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2017年2月

2017年2月15日 (水)

ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 再聴盤あれこれ

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”新世界交響曲”はニューイヤーコンサートでよく演奏されますね。新しい世界に足を踏み出すことが、新たな年の一歩に結び付けられるからでしょうね。

それにしても、これほど解かり易く魅力的な曲も珍しいです。僕自身も一番最初に好きなったクラシック音楽ですし、これからクラシックを聴いてみたいという方には真っ先にお勧めしたい曲です。

ですので、これまで色々なレコードやCDを聴いて来ました。そのうちの、お気に入りのディスクに関しては、ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」名盤隠れ名盤マッケラスのライヴ盤でご紹介しましたが、それらのほとんどはチェコもしくはスロヴァキアのいわゆる本場もののオーケストラ、指揮者の演奏でした。

その本場もの嗜好は今でも全く変わりませんが、年齢を重ねてゆくと人間、段々と丸くなるようで(体形の話ではありませぬ!)、世評に高い演奏でありながら、余り好きになれなかったものを改めて聴いてみようかという気になりました。但し一度レコードやCDを手放していますので再購入が必要でした。

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ジョージ・セル指揮クリーヴランド管(1959年録音/CBS盤)
 セルのCBS時代のセッション録音は概して精密ながら「機械的」で整い過ぎているのが面白くないというのが、かつての自分の印象でした。しかし好きな人は非常に好き。ということで再聴です。あっさりと始まる冒頭で「やはり・・・」と思いかけてみたものの、主部に入ると速いテンポで颯爽と飛ばします。よく”室内楽的”と評されるように各パートが緻密で正確無比です。そして剣の達人のごとき最高の切れ味で聴き手を圧倒します。全く何というオーケストラなのでしょう。けれど演奏に血が通っていないかというとそんなことは無く、意外にも熱い血潮が流れています。いい例が第2楽章で、テンポは速めでも豊かな情感を感じさせます。演奏には哀愁が迸っています。そういえばセル自身はハンガリー人ですが、母はスロヴァキア生まれなのでやはり影響は有るのかもしれません。後半3楽章のリズムの切れ味は最高、4楽章に入ると更に高揚感が増してゆき、これを単に「機械的」だなどという軽い言葉で済ますのは大きな誤りであることが分かります。基本はインテンポでも、ここぞというところでテンポを落すのが非常に効果的なのはトスカニーニと似ています。

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レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル(1962年録音/CBS盤)
 これは昔アナログ盤で愛聴した演奏でしたが、セルとは全く正反対のスタイルです。テンポは遅い部分と速い部分の差が非常に大きいので、現在聴くとそのアクセルとブレーキの切り替えの多さに車酔いを起こしそうです。たたみ掛ける迫力は凄いですし、更にダイナミクスの変化も大きいので、正に山あり谷ありのバーンスタイン・ワールドというところです。これがレニー得意のマーラーにおいて絶大な魅力となるのですが、ドヴォルザークではもう少しシンプルな進行が望ましいと思います。どうしても自分にはレニーの独りよがりの解釈に感じられてしまうのです。ニューヨーク・フィルも、ここでは幾らか雑な仕上がりに聞こえる部分も有りますが、これは当時レコーディングが目白押しだった弊害だと思います。

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イシュトヴァン・ケルテス指揮ウイーン・フィル(1961年録音/DECCA盤)
 これは録音当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍をしていたケルテスの代表盤のひとつで、現在でも非常に人気の高い演奏です。テンポの大きな変化、ダイナミクスの巾の大きさはバーンスタインと共通しますが、レニーがやや唐突感を感じてしまうのに対して、ケルテスは若いながらも計算され尽くした演奏である印象を受けます。チェコ出身の指揮者ではここまで自在な指揮はまずしませんが、好みは別として”天晴れ”を送りたいです。良く言われるように若手にもかかわらずウイーン・フィルを手綱で絞めて引き摺り回し、快演させること自体大変凄いことです。当時のウイーン・フィルの音色も都会的でなく田舎臭さを大いに残しているのは大きな魅力です。それでいて弦の音色などはまるで美しいシルクの印象を与えます。デッカの録音はとても聴き易く、古めかしさを感じないばかりか、アナログ的な柔らかさが心地良さを与えてくれます。

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ヴァーツラフ・スメターチェク指揮プラハ放送響(1966年録音/PRAGA盤)
 奇しくも昨年亡くなられた宇野功芳先生の推薦盤がケルテス、スメターチェクと続きます。これは”本場もの”の演奏ですね。実は、このCDも昔手放したもので、その後に随分とプレミアが付いたので再購入を躊躇していましたが、ようやくリーゾナブルな価格で入手できました。スメターチェクは元々ストレートで思い切りの良い直情的な演奏をしますが、そこに熱い血潮が感じられるのが宇野先生の好みであったようです。この演奏はプラハでのライヴなのでその傾向は明確です。洗練されていないオーケストラを熱くドライブさせて楽しませます。しかしオケの響きは薄めで、その割にティンパニを強打させますので、バランスが余り良いとは言えません。これを果たして「迫力」に感じるか、「貧弱」に感じるか、聴き手の耳がどちらに転ぶか際どいと思います。事実自分もかつては後者に感じたのでCDを手放したのでした。では今は?後者にも感じるが、それでも捨てがたい魅力を感じるという処です。やはり人間丸くなったみたいです。

さて、今回の”名盤”再聴の中で、一番気に入ったのはジョージ・セル盤でした。これはチェコやスロヴァキアの本場もの以外の演奏で一番のお気に入りとなりました。
でもまてよ、アメリカのオケの演奏は新世界としての”本場もの”だったかな。

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2017年2月 8日 (水)

プッチーニ オペラ「蝶々夫人」 新国立劇場公演2017

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日曜日のこと。新国立劇場でオペラ「蝶々夫人」を観劇しました。栗山民也のこの演出で観るのは何度目でしょうか。この長崎を舞台にしたオペラのとても分かり易くセンスの良い演出は完成度が高いです。日本の長崎で起こった悲劇を静的に、かつ劇的に堪能させてくれます。

今回のタイトルロールは安藤赴美子さん。新国立劇場生え抜きですが、素晴らしい歌唱に魅了させられました。ピン・カートンを除く全員を日本人歌手が歌いましたが、みな素晴らしかったですね。期待ほどでは無かったのがピン・カートン役のリッカルド・マッシ。テノールの声が持つあの輝きが感じられませんでした。調子が万全でなく安全運転に徹していたのでしょうか。

指揮のフィリップ・オーギャンと東京交響楽団はとても良かったです。弦も管も音が大変充実していました。特に終盤のドラマティックなシーンでのティンパニの強打が凄く雄弁で印象的でした。

それにしても昔から男が単身赴任すると現地妻を持ったりとロクなことをしませんねぇ。悲劇が起こらないようにみなさん気を付けましょ~ね。

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2017年2月 2日 (木)

ブラームス 弦楽六重奏曲第1番&第2番 ~隠れ名盤~ ルッツ・レスコヴィッツ、エミール・クライン他

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オーストリアのザルツブルク出身のヴァイオリニスト、ルッツ・レスコヴィッツ氏の存在を知ったのは一昨年の秋のことでした。氏の生演奏を聴いたヴァイオリン好きの友人が感激してその話をしてくれたからです。

その後、実際に自分も演奏を聴ける機会が有りました。友人の話に違わずそれは素晴らしい演奏でした。

レスコヴィッツ氏をご存知の方は少ないと思います。何故なら氏はエージェントを使わずに、小規模のコンサートを各地で開いているからです。聞くところでは氏は必ずしも大勢の客を好むわけでは無く、本当に自分の演奏を聴きたい客にたとえ人数は少なくても演奏を身近に聴いて貰う方が良いという考えなのだそうです。

今では本場でも希少となりつつある伝統的なウイーンの演奏法を伝承する目的で世界を旅するルッツさんは、まるで音楽の伝道師のようではありませんか。

レスコヴィッツ氏のキャリアを読んで頂くとどれほど凄い演奏家なのかがお分かりになると思いますが、とりわけ名ピアニストのイエルク・デームス氏と50年もの間、デュオを組んだことは特筆されると思います。

過去には協奏曲の録音もされたようですが、残念なことに現在入手できるCDはごく限られています。そんな中で見つけたのが「ブラームス 弦楽六重奏曲第1番&第2番」です。

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これはARTE NOVAから発売されたディスクです。
第1ヴァイオリンのルッツ・レスコヴィッツ氏と第1チェロのエミール・クラインが演奏全体をリードしている印象ですが、他の4人の奏者も知名度は低いながら、いずれも実力者ばかりです。

演奏は一言で”極めて美しい”です。第1番ではパブロ・カザルス達の録音に代表されるような、激しく、まるで慟哭するような演奏が有りますが、それとは正反対です。このブラームスの青春の息吹を心の奥底に染み入るような実に柔らかい歌い方で聴かせてくれます。この曲は前半の第1楽章と第2楽章が非常に充実しているので、どうも頭でっかちのような印象を受けてしまいがちです。ところが彼らの演奏で終楽章を聴いてみると、何ともゆったりとしたウイーン的な魅力に溢れ、すこぶる充実して聞こえます。もちろん前半の1、2楽章の演奏も素晴らしく、全体のバランスが凄く良いのです。レスコヴィッツ氏のヴァイオリンは誇張や恣意的な表現を排除して大変美しく、この名曲に独特の輝きを与えています。

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もし貴方がブラームジアーナーであれば、第1番の感想を読まれれば、第2番の演奏がそれ以上に曲に向いていることは楽に想像出来ると思います。「アガーテ」と呼ばれるこの曲には大げさな演奏は似合いません。レスコヴィッツ氏とエミール・クラインがリードする演奏には、恋人への思い、優しさが溢れ出ています。元々第2番もとても好きでしたが、この演奏で聴くと人気の高い第1番に肩を並べる名曲であることに気づきます。過去のウイーン・コンツェルトハウスQやアマデウスQなどの演奏をすっかり忘れさせるほどに素晴らしい内容です。

残念なことに、これほど素晴らしいCDなのに現在は廃盤となっています。中古もしくは海外のAmazonなどで探されるしかありません。

☆ 2017.3.11.演奏会情報(東京都目黒区洗足)
 
ルッツ・レスコヴィッツ ヴァイオリン・リサイタル

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