山田和樹指揮日本フィル演奏会 マーラー交響曲第6番
いまや大活躍の指揮者、山田和樹が2015年から2017年の3年にわたり渋谷のオーチャーホールで日本フィルと演奏するマーラー・チクルス第6回目を聴いて参りました。第1番から順番に演奏しているので、今回は第6番「悲劇的」となります。
山田和樹は私の住む厚木市からほど近い秦野市の出身ですので、やはり応援をしたくなります。地元出身に声援を送るのは相撲や高校野球だけではありませんね。
日フィルを聴くのは久しぶりです。7年前に第九を聴いて以来かもしれません。世代交代が遅れた感のある日フィルは当時は余り優れているとは思えませんでした。それがどう変わっているかも興味深いところです。
マーラーに先立って演奏されたのは武満徹の「ノスタルジア」で、この曲はヴァイオリン独奏と弦楽オーケストラのための15分ほどの作品です。淡々とした静寂に包まれた曲でした。
メインのマーラー第6はとても好きな曲です。しかしこの曲は熱演をすると、ともすると絶叫型の演奏に陥り易く、案外と難しいです。マーラーを得意とするバーンスタインのニューヨーク・フィルとの録音もそうですし、エリアフ・インバルが都響とこの曲を演奏した時にも金管の絶叫がうるさくて閉口した記憶があります。
山田和樹の演奏は基本テンポは速めでしたが、この曲を象徴する冒頭のザッザッザッという低弦の刻みの力強さが印象的です。3列目の席で聴いたので弦楽奏者の気迫、弓を大きく使い、音を割った迫力が生々しく感じられました。日フィルのイメージが変わります。
アルマのテーマの歌わせ方は中々です。個人的には更に大見得を切るような演奏が好きですが、これは悪くありません。中間部の壮絶な迫力は凄いですが、美観を損ねるような騒々しさにまで陥らないのが非常に良いです。この辺は山田和樹のバランス感覚だとしたら流石です。インバルよりも明らかに上です。
この曲は第2楽章と第3楽章でアンダンテ、スケルツォとアダージョが入れ替わる二つの版が存在していて未だに結論は出ていません。マーラー自身が迷っていて結論が出ていなかった為です。しかし今日は第2楽章スケルツォ、第3楽章アンダンテの順で演奏されました。山田和樹のこの見解はOKです。この逆にはどうしても馴染めないからです。
演奏については、第2楽章スケルツォのリズムの切れは良かったですが、第3楽章アンダンテの寂寥感、神秘感はもう一歩というところでした。これは自分の要求が相当高いところにあるからかもしれません。
終楽章は第1楽章と同じことが言えますが、あの長い楽章を乗り切りました。金管が幾らかバテ気味に感じられましたが、全体的に緊張感を最後まで維持して立派な演奏でした。
日フィルのマーラーもコバケン時代とだいぶ変わった印象です。以前は指揮者の要求に実際の音が応え切れない感が有ったのが、今日は山田和樹の棒にかなり応えていました。メンバーの世代交代と技術のレベルアップが着実に実現されていたように感じられました。ただしそれは他の在京オケにも言えることなので、さらに上を目指して欲しいと思います。
今日は色々な意味で聴きに来て良かったコンサートでした。残るは来年の7、8、9番ですが、9番は是非とも聴きたいと思います。
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コメント
おはようございます。
以前も書きましたが、やはりこの曲は
スケルツォ→アンダンテの順で演奏すべきです。
これは良い演奏会だったようで羨ましいです。
投稿: 影の王子 | 2016年3月27日 (日) 07時45分
影の王子さん、こんにちは。
はい、この曲はマーラーがどうして迷ったのか理解できませんね。どう聴いてもスケルツォ→アンダンテのほうが良いに決まっています。
演奏会良かったですよ。来年の後期プログラムに期待しています。
投稿: ハルくん | 2016年3月27日 (日) 09時51分