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2016年11月

2016年11月30日 (水)

ショパン ピアノ協奏曲第2番へ短調op.21 名盤 ~彼女への思いを寄せる~

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ピアノ協奏曲第1番の記事のときにも記しましたが、実際に作品が完成したのは、第1番よりもこの第2番の方が1年早い1829年です。この曲は出版されたのが第1番よりも後になったために第2番となりました。

若きショパンは既にウイーンでピアニストとして大成功を収めていましたが、本格的に作曲家としてデビューを目指すためにワルシャワに戻り、協奏曲の作曲に取り組んだのです。しかしショパンはこの時、ワルシャワ音楽院の同窓のソプラノ歌手グワドフスカに恋をしていて、親しい友人に「僕は彼女への思いを寄せるうちにアダージョ(実際は第2楽章ラルゲット)を作曲した。」と告白したほどです。

このような背景があることから、この曲にはショパンが心に秘めていた、甘くせつない、ひとり悩み苦しむ恋の香りがぷんぷんと漂っています。本当に恋は人を”詩人”に変えてしまいますね。

一般的には第1番が高く評価されているようですが、曲の魅力に於いては全く遜色がなく、むしろ第2番のほうを好む人もいらっしゃるのではないでしょうか。第1番が青春の喜びをストレートに感じさせるのに対して、第2番はずっと屈折した気分を感じさせます。

例えば第1楽章のみを比較した場合は第1番を取りたいですが、第2楽章においては甲乙がつけがたく、第3楽章ではよりショパンらしさの強い第2番を取りたいです。
このように第2番はもっとずっと演奏されてしかるべきだと思います。

ということで、ピアノ協奏曲第2番の愛聴盤をご紹介します。

Chopin418j8w7c4flアルフレッド・コルトー独奏、バルビローリ指揮管弦楽団(1935年録音/EMI盤) 録音年代は古くノイズも入りますが、モノラル録音に慣れた方なら充分に鑑賞出来ます。それよりもコルトーの演奏の表現の自在さには心底圧倒されてしまいます。『音楽を演奏する』とはどういうことか。それは音楽を鑑賞する我々に対しても深く問いかけているように思います。是非とも一度は聴いておくべき演奏です。3楽章では意外に速いテンポですが、揺れに揺れて聴きごたえ充分です。バルビローリもオーケストラを自在にコントロールしていてコルトーと同じように表現の豊かさが抜群です。

41j8z8wzcvl クララ・ハスキル独奏、マルケヴィッチ指揮コンセール・ラムルー管(1960年録音/フィリップス盤)  ハスキルは目の覚めるようなテクニックというわけでは無いですが、演奏全体に広がるしっとりとした陰りが何とも魅力です。ピアノの地味な音色も演奏スタイルにぴたりと合っています。第2楽章も淡々と進みますが、心に染み入る情感の深さは只事ではありません。問題はマルケヴィッチの指揮が男性的に過ぎてハスキルと必ずしも相性が合っていない点です。特に第1楽章でそれを強く感じます。第3楽章は落ち着いていますが揺れのあるリズム感が素晴らしく自然と弾き込まれます。

Cci00025アルトゥール・ルービンシュタイン独奏、ロヴィツキ指揮ワルシャワ・フィル(1960年録音/Muza盤) ルービンシュタインの祖国ポーランドでの演奏会での録音です。RCAへのスタジオ録音とは異なる真剣勝負の気迫が感じられます。中庸のテンポで流れの良い音楽の中で表情豊かに歌い回す名人芸が得も言われぬ魅力を湛えています。ピアノの音色もこの時代のライブとしては優れています。オーケストラの音に録音の古さを幾らか感じますが、演奏の良さから聴いているうちにそれも気にならなくなります。カップリングのブラームスの第2協奏曲の陰に隠れていますが、素晴らしい演奏です。

200751457 サンソン・フランソワ独奏、フレモー指揮モンテ・カルロ歌劇場管(1965年録音/EMI盤) 第1番との楽想の違いがフランソワに向いていると思います。1楽章から即興的な味わいが音楽に艶っぽさを与えていて大変魅力的です。こうしてツボにはまった時のフランソワは実に素晴らしいです。第2楽章の恋の甘さとせつなさの表現にも深い共感を覚えます。ああ、フレディ!恋はつらいね!3楽章に入ってもフランソワの独壇場は続きます。テンポの良さと音楽の揺れ、表情の刻々とした変化が何とも魅力的です。オーケストラの音が粗いのが欠点ですが、ピアノの素晴らしさにさほど気にならなくはなります。

Chopin_rubinsアルトゥール・ルービンシュタイン独奏、クレンツ指揮ポーランド国立放送響(1966年録音/Prelude & Fugue盤) 第1番でも紹介したルービンシュタインが祖国ポーランドで弾いたライブです。テンポの伸縮やルバートが多用されていますが、全てが自然でわざとらしさが微塵も感じられません。どの部分を耳にしても音楽に魅力が溢れていて、少しも弛緩することなく曲がどんどん進んでゆきます。ルービンシュタインのピアノは男性的で女々しさは有りませんが、音には優しさや心がこもり切っています。クレンツ指揮のオケにも情感が溢れ出ていて胸に迫ります。録音も明瞭で生々しさを感じられるのが嬉しいです。このCDはスイスのPrelude & Fugueレーベルがポーランド放送のライセンスで出した物ですが、既に廃盤なので大変貴重です。

Rubinstein_chopinslアルトゥール・ルービンシュタイン独奏、オーマンディ指揮フィラデルフィア管(1968年録音/RCA盤) 前述の66年ライブ盤から2年後のセッション録音です。ルービンシュタインのショパンが素晴らしい点では変わりありませんが、ライブにある真剣勝負の緊張感にはやはり敵いません。ピアノの音の明瞭さもむしろ66年盤の方が勝ります。オーケストラは実にシンフォニックで迫力満点ですが、ダイナミズムの変化が余りにも楽譜そのままで常套的なのが面白くありません。オーマンディのやっつけ仕事という印象です。もちろんこの演奏だけ聴けば優れた演奏なのですが、66年盤を聴いてしまってはどうしても満足し切れません。

Chopin81zfl5yitwl__sl1420_ホルヘ・ボレット独奏、デュトワ指揮モントリオール響(1989年録音/DECCA盤) 第1番では音楽が盛り上がる部分でもインテンポに徹していたので音楽が停滞していました。第2番でも基本テンポは遅めですが、音楽に流れが感じられるので改善されています。けれどもフランソワやルービンシュタインと比べると表情の豊かさに於いて一歩譲るような印象を受けてしまいます。第2楽章に関してもテンポの遅さの割には心情的に没入した感じは無く、恋のせつなさを充分に表現しているとは言えません。このオーケストラの演奏も極めてシンフォニックですが、常に醒めた雰囲気でショパンの音楽への熱い共感はほとんど感じられません。

Nakamichi_chopin334仲道郁代独奏、コルト指揮ワルシャワ国立フィル(1990年録音/BMG盤) これは非常に美しいショパンです。ハッとさせるような即興性や切れ味の鋭さはありませんが、一本調子にならない揺らぎも有りますし、音楽が盛り上がる際の感情の高まりや熱さも中々のものです。第1番では少々真面目過ぎて面白みに不足する印象を受けましたが、第2番では品の良さを失わずも、ずっと楽しめる演奏になっています。ピアノタッチの美しさや力強さも申し分のないものです。それにしてもワルシャワ・フィルのショパンの音楽への共感が溢れて美しい演奏には脱帽です。北米のオーケストラは立派でもこのような感動は決して与えてくれません。

Img_743670_39816568_2 クリスティアン・ツィメルマン独奏/指揮ポーランド祝祭管(1999年録音/グラモフォン盤) ツィメルマンが理想の演奏のためにと自分でオーケストラを編成して録音を行いました。指揮もピアノも極めて雄弁であり、余りに徹底しているので唖然とします。それは時に音楽の流れが停滞してブツ切れとなるほどです。表現意欲の過剰さには少々抵抗を感じないこともありませんが、1楽章の緊迫感ある迫力には嫌でも熱くなりますし、2楽章の美しいピアノと深々としたロマンティシズムにも強く魅了されます。3楽章は速いテンポで意外にオーソドックです。全体的にはこれだけ思い切りの良い演奏ぶりにはやはり拍手を贈りたいです。

Chopin0204スタニスラフ・ブーニン独奏、コルト指揮ワルシャワ国立フィル(2001年録音/EMI盤) 1985年ショパンコンクール優勝から16年後に日本で残したライブ録音です。第1番は札幌でしたが、第2番は東京サントリーホールの録音です。ライブ収録でも年代が新しいので音質、バランスともに良好です。ブーニンはスマートな演奏ですが、即興性や揺らぎのある表情が素晴らしいです。特質すべきは2楽章で、ロマンティックな若者の辛さ、せつなさが充分過ぎるほど感じられてすこぶる感動的です。オーケストラもワルシャワ・フィルなので単に美しいだけでなく共感一杯で素晴らしいです。但し3楽章はテンポが速過ぎるのが良し悪しで聴き手の好みが分かれるかもしれません。

Chopin713jtrghuhl__sl1050_ラファル・ブレハッチ独奏、セムコフ指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管(2009年録音/DG盤) 新世代の優れたピアニスト、ブレハッチのライブ録音です。彼はこのCDについて『ポーランドの伝統的な演奏を聴かせたいと思った』と語っていますが、確かにアルゲリッチやツィメルマンの大げさで派手な表現とは一線を画しています。ピアノタッチは美しく、単なるスケールやアルぺッジオの部分からも素晴らしいニュアンスの変化を聴かせてくれます。2楽章の抒情性も非常に魅力的ですが、白眉は3楽章で、きりりとしたリズムで躍動感が有り、さらに音楽に揺らぎを感じさせているのが見事です。オーケストラの共感度ではポーランドの団体に一歩譲りますが、コンセルトへボウは流石に上手いです。

25785245カティア・ブニアティシヴィリ独奏、パーヴォ・ヤルヴィ指揮パリ管(2011年録音/SONY盤) パリでのライブ録音です。ブニアティシヴィリは若い世代では特に才能あるピアニストだと思いますが、パーヴォもお気に入り?のようです。ダイナミズムに微細な変化をつけるのはアルゲリッチ風ですが、それが恣意的には感じられずに長所となっています。往年の巨匠のような深い呼吸感は有りませんが、若くしてこれだけ魅力的に弾けるのは凄いです。2楽章では繊細に夢見るような静寂さを醸し出していて見事です。3楽章は速いテンポで緊迫感を持ちますが、個人的にはもう少し揺れを感じられるほうが好みではあります。パーヴォもオーケストラを入念にコントロールしてソリストを上手く引立てています。

以上から、マイ・フェイヴァリットはやはりルービンシュタインの66年ポーランドライブ盤ですが、それに匹敵する素晴らしさがブレハッチの2009年ライブ盤です。

それ以外にも良い演奏が多くありますが、中でもブーニンの東京ライブ、フランソワ、仲道郁代あたりは折に触れて聴きたくなるお気に入りです。

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2016年11月26日 (土)

イェルク・デームス来日公演 ベートーヴェンピアノ協奏曲第3番

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まだ11月というのに昨日は東京でも雪が降って驚きました。幸い午後には降り止んで、さしたる影響もない中をサントリーホールで読売日本交響楽団のコンサートを聴いてきました。

指揮者は小林研一郎、ピアニストはイェルク・デームスでしたが、なんと60年以上もステージに立つデームスさんの演奏が最大の聞き物です!
デームスさんは1950年代のウエストミンスター録音でワルター・バリリ達との演奏を色々と聴いたので非常に懐かしく感じられるピアニストですが、録音当時はまだ20代だったので現在でも現役で演奏を続けていらっしゃるのですね。
昨日は前半がベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、後半がブラームスの交響曲第4番という2曲プログラムでした。ですので、いきなりデームスさんの登場となります。
オケ導入部が長い曲ですが、コバケンと読響の安定した演奏に続いてピアノの演奏が始まりました。実にじっくりと落ち着いた演奏です。体を大きく動かすわけでは無く、淡々と弾いているように見えます。力みなく、しかし枯れているわけでもない円熟の技は、例えれば歌舞伎役者の人間国宝のような味わいです。もちろん若手演奏家のような力強さには欠けますが、演奏から醸し出される音楽の香りが何とも魅力的です。やはりというか特に第2楽章の美しさに惹きつけられました。
オーケストラは余りガツンとした芯のある音は出していませんでしたが、これはコバケンがデームスさんの音楽に合わせていたのでしょうか。この曲のオケ演奏はもう少しドイツ的なしっかりとした音が欲しいような気もしました。
協奏曲の後にデームスさんがアンコール演奏したのはシューベルトの即興曲142-2でした。これはもう絶品のシューベルトで、個人的には協奏曲以上に惹きつけられました。
さて、後半のブラームスですが、3番までのシンフォニーはコバケンでそれほど聴いてみたいとは思わず、聴くなら4番だと思っていました。4番のみは自分の好みはともかくフルトヴェングラーに代表される造形性を犠牲にしたロマンティックな演奏スタイルも有りだからです。そうしたスタイルのエッシェンバッハの指揮するブラ4の超名演をこのサントリーで聴いています。
しかし、この日のコバケンと読響の演奏はテンポをそれほど動かさずに古典的な造形を保とうとしていました。その割にはどっしりとしたドイツ的なリズム感や音色が欠けているので魅力に乏しくなります。元々我が国のオケでそうした正統的なスタイルの演奏でドイツの楽団のような魅力を感じさせるのは無理だと思っています。ドイツのローカルオケでも醸し出すズシリとした音は聴けた試しがありません。であればロマンティックに徹した熱演のほうがよほど楽しめるのですが、この日の演奏はそうではありませんでした。
むしろアンコールのハンガリア舞曲第1番、これは若きコバケンが君臨したハンガリーの血を感じさせる熱演で楽しかったです。こういうブラ4が聴きたかったですね。

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2016年11月20日 (日)

ヴィオラでしょー! 20年ぶりに弾く機会が出来ました♪

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ヴィオラでしょー!はい、ヴィオラです。

大学生の時に買って、青春時代に可愛い女の子に目もくれず(??)一生懸命練習してアマオケでチャイコフスキーやブラームスを一緒に演奏してきた愛器です。
けれど20年前に戸棚にしまい込んでからはそのまんまでした。

それが来年20年ぶりに弾く機会が出来たことから弦楽器工房に持ち込んでメンテナンスをして貰いました。
不具合箇所の修理、駒、弦の交換、弓の張替えとだいぶ出費しましたが、おかげでいい音が出るようになりました!あーヴィオラの音はいいなぁ♪

ついでに弾き手も工房に出してメンテナンスできると便利なのですけどね!(苦笑)

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2016年11月13日 (日)

「Breeze」 ジャン-ピエール・ラクール&長谷川ゆき ~1900年パリ万国博覧会時代の響き~

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  opus55 LLC (OPFF-10035)
元パリ管弦楽団のヴァイオリニスト、ジャン-ピエール・ラクールとフランスで学び現在もパリと日本で活躍しているピアニスト長谷川ゆきの共演による新しいCDが発売されました。

タイトルの「Breeze」とは英語の”(心地よい)そよ風”の意味ですが、どうせならフランス語で「La brise」として欲しかったかなぁ。余計なことですが。

このアルバムには3曲のヴァイオリン・ソナタが収録されています。

 グラナドス:ヴァイオリン・ソナタ
 ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ「遺作」
 ヴィエルヌ:ヴァイオリン・ソナタト短調作品23

”1900年万国博覧会時代のパリの響きを”というのがアルバムのコンセプトです。モーリス・ラヴェルとルイ・ヴィエルヌの二人はフランス人ですが、エンリケ・グラナドスはスペイン人でもフランスに移り住みました。1900年万博の頃、3人は共にパリで活躍をしていたのです。

それにしても、どれも演奏機会が決して多くは無いにもかかわらず素晴らしい名曲です。このような曲を並べる辺りは、フランスの演奏家でなければ出来ないことでしょう。

ラヴェルには晩年に書かれたヴァイオリン・ソナタが他にあり、そちらは3楽章構成ですが、この遺作ソナタは単一楽章です。但し、長大なので実際の演奏時間は遺作のほうがむしろ長くなります。とても詩情に溢れた名作で、個人的にはこちらのほうを好みます。

グラナドスのソナタも単一楽章ですが、この曲は元々は複数楽章で書かれる構想だったらしく、そのスケッチが残っているそうです。現在演奏される場合は完成した第一楽章に当たるこの曲だけが演奏されます。

ヴィエルヌは4楽章構成で完成されていて全てを耳にすることが出来ます。

演奏については、ラクールのヴァイオリンの何とも素敵なこと。フランスで生まれてフランスで活躍してきた人でなければ弾けないようなとても洒脱で美しい演奏です。フランスのヴァイオリニストには”大家”という感じの人は少ないですが、みなラクールと同じような魅力を持つ点で共通していますね。

長谷川ゆきもフランスの空気を長く吸って、体中にその空気が一杯に詰まっていることからラクールと一体感のある演奏を繰り広げていて素晴らしいです。

CDの録音は日本で行われたようですが、あたかも響きの豊かな教会で録音したかのようなとてもフランス音楽に向いた音造りとなっています。

普段中々耳にすることの少ない名曲を~爽やかに しなやかに そよ風のように~心地良く楽しめるCDとしてお勧めしたいと思います。

なお、演奏者の長谷川ゆきさんからCDを直接購入されると詳細な曲目解説が付いてきます。特にヴィエルヌのソナタの解説はフランス語文献を読み込んだ川田朔也氏による読み応えあるもので好評だそうです。
長谷川さんのブログ末尾のリンクからのご購入が対象ですので、ご注文される方はこちらからがよろしいと思います。
長谷川ゆきさんのブログへ

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2016年11月 2日 (水)

ショパン ピアノ協奏曲第1番 ホ短調  続・名盤

CDを新しく入手したものの記事にアップしていないものが相当溜まってしまいました。1~2枚であれば、その曲の旧記事に加筆しているのですが、数枚に及ぶ場合は新たに記事にします。ということで、まずはショパンから。

ショパンのピアノ協奏曲第1番は青春の息吹に包まれた美しい名曲で、音楽のシンプルさから一見飽きそうな気がしますが、僕は案外飽きもせずによく聴く曲です。
この曲は随分以前に「ショパン ピアノ協奏曲第1番 名盤」で記事にしていますが、今回は久しぶりにその続編です。どうぞごゆるりとお楽しみいただければ幸いです。

Chopin146273574760143956178ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ独奏/ロヴィツキ指揮ワルシャワ国立フィル(1958年録音/MUZA原盤:日本コロムビア盤) ポーランドの大ベテランCステファンスカ女史の古い録音ですが、無心で聴いていると自然に引き込まれてゆき心が幸福感で満たされるという良い演奏です。誇張や大げさな表現は皆無なので、現代の挑戦的で刺激的な演奏を聴いた後だと、微温的でまだるっこく感じるかも知れませんが、このゆとりは実に得難いです。決して退屈なわけではありません。さすがにピアノの音に少々古めかしさはありますが、個人的には下手に金属的な音よりもむしろ好ましく感じます。

Chopin81zfl5yitwl__sl1420_ホルヘ・ボレット独奏デュトワ指揮モントリオール響(1989年録音/DECCA盤) 時にもたれるぐらい遅い演奏をすることがあるボレットですが、この演奏でもその片鱗は伺えます。極端に遅いわけでは無いのですが、音楽が盛り上がる部分でもインテンポに徹していて決して煽ったりはしません。デュトワもボレットのピアノに忠実に合わせています。一音一音を大切にしているのは分からなくはありませんが、音楽が停滞してしまっていては問題です。特に第3楽章に頭書に出ています。もっとも第2楽章に関しては遅いテンポが詩情を醸し出していて中々に味わい深いです。

Nakamichi_chopin334仲道郁代独奏/コルト指揮ワルシャワ国立フィル(1990年録音/BMG盤) とても美しい音で奏でられたショパンです。アルゲリッチのような切れの良さや凄みこそ有りませんが、この曲の美しさが充分に感じ取れます。オーケストラがワルシャワ・フィルというのもアドヴァンテージです。祖国の生んだ偉大な音楽家への共感に満ち溢れていますし、ピアノと管弦楽が美しく溶け合ったまろやかな響きに思わずうっとりとさせられます。往年の巨匠や鬼才の演奏ばかりでなく、時には日本のピアニストの優れた演奏を聴いてみるのも「目から鱗」でとても楽しいものです。但し、しいて言えばピアノも指揮も少々真面目過ぎて面白みに不足するのが玉に瑕です。

Chopin0204スタニスラフ・ブーニン独奏/コルト指揮ワルシャワ国立フィル(2001年録音/EMI盤) ブーニンは1985年ショパンコンクール優勝時のライブが非常な秀演でした。それから16年後に再びライブ録音を札幌で残しました。相変わらず見事な演奏で大きく変わることは有りませんが、ひたむきさがより多く感じられるのは旧盤のように思います。新盤には逆に余裕が感じられますが、どちらを好むかは聴き手次第というところです。オーケストラ演奏はどちらもワルシャワ・フィルで優れていますが、個人的には旧盤の方により強く惹かれます。どちらにしてもブーニンのショパンは素晴らしいです。

Chopin713jtrghuhl__sl1050_ラファル・ブレハッチ独奏セムコフ指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管(2009年録音/DG盤) ずっと若い世代の優秀なピアニスト、ブレハッチもまたライブ録音です。ブレハッチは極めてオーソドックスでポーランドの伝統を強く感じさせます。曲のメロディアスな部分をそれほど大げさに歌うわけではなくむしろあっさりと流しますが、連続するスケールやアルぺッジオの部分から驚くほど豊かなニュアンスの変化を聴かせてくれます。これは高い技術に裏付けされているのでしょうし、正に新世代の才能輝くといった感が有ります。コンセルトへボウはもちろん非常に上手いオーケストラですが、音が重過ぎるのと、音楽への共感度においてはやはりワルシャワ・フィルに及ばないように感じます。

この曲のマイ・フェイヴァリットは何といってもルービンシュタインの1966年ワルシャワ・ライブですが、続くブーニンの1985年ライブに加えて、これからはブレハッチ盤を頻繁に聴きたくなりそうです。

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