リナルド・アレッサンドリーニ/コンチェルト・イタリアーノ来日公演 「ヴェスプロ(聖母マリアの夕べの祈り)」
今日は来日中のリナルド・アレッサンドリーニ率いるコンチェルト・イタリアーノの「ヴェスプロ(聖母マリアの夕べの祈り)」を聴きに神奈川県立音楽堂へ行きました。
Naiveレーベルから出ている彼らのCDは愛聴盤なのですが、まさか彼らを実演で聴くことが出来るとは思いませんでした。
しかも県立音楽堂は木造りの内壁の響きが自然でキャパシティがそれほど多くないのが古楽にはうってつけです。
指揮者のアレッサンドリーニはかつてバロック・ヴァァイオリンの名手ビオンディのグループでチェンバロを弾いていましたが、1984年に自らの古楽団体コンチェルト・イタリアーノを立ち上げました。声楽陣は全員イタリア人で発音の美しさを重視していることで知られます。
さて演奏が始まると、あのCDで馴染んだ音が生々しく耳に飛び込んできました。もちろんセッション録音されたCDに比べれば各パートの分離やピッチの上で完成度が幾らか劣るのは止むをえません。しかしそんなことはどんな演奏家においても言えることですし、とにかくあの本物の響きで聴く「ヴェスプロ」は驚きでした。
イタリア人の演奏するモンテヴェルディがドイツやイギリスの団体の演奏するそれと雰囲気が異なるのは以前から感じていましたが、こうして実演で聴くと改めて深く感じられます。例えばCDならドイツの聖歌隊の歌で聴けば、宗教音楽としての峻厳さはずっと増します。その点、コンチェルト・イタリアーノの演奏はもっと純粋な音楽としての愉悦に満ち溢れています。それはどちらが優れているという問題では無く、それぞれの特徴を楽しめば良いのです。
よく言われるように「ヴェスプロ」はバッハの三大宗教曲と並ぶ大傑作ですし、それをこのような本格的な演奏で聴ける機会はそう多くないので貴重な体験でした。
ホールは一番後方の座席を除き超満席でしたが、演奏が終わった後にお客さんは総立ちとなり彼らに盛大な拍手を送りました。これにはアレッサンドリーニさんも団員たちもみな非常に驚いているようでした。
この公演にはお客さんが大勢集まるだろうなとは予想していましたが、モンテヴェルディの音楽と演奏の素晴らしさを理解する聴衆がこれほどまでに多かったとは本当に驚きです。
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コメント
このような稀有の音楽体験記を綴れる、首都圏の好楽家の方々が、お羨ましい限りです。モンテヴェルディの実演体験は、一度だけ大阪城公園そばのいずみホールで、日本人の歌手の皆様による公演で、『ポッペアの戴冠』を観たのみです。このような公園に足を運ばれる人々は、録音でしっかり下調べをして、作品に馴染んでおいでだと思いますよ。公園後の御反応は至極当然かと、思われます。
投稿: リゴレットさん | 2020年6月21日 (日) 08時26分
リゴレットさん
私も「ポッペアの戴冠」の実演は聴いたことが有りません。それは日本人演奏家とはいえ貴重な体験でしたね。
しかし最近はよくチェックをしていればルネッサンス期の珍しい曲を聴ける機会も増えてきました。素晴らしいです。
投稿: ハルくん | 2020年6月22日 (月) 13時33分
『公園』→『公演』の誤りですね。以前に貴ブログにご報告申し上げましたように、著名な女流リコーダー奏者ミカラ・ペトリ氏が、伊丹と言う近畿圏では目立たない都市で、公演を持たれる事もございましたから、要チェックと言えるかも知れません。
投稿: リゴレットさん | 2020年6月22日 (月) 14時35分