« ドイツ・リート・コンサート at シェア奥沢 シューベルト歌曲集「美しき水車小屋の娘」全曲 | トップページ | お知らせ »

2015年12月30日 (水)

ブラームス 交響曲全集 名盤 クルト・マズア指揮ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管

Brahms_masur253クルト・マズア指揮ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管(1977年録音/フィリップス盤)

クルト・マズアが年末に亡くなりましたね。何も亡くなった人を悪く言うこともないのですが、この人は最後まで滅多に感心することの無いマエストロでした。そういう点ではハイティンクと良く似ていて、少なくとも最近では二人ともすっかり巨匠扱い。でも昔から余り感心することが無い。要するに自分の好みとは隔たりの有る指揮者でした。

マズアに関しては、まづぁ、出会いの印象が余り良く無かったのです。大学生の時に期待していったゲヴァントハウス管の来日演奏会。曲目はベートーヴェンの第九。そして指揮者がマズアでした。

古色蒼然としたオーケストラの音色にすっかり魅了されました。ところが、指揮が何とも面白くありませんでした。オーソドックスと言えば聞こえは良いですが、クソ真面目で全然面白くない、四角四面でそこからはベートーヴェンの苦悩も歓喜も聞こえてこない演奏でした。

なので、すっかりマズアという指揮者が嫌いになり、その後何を聴いても(と言っても嫌いに成ったので余り聴いてはいませんでしたが)同じような面白みの感じられない演奏でした。

ということで、このブラームスの交響曲全集にこれまで食指を動かされなかったのも、指揮者がマズアだからという理由だけです。それをどうして今頃になって興味を持ったのかと問われれば、それは「ゲヴァントハウス管の演奏だから」というのがその答え。

ブラームスの交響曲の演奏をして最高なのはシュターツカペレ・ドレスデン、ハンブルク北ドイツ放送響、それにライプチッヒ・ゲヴァントハウス管、この3つの楽団だと思っています。ウイーン・フィルも良いには良いのですが、ブラームスの密度の濃い重厚な響きを聴こうとすると、ちょっと音が澄み過ぎて薄い感じがしてしまうのです。

さて、そうしてこの交響曲全集の演奏を聴いてみました。うーん、やはりゲヴァントハウスの音は素晴らしいです。コンヴィチュニー時代の質剛健な響きは後退しているものの、そんじょそこらのドイツのオケでは出せない重厚な音をやはり聞かせています。良かったのはマズアが期待以上に健闘していることです。クルト・ザンデルリンクの貫禄には程遠いものの、非常に安心して聴いていられるオーソドックスなブラームスです。ドイツ人の割には重厚さがいま一つですが、時にフラフラするところの有る、ギュンター・ヴァント/北ドイツ放送響の全集よりはずっと良いと思いました。第1番、第2番、第3番とブラームスの音楽をすっかり満喫しました。第4番も良いのですが第3楽章あたりがいかにも覇気の無いマズアまる出しなのでがっかりです。あの重厚なザンデルリンクでもこの楽章ではラプソディックな熱気を充分に感じさせてくれるのと対照的です。

そうは言っても、全体的に中庸か、いくらかゆったりとしたテンポですが、全てにおいてイン・テンポを守っているのでスケール感もそれなりに感じられますし決して悪くありません。何よりもゲヴァントハウスの響きが聞けるのが最大の魅力なので、やはり素晴らしい全集の一つとして数えられます。

クルト・ザンデルリンク/シュターツカペレ・ドレスデン、オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ベルリンに加えてドイツオケによるブラームスのシンフォニー全集のベスト3に入るかもしれません。少なくともカラヤン/ベルリン・フィルやクーベリック/バイエルン放送響よりはずっと気に入りました。もっともエッシェンバッハが北ドイツ放送響と新録音を行なってくれたら恐らくそれを越える可能性が有ります。

|

« ドイツ・リート・コンサート at シェア奥沢 シューベルト歌曲集「美しき水車小屋の娘」全曲 | トップページ | お知らせ »

ブラームス(交響曲全集)」カテゴリの記事

コメント

ハルくんさん、こんばんは。
ゲヴァントハウス管のブラームスと言うと コンヴィチュニーの「第1番」が最高なのですが、全集は マズアが シャイーのどちらか ぐらいしかありませんよね。
シャイー盤は さらに「音」が軽そうな感じがするので、(笑) 聴くのであれば、マズア盤かな…。とは思います。
でも、やはり私は コンヴィチュニーが もう少し 長生きしてくれていれば……と思ってしまいます。

投稿: ヨシツグカ | 2015年12月30日 (水) 22時22分

ヨシツグカさん、こんにちは。

そうですね。コンヴィチュニーの全集が無いのが痛感の極みです。ベートーヴェンとシューマンが有って何故ブラームスが無いのか!
恐らく第1番に続いて録音されるはずだったのでしょう。どうして早死してしまったのでしょうね。つくづく残念でなりません。
その第1番だけで比べればやはりコンヴィチュニーはマズア盤よりもずっと素晴らしいです。ザンデルリンクに匹敵する唯一の純ドイツ風のブラ1でしょう。
ただマズア/ゲヴァントハウスの全集は良いと思いますよ。覇気に不足する部分が所々散見されるのがご愛嬌ですが、何度も書いた通りにオケの響きを味わうだけでも充分に価値が有ります。

投稿: ハルくん | 2015年12月30日 (水) 23時56分

こんにちは。

今年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。

マズアは政治的に「強い」人だったようですね。
私は1枚も聴いたことがありません。

3番目の奥さんが日本人であり、マズアも日本語が堪能で
「振るとマズい」→「フルト・マズイ」→「クルト・マズア」と
駄洒落が気に入ってたとか・・・

ゲヴァントハウス管はシャイーのベートーヴェン全集を聴きました。
「疑似・古楽系」の高速演奏ですが、オケの響きが重厚なので
ラトルやジンマンのような「軽薄さ」が無いのが良いです。
古楽系はお好きではないようなので、お勧めはしませんが。

投稿: 影の王子 | 2015年12月31日 (木) 11時02分

ハルくんさん

saraiです。ご無沙汰しています。
コメントはしていませんが、いつもあなたのブログ記事を参考に読ませていただいています。特にブルックナーとマーラーは大変、参考になります。

ということで、今年も大変、お世話になりました。来年もよろしくお願いします。

ところで、みなさん、好みは分かれるのは当然ですが、マズアとハイティンクを一緒にされるのは心外です。マズアは巨匠と言われているのですか。
ハイティンクは3回、ブラームスの全集を録音していますが、2回目のボストン交響楽団、3回目のロンドン交響楽団は素晴らしい演奏で、ザンデルリンクに並んで好んでいます。

もっとも、年をとってくると、だんだんと好みが寛容になってきて、それぞれの良さも見えてきて、誰はダメだいうのは少なくなってきています。カラヤン以外は許容できるかもしれません。

年末に生意気なことを書いて、ゴメンナサイ。年寄りの戯言とお見逃しください。

CDの記事をお待ちします。
(ハルくんさんの影響でフルトヴェングラーのベートーヴェンはほとんど聴きました。本当に素晴らしいですね。)

では、よいお年を。

投稿: sarai | 2015年12月31日 (木) 15時35分

ハルくんさんお久しぶりです。
クルト・マズアの評価は必ずしも評価がぶれることが多いですね。ゲヴァントハウス時代はやはりオーケストラの魅力をきっちり引き出しているのは間違いないですね。このブラームスは1番だけ聴く機会がありましたが、しっくり来た演奏だった記憶があります。あと不思議なことにニューヨークフィル時代にアメリカものを入れた録音が好きで聴いています。意外な相性もありそうです。来年もよろしくお願いします。

投稿: リベルテ | 2015年12月31日 (木) 17時14分

影の王子さん

今年も沢山のコメントを頂きまして誠にありがとうございました。お返事が遅くなることが多々ありましたことをお詫びします。
来年もどうぞよろしくお願い致します。

お察しの通り、シャイーのベートーヴェン全集は聴いておりません。
「疑似・古楽系」の高速演奏というとパーヴォ・ヤルヴィの演奏に近いようですね。
古楽器系で聴きたくなるのは確かに私の場合はせいぜいモーツァルトまでになります。

投稿: ハルくん | 2015年12月31日 (木) 18時15分

saraiさん、ご無沙汰しました。

今年はCDの記事をほとんど書いていないので、そうして過去の記事をお読み頂けるというのは本当に嬉しいです。

ハイティンクを引き合いに出したのはマズ(ア)かったですかね(汗)。
ハイティンクは評価の高い人が多いですよね。
私の方が最近も聞かず嫌いなので真価を分かっていないのかもしれません。

確かに齢をとって寛容と言うか許容の巾が広がる傾向は有ります。その逆にフルヴェンやクナが最高というスタンスは弱まったようです。でもフルトヴェングラーのベートーヴェンはあれはやはり神業以外の何物でもありませんね。

では良いお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2015年12月31日 (木) 18時23分

リベルテさん、ご無沙汰しました。

マズアのアメリカものというのは知りませんでした。中々良いのですか。それは本当に意外ですね。

ゲヴァントハウス時代にはオケそのものがドレスデンと似ていて、誰が振っても古風な音色を醸し出していましたね。最近のゲヴァントハウスはバッハ以外は聴いていませんが。
ですのでどうしてもマズアの評価では無く、ゲヴァントハウスの評価になってしまいます。でも後の方の録音には良いものが有るのかもしれませんね。機会が有れば先入観を持たずに聴いてみたいと思います。

それでは来年もどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2015年12月31日 (木) 18時35分

ご無沙汰しております。いつもハルくんの深い考察を楽しんで読ませていただいています。

さて、ハルくんのハイティンク嫌いは知っていたのですが、さすがにマズアと同列に書かれるのはやめていただきたい、と思ったらsaraiさんが既に書かれていましたね。
曲の細部までバランス良く聴かせ、かつ流れを見失わないハイティンクと、何でも簡略化して流れだけしか表現しないマズアは対極にあると思っています。

ゲヴァントハウス管はシャイーでは宝の持ち腐れになってしまうような気がします。せっかくの純ドイツ風オケにあの快速演奏は合わないと思う… 誰か良い指揮者を紹介してあげてほしいと思ってしまいます。

投稿: まっこい | 2016年1月 3日 (日) 10時16分

まっこいさん、お久しぶりです。
でもお元気そうで何よりです。

マズアの昔を随分悪く書いたので、クレームが付くかと思ったのですが、「ハイティンクを同列にするな」というお叱りが続いてしまいました。(笑)
でもわざわざ「アンチ」だと言うのは、逆に存在を認めているからです。存在感のない指揮者の名をわざわざ引き合いにだしたりはしません。「アンチ・ジャイアンツ」は実はジャイアンツを認める野球ファンなのですよ。

ゲヴァントハウスに限らず、伝統あるドイツオケに外国の指揮者が就任するのが珍しくないですね。私に言わせれば愚かさの極みです。頑固おやじのようなドイツ人は確かに減ってはいるのでしょうが。

投稿: ハルくん | 2016年1月 4日 (月) 12時47分

こんばんは。

シャイー指揮ゲヴァントハウス管のブラームスの交響曲全集
すばらしいです!

まずライヴ収録の編集ではなくセッション録音なのが良いです。

シャイーの音楽運びはストレートで明快なのですが
決して一本調子ではありません。

そしてなによりゲヴァントハウス管の響きのすばらしさ‼
最高の耳のご馳走です!
とにかく響きに身を委ねるだけで幸せです。
少し重心が低く、それでいて鈍重ではなく
強奏でも決してうるさくならない。
なんという魅力的なオケなのでしょうか!

4曲それぞれには過去の数多くの名盤があるのですが
全4曲がムラの無い出来で、録音の良さを考慮すると
これは特筆すべき全集だと思います。

私の中でブラームスの交響曲がより一層愛おしくなりました。

投稿: 影の王子 | 2016年6月 9日 (木) 23時04分

影の王子さん、こんばんは。

ゲヴァントハウス管のブラームスの響きは素晴らしいですよね。シャイー盤は聴いていませんが、このオケとシュターツカペレ・ドレスデン、ハンブルク北ドイツ放送響の3つが3大B(ブラームス)オーケストラだと確信しています。
これらのオケで聴くブラームスの魅力は何物にも代え難いです。
シャイーの全集も聴いてみたくなりました。ありがとうございます。

投稿: ハルくん | 2016年6月10日 (金) 00時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1080200/63214990

この記事へのトラックバック一覧です: ブラームス 交響曲全集 名盤 クルト・マズア指揮ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管:

« ドイツ・リート・コンサート at シェア奥沢 シューベルト歌曲集「美しき水車小屋の娘」全曲 | トップページ | お知らせ »