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2017年6月16日 (金)

マーラー 交響曲「大地の歌」 続・名盤

若いころからマーラーの交響曲は大好きで、どの曲も愛してやまない作品ばかりですが、最近は「大地の歌」を良く聴いています。
所有のCDは「大地の歌 名盤」でご紹介していましたが、最近気に入ったものが加わりましたので、久々に続編として書いてみたいと思います。

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ヨーゼフ・クリップス指揮ウイーン交響楽団(1972年録音/オルフェオ盤)

クリップスはウイーン出身ですが、第二次大戦でナチスに協力をしなかったことから祖国を追われて戦争終結までは相当の苦難が有ったそうです。しかし逆に戦後は楽壇に直ぐ復帰が認められて活躍しました。
クリップスはハイドンやモーツァルト、べートーヴェンという印象が強く、マーラーは珍しい印象を与えます。このCDはウイーンでのライブ録音ですが、クリップスは「大地の歌」を好むようで、1964年ウイーン芸術週間における同じウイーン交響楽団とのライブ録音も有ります(グラモフォン盤)。

さてこのオルフェオ盤を聴いてみて一遍で魅力に憑りつかれました。一言で『人間味に溢れるマーラー』です。第1曲冒頭のホルンは決して音が厚いわけでは無いのですが、何か人間的な声の叫びを聞くかのようです。特筆すべきは弦も管もその歌い回しが正に独特のウイーン節で、その上手さと魅力はウイーン・フィルと間違えるほどです。情緒的な味わいはむしろウイーン・フィル以上と言っても過言ではありません。これはやはりクリップスの手腕によるところが大きそうです。

歌についてもテナーのジェス・トーマスが実に素晴らしいです。ワーグナー歌手として歌の迫力は随一ですが、情緒的な歌い上げ方にも大いに魅了されます。アルトのアンナ・レイノルズもフェリアーほどではなくても非常に情感の籠った深い歌を聞かせています。

これはオーストリア放送協会によるステレオ録音ですが、各楽器が明瞭で分離が良く、微細のニュアンスまで良く聞き取れます。室内楽的な透明感が有りますが、音が薄く感じられるどころか逆に生々しい迫力を感じます。

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ゲオルグ・ショルティ指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管(1992年録音/DECCA盤) 

ショルティのマーラーは以前は余り食指が動かずにいましたが、最近はそうでも無くなり少しづつ聴いています。
この演奏はショルティの「大地の歌」の二度目の録音ですが、手兵のシカゴ響ではなくコンセルトへボウ管と共演した際のライブです。

なんと言っても音色の魅力でウイーン・フィルと魅力を二分する名門ですので、そのしっとりと落ち着いた音にショルティのリズム感と力強さが加わって素晴らしい演奏となっています。前述のクリップス/ウイーン響ほどの情緒表現の豊かさは望めないにしても、その他の演奏と比べてみても充分に味わい深さを持ちます。

それにしてもコンセルトへボウ管の魅力は抜群です。「青春について」から「美について」「春に酔える者」かけてはショルティの長所が出ています。「美については」快速テンポがミュージカルのようですが興奮させられます。
意外にも「告別」がゆったりと深々としていてとても味わいを感じます。ことさら暗く沈滞しているわけでは無いのですが、中間部の音の厚みは聴きごたえが有ります。

ライブ録音にしては完成度の高さに驚きます。しいて言えばアルトのリポヴシェクに僅かに不安定さを感じないでもありませんがこれは些細なレベルで問題になりません。テノールのトーマス・モーザーは声が若々しく良いのですが特別に抜きんでた存在ではありません。このCDの魅力は歌手では無く、オーケストラ演奏に有ります。

というように2枚ともマイ・フェイヴァリット盤の仲間入りを果たしましたが、特にクリップス盤は一気にワルター/ウイーン・フィル盤に続く高位置を占めました。

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コメント

こんばんは!

マーラーが亡くなった年齢になって
マーラーへの興味が薄れてきましたが
やはりこの曲は大好きです。

クリップスはグラモフォン盤の方を聴きましたが
男声2名で、録音がモノでよろしくないので
ピンときませんでした。
このオルフェオ盤はステレオですか?
「オルフェオ=音が悪い」とつい連想してしまいます。

最近、テノールのカウフマンひとりで歌うソニー盤が出ましたが
ウィーン・フィルでも食指が動きません。

この曲はやはり男女で歌う方が好きですね。

マーラー自身のピアノ版、シェーンベルク編曲の室内楽版
(実演で聴いて大感動‼)も聴かれたら
またよろしくお願い致します。


投稿: 影の王子 | 2017年6月16日 (金) 23時35分

影の王子さん、こんばんは。

このオルフェオのクリップス盤はステレオ録音です(記事に書き加えました)。ライブにしては年代以上の聴感上の良さを感じます。
グラモフォン盤はアルトでなくバリトンというのが良くないですね。
まして一人で歌われては邪道です。

ピアノ版、室内楽版はともに入手して聴いていますよ。近く記事にするつもりです。

投稿: ハルくん | 2017年6月17日 (土) 00時44分

こんばんは
自分も大好きな曲でいろんな盤を聴いてきました。
ワルター、クレンペラー、バンスタはやっぱいいけど
近いとこでは1984年のジュリーニ、96年のシノーポリ、
99年の大植もいいです。
そしてさらに近くなって今世紀に入った2011年の
ネゼ=セガン盤‼️
え〜あの軽薄そうな見るからにゲイっぽいとお思いでしょうが、これは素晴らしいです。
現在の自分の最愛聴盤です。
騙されたと思って聴いてみてください。

投稿: ルコナン | 2017年6月17日 (土) 22時19分

こんばんは。

この曲以外のマーラーの歌曲での絶対的名盤と云えば

「さすらう若人の歌」
F=ディースカウ&フルトヴェングラーのEMI盤
「少年の魔法の角笛」
ルートヴィヒ&ベリー、バーンスタインのピアノのライヴ、ソニー盤

を挙げたいと思います。
前者は言わずもがな
後者はバーンスタインのピアノが生々しい歌唱を引き出す迫真性があります。

投稿: 影の王子 | 2017年6月19日 (月) 20時24分

ルコナンさん、こんにちは。

ワルター、クレンペラーは大好きですね。
バーンスタイン盤はいくらFディースカウでもやはりアルトが歌う方が好きです。
ジュリー二も良いのですがBPO盤よりもウイーンフィル盤のほうが更に好みです。

シノーポリはそれほどでしたので友人に上げてしまいました。
大植、ネゼ=セガンは聴いていないので機会あれば聴いてみたいですね。

色々とご紹介ありがとうございました!

投稿: ハルくん | 2017年6月20日 (火) 12時56分

影の王子さん、こんにちは。

マーラーの歌曲集は流石にシンフォニーほどは聴きませんが、やはり愛してやまない作品が有りますね。
「さすらう若人の歌」「少年の魔法の角笛」どちらも大好きです。
こちらも近いうちに記事を書いてみたいと思います。

投稿: ハルくん | 2017年6月20日 (火) 16時57分

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