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2018年8月11日 (土)

ドヴォルザーク 交響曲第5番へ長調op.76 名盤 ~続・ボヘミアの草原にて~

Orig

ドヴォルザークの交響曲は作曲年代を追うごとに充実して行きますが、それでは滅多に演奏される機会のない第5番までの作品がつまらないかと言えばそんなことはありません。

作品番号の付いていない第1番からして既にドヴォルザーク好きにとってはグッとハートを惹きつけられる魅力が有ると思います。ただ、その割には第2番と第3番に関してはもうひとつ魅力が足りなくは感じています。

第4番以降については文句無しで、諸先輩作曲家達から受けた影響が完全には拭い去れないものの、ドヴォルザーク自身としての音楽の魅力が大きく感じられます。

今回上げた第5番も最初に楽譜出版されたそれ以降の作品の中に有って非常に楽しめる秀作交響曲だと思います。作曲者自身はこの曲に作品番号Op.20を付けたのですが、こともあろうに楽譜出版を行ったジムロックが勝手にOp.76と付けてしまいました。そのために長い間第6番、第7番よりも後に書かれた作品だと誤って考えられていました。

しかし裏を返せば、この第5番がそれだけ魅力的だったということなのでしょう。個人的にも第6番よりもむしろこちらを好んでいます。

第1楽章はアレグロ・マ・ノントロッポで、第6番とも共通したボヘミアの陽光の牧草地をイメージさせる大変美しい楽章です。時折アルペンホルンらしい音も聞こえて爽やかなことこの上ありません。 

第2楽章アンダンテ・コンモートは主部のほの暗く情緒的な旋律の美しさにはドヴォルザークファンならずとも魅了されることでしょう。スラヴの哀愁が一杯に漂っています。

第3楽章スケルツォ楽章ですが、主部はスラブ舞曲風で快活なリズムが印象的です。中間部も明るく幸福感に満ち溢れています。

第4楽章アレグロ・モルトは極めてエネルギッシュであり、その荒々しさは同じスラヴでもむぢろロシア的な印象です。畳みかけるリズムと金管と打楽器の迫力にいやでも興奮させられます。

それでは僕の愛聴盤のご紹介です。

41841syprrlヴァ―ツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1972年録音/スプラフォン盤) ノイマンのチェコ・フィルとのドヴォルザーク交響曲全集の旧録音盤に含まれます。写真はその全集盤です。チェコ・フィルの持っている温かく素朴な響きがこの曲にピタリと合っています。ノイマンの指揮はいつも通り、わざとらしさの無い自然体なのですが、終楽章辺りでも、スラヴの迫力を必要十分にしっかりと引き出していて物足りなさは皆無です。ティンパニの切れの良さは印象的です。各楽器の音が明瞭に聞き取れる優れたアナログ録音であるのも嬉しい限りです。 

711lltp5pwl__sl1087_ズデニェック・コシュラー指揮スロヴァキア・フィル(1978年録音/オーパス盤) オーパスレーベルに録音された交響曲全集はノイマンの新旧の全集盤と並ぶ素晴らしい金字塔です。コシュラーとスロヴァキア・フィルのコンビはよほど相性が良いのか、どれもが素晴らしい演奏で驚きます。スロヴァキア・フィルの弦楽の優秀さや管楽の音色の素朴な美しさなど魅力の点ではチェコ・フィルを上回るのではないかと思わせるほどです。コシュラーの全集盤は恐らく日本では僅かにしか流通しなかったと思われますが、単独盤で現在入手できるとすれば英国のライセンスレーベルRegis盤でしょう。明瞭で広がりが有り優秀なリマスターが施されています。 

Dvorak_61j5fwzynl_sy355_ ヴァ―ツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル(1982年録音/スプラフォン盤) 旧録音からわずか10年後の再録音盤です。写真は単独盤ですが、自分が所有しているのは全集盤です。ノイマンのドヴォルザークは旧盤と新盤のどちらを取るかは毎回迷うところですが、演奏はほぼ同じと言って良いです。新盤はデジタル録音ですが、オフマイクなので客席で聴いているような印象を受けます。各楽器が身近に感じられる旧盤とどちらを好むかは聴き手次第です。個人的にはわずかでも音楽に円熟味を増した感のある新盤を取りたいような気がします。 

Dvorakcci00055ズデニェック・コシュラー指揮チェコ・ナショナル響(1994年録音/ビクター盤) コシュラーは晩年にチェコで新しく創設された楽団を指揮してドヴォルザークのシンフォニーを5、7、8、9の4曲を録音に残しました。この5番はライブ録音ですが優秀な奏者を集めたと言われるだけあり素晴らしい演奏です。しかし長い時間をかけて練り上げられたようなスロヴァキア・フィルの音色の魅力にはまだ僅かに及ばない印象です。しかしスロヴァキア盤が入手するチャンスがほとんど失われた現在、このチェコ・ナショナル盤でコシュラーの素晴らしさを是非味わって頂きたいと思います。

Dvorak_717tis6tkyl__sl1200_イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィル(2012年録音/DECCA盤) 最も新しいチェコ・フィルによる全集盤ですが、今は亡きビエロフラーヴェクが最晩年に残した最上の遺産です。DECCAによる録音は客席で聴くような臨場感があります。ビエロフラーヴェクの指揮は奇をてらうようなことは全く無く、チェコの伝統的でオーソドックスなスタイルを踏襲しています。スメタナやドヴォルザークはやはりこうでなくては魅力を損なってしまいます。第2楽章の主部の情緒感が今一つの気がしますが、その分終楽章の迫力ある充実感は聴きごたえ十分です。

さてどれもがこの曲の魅力を伝えているのですが、強いて好みで絞ればノイマン/チェコ・フィルの新旧両盤となります。しかしその差はほとんど無いに等しいです。

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コメント

この曲、珍しい曲目を取り上げて呉れます京都フィロムジカ管弦楽団の、京都府長岡京市での定期で、幸いにも生で接した佳曲ですね。開放的な第1楽章、歩調に例えるととぼとぼ‥と言った趣ながら、過度に深刻にならぬ第2楽章、ローカルで精力的な第3楽章、以上の楽章を受けるに充分な規模と力強さを保持した第4

投稿: リゴレットさん | 2019年12月20日 (金) 11時42分

また切れてしまいました。ご寛容を‥。
第4楽章と言い、聴き応えたっぷりの交響曲であります。何か愛称が在れば、更に人気曲に成り得たかも‥と、思いますが如何でしょうか。愛聴CDは、徳間音工のTKCC-70284なる番号の、スウィトナー指揮のシュターツカペレ-ベルリンの、演奏です。旧東独のドヴォルザークも、宜しいものです(笑)。

投稿: リゴレットさん | 2019年12月20日 (金) 11時50分

リゴレットさん

本文でも触れましたが、第5番はとても優れた良い曲ですよ。
副題があれば、というのは仰られる通りですね。
「ボヘミアの草原にて」まさにそんな題名がふさわしいですが、どこかで聞いたことがあるような・・・(笑)

投稿: ハルくん | 2019年12月20日 (金) 15時20分

ドヴォルザークの『第5』以降は、幸いにも実演で聴けました。『第5』は前述の通りでして、『第6』は豊中市民管弦楽団、『第7』は西宮交響楽団、神戸大学交響楽団、甲南文化交響楽団と一番接しまして、『第8』も去る22日再び京都フィロムジカ管弦楽団‥前に何とR-コルサコフの『第3交響曲』‥で、ですね。神戸大学交響楽団の際は千住真理子さんが登場、やはりドヴォルザークの『イ短調協奏曲』を、御披露下さいまして開演前の長い列、納得でありました。こうして聴き比べさせて貰いますと、超人気曲の第9番『新世界から』が、むしろ異端児的な曲に感じられて来ます(笑)。旋律面での魅力、ノスタルジックな風情は無論素晴らしいですけれども。

投稿: リゴレットさん | 2019年12月24日 (火) 10時57分

リゴレットさん

私は5番だけは実演で聴いていないように思います。たとえ本国のチェコからオケが来日しても、8番、9番以外はまず演奏しないですからね。これも問題ですね。

投稿: ハルくん | 2019年12月24日 (火) 13時22分

チェコの楽団が来演して下さっても、『第7番ニ短調』をトリに持って来たら、客席の入りは四分になってしまうのでしょうか。日本国の聴衆の質が問われかねませんね。
ところで水曜に『第1番ハ短調/ズロニツェの鐘』のCD買いました。N-ヤルヴィ&スコティッシュ-ナショナル管弦楽団のCHAN8597と言う番号の、イギリスChandos直輸入盤と、不定期に足を運ぶ中古店でばったり出くわしました。第1楽章、確かに鐘を彷彿させるフレーズ出て参ります。全体で見ると悠久をさえ思わせる深い響きと旋律、何かブルックナーを連想させる感もあります。第2楽章は親しみ易いいつもながらのアントニン節、第3楽章は『スラヴ舞曲』の拡大版、終楽章のみ頭に溢れる旋律をしっかり御しきれず、構成面の引き締めがおろそかになってしまったうらみが、あります。以上通り一遍の曲への、印象でした。

投稿: リゴレットさん | 2020年1月11日 (土) 11時04分

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