« 『厚木賛歌』 ~厚木市民の歌は何処へ~ | トップページ | プラドでのパブロ・カザルス音楽祭LIVE録音23枚組CD‐BOX »

2016年9月19日 (月)

東京二期会 ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」

14409492_1654620061495232_511229712

昨日は東京二期会の「トリスタンとイゾルデ」を聴きに行きました。上野の東京文化会館で先週と今週で全4公演というプロジェクトです。

「トリスタンとイゾルデ」を生で聴くのは2007年にバレンボイムがベルリン国立歌劇場を指揮した来日公演以来ですので随分久しぶりです。あの時はワルトラウト・マイヤーのイゾルデが実に素晴らしく、あれ以上の「トリスタン」を日本で聴くのは中々に難しいと思います。

昨日の公演は最終日でしたがキャストは下の写真の通りです。

Dsc_0168
トリスタンのブライアン・レジスター以外は全員が日本人歌手です。これはAプロですが、Bプロではすべて日本人が歌いました。

歌手は総じて非常にレベルが高く、特にマルケ王の清水那由太の深く広がりのある歌唱は圧巻で主役を食うほどでした。イゾルデの横山恵子は綺麗な声を生かしたしっとりとした歌唱が秀逸でした。トリスタンのレジスターは流石に堂に入っていて、演技も含めて申し分なしなのですが、この日は圧倒されるほどのヘルデンテノール特有の声の張りは感じられず、もっと実力が有るのではと思いました。その他の配役も穴がなく大変満足のできるものでした。

指揮のヘスス・ロペス=コボスはベテランですが、ことさら力むこと無く、ワグナーの書いた美しい響きを美しく再現していました。ですので聴きようによっては物足りなく感じるかもしれません。特に第一幕ではオケも歌手もエンジンがかかっていない(あるいは、わざとかけていない?)様子で、たとえばベームやクライバーのバイロイトライブのようなたたみ掛ける迫力と興奮は全く有りません。

しかし、コボスの解釈は、巨大で絶叫するワグナーを目指すものではなく、この悲劇に登場する人物たちの心の内面を無理なく表すことに主眼を置いていると感じました。その結果、彼らの悲しみがじわりじわりと静かに深まって来ます。

第二幕のあのトリスタンとイゾルデの愛の二重唱でさえ、いずれ終幕の悲劇につながってゆくことを想うと哀しみを誘います。第3幕の最後に向かって、マルケ王の後悔、そしてイゾルデの愛と死と、沈み込むような深い悲しみが有ります。

それは多分に演出のヴィリー・デッカーの意図したところでしょうし、コボスが忠実に音楽を作っていたと思われます。デッカーの舞台は「絵画的」と評されたそうですが、本当に美しい絵を見ているような雰囲気でした。”光と影”の演出に”色彩感”を多く加えたそれは見事な舞台です。

オーケストラを担当したのは、余りオペラのピットに入ることの多くない読売日本交響楽団でしたが、下手に場慣れをしていない演奏の真摯さが気に入りました。ワーグナーの管弦楽にしては総じて金管群の音の質がもうワンランク上がればなぁと感じますが、これは日本のオケどこにも共通したことなのでやむをえません。それでも第3幕ともなると響きの充実ぶりが増してとても聴きごたえがありました。

ほぼオール日本人のキャスト、在京オケでこれだけのワーグナーが出来るのだとすこぶる感銘を受けた素晴らしい公演でした。

<関連記事>
ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」 名盤

|

« 『厚木賛歌』 ~厚木市民の歌は何処へ~ | トップページ | プラドでのパブロ・カザルス音楽祭LIVE録音23枚組CD‐BOX »

ワーグナー」カテゴリの記事

コメント

「トリスタンとイゾルデ」は
CDではベーム、DVDはバレンボイムを視聴しました。
現在はバーンスタイン盤を保有してますが手つかずです(汗)
海外盤なので、なおさら・・

読売日本交響楽団はやはり良いようですね。
スクロヴァチェフスキとのブルックナーは素晴らしいですし
カンブルランとも良好なようですね。

音楽に関しては東京が羨ましいと思うばかりです。

投稿: 影の王子 | 2016年9月19日 (月) 12時41分

影の王子さん、こんにちは。

ベームのCDは歌手も含めてベストの愛聴盤です。ベームで聴くとこのオペラの長さを感じません。
バレンボイムの古いバイロイト映像はよく観ました。やはり貴重です。

バーンスタインのCDも素晴らしいと思うのですが、全部通して聴くとちょっと長く感じます。部分部分のたっぷりとした聴きごたえは十分なのですが。でも好きです。

読響は新国立劇場でに日常的に演奏をしているオケよりもずっと良かったです。ルーティンワークに陥らない真剣さを感じます。オケの音も非常に充実した状態にありますね。
日本には歌劇場専属オケはありませんので非常に貴重な存在です。

投稿: ハルくん | 2016年9月20日 (火) 13時07分

はるくんさんご無沙汰しております。
さて、トリスタンとイゾルデ(私はベーム盤とクライバー盤を愛聴してます)の話題ではなく、単にこの場をお借りしたかっただけなのですが(ゴメンナサイ)、以前、はるくんさんの、当ブログで話題となりました、ポリャンスキーとロシア国立交響楽団の再来日についてでございまが、テンポプリモに確認したところ、来年10~11月に予定をしております。との回答でした。
開催地、プログラム共未定ですが、はるくんさん、ブログ愛読の皆様、是非来年会場でお目にかかれれば幸甚です。

投稿: まーちゃんさん | 2016年9月22日 (木) 20時42分

まーちゃんさん、ご無沙汰しました。

嬉しい情報をどうも有難うございました!
ポリャンスキーとロシア国立響のコンビは現在もっともロシアの土臭さを感じさせてくれるコンビなので是非また聴きに行きたいですね。
プログラムをオール・ロシアもので固めてくれると良いのですが。

とにかく皆で来年の秋を心待ちに致しましょう!

投稿: ハルくん | 2016年9月23日 (金) 12時50分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1080200/67558960

この記事へのトラックバック一覧です: 東京二期会 ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」:

« 『厚木賛歌』 ~厚木市民の歌は何処へ~ | トップページ | プラドでのパブロ・カザルス音楽祭LIVE録音23枚組CD‐BOX »