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2019年7月15日 (月)

プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」 東京文化会館/新国立劇場共同制作”オペラ夏の祭典2019-20”

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昨日は東京文化会館と新国立劇場の共同制作によるプッチーニの歌劇「トゥーランドット」を観に上野の東京文化会館へ行ってきました。
この演目はびわ湖ホールと札幌でも公演される予定らしく、日本のオペラ公演の今後の一つの興行の在り方を示す画期的なプロジェクトだと思います。

総合プロデュースは指揮者の大野和士ですが、演出、美術、衣装にスペインのバルセロナ出身のスタッフが担当し、オーケストラはバルセロナ交響楽団です。
最初はどうしてわざわざスペインからオケを呼ぶ必要が有るのか疑問を持ちましたが、今日の演奏を聴いてみて納得が出来ました。大野が監督をしているこのオーケストがこの演目に欠かせなかったからです。それほど素晴らしかったです。音の重心が低く、ずしりとした重み、厚みが有り、非常に骨太でひ弱さが有りません。繊細な美しさも充分持っていますが、それが弱さに繋がらずに、あくまで逞しさを感じさせます。実はそれは新国立劇場に入る幾つかの在京オケにいつも感じてきた弱点だからなのです。

それにしても大野和士の指揮は流石でした。いくら主兵のオケといえども、ダイナミックさと繊細さのバランスが絶妙で、かつ、このオペラの近現代的な斬新な音を普段CDで聴いている以上に素晴らしく再現していました。

声楽陣も主要役柄は皆素晴らしく、最も気に入ったのはカラフのイリンカイでした。充分な声量と豊かな情感を備えた素晴らしいテナーです。「誰も寝てはならぬ」は感動的でした。
タイトルロールのテオリンも良かったですね。この大変な役を聴きごたえ充分で不満はありません。リューの中村恵理さんもとても良かったです。第一幕のアリアでは正直それほどでもありませんでしたが、三幕の自刃のアリアでは情感が籠りに籠り大粒の涙を誘いました。
新国立劇場、藤原歌劇団、びわ湖ホール合同の合唱団はとても力強く厚みが有り、オーケストラと一体になりこのオペラの一つの醍醐味をたっぷりと味合わせてくれました。少年合唱はとても上手かったのですが、何というか合唱コンクールのように聞こえたのがちょっとでした。例の「やーまのおてらの鐘がなる~」(笑)のところは同じ綺麗でももっと神秘的な雰囲気が欲しかったです。

最後に演出については、ことさら前衛的でもなく、オーソドックスさと現代的な感覚とのバランスが良かったように思います。演出には保守的な自分でも充分楽しめたのは良かったです。

このような質の高いプロジェクトならば、目の玉の飛び出る高額チケットの海外歌劇場の引っ越し公演よりもむしろ大歓迎です。

 

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コメント

ハルくん様
各地で続々と梅雨明け宣言が行われ、まさに灼熱の日本列島でございますが、貴ブログ御拝見しております限り、御変わりない御様子何よりで、ございます。
さて、このような豪華な公演が行われるとは、首都圏にお住まいの好楽家の皆様への羨望の念を、禁じ得ません。このオペラは絶対に資格面抜きでは、面白みと真価は味わえないかと、存じます。
当方もレヴァイン指揮の1987年度のメット公演のDVDを観賞して、その事を確認し得た次第です。
CDやLPで耳からだけ接していた時分は、『えっ、これがラ・ボエームやトスカを書いた作曲家の、絶筆作品?』との思いが拭い切れませんでしたが、観て解る作品である‥と、自分なりの結論を見いだしました。
去年『コジ・ファン・トゥッテ』、一昨年『フィガロの結婚』で、楽しませていただいた川西市の『みつなかオペラ』で、2024年度の予定演目がこのオペラでしたが、同ホールの空調機器の異常により中止のやむなきに至ったとの告知を、HP上で閲覧して、いささかガッカリです。それでは。

投稿: リゴレットさん | 2024年7月27日 (土) 10時43分

リゴレットさん、こんにちは。

今年の猛暑は長いですね。いよいよ「命に関わる暑さ」となってしまいました。
おかげさまで変わりありませんが、最近は腰と背中が湾曲してきて歩き辛くなりました。これも齢を重ねた宿命と言えばやむを得ませんが、リハビリを心がけています。

演奏会形式の公演は頻繁に行われていますが、やはりオペラは舞台付きで無いと物足りません。それで料金が安ければ良いのですが、案外そうでもありませんし。
むしろ演奏の質はともかくもリーゾナブル価格の市民オペラを楽しむのは好きです。

公演が中止されたのは残念でしたね。でもいずれまたやられることでしょう。

投稿: ハルくん | 2024年7月30日 (火) 12時03分

ハルくん様
私も緑内障による左目の視力劣化、上昇気味の血圧etc.‥年齢相応の寄る年波からは逃れ得ておりませんが、何とかやっているといった趣で、あります
オフ日に観ているケーブルTVの各種スポーツ中継も、以前に比して見辛くある種の苛立たしい気分もございますけれども、我慢ですね(笑)。ゴールデン・ウィークなどに期間限定っぽく無料配信してくださっていた、『クラシカ・ジャパン』も放映終了して、しまいましたね。

投稿: リゴレットさん | 2024年7月30日 (火) 14時47分

リゴレットさん

緑内障は私も有りますが、年齢相応の症状と言うことで諦めています。
TVは大型化で困らないのですが、本や新聞の文字などが見づらくなったのと長時間見ているのは辛いですね。
幸い音楽を聴くのには何ら困っていないことだけが救いです(笑)。

投稿: ハルくん | 2024年7月31日 (水) 10時12分

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