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2015年11月30日 (月)

オッコ・カム/ラハティ交響楽団 2015来日公演 ~感動のシベリウス~

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フィンランドの生んだ大作曲家シベリウスの音楽は大好きですが、その魅力を開眼させてくれたのは30年以上前にヘルシンキ・フィルを率いて来日したオッコ・カムの演奏でした。

そのカムが、やはりフィンランドの名門ラハティ響とと来日したのでオペラシティに聴きに行きました。仕事の都合で平日は厳しいのですが、週末に後期の交響曲第5番、6番、7番を演奏してくれたのは幸いです。

さて、開場前にホールに向かうエスカレーターを登ろうとすると、カメラを持ってパチパチ写真を撮りながらフラフラしている外人のオジサンがいました。うん?カムに似ているなぁーと思いながら、声をかけました。

「あなた音楽家?(実際は英語で)」「イエス」
「あなたコンダクター?」「イエス」
「カムさんでしょ。偉大な指揮者のあなたの昔からの大ファンです。30年前のあなたとヘルシンキ・フィルの演奏には感動しました。」「憶えていないな。」
「今日の演奏会を楽しみにしています。握手してください。」「OK。」
と、まぁだいたいそんな短い会話をすると、カムさんまたパチパチ写真を撮りながら行ってしまいました。開演直前にリラックスしたものだと感心。...

開場してホールに入り席に着き、いよいよ演奏が始まりました。さすがにカムさん舞台では真面目な顔をしています。前半は第5番です。いやこれは素晴らしいシベリウスでした!ラハティ響はヴァンスカ時代に鍛え上げられて優れたオケなのは分かっていましたが、それを自然体ながら非常に豊かな音楽を聞かせています。カムはオケを厳しく統率するタイプでは無く、ある程度自主性に任せるおおらかさを感じますが、弦楽の表情づけなどは素晴らしいの一言です。表現はロマンティックながらも、過度にベタベタすることは無く、あくまでも寡黙さを失わない正に北欧音楽。シベリウスに頻出する弦楽のトレモロによる和音の変化はさしずめブルックナー的な面白さを持ちますが、その変化の処理の上手さは絶品で唖然とするほどです。名曲の第5番のこれだけ魅力的な演奏は極めて稀の気がします。前半からブラ―ヴォの嵐でしたね。もうコンサートが終わった位の充実感です。

後半は第6番、7番といよいよシベリウスの深遠な世界に入って行きます。オケの響きは増々充実して美しく豊かになり、一音一音がどこをとっても神秘的な雰囲気に溢れます。ああ、これこそは晩年のシベリウスの世界!

5番に比べて地味に終わる曲が続き、さらにアンコールも穏やかな曲が続いたので、これは最後は「フィンランディア」だな、と確信がありました。で、アンコール3曲目となり、やはり出ましたフィンランディアが!
ただただ感動して聴き惚れていました。あの中間部の有名な旋律が木管で奏されたあとに続く弦楽が非常な弱音で弾かれたのには背筋がゾクゾクしました。普通はここは合唱入りの版に勝るものは無いと思ってはいますが、こんな演奏を聴かされるといやぁ管弦楽のみの版もやはり素晴らしい!

演奏終了後の嵐のような拍手に応えて何度も何度も出てきましたが、団員が引き上げても拍手が停まらないので、カムが団員を呼び戻して全員に揃って何回もお辞儀をさせていました。団員達もこの日本の聴衆の喜びようにみな感激しているようでした。

本当に感動的なコンサートでした。音楽的にも雰囲気的にも聴衆と演奏家がこれほど一体感を分かち合える演奏会はそう有るものでは無いと思います。
やっぱりカムさんのシベリウスはかけがえのないものだなぁ。

それにしても今日は完全にSOLD OUT。空席が本当に見当たりませんでした。後期のプログラムでこれだけのお客さんが詰めかけて、しかも本当に見事な聴衆ぶり。
日本のシベリウス・ファンの素晴らしさにもブラーヴォですよ!

終演後にはカムさんが大勢のお客さんのサインに応じていました。

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シベリウス(交響曲)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。

ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ

開演前に会話されるなんて、ホントにモッテます...。なんかスゴい。

行きたくて聴きたくて。オークションでも主催者サイトでも最終日だけは何処にも売ってませんでした...○| ̄|_

2日目でも...と思って調整はしたのですが、当日券を購入できそだったので。しかし大事な打ち合わせが入り断念。

豊かな老後をおくれる立場になったら東京に住みたい笑。

投稿: source man | 2015年12月 1日 (火) 12時57分

ハルくんさん、こんばんは。
カム/ラハティ響の来日公演、素晴らしい演奏だったそうで 羨ましいかぎりです…。
しかも、マエストロと会話ですか…!
さすが、"持ってる"方は 違いますねぇ…。(笑)
 
だったら こっちは SACDで 感動してやる!(笑)
…と 来年の オーディオのグレードアップへ 密かな闘志燃やす ヨシツグカでありました。…?(笑)

投稿: ヨシツグカ | 2015年12月 1日 (火) 18時48分

source manさん、こんばんは。

普段は会場に余り早く行くことは無いのですが、この日は何となくホールの周りの気分を味わって気分を高めようかなぁというつもりで開場の10分前ぐらいにホールへ向かっていたのです。
カムさん、まるで取材カメラマンみたいなラフな服装で居たので最初は「まさか」と思ったのですが、よくよく見るとやはりご本人。それで声をかけました。
気分を高めるもなにも、おかげで一気に興奮状態です。(笑)

その後ホールの入り口前で開場を待っていると、カムさんエスカレータを登ってきて正面の入り口から入って行こうとするので、僕が片手を上げて「ハイ!」と挨拶の素振りを見せたらニコニコ笑っていました。周りは既に大勢のお客さんが居ましたが、誰も気付いた人は居なかったみたい。一人でほくそ笑んでいました。

投稿: ハルくん | 2015年12月 1日 (火) 23時47分

ヨシツグカさん、こんばんは。

オッコ・カムは20代の時にシベリウスの音楽の魅力を知るきっかけの演奏家だったので、元々思い入れは凄く強かったのですよ。なので、何かその「思い」が与えてくれたような不思議な出来事でした。

演奏も本当に素晴らしかったです。
SACDももちろん素晴らしいのですが、既存の色々なCDとの比較レベルでは聴き込めていないので中々記事に出来ないでいます。
でも印象としては今回の実演と非常に近い印象ですのでご安心を!

投稿: ハルくん | 2015年12月 2日 (水) 00時05分

うらやましい・・・

投稿: しんちゃん | 2015年12月 3日 (木) 19時09分

しんちゃんさん、記事をお読みくださりありがとうございました。

投稿: ハルくん | 2015年12月 8日 (火) 16時57分

いいなあ。アンコールはやっぱりこれですね。

投稿: かげっち | 2015年12月 9日 (水) 13時01分

ハルさん、こんにちは
私もオッコカム ラハティ交響楽団の演奏会、最終日
交響曲第5番、第6番、第7番を聴きました。
感動的な名演でした。
オッコ カムさんの優しい人柄に満ち溢れた演奏会でした。

演奏会を聴き終わり、このように幸せな気分になったのは本当に久しぶりです。
辛口批評の愚妻も、オッコ カムさんに酔いしれていました。演奏会の後私をみる眼はうつろで(と言うより私は眼中になかった!?)、ずっと遠くを見ているようでした。
ところで、ハルさんのサイン会の写真を拝見し、私が撮った写真とほぼアングルが同じでしたので、おそらくお近くですれ違っていたのかもしれません。どうも失礼しました。

オッコ カムさんのシベリウスをきき、30年前の東京文化会館での素晴らしい演奏会を思い出しました。

カムさんの音楽の優しさは以前のままですが、さらにスケールが大きなシベリウスであったかと思います。またラハティ交響楽団の音が柔らかく滋味に溢れ、心を優しく包み込むようでした。
私共を幸せにしてくださったカムさんに感謝、感謝です。

投稿: LP大好きおじさん | 2015年12月13日 (日) 19時02分

かげっちさん、お返事がえらく遅れてしまいました!

ハンヌ・リントゥが先日のNHKのテレビで、「フィンランディアで盛大に盛り上がって終わるのが一般的だけど、これは序曲なので最初に演奏します。」という話をしていましたね。事実放送されたときのコンサートでは最初に演奏しました。
でも、やっぱりアンコールには「フィンランディア」で盛大で感動的に終わるのが良いですよねぇ。
これでいいのだ!(笑)

投稿: ハルくん | 2015年12月16日 (水) 12時42分

38年位前、高校生の頃
カム カレワラ組曲でした
シベリウスのバイオリン協奏曲(一楽章が好き)
交響曲2番(2楽章が好き)
この辺はよく聞きました
勉強はせずにですね
学年最下位の偉業を叩き出しましたw

投稿: pp | 2015年12月18日 (金) 19時45分

LP大好きおじさん様

お返事が1週間以上も遅れてしまい誠に申し訳ありませんでした!

やはり同じ最終日に行かれたましたか。
カムさんのシベリウスは本当に素晴らしかったですね。デリカシーが有るのに神経質にならない素朴さが音楽にピッタリですよね。

そうなのですか!サイン会の写真をお隣で撮られていたのかもしれませんね。お声を掛けられたら良かったですね!

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

投稿: ハルくん | 2015年12月21日 (月) 23時46分

PPさん、こんにちは。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲良いですね!
交響曲2番の2楽章も良いですよね。ほの暗さの中にじわじわと感情が高まる辺り実に素晴らしいです。
学業に影響が出たのもよくわかります。
その代わり、一生の宝を得られたのではないでしょうか?

投稿: ハルくん | 2015年12月22日 (火) 12時53分

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