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2016年6月

2016年6月28日 (火)

ラフマニノフ チェロ作品集 伊藤悠貴(チェロ)&ソフィア・グルャク(ピアノ)

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日本人の卓越した若手チェリスト伊藤悠貴さんですが、今年は増々幅広い活躍をしています。

5月にはアフリカのアンゴラから来日したカポソカ音楽学院オーケストラを率いて全国ツアーを行いました。このときはチェロに指揮にと八面六臂の大活躍でした。

6月には大阪フィルのコンサートでドヴォルザークの協奏曲を独奏しました。大変評判が良かったようです。

さらに岩手県花巻市では「宮沢賢治生誕120年記念」NHK公開収録のリサイタルを行いました。20年前の生誕100年記念ではヨーヨー・マが演奏をした大役です。

伊藤さんは2010年にブラームス国際コンクールのチェロ部門で優勝、2011年にはウインザー祝祭国際弦楽コンクールで優勝と華々しい成績を収めました。ウインザーのコンクールはイギリスで最も権威のある弦楽奏者のためのコンクールですが、優勝者への賞として英チャンプス・ヒル社とのソロCD制作契約が与えられます。

その時に録音を行ったのが、ラフマニノフのチェロのための作品集です。

ラフマニノフというとピアノ作品が有名ですが、交響曲や室内楽曲、声楽曲などにも色々と優れた作品を残しています。

チェロのための名曲も決して少なくなく、このCDにはそれらが網羅されています。

ラフマニノフ チェロ作品集 伊藤悠貴(チェロ)&ソフィア・グルャク(ピアノ)(英チャンプス・ヒル・レコード CHRCD044)

①チェロとピアノのためのソナタト短調op.19
②前奏曲ヘ長調op.2-1
③東洋の踊りop.2-2
④メロディホ長調op.3-3
⑤ロマンス
⑥前奏曲ト長調op23-10
⑦ヴォカリーズop.34-14
⑧春の洪水op.14-11(伊藤悠貴編)

ピアノを演奏しているソフィア・グルャクも、2009年にリーズ国際ピアノ・コンクールで優勝し、国際的に活躍しているピアニストであり、ラフマニノフやプロコフィエフのロシアン・プログラムを得意としています。

これは二人の優れた若手演奏家の共演によるアルバムです。ラフマニノフのチェロ作品を集めたCDはもちろん他にも無いわけではありませんが、選曲が充実していて録音も優秀、尚かつ演奏が大変素晴らしいこのディスクは大変魅力的です。事実、英国の権威ある音楽雑誌ストラッド誌で特選盤に選ばれる快挙を成し遂げています。

演奏を聴いていて感じるのは非常に気品が漂っていることです。メインのチェロ・ソナタは古今の多くのチェリストが録音を行っていますが、その中にあっても素晴らしい存在感を示しています。一例を上げれば第4楽章の主旋律はラフマニノフの最も幸福的な部分であり、このソナタの一番の肝だと思いますが、ここをゆったりと非常に大きな広がりを感じさせてくれます。

その他の小品ももちろん素晴らしいです。あの名曲「ヴォカリーズ」は元々は声楽曲ですが、まるでチェロのために書かれたかのような印象を与えてくれます。この曲は伊藤さんがリサイタルで何度も取り上げていて、名刺代わりのレパートリーともなっています。

ラフマニノフの音楽はチェロの音色に大変似合っていますが、伊藤さんの持つ極めて美しい楽器の音がそのことを改めて実感させてくれます。デビューアルバムがこれだけ充実した出来栄えであるのは、やはり実力とセンスの成せる業でしょう。皆さんに是非お聴きに成られて欲しい名アルバムです。

チェロ・ソナタに関しては次回、名チェリストたちのCDの聴き比べにトライしてみたいと思います。もちろん伊藤さんの演奏も交えますよ。

なお、先日お伝えした「宮沢賢治生誕120年記念」リサイタルの放送予定を再度お知らせしておきます。下記のとおりですので是非ご視聴されてください。

FM「ベストオブクラシック」7月22日(金)19:30-21:10
BSプレミアム「クラシック倶楽部」8月26日(金)05:00-05:55

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ラフマニノフ チェロ・ソナタ 名盤

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2016年6月15日 (水)

伊藤悠貴 「宮沢賢治生誕120年記念」 NHK公開収録

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私も応援をしている素晴らしい若手チェリストの伊藤悠貴君が11日に花巻市文化会館で「宮沢賢治生誕120年記念」NHK公開収録を終えました。
今から20年前の生誕100年記念ではヨーヨー・マが演奏をした大役です。

宮沢賢治は「セロ弾きゴーシュ」を書いていますし、実際にチェロを持っていて愛奏していました。ですので記念コンサートは、やはり毎回チェロの演奏会になるのですね。

放送予定は下記のとおりです。是非ご視聴されてください!

FM「ベストオブクラシック」7月22日(金)19:30-21:10
BSプレミアム「クラシック倶楽部」8月26日(金)05:00-05:55

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2016年6月12日 (日)

宇野功芳先生が亡くなられました ― 黙祷 ―

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宇野功芳先生が亡くなられました。以下は、産経新聞WEBニュースからです。

『 音楽評論家で指揮者の宇野功芳(うの・こうほう=本名・功=いさお)さんが10日、老衰のため死去した。86歳。葬儀・告別式は近親者のみで行う。後日、お別れの会を開く予定。

 父は漫談家の牧野周一。国立音楽大声楽科で合唱指揮者を志す一方で、音楽評論...を始める。歯切れ良い筆致で指揮者のハンス・クナッパーツブッシュやカール・シューリヒト、エフゲニー・ムラビンスキーをはじめ、20世紀を代表する演奏家の紹介で知られた。
   また、大阪フィルを率いた朝比奈隆に早くから注目して評価を高め、難解とされたブルックナーやワーグナーの音楽の真価を分かりやすく解説。一方で、指揮者としても独特の手法で人気を集めた。著書に「宇野功芳の『クラシックの聴き方』」など多数。』 以上

 宇野先生の本は大学生の時に「モーツァルトとブルックナー」を読んだのが最初です。当時それほどポピュラーと言えなかったブルックナーの音楽の紹介に新鮮さを感じました。吉田秀和氏のような文学的な文章でも有りませんし、好き嫌いのはっきりした物言いにアンチ派も多かったと思いますが、それだけ支持者には強く愛されたということでしょう。

ブルックナーの音楽やクナッパーツブッシュ、シューリヒト、朝比奈隆といった本物の音楽家を日本で正当に評価されるようにした貢献度は計り知れません。

私はかつて勤務先の関係で先生を知っていたので、コンサート会場でお見かけしたときには必ずお声を掛けました。今となっては、それらのちょっとした会話が大変懐かしく思い出されます。

先生、ありがとうございました。
黙祷。

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2016年6月11日 (土)

「いのちと平和の音源」 いちよ・たかこ・やぎりんトリオ 新CD

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6月3日から5日まで、いちよ・たかこ・やぎりんトリオの山形ツアーに同行しました。3日間のコンサートのお手伝いが目的ですが、1曲だけゲストとしてフィドルで共演をさせて頂きました。

 時代や国境を越えて愛されてきた音楽の素晴らしさを伝えてくれる彼らには格別な思い入れが有ります。

 縁と縁とが結びつき、それまでデュオとして活動していた“たかこ・やぎりんバンド”(ケーナ奏者:八木倫明とアルパ奏者:藤枝貴子)がヴォーカリストの枝元一代さんと出逢って初共演したのは昨年3月です。

 それを機にトリオとして活動を始め、ちょうど1年後の今年3月に新しいCDのレコーディングが行われ、今月8日にリリースされました。

 この1年間、彼らの活動を傍らでじっと見守ってきました。コンサートはもちろん大切ですが、このトリオの音楽を形に残すCDの早期制作を提案したこともありました。

 こうして完成した“いちよ・たかこ・やぎりんトリオ”のファーストCDですが、本当に素晴らしい内容です。友人たちだから称賛するのではありません。心底そう思ったから言うのです。

 中心となるのは、北欧や中南米の民謡ですが、日本の歌も多く含まれます。ケーナとアルパと歌というトリオに、このCDでは元日本フィルの団員であったチェリストの古谷真未さんが演奏に参加しています。

 民謡というカテゴリーの音で考えればアコーディオンやフィドルなどが合いそうなものですが、敢えてクラシックのチェロを選んだあたりはやぎりんのユニークな閃きだと思います。

 初めは周囲でも果たしてトリオの音に重い音のチェロが合うかどうか心配の声が有りました。

 けれどもこうして完成してみると、やぎりんたちがこれまで創造してきた音と見事に融合して新境地の音が生まれました。

アコースティックの楽器ばかりですから、音色はとても温かく素朴です。そこにいちよさんの温かく柔らかい声の歌が加わって、限りなく美しい音楽が奏でられます。

 楽器も歌も、声高々に演奏されるのではなく、そっとそっと傍らに寄り添うかのような雰囲気です。

 ですので、とても聴き心地が良く何気なく聞き流すことも可能です。

 しかし、このデリカシーに溢れた楽器演奏と、言葉の一つ一つに深く祈りを込めて歌ういちよさんの歌とのハーモニーにじっと耳を傾けていると、彼らの世界にどっぷりと浸ってしまいます。

 収録された曲目を紹介してみますと以下の通りです。

『いのちと平和の音源』 The Sound For Life And Peace

  ~時代を越え国境を越えて愛されてきた歌と旋律~

   ★歌入り ☆チェロ入り

1.愛は花、君はその種子(たね)
A.マックブルーム)[高畑勲 訳詞] ★☆
2.黄色い村の門(アイルランド民謡)☆
3.思い出のサリーガーデン
(アイルランド民謡/やぎりん 訳詞)★☆
4.白鳥の停車場(藤平慎太郎)☆
5.ラ・サンドゥンガ
(メキシコ民謡/やぎりん 日本語詞)★
6.君の影になりたい【アルパ・ソロ】
7.ラピュタ・シチリアーナ
(イタリア・ルネサンス~久石譲) ☆
8.よろこびのうた
(メキシコ民謡/枝元一代ほか 日本語詞)★
9.童神【わらびがみ】
(佐原一哉/古謝美佐子・作詞)★
10.
蕾【つぼみ】(小渕健太郎)【アルパ・ソロ】
11.
チョグイ鳥(パラグアイ民謡)
12.
広い河の岸辺
(スコットランド民謡/やぎりん 訳詞)★☆
13.
コンドルは飛んで行く(D.A.ロブレス)☆
14.
人生よ、ありがとう
(ビオレータ・パラ/やぎりん 訳詞)★☆
15.
島唄(宮沢和史)★

アルバムは”いちよ・たかこ・やぎりんトリオがこれまでテーマにしてきた、命の尊さと平和への祈りを歌い奏でる内容です。

数百年も前から歌い継がれてきた曲から現代の曲まで、中南米の曲から北欧の曲まで他種多様、とらわれのない自由な発想から生まれた選曲です。

今回収録された15曲はどれも素晴らしい名曲ばかりで、しかも三人がそれぞれの愛奏(唱)曲を持ち寄っているので、きっとどの曲が良いというのは皆さんの好みでしか選べないでしょう。人によって「この曲が好き!」というのはまちまちになることと思います。

 しかもその日の気分で好きな曲が刻々と変わるような気がします。それほどどの曲をとっても、時代を超えた、あるいはこれから超えるであろう素晴らしい名曲ばかりであり、彼らの思いが深く強く込められているのを感じます。

 これまですでにファンの間で親しまれている「コンドルは飛んでゆく」「広い河の岸辺」などでのチェロを加えた新アレンジは非常に新鮮です。それぞれの民族的な色調は薄まったかもしれませんが、もともと民族色に必ずしも強く固執していないやぎりんならではの国境を越えた純音楽的な美しさが際立ったと思います。

 いちよさんは彼女の代表曲である「よろこびのうた」や「広い河の岸辺」「思い出のサリーガーデン」での歌唱に独自の世界を感じさせます。彼女は本当に柔らかく綺麗な声を持ちますが、声量は必ずしも豊かでないと思います。ところがそれを逆に生かしていて、どこまでも繊細に心の琴線に触れるように言葉に寄り沿って来ます。声量に頼ろうとせずに、歌への心の込め方を大切にしているから素晴らしいのだと思います。やぎりんが24年間温めてきたという第1曲「愛は花、君はその種」からその世界に惹き込まれてしまいますが、終曲の「島唄」も本当に感動的で、とても涙無くしては聴けないほどです。この曲もこれから代表曲の一つになりそうです。

 やぎりんについては25年も演奏してきて何と5度目の録音となるという「黄色い村の門」でのケーナがアイルランドの郷愁をしみじみと感じさせて胸を打ちます。それだけ大切にしてきた曲なのでしょう。この曲に続く「思い出のサリーガーデン」との2曲で完全にアイルランドの世界に連れ去られます。「サリーガーデン」のケーナとチェロのハーモニーが何と美しいことでしょう!

 たかこさんのアルパはいつもながらどの曲でもアンサンブルをしっかりと支えていて、トリオの大黒柱ぶりが素晴らしいです。そしてソロで弾く「蕾」や「君の影になりたい」「シチリアーナ」などで極めて繊細に美しく表情豊かに奏でる演奏ぶりには改めて感嘆します。一方で「チョグイ鳥」での沸き立つようなリズム感は流石に本場パラグアイ仕込みですね。

そのトリオの音楽に古谷真未さんが美しく艶やかなチェロの音を魅力的に合わせています。かつて誰も耳にしたことの無い新しい楽器同士の組み合わせで、とても自然で美しいハーモニーが誕生しました。

 とにかく15曲を聴いていて1曲たりとも飽きることは無く、初めから終わりまで心を掴まれっぱなしになります。そしてまた繰り返して何度でも聴きたくなります。これはアルバムとして凄いことだと思います。

 繰り返しますが、彼らの歌と演奏は力づくで聴かせるようなことが全く有りません。例えれば自然の美しさや野に咲く草花のひっそりとした美しさを見たときに感じるような心の奥にそっと湧き上がってくる喜びと同質のものです。

 彼らのコンサートを聴いた人はきっとこのCDが聴きたくなるでしょうし、このCDを聴いた人はきっと彼らの生のコンサートを聴きに行きたくなることでしょう。

最後に、録音とサウンドマスタリングを担当した三塚幸彦氏の存在も忘れてはなりません。素晴らしい尺八演奏家でもある氏の的確な仕事が大きな貢献をしています。

このCDを購入希望される方は下記へご連絡ください。
yagirin88@gmail.com (やぎりんオフィス)

あるいは私にご連絡を頂いてもお取次ぎ致します。

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