiyosiさん

ありがとうございます。案外これから体調を崩しやすい時期ですからね。お互いに気を付けましょう。

自分では全く意識していませんでしたが、確かに女流が一人も居ませんね!これは私の潜在意識に『ベートーヴェンは男に限る』という印象が潜んでいるのかもしれません(汗)
ただ、元々ドイツの往年の巨匠タイプの演奏が好きなせいも有るとは思います。
あえて女流で聴いてみたいとすれば、グリモー、ブニアティシュヴィリ、あとはアルゲリッチというところでしょうか。
グリモーは「皇帝」が素晴らしかったですし期待しますね。

投稿: ハルくん | 2020年8月31日 (月) 11時04分

若きエッシェンバッハの演奏がbest。

投稿: RO | 2020年9月 6日 (日) 22時04分

バックハウスのソロ、ベーム指揮のモノーラル盤は如何でしょう。KINGからMZ-5029と言う番号の千二百円盤で聴き込み、今も手元にございます。ひょっとしてSP原盤かと思うレンジの狭苦しく感じる音質ですけれど、両者のキリリと引き締まった演奏ぶりが、ある種の闘争的な楽想、取り分け第一楽章の描きっぷりにピッタリと言う印象なのです。

投稿: リゴレットさん | 2020年9月13日 (日) 12時41分

リゴレットさん

バックハウスは私にとっては神様ですので、ベーム以外にクレメンス・クラウスとのモノラル時代の録音も大好きですよ。
ただし、あの音の良いステレオ録音が有るので、どうしてもそちらに食指が傾きます。

投稿: ハルくん | 2020年9月14日 (月) 12時33分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調op.58 名盤 | トップページ | ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集 名盤 »