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2019年3月

2019年3月25日 (月)

ベルリン放送交響楽団 2019日本公演

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土曜日は自宅からほど近いハーモニーホール座間でベルリン放送交響楽団のコンサートを聴いてきました。指揮はウラディーミル・ユロフスキー、独奏ヴァイオリンは諏訪内晶子さんです。
プログラムの前半がブラームスのヴァイオリン協奏曲、後半がベートーヴェンの交響曲第7番でした。

諏訪内さんの生演奏は久しぶりですが、相変わらず艶やかなお姿で舞台に映えます!彼女のブラームスの協奏曲を聴くのは初めてでしたが、演奏にはパッションが充満していました。特に三楽章がオーケストラ共々、ラプソディックな雰囲気と激しいリズムがとても素晴らしかったです。ユロフスキーの細部へのこだわりも相当なもので、音の変化が聴いていて実に楽しいです。
後半のベートーヴェンでも次々と現れる動機毎に細かく音のニュアンスを変化させていて凄かったですね。終楽章などともすると熱演、爆演に感動して終わり!(もちろんそれは良いのですが)となりますが、そうでは無く彫琢の限りを尽くしているのは、随分前にアーノンクールとウイーン・フィルで聴いたこの曲の演奏以上でホント凄かったです!

ご近所でこういう演奏を低価格で聴けるというのは実にありがたいことです。

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2019年3月18日 (月)

シューベルト 歌曲集「美しき水車小屋の娘」 名盤 ~さすらい人の子守歌~

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歌曲集「冬の旅」で絶望と孤独感に満ちた若者の心象風景を描いたシューベルトですが、その4年前に書き上げた歌曲集「美しき水車小屋の娘」では希望に胸を膨らませて、さすらいの修行の旅に出る若い粉ひき職人が主人公でした。

若者はさすらいの旅が楽しくて仕方が無く、見るもの聞くものに新鮮な驚きと喜びを感じます。やがて立ち寄った水車小屋で美しい娘と出会い、甘い憧れの恋に落ちます。ところがやがて狩人が現われて彼女を奪われてしまいます。打ちひしがれた若者は小川に苦しい心のうちを語りかけますが、ついには川の水に誘われるように身を投げてしまいます。小川は若者を水で包み込み、せせらぎをまるで子守歌のように優しく聞かせます。

この歌曲集は全部で20曲から成りますが、どの曲をとっても抒情的で美しい名曲ばかりです。とりわけ第8曲から第10曲ではシューベルト歌曲の魅力が極まった傑作が連続していて息つく間もありません。そこから若者が娘を奪われてしまう恐れ、苦しみを経て最後の小川の慰めに至るまでの展開と音楽は何物にも代え難いです。

この歌曲集も元々テノール歌手に献呈されましたし、そもそも主人公は若き旅人ですので、テノールで歌われるのがイメージ的にベストです。バリトンで歌われると、どうも娘に恋して憧れる青年には聞こえにくい気がします。あのFディースカウも「冬の旅」と違って「水車小屋」を晩年までレパートリーとすることは有りませんでした。この作品はテノールが歌うのが本来の姿だと考えていたようです。

ということでテノール歌手はこの作品をこぞって歌っていますし、所有CDも自然と多くなりますので、ここはズバリ本命のテノールからご紹介したいと思います。

Schubert_mullerin51jde2pgcwl アントン・デルモータ(T)、ヒルダ・デルモータ(Pf)(1953年録音/DECCA盤) ウイーンのオペラ界で活躍した往年の名テノール歌手デルモータの録音です。それにしても、まあ何というおおらかな気分にさせてくれる歌唱なのでしょう!現代の緻密で彫琢の限りを尽くしたようなスタイルとはまるで世界が異なります。やはり時代の違いなのでしょうね。もっともそれは楽器の世界でも同じです。こういう人間の柔らかな肌の温もりを感じる演奏というのはやはり捨てがたいです。時々思い出しては聴きたくなります。ピアノを弾くヒルダは奥様です。

Schubert_mullerin230073054 フリッツ・ヴンダーリッヒ(T)、フーベルト・ギーゼン(Pf)(1966年録音/グラモフォン盤) 不世出のドイツリート歌手ヴンダーリッヒの代表盤です。とにかく声の美しさ、歌のきめ細かさ、力強さ、情感、どれをとっても最高ですし、その大きく伸びやかな歌い回しはドイツリートの”ベルカント”とでも称したくなります。後にも先にもこんな歌を聞かせるリート歌手は居ません。ここでは”さすらう若者”に成り切った歌を聞かせてくれます。これこそは本当の”不滅の名盤”です。ところがこの人は若くして不慮の事故で命を落としてしまいます。なにもそこまで成り切らなくても良かったのですが。

Schubert_mullerin_haefli エルンスト・ヘフリガー(T)、エリック・ウェルバ(Pf)(1967年録音/SONY盤) ヘフリガーも美声で日本でとても人気が有りました。この壮年期の録音は、とても端正で清潔感に溢れる歌唱を聞かせます。さすがは名エヴァンゲリストとしての面目躍如というところでしょうか。しかし個人的には少々真面目過ぎる印象を感じてしまします。主人公の若者に成りきるというよりは、客観的に物語を語っているかのようです。ストレートな歌い方とのギャップが有るように思います。テンポに関してはこの時代にしては随分と速めで軽快です。

Schubert_mullerinzap2_g2778616w エルンスト・ヘフリガー(T)、イェルク・エーヴァルト・デーラー(Hf)(1982年録音/クラーヴェス盤) ヘフリガーが既に60歳となった時の録音ですが、驚くことに声の美しさや若々しさが全く失われておらず、むしろ声には艶やかさが増しているほどです。歌い方も主人公の若者に成り切ったような主体的な印象が強くなりました。これは旧盤との大きな違いです。やはりこの方が聴き手の心に直接届くような気がしてなりません。それでも古楽器の伴奏ということもあり、全体的にはとても古典的なスタイルを感じます。

Schubert_mullerin51vs3dco8el_sy355_ ペーター・シュライヤー(T)、ワルター・オルベルツ(Pf)(1971年録音/Berlin Classics盤) シュライヤーの若い時代の録音で、ゆったりとしたテンポで過度な表情付けは全く見られず、とてもシンプルで美しく歌い上げています。声質も若々しい主人公に近い印象ですが、この人は声が賢過ぎて、どうも常に知性が勝っているようなイメージが有ります。作品によっては足を引っ張るように思います。この作品でも、とても失恋でこの世を捨てるような青い若者には聞こえないのですが、皆さんは如何でしょう?

Schubert_mullerina1fxqwv4mcl_sl1416 ペーター・シュライヤー(T)、アンドラ―シュ・シフ(Pf)(1989年録音/DECCA盤) シュライヤー壮年期の録音では表現主義的な歌唱となり、そのオーバーな表情付けが余り好みではありません。演出臭さというまでは感じませんが、何かリートというよりもオペラを聴いているような印象です。声の質がインテリ臭いのもこの歌曲集にはマイナスです。個人的にはタミーノ王子とかの役では大好きなのですが。但しシフのピアノは全体的に素晴らしく、特に終曲は白眉です。小川の水が若者を包み込み静寂に流れゆく様をこれほど美しく弾いた人を知りません。この曲ではシュライヤーも最高です。

Schubert_mullerin910 クリストフ・プレガルディエン(T)、アンドレアス・シュタイアー(Hf)(1991年録音/ハルモニアムンディ盤) プレガルディエンは宗教曲で鍛えられた真摯さ、敬虔さが滲み出る歌唱が素晴らしいです。作りものめいた表情は一切なく、しかし無表情ということでは無く、ここぞという部分ではかなり大胆に攻めています。インテリ臭く感じることもなく、さすらいの修行にひたむきな若者そのものを感じられるの声の質がとても好ましいです。シュタイアーのピアノも素晴らしく、時にギターを思わせるようなアルペジオを奏でていてユニークです。

Schubert_mullerin41sgkhppmel ヴェルナー・ギューラ(T)、ジャン・シュルツ(Pf)(1999年録音/ハルモニアムンディ盤) これもまた素晴らしいシューベルトです。声質で言えばヴンダーリッヒの次に好みます。歌い回しも非常にセンスが良く、わざとらしさやインテリ臭さ、また神経質な感じも皆無で、粉屋の修行にひたむきな若者のイメージにピッタリです。シュルツのピアノも特筆もので、これだけ上手く音楽的な伴奏ピアノは中々聴いたことが無いかもしれません。

Schubert_mullerin51vcvomoygl_sx355_ イアン・ボストリッジ(T)、内田光子(Pf)(2003年録音/EMI盤) 二人の細かい表情の変化が驚くほどですが、余り演出臭さは感じません。どれだけ入念な準備をしたのでしょうか。内田光子のピアノも立派で聴き応えが有ります。ボストリッジの声質は澄んでいてとても綺麗ですが、人物のキャラクターがひ弱そうに感じられます(声そのものではなく、あくまでイメージがです)。第1曲目から、この若者に果たして修行の旅が務まるのだろうかと思えてしまいます。もっとも狩人に恋人を奪われて、傷心して川に身を投げてしまうあたりは、むしろ『らしい』のかもしれません。

ここからはバリトンですが、どうしても保有ディスクの数は少なくなります。

Schubert_mullerin1e8hdd092l ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)、ジェラルド・ムーア(Pf)(1961年録音/EMI盤) Fディースカウはこの作品の録音を4回行いましたが、代表盤としては後述のDG盤かこのEMI盤になります。声の若々しさは理想的ですが、元々バリトンで声に風格が有り過ぎるのと、第15曲「嫉妬と誇り」など速い曲での発声が余りに歯切れが良すぎて可笑しくなるほどです。ゆったりとした曲での情感は見事ですが、既に演出臭さがかなり感じられるのが好みでは有りません。ムーアのピアノの録音が不明瞭なのもマイナスです。

Schubert_mullerinzap2_g6403339w ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)、ジェラルド・ムーア(Pf)(1971年録音/グラモフォン盤) 世評に高い録音で、Fディースカウのというよりも「水車小屋」のベストに選ぶ方も多いです。確かに全盛期のディースカウの歌唱は驚くほどの上手さで、どんなに些細な部分でも意味のない歌われ方は有りません。ムーアのピアノも正に同様のことが言えて最高の歌曲伴奏ですので、両者はある意味で究極の演奏です。しかし好みというのは難しいもので、「ディースカウは余りに上手過ぎるのが鼻につく」と感じられる天邪鬼?も世にはおられるでしょう。何を隠そう、自分もその一人ではあります。演出臭さも拭い去ることは出来ませんが、それは聴き返すうちに抵抗感が減りはします。

4127pzs4xglクリスティアン・ゲルハーエル(Br)、ジェラルド・フーバー(Pf)(2003年録音/Arte Nova盤) 正統的なドイツリート歌唱として安心して鑑賞することが出来ます。ピアノも手堅いです。録音も良いので、廉価で1枚購入したいと思う方にはお薦め出来ます。但し数ある名盤の中でこれを真っ先にお薦めしようとまでは思いません。声も立派ですし、欠点のない演奏ではありますが、閃くような感動を与えてくれることは少なくとも自分に対しては有りません。

Schubert_mullerine40884e841ce07dddb マティアス・ゲルネ(Br)、クリストフ・エッシェンバッハ(Pf)(2008年録音/ハルモニアムンディ盤) バリトンの中ではFディースカウの1971年盤と並んで愛聴しています。演出臭さを全く感じさせない、しっとりとした歌い方と声そのものの質ではゲルネの方をずっと好みます。しかもエッシェンバッハのピアノの見事さにはとことん魅了されます。歌曲の伴奏としてはムーアが完璧だと思いますが、ピアニストとしての表現力と風格ではエッシェンバッハに軍配が上がると思います。

以上、マイ・フェイヴァリットは何を置いてもヴンダーリッヒ盤です。次点としてはギューラ盤を上げたいです。
バリトンでもFディースカウの1971年盤とゲルネ盤は上げておきたいと思います。

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